(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141009
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】半導体記憶装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/11582 20170101AFI20220921BHJP
H01L 27/11575 20170101ALI20220921BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L27/11575
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041119
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】堀部 浩介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 桂
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真也
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083GA10
5F083GA30
5F083JA02
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA12
5F083JA19
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA20
5F083PR03
5F083PR21
5F083PR40
5F101BA45
5F101BB04
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH14
(57)【要約】
【課題】半導体基板の反りを抑制することのできる半導体記憶装置、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置10は、複数の導電体層40がz方向に離間して積層されている積層部100と、y方向に沿って積層部100と並んでいる部分であって、複数の導電体層40がy方向に沿って階段形状に引き出されている階段部200と、階段部200を覆う第1絶縁膜81と、第1絶縁膜81の少なくとも一部を覆い、第1絶縁膜81とは異なる第2絶縁膜82と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電体層が第1方向に離間して積層されている積層部と、
前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記積層部と並んでいる部分であって、複数の前記導電体層が前記第2方向に沿って階段形状に引き出されている階段部と、
前記階段部を覆う第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜とは異なる第2絶縁膜と、を備える半導体記憶装置。
【請求項2】
前記積層部及び前記階段部は半導体基板の上に形成されており、
前記第2絶縁膜の線膨張係数は、前記半導体基板の線膨張係数よりも大きい、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1絶縁膜はシリコン酸化膜であり、
前記第2絶縁膜はは前記第1絶縁膜よりも炭化水素を多く含有するシリコン酸化膜である、請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜に含まれる炭素の量は、組成比において4atom%以上である、請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
半導体基板の上に積層体を形成する工程と、
前記積層体の一部を階段形状に加工することで階段部を形成する工程と、
前記階段部を上方から覆う第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜を上方から覆う第2絶縁膜を形成する工程と、を含む、半導体記憶装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1絶縁膜はシリコン酸化膜であり、
前記第2絶縁膜は炭化水素を含有するシリコン酸化膜である、請求項5に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2絶縁膜は、メチル基を含む原料を用いたプラズマCVDにより形成される、請求項6に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項8】
前記原料として、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシラン、及びテトラメチルシランのうち少なくとも1つが用いられる、請求項7に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNAND型フラッシュメモリのような半導体記憶装置は、複数の導電体層が積層されているメモリセルアレイと、メモリセルアレイの導電体層が階段形状に引出されている階段部と、を備える。階段部は、例えば酸化シリコンからなる絶縁体層により覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0330985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体記憶装置においては、階段部を覆う絶縁体層の線膨張係数と、半導体基板の線膨張係数と、の差に起因して、半導体基板に反りが生じてしまうことがある。
【0005】
開示された実施形態によれば、半導体基板の反りを抑制することのできる半導体記憶装置、及びその製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体記憶装置は、複数の導電体層が第1方向に離間して積層されている積層部と、第1方向と交差する第2方向に沿って積層部と並んでいる部分であって、複数の導電体層が第2方向に沿って階段形状に引き出されている階段部と、階段部を覆う第1絶縁膜と、第1絶縁膜の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜とは異なる第2絶縁膜と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す等価回路図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す図である。
【
図10】
図10は、半導体基板の反りについて説明するための図である。
【
図11】
図11は、半導体基板の反りについて説明するための図である。
【
図12】
図12は、第2絶縁膜における炭素含有量と線膨張係数との関係を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0009】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る半導体記憶装置10は、例えばNAND型フラッシュメモリとして構成された不揮発性の記憶装置である。
図1には、半導体記憶装置10の構成が等価回路図として示されている。半導体記憶装置10は複数のブロックBLKにより構成されているのであるが、
図1においては、これらのうちの1つのブロックBLKのみが図示されている。半導体記憶装置10が有する他のブロックBLKの構成も、
図1に示されるものと同じである。
【0010】
同図に示されるように、ブロックBLKは、例えば4つのストリングユニットSU(SU0~SU3)を含む。また各々のストリングユニットSUは、複数のNANDストリングNSを含む。NANDストリングNSの各々は、例えば8個のメモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)と、選択トランジスタST1、ST2とを含む。
【0011】
尚、メモリセルトランジスタMTの個数は8個に限られず、例えば、32個、48個、64個、96個でもよい。例えばカットオフ特性を高めるために、選択トランジスタST1、ST2のそれぞれが、単一ではなく複数のトランジスタにより構成されていてもよい。さらに、メモリセルトランジスタMTと選択トランジスタST1、ST2との間には、ダミーセルトランジスタが設けられていてもよい。
【0012】
メモリセルトランジスタMTは、選択トランジスタST1と選択トランジスタST2との間において、直列接続されるようにして配置されている。一端側のメモリセルトランジスタMT7が、選択トランジスタST1のソースに接続され、他端側のメモリセルトランジスタMT0が、選択トランジスタST2のドレインに接続されている。
【0013】
ストリングユニットSU0~SU3の各々の選択トランジスタST1のゲートは、それぞれセレクトゲート線SGD0~SGD3に共通接続されている。選択トランジスタST2のゲートは、同一のブロックBLK内にある複数のストリングユニットSU間で同一のセレクトゲート線SGSに共通接続されている。同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMT0~MT7の制御ゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に共通接続される。すなわち、ワード線WL0~WL7及びセレクトゲート線SGSは、同一ブロックBLK内の複数のストリングユニットSU0~SU3間で共通となっているのに対し、セレクトゲート線SGDは、同一ブロックBLK内であってもストリングユニットSU0~SU3毎に個別に設けられている。
【0014】
半導体記憶装置10には、m本のビット線BL(BL0、BL1、・・・、BL(m-1))が設けられている。上記の「m」は、1つのストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSの本数を表す整数である。それぞれのNANDストリングNSのうち、選択トランジスタST1のドレインは、対応するビット線BLに接続されている。選択トランジスタST2のソースは、ソース線SLに接続されている。ソース線SLは、ブロックBLKが有する複数の選択トランジスタST2のソースに対し、共通接続されている。
【0015】
同一のブロックBLK内にある複数のメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータは、一括して消去される。一方、データの読み出し及び書き込みは、1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTに対して一括して行われる。それぞれのメモリセルは、上位ビット、中位ビット、及び下位ビットからなる3ビットのデータを保持することができる。
【0016】
つまり、本実施形態に係る半導体記憶装置10は、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式として、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットデータを記憶させるTLC方式を採用している。このような態様に替えて、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式としては、1つのメモリセルトランジスタMTに2ビットデータを記憶させるMLC方式や、1つのメモリセルトランジスタMTに1ビットデータを記憶させるSLC方式等を採用してもよい。
【0017】
1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTが記憶する1ビットデータの集合は、「ページ」と称される。
図1では、上記のような複数のメモリセルトランジスタMTからなる集合の一つに、符号「MG」が付してある。
【0018】
本実施形態のように、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットのデータが記憶される場合、1つのストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合は、3ページ分のデータを記憶することができる。
【0019】
図1の等価回路で表される半導体記憶装置10の具体的な構成を
図2に示す。同図に示されるように、半導体記憶装置10は、半導体基板20と、絶縁体層21と、導電体層22と、複数の絶縁体層30及び導電体層40と、を備えている。
【0020】
半導体基板20は、
図2の上方側において平坦な面を有する板状の部材であって、例えばシリコンウェハである。以下に説明する絶縁体層21、導電体層22、絶縁体層30、及び導電体層40等は、半導体基板20の上面側において、例えばCVD成膜により形成された複数層の膜となっている。尚、上記のCVD成膜が行われる際においては、半導体基板20は円盤状となっている。円盤状のシリコンウェハである半導体基板20は、その表面に、
図2の半導体記憶装置10が複数並ぶように形成された後、それぞれの半導体記憶装置10ごとにチップとして切り出される。
【0021】
図2においては、半導体基板20の表面に対して垂直な方向であって、
図2において下方側から上方側に向かう方向がz方向となっており、当該方向に沿ってz軸が設定されている。また、z方向に対して垂直な方向であって、
図2において左側から右側に向かう方向がy方向となっており、当該方向に沿ってy軸が設定されている。更に、z方向及びy方向の両方に対して垂直な方向であって、
図2において紙面手前側から奥側に向かう方向がx方向となっており、当該方向に沿ってx軸が設定されている。以下においては、このように設定された各方向や各軸を適宜用いながら、半導体記憶装置10の構成を説明する。
【0022】
絶縁体層21は、例えば酸化シリコンのような絶縁性の材料により形成された層である。半導体基板20の上面には、
図1のメモリセルトランジスタMTに対するデータの読み出し、書き込み、及び消去を行うための不図示の周辺回路が形成されている。絶縁体層21は、これら周辺回路の全体を覆っており、周辺回路が導電体層22と導通してしまうことを防止している。
【0023】
導電体層22は、ソース線SLとして機能する層である。導電体層22は、例えば、不純物がドープされた多結晶シリコン、メタルシリサイド等のシリコンを含む材料や、このようなシリコンを含む材料と金属材料との積層構造により形成されている。導電体層22は、上記の絶縁体層21の上面をz方向側から覆うような板状に形成されている。
【0024】
複数の絶縁体層30及び導電体層40は、それぞれ複数形成されており、導電体層22の一部を上方側から交互に覆うように形成されている。尚、
図2における絶縁体層30や導電体層40の積層数は、実際の積層数とは異なっている。それぞれの導電体層40は、z方向に沿って並ぶように積層されており、同方向に沿って互いに離間した状態となっている。複数の導電体層40が積層されているz方向は、本実施形態における「第1方向」に該当する。
【0025】
導電体層40は、例えばタングステンを含む材料により形成された、導電性を有する層である。導電体層40において、タングステン等を含む材料の外周面が窒化チタン等のバリアメタル材料で覆われていてもよい。それぞれの導電体層40は、
図1におけるワード線WL0~WL7やセレクトゲート線SGS0、SGD0等として用いられるものである。絶縁体層30は、z方向に沿って互いに隣り合う導電体層40の間となる位置に配置され、両者の間を電気的に絶縁するものである。絶縁体層30は、例えば、酸化シリコンを含む材料により形成されている。
【0026】
図2に示されるように、複数の絶縁体層30及び導電体層40がz方向に沿って積層されている領域には、これらをz方向に沿って貫くように複数のメモリピラー50が形成されている。それぞれのメモリピラー50は、最もz方向側にある絶縁体層30から、導電体層22に至るまでの範囲において形成されている。尚、それぞれのメモリピラー50は、
図1に示されるNANDストリングSRに対応するものである。
図2におけるメモリピラー50の数は、実際の数とは異なっている。
【0027】
図3には、一つのメモリピラー50を、z軸に対し垂直な面に沿って切断した場合の断面が模式的に示されている。同図に示されるように、それぞれのメモリピラー50は、半導体502と、トンネル絶縁膜503と、電荷蓄積膜504と、ブロック絶縁膜505と、を有している。
【0028】
半導体502は、複数の絶縁体層30及び導電体層40が積層されている部分内をz方向に沿って延びる筒状の形状を有し、例えばアモルファスシリコンやポリシリコン等のシリコン材料によって形成されている。筒状の半導体502の内側には、絶縁性の材料からなるコア501が形成されている。このような態様に替えて、半導体502の内側にコア501が形成されていない態様としてもよい。
【0029】
トンネル絶縁膜503は、半導体502の外周面を覆う膜である。トンネル絶縁膜503は、例えば酸化シリコンを含む材料で形成されている。電荷蓄積膜504は、トンネル絶縁膜503の外周面を覆う膜である。電荷蓄積膜504は、例えば窒化シリコンを含む材料で形成されている。ブロック絶縁膜505は、電荷蓄積膜504の外周面を覆う膜である。ブロック絶縁膜505は、例えば酸化シリコンや、酸化シリコンよりも誘電率が大きい金属酸化物を含む材料で形成されている。最も外側に形成されたブロック絶縁膜505の外周面は、積層された導電体層40のそれぞれによって囲まれている。
【0030】
メモリピラー50と複数の導電体層40とがブロック絶縁膜505、電荷蓄積膜504、及びトンネル絶縁膜503を介して対向する部分に、それぞれトランジスタが形成される。つまり、それぞれのメモリピラー50では、その長手方向に沿って複数のトランジスタが直列に接続された状態となっている。それぞれの導電体層40は、各トランジスタのゲートとして機能する。導電体層40の内側にある半導体502は、当該トランジスタのチャネルとして機能する。
【0031】
メモリピラー50の長手方向に沿って、上記のように直列に並ぶそれぞれのトランジスタは、その一部が、
図1における複数のメモリセルトランジスタMTとして機能する。また、直列に並ぶ複数のメモリセルトランジスタMTの両端部等に形成されたトランジスタは、
図1における選択トランジスタST1、ST2として機能する。
【0032】
メモリピラー50のうち-z方向側の端部においては、ブロック絶縁膜505等が除去されており、内側の半導体502が導電体層22に対して接続されている。これにより、ソース線SLとして機能する導電体層22と、各トランジスタのチャネルとが電気的に接続されている。一方、メモリピラー50のうちz方向側の端部においては、不図示のコンタクトを介して、半導体502が
図1におけるビット線BLに接続されている。
【0033】
尚、各メモリセルトランジスタMTに対するデータの読み書き等を実現するための周辺の回路の構成や、その具体的な動作としては、既に公知となっている様々な態様を採用することができる。このため、更なる具体的な説明については省略する。
【0034】
図2においては、半導体基板20を覆うように複数の導電体層40がそれぞれ略同一の板状で積層されている部分であって、且つこれらを貫くように複数のメモリピラー50が形成されている部分に、符号「100」が付されている。このような部分のことを、以下では「積層部100」とも称する。積層部100は、データを記憶するための複数のメモリセルトランジスタMTが形成されている部分であって、「メモリセルアレイ」若しくは「アレイ領域」等と称される部分である。
【0035】
図2においては、y方向に沿って並ぶ2つの積層部100が描かれている。y方向側の積層部100においても、-y方向側の積層部100と同様に、複数の導電体層40がz方向に沿って積層されており、それぞれの導電体層40を貫くように複数のメモリピラー50が形成されている。ただし、
図2においては、y方向側の積層部100におけるメモリピラー50の図示が省略されている。
【0036】
図2に示されるように、y方向に沿って積層部100と隣り合う位置、すなわち、2つの積層部100の間となる部分では、各絶縁体層30及び各導電体層40が階段形状となるように形成されている。当該領域では、それぞれの導電体層40が階段形状に形成されているので、それぞれの導電体層40の一部(テラス部分)が、他の導電体層40に遮られることなくz方向側へと露出した状態となっている。このように露出したそれぞれの導電体層40には、z方向に沿って伸びるコンタクト70の端部が接続されている。コンタクト70は、例えばタングステンのような導電性の材料で形成された柱状の部材である。
【0037】
階段形状に形成された各導電体層40と、-y方向側にある積層部100の各導電体層40との間は、直接的に繋がっている。また、階段形状に形成された各導電体層40と、y方向側にある積層部100の各導電体層40との間は、紙面奥側もしくは手前側においてy方向に沿って延びるように形成されたブリッジ部BR、を介して電気的に接続されている。尚、
図2においては、z方向に沿って複数並ぶように設けられたブリッジ部BRのうちの一つのみが点線で示されている。
【0038】
このように、階段形状に形成された各導電体層40のそれぞれは、積層部100において積層されているそれぞれの導電体層40のうち、同じ高さ位置(z座標)にあるものに対し、電気的に接続されている。このような構成により、ワード線WL0~WL7やセレクトゲート線SGS0、SGD0等として用いられる各導電体層40には、それぞれのコンタクト70を介して電圧の印加等を個別に行うことが可能となっている。積層部100の各導電体層40に対する電圧の印加等を可能とするために、上記のように導電体層40が階段形状に形成されている部分のことを、以下では「階段部200」とも称する。階段部200は、y方向に沿って積層部100と並んでいる。階段部200と積層部100とが並ぶy方向は、z方向と交差する方向であって、本実施形態における「第2方向」に該当する。
【0039】
図2に示されるように、階段部200には、z方向に沿って伸びる支持柱60が複数形成されている。それぞれの支持柱60は、積層された複数の導電体層40を貫いている。支持柱60は、半導体記憶装置10を製造する際において、後述するリプレイス時に複数の絶縁体層30を補強する目的で設けられるものである。支持柱60は、例えば酸化シリコンによって形成されている。
【0040】
階段部200は、第1絶縁膜81によって上方から覆われている。また、第1絶縁膜81の一部は、第2絶縁膜82によって上方から覆われている。第1絶縁膜81は、シリコン酸化膜である。第2絶縁膜82は、炭化水素を含有するシリコン酸化膜である。すなわち、第2絶縁膜82は、第1絶縁膜81よりも炭化水素を多く含有する。第2絶縁膜82は、第1絶縁膜81よりも炭素原子を多く含有する。第2絶縁膜82は、第1絶縁膜81よりも水素原子を多く含有する。このように、第1絶縁膜81と第2絶縁膜82とは、その材料において互いに異なる膜となっている。
【0041】
また、第1絶縁膜81および第2絶縁膜82の厚みは、それぞれ異なっていてもよい。第1絶縁膜81および第2絶縁膜82の厚みは階段部200を構成する導電体層40の数または積層部100からの距離によって適宜設定され得る。例えば、積層部100に近いほど、第2絶縁膜82よりも第1絶縁膜81の厚みが大きくてよく、積層部100から遠いほど、第1絶縁膜81および第2絶縁膜82の厚みが略同一、もしくは第1絶縁膜81よりも第2絶縁膜82の厚みが大きくてよい。
【0042】
このように、階段部200やコンタクト70、及び支持柱60の周囲は、第1絶縁膜81及び第2絶縁膜82によって埋められている。階段部200等を覆う絶縁膜が、第1絶縁膜81及び第2絶縁膜82からなる上下2層構造となっている理由については後に説明する。
【0043】
以下では、半導体記憶装置10の製造方法について説明する。
【0044】
<積層工程>積層工程では、先ず、半導体基板20の表面に不図示の周辺回路を構成した後、当該周辺回路を上方から覆うように絶縁体層21が形成され、更に絶縁体層21を上方(z方向側)から覆うように導電体層22が形成される。続いて、導電体層22を上方から覆うように、絶縁体層30と犠牲層41とが交互に積層される。犠牲層41は、後の工程において導電体層40に置き換えられる(リプレイスされる)層であって、例えば窒化シリコンにより形成された層である。
図4には、積層工程が完了した状態が示されている。
【0045】
絶縁体層30と犠牲層41とが交互に積層された部分の全体のことを、以下では「積層体110」とも称する。また、積層体110のz方向側における表面、すなわち、最もz方向側に形成された絶縁体層30の表面のことを、以下では「表面S1」とも称する。積層工程は、半導体基板20の上に積層体110を形成する工程、ということができる。
【0046】
<階段部形成工程>積層工程の後は、階段部形成工程が行われる。階段形成工程では、異方性エッチングと、エッチングマスクのスリミングと、が繰り返されることで、積層された絶縁体層30及び犠牲層41の一部に階段部200が形成される。
図5には、階段部形成工程が完了した状態が示されている。同図に示されるように、積層体110のうち、階段部200となった部分よりも-y方向側に残った部分と、y方向側に残った部分のそれぞれが、後に説明する工程を経て積層部100となる部分である。階段部形成工程は、積層体110の一部を階段形状に加工することで階段部200を形成する工程、ということができる。階段部形成工程が完了した時点では、積層体110の一部が上記のようにエッチングされた結果として、-z方向側に後退した凹部210が形成された状態となっている。
【0047】
<第1絶縁膜形成工程>階段部形成工程の後は、第1絶縁膜形成工程が行われる。第1絶縁膜形成工程では、階段部200が形成されている部分を含め、積層体110の全体を上方から覆うように、第1絶縁膜81が形成される。
図6には、第1絶縁膜形成工程が完了した状態が示されている。
【0048】
シリコン酸化膜である第1絶縁膜81は、プラズマCVDを用い、例えば10um程度の厚さに形成される。
図6に示されるように、第1絶縁膜81は凹部210の内側に入り込んでおり、その表面の一部が、積層体110の表面S1よりも深い位置まで入り込んでいる。第1絶縁膜形成工程は、階段部200を上方から覆う第1絶縁膜81を形成する工程、ということができる。
【0049】
第1絶縁膜81を上記のようなシリコン酸化膜として形成する場合には、成膜における原料ガスとして、例えばテトラエトキシシランと酸素(O2)とが用いられる。原料ガスとして、テトラエトキシシランと亜酸化窒素(N2O)とが用いられることとしてもよい。
【0050】
また、第1絶縁膜81は、テトラエトキシシラン以外を原料としてもよい。例えば、モノシラン(SiH4)と亜酸化窒素とを原料として、シリコン酸化膜である第1絶縁膜81を形成することとしてもよい。
【0051】
<第2絶縁膜形成工程>第1絶縁膜形成工程の後は、第2絶縁膜形成工程が行われる。第2絶縁膜形成工程では、上記のように形成された第1絶縁膜81の全体を更に上方から覆うように、第2絶縁膜82が形成される。
図7には、第2絶縁膜形成工程が完了した状態が示されている。
【0052】
先に述べたように、第2絶縁膜82は、炭化水素(CHx)を含有するシリコン酸化膜である。第2絶縁膜82は、プラズマCVDにより製膜される。プラズマCVDを行う際の原料としては、メチル基(CH
3基)を含む原料、具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、トリメチルシラン(C
3H
10Si)、及びテトラメチルシラン(Si(CH
3)
4)のうち少なくとも1つが用いられる。第2絶縁膜82は、例えば10um程度の厚さに形成される。
図7に示されるように、第2絶縁膜82は凹部210の内側に入り込んでおり、その一部が、積層体110の表面S1よりも深い位置まで入り込んでいる。ただし、第2絶縁膜82の表面のうち最も深い部分の高さ位置は、表面S1よりも高い位置となっている。第1絶縁膜形成工程は、第1絶縁膜81を上方から覆う第2絶縁膜82を形成する工程、ということができる。
【0053】
<研磨工程>第2絶縁膜形成工程の後は、研磨工程が行われる。研磨工程では、半導体基板20のうち、上記のように第1絶縁膜81及び第2絶縁膜82が形成された表面が、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって研磨される。このような研磨は、例えば、積層体110の表面S1が露出するまで行われる。その結果、半導体基板20の略全体を上方側から覆っていた第1絶縁膜81及び第2絶縁膜82は、凹部210の内側に入り込んだ部分を残して除去される。
図8には、研磨工程が完了した状態が示されている。
図8の状態においては、
図2と同様に、階段部200が第1絶縁膜81によって上方から覆われており、且つ、第1絶縁膜81の一部が第2絶縁膜82によって上方から覆われている。
【0054】
<MH等形成工程>研磨工程の後は、MH等形成工程が行われる。MH等形成工程では、積層体110のうち、メモリピラー50と対応する部分に穴51が形成され、支持柱60と対応する部分に穴61が形成される。これは、いずれもRIE(Reactive Ion Etching)により形成される。その後、穴51の内側には、例えばCVDによってメモリピラー50が形成される。また、穴61の内側には、例えばCVDによって支持柱60が形成される。
図9には、MH等形成工程が完了した状態が示されている。
【0055】
MH等形成工程が完了した後は、それぞれの犠牲層41が導電体層40にリプレイスされる。その後、階段部200における各導電体層40のテラス部分に繋がるよう、複数のコンタクト70が形成される。その他、公知となっている種々の工程を経て、
図2に示される構成の半導体記憶装置10が完成する。
【0056】
階段部200等を覆う絶縁膜が、第1絶縁膜81及び第2絶縁膜82からなる上下2層構造となっている理由について説明する。
【0057】
図10(A)には、第2絶縁膜形成工程が完了した状態における半導体基板20が模式的に示されている。同図においては、積層体110の図示が省略されており、半導体基板20、第1絶縁膜81、及び第2絶縁膜82のみが図示されている。
【0058】
よく知られているように、プラズマCVDが行われる際には、被成膜体である半導体基板20等はその全体が高温となる。このとき、半導体基板20と、その上に形成された第1絶縁膜81等との間における線膨張係数の違いにより、不図示の積層体110を含む半導体基板20の全体に反りが生じることがある。尚、このような半導体基板20等の反りは、半導体基板20に第1絶縁膜81が形成されることや、積層体110の一部として絶縁体層30が形成されること等に起因して生じる。第1絶縁膜81や積層体110等を含む半導体基板20の全体の反りのことを、以下では「半導体基板20の反り」のように表記する。
【0059】
図10の右側には、500K(ケルビン)付近における各部材の線膨張係数の値が例示されている。500Kにおいては、半導体基板20を構成するSi(シリコン)の線膨張係数α0は約3.5×10
-6/Kである。また、第1絶縁膜81の線膨張係数α1は約0.7×10
-6/Kであり、第2絶縁膜82の線膨張係数α2は約11×10
-6/Kである。
【0060】
ところで、階段部200を覆う絶縁膜が第1絶縁膜81の1層のみである比較例における半導体記憶装置10について、以下説明する。
【0061】
図10(B)は、比較例における唯一の第1絶縁膜形成工程が行われている途中、すなわち、CVD装置によって第1絶縁膜81が形成されている途中の状態を示す図である。CVD装置においては、半導体基板20を含む被成膜体の全体が例えば425℃の高温となる。このとき、半導体基板20では内部応力が生じる。上記の内部応力により、半導体基板20は
図10(B)のように凹状に反ることとなり、CVD装置へ半導体基板20がチャッキングされにくくなる場合がある。
【0062】
第1絶縁膜形成工程が完了すると、第1絶縁膜81が形成された半導体基板20の温度は常温(例えば20℃)まで低下する。このとき、半導体基板20の方が第1絶縁膜81よりも大きく収縮するので、
図10(C)に示されるように凸状に反った状態となる。
【0063】
図11に示されるG11は、
図10(B)の状態における半導体基板20の反りの大きさ、すなわち、第1絶縁膜形成工程においてCVD装置で第1絶縁膜81が成膜されているときにおける、半導体基板20の反りの大きさを表している。また、
図11に示されるG12は、
図10(C)の状態における半導体基板20の反りの大きさ、すなわち、第1絶縁膜形成工程が完了し常温となった後における、半導体基板20の反りの大きさを表している。尚、ここでいう「反りの大きさ」は、半導体基板20の外周部のz座標から、中心部のz座標を差し引いて得られる数値として表現されるものである。このため、
図10(B)のように凹状の反りが生じている場合には「反りの大きさ」は正値となり、
図10(C)のように凸状の反りが生じている場合には「反りの大きさ」は負値となる。
【0064】
第1絶縁膜形成工程が行われているときから、半導体基板20が常温に戻る際においては、半導体基板20の反りの大きさは、例えば816μm(G11)から-333μm(G12)へと大きく変化する。
図11には、このような反りの大きさの変化量が「dw1」として示されている。
【0065】
図11のG11で示される成膜中の反りの大きさは、例えばCVD装置におけるガスの流量や圧力、RFパワー等のパラメータにより適宜調整することができる。一方、dw1で示される反りの大きさの変化量は、第1絶縁膜81の材料等で決まる概ね一定の値となり、上記の各パラメータでは調整することができない。
【0066】
G12で示される常温時の反りの大きさは、製造後でも残るものであるから、可能な限り小さくすることが好ましい。しかしながら、上記のようにdw1は概ね一定であるから、G12で示される常温時の反りの大きさを小さくするためには、G11で示される成膜中の反りが大きくなるよう、各パラメータを調整する必要がある。しかしながら、成膜中の反りが大きくなり過ぎると、CVD装置の内部においてチャッキングが外れてしまい、成膜が中断されてしまう可能性がある。特に、近年では導電体層40の積層数が大きくなる傾向があり、G11で示される成膜中の反りは更に大きくなりやすい。
【0067】
そこで、本実施形態においては、第1絶縁膜形成工程の後に第2絶縁膜形成工程を行い、第1絶縁膜81を上方から覆う第2絶縁膜82を形成することとしている。
図10(A)に示されるように、第2絶縁膜82の線膨張係数であるα2は、半導体基板20の線膨張係数であるα0よりも大きい。このような材料を含む第2絶縁膜82を形成することで、α0とα1との差に起因して生じる半導体基板20の反りの大きさを緩和することができる。
【0068】
図11に示されるG21は、第2絶縁膜形成工程において第2絶縁膜82が成膜されているときにおける、半導体基板20の反りの大きさを表している。また、
図11に示されるG22は、当該第2絶縁膜形成工程が完了し常温となった後における、半導体基板20の反りの大きさを表している。
【0069】
第2絶縁膜形成工程が行われているときから、半導体基板20が常温に戻る際においては、半導体基板20の反りの大きさは、例えば365μm(G21)から142μm(G22)へと変化する。
図11には、このような反りの大きさの変化量が「dw2」として示されている。
【0070】
G11とG21とを対比すると明らかなように、成膜が行われているときにおける半導体基板20の反りの大きさは、第2絶縁膜82が成膜されているとき(G21)の方が小さくなる。また、dw1とdw2とを対比すると明らかなように、成膜が完了した後における反りの変化量も、第2絶縁膜82が成膜されたときの方が小さくなる。これは、これは、線膨張係数が比較的大きな第2絶縁膜82が形成されることで、半導体基板20の全体で生じる応力のバランスが変化したからである。
【0071】
半導体基板20が常温に戻った際の反りの大きさ(G22)を小さくするには、CVD装置におけるガスの流量等のパラメータを調整することで、G21で示される成膜中の反りの大きさを小さくすればよい。
図11のG31は、このような調整が行われた後に、第2絶縁膜形成工程において第2絶縁膜82が成膜されているときにおける、半導体基板20の反りの大きさを表している。また、
図11に示されるG32は、当該第2絶縁膜形成工程が完了し常温となった後における、半導体基板20の反りの大きさを表している。dw2を概ね維持したまま、成膜中の反り(G31)が231μm程度に低減された結果、常温に戻った後の半導体基板20の反りは概ね0μmとなっている。第2絶縁膜82が形成される場合には、常温時の反りが0μmとなるように成膜パラメータが調整された場合でも、成膜中の反りが大きくなり過ぎてしまうことがない。このため、成膜中においてチャッキングできなくなるような事態を防止しながらも、常温時における半導体基板20の反りを概ね0μmとなるよう抑制することができる。
【0072】
尚、
図11に示されるそれぞれの反りの大きさの値は、半導体基板20等の各材料の線膨張係数として、500Kにおける線膨張係数の値を用いて簡易的に算出されたものである。
【0073】
以上に説明した方法で製造される結果、本実施形態に係る半導体記憶装置10は、複数の導電体層40がz方向(第1方向)に沿って積層されている積層部100と、z方向に対し垂直なy方向(第2方向)に沿って積層部100と並んでいる部分であって、複数の導電体層40がy方向に沿って階段形状に引き出されている階段部200と、階段部200を上方から覆う第1絶縁膜81と、第1絶縁膜81の一部を上方から覆う第2絶縁膜82と、を備えた構成となる。このような構成とすることで、半導体基板20の反りを抑制することが可能となっている。
【0074】
ところで、半導体基板20の反りを防止するという観点においては、初めに第2絶縁膜82を形成し、その後に第1絶縁膜81を形成することも考えられる。つまり、炭化水素(CHx)を含有するシリコン酸化膜(第2絶縁膜82)で、階段部200を直接覆う構成とすることも考えられる。しかしながら、導電体層40に対し密着性の高い第1絶縁膜81で階段部200を直接覆った方が、複数の導電体層40間の耐電圧を高く確保することができる。このため、本実施形態のように、初めに第1絶縁膜81を形成し、その後に第2絶縁膜82を形成した方が好ましい。
【0075】
尚、第1絶縁膜81のうち第2絶縁膜82によって覆われる範囲は、本実施形態のように第1絶縁膜81の一部のみであってもよいが、第1絶縁膜81の全部であってもよい。
【0076】
図10において示された各線膨張係数(α0、α1、α2)はあくまで一例である。例えば、第2絶縁膜82の線膨張係数α2は、炭化水素の含有量(カーボンのドープ量)に応じて調整することができる。このため、成膜中における半導体基板20の反りの大きさ等に応じて、線膨張係数α2を適宜調整すればよい。
【0077】
図12には、第2絶縁膜82における炭素含有量(横軸)と、500K付近における第2絶縁膜82の線膨張係数(縦軸)と、の関係を実測した例が示されている。尚、上記の「炭素含有量」とは、第2絶縁膜82に含まれる炭素(C)の量を、第2絶縁膜82を構成する材料における組成比(atom%)として表したものである。
図12の線L1は、同図においてプロットされている個々のデータを一次の近似直線で表したものである。
【0078】
本発明者らが行った実験等によれば、半導体基板20の反りの大きさを十分に抑制するためには、第2絶縁膜82の線膨張係数が、常温においては2.6(×10
-6/K)よりも大きく、500Kにおいては3.5(×10
-6/K)よりも大きいことが望ましい、という知見が得られている。
図12に示されるデータと、測定バラつきとを考慮すれば、上記のような線膨張係数を確保するためには、第2絶縁膜82に含まれる炭素の量を、組成比において4atom%以上とすることが好ましい。
【0079】
以上においては、第1絶縁膜81が、テトラエトキシシランを原料として形成されたシリコン酸化膜であり、第2絶縁膜82が、炭化水素(CHx)を含有するシリコン酸化膜である場合の例について説明した。第1絶縁膜81及び第2絶縁膜82は、上記とは異なる種類の絶縁膜であってもよい。例えば、第1絶縁膜81は、モノシランガスを原料とするCVD成膜により形成されたシリコン酸化膜であってもよい。また、第2絶縁膜82は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)とは異なる種類の、メチル基(CH3基)を含む原料を用いた膜であってもよい。いずれの場合であっても、第2絶縁膜82の線膨張係数が、半導体基板20の線膨張係数よりも大きくなっていればよい。
【0080】
尚、半導体基板20の線膨張係数や、第2絶縁膜82の線膨張係数は、それぞれ、各材料の温度や測定方法等により、これまでに説明した例の数値とは異なる数値となり得る。しかしながら、少なくとも常温から成膜温度までの範囲に含まれるいずれの温度域においても、第2絶縁膜82の線膨張係数が、半導体基板20の線膨張係数よりも大きくなっている点は変わらない。
【0081】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0082】
10:半導体記憶装置、20:半導体基板、40:導電体層、100:積層部、110:積層体、200:階段部。