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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141080
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20220921BHJP
   E21B 47/00 20120101ALI20220921BHJP
   E21B 49/00 20060101ALI20220921BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
E21B47/00
E21B49/00
G01V1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041218
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉河 秀郎
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB01
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105LL02
2G105LL03
2G105LL04
2G105LL05
2G105LL06
(57)【要約】
【課題】施工対象の状態をより正確に逐次把握することができる情報処理装置及び情報処理方法を提供する。
【解決手段】施工対象を施工する前に得られた前記施工対象の地質情報に基づいて、前記施工対象の三次元地質モデルを作成するモデル作成部と、施工中に探査された前記施工対象の情報である探査情報に基づいて、前記三次元地質モデルを更新するモデル更新部と、を備える情報処理装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象を施工する前に得られた前記施工対象の地質情報に基づいて、前記施工対象の三次元地質モデルを作成するモデル作成部と、
施工中に探査された前記施工対象の情報である探査情報に基づいて、前記三次元地質モデルを更新するモデル更新部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記三次元地質モデルは、地層の属性情報が与えられたボクセルによって表現されたボクセルモデルであり、
前記モデル更新部は、前記探査情報に基づいて、前記ボクセルモデルのうち所定の範囲における1つ以上の前記属性情報を逐次更新する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記探査情報は、トンネル切羽前方およびその周辺地山における探査であるトンネル地山探査によって得られる情報である、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記探査情報は、前記トンネル地山探査によって得られた弾性波速度、岩相区分、強度試験による物性区分、及び弾性波の反射面に関する情報の少なくともいずれかを含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記探査情報は、先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度の情報、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分、及び弾性波の反射面の情報を含み、
前記モデル更新部は、前記探査情報のうち、前記先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度、先進ボーリングによる前記岩相区分、前記物性区分の情報、及び弾性波の反射面の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、少なくとも前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を更新する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記探査情報は、先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度と、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分の情報、弾性波探査によって得られた弾性波の1つ以上の反射面と、を含み、
前記モデル更新部は、前記探査情報に基づいて前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界面を更新する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記モデル更新部は、
前記先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度の情報、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分の情報、及び弾性波の反射面の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を特定する境界位置特定部と、
前記弾性波探査によって得られた複数の前記反射面のうち、前記境界位置特定部によって特定された前記境界位置に最も近い前記反射面の選択する反射面選択部と、
前記反射面選択部によって選択された前記反射面を前記境界位置まで移動させることで前記三次元地質モデル上の新たな前記境界面を特定する境界面特定部と、
前記境界面特定部で特定された前記境界面に基づいて前記三次元地質モデルを更新する更新部と、
を備える請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記モデル更新部は、前記探査情報に基づいて前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を特定し、特定した前記境界位置と、前記地質情報によって得られた境界面の走向傾斜の情報もしくは、既掘削範囲の切羽観察から得られる地層もしくは地山硬軟の境界面の情報に基づいて、前記三次元地質モデルを更新する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項9】
施工対象を施工する前に得られた前記施工対象の地質情報に基づいて、前記施工対象の三次元地質モデルを表示部に表示する表示ステップと、
施工中に探査された前記施工対象の情報である探査情報に基づいて、前記表示部に表示される前記三次元地質モデルを更新するモデル更新ステップと、
前記モデル更新ステップによって更新された前記三次元地質モデルを表示部に表示する表示ステップと、
を含み、
前記モデル更新ステップによって更新された前記三次元地質モデルには、前記探査情報が入力され、前記表示ステップによって前記探査情報が表示可能である、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル施工において、不安定箇所における施工の安全性確保や、的確で遅延のない対策工事の実施のためには、切羽前方を含む周辺地山の状況を精度よく把握することが重要である。地山状況変化の予測のため、先進ボーリングや反射法弾性波探査、もしくは削孔検層などの探査が現場の状況により行われている。そして、探査結果を弱層などの出現予測やその対策工にいかすため、地山状況変化の三次元的な予測も試みられている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-176845号公報
【特許文献2】特開2017-179725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、三次元的に地山状況を可視化する試みはなされているものの、単一の探査結果による評価方法の場合が多く、解釈する人の経験により違いがでるなど、探査結果およびその解釈には曖昧さがある。また、複数の探査項目の結果がある場合には、それを総合的に判断する知識と経験が求められる。各種探査結果から総合的に検討され作成される三次元地質モデルは、地山状況を精度よく把握するために有用であるが、施工中に様々な探査結果をすぐに反映させて地質モデルを更新する方法は今まで検討されてこなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、施工対象の状態をより正確に、探査を実施するたびに逐次把握することができる情報処理装置及び情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、施工対象を施工する前に得られた前記施工対象の地質情報に基づいて、前記施工対象の三次元地質モデルを作成するモデル作成部と、施工中に探査された前記施工対象の情報である探査情報に基づいて、前記三次元地質モデルを更新するモデル更新部と、を備える情報処理装置である。
【0007】
(2)上記(1)の情報処理装置であって、前記三次元地質モデルは、地層の属性情報が与えられたボクセルによって表現されたボクセルモデルであり、前記モデル更新部は、前記探査情報に基づいて、前記ボクセルモデルのうち所定の範囲における1つ以上の前記属性情報を逐次更新してもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は上記(2)の情報処理装置であって、前記探査情報は、トンネル切羽前方およびその周辺地山における探査であるトンネル地山探査によって得られる情報であってもよい。
【0009】
(4)上記(3)の情報処理装置であって、前記探査情報は、前記トンネル地山探査によって得られた弾性波速度、岩相区分、強度試験による物性区分、及び弾性波の反射面に関する情報の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0010】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかの情報処理装置であって、前記探査情報は、先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度の情報、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分、及び弾性波の反射面の情報を含み、前記モデル更新部は、前記探査情報のうち、前記先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度、先進ボーリングによる前記岩相区分、強度試験による物性区分の情報、及び弾性波の反射面の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、少なくとも前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を更新してもよい。
【0011】
(6)上記(1)から上記(4)のいずれかの情報処理装置であって、前記探査情報は、先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度と、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分の情報、弾性波探査によって得られた弾性波の1つ以上の反射面と、を含み、前記モデル更新部は、前記探査情報に基づいて前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界面を更新してもよい。
【0012】
(7)上記(6)の情報処理装置であって、前記モデル更新部は、前記先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度の情報、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分の情報、及び弾性波の反射面の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を特定する境界位置特定部と、前記弾性波探査によって得られた複数の前記反射面のうち、前記境界位置特定部によって特定された前記境界位置に最も近い前記反射面の選択する反射面選択部と、前記反射面選択部によって選択された前記反射面を前記境界位置まで移動させることで前記三次元地質モデル上の新たな前記境界面を特定する境界面特定部と、前記境界面特定部で特定された前記境界面に基づいて前記三次元地質モデルを更新する更新部と、を備えてもよい。
【0013】
(8)上記(5)の情報処理装置であって、前記モデル更新部は、前記探査情報に基づいて前記三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を特定し、特定した前記境界位置と、前記地質情報によって得られた境界面の走向傾斜の情報もしくは、既掘削範囲の切羽観察から得られる地層もしくは地山硬軟の境界面の情報に基づいて、前記三次元地質モデルを更新してもよい。
【0014】
(9)本発明の一態様は、施工対象を施工する前に得られた前記施工対象の地質情報に基づいて、前記施工対象の三次元地質モデルを表示部に表示する表示ステップと、施工中に探査された前記施工対象の情報である探査情報に基づいて、前記表示部に表示される前記三次元地質モデルを更新するモデル更新ステップと、前記モデル更新ステップによって更新された前記三次元地質モデルを表示部に表示する表示ステップと、を含み、前記モデル更新ステップによって更新された前記三次元地質モデルには、前記探査情報が入力され、前記表示ステップによって前記探査情報が表示可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、施工対象の状態をより正確に逐次把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る情報処理装置の概略構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係るモデル更新部のブロック図の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係るモデル更新部における三次元地質モデルの更新方法の一例を説明する図である。
図5】本実施形態に係る三次元地質モデルの更新方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態に係る情報処理装置及び情報処理方法を、図面を用いて説明する。本実施形態の情報処理装置及び情報処理方法は、例えば三次元地質モデルの作成と更新に関するものである。
【0018】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置20を含む情報処理システム1の概略構成の一例を示す図である。本実施形態の情報処理システム1は、トンネル施工を行うにあたって、そのトンネル施工の対象である地山(施工対象)の状況をより正確に簡易に逐次把握するためのシステムである。ただし、トンネル施工に限定されず、情報処理システム1は、あらゆる工種の施工に適用可能である。
【0019】
情報処理システム1は、例えば、探査システム10及び1つ以上の情報処理装置20を備える。
【0020】
探査システム10は、施工対象の一例である地山の状況(以下、「地山状況」という。)を探査する。例えば、探査システム10は、1つ以上の探査装置を備える。探査システム10は、通信ネットワークNを介して情報処理装置20に接続される。探査システム10は、探査した地山状況である探査情報を、通信ネットワークNを介して情報処理装置20に送信する。探査システム10は、地山が掘削機などによって施工されている場合において、その地山の地山状況を探査する。すなわち、探査システム10は、トンネル施工前ではなく、トンネル施工中の地山状況を探査し、その探査情報を探査するごとに逐次情報処理装置20に送信する。
【0021】
通信ネットワークNは、無線通信の伝送路(例えば、無線LAN)であってもよいし、有線通信の伝送路であってもよいし、無線通信の伝送路及び有線通信の伝送路の組み合わせであってもよい。通信ネットワークNは、携帯電話回線網などの移動体通信網、無線パケット通信網、インターネット及び専用回線又はそれらの組み合わせであってもよい。例えば、通信ネットワークNWは、省電力広域ネットワーク(LPWAN:LPWAN:Low-power Wide-area Network)を用いてもよいし、短距離無線通信規格であるZigBee(登録商標)、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等を用いてもよい。なお、トンネル坑内におけるWiFi通信および有線通信、USBケーブルなどによる計測機器からPCへのデータ移動も、通信ネットワークNを介した通信に含まれる。
【0022】
例えば、探査システム10は、トンネル切羽前方およびその周辺地山における探査であるトンネル地山探査によって、施工中の地山状況を探査する。トンネル地山探査は、先進ボーリングであってもよいし、弾性波探査法であってもよいし、その両方であってもよい。弾性波探査法は、屈折法弾性波探査であってもよいし、反射法弾性波探査であってもよいし、その両方であってもよい。また、トンネル地山探査は、穿孔検層であってもよい。また、弾性波探査法は、掘削振動を振動源とし、地山を伝播する弾性波が岩盤性状(例えば、岩盤の硬さ)の変化点で反射する現象を利用し、トンネル内で観測した弾性波から地山内の反射面の位置を推定するものであってもよい。この場合の振動源は、例えば、ブレーカーの打撃振動である。弾性波探査法は、例えば、TSP(Tunnel Seismic Prediction)やHSP(Horizontal Seismic Profiling)などであってもよい。
【0023】
探査システム10によって得られる探査情報は、トンネル地山探査によって得られる情報であって、例えば、弾性波速度の分布及び弾性波の反射面の少なくともいずれかを含む。ここで、先進ボーリングでは、先進ボーリングの線状な孔内の弾性波速度の分布の情報を得ることができる。この弾性波速度の分布から硬質から軟質又は軟質から硬質への境界位置を捉えることができる。弾性波探査法(反射法弾性波探査)では、弾性波の1つ以上の反射面の情報を得ることができる。反射面とは、硬質から軟質又は軟質から硬質への境界面を三次元的に捉えたものである。これら以外にも、弾性波速度の分布は、発破弾性波探査から取得しても良い。また、先進ボーリングにより岩相区分の情報を取得しても良いし、強度試験により物性区分の情報を取得しても良い。すなわち、トンネル地山探査によって得られる情報は、トンネル地山探査によって得られた弾性波速度、岩相区分、強度試験による物性区分、及び弾性波の反射面などに関する情報の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0024】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置20の概略構成の一例を示す図である。図2に示すように、情報処理装置20は、例えば、通信部21、制御部22及び表示部23を備える。
【0025】
通信部21は、通信ネットワークNを介して探査システム10と情報を送受する。通信部21は、トンネル施工中において、通信ネットワークNを介して、探査システム10から探査情報を逐次受信する。
【0026】
表示部23は、情報処理装置20により処理される各種情報を出力する出力装置の一例である。表示部23は、例えば、ディスプレイなどの情報を表示する表示装置である。情報を出力する出力装置は、表示部23に限られず、どのような装置であってもよい。例えば、出力装置は、インターネットなどのネットワーク(有線又は無線)を介して接続される他の情報処理装置であってもよい。
【0027】
制御部22は、例えば、モデル作成部30、モデル更新部31及び表示制御部32を備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0028】
モデル作成部30は、施工対象の一例である地山に対してトンネル施工を実施する前に得られた施工対象の地質情報に基づいて、施工対象の三次元地質モデルを作成する。この地質情報は、例えば、トンネル施工の事前調査で得られた情報である。この地質情報は、例えば、弾性波探査のデータやボーリングデータである。以下、トンネル施工する前に得られた地山などの施工対象の地質情報を「事前調査データ」と称する。モデル作成部30は、事前調査データを通信ネットワークN経由で取得してもよいし、その他の方法で事前調査データを取り込んでもよい。
【0029】
モデル作成部30は、事前調査データに基づいて施工対象である地山の三次元地質モデルを作成する。この三次元地質モデルは、例えば、地層の属性情報が与えられたボクセルによって表現されたボクセルモデルである。この三次元地質モデルの作成にあたって、BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)を用いることができる。このように、三次元地質モデルは、例えば、地山の地形情報(三次元情報)と地質の属性情報とを連携させてモデル化したものである。属性情報は、地質に関する情報であって、例えば、地質を示す情報(例えば、岩相区分や硬軟区分など)、弾性波の速度、境界位置の有無、境界面の走向傾斜などの情報を含む。例えば、弾性波の速度が第1の範囲内の場合には第1レベル、第1の範囲とは異なる第2の範囲内の場合には第2レベルなど、弾性波の速度を複数のレベルに区分し、その区分したレベルの情報を属性情報としてもよい。なお、以下において、モデル作成部30が事前調査データに基づいて作成した三次元地質モデルを「初期モデル」と称する場合がある。
【0030】
モデル更新部31は、施工中に探査された地山状況の情報である探査情報に基づいて、三次元地質モデルを更新する。例えば、モデル更新部31は、探査情報に基づいて、三次元地質モデルであるボクセルモデルのうち所定範囲における1つ以上の属性情報を逐次更新する。すなわち、モデル更新部31は、三次元地質モデルのすべてを更新してもよいし、三次元地質モデルのうち、ある範囲(所定範囲)Hのみを更新対象として抽出し、抽出した更新対象内のボクセルに対応付けられている属性情報を更新してもよい。
【0031】
例えば、モデル更新部31は、通信部21を介して得られる探査情報が先進ボーリングによって得られた弾性波速度の情報を含む場合には、その先進ボーリングによって得られた弾性波速度に基づいて、少なくとも三次元地質モデルにおける地質の境界位置を更新する。例えば、モデル更新部31は、通信部21を介して得られる探査情報が先進ボーリングによって得られた弾性波速度と、弾性波探査によって得られた弾性波の1つ以上の反射面とを含む場合には、その探査情報に基づいて三次元地質モデルにおける地質の境界面を更新する。例えば、モデル更新部31は、探査情報のうち、先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分の情報、及び弾性波の反射面の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、少なくとも三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を更新する。探査情報が先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度と、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分の情報、および弾性波探査によって得られた弾性波の1つ以上の反射面と、を含む場合には、モデル更新部31は、この探査情報に基づいて三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界面を更新してもよい。
【0032】
モデル更新部31は、探査情報に基づいて三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を特定し、特定した境界位置と、地質情報(施工前の地質調査による縦断図などのデータ)によって得られた境界面の走向傾斜の情報もしくは、既掘削範囲の切羽観察から得られる地層もしくは地山硬軟の境界面の情報に基づいて、三次元地質モデルを更新してもよい。
【0033】
モデル更新部31は、三次元地質モデルを更新するにあたって、施工中の探査情報を三次元地質モデル上に入力してもよい。これにより、表示部23によって各種探査情報を総合的に可視化可能である。
【0034】
表示制御部32は、モデル作成部30によって作成された三次元地質モデルを表示部23に表示する。また、表示制御部32は、三次元地質モデルがモデル更新部31によって更新された場合には、更新された三次元地質モデルを表示部23に表示する。例えば、表示制御部32は、三次元地質モデルがモデル更新部31によって更新された場合には、表示部23に表示される三次元地質モデルをモデル更新部31によって更新された三次元地質モデルに更新する。これにより、表示部23に表示される三次元地質モデルは、探査情報に基づいて逐次更新され、より正確なモデルにアップデートされる。したがって、施工の作業者は、逐次アップデートされる三次元地質モデルを表示部23で確認しながら、トンネル施工を実施することができる。また、表示制御部32は、三次元地質モデル上に入力されている探査情報を表示部23に表示させることで各種探査情報を総合的に可視化可能である。
【0035】
以下、本実施形態に係るモデル更新部31の各機能部の一例について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るモデル更新部31のブロック図である。
【0036】
モデル更新部31は、例えば、境界位置特定部40、反射面選択部41、境界面特定部42及び更新部43を備える。各機能部の説明を、図4を用いて説明する。図4は、モデル更新部31における三次元地質モデルの更新方法の一例を説明する。なお、図4は、説明の便宜上、二次元的に記載しているが、実際には三次元の情報である。
【0037】
まず、モデル作成部30は、事前調査データに基づいて地山の三次元地質モデルである初期モデルを作成する(図4(a))。図4(a)は、例えば、トンネルの掘削が行われる前の事前調査データによって作成された地山の縦断面であって、地質A(例えば、硬軟区分A)と地質B(例えば、硬軟区分B)とに区分されている。なお、例えば、初期モデルは、施工前調査による岩相区分、また、弾性波速度分布や当初設計の支保パターンに相当する地山区分などによって作成される。
【0038】
モデル更新部31は、初期モデルのうち所定範囲Hのみを更新対象として抽出する(図4(b))。これは、更新対象を広範囲にするとモデルの更新に相当な時間を要すため、更新対象を初期モデル全体ではなく、ある範囲に限定することでモデルの更新にかかる時間を少なくすることができる。図4(b)では、モデル更新部31によって抽出された初期モデルの各ボクセルには、地質Aを示す属性情報が対応付けらえている。
【0039】
所定範囲Hは、任意に設定可能であるが、例えば、掘削している箇所から掘削方向の所定領域である。例えば、所定範囲Hは、探査システム10で探査可能な範囲に応じて設定され、探査可能な範囲を超えて設定されてないように予め規定されてもよい。例えば、探査システム10で探査する手法の情報が情報処理装置20に入力されると、情報処理装置20は、その情報に応じた所定範囲Hを不図示の記憶部から読み出して設定してもよい。
【0040】
次に、境界位置特定部40は、探査情報のうち、例えば、先進ボーリングなどによって得られた弾性波速度に基づいて、三次元地質モデルにおける地層の境界位置Pを特定する。例えば、境界位置特定部40は、トンネル施工中に探査された探査情報を探査システム10から受信し、その受信した探査情報のうち、先進ボーリングなどによる岩相・弾性波速度などの情報に基づいて、地質の境界位置Pを定義(特定)する(図4(c))。図4(c)に示す例では、初期モデルでは地質Aのみ存在すると定義されていた所定範囲Hにおいて、先進ボーリングなどによる岩相・弾性波速度などの情報によって地質Cが存在することが発見された状態を示す図である。境界位置特定部40は、先進ボーリングなどによる岩相・弾性波速度などの情報によって地質Aとは異なる地質Cの存在を検知すると、地質Cと地質Aとの境界位置Pを特定する。一例として、境界位置特定部40は、仮に弾性波速度が予め設定された閾値(例えば、1000m/sec)以上変化した変化点を境界位置Pとして特定してもよい。
【0041】
ここで、先進ボーリングからの情報は、線状な孔内の情報である。したがって、境界位置特定部40は、地質Cと地質Aとの境界位置Pを特定できても、地質Cと地質Aとの境界面を特定することは困難である場合がある。そこで、モデル更新部31は、探査情報に弾性波の反射面の情報が含まれている場合には、その反射面の情報をさらに用いることで地質Cと地質Aとの境界面を特定する。
【0042】
例えば、境界位置特定部40は、先進ボーリングもしくは発破弾性波探査によって得られた弾性波速度の情報、先進ボーリングによる岩相区分、強度試験による物性区分の情報、及び弾性波の反射面の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、三次元地質モデルにおける地層境界もしくは地山硬軟の境界位置を特定してもよい。
【0043】
反射面選択部41は、探査情報のうち、弾性波探査によって得られた複数の反射面の情報を抽出する。反射面選択部41は、その抽出した複数の反射面の情報のうち、例えば、境界位置特定部40によって特定された境界位置Pに最も近い反射面を選択する。ただし、反射面選択部41における反射面の選択方法は、この方法に限定されず、複数の反射面から1つの反射面を選択できればよい。
【0044】
境界面特定部42は、反射面選択部41によって選択された反射面を境界位置Pまで移動させることで三次元地質モデル上の新たな境界面を特定する(図4(d))。例えば、境界面特定部42は、反射面選択部41によって選択された反射面の走向傾斜の情報を取得し、その取得した走向傾斜を境界位置Pの位置に適用されることで地質Cと地質Aとの境界面を特定する。例えば、図4(d)に示すように、反射面選択部41によって複数の反射面のうち、境界位置Pに最も近い反射面Sが選択された場合には、境界面特定部42は、反射面Sの重心を境界位置Pまでずらすことで地質Cと地質Aとの境界面S´を特定する。このように、境界面特定部42は、境界位置Pと交差するように反射面Sを移動させて境界面S´を特定してもよい。
【0045】
更新部43は、境界面特定部42で特定された境界面S´の情報に基づいて、所定範囲H内のボクセルに対応付けられた属性情報を更新する(図4(e))。例えば、更新部43は、三次元地質モデルの境界面S´に基づいて、地質Cに対応するボクセルの属性情報を地質Cの属性情報に更新する。
【0046】
ここで、探査情報には、弾性波の反射面の情報が含まれていない場合がある。この場合には、反射面選択部41は、境界位置特定部40によって特定された境界位置Pに最も近い反射面を選択することができない。そこで、このような場合には、モデル更新部31は、事前調査データによって得られた境界面K(図4に示す例では、地質Aと地質Bとの境界面)の走向傾斜の情報に基づいて、三次元地質モデルにおける境界面を更新してもよい。例えば、反射面選択部41は、地質Aと地質Bとの境界面Kの走向傾斜の情報を、境界位置Pに適用することで地質Cと地質Aとの境界面S´を特定してもよい。また、既掘削範囲における切羽観察結果から得られる代表的な地層境界や硬軟境界の走向傾斜の情報を、境界位置Pに適用することで地質Cと地質Aとの境界面S´を特定しても良い。
【0047】
以下、情報処理装置20における三次元地質モデルの更新方法の一例の流れを、図5を用いて説明する。
【0048】
情報処理装置20は、トンネル施工前にて行われた事前調査の事前調査データに基づいて地山の三次元地質モデルである初期モデルを作成する(ステップS101)。掘削機などによってトンネル施工が実行されると、探査システム10は、トンネル地山探査によってトンネル施工中の地山状況を探査し、その探査によって得られた探査情報を逐次情報処理装置20に送信する。
【0049】
情報処理装置20は、探査情報を受信すると(ステップS102)、初期モデルから更新対象を抽出する(ステップS103)。情報処理装置20は、探査情報に基づいて、境界位置Pを特定する(ステップS104)。情報処理装置20は、境界位置P(例えば、硬軟境界の位置)を特定した場合には、探査情報を含む情報に基づいて、その境界位置Pを含む地質の境界面を特定する(ステップS105)。情報処理装置20は、境界面を特定すると、更新対象の三次元モデルを更新して、その特定した境界面を三次元モデルに反映させる(ステップS106)。なお、ステップS104にて境界位置Pが特定されなかった場合には、ステップS105及びステップS106を省略してもよい。ステップS106の処理では、情報処理装置20は、更新された三次元地質モデルに探査情報を入力してもよい。
【0050】
情報処理装置20は、ステップS106にて更新された三次元地質モデルを表示部23に表示する(ステップS107)。その際、情報処理装置20は、三次元地質モデルに入力されている探査情報を表示部23に表示してもよい。これにより、より多くの情報を合わせて可視化させることができ、より正確な地層境界・硬軟境界など地質モデルの更新に寄与する。
【0051】
情報処理装置20は、更新対象を更新した後、三次元地質モデルの更新処理を終了するか否かを判定する(ステップS108)。例えば、情報処理装置20は、更新処理の停止を示す信号を外部から受信した場合、情報処理装置20の電源がオフ状態になった場合、または、更新処理を実行するアプリケーションが停止された場合には、更新処理を終了すると判定して更新処理を停止する。一方、情報処理装置20は、更新処理を継続すると判定した場合には、ステップS102に戻り、直前のステップS106で更新された三次元モデルに対して、ステップS102からステップS106までの処理を実行する。これにより、三次元モデルは、トンネル施工中に取得される探査情報に基づいて逐次更新される。ここで、逐次更新とは、例えば、探査情報を取得するごとに更新することであり、新たな探査情報が得られた場合には、その探査情報に基づいて三次元モデルが更新される。なお、更新された三次元地質モデルは、更新されるごとに情報処理装置20内の不揮発性メモリに格納されてもよい。その際には、更新された三次元地質モデルは、時系列に保存されてもよいし、上書き保存されてもよい。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0053】
本実施形態では、情報処理装置20は、施工対象が施工される前に得られた施工対象の地質情報(事前調査データ)に基づいて、施工対象の三次元地質モデルを作成し、施工中に探査された施工対象の探査情報に基づいて、その三次元地質モデルを更新する。
【0054】
このような構成により、地山などの施工対象の状態をより正確に簡易に逐次把握することができる。
【0055】
なお、上述した情報処理装置20の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、情報処理装置20の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0056】
また、明細書に記載の「…部」の用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアとして具現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…情報処理システム、10…探査システム、20…情報処理装置、21…通信部、22…制御部、23…表示部、30…モデル作成部、31…モデル更新部、32…表示制御部、40…境界位置特定部、41…反射面選択部、42…境界面特定部、43…更新部
図1
図2
図3
図4
図5