(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140998
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】シート装置
(51)【国際特許分類】
A47C 13/00 20060101AFI20220921BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20220921BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20220921BHJP
B60N 2/34 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A47C13/00 Z
B60N2/16
B60N2/22
B60N2/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041108
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
【テーマコード(参考)】
3B087
3B095
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA17
3B087BB21
3B087BD04
3B087BD07
3B087BD15
3B087CB03
3B087CB19
3B095EA01
3B095EB01
3B095EB02
3B095EB03
3B095EB05
3B095EB06
(57)【要約】
【課題】シートを旋回させることなく正面向きと背面向きとに切り替え可能なシート装置を提供すること。
【解決手段】シート座面が互いにジョイントJ1~J6を介して1列並びに連結される複数枚のパネル材P1~P7から成るシート装置1であって、複数枚のパネル材P1~P7のフロアFに対する高さと個々の成す角度とを調節可能なシートアジャスタ10を有する。シートアジャスタ10が、複数枚のパネル材P1~P7を、ピッチング方向の回転により、シート正面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる正面着座モードと、シート背面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる背面着座モードM10と、に切り替え可能とされる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート座面が互いにジョイントを介して1列並びに連結される複数枚のパネル材から成るシート装置であって、
前記複数枚のパネル材のフロアに対する高さと個々の成す角度とを調節可能なシートアジャスタを有し、
前記シートアジャスタが、前記複数枚のパネル材を、ピッチング方向の回転により、シート正面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる正面着座モードと、シート背面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる背面着座モードと、に切り替え可能とされるシート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート装置であって、
前記シートアジャスタが、前記複数枚のパネル材のうち、前記正面着座モード及び/又は前記背面着座モードにおいてシート座面を成すパネル材の組み合わせパターンを変えることで座面長を調節するシート装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート装置であって、
前記シートアジャスタが、更に、前記複数枚のパネル材を、連続する1列の平坦状のシート座面を成す形に並べるフラットモードにも切り替え可能とされるシート装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート装置であって、
前記シートアジャスタが、更に、前記複数枚のパネル材を、2人の着座者の着座が可能な連続する或いは断続する1列のシート座面を成す形に並べる複数人掛けモードにも切り替え可能とされるシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置に関する。詳しくは、シート座面を切り替え可能なシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて、シート本体が旋回により車両正面向きと車両背面向きとに切り替えられる構成とされたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、シート本体を旋回するための広いスペースが必要となる。そこで、本発明は、シートを旋回させることなく正面向きと背面向きとに切り替え可能なシート装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシート装置は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシート装置は、シート座面が互いにジョイントを介して1列並びに連結される複数枚のパネル材から成るシート装置である。このシート装置は、複数枚のパネル材のフロアに対する高さと個々の成す角度とを調節可能なシートアジャスタを有する。シートアジャスタが、複数枚のパネル材を、ピッチング方向の回転により、シート正面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる正面着座モードと、シート背面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる背面着座モードと、に切り替え可能とされる。
【0007】
上記構成によれば、シートアジャスタにより、複数枚のパネル材から成るシート座面を、旋回させることなく正面向きと背面向きとに切り替えることができる。
【0008】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。シートアジャスタが、複数枚のパネル材のうち、正面着座モード及び/又は背面着座モードにおいてシート座面を形成するパネル材の組み合わせパターンを変えることで座面長を調節する。
【0009】
上記構成によれば、シート装置の座面長を、着座者の体格やとりたい姿勢に応じて適宜調節することができる。
【0010】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。シートアジャスタが、更に、複数枚のパネル材を、連続する1列の平坦状のシート座面を成す形に並べるフラットモードにも切り替え可能とされる。
【0011】
上記構成によれば、シート装置をフラットモードに切り替えることで、1人の着座者がシート座面上に安楽な姿勢で寝転ぶことが可能となる。
【0012】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。シートアジャスタが、更に、複数枚のパネル材を、2人の着座者の着座が可能な連続する或いは断続する1列のシート座面を成す形に並べる複数人掛けモードにも切り替え可能とされる。
【0013】
上記構成によれば、シート装置を、1人掛け用と複数人掛け用とに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係るシート装置の概略構成を表す斜視図である。
【
図2】シート装置が正面着座モードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図3】シート装置が第1のリラックスモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図4】シート装置が第2のリラックスモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図5】シート装置がベッドモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図6】シート装置が部分フラットモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図7】部分フラットモードのシート装置に2人が着座した状態を表す斜視図である。
【
図8】シート装置がフルフラットモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図9】フルフラットモードのシート装置に3人が着座した状態を表す斜視図である。
【
図10】シート装置が立ち座りモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図11】シート装置がファミリモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図12】シート装置が背凭れ付き立ち座りモードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図13】シート装置が背面着座モードに切り替えられた状態を表す斜視図である。
【
図14】
図2に対応する正面着座モードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図15】
図3に対応する第1のリラックスモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図16】
図4に対応する第2のリラックスモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図17】
図5に対応するベッドモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図18】
図6に対応する部分フラットモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図19】
図8に対応するフルフラットモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図20】
図10に対応する立ち座りモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図21】
図11に対応するファミリモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図22】
図12に対応する背凭れ付き立ち座りモードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【
図23】
図13に対応する背面着座モードに切り替えられたシート装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(シート装置1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシート装置1の構成について、
図1~
図23を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、シート装置1の左右方向を指すものとする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るシート装置1は、自動車のフロアF上に設置されるシートである。このシート装置1は、着座者の身体を支えるシート座面が、互いにジョイントJ1~J6を介して1列並びに連結される複数枚(7枚)のパネル材P1~P7により構成される。
【0018】
また、上記シート装置1は、各パネル材P1~P7のフロアFに対する位置と個々の成す角度とを調節可能なシートアジャスタ10を有する。具体的には、シートアジャスタ10は、各パネル材P1~P7のうちの一部とフロアFとの間に設けられる前後一対のアウタアーム11及びインナアーム12と、回転ロック可能な回転軸装置として機能する複数のラウンドリクライナ13と、が組み合わされて構成される。
【0019】
上記シートアジャスタ10は、不図示の駆動ユニットのモータ駆動により、前後一対のアウタアーム11、インナアーム12及び各ラウンドリクライナ13がそれぞれ個別に動かされる構成とされる。上記シートアジャスタ10により個々のパネル材P1~P7のフロアFに対する位置と角度とがそれぞれ調節されることにより、シート装置1は、以下に示す様々な形態へのシートアレンジが可能とされる。
【0020】
具体的には、シート装置1は、
図2に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、1人の着座者が車両正面向きに通常の着座姿勢で着座することができる正面着座モードM1への切り替えが可能な構成とされる。具体的には、シート装置1は、正面着座モードM1への切り替えにより、後側3枚のパネル材P1~P3が、車両正面側を向いて後上がり状に立ち上がる立ち上がり面を成す状態へと切り替えられる。
【0021】
そして、真ん中2枚のパネル材P4~P5が、上記パネル材P3の下縁部から前方に略平坦状に延びる面を成す状態へと切り替えられる。そして、パネル材P6が、上記パネル材P5の前縁部から下方に垂下状に延びる面を成す状態へと切り替えられる。そして、パネル材P7が、上記パネル材P6の下縁部から後方に引き込まれる形に折り畳まれた状態へと切り替えられる。
【0022】
それにより、シート装置1は、パネル材P1が着座者の頭部を支える頭凭れ部を成し、パネル材P2~P3が着座者の背部を支える背凭れ部を成す状態とされる。また、パネル材P4~P5が、着座者の尻部や大腿部を支える着座部を成す状態とされる。
【0023】
上記正面着座モードM1では、シートアジャスタ10により各パネル材P1~P7の位置や角度を微調節することにより、頭凭れ部や背凭れ部を成すパネル材P1~P3の個々の立ち上がり角度を調節することが可能とされる。それにより、着座者の背凭れ角度や、背凭れ部に対する頭凭れ部の中折れ角度を調節して、着座者の背中の支持具合を調節することができる。
【0024】
また、着座部を成すパネル材P4~P5のフロアFに対する高さ位置や前上がり角度も調節することができる。また、上記各調節の組み合わせにより、パネル材P3のパネル材P4の後縁部からの立ち上がり位置や角度を調節して、着座者の腰部に対する支持具合を調節することができる。
【0025】
また、シート装置1は、
図3に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、1人の着座者が車両正面向きの安楽姿勢で着座することができる第1のリラックスモードM2にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、第1のリラックスモードM2への切り替えにより、
図2で示した正面着座モードM1に対して、パネル材P1~P3がより後傾気味の角度に傾けられ、パネル材P4が前上がり気味の角度に起こし上げられ、パネル材P5~P6がパネル材P4の前縁部から前下がり状に折れ曲がって延びる状態へと切り替えられる。
【0026】
更に、パネル材P7が、パネル材P6の前下縁部から前方に側面視略L字状を成す形に張り出す状態へと切り替えられる。それにより、シート装置1は、パネル材P4上に着座した着座者の頭部や背部をパネル材P1~P3により後傾気味の安楽姿勢で支え、下腿部をパネル材P6により前下がり状の安楽姿勢で支えられる状態となる。更に、シート装置1は、着座者の足裏をパネル材P7により安楽姿勢で支えられる状態となる。
【0027】
その際、シート装置1は、パネル材P5がパネル材P4の前縁部から前下がり状に折れ曲がっていることで、着座者の膝裏をパネル材P5に閊えさせることなくこれらの間に隙間を持たせた状態で下腿部をパネル材P6上に確実に載せられる状態とすることができる。詳しくは、上記パネル材P5とパネル材P6とは、互いに山なりに折れ曲がる角度を成した状態で、パネル材P4の前縁部から前下がり状に延びる状態に切り替えられるようになっている。
【0028】
それにより、着座者の膝が概ねパネル材P5の直上に位置する姿勢となっている場合に、パネル材P6が、着座者の膝から前下がり方向に遠ざかるのではなく、着座者の膝下に引き込まれて着座者の膝との間の距離が縮められた位置で下腿部を載せられる状態となる。
【0029】
また、シート装置1は、
図4に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、1人の着座者が
図3で示した第1のリラックスモードM2とは異なる形態の安楽姿勢で着座することができる第2のリラックスモードM3にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、第2のリラックスモードM3への切り替えにより、2枚のパネル材P1~P2が着座者の背部を後傾気味の安楽姿勢で支える背凭れ部を成す状態へと切り替えられる。
【0030】
そして、続く2枚のパネル材P3~P4が、着座者の尻部や大腿部を平坦状の面で支えられる着座部を成す状態へと切り替えられる。更に、続く2枚のパネル材P5~P6が、パネル材P4の前縁部から前下がり状に真っ直ぐ延びて着座者の下腿部を前下がり状の安楽姿勢で支えられる状態へと切り替えられる。また、パネル材P7は、パネル材P6の前下縁部から前方に側面視略L字状を成す形に張り出す状態へと切り替えられる。
【0031】
それにより、シート装置1は、
図3で示した第1のリラックスモードM2の支持形態と比べて、背凭れ部の長さが短くなるように調節される一方、下腿部を載せる足載せ面が長くなるように調節される。したがって、着座者の体格やとりたい姿勢に応じて、
図3で示した第1のリラックスモードM2と
図4で示した第2のリラックスモードM3とに適宜切り替えることができる。
【0032】
また、シート装置1は、
図5に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、1人の着座者が寝転んだ姿勢で横たわることが可能なベッドモードM4にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、ベッドモードM4への切り替えにより、7枚のパネル材P1~P7が腰掛けとして使用可能な低位置でシート前後方向に略水平状に真っ直ぐ並んで、着座者の身体を略水平状に支えられる状態へと切り替えられる。
【0033】
上記ベッドモードM4では、シートアジャスタ10により最後尾のパネル材P1を僅かに前に起こした角度に調節することにより、着座者が頭を上げたより快適な寝転び姿勢で各パネル材P1~P7上に横たわることが可能となる。
【0034】
また、シート装置1は、
図6に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、中央に前後3枚のパネル材P3~P5を腰掛けとして使用可能な低位置で水平状に並べた部分フラットモードM5にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、部分フラットモードM5への切り替えにより、中央の3枚のパネル材P3~P5が前後に連続する1列の平坦なシート座面を成す状態へと切り替えられる。
【0035】
そして、パネル材P2が、パネル材P3の後縁部から下方に垂下状に折り畳まれた状態へと切り替えられる。そして、パネル材P6が、パネル材P5の前縁部から下方に垂下状に折り畳まれた状態へと切り替えられる。また、パネル材P1が、パネル材P2の下縁部から前方に引き込まれる形に折り畳まれた状態へと切り替えられる。また、パネル材P7が、パネル材P6の下縁部から後方に引き込まれる形に折り畳まれた状態へと切り替えられる。
【0036】
それにより、シート装置1は、上記3枚のパネル材P3~P5によって形成される平坦状のシート座面上に、1人の着座者が座禅を組むような幅をとる姿勢でゆったりと着座することができる状態となる。また、上記シート装置1は、上記切り替えにより、
図7に示すように、前後に2人の着座者が背中合わせに腰掛けられる状態となる。また、上記シート装置1は、図示は省略されているが、左右に2人の着座者が背中合わせに腰掛けられる状態となる。
【0037】
また、シート装置1は、
図8に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、7枚のパネル材P1~P7を腰掛けとして使用可能な低位置で前後一列に水平状に並べたフルフラットモードM6にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、フルフラットモードM6への切り替えにより、7枚のパネル材P1~P7が前後一列に連続する平坦なシート座面を成す状態へと切り替えられる。
【0038】
それにより、シート装置1は、上記7枚のパネル材P1~P7によって形成されるシート前後方向に長尺な平坦状のシート座面上に、2人の着座者が左右どちらかの方向を向いて座禅を組むような幅をとる姿勢で前後にゆったりと並んで座ることができる状態となる。また、上記シート装置1は、上記切り替えにより、
図9に示すように、前後に3人の着座者が左右どちらかの方を向いて前後に並んで腰掛けられる状態となる。
【0039】
また、シート装置1は、
図10に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、中央に前後3枚のパネル材P3~P5を高い位置で台座を成す形に並べる立ち座りモードM7にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、立ち座りモードM7への切り替えにより、中央のパネル材P4が、水平向きで前出の腰掛けとして使用される着座面よりも高い位置へと引き上げられた状態へと切り替えられる。
【0040】
そして、パネル材P3が、上記パネル材P4の後縁部から僅かに後ろ下がり状に傾けられた状態へと切り替えられる。そして、パネル材P5が、上記パネル材P4の前縁部から僅かに前下がり状に傾けられた状態へと切り替えられる。更に、パネル材P2が、上記パネル材P3の後下縁部から下方に垂下状に折り畳まれ、パネル材P1が、上記パネル材P2の下縁部から前方に引き込まれる形に折り畳まれた状態へと切り替えられる。
【0041】
更に、パネル材P6が、上記パネル材P5の前下縁部から下方に垂下状に折り畳まれ、パネル材P7が、上記パネル材P6の下縁部から後方に引き込まれる形に折り畳まれた状態へと切り替えられる。上記中央のパネル材P4から前後に斜め下がりに延びる各パネル材P3,P5は、それぞれ、着座者が立ち姿勢に近い座り姿勢(骨盤を立てやすい姿勢:以下、「立ち座り姿勢」とする。)で前後側から腰掛けられる高い位置で、前後に斜めに面を向けたシート座面を成す状態とされる。
【0042】
それにより、シート装置1は、その前後に左右2人ずつの着座者が前後に背中合わせとなる向きで立ち座り姿勢で腰掛けられる状態となる。ここで、上記シート装置1は、個々のパネル材P1~P7の横幅が、着座者が立ち座り姿勢のような深く腰掛けない姿勢、すなわち横幅を大きくとらない姿勢で腰掛ける時には、2人の着座者が横並び状に詰めて腰掛けられる大きさに設定されている。
【0043】
また、シート装置1は、
図11に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、3人の着座者が互いの間に立壁を有して離れて着座することが可能なファミリモードM8にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、ファミリモードM8への切り替えにより、3枚のパネル材P1,P4,P7が、それぞれ、腰掛けとして使用可能な低位置で、シート前後方向に断続的に略水平状に並んだ状態へと切り替えられる。
【0044】
そして、パネル材P2がパネル材P1の前縁部から前上がり状に立ち上がり、パネル材P3がパネル材P4の後縁部から後上がり状に立ち上がり、パネル材P1とパネル材P4との間にパネル材P2,P3による立壁が形成された状態へと切り替えられる。そして、パネル材P6がパネル材P7の後縁部から後上がり状に立ち上がり、パネル材P5がパネル材P4の前縁部から前上がり状に立ち上がり、パネル材P7とパネル材P4との間にパネル材P5,P6による立壁が形成された状態へと切り替えられる。
【0045】
それにより、シート装置1は、中央のパネル材P4上に1人の着座者が横を向いて着座し、前後のパネル材P1,P7上にも着座者がそれぞれ1人ずつ互いに背中合わせに腰掛けられる状態となる。その時、パネル材P2は、パネル材P1上に着座する着座者の背凭れとして機能し、パネル材P6は、パネル材P7上に着座する着座者の背凭れとして機能する。したがって、1つのシート装置1に家族など3人の着座者が同時に着座することができる。
【0046】
また、シート装置1は、
図12に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、
図10で示した立ち座りモードM7と似たような高い座面位置で、着座者が立ち座り姿勢で着座と背凭れとが行える背凭れ付き立ち座りモードM9にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、上記背凭れ付き立ち座りモードM9への切り替えにより、中央のパネル材P4を水平向きとして、その前後のパネル材P3,P5が前後に斜めに立ち上がる状態にそれぞれ切り替えられる。
【0047】
そして、パネル材P2が、上記パネル材P3の後上縁部から前上がり状に斜めに延びるように引繰り返され、パネル材P6が、上記パネル材P5の前上縁部から後上がり状に斜めに延びるように引繰り返された状態に切り替えられる。そして、パネル材P1が、上記パネル材P2の前上縁部から上方に真っ直ぐ延びる形に立ち上がり、パネル材P7が、パネル材P6の後上縁部から上方に真っ直ぐ延びる形に立ち上がる状態に切り替えられ、2枚のパネル材P1,P7が互いに合掌する形に合わされた状態とされる。
【0048】
それにより、シート装置1は、前後のパネル材P2,P6が、それぞれ、着座者が立ち座り姿勢で前後側から腰掛けられる高い位置で、前後に斜めに面を向けたシート座面を成す状態とされる。また、互いに合掌する形に合わされたパネル材P1,P7が、骨盤を立てやすい立ち座り姿勢で腰掛ける前後の着座者の背凭れ面を成す状態とされる。
【0049】
なお、上記シート装置1は、上記背凭れ付き立ち座りモードM9においても、その前後に左右2人ずつの着座者が前後に背中合わせとなる向きで立ち座り姿勢で腰掛けることが可能とされる。
【0050】
また、シート装置1は、
図13に示すように、上記シートアジャスタ10による調節により、
図2で前述した正面着座モードM1を車両背面向きに引繰り返したようなシート座面を成す背面着座モードM10にも切り替えられる構成とされる。具体的には、シート装置1は、背面着座モードM10への切り替えにより、3枚のパネル材P5~P7が、車両背面側を向いて前上がり状に立ち上がる立ち上がり面を成す状態へと切り替えられる。
【0051】
そして、パネル材P3~P4が、上記パネル材P5の下縁部から後方に略平坦状に延びる面を成す状態へと切り替えられる。そして、パネル材P2が、上記パネル材P3の後縁部から下方に垂下状に延びる面を成す状態へと切り替えられる。そして、パネル材P1が、上記パネル材P2の下縁部から前方に引き込まれる形に折り畳まれた状態へと切り替えられる。
【0052】
それにより、シート装置1は、パネル材P7が着座者の頭部を支える頭凭れ部を成し、パネル材P5~P6が着座者の背部を支える背凭れ部を成す状態とされる。また、パネル材P3~P4が、着座者の尻部や大腿部を支える着座部を成す状態とされる。
【0053】
上記背面着座モードM10でも、シートアジャスタ10により各パネル材P1~P7の位置や角度を微調節することにより、頭凭れ部や背凭れ部を成すパネル材P5~P7の個々の立ち上がり角度を調節することが可能とされる。それにより、着座者の背凭れ角度や、背凭れ部に対する頭凭れ部の中折れ角度を調節して、着座者の背中の支持具合を調節することができる。
【0054】
また、着座部を成すパネル材P3~P4のフロアFに対する高さ位置や後上がり角度も調節することができる。また、上記各調節の組み合わせにより、パネル材P5のパネル材P4の前縁部からの立ち上がり位置や角度を調節して、着座者の腰部に対する支持具合を調節することができる。同様に、シート装置1は、図示は省略されているが、
図3~
図5で示した各モードを車両背面向きとするような各モードにも切り替えることが可能である。
【0055】
ここで、前述した正面着座モードM1の他、第1のリラックスモードM2(
図3参照)及び第2のリラックスモードM3(
図4参照)も、それぞれ、本発明の「正面着座モード」に相当する。また、ベッドモードM4(
図5参照)、部分フラットモードM5(
図6~
図7参照)、及びフルフラットモードM6(
図8~
図9参照)が、それぞれ、本発明の「フラットモード」に相当する。
【0056】
また、部分フラットモードM5(
図6~
図7参照)、フルフラットモードM6(
図8~
図9参照)、立ち座りモードM7(
図10参照)、ファミリモードM8(
図11参照)、背凭れ付き立ち座りモードM9(
図12参照)が、それぞれ、本発明の「複数人掛けモード」に相当する。
【0057】
(シート装置1の各部の詳細について)
以下、上述したシート装置1の各部の具体的な構成について詳しく説明する。各パネル材P1~P7は、互いに略同一のシート幅を備えるシート幅方向に長尺な略矩形板状の部材から成る。各パネル材P1~P7は、互いにジョイントJ1~J6を介して短手方向に1列並びとなるように順に連結されている。各ジョイントJ1~J6は、それぞれ、対応する各パネル材P1~P7の左右各側の縁部を、隣り合うパネル材P1~P7の左右各側の縁部に対して、それぞれ或いはいずれか一方から延びるアームを介してシート幅方向に延びる軸まわり(ピッチング方向)に回転可能となる状態に連結する。
【0058】
各パネル材P1~P7は、個々の並び方向の寸法が、1枚おきに広いものと狭いものとが交互に繰り返されるように並ぶ寸法設定とされている。具体的には、各パネル材P1,P3,P5,P7は、それぞれの並び方向の寸法が、互いに略同一の寸法設定とされる。また、各パネル材P2,P4,P6は、それぞれの並び方向の寸法が、互いに略同一の寸法設定とされる。
【0059】
各パネル材P2,P4,P6の個々の並び方向の寸法は、各パネル材P1,P3,P5,P7の個々の並び方向の寸法よりも広くなっている。具体的には、各パネル材P2,P4,P6の個々の並び方向の寸法は、
図9に示すように、平均体形の乗員(AM50等)がそれぞれの寸法に収まる範囲内で横を向いて腰掛けられる程度の大きさに設定されている。
【0060】
また、各パネル材P1,P3,P5,P7の個々の並び方向の寸法は、各パネル材P2,P4,P6の個々の並び方向の寸法の半分よりは大きく設定されている。各パネル材P1~P7の個々の横幅(シート幅方向の寸法)は、
図10で示したように、平均体形の乗員(AM50等)がそれぞれの横幅に収まる範囲内で横並び状に詰めて立ち座り姿勢で腰掛けられる程度の大きさに設定されている。
【0061】
図14に示すように、シートアジャスタ10を構成する前後一対のアウタアーム11は、左右の各ジョイントJ5とフロアF上のベースBとの間にそれぞれ架け渡される左右一対の前側のアームと、左右の各ジョイントJ2とフロアF上のベースBとの間にそれぞれ架け渡される左右一対の後側のアームと、で構成される。上記各アウタアーム11は、それらの上端部が、対応する左右の各ジョイントJ5,J2に対してそれぞれ回転可能なように連結される。
【0062】
また、各アウタアーム11は、それらの下端部が、フロアF上のベースBに対して、シート幅方向に延びる回転軸11Aを介してそれぞれ回転可能なように連結される。上記連結により、各アウタアーム11は、それらの下端側の回転軸11AのまわりにベースBに対してシート前後方向に揺動することが可能とされる。
【0063】
そして、上記揺動により、各アウタアーム11は、対応する各ジョイントJ5,J2をシート前後方向や高さ方向に移動させる。各アウタアーム11は、更に、各々の中間部に、テレスコピック式の伸縮構造を備える伸縮部11Bを備えた構成とされる。
【0064】
上記各アウタアーム11の回転軸11Aまわりの揺動動作と伸縮部11Bの伸縮動作は、それぞれ、これらに連結された不図示の駆動ユニットのモータ駆動によって行われる。それにより、各アウタアーム11は、これらのベースBに対する揺動角度や伸縮長さを任意に調節することが可能とされる。
【0065】
また、シートアジャスタ10を構成する前後一対のインナアーム12は、左右の各ジョイントJ4とフロアF上のベースBとの間にそれぞれ架け渡される左右一対の前側のアームと、左右の各ジョイントJ3とフロアF上のベースBとの間にそれぞれ架け渡される左右一対の後側のアームと、で構成される。上記各インナアーム12は、それらの上端部が、対応する左右の各ジョイントJ4,J3に対してそれぞれ回転可能なように連結される。
【0066】
また、各インナアーム12は、それらの下端部が、フロアF上のベースBに対して、シート幅方向に延びる回転軸12Aを介してそれぞれ回転可能なように連結される。上記連結により、各インナアーム12は、それらの下端側の回転軸12AのまわりにベースBに対してシート前後方向に揺動することが可能とされる。
【0067】
そして、上記揺動により、各インナアーム12は、対応する各ジョイントJ4,J3をシート前後方向や高さ方向に移動させる。各インナアーム12は、更に、各々の中間部に、テレスコピック式の伸縮構造を備える伸縮部12Bを備えた構成とされる。
【0068】
上記各インナアーム12の回転軸12Aまわりの揺動動作と伸縮部12Bの伸縮動作は、それぞれ、これらに連結された不図示の駆動ユニットのモータ駆動によって行われる。それにより、各インナアーム12は、これらのベースBに対する揺動角度や伸縮長さを任意に調節することが可能とされる。
【0069】
また、シートアジャスタ10を構成する各ラウンドリクライナ13は、左右の各ジョイントJ1,J2,J5,J6の連結部にそれぞれ設けられている。各ラウンドリクライナ13は、いわゆる無段階式(常時噛合い歯車)の角度調節機能を備えた構成とされる。各ラウンドリクライナ13は、不図示の駆動ユニットのモータ駆動により、左右の各ジョイントJ1,J2,J5,J6により繋がれた個々のパネル材P1,P2,P6,P7の角度を調節する。
【0070】
具体的には、各ラウンドリクライナ13は、パネル材P1のパネル材P2に対する角度、パネル材P2のパネル材P3に対する角度、パネル材P6のパネル材P5に対する角度、パネル材P7のパネル材P6に対する角度をそれぞれ個々に調節する。
【0071】
中央のパネル材P4のフロアFに対する角度や位置は、前述した各インナアーム12の揺動や伸縮の動作によって調節される。また、パネル材P3のパネル材P4に対する角度やパネル材P5のパネル材P4に対する角度は、前述した各インナアーム12やアウタアーム11の揺動や伸縮の動作によって調節される。
【0072】
上記シートアジャスタ10により、シート装置1は、具体的には次のような動作によって、前述した各形態へと切り替えられる。すなわち、シート装置1は、
図14に示すように、
図2で示した正面着座モードM1に切り替えられる時には、各インナアーム12の揺動角度や伸縮長さによって、中央のパネル材P4のフロアFに対する高さ方向及びシート前後方向の位置や角度が定められる。
【0073】
そして、上記中央のパネル材P4に対する前後のパネル材P3,P5のそれぞれの角度は、各アウタアーム11の揺動角度や伸縮長さによって定められる。そして、上記パネル材P3,P5に対するパネル材P2,P6のそれぞれの角度、及びパネル材P2,P6に対するパネル材P1,P7のそれぞれの角度は、各ラウンドリクライナ13の駆動回動角度によって定められる。
【0074】
上記シートアジャスタ10による各パネル材P1~P7の位置及び角度の調節により、シート装置1を、
図15~
図23に示すように、
図3~
図13で示した各形態に切り替えることができる。なお、シート装置1を
図15~
図23に示す各形態に切り替えるためのシートアジャスタ10の各部の具体的な動作については、
図14で説明した各部の動作を基に、
図3~
図13で前述した各パネル材P1~P7の位置や角度の切り替えを参照することで理解することができるため、説明を省略することとする。
【0075】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシート装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0076】
すなわち、シート装置(1)は、シート座面が互いにジョイント(J1~J6)を介して1列並びに連結される複数枚のパネル材(P1~P7)から成る構成とされる。このシート装置(1)は、複数枚のパネル材(P1~P7)のフロア(F)に対する高さと個々の成す角度とを調節可能なシートアジャスタ(10)を有する。
【0077】
シートアジャスタ(10)が、複数枚のパネル材(P1~P7)を、ピッチング方向の回転により、シート正面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる正面着座モード(M1~M3)と、シート背面向きの着座と背凭れとが可能なシート座面を成す形に並べる背面着座モード(M10)と、に切り替え可能とされる。
【0078】
上記構成によれば、シートアジャスタ(10)により、複数枚のパネル材(P1~P7)から成るシート座面を、旋回させることなく正面向きと背面向きとに切り替えることができる。
【0079】
また、シートアジャスタ(10)が、複数枚のパネル材(P1~P7)のうち、正面着座モード(M1~M3)及び/又は背面着座モード(M10)においてシート座面を形成するパネル材の組み合わせパターンを変えることで座面長を調節する。上記構成によれば、シート装置(1)の座面長を、着座者の体格やとりたい姿勢に応じて適宜調節することができる。
【0080】
また、シートアジャスタ(10)が、更に、複数枚のパネル材(P1~P7)を、連続する1列の平坦状のシート座面を成す形に並べるフラットモード(M4~M6)にも切り替え可能とされる。上記構成によれば、シート装置(1)をフラットモード(M4~M6)に切り替えることで、1人の着座者がシート座面上に安楽な姿勢で寝転ぶことが可能となる。
【0081】
また、シートアジャスタ(10)が、更に、複数枚のパネル材(P1~P7)を、2人の着座者の着座が可能な連続する或いは断続する1列のシート座面を成す形に並べる複数人掛けモード(M5~M9)にも切り替え可能とされる。上記構成によれば、シート装置(1)を、1人掛け用と複数人掛け用とに切り替えることができる。
【0082】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0083】
1.本発明のシート装置は、自動車用シートの他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の車両以外の乗物にも適用することができるものである。また、シート装置は、乗物の他、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置される観覧席やマッサージシート等の乗物以外にも適用することができるものである。
【0084】
2.シート装置を構成する複数枚のパネル材は、シートアジャスタによって1人掛けモードと複数人掛けモードとに切り替え可能に構成されるものであれば良く、具体的な枚数は特に限定されるものではない。
【0085】
3.シートアジャスタは、使用者によるロック・解除の手動操作によって各パネル材のフロアに対する位置と個々の成す角度とを調節するものであっても良い。また、シートアジャスタは、全てのジョイントの角度調節を、アームの揺動や伸縮動作、或いはラウンドリクライナの駆動回動によって調節するものであっても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 シート装置
10 シートアジャスタ
11 アウタアーム
11A 回転軸
11B 伸縮部
12 インナアーム
12A 回転軸
12B 伸縮部
13 ラウンドリクライナ
P1~P7 パネル材
J1~J6 ジョイント
M1 正面着座モード
M2 第1のリラックスモード(正面着座モード)
M3 第2のリラックスモード(正面着座モード)
M4 ベッドモード(フラットモード)
M5 部分フラットモード(複数人掛けモード、フラットモード)
M6 フルフラットモード(複数人掛けモード、フラットモード)
M7 立ち座りモード(複数人掛けモード)
M8 ファミリモード(複数人掛けモード)
M9 背凭れ付き立ち座りモード(複数人掛けモード)
M10 背面着座モード
F フロア
B ベース