(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014104
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】結合金具
(51)【国際特許分類】
F16L 37/086 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
F16L37/086
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116265
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堺 剛
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE24
3J106BE30
3J106CA02
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC03
3J106EF08
3J106EF15
(57)【要約】
【課題】 受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制する。
【解決手段】 押し輪と凸部が設けられた差し金具と爪が設けられた受け金具とを備える差込式の結合金具において、押し輪は、爪を押し上げるための先端部と、軸方向において先端部の反対側に位置する後端部とを有する。受け口は、差し金具が受け金具に挿入され且つ凸部と爪が係合している状態で、軸方向において差し金具側に向かって突出するとともに、後端部を外側から覆う突出部を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた凸部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが前記軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記凸部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、前記爪を押し上げるための先端部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置する後端部と、を有し、
前記受け口は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で、前記軸方向において前記差し金具側に向かって突出するとともに、前記後端部を外側から覆う突出部を有している、
結合金具。
【請求項2】
前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で、前記突出部と前記後端部との間には、前記半径方向のすき間が形成される、
請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
前記受け口は、前記爪を外側から覆うしめ輪と、前記しめ輪の外周面に装着された保護部材と、をさらに備え、
前記保護部材は、前記突出部を有している、
請求項1または2に記載の結合金具。
【請求項4】
前記受け口は、前記爪を外側から覆うしめ輪をさらに備え、
前記しめ輪は、前記突出部を有している、
請求項1または2に記載の結合金具。
【請求項5】
前記突出部は、前記半径方向において前記突出部の外側と内側とを連通する連通部を有する、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項6】
前記連通部は、前記突出部の外周面に前記軸方向に沿って設けられ、
前記連通部の前記軸方向の一端は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で、前記後端部の端面よりも前記突出部の先端部側に位置し、
前記連通部の前記軸方向の他端は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪の係合が解除された状態で、前記後端部の端面よりも前記突出部の基端部側に位置する、
請求項5に記載の結合金具。
【請求項7】
前記突出部の先端部の端面は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で前記後端部の端面より突出している、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差し金具を受け金具に差し込むことにより両金具が結合される差込式の結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用ホース同士を接続するための金具として、雄金具である差し金具と、雌金具である受け金具とを備えた差込式の結合金具が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この結合金具においては、差し金具の先端に設けられた環状の凸部と、受け金具に設けられ当該金具の内側に向けて付勢された複数の爪とを係合させることにより、差し金具が受け金具に対して抜け止めされる。
【0003】
各爪は受け金具の軸を中心とした半径方向に移動可能であり、結合時においては差し金具の外周面に接触している。また、差し金具にはその外周面に沿ってスライド可能な押し輪が装着されている。この押し輪により各爪を半径方向に押し上げることで各爪と凸部の係合が解除され、差し金具を受け金具から抜き出すことが可能となる。
【0004】
実際の消火活動においては結合金具が現場の障害物などに接触した際に押し輪が押され、差し金具と受け金具が離脱する虞がある。この点に関し、特許文献1,2においては意図せぬ離脱を抑制するための結合金具の構造が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された結合金具においては、差し金具の外周面および押し輪の内周面に滑り止め溝が形成され、かつこれら外周面と内周面の間に隙間が設けられている。これにより、障害物によって押し輪に不均等な力が加わった場合には押し輪の先端の一部が差し金具の外周面から浮き上がるとともに他の部分が当該外周面に当接する。この当接した部分において差し金具の外周面と押し輪の内周面の溝が係合するために押し輪の移動が規制され、押し輪の先端が爪に到達しない。
【0006】
特許文献2に開示された結合金具においては、軸線方向に延びる保護枠が受け金具の周囲に設けられ、結合時には保護枠が押し輪(解除部材)のフランジ部よりも受け金具側に位置している。さらに保護枠は弾性を有しており、障害物が押し輪に接触した場合でも保護枠の内縁を弾性変形させてフランジ部を受け口側に移動させる十分な力が加わらない限り、押し輪の先端が爪に到達しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-14477号公報
【特許文献2】特開2018-31464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に開示された結合金具を踏まえても、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を抑制するための構造に関しては未だに種々の改善の余地がある。例えば、特許文献1,2のいずれに開示された結合金具においても、押し輪が障害物により押される角度や力の程度によっては離脱を十分に抑制できない。
【0009】
そこで、本発明は、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱をより効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る結合金具においては、差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた凸部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが前記軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記凸部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪は、前記爪を押し上げるための先端部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置する後端部と、を有する。前記受け口は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で、前記軸方向において前記差し金具側に向かって突出するとともに、前記後端部を外側から覆う突出部を有している。
【0011】
前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で、前記突出部と前記後端部との間には、前記半径方向のすき間が形成されてもよい。例えば、前記受け口は前記爪を外側から覆うしめ輪と、前記しめ輪の外周面に装着された保護部材と、をさらに備え、前記保護部材は前記突出部を有していてもよい。例えば、前記受け口は前記爪を外側から覆うしめ輪をさらに備え、前記しめ輪は前記突出部を有していてもよい。
【0012】
前記突出部は、前記半径方向において前記突出部の外側と内側とを連通する複数の連通部を有してもよい。前記連通部は、前記突出部の外周面に前記軸方向に沿って設けられ、前記連通部の前記軸方向の一端は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で、前記後端部の端面よりも前記突出部の先端部側に位置し、前記連通部の前記軸方向の他端は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪の係合が解除された状態で、前記後端部の端面よりも前記突出部の基端部側に位置してもよい。
【0013】
前記突出部の先端部の端面は、前記差し金具が前記受け金具に挿入され且つ前記凸部と前記爪が係合している状態で前記後端部の端面より突出していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る結合金具の部分断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る結合金具の比較例である。
【
図5】
図5は、消火活動の現場における
図4に示した結合金具の状態を示した図である。
【
図6】
図6は、消火活動の現場における第1実施形態に係る結合金具の状態を示した図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る受け口の部分断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のいくつかの実施形態につき図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
本実施形態においては、主に消防分野での使用が想定される差込式の結合金具を例示する。ただし、当該結合金具は、消防分野以外にも工業用や農業用の流路の結合など種々の用途で利用できる。
【0017】
図1は、第1実施形態に係る結合金具C1の部分断面図である。結合金具C1は、受け口F1と、差し口M1とを備えている。受け口F1は、軸AX1を中心とした円筒状の受け金具1(雌金具)を備えている。差し口M1は、軸AX2を中心とした円筒状の差し金具2(雄金具)を備えている。
【0018】
図1において、受け金具1と差し金具2は、軸AX1,AX2が一致した状態で並んでいる。この状態において軸AX1,AX2と平行な方向を軸方向Dxと定義する。軸AX1,AX2を中心として軸AX1,AX2から離れる方向を半径方向Drと定義する。また、
図1に示すように軸AX1,AX2を中心とした周方向Dθを定義する。
【0019】
受け金具1は、軸方向Dxにおいて第1端部1aおよび第2端部1bを有している。受け金具1の内部には、第1流路10が形成されている。受け金具1は、消防用ホースの端部に挿入される装着部11を第1端部1a側に有するとともに、装着部11よりも外径が大きい拡径部12を第2端部1b側に有している。装着部11の外周面には、消防用ホースを抜け止めするための軸方向Dxに並ぶ複数の環状の段差が形成されている。受け金具1の第2端部1bは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。
【0020】
受け口F1は、拡径部12に連結された環状のしめ輪3と、しめ輪3の外周面に装着された円筒状の保護部材4とをさらに備えている。しめ輪3は金属材料で形成され、例えば複数のねじによって拡径部12に連結されている。しめ輪3は、第2端部1bと軸方向Dxに対向する円環部31を有している。円環部31は、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。保護部材4は例えばゴムで形成され、その外周面は受け口F1および差し口M1において最も半径方向Drに突出している。保護部材4は、例えばタイヤやバンドなどとも呼ばれる。
【0021】
受け口F1は、しめ輪3に外側から覆われた複数の爪5と、拡径部12の内側に配置されたシール材6と、複数の爪5を保持する爪座7とをさらに備えている。複数の爪5は、周方向Dθに沿った円弧状であり、均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。シール材6は、例えば環状のゴムパッキンである。爪座7は、しめ輪3によって受け金具1に固定されており、第2端部1bと円環部31の間に配置されている。複数の爪5は、爪座7と第2端部1bの間において、半径方向Drに移動可能である。複数の爪5は、例えば板ばねである弾性部材50によって軸AX1に向けて付勢されている。
【0022】
保護部材4は、突出部41を有している。すなわち、受け口F1は突出部41を有している。突出部41は、保護部材4の一部であり、保護部材4と一体的に形成されている。突出部41は、軸方向Dxに沿って突出している。また、突出部41は保護部材4とは別部品で形成され、保護部材4に着脱可能に取り付けられてもよい。突出部41は、軸方向Dxにおいて、先端部41aと、しめ輪3側の基端部41bとを有している。突出部41の外周面41cは軸方向Dxと平行でもよい。先端部41aの端面41dは半径方向Drと平行であってもよいし、曲面であってもよい。突出部41は、半径方向Drにおいて突出部41の外側と内側とを連通する連通部42を有している。連通部42は、突出部41の外周面41cに軸方向Dxに沿って設けられている。複数の連通部42は、突出部41の周方向Dθにおいて等間隔に配置されてもよいし、不等間隔に配置されてもよい。連通部42の数は、複数に限られない。
【0023】
連通部42は、軸方向Dxにおいて、先端部41a側の一端42aと、基端部41b側の他端42bとを有している。
図1に示す例において、連通部42は、突出部41の先端部41aから基端部41bに向かって形成された切り欠き形状であり、先端部41aの端面41dと一端42aとが一致している。連通部42の形状は、切り欠き形状に限られない。連通部42の周方向Dθの幅Wは、消防隊員などの作業者が作業をするのに必要な長さが確保されていればよい。例えば、幅Wは、作業者の親指が入る程度の長さであればよい。連通部42の幅Wは、一端42aから他端42bにかけて一定であってもよいし、一端42aから他端42bに向かうに従って幅Wが狭くなるようなテーパ状に形成されてもよい。
【0024】
差し金具2は、軸方向Dxにおいて第1端部2aおよび第2端部2bを有している。差し金具2の内部には、第2流路20が形成されている。差し金具2は、受け金具1側の消防用ホースとは異なる他の消防用ホースの端部に挿入される装着部21を第1端部2a側に有するとともに、周囲よりも半径方向Drにやや突出した環状の凸部22を第2端部1b側に有している。装着部21の外周面には、装着部11と同じく複数の環状の段差が形成されている。
【0025】
差し口M1は、装着部21と凸部22の間における差し金具2の外周面2cに固定された環状の止め輪8と、凸部22と止め輪8の間に設けられた押し輪9とをさらに備えている。止め輪8は、例えば外周面2cに設けられた環状の溝に装着された金属線であり、少なくとも一部が外周面2cよりも半径方向Drに突出している。
【0026】
押し輪9は、外周面2cを囲う円筒状である。押し輪9は、後述する凸部22と爪5が係合している状態において爪5を押し上げるための先端部91を第2端部2b側に有し、軸方向Dxにおいて先端部91の反対側に位置する後端部92を有している。
図1に示すように後端部92には、例えば周方向Dθの全体において軸AX2と反対側に向けて突出しているフランジ部が設けられている。凸部22および止め輪8により、押し輪9が差し金具2に対し抜け止めされている。押し輪9は、差し金具2の外周面2cに対して固定されていない。押し輪9は、凸部22と止め輪8の間において外周面2cに対し軸方向Dxにスライド可能である。また、押し輪9は、差し口M1と受け口F1が結合されていない状態および差し口M1と受け口F1が結合された状態の双方において、外周面2cに対し周方向Dθに回動可能である。
【0027】
図2および
図3は、第1実施形態に係る受け口F1と差し口M1が連結された状態における結合金具C1の部分断面図である。
図2は、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5が係合している状態であり、
図3は、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5の係合が解除された状態である。受け口F1と差し口M1が連結された状態においては、受け金具1と差し金具2は、軸AX1,AX2が一致した状態である。
【0028】
図2にて、差し金具2を受け金具1に挿入し凸部22と爪5が係合するまでの流れを説明する。受け口F1と差し口M1を連結する際には、まず、しめ輪3の開口を通じて差し金具2の第2端部2bを受け金具1の拡径部12に挿入する。このとき、凸部22が弾性部材50の付勢力に抗して爪5を半径方向Drに押し上げる。これにより、
図2に示すように第2端部2bが拡径部12の内面に接触する位置まで差し金具2が受け金具1に差し込まれる。
【0029】
第2端部2bが拡径部12の内面に接触した状態においては、受け金具1の内部に形成された第1流路10と、差し金具2の内部に形成された第2流路20とが接続される。このとき、シール材6のリップが凸部22の外周面22aに接触し、受け金具1と差し金具2の隙間が液密に保たれる。さらに、爪5が弾性部材50の付勢力により差し金具2の外周面2cに接触する。この状態においては、爪5の一部が凸部22と軸方向Dxに対向し、凸部22と爪5が軸方向Dxに係合する。この状態においては、受け金具1と差し金具2を離脱させることができない。
【0030】
図3にて、差し金具2が受け金具1に挿入された状態から凸部22と爪5の係合が解除されるまでの流れを説明する。受け金具1と差し金具2を離脱させる際には、押し輪9を用いて凸部22と爪5の係合を解除する。具体的には、
図3の矢印Aで示すように押し輪9が爪5に向けて押されると、押し輪9が差し金具2の外周面2cに対し軸方向Dxにスライドする。例えば、作業者が後端部92の端面92aを矢印Aで示す方向に両手の親指などで押すことで、押し輪9をスライドさせることができる。このとき、押し輪9の先端部91はしめ輪3の円環部31と外周面2cの隙間および爪座7と外周面2cの隙間を通じて爪5に向かい、やがて先端部91が爪5に接触する。さらに、押し輪9が矢印Aに示す方向に押し込まれると、爪5が弾性部材50の付勢力に抗して半径方向Drに押し上げられ、凸部22と爪5の係合が解除される。そして、受け金具1と差し金具2を離脱させることが可能となる。
【0031】
図2および
図3にて、受け口F1と差し口M1が連結された状態における突出部41について説明する。突出部41は、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5が係合している状態で、軸方向Dxにおいて差し金具2側に向かって突出するとともに、後端部92を外側から覆っている。突出部41の先端部41aと後端部92との位置関係は、
図2に示すように押し輪9が止め輪8に接触している状態において、突出部41の先端部41aの端面41dは、後端部92の端面92aより突出している。他の例として、押し輪9が止め輪8に接触している状態において、先端部41aの端面41dと後端部92の端面92aの位置が一致してもよい。後端部92は突出部41により外側から覆われているため、外部から障害物などが後端部92の端面92aに当たることはない。
【0032】
突出部41の内周面と後端部92との間には、周方向Dθの全体にわたり、半径方向Drのすき間Gが形成されている。すき間Gは、例えば押し輪9が凸部22と止め輪8の間において軸方向Dxにスライド可能な範囲において形成される。
図2および
図3のどちらの状態においてもすき間Gは形成されており、押し輪9を軸方向Dxにスライドさせる動きは突出部41により妨げられることはない。
【0033】
突出部41は、
図1に示したように複数の連通部42を有している。連通部42の一端42aは、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5が係合している状態で、後端部92の端面92aよりも突出部41の先端部41a側に位置している。
図2および
図3に示す例においては、先端部41aの端面41dと一端42aとが一致している。一方、連通部42の他端42bは、
図3に示すように差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5の係合が解除された状態で、後端部92の端面92aよりも突出部41の基端部41b側に位置している。また、連通部42の幅Wは、作業者が作業をするのに必要な長さが確保されているため、作業者は、例えば連通部42を介して親指を挿入することで押し輪9に到達することができる。
【0034】
以上より、受け口F1が突出部41を有していても、作業者は、凸部22と爪5が係合している状態(
図2)から凸部22と爪5の係合が解除された状態(
図3)まで押し輪9をスライドさせることができる。また、複数の連通部42が周方向Dθに均等に配置されていることで、作業者は容易に離脱操作をすることができる。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る結合金具C1の比較例である。
図4に示した結合金具C2は、受け口F2が突出部41を有していない点で
図2および
図3に示した結合金具C1と相違する。すなわち、保護部材40は突出部41を有していない。受け口F2が突出部41を有していないため、押し輪9の後端部92を外側から覆うものはない。押し輪9の後端部92には外部から容易に到達することができるため、後端部92の端面92aが消火活動の現場において障害物等と当たる可能性がある。
【0036】
例えば、階段の段差などに後端部92の端面92aが引っ掛かり、押し輪9が受け口F2側に向かって押され、押し輪9がスライドする可能性がある。これは、消火活動の現場において受け金具1と差し金具2とが意図せずに離脱(誤脱)する原因となり得る。
【0037】
図5は、消火活動の現場における
図4に示した結合金具C2の状態を示した図である。
図6は、消火活動の現場における第1実施形態に係る結合金具C1の状態を示した図である。
図5および
図6においては、結合金具C1,C2が階段S上に位置している。消火活動の現場における障害物としては、階段S以外にも柱や壁などの種々の障害物が想定され得る。
【0038】
図5の結合金具C2は突出部41を有しない受け口F2を備え、
図6の結合金具C1は突出部41を有する受け口F1を備えている。受け金具1が有する装着部11と、差し金具2が有する装着部21には、消防用ホースH1,H2がそれぞれ接続されている。消防用ホースH1の受け金具1に接続された端部H1aとは反対側の端部には消防隊員Tが配置され、消防用ホースH2の差し金具2に接続された端部H2aとは反対側の端部にはポンプPが配置されている。
図5および
図6に示す例においては、矢印Bに示すように力が加えられている状況を想定する。すなわち、消防用ホースH2がポンプP側から引っ張られている。
【0039】
図5においては、階段Sの段差の角部SLが押し輪9の後端部92と消防用ホースH2の端部H2aとの間に位置している。消防用ホースH2がポンプP側から引っ張られ矢印Bに示すように力が加わると、後端部92の端面92aが角部SLに引っ掛かる。そして、後端部92の端面92aが角部SLに引っ掛かった状態で矢印Bに示すように力が加わると、後端部92の端面92aが角部SLに押され、押し輪9が軸方向Dxで受け口F2側に向けてスライドする。さらに、矢印Bに示すように力が加わると、端面92aが角部SLに押され、押し輪9がスライドし受け口F2側に押し込まれる。その結果、
図3を用いて説明したように凸部22と爪5の係合が解除される。このように結合金具C2で結合された消防用ホースH1,H2を用いた消火活動では、結合金具C2が階段Sなどの障害物に当たると、押し輪9が意図せず押されて差し金具2と受け金具1が離脱する可能性がある。
【0040】
図6においては、階段Sの段差の角部SLが突出部41の先端部41aと消防用ホースH2の端部H2aとの間に位置している。消防用ホースH2がポンプP側から引っ張られ矢印Bに示すように力が加わると、突出部41の先端部41aの端面41dが角部SLに引っ掛かる。
図2および
図3を用いて説明したように後端部92は突出部41により外側から覆われているため、
図5に示した例とは異なり後端部92の端面92aは角部SLに当たらない。先端部41aの端面41dが角部SLに引っ掛かった状態で矢印Bに示すように力が加わっても、後端部92の端面92aは角部SLに押されないため、押し輪9は軸方向Dxでスライドしない。そのため、
図5に示した例とは異なり凸部22と爪5の係合が解除することはない。
【0041】
以上説明した第1実施形態によれば、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を効果的に抑制することが可能な結合金具C1を提供することができる。つまり、押し輪9の後端部92は受け口F1が有する突出部41に外側から覆われているため、押し輪9の後端部92が消火活動の現場において障害物などに当たることはない。言い換えると、突出部41が押し輪9を覆うカバーとなる。
【0042】
図5で説明したように結合金具C2で結合された消防用ホースH1,H2を用いた消火活動では、結合金具C2が何らかの障害物に当たると、押し輪9が意図せず押されて差し金具2と受け金具1が離脱する可能性がある。このような離脱は、消火活動の重大な遅延に繋がりかねない。また、消防用ホースH1,H2内に圧力を保持した状態で結合金具C2が離脱するとけがなどの重大事故につながる可能性がある。
【0043】
これに対し第1実施形態に係る結合金具C1で結合された消防用ホースH1,H2であれば、受け口F1が突出部41を有し、押し輪9の後端部92が突出部41により外側から覆われているため、押し輪9が押され差し金具2と受け金具1が離脱する虞がない。したがって、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を効果的に抑制できる。
【0044】
受け口F1が突出部41を有していても、作業者は連通部42を介して突出部41の外側から内側の押し輪9に到達することができる。突出部41の内周面と後端部92との間には、半径方向Drのすき間Gが形成されているため、押し輪9を軸方向Dxにスライドさせる動きは、突出部41により妨げられることはない。すなわち、受け口F1が突出部41を有していても、作業者の結合金具C1の離脱操作が妨げられることはない。
【0045】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0046】
図7は、第2実施形態に係る受け口F3の部分断面図である。第2実施形態において、しめ輪30は、突出部32を有している。すなわち、受け口F3は突出部32を有している。突出部32は、しめ輪30の一部であり、しめ輪30と一体的に形成されている。突出部32は、軸方向Dxに沿って突出する。また、突出部32はしめ輪30とは別部品で形成され、しめ輪30に着脱可能に取り付けられてもよい。受け口F3は、しめ輪30が突出部32を有している点で第1実施形態と相違する。
図7に示す例においては、突出部32は、円環部31から軸方向Dxに沿って円筒状に突出している。突出部32は、軸方向Dxにおいて、先端部32aと、保護部材40側の基端部32bとを有している。突出部32の外周面32cは軸方向Dxと平行でもよい。先端部32aの端面32dは半径方向Drと平行であってもよいし、曲面であってもよい。
【0047】
突出部32は、半径方向Drにおいて突出部32の外側と内側とを連通する連通部33を有している。連通部33は、突出部32の外周面32cに軸方向Dxに沿って設けられている。複数の連通部33は、突出部32の周方向Dθにおいて等間隔に配置されてもよいし、不等間隔に配置されてもよい。連通部33の数は、複数に限られない。連通部33は、軸方向Dxにおいて、先端部32a側の一端33aと、基端部32b側の他端33bとを有している。
【0048】
図8は、第2実施形態に係る受け口F3と差し口M1が連結された状態における結合金具C3の部分断面図である。
図8は、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5が係合している状態である。差し金具2を受け金具1に挿入し凸部22と爪5が係合するまでの流れや、差し金具2が受け金具1に挿入された状態から凸部22と爪5の係合が解除されるまでの流れは、
図2および
図3を用いて説明した通りである。
【0049】
突出部32は、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5が係合している状態で、軸方向Dxにおいて差し金具2側に向かって突出するとともに、後端部92を外側から覆っている。突出部32の先端部32aと後端部92との位置関係は、
図8に示すように押し輪9が止め輪8に接触している状態において、突出部32の先端部32aの端面32dは、後端部92の端面92aより突出している。他の例として、押し輪9が止め輪8に接触している状態において、先端部32aの端面32dと後端部92の端面92aの位置が一致してもよい。第1実施形態と同様に、後端部92は突出部32により外側から覆われているため、外部から障害物などが後端部92の端面92aに当たることはない。突出部32の内周面と後端部92との間には、周方向Dθの全体にわたり、半径方向Drのすき間Gが形成されている。すき間Gは、例えば押し輪9が凸部22と止め輪8の間において軸方向Dxにスライド可能な範囲において形成される。
【0050】
連通部33の一端33aは、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5が係合している状態で、後端部92の端面92aよりも突出部32の先端部32a側に位置している。
図8に示す例においては、先端部32aの端面32dと一端33aとが一致している。一方、連通部33の他端33bは、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ凸部22と爪5の係合が解除された状態で、後端部92の端面92aよりも突出部32の基端部32b側に位置する。また、連通部33の幅Wは、作業者が作業をするのに必要な長さが確保されている。
【0051】
第2実施形態に係る結合金具C3は、第1実施形態に係る結合金具C1と同様に受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を効果的に抑制することができる。受け口F3が有する突出部32は、第1実施形態に係る突出部41とは異なり金属材料で形成されたしめ輪30が有するため、障害物などに突出部32の先端部32aの端面32dが引っ掛かった場合に先端部32aに大きな力が加えられても、突出部32は変形しにくい。
【0052】
以上の実施形態は、本発明の範囲を各実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の構造を結合金具に適用できる。
【0053】
例えば、上記実施形態においては消防用ホースが受け口および差し口の双方に接続される結合金具を例示したが、受け口および差し口の少なくとも一方が消火栓や消防車両などの構造物に設けられてもよい。なお、受け口F2のように突出部を有しない受け口であっても、保護部材やしめ輪を上記実施形態の保護部材4やしめ輪30と交換することで突出部を有する受け口に変更することができる。
【符号の説明】
【0054】
C1,C2,C3…結合金具、F1,F2,F3…受け口、M1…差し口、1…受け金具、2…差し金具、3,30…しめ輪、31…円環部、32…突出部、32a…先端部、33…連通部、4,40…保護部材、41…突出部、41a…先端部、42…連通部、5…爪、6…シール材、7…爪座、8…止め輪、9…押し輪、91…先端部、92…後端部。