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特開2022-141008監視装置、電力システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141008
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】監視装置、電力システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20220921BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220921BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220921BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220921BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 180
H02J7/00 302C
H02J7/00 L
H02J7/00 B
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041118
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HA06
5G066HA13
5G066HA15
5G066HB01
5G066HB03
5G066HB04
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503DA18
5G503GB06
5G503GD04
5H770AA19
5H770CA05
5H770DA22
5H770DA27
(57)【要約】
【課題】複数の分散電源を並列運転させる場合において、自立運転の制御を良好に行うことができる監視装置を提供する。
【解決手段】監視装置2は、受信部21と合計値算出部22と分配率算出部23Aと設定部24Aと第1算出部25と第2算出部26と送信部27とを備える。設定部24Aは、各インバータ装置1に対して、合計値算出部22によって算出される有効電力合計値と分配率算出部23Aによって算出される分配率とから有効電力目標値を算出し、合計値算出部22によって無効電力合計値と分配率算出部23Aによって算出される分配率とから無効電力目標値を算出する。第1算出部25は、各インバータ装置1の有効電力目標値および有効電力出力値が入力され、各インバータ装置1の電圧位相指令値を算出する。第2算出部26は、各インバータ装置1の無効電力目標値および無効電力出力値が入力され、各インバータ装置1の電圧振幅指令値を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインバータ装置の各々から有効電力出力値および無効電力出力値をそれぞれ受信する受信部と、
前記複数のインバータ装置の各々の有効電力目標値および無効電力目標値をそれぞれ設定する設定部と、
前記複数のインバータ装置の各々について、前記有効電力目標値および前記有効電力出力値が入力され、電圧位相指令値を算出する第1算出部と、
前記複数のインバータ装置の各々について、前記無効電力目標値および前記無効電力出力値が入力され、電圧振幅指令値を算出する第2算出部と、
前記電圧位相指令値および前記電圧振幅指令値を、対応するインバータ装置にそれぞれ送信する送信部と、
前記複数のインバータ装置の各々に対する分配率を算出する分配率算出部と、
前記複数のインバータ装置の各有効電力出力値の合計値である有効電力合計値と、前記複数のインバータ装置の各無効電力出力値の合計値である無効電力合計値とを算出する合計値算出部と、
を備え、
前記設定部は、前記複数のインバータ装置の各々に対して、前記有効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記有効電力目標値を算出し、前記無効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記無効電力目標値を算出する、
監視装置。
【請求項2】
前記分配率算出部は、前記複数のインバータ装置の個数の逆数を各インバータ装置の分配率として算出する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記分配率算出部は、前記複数のインバータ装置の各定格容量の合計値に対する前記インバータ装置の各々の定格容量の比率を、当該インバータ装置の分配率として算出する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
前記複数のインバータ装置は、各々が蓄電池を接続された複数の蓄電池制御装置を含み、
前記分配率算出部は、前記複数の蓄電池制御装置の各々について、複数の前記蓄電池の各定格容量の合計値に対する前記複数の蓄電池の各々の定格容量の比率を、当該蓄電池が接続された蓄電池制御装置の分配率として算出し、
前記受信部は、前記複数の蓄電池制御装置の各々から前記蓄電池の充電率を受信し、
前記設定部は、前記蓄電池の各充電率の平均値と各充電率との差分により、前記有効電力目標値を補正する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の監視装置と、
前記複数のインバータ装置と、
を備えており、
前記複数のインバータ装置の各々は、出力電圧を制御する制御部と、前記有効電力出力値および前記無効電力出力値を計測する計測部とを備え、
前記制御部は、前記電圧位相指令値および前記電圧振幅指令値に基づいて前記出力電圧を制御する、
電力システム。
【請求項6】
コンピュータを、
複数のインバータ装置の各々から有効電力出力値および無効電力出力値をそれぞれ受信する受信部と、
前記複数のインバータ装置の各々の有効電力目標値および無効電力目標値をそれぞれ設定する設定部と、
前記複数のインバータ装置の各々について、前記有効電力目標値および前記有効電力出力値が入力され、電圧位相指令値を算出する第1算出部と、
前記複数のインバータ装置の各々について、前記無効電力目標値および前記無効電力出力値が入力され、電圧振幅指令値を算出する第2算出部と、
前記電圧位相指令値および前記電圧振幅指令値を、対応するインバータ装置にそれぞれ送信する送信部と、
前記複数のインバータ装置の各々に対する分配率を算出する分配率算出部と、
前記複数のインバータ装置の各有効電力出力値の合計値である有効電力合計値と、前記複数のインバータ装置の各無効電力出力値の合計値である無効電力合計値とを算出する合計値算出部と、
として機能させ、
前記設定部は、前記複数のインバータ装置の各々に対して、前記有効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記有効電力目標値を算出し、前記無効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記無効電力目標値を算出する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視装置、電力システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池や蓄電池などを用いた分散電源の研究が進んでいる。一般的に、分散電源は、電力系統に連系しており、電力系統の系統電圧の位相を自分の内部位相として用い、電力制御を行っている(例えば特許文献1)。
【0003】
分散電源は、停電などにより電力系統に連系できず、自立運転を行う場合がある。この場合、分散電源は、電力系統の系統電圧から位相を検出することができないので、内部位相を自ら発振させ、これを用いて出力電圧制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-68630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の分散電源を並列に接続して、運転させることがある(並列運転)。この場合、分散電源の数、定格容量または種類などに応じて、適切な自立運転の制御が求められる。しかし、複数の分散電源のうちの1つが電圧源として動作し、他が電流源として動作するシステムでは、電圧源となる分散電源のみが負荷に即時追従するため、電圧源となる分散電源の容量を超える負荷が接続できない。この問題の対応策としては、電圧源となる分散電源と同等の処理速度で電流源となる分散電源も負荷追従させる必要があり、電流源となる分散電源に非常に高速な演算および制御が求められる。また、複数の分散電源のすべてが電圧源として動作するシステムでは、複数の分散電源間の同期における通信や各分散電源における計測誤差により、電位差・位相差が生じ、この電位差・位相差が問題となる。例えば、投入時の突入電流が発生するだけでなく、複数の分散電源間で有効電力や無効電力の意図せぬ回り込みが発生してしまう。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、複数の分散電源を並列運転させる場合において、自立運転の制御を良好に行うことができる電力システムを提供することにある。また、自立運転の制御を良好に行う電力システムを実現させる監視装置およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の側面によって提供される監視装置は、複数のインバータ装置の各々から有効電力出力値および無効電力出力値をそれぞれ受信する受信部と、前記複数のインバータ装置の各々の有効電力目標値および無効電力目標値をそれぞれ設定する設定部と、前記複数のインバータ装置の各々について、前記有効電力目標値および前記有効電力出力値が入力され、電圧位相指令値を算出する第1算出部と、前記複数のインバータ装置の各々について、前記無効電力目標値および前記無効電力出力値が入力され、電圧振幅指令値を算出する第2算出部と、前記電圧位相指令値および前記電圧振幅指令値を、対応するインバータ装置にそれぞれ送信する送信部と、前記複数のインバータ装置の各々に対する分配率を算出する分配率算出部と、前記複数のインバータ装置の各有効電力出力値の合計値である有効電力合計値と、前記複数のインバータ装置の各無効電力出力値の合計値である無効電力合計値とを算出する合計値算出部と、を備え、前記設定部は、前記複数のインバータ装置の各々に対して、前記有効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記有効電力目標値を算出し、前記無効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記無効電力目標値を算出する。
【0008】
前記監視装置の好ましい実施の形態において、前記分配率算出部は、前記複数のインバータ装置の個数の逆数を各インバータ装置の分配率として算出する。
【0009】
前記監視装置の好ましい実施の形態において、前記分配率算出部は、前記複数のインバータ装置の各定格容量の合計値に対する前記インバータ装置の各々の定格容量の比率を、当該インバータ装置の分配率として算出する。
【0010】
前記監視装置の好ましい実施の形態において、前記複数のインバータ装置は、各々が蓄電池を接続された複数の蓄電池制御装置を含み、前記分配率算出部は、前記複数の蓄電池制御装置の各々について、複数の前記蓄電池の各定格容量の合計値に対する前記複数の蓄電池の各々の定格容量の比率を、当該蓄電池が接続された蓄電池制御装置の分配率として算出し、前記受信部は、前記複数の蓄電池制御装置の各々から前記蓄電池の充電率を受信し、前記設定部は、前記蓄電池の各充電率の平均値と各充電率との差分により、前記有効電力目標値を補正する。
【0011】
本開示の第2の側面によって提供される電力システムは、第1の側面によって提供される監視装置と、前記複数のインバータ装置と、を備えており、前記複数のインバータ装置の各々は、出力電圧を制御する制御部と、前記有効電力出力値および前記無効電力出力値を計測する計測部とを備え、前記制御部は、前記電圧位相指令値および前記電圧振幅指令値に基づいて前記出力電圧を制御する。
【0012】
本開示の第3の側面によって提供されるプログラムは、コンピュータを、複数のインバータ装置の各々から有効電力出力値および無効電力出力値をそれぞれ受信する受信部と、前記複数のインバータ装置の各々の有効電力目標値および無効電力目標値をそれぞれ設定する設定部と、前記複数のインバータ装置の各々について、前記有効電力目標値および前記有効電力出力値が入力され、電圧位相指令値を算出する第1算出部と、前記複数のインバータ装置の各々について、前記無効電力目標値および前記無効電力出力値が入力され、電圧振幅指令値を算出する第2算出部と、前記電圧位相指令値および前記電圧振幅指令値を、対応するインバータ装置にそれぞれ送信する送信部と、前記複数のインバータ装置の各々に対する分配率を算出する分配率算出部と、前記複数のインバータ装置の各有効電力出力値の合計値である有効電力合計値と、前記複数のインバータ装置の各無効電力出力値の合計値である無効電力合計値とを算出する合計値算出部と、として機能させ、前記設定部は、前記複数のインバータ装置の各々に対して、前記有効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記有効電力目標値を算出し、前記無効電力合計値と各インバータ装置の分配率とから前記無効電力目標値を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の監視装置によれば、複数のインバータ装置を並列運転させる場合において、各インバータ装置の出力電力(有効電力および無効電力)が適切に分配されるように、各インバータ装置の動作を制御することができる。これにより、監視装置は、インバータ装置の数、定格容量または直流電源の種類などに応じた適切な自立運転の制御が可能となり、自立運転の制御を良好に行うことができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る電力システムの全体構成例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る電力システムの機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る監視装置の処理を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る電力システムの機能ブロック図である。
図5】第3実施形態に係る電力システムの全体構成例を示す図である。
図6】第3実施形態に係る電力システムの機能ブロック図である。
図7】第3実施形態に係る電力システムのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の監視装置、電力システムおよびプログラムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素には、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、第1実施形態に係る電力システムS1の全体構成例を示している。同図に示すように、電力システムS1は、複数のインバータ装置1と、監視装置2とを備えている。本実施形態では、電力システムS1は、n(nは自然数)台のインバータ装置1を備えるものとする。
【0018】
電力システムS1は、複数のインバータ装置1が互いに並列接続されている。電力システムS1は、電力系統Kから解列された状態において自立運転(非連系運転)を行う。電力システムS1は、複数のインバータ装置1と監視装置2とが協調して、自立運転の制御を行う。自立運転中は、複数のインバータ装置1から負荷Lに電力が供給される。電力システムS1は、複数のインバータ装置1のそれぞれと監視装置2とは互いに通信可能である。各インバータ装置1と監視装置2との通信は、無線であっても有線であってもよい。
【0019】
図1に示すように、複数のインバータ装置1には、直流電源19がそれぞれ接続されている。直流電源19は、例えば太陽電池などの再生可能エネルギーを利用した発電機、内燃機関または外燃機関を用いた発電機、または、蓄電池などである。各インバータ装置1は、直流電源19が発電した電力または直流電源19に蓄積された電力を、適宜変換して出力する。各インバータ装置1には、直流電源19の代わりに交流電源が整流回路を介して接続されていてもよい。
【0020】
図2は、電力システムS1の詳細を説明するための図であって、電力システムS1が行う自立運転制御に関する機能ブロック図である。
【0021】
複数のインバータ装置1はそれぞれ、監視装置2から受信する制御指令に基づいて、出力電力を制御する。各インバータ装置1は、電圧源として動作する電圧型インバータであり、出力電圧の制御によって出力電力の制御を行う。本実施形態では、複数のインバータ装置1は、それぞれの定格容量(定格出力)が同じである。図2に示すように、複数のインバータ装置1はそれぞれ、計測部11、送信部12、受信部13および制御部14を備える。
【0022】
計測部11は、自装置の有効電力の出力値および無効電力の出力値を計測する。以下では、iをn以下の自然数として、i台目のインバータ装置1の有効電力の出力値を有効電力出力値Pout_iといい、i台目のインバータ装置1の無効電力の出力値を無効電力出力値Qout_iという。計測部11は、各インバータ装置1において、出力端(図1の上側の端部)に配置されている。
【0023】
送信部12は、自装置の情報を、監視装置2に送信する。送信部12が送信する情報には、例えば、計測部11が計測した有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iが含まれる。送信部12は、所定の周期ごとに、自装置の情報を送信する。
【0024】
受信部13は、監視装置2から送信された制御指令を受信する。受信部13は、受信した制御指令を制御部14に出力する。制御指令には、電圧位相指令値および電圧振幅指令値が含まれる。電圧位相指令値は、出力電圧の位相の目標値または調整値であり、電圧振幅指令値は、出力電圧の振幅の目標値または調整値である。
【0025】
制御部14は、受信部13が受信した制御指令に基づいて自装置の出力電圧を制御する。制御部14は、図2に示すように、位相制御部141および振幅制御部142を含む。位相制御部141は、電圧位相指令値に基づいて、出力電圧の位相を制御する。電圧位相指令値が出力電圧の位相の目標値である場合、位相制御部141は、出力電圧の位相を電圧位相指令値に制御する。電圧位相指令値が出力電圧の位相の調整値である場合、位相制御部141は、出力電圧の位相を現在の値から電圧位相指令値の分だけ調整する。振幅制御部142は、電圧振幅指令値に基づいて、出力電圧の振幅を制御する。電圧振幅指令値が出力電圧の振幅の目標値である場合、振幅制御部142は、出力電圧の振幅を電圧振幅指令値に制御する。電圧振幅指令値が出力電圧の振幅の調整値である場合、振幅制御部142は、出力電圧の振幅を現在の値から電圧振幅指令値の分だけ調整する。
【0026】
監視装置2は、各インバータ装置1から情報を取得し、取得した情報を基にインバータ装置1ごとの制御指令(電圧位相指令値および電圧振幅指令値)を生成する。監視装置2は、生成した制御指令を、各インバータ装置1に送信する。図2に示すように、監視装置2は、受信部21、合計値算出部22、分配率算出部23A、設定部24A、第1算出部25、第2算出部26および送信部27を備える。
【0027】
受信部21は、各インバータ装置1から送信された情報を受信する。受信部21が受信する情報には、各インバータ装置1の有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iが含まれる。受信部21は、受信した有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iを合計値算出部22に出力する。また、受信部21は、受信した有効電力出力値Pout_iを第1算出部25に出力し、かつ、受信した無効電力出力値Qout_iを第2算出部26に出力する。
【0028】
合計値算出部22は、各インバータ装置1の有効電力出力値Pout_iを積算して、有効電力合計値Psumを算出する。また、合計値算出部22は、各インバータ装置1の無効電力出力値Qout_iを積算して、無効電力合計値Qsumを算出する。合計値算出部22は、算出した有効電力合計値Psumおよび無効電力合計値Qsumを設定部24Aに出力する。
【0029】
分配率算出部23Aは、各インバータ装置1に対する分配率をそれぞれ算出する。分配率算出部23Aは、インバータ装置1の個数nの逆数1/nを、各インバータ装置1の分配率として算出する。インバータ装置1の個数nの情報は、ユーザ入力によって監視装置2(分配率算出部23A)に予め記憶させてもよいし、電力システムS1の運転開始時に監視装置2が制御対象となるインバータ装置1をカウントしてもよい。分配率算出部23Aは、算出した分配率を設定部24Aに出力する。
【0030】
設定部24Aは、インバータ装置1ごとに、有効電力出力値の目標値、および、無効電力出力値の目標値を設定する。以下では、i台目のインバータ装置1の有効電力出力値の目標値を有効電力目標値Pref_iといい、i台目のインバータ装置1の無効電力出力値の目標値を無効電力目標値Qref_iという。有効電力目標値Pref_iは、有効電力合計値Psumを、複数のインバータ装置1の各々に分配した値である。無効電力目標値Qref_iは、無効電力合計値Qsumを、複数のインバータ装置1の各々に分配した値である。
【0031】
図2に示すように、設定部24Aは、2つの乗算器241P,241Qを含む。各インバータ装置1の有効電力目標値Pref_iは、乗算器241Pによって演算され、各インバータ装置1の無効電力目標値Qref_iは、乗算器241Qによって演算される。
【0032】
乗算器241Pは、インバータ装置1ごとに、有効電力合計値Psumと分配率とが入力され、有効電力合計値Psumを分配率で乗算する。設定部24Aは、乗算器241Pによる乗算結果を有効電力目標値Pref_iとして設定する。本実施形態では、分配率が複数のインバータ装置1の個数の逆数であることから、乗算器241Pによる乗算結果は、有効電力合計値Psumを複数のインバータ装置1の個数nで除算した値である。つまり、有効電力目標値Pref_iは、有効電力出力値Pout_iの平均値であり、有効電力合計値Psumを複数のインバータ装置1で均等に分配した値である。
【0033】
乗算器241Qは、インバータ装置1ごとに、無効電力合計値Qsumと分配率とが入力され、無効電力合計値Qsumを分配率で乗算する。設定部24Aは、乗算器241Qによる乗算結果を無効電力目標値Qref_iとして設定する。本実施形態では、分配率が複数のインバータ装置1の個数の逆数であることから、乗算器241Qによる乗算結果は、無効電力合計値Qsumを複数のインバータ装置1の個数nで除算した値である。つまり、無効電力目標値Qref_iは、無効電力出力値Qout_iの平均値であり、無効電力合計値Qsumを複数のインバータ装置1で均等に分配した値である。
【0034】
第1算出部25は、各インバータ装置1の電圧位相指令値をそれぞれ算出する。第1算出部25は、算出対象とするi台目のインバータ装置1の、有効電力目標値Pref_iおよび有効電力出力値Pout_iが入力される。第1算出部25は、入力された有効電力目標値Pref_iおよび有効電力出力値Pout_iから、算出対象のインバータ装置1の電圧位相指令値を算出する。第1算出部25は、この演算を、複数のインバータ装置1のそれぞれに対して行う。第1算出部25は、算出した各インバータ装置1の電圧位相指令値を送信部27に出力する。図2に示すように、第1算出部25は、差分器251と制御器252とを含む。
【0035】
差分器251は、算出対象のi台目のインバータ装置1の有効電力目標値Pref_iと有効電力出力値Pout_iとが入力され、有効電力出力値Pout_iと有効電力目標値Pref_iとの偏差ΔPi(=Pout_i-Pref_i)を算出する。差分器251は、偏差ΔPiの算出を、複数のインバータ装置1のそれぞれに対して行う。制御器252は、算出対象のi台目のインバータ装置1に対して、偏差ΔPiをゼロにするための電圧位相指令値を算出する。制御器252は、例えば比例制御(P制御)を行う。制御器252の制御方式は、比例制御に限定されず、例えば比例制御の代わりにPI制御またはPID制御などを行っていてもよい。制御器252は、電圧位相指令値の算出を、複数のインバータ装置1のそれぞれに対して行う。
【0036】
第2算出部26は、各インバータ装置1の電圧振幅指令値をそれぞれ算出する。第2算出部26は、算出対象とするi台目のインバータ装置1の、無効電力目標値Qref_iおよび無効電力出力値Qout_iが入力される。第2算出部26は、入力された無効電力目標値Qref_iおよび無効電力出力値Qout_iから、算出対象のインバータ装置1の電圧振幅指令値を算出する。第2算出部26は、この演算を、複数のインバータ装置1のそれぞれに対して行う。第2算出部26は、算出した各インバータ装置1の電圧振幅指令値を送信部27に出力する。図2に示すように、第2算出部26は、差分器261と制御器262とを含む。
【0037】
差分器261は、算出対象のi台目のインバータ装置1の無効電力目標値Qref_iと無効電力出力値Qout_iとが入力され、無効電力出力値Qout_iと無効電力目標値Qref_iとの偏差ΔQi(=Qout_i-Qref_i)を算出する。差分器261は、偏差ΔQiの算出を、複数のインバータ装置1のそれぞれに対して行う。制御器262は、算出対象のi台目のインバータ装置1に対して、偏差ΔQiをゼロにするための電圧振幅指令値を算出する。制御器262は、例えば比例制御を行う。制御器262の制御方式は、比例制御に限定されず、例えば比例制御の代わりにPI制御またはPID制御などを行っていてもよい。制御器262は、電圧振幅指令値の算出を、複数のインバータ装置1のそれぞれに対して行う。
【0038】
送信部27は、インバータ装置1ごとに、電圧位相指令値および電圧振幅指令値を含む制御指令を、各インバータ装置1に送信する。電圧位相指令値は、第1算出部25から入力され、電圧振幅指令値は、第2算出部26から入力される。
【0039】
図3は、電力システムS1の自立運転制御において、監視装置2が行う処理を示すフローチャートである。当該処理は、監視装置2が起動されたときに開始される。
【0040】
各インバータ装置1から有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iが送信されると、受信部21が、各インバータ装置1から送信された有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iを受信する(S101:YES)。ステップS101で、受信部21が、有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iを受信しない場合(S101:NO)、受信部21は、有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iを受信するまで待機する。
【0041】
次に、合計値算出部22が、有効電力合計値Psumおよび無効電力合計値Qsumを算出する(S102)。次に、分配率算出部23Aが、各インバータ装置1に対する分配率を算出する(S103)。図3に示す例では、ステップS103は、受信部21が有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iを受信する度に行われるが、監視装置2の起動時にのみ行う構成であってもよい。
【0042】
次に、設定部24Aが、各インバータ装置1の有効電力目標値Pref_iおよび無効電力目標値Qref_iを設定する(S104)。次に、第1算出部25が、各インバータ装置1の電圧位相指令値を算出し、かつ、第2算出部26が、各インバータ装置1の電圧振幅指令値を算出する(S105)。次に、送信部27が、電圧位相指令値および電圧振幅指令値を含む制御指令を、各インバータ装置1に送信する(S106)。
【0043】
その後、監視装置2は、終了判定を行い(S107)、終了でないと判定すると(S107:NO)、ステップS101に戻り、終了と判定されるまで、ステップS101からステップS106の処理を繰り返し行う。一方、ステップS107の終了判定により、終了である判定されると(S107:YES)、当該処理を終了する。ステップS107では、例えば、監視装置2の電源がオフされたとき、あるいは、ユーザによって処理停止が操作されたときなどに、終了であると判定される。
【0044】
監視装置2の各部は、例えばデジタル回路として実現されるが、アナログ回路として実現してもよい。また、監視装置2の各部が行う処理(図3参照)をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることで、コンピュータを監視装置2として機能させてもよい。また、当該プログラムを記憶媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0045】
電力システムS1の作用および効果は、次の通りである。
【0046】
電力システムS1では、監視装置2は、分配率算出部23Aによって、インバータ装置1の個数nの逆数1/nを、各インバータ装置1の分配率として算出する。そして、設定部24Aによって、有効電力合計値Psumを各インバータ装置1の分配率に応じて分配し、有効電力目標値として設定する。また、設定部24Aによって、無効電力合計値Qsumを各インバータ装置1の分配率に応じて分配し、無効電力目標値として設定する。その後、第1算出部25により、各インバータ装置1の有効電力出力値が有効電力目標値となるように電圧位相指令値を算出し、且つ、第2算出部26により、各インバータ装置1の無効電力出力値が無効電力出力値となるように電圧振幅指令値を算出する。各インバータ装置1は、監視装置2が算出した電圧位相指令値および電圧振幅指令値に応じて、出力電圧を制御する。この構成によると、各インバータ装置1の出力電力(有効電力および無効電力)が、複数のインバータ装置1で均等化され、監視装置2は、すべてのインバータ装置1が同じ動作となるように制御できる。これにより、電力システムS1は、各インバータ装置1が電圧型インバータで構成された場合であっても、複数のインバータ装置1間の位相差および電位差(振幅差)を抑制できる。有効電力の回り込みは、インバータ装置1の出力電圧の位相のズレにより発生し、無効電力の回り込みは、インバータ装置1の出力電圧の振幅のズレにより発生する。つまり、電力システムS1は、複数のインバータ装置1間の電位差および位相差を抑制できるので、複数のインバータ装置1での意図せぬ電力の回り込みを抑制できる。したがって、電力システムS1は、複数のインバータ装置1を並列運転させる場合において、インバータ装置1の個数に応じた適切な自立運転を行うことができる。また、監視装置2は、複数のインバータ装置1を並列運転させる場合において、インバータ装置1の個数に応じた適切な自立運転の制御が可能となり、電力システムS1の自立運転が良好となる。
【0047】
第2実施形態に係る電力システムS2について説明する。図4は、電力システムS2が行う自立運転制御に関する機能ブロック図である。なお、電力システムS2の全体構成は、電力システムS1の全体構成(図1参照)と同じである。また、電力システムS2の自立運転制御において監視装置2が行う処理は、電力システムS1の監視装置2が行う処理(図3参照)と同様である。ただし、電力システムS2では、電力システムS1と異なり、複数のインバータ装置1のうち少なくとも2つのインバータ装置1の定格容量が異なるものとする。つまり、複数のインバータ装置1には、定格容量が異なるものが含まれる。
【0048】
図4に示すように、電力システムS2は、電力システムS1と比較して、監視装置2が分配率算出部23Aの代わりに分配率算出部23Bを備える点で異なる。
【0049】
分配率算出部23Bは、図4に示すように、2つの演算器231,232を含み、2つの演算器231,232によって、第2実施形態の分配率を算出する。演算器231は、複数のインバータ装置1の各定格容量を積算し、定格容量合計値を算出する。演算器232は、算出対象のインバータ装置1の定格容量を、定格容量合計値で除算することで、この算出対象のインバータ装置1の分配率を算出する。よって、第2実施形態における分配率は、複数のインバータ装置1の各定格容量の合計値(定格容量合計値)に対する各インバータ装置1の定格容量の比率である。演算器232による分配率の算出は、インバータ装置1ごとに行われる。各インバータ装置1の定格容量は、ユーザ入力によって監視装置2(分配率算出部23B)に予め記憶させてもよいし、電力システムS2の運転開始時に監視装置2が各インバータ装置1から取得してもよいし、監視装置2が有効電力出力値および無効電力出力値と同時に各インバータ装置1から受信してもよい。分配率算出部23Bは、算出した各インバータ装置1の分配率を設定部24Aに出力する。
【0050】
電力システムS2では、設定部24Aは、分配率算出部23Bから入力される各インバータ装置1の分配率に応じて有効電力合計値Psumを分配した値を、有効電力目標値Pref_iに設定する。この構成では、定格容量が大きいインバータ装置1ほど、有効電力目標値Pref_iが大きくなる。また、電力システムS2では、設定部24Aは、分配率算出部23Bから入力される各インバータ装置1の分配率に応じて無効電力合計値Qsumを分配した値を、無効電力目標値Qref_iに設定する。この構成では、定格容量が大きいインバータ装置1ほど無効電力目標値Qref_iが大きくなる。
【0051】
電力システムS2では、監視装置2は、分配率算出部23Bによって、複数のインバータ装置1の各定格容量の合計値に対する各インバータ装置1の定格容量の比率を、分配率として算出する。そして、設定部24Aによって、有効電力合計値Psumを各インバータ装置1の分配率に応じて分配し、有効電力目標値として設定する。また、設定部24Aによって、無効電力合計値Qsumを各インバータ装置1の分配率に応じて分配し、無効電力目標値として設定する。この構成によると、監視装置2は、定格容量が異なる複数のインバータ装置1について、それぞれの定格容量に合わせた出力分配を行うことができる。したがって、電力システムS2は、複数のインバータ装置1を並列運転させる場合において、インバータ装置1の数および各インバータ装置1の定格容量に応じた適切な自立運転を行うことができる。また、監視装置2は、複数のインバータ装置1を並列運転させる場合において、インバータ装置1の数および各インバータ装置1の定格容量に応じた適切な自立運転の制御が可能となり、電力システムS2の自立運転が良好となる。
【0052】
第2実施形態では、複数のインバータ装置1のうち少なくとも2つのインバータ装置1の定格容量が異なる例を示したが、複数のインバータ装置1の定格容量が同じであってもよい。この場合、電力システムS2は、分配率算出部23Bによって算出される分配率は、分配率算出部23Aによって算出される分配率と同じとなるので、各インバータ装置1の出力電力(有効電力および無効電力)が複数のインバータ装置1で均等化され、電力システムS1と同様の効果を奏する。
【0053】
第3実施形態に係る電力システムS3について、図5および図6を参照して、説明する。図5は、電力システムS3の全体構成例を示している。図6は、電力システムS3が行う自立運転制御に関する機能ブロック図である。なお、電力システムS3の自立運転制御において監視装置2が行う処理は、電力システムS1の各監視装置2が行う処理(図3参照)と同様である。
【0054】
電力システムS3では、図5および図6に示すように、複数のインバータ装置1は、複数の蓄電池制御装置1Aを含んでいる。各蓄電池制御装置1Aは、接続される直流電源19が蓄電池19Aである。本実施形態では、複数の蓄電池制御装置1Aの定格容量が同じであるのに対し、複数の蓄電池19Aの定格容量は異なる。以下では、蓄電池19Aの定格容量を「蓄電池容量」という。図5および図6に示す例では、インバータ装置1の全てが蓄電池制御装置1Aである。
【0055】
各蓄電池制御装置1Aは、上記インバータ装置1と同様に構成されている。ただし、各蓄電池制御装置1Aは、図6に示すように、監視部15をさらに備える。監視部15は、接続される蓄電池19Aの充電率(SoC:State of Charge)を監視する。各蓄電池制御装置1Aは、蓄電池19Aの充電率の情報を、有効電力出力値Pout_iおよび無効電力出力値Qout_iとともに送信部12から監視装置2に送信する。
【0056】
図6に示すように、電力システムS3は、電力システムS1,S2と比較して、監視装置2の構成が異なる。具体的には、電力システムS3の監視装置2は、電力システムS1,S2の監視装置2と比較して、分配率算出部23A,23Bの代わりに分配率算出部23Cを有し、かつ、設定部24Aの代わりに設定部24Bを有する点が異なる。
【0057】
分配率算出部23Cは、各蓄電池制御装置1Aに対する第1分配率および第2分配率を算出する。分配率算出部23Cは、図6に示すように、演算器231,232,233,234を含み、演算器233,234により第1分配率を、演算器231,232により第2分配率をそれぞれ算出する。
【0058】
演算器233は、複数の蓄電池19Aの各定格容量を積算し、蓄電池容量合計値を算出する。演算器234は、算出対象の蓄電池制御装置1Aに接続された蓄電池19Aの蓄電池容量を、蓄電池容量合計値で除算することで、この算出対象の蓄電池制御装置1Aの第1分配率を算出する。よって、第1分配率は、複数の蓄電池19Aの各蓄電池容量の合計値(蓄電池容量合計値)に対する各蓄電池19Aの蓄電池容量の比率である。演算器234による第1分配率の算出は、蓄電池制御装置1Aごとに行われる。各蓄電池19Aの蓄電池容量は、ユーザ入力によって監視装置2(分配率算出部23C)に予め記憶させてもよいし、電力システムS3の運転を開始するときに監視装置2が各蓄電池制御装置1Aから取得してもよいし、監視装置2が有効電力出力値および無効電力出力値などと同時に各蓄電池制御装置1Aから受信してもよい。分配率算出部23Cは、算出した各蓄電池制御装置1Aの第1分配率を設定部24B(乗算器241P)に出力する。
【0059】
演算器231,232は、第2実施形態と同様の演算により、第2分配率を算出する。つまり、第2分配率は、複数の蓄電池制御装置1Aの各定格容量の合計値(定格容量合計値)に対する各蓄電池制御装置1Aの定格容量の比率である。なお、第2分配率は、第1実施形態における分配率と同じであってもよい。つまり、分配率算出部23Cは、第2分配率として、蓄電池制御装置1Aの個数の逆数を算出する。分配率算出部23Cは、算出した各蓄電池制御装置1Aの第2分配率を設定部24B(乗算器241Q)に出力する。
【0060】
設定部24Bは、各蓄電池制御装置1Aの第1分配率に応じて有効電力合計値を分配した値を、有効電力目標値に設定する。その後、この有効電力目標値を、蓄電池19Aの各充電率の平均値と各充電率との差分により補正して、第1算出部25に出力する。よって、本実施形態では、第1算出部25は、補正後の有効電力目標値を用いて電圧位相指令値を算出する。また、設定部24Bは、各蓄電池制御装置1Aの第2分配率に応じて無効電力合計値を分配した値を、無効電力目標値に設定する。蓄電池容量による出力分配(第1分配率による分配)および充電率による補正は、蓄電池19Aの充放電に影響する有効電力のみに行えばよく、無効電力については、蓄電池制御装置1Aの定格容量による出力分配(第2分配率による分配)となる。
【0061】
図6に示すように、設定部24Bは、2つの乗算器241P,241Qの他に、演算器242Pおよび加算器243Pを含む。各蓄電池制御装置1Aの有効電力目標値は、乗算器241Pによって演算され、演算器242Pおよび加算器243Pによって補正される。また、各蓄電池制御装置1Aの無効電力目標値は、乗算器241Qによって演算される。
【0062】
本実施形態における乗算器241Pは、蓄電池制御装置1Aごとに、合計値算出部22から入力される有効電力合計値Psumを、分配率算出部23Cから入力される第1分配率で乗算する。乗算器241Pは、この乗算結果(暫定的な有効電力目標値Pref_i)を演算器242Pに出力する。また、本実施形態における乗算器241Qは、蓄電池制御装置1Aごとに、合計値算出部22から入力される無効電力合計値Qsumを、分配率算出部23Cから入力される第2分配率で乗算する。乗算器241Qは、この乗算結果(無効電力目標値Qref_i)を第2算出部26に出力する。
【0063】
演算器242Pは、各蓄電池19Aの充電率の平均値を求め、この充電率平均値と、算出対象の蓄電池制御装置1Aに接続された蓄電池19Aの充電率との差分ΔSoCiを演算する。各蓄電池19Aの充電率は、受信部21によって各蓄電池制御装置1Aから受信され、受信部21から演算器242Pに入力される。演算器242Pは、図示しない制御器を含み、この制御器によって、算出対象の蓄電池制御装置1Aに対して、差分ΔSoCiをゼロにするための補正値を算出する。この制御器は、例えば比例制御を行う。この制御器の制御方式は、比例制御に限定されず、例えば比例制御の代わりにPI制御またはPID制御などを行っていてもよい。
【0064】
加算器243Pは、乗算器241Pの乗算結果(有効電力目標値)と演算器242Pが算出した補正値とが入力される。加算器243Pは、乗算結果(有効電力目標値)に補正値を加算することで、有効電力目標値を補正する。
【0065】
図7は、3台の蓄電池制御装置1Aを備える電力システムS3をモデルに、自立運転制御をシミュレーションした結果を示している。図7(a)は、各蓄電池制御装置1Aの有効電力出力値の時間変化を示している。図7(a)では、縦軸に各蓄電池制御装置1Aの有効電力出力値をとり、横軸に経過時間をとっている。図7(b)は、各蓄電池制御装置1Aに接続された蓄電池19Aの充電率の時間変化を示している。図7(b)では、縦軸に各蓄電池19Aの充電率をとり、横軸に経過時間をとっている。
【0066】
図7において、1台目の蓄電池制御装置1Aの有効電力出力値をPout_1、この蓄電池制御装置1Aに接続された蓄電池19Aの充電率をSoC_1で示す。同様に、2台目の蓄電池制御装置1Aの有効電力出力値をPout_2、この蓄電池制御装置1Aに接続された蓄電池19Aの充電率をSoC_2で示し、3台目の蓄電池制御装置1Aの有効電力出力値をPout_3、この蓄電池制御装置1Aに接続された蓄電池19Aの充電率をSoC_3で示す。また、3台の蓄電池制御装置1Aの有効電力出力値の合計をPsumで示し、3台の蓄電池19Aの充電率の平均値をSoC_avgで示している。なお、図7(b)において、充電率SoC_3と充電率平均値SoC_avgとは、略重なっている。
【0067】
3台の蓄電池制御装置1Aは、それぞれの定格容量が同じであるが、接続される各蓄電池19Aの蓄電池容量およびシミュレーション開始時の充電率(以下「開始時充電率」という)が異なる。具体的には、1台目の蓄電池制御装置1Aに接続される蓄電池19Aは、蓄電池容量が50kWhであり、開始時充電率が40%である。2台目の蓄電池制御装置1Aに接続される蓄電池19Aは、蓄電池容量が100kWhであり、開始時充電率が30%である。3台目の蓄電池制御装置1Aに接続される蓄電池19Aは、蓄電池容量が200kWhであり、開始時充電率が35%である。このとき、分配率算出部23Cが算出する第1分配率は、次の通りである。それは、1台目の蓄電池制御装置1Aに対する第1分配率は、1/7(=50/(50+100+200))であり、2台目の蓄電池制御装置1Aに対する第1分配率は、2/7(=100/(50+100+200))であり、3台目の蓄電池制御装置1Aに対する第1分配率は、4/7(=200/(50+100+200))である。
【0068】
シミュレーション開始時では、1台目の蓄電池制御装置1Aは有効電力出力値Pout_1がおよそ55kWであり、2台目の蓄電池制御装置1Aは有効電力出力値Pout_2がおよそ-40kWであり、3台目の蓄電池制御装置1Aは有効電力出力値Pout_3がおよそ20kWである。なお、2台目の蓄電池制御装置1Aは、有効電力出力値Pout_2が負の値であり、蓄電池19Aを充電している状態である。よって、シミュレーション開始時の3台の蓄電池制御装置1Aの有効電力合計値Psumは、35kW(=55-40+20)である。このとき、乗算器241P(設定部24B)の乗算結果であって、1台目の蓄電池制御装置1Aに対する有効電力目標値(暫定値)は、第1分配率と有効電力合計値Psumとの積((1/7)×(35))から演算され、5kWである。また、2台目、3台目の蓄電池制御装置1Aに対する有効電力目標値(暫定値)は、それぞれ同様に演算され、10kW、20kWである。なお、これらの値は、演算器242Pおよび加算器243Pによる充電率の差に関する補正を行う前の有効電力目標値であるので、暫定的な有効電力目標値である。
【0069】
図7に示すシミュレーション結果から、図7(a)に示すように、各蓄電池19Aの蓄電池容量に応じて各蓄電池制御装置1Aの出力を変化させても、3台の蓄電池制御装置1Aの有効電力合計値Psumは変化せず、一定であることが分かる。また、図7(b)に示すように、シミュレーション開始時では、各蓄電池19Aの充電率が異なっていたが、時間経過とともに、同じ値に収束していることが分かる。そして、各蓄電池19Aの充電率SoC_1,SoC_2,SoC_3が同じ値に収束した時には、演算器242Pおよび加算器243Pによる補正がされないため、各蓄電池制御装置1Aの有効電力出力値Pout_1,Pout_2,Pout_3がそれぞれ、上記有効電力目標値である5kW,10kW,20kWになっている。
【0070】
電力システムS3では、監視装置2は、分配率算出部23Cによって、複数の蓄電池19Aの各定格容量の合計値に対する蓄電池19Aの各々の定格容量の比率を、当該蓄電池19Aが接続された蓄電池制御装置1Aの第1分配率として算出する。そして、設定部24Bは、複数の蓄電池制御装置1Aの各有効電力出力値の合計(有効電力合計値Psum)を各蓄電池制御装置1Aの第1分配率に応じて分配し、有効電力目標値として設定する。この構成によると、監視装置2は、蓄電池容量(蓄電池19Aの定格容量)が異なる蓄電池19Aについて、それぞれの蓄電池容量に合わせた出力分配を行うことができる。したがって、電力システムS3は、複数の蓄電池制御装置1A(蓄電池が接続されたインバータ装置1)を並列運転させる場合において、蓄電池制御装置1Aの数および各蓄電池19Aの定格容量(蓄電池容量)に応じた適切な自立運転を行うことができる。また、監視装置2は、複数の蓄電池制御装置1A(蓄電池が接続されたインバータ装置1)を並列運転させる場合において、蓄電池制御装置1Aの数および各蓄電池19Aの定格容量(蓄電池容量)に応じた適切な自立運転の制御が可能となり、電力システムS3の自立運転が良好となる。
【0071】
電力システムS3では、監視装置2の設定部24Bは、蓄電池19Aの各充電率の平均値と充電率との差分により、有効電力目標値Pref_iを補正する。この構成によれば、各蓄電池19Aの充電率に差があった場合に、各蓄電池19Aの充電率を平均化させて、充電率の偏りを抑制することができる。つまり、電力システムS3では、複数のインバータ装置1(蓄電池制御装置1A)間で意図的に電力を回り込ませる制御を実施して、各蓄電池19Aの充電率を平均化することが可能である。
【0072】
本開示に係る監視装置、電力システムおよびプログラムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の監視装置、電力システムおよびプログラムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0073】
S1~S3:電力システム、1:インバータ装置、1A:蓄電池制御装置、11:計測部、12:送信部、13:受信部、14:制御部、19:直流電源、19A:蓄電池、2:監視装置、21:受信部、22:合計値算出部、23A~23C:分配率算出部、24A,24B:設定部、25:第1算出部、26:第2算出部、27:送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7