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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141005
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】磁気エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
G01D5/245 110X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041115
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小村 隆司
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA41
2F077AA42
2F077NN02
2F077NN03
2F077NN08
2F077NN19
2F077PP05
2F077VV02
2F077VV03
2F077VV04
(57)【要約】
【課題】安定した状態で積み重ねができるとともに、磁性体の被検出面を広く確保することができる磁気エンコーダを提供する。
【解決手段】軸回転する回転側部材に装着される磁気エンコーダ1であって、前記回転側部材の周面に嵌合される円筒部110と、該円筒部の軸方向の一端部110aから径方向の外側に屈曲するとともに、前記円筒部の内周面110bに連続して傾斜する傾斜面111aを有する傾斜部111と、該傾斜部の軸方向の一端部111bから径方向の外側に屈曲するとともに径方向の外側に延びる円板部112とを備えた芯体部材11と、前記傾斜部の前記傾斜面及び前記円板部の一側面112aに固着される環状の磁性体12とを備え、前記磁性体は、その一方の端部12aが前記円筒部の内周面110bよりも径方向の内側に張り出す張り出し部120を有するとともに、その他方の端部12bは前記円板部の縁部112bに回り込むように設けられた回り込み縁部121を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回転する回転側部材に装着される磁気エンコーダであって、
前記回転側部材の周面に嵌合される円筒部と、該円筒部の軸方向の一端部から径方向の外側に屈曲するとともに前記円筒部の内周面に連続して傾斜する傾斜面を有する傾斜部と、該傾斜部の軸方向の一端部から径方向の外側に屈曲するとともに径方向の外側に延びる円板部とを備えた芯体部材と、
前記傾斜部の前記傾斜面及び前記円板部の一側面に固着される環状の磁性体とを備え、
前記磁性体は、その一方の端部が前記円筒部の内周面よりも径方向の内側に張り出す張り出し部を有するとともに、その他方の端部は前記円板部の縁部に回り込むように設けられた回り込み縁部を有することを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項2】
軸回転する回転側部材に装着される磁気エンコーダであって、
前記回転側部材の周面に嵌合される円筒部と、該円筒部の軸方向の一端部から径方向の内側に屈曲するとともに前記円筒部の外周面に連続して傾斜する傾斜面を有する傾斜部と、該傾斜部の軸方向の一端部から径方向の内側に屈曲するとともに径方向の内側に延びる円板部とを備えた芯体部材と、
前記傾斜部の前記傾斜面及び前記円板部の一側面に固着される環状の磁性体とを備え、
前記磁性体は、その一方の端部が前記円筒部の外周面よりも径方向の外側に張り出す張り出し部を有するとともに、その他方の端部は前記円板部の縁部に回り込むように設けられた回り込み縁部を有することを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記磁性体の前記張り出し部が含む端面は、傾斜したテーパー形状であることを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記円筒部と前記傾斜部とがなす角は、前記傾斜部と前記円板部とがなす角よりも小さいことを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項において、
前記張り出し部には、前記円筒部の軸方向の他端部よりも凹んだ段差部が形成されていることを特徴とする磁気エンコーダ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸回転する回転側部材に装着される磁気エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車軸等の軸回転する回転側部材に装着される磁気エンコーダが知られている。このような磁気エンコーダでは、回転側部材に嵌合する芯体部材の磁気センサに対向する面にN極とS極が周方向に交互に着磁された環状の磁性体が固着されている。回転側部材が回転することによって磁性体も同軸に回転し、磁気センサが磁気の変化を検出することによって、回転側部材の回転数等を計測することができる。
【0003】
このような磁気エンコーダを備えた密封装置としては、たとえば下記特許文献1が挙げられる。この密封装置は、回転側部材に嵌合される第一の芯金と、固定側部材に嵌合される第二の芯金と、第二の芯金に固着されたシール材とにより、回転側部材と固定側部材との間を密封する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-304827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示されるような密封装置を複数個、積み重ねて搬送する際には、第二の芯金の円輪部が磁性体に重なることになる。そのため、磁性体の上に、別の密封装置を積み重ねても、密封装置同士が嵌まり込むような問題は生じない。しかしながら、第一の芯金及び磁性体の他に、第二の芯金及びシール材を有する密封装置でなく、芯体部材と磁性体とで構成される磁気エンコーダを複数個、積み重ねる場合には、以下問題があった。
【0006】
図6には、芯体部材と磁性体とで構成される磁気エンコーダ同士を積み重ねた状態を示している。ここに示すように、磁気エンコーダ100A,100B同士を積み重ねる際には、磁気エンコーダ100Aの磁性体200の上方に、磁気エンコーダ100Bの円筒部101の端部101aが載置される。このとき、図6のY部に示すように、円筒部101の面取部102が磁性体200の面取部202に嵌まり込むと、上方の磁気エンコーダ100Bが不安定となり、バラけ易くなり、積み重ねが崩れてしまう。またこのように磁気エンコーダ100Bの円筒部101の端部101aが下方の磁気エンコーダ100Aの面取部202に完全に嵌まり込むと、円筒部101に歪みが発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みて提案されたもので、その目的は、安定した状態で積み重ねができるとともに、磁性体の被検出面を広く確保することができる磁気エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の磁気エンコーダは、軸回転する回転側部材に装着される磁気エンコーダであって、前記回転側部材の周面に嵌合される円筒部と、該円筒部の軸方向の一端部から径方向の外側に屈曲するとともに、前記円筒部の内周面に連続して傾斜する傾斜面を有する傾斜部と、該傾斜部の軸方向の一端部から径方向の外側に屈曲するとともに径方向の外側に延びる円板部とを備えた芯体部材と、前記傾斜部の前記傾斜面及び前記円板部の一側面に固着される環状の磁性体とを備え、前記磁性体は、その一方の端部が前記円筒部の内周面よりも径方向の内側に張り出す張り出し部を有するとともに、その他方の端部は前記円板部の縁部に回り込むように設けられた回り込み縁部を有する。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の他の磁気エンコーダは、軸回転する回転側部材に装着される磁気エンコーダであって、前記回転側部材の周面に嵌合される円筒部と、該円筒部の軸方向の一端部から径方向の内側に屈曲するとともに前記円筒部の外周面に連続して傾斜する傾斜面を有する傾斜部と、該傾斜部の軸方向の一端部から径方向の内側に屈曲するとともに径方向の内側に延びる円板部とを備えた芯体部材と、前記傾斜部及び前記円板部に固着され磁性ゴムからなる環状の磁性体とを備え、前記磁性体は、その一方の端部が前記円筒部の外周面よりも径方向の外側に張り出すように設けられた張り出し部を有するとともに、その他方の端部は前記円板部の縁部に回り込むように設けられた回り込み縁部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁気エンコーダは、上述した構成とされているため、安定した状態で積み重ねができるとともに、磁性体の被検出面を広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る磁気エンコーダが適用される軸受装置の一例を示す概略的縦断面図である。
図2図1のX部の拡大図であって、本発明の一実施形態に係る磁気エンコーダを模式的に示す概略的縦断面図である。
図3】同磁気エンコーダを積み重ねた状態を模式的に示す概略的縦断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る磁気エンコーダを積み重ねた状態を模式的に示す概略的縦断面図である。
図5】(a)(b)は、それぞれ本発明の他の実施形態に係る磁気エンコーダの変形例を模式的に示す概略的縦断面図である。
図6】従来の磁気エンコーダを積み重ねた状態を模式的に示す概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している符号の一部を省略している。また、以下において、軸方向に沿って車体に向く側(図1において右側)を車体側、車輪に向く側(図1において左側)を車輪側とする。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態について、図1図3を参照しながら説明する。
本実施形態における磁気エンコーダ10は、軸回転する回転側部材である内輪3に装着される。磁気エンコーダ10は、芯体部材11と磁性体12とを備える。芯体部材11は、回転側部材の周面に嵌合される円筒部110を備える。また、芯体部材11は、円筒部110の軸方向の一端部110aから径方向の外側に屈曲するとともに、円筒部110の内周面110bに連続して傾斜する傾斜面111aを有する傾斜部111を備える。さらに、芯体部材11は、傾斜部111の軸方向の一端部111bから径方向の外側に屈曲するとともに径方向の外側に延びる円板部112を備える。磁性体12は環状であり、傾斜部111の傾斜面111a及び円板部112の一側面112aに固着される。磁性体12は、その一方の端部12aが円筒部110の内周面110bよりも径方向の内側に張り出す張り出し部120を有するとともに、その他方の端部12bは円板部112の縁部112bに回り込むように設けられた回り込み縁部121を有する。
以下、詳述する。
【0014】
図1は、自動車の車輪(不図示)を軸回転可能に支持する軸受装置1を示す。本実施形態における磁気エンコーダ10は、図1に示すように、軸回転する回転側部材である内輪3に装着される構成となっている。
【0015】
図1に示す軸受装置1は、自動車の駆動輪を回転自在に支持するハブベアリングである。この軸受装置1は、外輪2と、ハブ輪4と、このハブ輪4の車体側に嵌合一体とされる内輪部材5と、外輪2とハブ輪4及び内輪部材5との間に介装される2列の転動体(ボール)8,8・・・と、を備えている。内輪3は、ハブ輪4及び内輪部材5とで構成される。外輪2は自動車の車体に固定される。内輪3(ハブ輪4及び内輪部材5)は外輪2に対して、軸L回りに同軸回転可能とされる。外輪2と内輪3との間には、転動体8・・・がリテーナ7に保持された状態で、外輪2の外輪側軌道輪2aと、ハブ輪4及び内輪部材5の内輪側軌道輪4a,5aとを転動し得るように介装されている。転動体8・・・の介装部分を含む外輪2と内輪3との間が環状の被密封空間としての環状空間Sとされ、この環状空間Sには、転動体8・・・の転動を円滑にするための潤滑剤(例えば、グリース)が充填される。ハブ輪4は、円筒状(円柱状)のハブ輪本体40と、ハブ輪本体40の車輪側一端部40aから連続して拡径して形成されたフランジ部41と、フランジ部41を介して外径側に延出されたハブフランジ42を有する。ハブフランジ42にボルト43及び不図示のナットによって車輪が取付固定される。ハブ輪4と内輪部材5とは、ハブ輪4の車体側の端部を内輪部材5にかしめることによって一体とされる。
【0016】
環状空間Sの車体側の端部は、外輪2の開口部を封止するキャップ9によって密封される。キャップ9は、外輪2の車体側の外周面2bに嵌合(外嵌)される円筒部9aと、外輪2の開口部を封止し、外輪2の車体側の端面2cに当接する円板部9bとを有している。この円板部9bの外周縁部に円筒部9aが一連状に形成されている。環状空間Sの車輪側の端部は、ベアリングシール(密封装置)90によって密封される。つまり、これらキャップ9及びベアリングシール90が密封部材として機能し、これらによって環状空間Sの軸L方向の両端部が密封され、環状空間S内への汚泥等の侵入や環状空間S内に充填された潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が抑制される。
【0017】
磁気エンコーダ10は、内輪3の一部を構成する内輪部材5の車体側の端部5bの外周面50aに嵌合(外嵌)されている。内輪部材5の車体側の端部5bには径方向の内側に段落ちした段部50が形成されている。磁気エンコーダ10の磁性体12の車体側に、キャップ9の円板部9bの外周側部位を介して対向するように磁気センサGが車体に設置される。この磁気センサGを車体に設置した状態で、回転側部材である内輪3(ハブ輪4及び内輪部材5)が軸L周りに回転すれば、磁性体12による磁気変化が磁気センサGによって検出される。この磁気変化の検出によって、ハブ輪4に取り付けられる車輪の回転数等の回転状態のデータを得ることができる。
【0018】
次に、図1のX部の拡大図である図2を参照しながら、磁気エンコーダ10の構成について説明する。
磁気エンコーダ10は、芯体部材11と、芯体部材11に固着されている磁性体12とを備えている。芯体部材11は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されている。芯体部材11は、円筒部110と傾斜部111と円板部112とを備える。円筒部110は、内周面110bが内輪部材5の車体側の端部5bに形成された段部50の外周面50aに嵌合(外嵌)される。円筒部110の軸方向の他端部(車輪側の端部)111cにおいて外周面110d側には、面取部110eが形成されている。円筒部110の軸方向の他端部110cは、段部50の車体側の面50bに当接する。傾斜部111は、円筒部110の軸方向の一端部(車体側の端部)110aから径方向の外側に屈曲するとともに、円筒部110の内周面110bに連続する傾斜面111aを有して形成されている。円板部112は、傾斜部111の軸方向の一端部(車体側の端部)111bから径方向の外側に屈曲するとともに径方向の外側に延びて形成されている。傾斜部111の傾斜面111aは、径方向の外側に向って直線的に延出する面である。
【0019】
また、芯体部材11は、円筒部110と傾斜部111とがなす角である第1屈曲角度θ1が、傾斜部111と円板部112とがなす角である第2屈曲角度θ2よりも小さくなるように形成されている。第1屈曲角度θ1が第2屈曲角度θ2よりも小さいので、円筒部110に対する傾斜部111の傾斜を緩やかにでき、ひいては傾斜部111の傾斜面111aを広く確保することができる。したがって、後述する磁性体12の接合縁12dから磁性体12の張り出し部120の最内径側の端部120aまでの距離を長く確保できる。そのため、第1屈曲角度θ1が第2屈曲角度θ2より大きい場合よりも、後述する張り出し部120の張り出し量を拡大することができ、磁性体12の被検出面12cを大きくすることができる。第1屈曲角度θ1の大きさは特に限定されることはないが、約15~30度の範囲で構成されるのが望ましい。そして、第2屈曲角度θ2は、円板部112が円筒部110に対して略直交するような位置関係になる角度であればよい。
【0020】
磁性体12は、磁性ゴムからなる環状の部材であり、芯体部材11の傾斜部111の傾斜面111a及び円板部112の一側面(車体側の面)112aに固着されている。磁性体12の被検出面(磁気センサGと対向する車体側の面)12cは、N極とS極が周方向に交互に着磁されている。磁性体12の被検出面12cは、その内径側の端部と外径側の端部に面取りが設けられている。磁性体12は、一方の端部(内径側の端部)12aが芯体部材11の円筒部110の内周面110bよりも径方向の内側に張り出す張り出し部120を有する。また、磁性体12は、他方の端部(外径側の端部)12bが、芯体部材11の円板部112の縁部(外径側の端部)112bを回り込むように設けられた回り込み縁部121を有する。回り込み縁部121は、円板部112の縁部112bを回り込んで、円板部112の車輪側の面112cの外径側の一部にまで至る。磁性体12の一部を構成する回り込み縁部121は、円板部112の縁部112bを包み込むように回り込んで設けられている。よって、例えば円板部112の一側面112aの途中の位置までしか固着されていない図6のようなものと比べて、磁性体12の被検出面12cを径方向の外側に確保することができる。また回り込み縁部121が設けられることによって、後述する被検出面12cを径方向の内側に確保する張り出し部120と合わせて、磁性体12の被検出面12cを限られたスペース内で簡易に広く確保することができる。
【0021】
磁性体12の張り出し部120を含む端面(内径側の端面)12eは、傾斜したテーパー形状に形成されている。これにより、磁性体12の被検出面12cを広く確保することができる。なお、磁性体12の端面12eは、張り出し部120の最内径側の端部120aが芯体部材11の内周面110bよりも内径側に張り出していれば、傾斜角度αは特に限定されることはないが、0度よりも大きく10度以下であることが望ましい。そのような傾斜角度αであれば、磁気エンコーダ10の上に他の磁気エンコーダ10’を積み重ねても、他の磁気エンコーダ10’の重みによって磁性体12が変形することを抑制する強度が得られる。本実施形態においては、磁性体12の端面12eの傾斜角度αは、約5度である。また、張り出し部120の端面12eは、その車体側の外縁が、円筒部110の内周面110bと径方向において同じ位置に形成されている。なお、上記第1実施形態の構成に限定されず、例えば、張り出し部120の端面12eは、その車体側の外縁が、円筒部110の内周面110bよりも内側となるように設けてもよい。
【0022】
以上のようにして、本実施形態の磁気エンコーダ10は構成される。図3に示すように、磁気エンコーダ10の磁性体12の被検出面12cの上に、他の磁気エンコーダ10’における芯体部材11の円筒部110の他端部110cが接するように載置して、磁気エンコーダ10の上に、他の磁気エンコーダ10’を積み重ねることができる。
【0023】
磁気エンコーダ10の磁性体12は、張り出し部120を有しているので、磁性体12の上に他の磁気エンコーダ10’の円筒部110が積み重ねられても、その積み重ねられた円筒部110の軸方向の他端部110cが磁性体12の上に収まるように配置しやすい。そのため、例えば、複数の磁気エンコーダ10を積み重ねる時や搬送する時に芯体部材11の円筒部110が傾いてズレが生じても、円筒部110が下方の部材に嵌まり込むことを抑えることができる。また、磁性体12の接合縁12dが傾斜部111の傾斜面111aに存在する。そのため、図6に示すような従来の磁気エンコーダ100Aのように、磁性体200の接合縁203が円筒部101から連続する曲面103に存在するものと比べて、本実施形態の磁気エンコーダ10の磁性体12が芯体部材11の境界面から剥がれることが抑制される。
【0024】
<第2実施形態>
次に、図4を参照しながら第2実施形態に係る磁気エンコーダ10Aについて説明する。なお、第1実施形態と共通する構成や効果の説明については省略する。また、図4図5の紙面上において、上側を軸方向の一方側(車体側)、下側を軸方向の他方側(車輪側)、右側及び左側を径方向の外側(外径側)、左右方向において中央側を径方向の内側(内径側)として説明する。
【0025】
本実施形態の磁気エンコーダ10Aは、第1実施形態の磁気エンコーダ10と同様に、軸回転する回転側部材である内輪3に装着される。磁気エンコーダ10Aは、芯体部材11と磁性体12とを備える。芯体部材11は、回転側部材の周面に嵌合される円筒部110を備える。また、芯体部材11は、円筒部110の軸方向の一端部110aから径方向の内側に屈曲するとともに、円筒部110の外周面110dに連続して傾斜する傾斜面111aを有する傾斜部111を備える。さらに、芯体部材11は、傾斜部111の軸方向の一端部111bから径方向の内側に屈曲するとともに径方向の内側に延びる円板部112を備える。磁性体12は環状であり、傾斜部111の傾斜面111a及び円板部112の一側面112aに固着される。磁性体12は、その一方の端部12aが円筒部110の外周面110dよりも径方向の外側に張り出す張り出し部120を有するとともに、その他方の端部12bは円板部112の縁部112bに回り込むように設けられた回り込み縁部121を有する。
以下、詳述する。
【0026】
磁気エンコーダ10Aは、図1に示すような軸受装置1の回転側部材である内輪3をハブ輪4とで構成する内輪部材5の車体側の端部5bの外周面50aに嵌合(外嵌)される。第1実施形態と同様に、磁気エンコーダ10Aは、内輪部材5の外周面50aに嵌合される芯体部材11と、芯体部材11に固着される磁性体12とを備える。芯体部材11は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されている。芯体部材11は、円筒部110と傾斜部111と円板部112とを備える。円筒部110は、内周面110bが内輪部材5の車体側の端部5bに形成された段部50の外周面50aに嵌合(外嵌)される。円筒部110の軸方向の他端部(車輪側の端部)111cの内周面110b側には、面取部110eが形成されている。傾斜部111は、円筒部110の軸方向の一端部(車体側の端部)110aから径方向の内側に屈曲するとともに、円筒部110の外周面110dに連続する傾斜面111aを有して形成されている。円板部112は、傾斜部111の軸方向の一端部(車体側の端部)111bから径方向の内側に屈曲するとともに径方向の内側に延びて形成されている。
【0027】
また、芯体部材11は、円筒部110と傾斜部111とがなす角である第1屈曲角度θ1が、傾斜部111と円板部112とがなす角である第2屈曲角度θ2よりも小さくなるように形成されている。
【0028】
磁性体12は、磁性ゴムからなる環状の部材であり、芯体部材11の傾斜部111の傾斜面111a及び円板部112の一側面(車体側の面)112aに固着されている。磁性体12の被検出面12cは、N極とS極が周方向に交互に着磁されている。磁性体12は、一方の端部(第1実施形態とは異なり外径側の端部)12aが芯体部材11の円筒部110の外周面110dよりも径方向の外側に張り出す張り出し部120を有する。また、磁性体12は、他方の端部(第1実施形態とは異なり内径側の端部)12bが、芯体部材11の円板部112の縁部(第1実施形態とは異なり内径側の端部)112bを回り込むように設けられた回り込み縁部121を有する。回り込み縁部121は、円板部112の縁部112bを回り込んで、円板部112の車輪側の面112cの内径側の一部にまで至る。
【0029】
磁性体12の張り出し部120を含む端面(外径側の端面)12eは、傾斜したテーパー形状に形成されている。なお、磁性体12の端面12eは、最外径側の端部120aが芯体部材11の外周面110dよりも外径側に張り出していれば、傾斜角度αは特に限定されることはないが、0度よりも大きく10度以下であることが望ましい。本実施形態においては、磁性体12の端面12eの傾斜角度αは、第1実施形態と同様に約5度である。
【0030】
以上のようにして、本実施形態の磁気エンコーダ10Aは構成されている。本実施形態の磁気エンコーダ10Aは、第1実施形態の磁気エンコーダ10と異なり、径方向の内側に屈曲して傾斜部111及び円板部112が形成されている。それに伴い磁性体12の張り出し部120が外径側に形成されている。本実施形態の磁気エンコーダ10Aは、第1実施形態と同様に、図4に示すように磁気エンコーダ10Aの上に、他の磁気エンコーダ10A’を積み重ねることができ、その他の効果についても第1実施形態の磁気エンコーダ10と同様の効果を奏する。
【0031】
<第2実施形態の変形例>
次に第2実施形態の変形例について、図5(a)(b)を参照しながら説明する。なお、第2実施形態と共通する構成や効果の説明については省略する。
図5(a)(b)の磁気エンコーダ10B,10Cは、第2実施形態の磁気エンコーダ10Aとは磁性体12の構成が異なっており、芯体部材11の構成は略同一である。
【0032】
図5(a)の磁気エンコーダ10Bの磁性体12は、接合縁12dから軸方向の一方側(図5の紙面上において上側)に延びるように端面12eが形成され、端面12eの軸方向の一方側の端部12fから径方向の外側に傾斜して張り出し部120が形成されている。張り出し部120は、最外径側の端部120aが円筒部110の外周面110dよりも径方向の外側に張り出すように設けられている。磁性体12の端面12eの端部12fは、軸方向において芯体部材11の円板部112の一側面112aと略同一の位置である。第1,2実施形態のものとは異なり、磁性体12の端面12eは接合縁12dから傾斜せずに形成されている。張り出し部120は、磁性体12の軸方向一方側の外径側の端部12aが円筒部110の外周面110dよりも外径側に張り出して形成されている。張り出し部120を端面12eの端部12fから傾斜して形成することによって、磁性体12を形成するのに使用する磁性ゴムの量を抑えながらも、磁性体12の被検出面12cの面積を大きく確保することができる。ひいては、磁気エンコーダ10Bの上に他の磁気エンコーダ10B’を積み重ねやすくなっている。本実施形態における張り出し部120の傾斜角度βは、第1,2実施形態の張り出し部120の傾斜角度αよりも大きく形成されており、約30度である。
【0033】
図5(b)の磁気エンコーダ10Cの磁性体12は、張り出し部120に芯体部材11の円筒部110の軸方向の他端部110cよりも大きく凹んだ段差部122が形成されている。より詳しく説明すると、段差部122は、張り出し部120を含む磁性体12の被検出面12cの径方向の外側の端部が、軸方向の他方側に段落ちして形成されている。この段落ちしている面積は、円筒部110の軸方向の他端部110cの端面110caよりも大きく形成されている。そのため、磁気エンコーダ10Cの段差部122に他の磁気エンコーダ10C’の円筒部110の軸方向の他端部110cが載置されることによって、磁気エンコーダ10Cの上により安定して他の磁気エンコーダ10Cを積み重ねることができる。段差部122の軸方向の他方側に段落ちする寸法は特に限定されることはないが、0.2mm程度段落ちしていればよい。0.2mm程度の段落ちであれば、磁性体12の磁力低下はほとんどなく、磁気センサGによる磁気変化の検出に与える影響はほとんどない。
【0034】
図5(a)(b)に示すような磁性体12は、第1実施形態の磁気エンコーダ10に適用されてもよい。第1実施形態の磁気エンコーダ10の磁性体12に図5(a)の変形例を適用する場合には、磁性体12の接合縁12dから軸方向の車体側に延びるように端面12eが形成され、端面12eの端部12fから内径側に傾斜して張り出し部120が形成されればよい。また、第1実施形態の磁気エンコーダ10の磁性体12に図5(b)の変形例を適用する場合には、張り出し部120を含む磁性体12の被検出面12cの径方向の内側の端部が、軸方向の車輪側に段落ちして段差部122が形成されればよい。
【0035】
上述した各実施形態の磁気エンコーダ10~10Cは、図面の形状・構成に限定されることはない。例えば、芯体部材11は、SPCC又はSUS等の鋼板ではなく、剛性を有する樹脂材料等で形成されてもよい。また、磁性体12は、磁性を有するものであれば、磁性ゴムに限定されることはない。各種角度や寸法等も適宜設計されればよい。また、磁気エンコーダ10~10Cが適用される軸受装置1は、図面の形状・構成に限定されることはない。例えば、図において磁性体12の他方の端部12b側に設けられている回り込み縁部112近傍の面取りは、被検出面12cを大きく確保するために図例よりも小さく面取りされてもよく、また湾曲状であっても、面取りがされていなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 軸受装置
3 内輪(回転側部材)
4 ハブ輪
5 内輪部材
10,10A,10B,10C 磁気エンコーダ
11 芯体部材
110 円筒部
110a (軸方向の)一端部
110b 内周面
110c (軸方向の)他端部
110d 外周面
111 傾斜部
111a 傾斜面
111b (軸方向の)一端部
112 円板部
112a 一側面
112b 縁部
12 磁性体
12a (一方の)端部
12b (他方の)端部
12e 端面
120 張り出し部
121 回り込み縁部
122 段差部

図1
図2
図3
図4
図5
図6