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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141052
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】蝶番
(51)【国際特許分類】
   E05D 5/04 20060101AFI20220921BHJP
   E05D 7/10 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
E05D5/04 C
E05D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041182
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】内山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】村田 泰久
【テーマコード(参考)】
2E030
【Fターム(参考)】
2E030AB01
2E030AB02
2E030BB03
2E030JA01
2E030JB01
2E030JC01
(57)【要約】
【課題】扉の上部側と扉枠を連結する際に扉を持ち上げることなく楽に仮吊りすることが可能な蝶番にする。
【解決手段】芯棒30が上下方向に挿通される扉側軸管12を有する扉側羽根10と、扉側軸管12に挿通された芯棒30の下端部32が挿入される枠側軸管23を有する枠側羽根20とを備える。扉側羽根10と枠側羽根20は、互いの係合によって扉4を仮吊りすると共に扉側軸管12と枠側軸管23を同軸に配置する係合部16,25cを有する。扉側羽根10の係合部16は、枠側羽根20の係合部25cに水平方向から引っ掛けられることによって係合部25cと係合させられるフック部からなる。両係合部16,25cが係合する状態で芯棒30の下端部32が枠側軸管23に挿入される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠に対する扉の回動軸になる芯棒と、前記芯棒が上下方向に挿通される扉側軸管を有する扉側羽根と、前記扉側軸管に挿通された前記芯棒の下端部が挿入される枠側軸管を有する枠側羽根とを備える蝶番において、
前記扉側羽根と前記枠側羽根は、互いの係合によって前記扉を仮吊りすると共に前記扉側軸管と前記枠側軸管を同軸に配置する係合部を有し、
前記枠側羽根の係合部は、前記枠側軸管の上端部に円筒状に設けられており、
前記扉側羽根の係合部は、前記枠側羽根の係合部に対して水平方向から前記扉の戸先側に向けて引っ掛けられるフック状に設けられていることを特徴とする蝶番。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物等の扉枠に扉を吊り込む際に扉の上部側と扉枠を連結するために用いられる蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物や建築物に据え付けられた扉枠に対して扉を吊り込む場合、少なくとも二つの蝶番を用いて扉枠と扉が連結される。それら蝶番の一つは、扉の上部側に配置され、他の一つは、扉の下部側に配置される。
【0003】
従来、扉枠に対する扉の回動軸になる芯棒と、芯棒が上下方向に挿通される扉側軸管を有する扉側羽根と、扉側軸管に挿通された芯棒の下端部が挿入される枠側軸管を有する枠側羽根とを備える蝶番がある。
【0004】
この種の蝶番を用いた扉の吊り込み作業では、その扉側羽根が扉に取り付けられ、その枠側羽根が扉枠に取り付けられる。作業者は、扉を動かして扉側軸管と枠側軸管を同軸に配置する。その同軸配置の状態で芯棒の下端部が枠側軸管に挿入される。これにより、扉側羽根と枠側羽根が芯棒を介して連結され、その芯棒が扉の回動軸になる。
【0005】
上述の蝶番の連結作業を一人でも簡単に行えるようにするため、扉の仮吊り(仮吊り込みとも称される)機能を有する蝶番が提案されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1に開示された蝶番は、扉の上部側と扉枠を連結するためのものであって、扉の下部側と扉枠を先に適宜の蝶番で連結した後、連結作業を行う前提のものである。特許文献1に開示された蝶番は、枠側軸管から上方に切欠き部を延設し、芯棒の下端部を扉側軸管から下方に突出した状態に仮保持可能とし、それら芯棒の下端部と枠側羽根の切欠き部を仮吊り込み用の係合部としている。その芯棒の突出部分を枠側羽根の切欠き部に水平方向に挿入することにより、これらが係合して扉を仮吊りすることができる。この後、作業者は、芯棒を手で下方に押して枠側軸管にさらに挿入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4292109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された蝶番では、扉を吊り込む際、芯棒の下端部を枠側羽根の切欠き部に位置合わせする必要がある。一人で作業する際は、両手で扉を支える作業者から見て芯棒の下端部が枠側羽根の切欠き部で隠れてしまうために、芯棒の下端部の位置を予想しながら扉の上部側を動かして枠側羽根の切欠き部に挿入する必要がある。また、位置を合わせ損ねて、芯棒の下端部が枠側羽根の切欠き部に適切に挿入されていない状態や未挿入の状態のまま、扉を開閉してしまうと、扉の戸先側が落下しようとする荷重(扉のモーメント荷重)を芯棒の下端部と枠側羽根の切欠き部で受けることができず、不意に扉の仮吊り込みが外れたり、扉の下面が床に擦ったりして、作業者の負傷や扉等の損傷を招く可能性がある。
【0009】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、扉の上部側と扉枠を連結する際に扉を楽に仮吊りすることが可能な蝶番にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、この発明は、扉枠に対する扉の回動軸になる芯棒と、前記芯棒が上下方向に挿通される扉側軸管を有する扉側羽根と、前記扉側軸管に挿通された前記芯棒の下端部が挿入される枠側軸管を有する枠側羽根とを備える蝶番において、前記扉側羽根と前記枠側羽根は、互いの係合によって前記扉を仮吊りすると共に前記扉側軸管と前記枠側軸管を同軸に配置する係合部を有し、前記枠側羽根の係合部は、前記枠側軸管の上端部に円筒状に設けられており、前記扉側羽根の係合部は、前記枠側羽根の係合部に対して水平方向から前記扉の戸先側に向けて引っ掛けられるフック状に設けられている構成を採用した。
【0011】
上記構成によれば、扉側羽根の係合部を枠側羽根の係合部に水平方向から引っ掛けて両係合部を係合させることが可能なため、扉の下部側と扉枠を他の蝶番で先に連結する工程を行い、扉の重量を他の蝶番で支える状態にしてから、扉の上部側を軽く動かすだけで、扉側羽根の係合部を枠側羽根の係合部に係合させる工程を実施することができる。その扉側羽根の係合部が前記扉の戸先側に向けて引っ掛けられるフック状に設けられ、その枠側羽根の係合部が枠側軸管の上端部に円筒状に設けられているので、フック状の係合部を円筒状の係合部に引っ掛ける際の位置合わせは、フック状の係合部の先端が円筒状の係合部よりも扉枠側に位置するように扉の姿勢を大雑把に調整するだけでよく、その後は、扉の戸先側が落下しようとする荷重を利用してフック状の係合部を円筒状の係合部に引っ掛けるだけで両係合部を楽に係合させることができる。その係合状態では、円筒状の係合部に対してフック状の係合部が常に扉の戸先側に向けて引っ掛かるため、扉の戸先側が落下しようとする荷重を支えて扉を仮吊りすることができる。また、両係合部が係合することで扉側軸管と枠側軸管が同軸に配置されているため、その係合状態において、芯棒の下端部を枠側軸管に挿入して扉側羽根と枠側羽根を芯棒で連結することができる。さらに、仮に両係合部を係合させてから芯棒の下端部を枠側軸管に挿入する前の段階で扉を開閉したとしても、フック状の係合部が円筒状の係合部に対して戸先側に向かって付勢されて引っ掛かる状態に変わりないから、フック状の係合部が円筒状の係合部から外れることはない。
【発明の効果】
【0012】
したがって、この発明は、上記構成の採用により、扉の上部側と扉枠を連結する際に扉を楽に仮吊りすることが可能な蝶番にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施形態に係る扉装置を示す正面図
図2】この発明の実施形態に係る蝶番を用いて扉の上部側と縦枠部を連結する直前の様子を示す斜視図
図3】(a)はこの発明の実施形態に係る蝶番の組み立て状態を示す正面図、(b)は前記(a)のB-B線の断面図、(c)は前記(a)のC-C線の断面図
図4】(a)はこの発明の実施形態に係る扉側羽根の上面図、(b)は前記扉側羽根の正面図、(c)は前記扉側羽根の下面図、(d)は前記扉側羽根の右側面図
図5】(a)はこの発明の実施形態に係る締め付け部の上面図、(b)は前記締め付け部の正面図
図6】(a)はこの発明の実施形態に係る枠側羽根の上面図、(b)は前記枠側羽根の正面図
図7】(a)はこの発明の実施形態に係る延長管部の正面図、(b)は前記延長管部の縦断面図
図8】(a)はこの発明の実施形態に係るケース部材の縦断面図、(b)は前記ケース部材の正面図
図9】この発明の実施形態に係る蝶番の扉側羽根の係合部と枠側羽根の係合部が係合する様子を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一例としての実施形態に係る蝶番を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる扉装置を示す正面図である。図1において、符号1は、建物の開口部に取付けられる扉装置である。
【0016】
この扉装置1は、開口部に設けられる扉枠2と、この扉枠2内に複数の蝶番3を介して開閉可能に設けられる扉4とを備える。
【0017】
扉枠2は、上枠部2a、下枠部2bおよび左右の縦枠部2c,2dにより方形枠状に組立てられている。
【0018】
扉4の一側である吊元側は、これと対応する吊元側の縦枠部2dに蝶番3を介して取付けられている。蝶番3は、扉4を安定して開閉可能に支持するために、吊元側の縦枠部2dの上部と下部に適当な間隔をあけて2組配置されている。上部に配置されたものを上部蝶番3A、下部に配置されたものを下部蝶番3Bとする。
【0019】
上部蝶番3Aは、扉4に固定される扉側羽根10と、扉枠2に固定される枠側羽根20とを備え、この枠側羽根20の上に扉側羽根10を載せ、これら各羽根10、20を芯棒30によって連結している。同様に、下部の蝶番3Bは、扉4に固定される扉側羽根50と、扉枠2に固定される枠側羽根60とを備え、この枠側羽根60の上に扉側羽根50を載せ、これら各羽根50、60を図示しない芯棒によって連結している。この扉装置1では、上部蝶番3Aの構造に特徴を有する。
【0020】
図2に示す上部蝶番3Aは、扉4の上部側と扉枠2の縦枠部2dを連結するためのものである。この上部蝶番3Aは、扉4の吊元側の小口に取り付けられる扉側羽根10と、扉枠2の縦枠部2dに取り付けられる枠側羽根20と、扉枠2に対する扉4の回動軸になる芯棒30と、意匠性を高めるためのケース部材40とを備える。
【0021】
図2図3(a),(b)、図4(a)~(d)に示すように、扉側羽根10は、扉4の吊元側の小口に固定される取り付けプレート11と、芯棒30が上下方向(芯棒30の軸線方向に相当する。)に挿通される扉側軸管12とを有する。
【0022】
扉側軸管12は、金属板の第一端部を巻いた上方ロール板部13と、芯棒30を仮保持する締め付け部14とからなる。芯棒30は、手動操作により、扉側軸管12に対して上方から下方に向かって挿入される。
【0023】
取り付けプレート11には、複数のザグリ穴15が形成されている。これらザグリ穴15は、取り付けプレート11を扉4にねじ止めするためのものである。このねじ止めにより、扉側羽根10が扉4に取り付けられる。
【0024】
扉側軸管12の上方ロール板部13は、扉側軸管12に挿入された芯棒30を水平方向(芯棒30の軸径方向に相当する。)に支持し、その上端開口縁において芯棒30の頭部31を係止することによって芯棒30の下降を規制する。締め付け部14は、芯棒30に対して締め代をもっており、締め付け部14に挿通された芯棒30を締め付ける。締め付け部14に芯棒30を挿通後に芯棒30の手動挿入操作を止めると、締め付け部14は、芯棒30を弾性的に締め付けることにより、芯棒30を挿入停止位置に仮保持する。仮保持された芯棒30の頭部31を手で下方に押すことにより、芯棒30を強制的に下降させることができる。
【0025】
扉側羽根10は、扉4を仮吊りするための係合部16をさらに有する。この係合部16は、金属板の第一端部の下方に突き出た第二端部を湾曲板状に曲げたフック板部からなる。係合部16が曲がる方向は、上方ロール板部13の巻き方向と同じにして、係合部16の曲率半径は上方ロール板部13よりも大きく設定されている。図4(c)に示すように、係合部16の曲率中心G側の板面は、取り付けプレート11を扉4に締結面11fで固定した状態で扉4の戸先側を向く。
【0026】
なお、本実施形態において、上方ロール板部13の巻き方向を係合部16が曲がる方向と同じにしたが、係合部16が曲がる方向とは反対方向にしても良い。
【0027】
係合部16の曲率中心G側の板面は、この曲率中心Gに関して、係合部16の曲率中心G周りの周方向一端縁から周方向他端縁までの中心角θは、120°に設定されている。この中心角は、扉4を仮吊りするために120°以上に設定することが好ましく、水平方向に枠側羽根20側と係合させることを容易にするために180°以下にすることが好ましい。
【0028】
なお、θを120°以上に設定することが困難な場合でも、係合部16の曲率中心Gと係合部16の先端部Tとを結ぶ線分が締結面11fとなす角度αを0°より大きく設定すれば、仮吊りに際して、係合部16が枠側羽根20の係合部25cに対して扉4の前後方向にずれることをより確実に抑制できる。
【0029】
扉側羽根10の係合部16の上端縁と、扉側軸管12の上方ロール板部13の下端縁との間は、スリット17になっている。
【0030】
また、上方ロール板部13は、上下二か所に分かれており、その上部側と下部側の間は、スリット18になっている。
【0031】
これらスリット17,18は、金属板の第一端部と第二端部を成型する打ち抜き加工の際に形成される。上方ロール板部13は、金属板の第一端部にロール加工を施すことで形成されている。扉側羽根10の係合部16は、金属板の第二端部をプレス加工することで形成されている。スリット17を形成するため、扉側羽根10の係合部16と上方ロール板部13を互いに異なる曲面状に成型することが容易になる。
【0032】
なお、上方ロール板部13の内周面における曲率中心G1と、係合部16の曲率中心Gとは同軸上に配置されている。芯棒30は、上方ロール板部13の上端側開口から上方ロール板部13の内側に嵌合される。芯棒30の円柱面外側には、コイニング等で形成された凸部30dが形成されている(図3(b)参照)。この芯棒30の凸部30dは、上方ロール板部13のスリット(上方ロール板部13の巻き端と金属板の板面との間に形成された隙間)に挿し込まれている。これにより、芯棒30は、上方ロール板部13に対して回り止めされている。
【0033】
図5に示すように、締め付け部14は、その周方向一か所で分断された有端環状の止め輪からなり、合成樹脂によって一体に成型されている。締め付け部14は、図2図3(a)に示すように、スリット18に水平方向に挿入される。締め付け部14の上下方向動は、上方ロール板部13の上下の対向縁によって規制される。芯棒30を締め付け部14に挿すと、締め付け部14が拡径する弾性変形を生じて芯棒30を締め付ける。
【0034】
図2図3(a),(c)、図6(a)~図7に示すように、枠側羽根20は、縦枠部2dに固定される取り付けケース21と、取り付けケース21に対して前後左右に調整可能に連結される位置調整プレート22と、扉側軸管12に挿通された芯棒30の下端部32が挿入される枠側軸管23とを有する。
【0035】
枠側軸管23は、金属板の端部を巻いた下方ロール板部24と、下方ロール板部24に挿入固定された延長管部25とからなる。枠側軸管23は、枠側軸管23に挿入された芯棒30の下端部32を水平方向に支持する。
【0036】
位置調整プレート22と下方ロール板部24は、同一の金属板によって形成されている。延長管部25は、合成樹脂によって一体に成型されている。
【0037】
取り付けケース21は、複数の雄ねじ部材26~28により、位置調整プレート22と連結され、また、縦枠部2dに固定される。これらねじ止めにより、枠側羽根20が扉4に取り付けられる。
【0038】
なお、雄ねじ部材27は、位置調整プレート22の位置を縦枠部2dに対して前後方向に調整するためのものである。また、雄ねじ部材28は、位置調整プレート22の位置を縦枠部2dに対して左右方向に調整するためのものである。なお、位置調整機能を省き、枠側軸管23を有する金属板を縦枠部2dに固定する枠側羽根に変更することも可能である。また、位置調整機構を扉側羽根の側に設ける構成としても良い。
【0039】
延長管部25は、下方ロール板部24の内側に位置する下方筒25aと、下方ロール板部24の上端縁に載せられた下鍔25bと、下鍔25bと上下方向に離間して配置した上鍔25eと、上鍔25eから上方に延びる枠側羽根20の係合部25cとからなる。
【0040】
下方筒25aは、下方ロール板部24の上端側開口から下方ロール板部24の内側に嵌合される。延長管部25は、下方筒25aと下方ロール板部24の嵌め合いと、下方ロール板部24の上端縁に対する下鍔25bの係止とによって下方ロール板部24に挿入固定されている。下方筒25aの筒外側には、上下方向に延びる一本の突条25dが形成されている(図3(c)参照)。この下方筒25aの突条25dは、下方ロール板部24のスリット(下方ロール板部24の巻き端と金属板の板面との間に形成された隙間)に挿し込まれている。これにより、延長管部25は、下方ロール板部24に対して回り止めされている。
【0041】
下方ロール板部24の下端開口は、下方ロール板部24に圧入されたキャップ29により閉塞されている。
【0042】
上鍔25eには、ケース部材40が着脱可能に嵌められる。ケース部材40は、図8に示すように、上端を閉塞し下端を開放した有底筒状に形成されている。ケース部材40の周方向の一か所にスリット41が形成されている。スリット41は、上下方向に延びている。図3に示すケース部材40は、扉側羽根10の扉側軸管12及び係合部16を覆い隠すように上鍔25eに嵌め合わされる。この際、取り付けプレート11の上方ロール板部13の付け根付近及び係合部16の付け根付近は、スリット41に通される。下鍔25bは、ケース部材40の下端縁と上下に突き合い、また、上鍔25eはケース部材40の内側に嵌合する。ここで、ケース部材40の下端に複数個設けられた爪部42が、スナップフィットにより上鍔25eと下鍔25bの間に係止され、ケース部材40は抜け止めされる。
【0043】
図7に示すように、枠側羽根20の係合部25cは、上下方向に延びる円筒状になっている。係合部25cと下方筒25aは、同軸に設定されている。延長管部25を下方ロール板部24に挿入固定すると、係合部25cは、枠側軸管23の上端部を構成する。
【0044】
図2図9に示すように、扉側羽根10の係合部16は、枠側羽根20の係合部25cに対して水平方向から扉4の戸先側に向けて引っ掛けられることにより、枠側羽根20の係合部25cと係合させられる。枠側羽根20の係合部25cの外周は、扉側羽根10の係合部16の曲率中心側の板面を所定の中心角の範囲に亘って係合部25cの外周に接触させられるように、その板面の曲率半径よりも小径になっている。また、係合部25cの上下方向長さは、扉4の戸先側が落下しようとする荷重が作用しても係合部16が係合部25cから上方側へ外れないように、扉側羽根10の係合部16の上下方向長さの半分よりも大きくなっている。
【0045】
図2図3(a)に示す芯棒30の下端部32は、枠側羽根20の係合部25cの上端側筒口から枠側軸管23に挿入される。芯棒30の下端部32は、下方筒25aから下方に突出するまで挿入される。芯棒30の下端部32及び係合部25cの上端筒口の内周側は、それぞれ面取り状になっている。これは、芯棒30の下端部32を係合部25cに挿入する際の互いの芯ずれを互いの面取り状同士の摺接によって同軸に導くためである。
【0046】
図9に示すように枠側羽根20の係合部25cに扉側羽根10の係合部16を引っ掛ける仮吊り工程は、予め、扉側羽根10、枠側羽根20をそれぞれ対応の扉4、縦枠部2dに取り付け、かつ扉4の下部側が下部蝶番3B(図1参照)で縦枠部2dに連結した吊り込み準備工程を終えた状態にしてから開始される。
【0047】
なお、下部蝶番3Bには、扉側羽根10、枠側羽根20、芯棒30からなる蝶番3Aを用いてもよいし、この発明に該当しない構造の蝶番を用いてもよく、例えば、上下方向の位置調整機能付きの蝶番を用いてもよい。
【0048】
吊り込み準備工程後は、扉4の重量の略全てが当該他の蝶番3Bにおいて支えられている。したがって、作業員は、図2に示す扉4の上部側を軽く動かして仮吊り工程を実施することができる。作業員が扉4の上部側を動かして扉側羽根10の係合部16を水平方向から枠側羽根20の係合部25cに引っ掛ける際、扉4側の係合部16が手前側に位置するため、係合部16の視認性がよく、縦枠部2d側の係合部25cに対する係合部16の位置合わせを行い易い。さらに、扉側羽根10の係合部16と扉側軸管12間がスリット17になっているため、作業員は、スリット17から前述の位置合わせの様子を視認することもできる。
【0049】
その位置合わせは、図9中に二点鎖線で示すように、フック状の係合部16が円筒状の係合部25cよりも縦枠部2d側に位置するように扉4の姿勢を大雑把に調整するだけでよく、その後、作業者は、扉4の戸先側が落下しようとする荷重(同図のY2方向にかかる)を利用して係合部16を係合部25cに引っ掛けるだけで両係合部16,25cを楽に係合させることができる。
【0050】
その係合状態では、図9に実線で示すように、円筒状の係合部25cに対してフック状の係合部16が常に扉4の戸先側に向けて引っ掛かるため、扉4の戸先側が落下しようとする荷重(同図のY1方向にかかる)を支えて扉4を仮吊りすることができる。すなわち、扉側羽根10のフック状の係合部16は、扉4の吊元側に固定された取り付けプレート11と一体であるから、その係合状態のとき、常に扉4の戸先側(同図のY1方向)に向けて枠側羽根20の係合部25cに引っ掛かり、扉4の戸先側への傾き挙動を防ぐとともに、円筒状の係合部25cに中心角120°以上の範囲に亘って引っ掛かるので、扉4の前後方向への傾き挙動を防ぐこともできる。このため、両係合部16,25cが扉4の仮回動軸になり、扉側軸管12と枠側軸管23とが同軸に配置される。このように、枠側羽根20の係合部25cと扉側羽根10の係合部16は、互いの係合によって、扉4を仮吊りすると共に扉側軸管12と枠側軸管23を同軸に配置することができる。この同軸性は、芯棒30の下端部32を枠側軸管23に挿入可能な精度であればよく、厳密に同軸である必要はない。
【0051】
前述の仮吊り工程後、図2に示す芯棒30を手動挿入する連結工程が実施される。ここで、仮吊り工程の前に予め芯棒30を扉側軸管12から下方に突出しないように締め付け部14に仮保持させておき、その状態で仮吊り工程を実施すれば、仮吊り工程後、手際よく芯棒30の下端部32を枠側軸管23に挿入して連結工程を終えることができる。
【0052】
なお、前述の仮吊り工程後は、扉4が上下の蝶番で仮吊り込みされ、扉4の戸先側が落下しようとするモーメント荷重は係合部16によって支承されるため、作業者が扉4から手を離しても、また、扉4を扉枠2に対して開閉しても、扉4の落下や傾きは、通常、発生しない。このため、仮吊り工程前は芯棒30を扉側軸管12に挿入しないでおき、仮吊り工程後に芯棒30を扉側軸管12に挿入し、枠側軸管23まで挿通させる連結工程を実施するように工程順を変更することも可能である。
【0053】
連結工程後、図3(a)に示すように、ケース部材40が上下鍔25b,25eに嵌着される(以下、適宜に図2図3(a)~(c)、図9参照)。
【0054】
この蝶番は、上述のように、扉枠2に対する扉4の回動軸になる芯棒30と、芯棒30が上下方向に挿通される扉側軸管12を有する扉側羽根10と、扉側軸管12に挿通された芯棒30の下端部32が挿入される枠側軸管23を有する枠側羽根20とを備えるものであって、扉側羽根10と枠側羽根20が互いの係合によって扉4を仮吊りすると共に扉側軸管12と枠側軸管23を同軸に配置する係合部16,25cを有し、枠側羽根20の係合部25cが枠側軸管23の上端部に円筒状に設けられ、扉側羽根10の係合部16が枠側羽根20の係合部25cに対して水平方向から扉4の戸先側に向けて引っ掛けられるフック状に設けられていることにより、扉4の下部側と縦枠部2dを他の蝶番で先に連結する工程を行い、扉4の重量を他の蝶番で支える状態にしてから、扉4の上部側を軽く動かすだけで、扉側羽根10の係合部16を枠側羽根20の係合部25cに係合させる仮吊り工程を実施することができ、その際、フック状の係合部16を円筒状の係合部25cに引っ掛けるための位置合わせを大雑把に調整するだけでよく、その後、扉4の戸先側が落下しようとする荷重を利用してフック状の係合部16を円筒状の係合部25cに引っ掛けるだけで両係合部16,25cを楽に係合させることができる。その係合状態では、円筒状の係合部25cに対してフック状の係合部16が常に扉4の戸先側に向けて引っ掛かるため、扉4の戸先側が落下しようとする荷重を支えて扉4を仮吊りすることができる。また、両係合部16,25cが係合することで扉側軸管12と枠側軸管23が同軸に配置されているため、その係合状態において、芯棒30の下端部32を枠側軸管23に挿入して扉側羽根10と枠側羽根20を芯棒30で連結することができる。仮に、両係合部16,25cを係合させてから芯棒30の下端部32を枠側軸管23に挿入する前の段階で扉4を開閉したとしても、前述の荷重により、フック状の係合部16が円筒状の係合部25cに対して戸先側に向かって付勢されて引っ掛かる状態に変わりないから、フック状の係合部16が円筒状の係合部25cから外れることはない。したがって、この蝶番は、扉4の上部側と縦枠部2dを連結する際に扉4を楽に仮吊りすることができる。
【0055】
また、この蝶番は、扉側羽根10の係合部16と扉側軸管12との間がスリット17になっていることにより、係合部16を枠側羽根20の係合部25cに引っ掛ける際の位置合わせの視認性をより向上させることができる。
【0056】
また、この蝶番は、扉側軸管12が金属板の第一端部を巻いた上方ロール板部13を有し、扉側羽根10の係合部16が前記金属板の第二端部を湾曲板状に曲げたフック部からなり、スリット17が上方ロール板部13と係合部16間に形成されていることにより、上方ロール板部13と係合部16を一枚の金属板から形成する際にスリット17で分断してそれぞれを適切な形状にすることができると共に、そのスリット17で前述の視認性の向上を図ることができる。
【0057】
なお、本実施形態においてはスリット17を設けた場合を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、スリットを設けずに、鍛造等により扉側羽根10の係合部16と扉側軸管12を連続した形状に成型しても良い。
【0058】
また、この蝶番は、扉側軸管12が扉側軸管12に挿入された芯棒30を仮保持する締め付け部14を有することにより、予め芯棒30を扉側軸管12内に留まるように仮保持させた状態で、扉側羽根10の係合部16を枠側羽根20の係合部25cに引っ掛けることができ、その後、手際よく芯棒30を枠側軸管23に挿入することができる。
【0059】
なお、本実施形態において、芯棒30を仮保持するために締め付け部14を用いたが、仮保持手段はこれに限られるものではなく、例えば、締め付け部14と上方ロール板部13のスリット18を廃して、芯棒30を扉側軸管12に挿入した状態で、上方ロール板部13の端部を適宜押しつぶして抜け止めと仮保持を図る構成としても良い。
【0060】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10 扉側羽根
12 扉側軸管
13 上方ロール板部
14 締め付け部
16 係合部
17 スリット
20 枠側羽根
23 枠側軸管
24 下方ロール板部
25 延長管部
25a 下方筒
25b 下鍔
25c 係合部
30 芯棒
32 下端部
40 ケース部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9