IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図1
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図2
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図3
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図4
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図5
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図6
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図7
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図8
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図9
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図10
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図11
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図12
  • 特開-品質評価装置及び検査管理システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140951
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】品質評価装置及び検査管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220921BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G01N21/956 B
G06T7/00 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041048
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 葵
(72)【発明者】
【氏名】藤井 心平
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA65
2G051AB02
2G051AC04
2G051CA04
2G051CB01
2G051EA12
2G051EA14
2G051EB05
2G051EB09
5L096BA03
5L096FA32
5L096FA33
5L096GA51
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】検査対象の品質の変化をとらえて、検査処理に用いられる教師あり機械学習による学習済み学習器の再学習を促すことで、信頼性の高い検査を実現する。
【解決手段】検査対象を撮像して生成した検査画像を学習データとし、検査結果を教師データとして機械学習させて生成した学習済み第1学習器を用いた検査処理において良品と判定された該検査画像である良品画像を取得する良品画像取得部と、前記検査対象の品質の変化を評価する品質変化評価部と、前記評価の結果を含む品質評価情報を生成する品質評価情報生成部と、を備えた品質評価装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を撮像して生成した検査画像を学習データとし、検査結果を教師データとして機械学習させて生成した学習済み第1学習器を用いた検査処理において良品と判定された該検査画像である良品画像を取得する良品画像取得部と、
前記検査対象の品質の変化を評価する品質変化評価部と、
前記評価の結果を含む品質評価情報を生成する品質評価情報生成部と、
を備えた品質評価装置。
【請求項2】
前記品質変化評価部は、
前記良品画像に基づいて、前記品質を評価する品質評価指標を出力する品質評価部と、
前記品質評価指標を蓄積する品質評価指標蓄積部と、
前記品質評価指標蓄積部に蓄積された前記品質評価指標の所定期間にわたる変化に基づいて、前記品質の変化を判定する変化判定部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の品質評価装置。
【請求項3】
前記品質評価指標は、前記良品画像を学習データとして教師なし学習によって機械学習させて生成した学習済み第2学習器により出力される異常度であり、
前記変化判定部は、所定期間にわたる前記異常度の平均値及び標準偏差を算出し、該平均値及び該標準偏差を、それぞれ第1閾値及び第2閾値と比較して前記品質の変化を判定することを特徴とする請求項2に記載の品質評価装置。
【請求項4】
前記第1閾値及び前記第2閾値の少なくともいずれかを自動で設定する設定部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の品質評価装置。
【請求項5】
前記品質変化評価部は、
前記良品画像を学習データとして教師なし学習によって機械学習させて生成した学習済み第3学習器により、クラスタリングを行い、外れ値の個数と、第3閾値とを比較して前記品質の変化を評価することを特徴とする請求項1に記載の品質評価装置。
【請求項6】
前記第3閾値を自動で設定する閾値設定部を備えたことを特徴とする請求項5に記載の品質評価装置。
【請求項7】
前記品質評価情報は、前記第1学習器の再学習を勧める情報を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の品質評価装置。
【請求項8】
前記品質評価情報は、前記検査対象に関する前工程の改善を勧める情報を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の品質評価装置。
【請求項9】
前記品質評価情報を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の品質評価装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の品質評価装置と、
前記検査対象に対して前記学習済み第1学習器を用いた検査処理を実施する検査処理部と、該検査処理に供される前記検査画像と該検査処理による結果である前記検査結果を記憶する記憶部とを、備えた検査装置と
を含む検査管理システム。
【請求項11】
前記第1学習器を再学習させる学習装置を含むことを特徴とする請求項10に記載の検査管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の検査対象の品質を評価する品質評価装置及び検査管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
FA(Factory Automation)分野ではワーク等の検査対象を撮像し、事前に学習させた教師ありAIモデルにその画像を入力することで、当該ワークについての良否を検査するような工程が実現される。生産現場で量産されるワークの品質は絶えず変化しており、その変化が大きくなると教師ありAIモデルが正しく判定することができなくなるため、見過ぎや見逃しのリスクが大きくなる。ゆえに新しく得られた学習データを用いて教師ありAIモデルを再学習させ、品質の変化に応じた最適な教師ありAIモデルを使用する必要がある。ワークの品質としては、例えば、ワークがプリント基板である場合には、はんだの外観や、部品位置等の外観検査における出来栄え等が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1では画像判定用のモデルに新たな良品画像、不良品画像を学習させることでこれまでになかった新たな特徴を持つデータに対しても適切に判定するモデルを生成可能としている。
【0004】
しかしながら、ワークの特徴はその時の気温や材料のバラつき、さらに検査装置及び前工程で使用される装置の状態など様々な要因によって変化しうるため、どのタイミングでワークの特徴が変わり、教師ありAIモデルを再学習すべきかをユーザが判断することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-107104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、検査対象の品質の変化をとらえて、検査処理に用いられる教師あり機械学習による学習済み学習器の再学習を促すことで、信頼性の高い検査を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
検査対象を撮像して生成した検査画像を学習データとし、検査結果を教師データとして機械学習させて生成した学習済み第1学習器を用いた検査処理において良品と判定された該検査画像である良品画像を取得する良品画像取得部と、
前記検査対象の品質の変化を評価する品質変化評価部と、
前記評価の結果を含む品質評価情報を生成する品質評価情報生成部と、
を備えた品質評価装置である。
【0008】
これによれば、ユーザは、検査対象の品質の変化を評価する品質変化評価部による評価の結果を含む品質評価情報によって、検査対象の品質の変化をユーザに認識させることができる。ユーザは、品質評価情報により、検査対象の品質の変化をとらえ、検査処理に用いられる第1学習器の再学習の必要性を判断することができるので、ユーザに第1学習器
の再学習を促し、信頼性の高い検査を実現することができる。
ここで、良品画像は、学習済み第1学習器により良品と判定された検査対象を撮像して生成した検査画像と、学習済み第1学習器により不良と判定されたものの、後の目視工程により良品と判定された検査対象を撮像して生成した検査画像とを含む。
【0009】
また、本発明において、
前記品質変化評価部は、
前記良品画像に基づいて、前記品質を評価する品質評価指標を出力する品質評価部と、
前記品質評価指標を蓄積する品質評価指標蓄積部と、
前記品質評価指標蓄積部に蓄積された前記品質評価指標の所定期間にわたる変化に基づいて、前記品質の変化を判定する変化判定部と、
を有するようにしてもよい。
【0010】
これによれば、経時的に変化する品質評価指標の所定期間にわたる変化に基づいて、検査対象の品質の変化をとらえて、検査処理に用いられる第1学習器の再学習の必要性を判断することができるので、ユーザに第1学習器の再学習を促し、信頼性の高い検査を実現することができる。
【0011】
また、本発明において、
前記品質評価指標は、前記良品画像を学習データとして教師なし学習によって機械学習させて生成した学習済み第2学習器により出力される異常度であり、
前記変化判定部は、所定期間にわたる前記異常度の平均値及び標準偏差を算出し、該平均値及び該標準偏差を、それぞれ第1閾値及び第2閾値と比較して前記品質の変化を判定するようにしてもよい。
【0012】
これによれば、良品画像に基づいて学習済み第2学習器により出力される異常度によって、検検査対象の品質の変化をとらえて、検査処理に用いられる第1学習器の再学習の必要性を判断することができるので、ユーザに第1学習器の再学習を促し、信頼性の高い検査を実現することができる。
【0013】
前記第1閾値及び前記第2閾値の少なくともいずれかを自動で設定する設定部を備えるようにしてもよい。
【0014】
これによれば、第1閾値及び第2閾値が設定部によって自動で設定されるので、ユーザにより設定が不要になるとともに、機械学習等を用いた適切な設定が可能となる。
【0015】
また、本発明において、
前記品質変化評価部は、
前記良品画像を学習データとして教師なし学習によって機械学習させて生成した学習済み第3学習器により、クラスタリングを行い、外れ値の個数と、第3閾値とを比較して前記品質の変化を評価するようにしてもよい。
【0016】
これによれば、良品画像に基づいて学習済み第3学習器により行われるクラスタリングを用いて、検査対象の品質の変化をとらえて、検査処理に用いられる第1学習器の再学習の必要性を判断することができるので、ユーザに第1学習器の再学習を促し、信頼性の高い検査を実現することができる。
【0017】
また、本発明において、
前記第3閾値を自動で設定する第3閾値設定部を備えるようにしてもよい。
【0018】
第3閾値が第3閾値設定部によって自動で設定されるので、ユーザにより設定が不要になるとともに、機械学習等を用いた適切な設定が可能となる。
【0019】
また、本発明において、
前記品質評価情報は、前記第1学習器の再学習を勧める情報を含むようにしてもよい。
【0020】
これによれば、ユーザは、検査対象の品質の評価の結果を認識できるとともに、第1学習器の再学習を勧める情報によって、端的に第1学習器の再学習を促されることになるので、より確実な第1学習器の再学習が期待でき、信頼性の高い検査を実現することができる。
【0021】
また、本発明において、
前記品質評価情報は、前記検査対象に関する前工程の改善を勧める情報を含むようにしてもよい。
【0022】
これによれば、ユーザは、検査対象の品質の評価の結果を認識できるとともに、検査対象に関する前工程の改善を勧められるので、前工程の改善により検査対象の品質の改善を実現することができる。
【0023】
また、本発明において、
前記品質評価情報を表示する表示部を備えるようにしてもよい。
【0024】
これによれば、ユーザは、表示部を介して、品質評価情報の内容を視覚的に認識できる。
【0025】
また、本発明は、
前記品質評価装置と、
前記検査対象に対して前記学習済み第1学習器を用いた検査処理を実施する検査処理部と、該検査処理に供される前記検査画像と該検査処理による結果である前記検査結果を記憶する記憶部とを、備えた検査装置と
を含む検査管理システムである。
【0026】
これによれば、
ユーザは、品質評価装置の品質評価情報により、検査対象の品質の変化をとらえ、検査処理に用いられる第1学習器の再学習の必要性を判断することができるので、ユーザに第1学習器の再学習を促し、信頼性の高い検査を実現できる検査管理システムを構成することができる。
【0027】
また、本発明において、
前記第1学習器を再学習させる学習装置を含むようにしてもよい。
【0028】
これによれば、品質評価情報によって促された適宜のタイミングで第1学習器を再学習させることにより、信頼性の高い検査を実現できる検査管理システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、検査対象の品質の変化をとらえて、検査処理に用いられる教師あり機械学習による学習済み学習器の再学習を促すことで、信頼性の高い検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例1に係る製造設備の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係る検査装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施例1に係る管理装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の実施例1に係る品質評価情報の例を示す図である。
図5】本発明の実施例1に係る品質評価情報の他の例を示す図である。
図6】本発明の実施例1に係る品質評価情報の他の例を示す図である。
図7】本発明の実施例1に係る品質評価情報の他の例を示す図である。
図8】本発明の実施例1に係る教師あり学習装置の機能ブロック図である。
図9】本発明の実施例1に係る教師なし学習装置の機能ブロック図である。
図10】本発明の実施例2に係る管理装置の機能ブロック図である。
図11】本発明の実施例2に係る教師なし学習装置の機能ブロック図である。
図12】本発明の実施例2に係る品質評価を説明する図である。
図13】本発明の適用例2に係る品質評価情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1は、本発明が適用される管理装置10を含む管理システム1の概略構成を示す。図1は、管理システム1は、プリント基板の表面実装ラインにおける製造設備を構成するはんだ印刷装置X1、マウンタX2、及びリフロー炉X3の製造装置と、はんだ印刷検査装置Y1、部品検査装置Y2、外観検査装置Y3、X線検査装置Y4の検査装置を含む。
【0033】
外観検査装置Y3の検査処理に関する機能は、図2に示すようにカメラ31、情報処理装置32、表示装置33によって実現される。ここでは、検査プログラム記憶部324から読み出された検査プログラムがCPUによって実行されることによって、検査部323において検査画像に対する検査処理が実行される。検査プログラムとして、検査画像を学習データ、検査結果を教師データとして教師あり学習により機械学習された学習器215(図8参照)を用いる。検査対象である、量産されるプリント基板の品質は絶えず変化しているため、品質の変化が大きくなると教師あり学習による学習器によって正しく良否を判断することができなくなり、見過ぎや見逃しのリスクが大きくなる。このため、新しく得られた検査画像を用いて学習器を再学習させ、変化する品質に対応した検査プログラムにより検査を実施することが望ましい。検査部323は、本発明の検査処理部に対応する。
【0034】
図3に示す管理装置10では、検査装置から取得した検査画像のうち良品と判定された検査対象に対する検査画像である良品画像について、品質評価部103において品質評価プログラムによって品質評価を行う。さらに、品質変化判定部105では、蓄積された品質評価結果に基づき、検査対象の品質の変化を評価する。そして、品質評価情報生成部106では、品質の変化に関する評価結果を含む品質評価情報を生成し、表示部107に表示させる。
【0035】
具体的には、品質評価プログラムは、図9に示すような学習装置22により、教師なし学習により機械学習させた学習器であり、学習用の良品画像を学習データとするVAE等の教師なしAIモデルである。
【0036】
品質評価情報71は、例えば、図4に示すような情報を含む。管理図711は、量産データである良品画像を品質評価プログラムに入力することにより出力された異常度について、所定期間の平均値をプロットして破線で示し、実線の縦棒により所定期間の異常度の
標準偏差を示すものである。品質評価情報71の表示領域712に表示された閾値(異常度)と表示領域714に表示された閾値(バラつき)には、それぞれの値として「0.5」と「0.4」が設定されている。管理図711において、異常度の値が、横軸に平行な実線で示された閾値(異常度)が超えており、また、縦棒で示された標準偏差も閾値(バラつき)を超えている。
【0037】
品質評価情報71では、設定された閾値(異常度)及び閾値(バラつき)と、管理図711に示された異常度の変化に基づいて、検査対象の品質を総合的に評価した総合評価を表示している。ここでは、「品質にばらつきがあり、変化もあります。工程の見直しとAIモデルの再学習をお勧めします。」とのメッセージが表示される。ユーザは、これにより量産されるプリント基板の品質の変化が大きく、工程の見直しと検査プログラムの学習器の再学習が必要であることを認識することができる。したがって、適時に検査プログラムの学習器を再学習させることにより、信頼性の高い検査が可能となる。ここでは、上述のメッセージが、本発明の検査対象に関する前工程の改善を勧める情報に対応する。
【0038】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係る管理システム1ついて、図面を用いて、より詳細に説明する。
(システム構成)
図1は、本実施例に係るプリント基板の表面実装ラインにおける製造設備の構成例を模式的に示している。表面実装(Surface Mount Technology:SMT)とはプリント基板の表面に電子部品をはんだ付けする技術であり、表面実装ラインは、主として、はんだ印刷~部品のマウント~リフロー(はんだの溶着)の三つの工程から構成される。
【0039】
図1に示すように、表面実装ラインでは、製造装置として、上流側から順に、はんだ印刷装置X1、マウンタX2、リフロー炉X3が設けられる。はんだ印刷装置X1は、スクリーン印刷によってプリント基板上の電極部(ランドと呼ばれる)にペースト状のはんだを印刷する装置である。マウンタX2は、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置するための装置であり、チップマウンタとも呼ばれる。リフロー炉X3は、はんだペーストを加熱溶融した後、冷却を行い、電子部品を基板上にはんだ接合するための加熱装置である。基板に実装する電子部品の数や種類が多い場合には、表面実装ラインに複数台のマウンタX2が設けられることもある。
【0040】
また、表面実装ラインには、はんだ印刷~部品のマウント~リフローの各工程の出口で基板の状態を検査し、不良あるいは不良のおそれを自動で検出するシステムが設置されている。当該システムは、良品と不良品の自動仕分けの他、検査結果やその分析結果に基づき各製造装置の動作にフィードバックする機能(例えば、実装プログラムの変更など)も有している。
【0041】
はんだ印刷検査装置Y1は、はんだ印刷装置X1から搬出された基板に対し、はんだペーストの印刷状態を検査するための装置である。はんだ印刷検査装置Y1では、基板上に印刷されたはんだペーストを2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、はんだの体積・面積・高さ・位置ずれ・形状などがある。はんだペーストの2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0042】
部品検査装置Y2は、マウンタX2から搬出された基板に対し、電子部品の配置状態を検査するための装置である。部品検査装置Y2では、はんだペーストの上に載置された部
品(部品本体、電極など部品の一部でもよい)を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、角度(回転)ずれ、欠品(部品が配置されていないこと)、部品違い(異なる部品が配置されていること)、極性違い(部品側と基板側の電極の極性が異なること)、表裏反転(部品が裏向きに配置されていること)、部品高さなどがある。はんだ印刷検査と同様、電子部品の2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0043】
外観検査装置Y3は、リフロー炉X3から搬出された基板に対し、はんだ付けの品質を検査するための装置である。外観検査装置Y3では、リフロー後のはんだ部分を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、部品検査と同じ項目に加え、はんだフィレット形状の良否なども含まれる。はんだの形状計測には、上述したレーザ変位計、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などの他、いわゆるカラーハイライト方式(R、G、Bの照明を異なる入射角ではんだ面に当て、各色の反射光を天頂カメラで撮影することで、はんだの3次元形状を2次元の色相情報として検出する方法)を用いることができる。
【0044】
図2は、外観検査装置Y3の、検査処理に関する機能の概略構成を示すブロック図である。外観検査装置Y3の検査処理機能は、主として、カメラ31、情報処理装置32、表示装置33によって実現される。情報処理装置32は、CPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。
【0045】
検査対象である基板をカメラ31によって撮影した画像を、画像取得部321が取得する。画像取得部321によって取得された画像に対して検査画像生成部322が、所定の処理を行うことにより検査画像を生成する。検査部323は、検査プログラムを実行することにより、検査画像をもとに、所定の指標を計測(計算)し、これらの計測値を用いて検査対象の状態を検査し、良否を判定する。ここで、実行される検査プログラムは、教師あり学習によって学習された学習器を含むプログラムである。検査プログラム記憶部324は、検査部323において実行される検査プログラムを記憶している。結果出力部325は、検査部323による検査結果を画面出力し、表示装置33に表示させる。検査結果記憶部326は、検査画像と検査結果を関連付けて記憶する。通信インタフェース327は、ネットワーク(LAN)を介して接続された管理装置10、プログラム管理サーバ20等と通信を行うためのインタフェースである。ここで、検査結果記憶部326に記憶される検査画像及び検査結果には、検査プログラムによって不良と判定されたものの、後の目視工程で良品と判定された検査画像(過検出された検査画像)に対するものも含まれる。
【0046】
検査結果記憶部326に記憶された検査画像及び検査結果は、通信インタフェース327を介して、管理装置10に送信される。また、検査プログラムは、プログラム管理サーバ20によって再学習され、プログラム管理サーバ20から通信インタフェース327を介して検査プログラム記憶部324に送信され、記憶される。ここでは、外観検査装置Y3について、検査処理に関する機能の概略を説明したが、他の検査装置も同様の機能構成を有する。
【0047】
X線検査装置Y4は、X線像を用いて基板のはんだ付けの状態を検査するための装置である。例えば、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などのパッケージ部品や多層基板の場合には、はんだ接合部が部品
や基板の下に隠れているため、外観検査装置Y3では(つまり外観画像では)はんだの状態を検査することができない。X線検査装置Y4は、このような外観検査の弱点を補完するための装置である。X線検査装置Y4の検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、はんだ高さ、はんだ体積、はんだボール径、バックフィレットの長さ、はんだ接合の良否などがある。なお、X線像としては、X線透過画像を用いてもよいし、CT(Computed Tomography)画像を用いることも好ましい。
【0048】
(管理装置)
上述した製造装置X1~X3及び検査装置Y1~Y4は、ネットワーク(LAN)を介して管理装置10に接続されている。管理装置10は、製造装置X1~X3および検査装置Y1~Y4の管理や制御を担うシステムであり、図示しないが、CPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、表示装置などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。後述する管理装置10の機能は、補助記憶装置に格納されたプログラムをCPUが読み込み実行することにより実現される。
【0049】
なお、管理装置10は、1台のコンピュータにより構成してもよいし、複数のコンピュータにより構成してもよい。あるいは、製造装置X1~X3や検査装置Y1~Y4のいずれかの装置が内蔵するコンピュータに、管理装置10の機能の全部又は一部を実装することも可能である。あるいは、管理装置10の機能の一部をネットワーク上のサーバ(クラウドサーバなど)により実現してもよい。
【0050】
管理装置10には、ネットワーク(LAN)を介して、プログラム管理サーバ20が接続される。また、プログラム管理サーバ20は、検査プログラム及び品質評価プログラムを管理するサーバである。プログラム管理サーバ20は、CPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、表示装置などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。検査プログラムは、検査装置Y1~Y4における検査処理を実現するプログラムであり、プログラム管理サーバ20の所定の記憶領域に記憶される一方で、必要に応じて検査装置Y1~Y4のそれぞれにダウンロードされ、各装置の所定の記憶領域に記憶され、各装置において実行される。品質評価プログラムは、管理装置10における品質評価処理を実現するプログラムであり、プログラム管理サーバ20の所定の記憶領域に記憶される一方で、必要に応じて管理装置10にダウンロードされ、品質評価プログラム記憶部109に記憶され、管理装置において実行される。プログラム管理サーバ20は、検査プログラム、品質評価プログラムに限らず、製造装置X1~X3や検査装置Y1~Y4を制御する各種プログラムを管理してもよい。
【0051】
本実施形態の管理装置10は、製造設備の管理者が設備のメンテナンス及び品質管理を効率的に行うための機能を実現するための機能部を有している。図2に、管理装置10が有する品質評価に関する各機能部のブロック図を示す。ここでは、管理装置10が本発明の品質評価装置に対応し、管理システム1が本発明の検査管理システムに対応する。
【0052】
図3に示すように、管理装置10は、検査画像・検査結果取得部101、検査画像・検査結果データベース(DB)、品質評価部103、評価結果蓄積部104、品質変化判定部105、品質評価情報生成部106、表示部107、入力部108、品質評価プログラム記憶部109の各部を有している。ここでは、品質評価部103、評価結果蓄積部104及び品質変化判定部105が本発明の品質変化評価部に対応する。また、品質評価部103、評価結果蓄積部104、品質変化判定部105は、それぞれ本発明の品質評価部、品質評価蓄積部、変化判定部に対応する。また、品質評価情報生成部106が本発明の品質評価情報生成部に対応する。
【0053】
検査画像・検査結果取得部101は、検査装置Y1~Y4による検査画像と、これに関連付けられた検査結果とが検査装置Y1~Y4から取得する。検査画像・検査結果取得部101によって取得された検査画像及び検査結果は検査画像・検査結果DBに記憶される。ここでは、検査画像には、検査日時や線対称の品番等の情報も関連付けられており、これらの情報も併せて取得され、記憶される。
【0054】
品質評価部103は、オートエンコーダ等の、教師なし学習によって学習された学習済みの学習器に、検査画像を入力することによって得られた出力によってプリント基板の品質を評価する機能を有する。ここで、品質評価部103に入力されるのは、検査画像・検査結果DB102に記録された検査画像のうち、良品と判定されたプリント基板の検査画像である。なお、良品と判定された検査画像には、検査装置における検査プログラムによって不良と判定されたものの、後の目視工程により良品と判定されたプリント基板に対する検査画像も含まれる。ここで用いられる学習済み学習器は、1次元の数値を出力し、これを異常度と呼ぶ。品質の評価に用いる検査画像は、適宜サンプリングすることができる。例えば、1時間に1回のサンプリング結果を所定期間蓄積し、異常度を算出する。ここで、異常度は、本発明の品質評価指標に対応する。
【0055】
品質評価部103において算出された異常度は、評価結果蓄積部104に蓄積される。ここでは、評価結果蓄積部104は、本発明の品質評価指標蓄積部に対応する。
【0056】
品質変化判定部105では、評価結果蓄積部104に蓄積された異常度の経時的な変化を分析し、プリント基板の品質の変化を評価する。具体的には、異常度の変化と設定された閾値と比較して判断する。異常度は、上述のように、所定期間にわたって蓄積された異常度の平均値を当該期間の異常度とし、標準偏差を異常度のバラつきとする。ここでは、異常度の値に関する閾値(異常度)と、異常度のバラつきに関する閾値(バラつき)の2つの閾値が設定される。この閾値(異常度)と、閾値(バラつき)は、入力部108を介してユーザがあらかじめ入力する。閾値(異常度)及び閾値(バラつき)は、それぞれ本発明の第1閾値及び第2閾値に対応する。
【0057】
品質評価情報生成部106では、品質変化判定部105による評価結果に基づいて、品質評価情報を生成し、表示部107に表示させる。
図4は、品質評価情報71の表示例を示す。品質評価情報71内の各情報を指示する枠線及び引き出し線は、品質評価情報71の要素と区別するために点線で表示している。
【0058】
品質評価情報71の中央には、管理図711が表示される。ここでは、品番Aの管理図が表示されている。管理図711は、検査画像が取得された期間を横軸にとり、異常度を縦軸にとっている。異常度は、対象期間の平均値をプロットして破線で示し、実線の縦棒で標準偏差を示している。また、縦軸には、異常度の閾値が実線で表示されている。
【0059】
管理図711の下方には、閾値(異常度)の表示領域712が配置されており、現在設定されている「0.5」が表示されている。閾値(異常度)の表示領域712は入力フィールドになっており、数値を入力し、右横の設定ボタン713をクリック等により指定することにより、閾値(異常度)を変更することができる。閾値(異常度)の表示領域712の下方には、閾値(バラつき)の表示領域714が配置されており、現在設定されている「0.4」が表示されている。閾値(バラつき)の表示領域712は入力フィールドになっており、数値を入力し、右横の設定ボタン713をクリック等して押下することにより、閾値(バラつき)を変更することができる。
【0060】
上述のように、閾値(異常度)及び閾値(バラつき)をユーザが入力し設定できるよう
にしてもよいが、閾値(異常度)及び閾値(バラつき)の履歴を所定の記憶領域に記憶しておき、閾値(異常度)及び閾値(バラつき)の履歴と、評価結果蓄積部104に蓄積された評価結果の履歴等に基づき、機械学習等によって適切な閾値(異常度)及び閾値(バラつき)を品質変化判定部105によって設定したり、ユーザに推奨値を教示したりしてもよい。閾値(異常度)及び閾値(バラつき)のいずれか一方のみをユーザが入力し、他方を自動設定し、又は推奨値を教示するようにしてもよい。ここでは、品質変化判定部105が、本発明の設定部に対応する。
【0061】
管理図711の上方には、総合評価表示領域716が配置されている。総合評価表示領域716には品質に関するに関するメッセージが表示される。この総合評価は、管理図711に表示された異常度の変化に基づいたものである。管理図711では、異常度が閾値(異常度)を超えるとともに、バラつきも閾値(バラつき)を超ええている。このため、総合評価表示領域716には、品質の総合評価として、「品質にばらつきがあり、変化もあります。工程の見直しとAIモデルの再学習をお勧めします。」とのメッセージが表示され、検査に用いられている検査プログラムの学習器を再学習させるべきタイミングであることをユーザに報知している。
【0062】
このように、検査対象の品質の変化をとらえて、品質評価情報71等が表示部107に表示され、ユーザに検査プログラムの学習器の再学習を勧めるメッセージが表示されて再学習が促されることで、信頼性の高い検査を実現することができる。
【0063】
品質評価情報71の左側には、品番表示領域717が配置されている。検査プログラムは、部品種ごとにAIモデルを生成しており、1部品種の中には複数の品番が含まれる。ここでは、検査に用いられているQFP用AIモデルには、品番A、品番B、品番Cに対するものが含まれることが示されている。これらの品番の表示は、工程の見直しやAIモデルの再学習のアラームが出ている場合には、品番の表示が白色とは異なる赤色等の色で表示される。ここでは、品番Aの表示717aが異なる色で表示されている。このような表示により、ユーザは対応の必要な品番を明瞭に認識することができる。また、各品番表示717a等はボタンになっており、これらのボタンをクリック等して押下することにより、該当する品番の管理図に表示が切り替わる。また、QFP用AIモデルの表示717bをクリック等して押下することにより、全体の管理図を確認することができる。
【0064】
品質評価情報71の右側には、代表データの表示領域718が配置されている。ここでは、品質変化判定部105でサンプリングした検査画像のうち各期間の代表データを時系列で表示している。これによって、総合評価の妥当性を目視でも確認することができる。代表データの表示領域718の下方に配置された再選択ボタン719をクリック等して押下することにより、代表データが当該期間の他の検査画像に切り替えることできる。
【0065】
図5は、他の品質評価情報72の表示例を示す。品質評価情報71と共通する情報については、説明を省略する。ここでは、管理図721と総合評価表示領域716が品質評価情報71とは異なっている。管理図721では、異常度は、閾値(異常度)を超えてはいないが、閾値(バラつき)を超えている。このため、総合評価表示領域726には、品質の総合評価として、「品質にばらつきがあります。工程の見直しをお勧めします。」とのメッセージが表示され、工程の見直しをすべきことをユーザに報知している。
【0066】
図6は、他の品質評価情報73の表示例を示す。品質評価情報71と共通する情報については、説明を省略する。ここでは、品質評価情報71と共通する情報については、説明を省略する。ここでは、管理図731と総合評価表示領域736が品質評価情報71とは異なっている。管理図731では、異常度は、閾値(異常度)を超えているが、閾値(バラつき)を超えていない。このため、総合評価表示領域736には、品質の総合評価とし
て、「品質に変化があります。AIモデルの再学習をお勧めします。」とのメッセージが表示され、検査プログラムの学習器を再学習させるべきタイミングであることをユーザに報知している。
【0067】
図7は、他の品質評価情報74の表示例を示す。品質評価情報71と共通する情報については、説明を省略する。ここでは、品質評価情報71と共通する情報については、説明を省略する。ここでは、管理図731と総合評価表示領域736と品番表示領域747が品質評価情報71とは異なっている。管理図741では、異常度は、閾値(異常度)も閾値(バラつき)を超えていない。このため、総合評価表示領域746には、品質の総合評価として、「品質は安定しています。」とのメッセージが表示される。また、品番表示領域747の品番Aの表示747aが白色で表示され、アラームが出ていないことを示している。
【0068】
このように、管理装置10において、検査プログラムの学習器を再学習するタイミングをユーザに教示することができる。
【0069】
品質変化判定部105によって、検査プログラムの学習器の再学習が勧められ、ユーザが検査プログラムの学習器の再学習を指示すると、管理するプログラム管理サーバ20が、検査プログラムの再学習を行う。このとき、プログラム管理サーバ20は、品質評価プログラムの学習器も再学習させる。このように、検査プログラムの再学習と併せて品質評価プログラムも再学習させることにより、品質変化に即応した検査と品質評価が可能となる。
【0070】
図8に、検査プログラムを学習させる学習装置21について説明する。この学習装置21は、プログラム管理サーバ20に構成される。学習装置21は、学習用検査画像取得部211、学習用検査結果取得部212、学習データ記憶部213、学習処理部214、学習器215を含む。再学習の場合には、学習データの対象が、再学習された時期に至るまでの直近の期間の検査画像及び検査結果となる。ここでは、学習器215が、本発明の第1学習器に対応する。学習装置21が、本発明の学習装置に対応する。
【0071】
学習用検査画像取得部211は、検査画像・検査結果DB102から、再学習させるための検査画像を取得する。学習用検査結果取得部212は、検査画像・検査結果DB102から、当該検査画像の検査結果を取得する。
【0072】
学習用検査画像取得部211及び学習用検査結果取得部212を介して取得された、学習用検査画像と学習用検査結果は、プログラム管理サーバ20の補助記憶装置の所定領域である学習データ記憶部213に記憶される。
【0073】
学習処理部214は、学習データ記憶部に213に記憶された学習用検査画像を入力すると検査結果を出力するように、学習器の機械学習を行う。学習処理部214は、プログラム管理サーバ20のCPUが補助記憶装置の所定領域に記憶された学習モデル生成プログラムを読み出して実行することにより実現される。ここで、学習器は、学習用検査画像を学習データ、学習用検査結果を教師データとして、例えば、モデルをニューラルネットワークにより計算するプログラムであるが、これに限られない。
【0074】
学習処理部214における学習器の機械学習が、多数の学習データに対して繰り返されることにより、学習済みの学習器215が得られる。このようにして得られた学習器215は、補助記憶装置の所定領域である学習結果データ記憶部216に記憶される。学習結果データ記憶部216に記憶された学習済みの学習器215は、例えば、検査機Y3の検査プログラム記憶部324に送信され、記憶される。
【0075】
図9に、品質評価プログラムを学習させる学習装置22について説明する。この学習装置22は、プログラム管理サーバ20に構成される。学習装置22は、学習用良品画像取得部221、学習データ記憶部222、学習処理部214、学習器224を含む。再学習の場合には、学習データの対象が、再学習される時期に至るまでの直近の期間の良品画像となる。ここでは、学習器224が、本発明の第2学習器に対応する。
【0076】
学習用良品画像取得部221は、検査画像・検査結果DB102から、良品と判断された検査画像を取得する。
【0077】
学習用良品画像取得部221を介して取得された、学習用の良品画像は、プログラム管理サーバ20の補助記憶装置の所定領域である学習データ記憶部222に記憶される。
【0078】
学習処理部223は、学習データ記憶部222に記憶された学習用良品画像を入力すると異常度を出力するように、学習器の機械学習を行う。学習処理部223は、プログラム管理サーバ20のCPUが補助記憶装置の所定領域に記憶された学習モデル生成プログラムを読み出して実行することにより実現される。ここで、学習器は、学習用の良品画像を学習データとするVAE等の教師なしAIモデルである。
【0079】
学習処理部223における学習器の機械学習が、多数の学習データに対して繰り返されることにより、学習済みの学習器224が得られる。このようにして得られた学習器224は、補助記憶装置の所定領域である学習結果データ記憶部225に記憶される。学習結果データ記憶部225に記憶された学習済み学習器224は、品質評価プログラム記憶部109に送信され、記憶される。
【0080】
〔実施例2〕
以下では、本発明の実施例2に係る管理システム2について説明する。実施例1と共通の構成については同様の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0081】
実施例2に係る管理システム2の全体構成並びに検査装置Y1~Y4及び学習装置21の機能構成は、実施例1と同様である。図10に実施例2に係る管理装置11が有する品質評価に関する各機能部のブロック図を示す。実施例2では、、品質評価プログラムが実施例1とは異なるのに伴い、管理装置11の品質評価部203、評価結果蓄積部204、品質変化判定部205及び品質評価情報生成部206の機能、品質評価情報の構成、学習装置23の構成が実施例1とは異なる。ここでは、管理装置11が本発明の品質評価装置に対応し、管理システム2が本発明の検査管理システムに対応する。
【0082】
図11に実施例2に係る品質評価プログラムを機械学習させる学習装置23の概略機能構成を示す。学習装置23は、プログラム管理サーバ20に構成される。学習装置23は、学習用良品画像取得部231、学習データ記憶部232、学習処理部233、学習器234を含む。再学習の場合には、学習データの対象が、再学習される時期に至るまでの直近の期間の良品画像となる。ここでは、学習器234が、本発明の第3学習器に対応する。
【0083】
学習用良品画像取得部231は、検査画像・検査結果DB102から、良品と判断された検査画像を取得する。
【0084】
学習用良品画像取得部231を介して取得された、学習用の良品画像は、プログラム管理サーバ20の補助記憶装置の所定領域である学習データ記憶部232に記憶される。
【0085】
学習処理部233は、学習データ記憶部232に記憶された学習用良品画像を入力すると良品画像の特徴量を次元圧縮することにより、2次元平面上にマッピングし、マッピングされた各良品画像をクラスタリングするように、学習器の機械学習を行う。学習処理部223は、プログラム管理サーバ20のCPUが補助記憶装置の所定領域に記憶された学習モデル生成プログラムを読み出して実行することにより実現される。ここで、学習器は、学習用の良品画像を学習データとする主成分分析(PCA)等の教師なしAIモデルである。
【0086】
学習処理部233における学習器の機械学習が、多数の学習データに対して繰り返されることにより、学習済みの学習器234が得られる。このようにして得られた学習器234は、補助記憶装置の所定領域である学習結果データ記憶部235に記憶される。学習結果データ記憶部235に記憶された学習済み学習器234は、品質評価プログラム記憶部109に送信され、記憶される。図12(A)に、学習済み学習器234の出力例を示す。2次元面S上に学習させた良品画像を表すポイントL1、ポイントL2等がマッピングされ、これらのポイントL1等を囲む円Cによってクラスタリングされている。
【0087】
実施例2の品質評価部203では、このようにして生成された品質評価プログラムによって、検査画像・検査結果から取得した量産データの良品画像をマッピングする。図12(B)が、学習済み学習器234に量産データである良品画像を入力し、2次元面S上にマッピングされた2次元マップを示す。ここでは、学習データである良品画像を黒色のポイントで表示し、量産データである良品画像を灰色のポイントで表示している。図12(B)に示す状態では、量産データである良品画像を示すポイントP1、ポイントP2等が、2次元面S上にマッピングされているが、量産データである良品画像を示すポイントP1等は、いずれも円C1で示されるクラスタに含まれている。
【0088】
実施例2の品質評価部203では、上述のように、検査画像・検査結果DBから取得した量産データである良品画像をサンプリングしてマッピングし、2次元マップを出力する。2次元マップは評価結果蓄積部204に蓄積する。
【0089】
実施例2の品質変化判定部205では、品質評価部203によって生成された2次元マップにおいて、クラスタから外れる外れ値である良品画像を示すポイントの数をカウントする。図11(B)に示すように、量産データである良品画像が逐次マッピングされていくと、品質が変化した場合に、外れ値として、クラスタCから外れた位置にマッピングされるデータが現れる。図12(C)では、学習用良品画像を示すポイントL1等、量産データである良品画像L1等を含むクラスタCから外れた位置に、量産データである良品画像を示すポイントO1がマッピングされている。品質変化判定部205では、このような外れ値の個数をカウントし、外れ値の個数と閾値とを比較し、閾値を超えたか否かを判断する。
【0090】
実施例2においても、品質評価情報生成部206は、品質変化判定部205による評価結果に基づいて、品質評価情報を生成し、表示部107に表示させる。
図13は、実施例2に係る品質評価情報75の表示例を示す。品質評価情報75内の各情報を指示する枠線及び引き出し線は、品質評価情報75の要素と区別するために点線で表示している。
【0091】
品質評価情報75の中央右側には、2Dマップ751が表示されている。2Dマップ751には、品質評価の対象となっている品番(ここでは「品番A」)と、いつの時点での評価データであるのかを示す日付(評価日)も表示される。表示される品質評価情報75の評価日はユーザが適宜指定することができる。2Dマップは上述のように、品質評価プログラムに量産データである良品画像を入力し、学習用の良品画像から生成された2Dマ
ップ上にマッピングしたものである。2Dマップ751のクラスタCには学習用の良品画像を示すポイントL1等と、量産データである良品画像を示すポイントP1等が含まれている。2Dマップ751には、さらに、外れ値として、クラスタCの外に、量産データである良品画像を示すポイントO1、O2、O3及びO4の4つのポイントが配置されている。外れ値である良品画像を示すポイントO4にカーソルを合わせると、当該ポイントに対応する良品画像データと、当該良品画像Im4が検査された検査日とともにポップアップ表示される。
【0092】
品質評価情報75の2Dマップ751の下方には、閾値(アラーム個数)の表示領域752が配置されており、現在設定されている「4」が表示されている。閾値(アラーム個数)の表示領域752は入力フィールドになっており、数値を入力し、右横の設定ボタン753をクリック等により指定することにより、閾値(アラーム個数)を変更することができる。この閾値(アラーム個数)は、2Dマップ上に配置される量産データの外れ値の個数が閾値(アラーム個数)以上となったときに、工程の見直し又は検査プログラムの学習器の再学習をユーザに勧めるアラームを出すためのものである。ここでは、閾値(アラーム個数)が、本発明の第3閾値に対応する。
【0093】
上述のように、閾値(アラーム個数)をユーザが入力し設定できるようにしてもよいが、閾値(異常度)及び閾値(アラーム個数)の履歴を所定の記憶領域に記憶しておき、閾値(アラーム個数)の履歴と、評価結果蓄積部204に蓄積された評価結果の履歴等に基づき、機械学習等によって適切な閾値(アラーム個数)を品質変化判定部205によって設定したり、ユーザに推奨値を教示したりしてもよい。ここでは、品質変化判定部205が、本発明の閾値設定部に対応する。
【0094】
品質評価情報75の上方には、総合評価表示領域754が配置されている。総合評価表示領域754には品質に関するメッセージが表示される。この総合評価は、2Dマップ751における外れ値の個数に基づいたものである。閾値(アラーム個数)の表示領域752に表示されているように、現在の閾値(アラーム個数)は4である。これに対して2Dマップ751には、外れ値としてポイントO1、O2、O3及びO4の4つのポイントがマッピングされているので、外れ値の個数は、閾値(アラーム個数)と等しくなっている。そのため、品質変化判定部105は、品質が変化したと評価し、総合評価表示領域754に、「品質が変化しました。工程の見直しもしくはAIモデルの再学習をお勧めします。」とのメッセージが表示され、工程を見直すか、検査に用いられている検査プログラムの学習器を再学習させるべきであることをユーザに報知している。
【0095】
このように、検査対象の品質の変化をとらえて、品質評価情報75が表示部107に表示され、ユーザに検査プログラムの学習器の再学習を勧めるメッセージが表示されて再学習が促されることで、信頼性の高い検査を実現することができる。
【0096】
品質評価情報75の左側には、品番表示領域755が配置されている。検査プログラムは、部品種ごとにAIモデルを生成しており、1部品種の中には複数の品番が含まれる。ここでは、検査に用いられているQFP用AIモデルには、品番A、品番B、品番Cに対するものが含まれることが示されている。これらの品番の表示は、工程の見直しやAIモデルの再学習のアラームが出ている場合には、品番の表示が白色とは異なる赤色等の色で表示される。ここでは、品番Aの表示755aが異なる色で表示されている。このような表示により、ユーザは対応の必要な品番を明瞭に認識することができる。また、各品番表示755a等はボタンになっており、これらのボタンをクリック等して押下することにより、該当する品番の2Dマップに表示が切り替わる。また、QFP用AIモデルの表示755bをクリック等して押下することにより、全体の2Dマップを確認することができる。
【0097】
<付記1>
検査対象を撮像して生成した検査画像を学習データとし、検査結果を教師データとして機械学習させて生成した学習済み第1学習器(215)を用いた検査処理において良品と判定された該検査画像である良品画像を取得する良品画像取得部(101)と、
前記検査対象の品質の変化を評価する品質変化評価部(103、104、105と、
前記評価の結果を含む品質評価情報を生成する品質評価情報生成部(106)と、
を備えた品質評価装置(10)。
【符号の説明】
【0098】
10、11 :管理装置
103 :品質評価部
104 :評価結果蓄積部
105 :品質変化評価部
106 :品質評価情報生成部
215 :学習器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13