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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140969
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20220921BHJP
   F25B 41/40 20210101ALI20220921BHJP
【FI】
F25B9/14 530Z
F25B41/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041071
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】黒元 貴大
(72)【発明者】
【氏名】松村 陽介
(57)【要約】
【課題】極低温冷凍機のディスプレーサとその駆動シャフトの連結部のガタつきによる振動を低減する。
【解決手段】極低温冷凍機は、蓋部24aと本体部24bを有するディスプレーサ24と、蓋部24aと本体部24bとの間に保持されるカラー部72を有するディスプレーサ駆動シャフト26と、カラー部72と蓋部24aの間の、またはカラー部72と本体部24bの間のクリアランスに配置される緩衝体78であって、軟質材78aと、軟質材78aに対してカラー部72と反対側に配置される硬質材78bとを有する緩衝体78と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部と本体部を有するディスプレーサと、
前記蓋部と前記本体部との間に保持されるカラー部を有するディスプレーサ駆動シャフトと、
前記カラー部と前記蓋部の間の、または前記カラー部と前記本体部の間のクリアランスに配置される緩衝体であって、軟質材と、前記軟質材に対して前記カラー部と反対側に配置される硬質材とを有する緩衝体と、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記硬質材は、片側で前記軟質材と接触し、反対側で前記蓋部または前記本体部と接触し、
前記硬質材が前記軟質材と接触する面積が、前記硬質材が前記蓋部または前記本体部と接触する面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記カラー部は、径方向に差し込まれる連結ピンにより前記ディスプレーサ駆動シャフトとピン結合され、前記連結ピンは前記カラー部とともに前記蓋部と前記本体部との間に配置され、
前記蓋部は、前記本体部に取り付けられ前記ディスプレーサ駆動シャフトが貫通している板状部と、前記連結ピンが差し込まれた軸方向高さで前記ディスプレーサ駆動シャフトを囲むように前記板状部から前記本体部に向かって突出した周壁部とを備え、
前記周壁部は、前記連結ピンの両端それぞれの径方向外側で径方向に薄肉化された薄肉部と、前記薄肉部どうしを周方向に接続する厚肉部とを有し、前記硬質材と前記薄肉部および前記厚肉部で接触することを特徴とする請求項2に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記軟質材は、圧縮された状態で前記硬質材と前記カラー部に挟まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の極低温冷凍機。
【請求項5】
前記カラー部は、前記ディスプレーサ駆動シャフトの先端部で径方向に延出し、
前記軟質材は、前記カラー部上で前記ディスプレーサ駆動シャフトまわりに配置されるリング形状を有し、前記リング形状は、前記ディスプレーサ駆動シャフトに沿う軸方向厚さよりも径方向幅が大きい矩形状の断面を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷凍機には、たとえばギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機のように、作動ガスの膨張空間の容積を周期的に変化させるために往復動するディスプレーサを有するものがある。膨張空間の周期的な容積変動と適切に同期して膨張空間の圧力を変動させることにより、極低温冷凍機に冷凍サイクルが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-71834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスプレーサの往復動を駆動する代表的な方式の1つとして、電気モータなどの駆動源をディスプレーサに機械的に連結するタイプがある。ディスプレーサには、これを駆動するためのシャフトが機械的に連結される。この連結部には、組立性の向上の観点から、あるいは、部品の寸法精度に起因して、若干のガタつきが設けられる。極低温冷凍機の運転中、膨張空間の周期的な冷媒ガスの圧力変動がディスプレーサに作用するので、連結部のガタつきは、極低温冷凍機に振動を発生させる原因となりうる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、極低温冷凍機のディスプレーサとその駆動シャフトの連結部のガタつきによる振動を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、蓋部と本体部を有するディスプレーサと、蓋部と本体部との間に保持されるカラー部を有するディスプレーサ駆動シャフトと、カラー部と蓋部の間の、またはカラー部と本体部の間のクリアランスに配置される緩衝体であって、軟質材と、軟質材に対してカラー部と反対側に配置される硬質材とを有する緩衝体と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、極低温冷凍機のディスプレーサとその駆動シャフトの連結部のガタつきによる振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ある実施形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図2図1に示される極低温冷凍機の膨張機の駆動機構を概略的に示す分解斜視図である。
図3図3(a)および図3(b)はそれぞれ、実施の形態に係り、ディスプレーサとディスプレーサ駆動シャフトの連結部を示す一部切り欠き斜視図および断面図である。
図4図4(a)および図4(b)はそれぞれ、実施の形態に係り、図3(a)および図3(b)とは別の方向から見たディスプレーサとディスプレーサ駆動シャフトの連結部を示す一部切り欠き斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
図1は、ある実施形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。図2は、図1に示される極低温冷凍機の膨張機の駆動機構を概略的に示す分解斜視図である。
【0011】
極低温冷凍機10は、作動ガス(冷媒ガスともいう)を圧縮する圧縮機12と、作動ガスを断熱膨張により冷却する膨張機14とを備える。作動ガスは例えばヘリウムガスである。膨張機14はコールドヘッドとも呼ばれる。膨張機14には作動ガスを予冷する蓄冷器16が備えられている。極低温冷凍機10は、圧縮機12と膨張機14とを各々が接続する第1管18aと第2管18bを含むガス配管18を備える。図示される極低温冷凍機10は、単段式のGM冷凍機である。
【0012】
知られているように、第1高圧を有する作動ガスが圧縮機12の吐出口12aから第1管18aを通じて膨張機14に供給される。膨張機14における断熱膨張により、作動ガスは第1高圧からそれより低い第2高圧に減圧される。第2高圧を有する作動ガスは、膨張機14から第2管18bを通じて圧縮機12の吸入口12bに回収される。圧縮機12は、回収された第2高圧を有する作動ガスを圧縮する。こうして作動ガスは再び第1高圧に昇圧される。一般に第1高圧及び第2高圧はともに大気圧よりかなり高い。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。通例、高圧は例えば2~3MPaであり、低圧は例えば0.5~1.5MPaである。高圧と低圧との差圧は例えば1.2~2MPa程度である。
【0013】
膨張機14は、膨張機可動部分20と膨張機静止部分22とを備える。膨張機可動部分20は、膨張機静止部分22に対し軸方向(図1における上下方向)に往復移動可能であるよう構成されている。膨張機可動部分20の移動方向を図1に矢印Aで示す。膨張機静止部分22は、膨張機可動部分20を軸方向に往復移動可能に支持するよう構成されている。また、膨張機静止部分22は、膨張機可動部分20を高圧ガス(第1高圧ガス及び第2高圧ガスを含む)とともに収容する気密容器として構成されている。
【0014】
膨張機可動部分20は、ディスプレーサ24と、その往復移動を駆動するディスプレーサ駆動シャフト26とを含む。ディスプレーサ24には蓄冷器16が内蔵されている。ディスプレーサ24の内部空間に蓄冷材が充填され、それによりディスプレーサ24内に蓄冷器16が形成される。ディスプレーサ24は、例えば、軸方向に延在する実質的に円柱状の形状を有し、軸方向において実質的に一様な外径及び内径を有する。よって、蓄冷器16も、軸方向に延在する実質的に円柱状の形状を有する。
【0015】
膨張機静止部分22は、大まかに、シリンダ28及び駆動機構ハウジング30からなる二部構成を有する。膨張機静止部分22の軸方向上部が駆動機構ハウジング30であり、膨張機静止部分22の軸方向下部がシリンダ28であり、これらは相互に堅く結合されている。シリンダ28は、ディスプレーサ24の往復移動を案内するよう構成されている。シリンダ28は、駆動機構ハウジング30から軸方向に延在する。シリンダ28は、軸方向において実質的に一様な内径を有し、よって、シリンダ28は、軸方向に延在する実質的に円筒の内面を有する。この内径は、ディスプレーサ24の外径よりわずかに大きい。
【0016】
また、膨張機静止部分22は、冷凍機ステージ32を含む。冷凍機ステージ32は、軸方向において駆動機構ハウジング30と反対側でシリンダ28の末端に固定されている。冷凍機ステージ32は、膨張機14が生成する寒冷を他の物体に伝導するために設けられている。その物体は冷凍機ステージ32に取り付けられ、極低温冷凍機10の動作時に冷凍機ステージ32によって冷却される。冷凍機ステージ32は、冷却ステージまたは熱負荷ステージと呼ばれることもある。
【0017】
シリンダ28は、ディスプレーサ24によって膨張空間34と上部空間36に仕切られている。ディスプレーサ24は、軸方向一端にてシリンダ28との間に膨張空間34を画定し、軸方向他端にてシリンダ28との間に上部空間36を画定する。膨張空間34は、ディスプレーサ24の上死点にて最大容積を有し、ディスプレーサ24の下死点にて最小容積を有する。上部空間36は、ディスプレーサ24の上死点にて最小容積を有し、ディスプレーサ24の下死点にて最大容積を有する。冷凍機ステージ32は、膨張空間34を外包するようにシリンダ28に固着されている。冷凍機ステージ32は、膨張空間34に熱的に結合されている。
【0018】
極低温冷凍機10の動作時において、蓄冷器16は、軸方向において一方側(図において上側)に蓄冷器高温部16aを有し反対側(図において下側)に蓄冷器低温部16bを有する。このように蓄冷器16は軸方向に温度分布を有する。蓄冷器16を包囲する膨張機14の他の構成要素(例えばディスプレーサ24及びシリンダ28)も同様に軸方向温度分布を有し、従って膨張機14はその動作時に軸方向一方側に高温部を有し軸方向他方側に低温部を有する。高温部は、例えば室温程度の温度を有する。低温部は、極低温冷凍機10の用途により異なるが、例えば約100Kから約10Kの範囲に含まれるある温度に冷却される。
【0019】
本書では説明の便宜上、軸方向、径方向、周方向との用語が使用される。軸方向は、矢印Aで図示されるように、膨張機静止部分22に対する膨張機可動部分20の移動方向を表す。径方向は軸方向に垂直な方向(図において横方向)を表し、周方向は軸方向を囲む方向を表す。膨張機14のある要素が軸方向に関して冷凍機ステージ32に相対的に近いことを「下」、相対的に遠いことを「上」と呼ぶことがある。よって、膨張機14の高温部及び低温部はそれぞれ軸方向において上部及び下部に位置する。こうした表現は、膨張機14の要素間の相対的な位置関係の理解を助けるために用いられるにすぎず、現場で設置されるときの膨張機14の配置とは関係しない。例えば、膨張機14は、冷凍機ステージ32を上向きに駆動機構ハウジング30を下向きにして設置されてもよい。あるいは、膨張機14は、軸方向を水平方向に一致させるようにして設置されてもよい。
【0020】
膨張機14は、膨張機静止部分22に支持され、ディスプレーサ24を駆動するディスプレーサ駆動機構38を備える。ディスプレーサ駆動機構38は、たとえば電気モータなどのモータ40と、スコッチヨーク機構42とを含む。ディスプレーサ駆動シャフト26はスコッチヨーク機構42の一部を形成する。ディスプレーサ駆動シャフト26はスコッチヨーク機構42によって軸方向に駆動されるようスコッチヨーク機構42に連結されている。ディスプレーサ駆動シャフト26は、ディスプレーサ24よりも小径であり、たとえば、ディスプレーサ駆動シャフト26の径は、ディスプレーサ24の径の半分より小さい。
【0021】
ディスプレーサ駆動機構38は、駆動機構ハウジング30の内部に画定される低圧ガス室37に収容されている。第2管18bが駆動機構ハウジング30に接続されており、それにより低圧ガス室37が第2管18bを通じて圧縮機12の吸入口12bに連通している。そのため、低圧ガス室37は常に低圧に維持される。
【0022】
図2に示されるように、スコッチヨーク機構42は、クランク44と、スコッチヨーク46と、を含む。クランク44は、モータ40の回転軸40aに固定される。クランク44は、回転軸40aが固定される位置から偏心した位置にクランクピン44aを有する。したがって、クランク44を回転軸40aに固定すると、クランクピン44aは、モータ40の回転軸40aと平行に延在するとともに回転軸40aから偏心した状態となる。
【0023】
スコッチヨーク46は、ヨーク板48と、ころ軸受50と、を含む。ヨーク板48は、板状の部材である。スコッチヨーク46には、その上部中央に、上部ロッド52が上方に延出するように連結され、その下部中央に、ディスプレーサ駆動シャフト26が下方に延出するように連結されている。ヨーク板48の中央には、横長窓48aが形成されている。横長窓48aは、上部ロッド52およびディスプレーサ駆動シャフト26が延出する方向(すなわち軸方向)に対して交差する方向、例えば直交する方向に延在する。ころ軸受50は、転動可能に横長窓48a内に配設される。ころ軸受50の中心には、クランクピン44aと係合する係合孔50aが形成されており、クランクピン44aが係合孔50aを貫通する。
【0024】
モータ40が駆動し回転軸40aが回転すると、クランクピン44aと係合したころ軸受50は、円を描くように回転する。ころ軸受50が円を描くように回転することにより、スコッチヨーク46は、軸方向に往復運動する。この際、ころ軸受50は、軸方向に交差する方向に横長窓48a内を往復移動する。
【0025】
図1に示されるように、ディスプレーサ駆動シャフト26は、ディスプレーサ駆動機構38をディスプレーサ24に連結する。ディスプレーサ駆動シャフト26は、一端がヨーク板48に固定され、他端がディスプレーサ24に固定される。ディスプレーサ駆動シャフト26は、低圧ガス室37から上部空間36を貫通してディスプレーサ24へと延びている。このため、スコッチヨーク46が軸方向に移動することにより、ディスプレーサ24はシリンダ28内を軸方向に往復移動する。
【0026】
図1に示されるように、第1摺動軸受54および第2摺動軸受56は、膨張機静止部分22の駆動機構ハウジング30に設けられている。上部ロッド52は、第1摺動軸受54によって軸方向に移動可能に支持され、ディスプレーサ駆動シャフト26は、第2摺動軸受56によって軸方向に移動可能に支持される。したがって、上部ロッド52およびディスプレーサ駆動シャフト26、ひいてはヨーク板48、ひいてはスコッチヨーク46は、軸方向に移動可能な構成となっている。
【0027】
第2摺動軸受56または駆動機構ハウジング30の下端部には、例えばスリッパーシールやクリアランスシールといったシール部が設けられ、気密に構成されており、そのため低圧ガス室37は上部空間36から隔離されている。低圧ガス室37と上部空間36との直接のガス流通はない。
【0028】
膨張機14は、ディスプレーサ24の軸方向往復動と同期させて膨張空間34の吸気と排気とを切り替えるロータリーバルブ58を備える。ロータリーバルブ58は、高圧ガスを膨張空間34に供給するための供給路の一部として機能するとともに、低圧ガスを膨張空間34から排出するための排出路の一部として機能する。ロータリーバルブ58は、ディスプレーサ24の往復移動と同期して作動ガスの供給機能と排出機能とを切り替え、それにより膨張空間34の圧力を制御するよう構成されている。ロータリーバルブ58は、ディスプレーサ駆動機構38に連結され、駆動機構ハウジング30に収容されている。
【0029】
また、膨張機14は、ハウジングガス流路64、ディスプレーサ上蓋ガス流路66、ディスプレーサ下蓋ガス流路68を有する。高圧ガスは、第1管18aからロータリーバルブ58、ハウジングガス流路64、上部空間36、ディスプレーサ上蓋ガス流路66、蓄冷器16、ディスプレーサ下蓋ガス流路68を経て膨張空間34に流入する。膨張空間34からの戻りガスは、ディスプレーサ下蓋ガス流路68、蓄冷器16、ディスプレーサ上蓋ガス流路66、上部空間36、ハウジングガス流路64、ロータリーバルブ58を経て低圧ガス室37に受け入れられる。
【0030】
ハウジングガス流路64は、膨張機静止部分22と上部空間36との間のガス流通のために駆動機構ハウジング30に貫通形成されている。
【0031】
上部空間36は、蓄冷器高温部16aの側で膨張機静止部分22とディスプレーサ24との間に形成されている。より詳しくは、上部空間36は、軸方向において駆動機構ハウジング30とディスプレーサ24とに挟まれ、周方向にシリンダ28に囲まれている。上部空間36は、低圧ガス室37に隣接する。上部空間36は室温室とも呼ばれる。上部空間36は膨張機可動部分20と膨張機静止部分22との間に形成された可変容積である。
【0032】
ディスプレーサ上蓋ガス流路66は、蓄冷器高温部16aを上部空間36に連通するよう形成されたディスプレーサ24の少なくとも1つの開口である。ディスプレーサ下蓋ガス流路68は、蓄冷器低温部16bを膨張空間34に連通するよう形成されたディスプレーサ24の少なくとも1つの開口である。ディスプレーサ24とシリンダ28とのクリアランスを封じるシール部70が、ディスプレーサ24の側面に設けられている。シール部70は、ディスプレーサ上蓋ガス流路66を周方向に囲むようディスプレーサ24に取り付けられていてもよい。
【0033】
膨張空間34は、蓄冷器低温部16bの側でシリンダ28とディスプレーサ24との間に形成されている。膨張空間34は上部空間36と同様に膨張機可動部分20と膨張機静止部分22との間に形成された可変容積であり、シリンダ28に対するディスプレーサ24の相対移動によって膨張空間34の容積は上部空間36の容積と相補的に変動する。シール部70が設けられているので、上部空間36と膨張空間34との直接のガス流通(つまり蓄冷器16を迂回するガス流れ)はない。
【0034】
ロータリーバルブ58は、ロータバルブ部材60及びステータバルブ部材62を備える。ロータバルブ部材60は、モータ40の回転により回転するようモータ40の回転軸40aに連結されている。ロータバルブ部材60は、ステータバルブ部材62に対し回転摺動するようステータバルブ部材62と面接触している。ロータバルブ部材60は、図1に示すロータバルブ軸受75により駆動機構ハウジング30内で回転可能に支持されている。ステータバルブ部材62は、駆動機構ハウジング30内にステータバルブ固定ピン73で固定される。ステータバルブ部材62は、第1管18aから駆動機構ハウジング30に入る高圧ガスを受け入れるよう構成されている。
【0035】
図3(a)および図3(b)はそれぞれ、実施の形態に係り、ディスプレーサ24とディスプレーサ駆動シャフト26の連結部を示す一部切り欠き斜視図および断面図である。図3(a)および図3(b)に示される断面は、ディスプレーサ駆動シャフト26の中心軸を含む平面による断面である。また、図4(a)および図4(b)はそれぞれ、実施の形態に係り、図3(a)および図3(b)とは別の方向から見たディスプレーサ24とディスプレーサ駆動シャフト26の連結部を示す一部切り欠き斜視図および断面図である。図4(a)および図4(b)に示される断面は、ディスプレーサ駆動シャフト26の中心軸を含み、図3(a)および図3(b)の断面と直交する平面による断面である。
【0036】
ディスプレーサ24は、蓋部24aと本体部24bを有する。蓋部24aは、ディスプレーサ24の上蓋であり、円板状の形状を有する。蓋部24aは、金属材料またはその他の材料で形成される。蓋部24aは、例えばアルマイト処理されたアルミニウム合金で形成されてもよい。本体部24bは、ディスプレーサ24の軸方向に延在する円筒状の形状を有し、その内部に蓄冷器16を有する。本体部24bは、合成樹脂材料またはその他の材料で形成される。本体部24bは、例えばベークライトなどのフェノール樹脂で形成されてもよい。
【0037】
蓋部24aは、本体部24bの軸方向上端に例えばボルトなどの締結部材71で固定される。締結部材71は、ディスプレーサ駆動シャフト26を周方向に等角度間隔に囲むように複数設けられ、それぞれ蓋部24aから本体部24bへと軸方向に差し込まれ、蓋部24aと本体部24bを締結している。なお蓋部24aと本体部24bは例えば接着など他の方法により互いに固定されてもよい。
【0038】
蓋部24aと本体部24bの上端部とを軸方向に貫通して上述のディスプレーサ上蓋ガス流路66が形成されている。ディスプレーサ上蓋ガス流路66は、ディスプレーサ駆動シャフト26を周方向に等角度間隔に囲むように複数設けられている。ディスプレーサ上蓋ガス流路66は、締結部材71と同じ径方向位置で周方向に締結部材71と交互に配置されている。なお、ディスプレーサ上蓋ガス流路66(及び/または締結部材71)は、周方向に不等間隔に配置されてもよい。
【0039】
本体部24bの上端部と蓄冷器16との間には、例えば少なくとも一枚の金網で形成される整流層67が設けられている。整流層67は、線径及び/またはメッシュが互いに異なりまたは同じである複数枚の金網で形成されてもよい。上部空間36とディスプレーサ24(蓄冷器16)との間で流れる冷媒ガスは、ディスプレーサ上蓋ガス流路66から整流層67を通過して蓄冷器16へと(またはその逆向きに)流れる。
【0040】
ディスプレーサ24とシリンダ28とのクリアランスへの冷媒ガス流れを封じるシール部70が、蓋部24aと本体部24bそれぞれの最外周部でこれらの間に挟み込まれ、ディスプレーサ24の側面に設けられている。シール部70は、例えばスリッパーシールなど適宜のシール部材であってもよい。
【0041】
ディスプレーサ駆動シャフト26は、蓋部24aと本体部24bとの間に保持されるカラー部72を有する。カラー部72は、ディスプレーサ駆動シャフト26の軸方向下端に設けられ、径方向外側に延出している。カラー部72はシャフトの軸方向から見て円形状の形状を有する。ディスプレーサ駆動シャフト26およびカラー部72は、金属材料またはその他の材料で形成される。ディスプレーサ駆動シャフト26は、カラー部72が蓋部24aと本体部24bに挟み込まれることによって、ディスプレーサ24に連結される。
【0042】
カラー部72は、径方向に差し込まれる連結ピン74によりディスプレーサ駆動シャフト26とピン結合される。カラー部72は、ディスプレーサ駆動シャフト26の軸方向下端が差し込まれる短筒部を有し、この短筒部にディスプレーサ駆動シャフト26が差し込まれたとき短筒部およびディスプレーサ駆動シャフト26をシャフト直径に沿って貫通するピン穴が形成される。連結ピン74がこのピン穴に差し込まれ、カラー部72がディスプレーサ駆動シャフト26に取り付けられる。連結ピン74はカラー部72とともに蓋部24aと本体部24bとの間に配置される。
【0043】
蓋部24aは、板状部76と周壁部77を有する。板状部76は上述の締結部材71で本体部24bに取り付けられ、板状部76の中心部をディスプレーサ駆動シャフト26が貫通している。周壁部77は、連結ピン74が差し込まれた軸方向高さでディスプレーサ駆動シャフト26を囲むように板状部76から本体部24bに向かって突出している。周壁部77は、連結ピン74の両端それぞれの径方向外側で径方向に薄肉化された薄肉部77aと、薄肉部77aどうしを周方向に接続する厚肉部77bとを有する。薄肉部77aは、連結ピン74の両端それぞれを受け入れる凹部を周壁部77に形成する。薄肉部77aと厚肉部77bとの段差が連結ピン74の端部と周方向に係合するから、この段差は蓋部24aに対するカラー部72の回り止め、つまりディスプレーサ24に対するディスプレーサ駆動シャフト26の回り止めとして働く。
【0044】
本体部24bの上端部は、その中心部に円形状の凹部を有し、この凹部内にディスプレーサ駆動シャフト26の下端、カラー部72および周壁部77を受け入れる。この凹部の径方向外側に上述のディスプレーサ上蓋ガス流路66および締結部材71が配置されている。
【0045】
カラー部72と蓋部24aの間のクリアランスには、緩衝体78が配置される。緩衝体78は、軟質材78aと、軟質材78aに対してカラー部72と反対側に配置される硬質材78bとを有する。硬質材78bは、片側で軟質材78aと接触し、反対側で蓋部24aの周壁部77と接触する。
【0046】
軟質材78aは、弾性体であってもよく、例えばゴム等の弾性変形可能な合成樹脂材料で形成されてもよい。硬質材78bは、軟質材78aに比べて硬い材料、例えばステンレス鋼などの金属材料で形成されてもよい。硬質材78bは、軟質材78aに比べて硬いプラスチックなど合成樹脂材料で形成されてもよい。例えば、軟質材78aは、ゴム製のワッシャーであり、硬質材78bは、金属製のシムリングであってもよい。
【0047】
緩衝体78は、カラー部72に沿ってディスプレーサ駆動シャフト26のまわりに配置されるリング状の形状を有する。よって、軟質材78aは、カラー部72上でディスプレーサ駆動シャフト26まわりに配置されるリング形状を有する。この実施の形態では、軟質材78aのリング形状は、図3(b)および図4(b)に示されるように、駆動シャフト26に沿う軸方向厚さよりも径方向幅が大きい矩形状の断面を有する。硬質材78bは、軟質材78a上でディスプレーサ駆動シャフト26まわりに配置されるリング形状を有する。硬質材78bの軸方向厚さは、軟質材78aの軸方向厚さよりも小さい。
【0048】
軟質材78aは、硬質材78bとカラー部72の間に収められており、径方向に関して硬質材78bとカラー部72からはみ出していない。図示されるように、軟質材78aの内径および外径はそれぞれ、硬質材78bの内径および外径と等しい。また、軟質材78aの内径および外径はそれぞれ、カラー部72の内径および外径と等しい。よって、軟質材78aの片側全面が硬質材78bと接触し、反対側の全面がカラー部72と接触している。硬質材78bと軟質材78aの接触面は平坦であり、カラー部72と軟質材78aの接触面も平坦である。
【0049】
なお、軟質材78aの内径は、硬質材78b及び/またはカラー部72の内径よりいくらか大きくてもよい。また、軟質材78aの外径は、硬質材78b及び/またはカラー部72の外径よりいくらか小さくてもよい。
【0050】
硬質材78bが軟質材78aと接触する面積は、硬質材78bが蓋部24aと接触する面積よりも大きい。硬質材78bは、その片側(図において下側)の全面で軟質材78aの全面と接触しているのに対して、反対側(図において上側)の面の一部で蓋部24aと接触している。蓋部24aの周壁部77が、薄肉部77aおよび厚肉部77bで硬質材78bと接触している。連結ピン74の両端それぞれの軸方向下方では、硬質材78bと周壁部77は接触していない。
【0051】
軟質材78aの初期厚さ(つまり緩衝体78が蓋部24aとカラー部72の間に保持される前の状態での厚さ)と硬質材78bの軸方向厚さの合計は、カラー部72と蓋部24aの周壁部77との間の軸方向距離よりも若干大きい。そのため、緩衝体78が蓋部24aとカラー部72の間に取り付けられたとき、軟質材78aは、圧縮された状態(若干押し潰された状態)で硬質材78bとカラー部72に挟まれている。
【0052】
このようにして、緩衝体78とともにカラー部72が本体部24bの凹部内で蓋部24aの周壁部77と本体部24bに挟み込まれ、ディスプレーサ駆動シャフト26がディスプレーサ24に連結される。
【0053】
以上、実施の形態に係る極低温冷凍機10の構成を述べた。続いてその動作を説明する。ディスプレーサ24が下死点またはその近傍にあるとき、ロータリーバルブ58は、圧縮機12の吐出口12aを膨張空間34に接続するように切り替わり、冷凍サイクルの吸気工程が開始される。高圧ガスが、ロータリーバルブ58からハウジングガス流路64、上部空間36、ディスプレーサ上蓋ガス流路66を通じて蓄冷器高温部16aに入る。ガスは蓄冷器16を通過しながら冷却され、蓄冷器低温部16bからディスプレーサ下蓋ガス流路68を通じて膨張空間34に入る。ガスが膨張空間34に流入する間、ディスプレーサ駆動シャフト26によってディスプレーサ24は下死点から上死点に向けてシリンダ28内を軸方向上向きに動く。それにより膨張空間34の容積が増加される。こうして膨張空間34は高圧ガスで満たされる。
【0054】
ディスプレーサ24が上死点またはその近傍にあるとき、ロータリーバルブ58は、圧縮機12の吸入口12bを膨張空間34に接続するように切り替わり、冷凍サイクルの排気工程が開始される。このとき膨張空間34内の高圧ガスは膨張し冷却される。膨張したガスは、膨張空間34からディスプレーサ下蓋ガス流路68を通じて蓄冷器16に入る。ガスは蓄冷器16を通過しながら冷却する。ガスは、蓄冷器16からハウジングガス流路64、ロータリーバルブ58、低圧ガス室37を経て圧縮機12に戻る。ガスが膨張空間34から流出する間、ディスプレーサ駆動シャフト26によってディスプレーサ24は上死点から下死点に向けてシリンダ28内を軸方向下向きに動く。それにより膨張空間34の容積が減少され、膨張空間34から低圧ガスが排出される。排気工程が終了すると、再び吸気工程が開始される。
【0055】
以上が極低温冷凍機10における1回の冷凍サイクルである。極低温冷凍機10は冷凍サイクルを繰り返すことで、冷凍機ステージ32を所望の温度に冷却する。よって、極低温冷凍機10は、冷凍機ステージ32に熱的に結合された物体を極低温に冷却することができる。
【0056】
実施の形態によると、ディスプレーサ24にディスプレーサ駆動シャフト26を取り付ける際に、緩衝体78がカラー部72とともにディスプレーサの蓋部24aと本体部24bの間に挟み込まれる。緩衝体78によってカラー部72と蓋部24aの間のクリアランスを完全に埋め、または少なくとも低減することができ、それにより、極低温冷凍機10の運転中に生じうるディスプレーサ駆動シャフト26に対するディスプレーサ24の振動を防止または低減することができる。
【0057】
また、硬質材78bは、片側で軟質材78aと接触し、反対側で蓋部24aと接触し、硬質材78bが軟質材78aと接触する面積が、硬質材78bが蓋部24aまたは本体部24bと接触する面積よりも大きい。仮に硬質材78bが無かった場合には蓋部24a(例えば周壁部77の薄肉部77a)が軟質材78aに直接押し付けられ、その押付部で軟質材78aが局所的に変形され、さらには損傷されうる。しかしながら、この実施の形態では、緩衝体78が蓋部24aとカラー部72の間に挟み込まれることにより緩衝体78に働く締め付け力が、蓋部24aから硬質材78bを介して軟質材78aに伝わる。締め付け力による面圧は、硬質材78bによって均一化され、軟質材78aの局所的な変形や損傷を防止または軽減することができる。
【0058】
軟質材78aは、圧縮された状態で硬質材78bとカラー部72に挟まれている。そのため、緩衝体78はカラー部72と蓋部24aの間のクリアランスを完全に埋めることができ、ディスプレーサ駆動シャフト26に対するディスプレーサ24の振動をより効果的に防止または低減することができる。
【0059】
軟質材78aのリング形状は、ディスプレーサ駆動シャフト26に沿う軸方向厚さよりも径方向幅が大きい矩形状の断面を有する。緩衝体78はカラー部72と蓋部24aの間のクリアランスの寸法に適合しなければならないが、このクリアランスは軸方向高さがかなり小さい。軟質材78aとして一般的な円形断面のOリングを用いることを仮定すると、クリアランスの軸方向高さに適合させるにはかなり細幅のOリングが必要となり、緩衝効果に劣ることが懸念される。本実施の形態では、軟質材78aのリング形状が軸方向厚さよりも径方向幅が大きい矩形状の断面を有するので、このような不都合を避けられる。
【0060】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0061】
上述の実施の形態では、緩衝体78は、カラー部72と蓋部24aの間に配置されているが、これに代えて(またはこれに加えて)、カラー部72と本体部24bの間のクリアランスに配置されてもよい。緩衝体78は、軟質材78aと、軟質材78aに対してカラー部72と反対側に配置される硬質材78bとを有してもよい。硬質材78bは、片側で軟質材78aと接触し、反対側で本体部24bと接触してもよい。硬質材78bが軟質材78aと接触する面積が、硬質材78bが本体部24bと接触する面積よりも大きくてもよい。
【0062】
クリアランスの軸方向高さに適合させるために、軟質材78aは、複数枚の軟質材(例えば複数枚のゴム製のワッシャー)であってもよい。同様に、硬質材78bは、複数枚の硬質材(例えば複数枚のシムリング)であってもよい。
【0063】
緩衝体78(軟質材78a及び/または硬質材78b)は、単一のリング状部材であることは必須ではなく、分割された複数の部片でもよく、これら部片がカラー部72に沿ってディスプレーサ駆動シャフト26の周方向にリング状に配置されてもよい。
【0064】
例えばカラー部72の表面に溝または凹凸がある等、カラー部72の形状によっては、軟質材78aとカラー部72の間にもう1つの硬質材78bが差し込まれてもよい。
【0065】
上記においては、単段式のGM冷凍機に言及して実施の形態を説明した。本発明はこれに限られず、実施の形態に係る緩衝体78は、二段式または多段式のGM冷凍機、または、ディスプレーサとディスプレーサ駆動シャフトの連結部を有するその他の極低温冷凍機に適用可能である。
【0066】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0067】
10 極低温冷凍機、 24 ディスプレーサ、 24a 蓋部、 24b 本体部、 26 ディスプレーサ駆動シャフト、 72 カラー部、 74 連結ピン、 76 板状部、 77 周壁部、 77a 薄肉部、 77b 厚肉部、 78 緩衝体、 78a 軟質材、 78b 硬質材。
図1
図2
図3
図4