(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141083
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】OCT装置、その制御方法およびOCT装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
A61B1/00 526
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041221
(22)【出願日】2021-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐川 隆信
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161BB08
4C161NN01
4C161PP12
4C161RR06
4C161RR17
4C161RR18
4C161RR26
4C161WW04
(57)【要約】
【課題】保存に適した良好な画像を得るための再撮影を低減すること。
【解決手段】OCT装置は、所定粗さのボリューム画像に相当するプレビュー画像データを1回の撮影で取得する信号処理手段110と、複数回分のプレビュー画像データを記憶するメモリ120と、被写体の所定粗さより精緻なボリューム画像に相当する計測撮影画像データを生成する指示を受け付ける指示受付手段130と、を備え、信号処理手段110は、プレビュー画像データを取得するたびに、2次元走査の原点を、ポイント間隔よりも小さな微小間隔ずつポイント間隔を埋めるようにずらし、複数回分のプレビュー画像データを取得し、指示を受け付けた時点までにメモリ120に記憶された複数回分のプレビュー画像データを再構成することで計測撮影画像データを生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を2次元走査する2次元走査機構を含むプローブから被写体にレーザ光を照射して光干渉により前記被写体の内部情報を測定するOCT装置であって、
レーザ光の光軸に沿った方向の被写体情報を2次元走査の予め定められたポイント間隔で測定することでレーザ光の光軸に沿った断層面の断面画像を前記断層面に直交する方向に向かって重ねた所定粗さのボリューム画像に相当するプレビュー画像データを1回の撮影で取得する信号処理手段と、
複数回分の前記プレビュー画像データを記憶するメモリと、
前記被写体の前記所定粗さより精緻なボリューム画像に相当する計測撮影画像データを生成する指示を受け付ける指示受付手段と、を備え、
前記信号処理手段は、前記プレビュー画像データを取得するたびに、前記2次元走査の原点を、前記ポイント間隔よりも小さな微小間隔ずつ前記ポイント間隔を埋めるようにずらし、複数回分の前記プレビュー画像データを取得し、前記指示を受け付けた時点までに前記メモリに記憶された複数回分の前記プレビュー画像データを再構成することで前記計測撮影画像データを生成する、
ことを特徴とするOCT装置。
【請求項2】
操作者によって把持された前記プローブの振動の時間変化を示すブレ感知信号を生成するブレ感知手段と、
前記ブレ感知信号の波形の強度が予め定められた閾値を連続的に超えない時間区間を特定する区間特定手段と、を備え、
前記メモリは、前記プレビュー画像データに同期させて前記ブレ感知信号を記憶し、
前記信号処理手段は、前記指示を受け付けた時点までの所定時間内に取得され前記メモリに記憶された複数回分の前記プレビュー画像データのうち前記特定された時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて前記計測撮影画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のOCT装置。
【請求項3】
前記ブレ感知信号の波形の連続的な時間区間を操作者が選択できるように前記ブレ感知信号の波形を表示装置に表示させて前記操作者に選択された時間区間を入力する区間入力手段を備え、
前記信号処理手段は、前記区間入力手段によって前記操作者に選択された時間区間が入力された場合、当該時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて前記計測撮影画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のOCT装置。
【請求項4】
操作者によって把持された前記プローブの振動の時間変化を示すブレ感知信号を生成するブレ感知手段と、
前記ブレ感知信号の波形の連続的な時間区間を操作者が選択できるように前記ブレ感知信号の波形を表示装置に表示させて前記操作者に選択された時間区間を入力する区間入力手段を備え、
前記メモリは、前記プレビュー画像データに同期させて前記ブレ感知信号を記憶し、
前記信号処理手段は、前記区間入力手段によって前記操作者に選択された時間区間が入力された場合、前記指示を受け付けた時点までの所定時間内に取得され前記メモリに記憶された複数回分の前記プレビュー画像データのうち当該時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて前記計測撮影画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のOCT装置。
【請求項5】
前記ブレ感知手段は、前記プローブに内蔵された位置変化を感知するセンサである、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のOCT装置。
【請求項6】
ブレ感知手段は、前記断面画像の上縁から、当該断面画像中の被写体上面までの距離を算出し、前記算出された距離の時間変化によって前記ブレ感知信号を生成する、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のOCT装置。
【請求項7】
前記信号処理手段は、前記プレビュー画像データごとに前記プレビュー画像データにおける被写体深さ方向のデータを総和して求めた2次元画像であるオンファス画像をそれぞれ生成し、
複数の前記オンファス画像が連続する時間区間を操作者が選択できるように複数の前記オンファス画像を表示装置に表示させて前記操作者に選択された時間区間を入力する第2区間入力手段を備え、
前記信号処理手段は、前記第2区間入力手段によって前記操作者に選択された時間区間が入力された場合、前記指示を受け付けた時点までの所定時間内に取得され前記メモリに記憶された複数回分の前記プレビュー画像データのうち当該時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて前記計測撮影画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のOCT装置。
【請求項8】
前記信号処理手段は、前記第2区間入力手段によって前記オンファス画像を表示装置に表示させるときに、前記メモリに記憶された前記プレビュー画像データから当該オンファス画像を生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載のOCT装置。
【請求項9】
前記信号処理手段は、前記プレビュー画像データを取得するたびに、取得したプレビュー画像データから前記オンファス画像を生成し、生成したオンファス画像を前記プレビュー画像データと対応付けて前記メモリに記憶する、
ことを特徴とする請求項7に記載のOCT装置。
【請求項10】
前記メモリは、複数回分の前記プレビュー画像データを順番に記憶し、記憶容量を超えた場合、古いプレビュー画像データから順番に消去する、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のOCT装置。
【請求項11】
前記信号処理手段は、前記プレビュー画像データを取得するたびに、前記2次元走査機構を制御する2次元走査機構制御回路に対して、前記2次元走査機構における走査開始位置の原点をずらすための信号を出力することで、前記2次元走査の原点をずらす、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のOCT装置。
【請求項12】
前記信号処理手段は、前記2次元走査機構におけるミラー座標を取り込み、前記プレビュー画像データを取得するたびに、前記断面画像のデータの取得を開始するときの前記ミラー座標をずらすことで、前記2次元走査の原点をずらす、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のOCT装置。
【請求項13】
レーザ光を2次元走査する2次元走査機構を含むプローブから被写体にレーザ光を照射して光干渉により前記被写体の内部情報を測定するOCT装置の制御方法であって、
レーザ光の光軸に沿った方向の被写体情報を2次元走査の予め定められたポイント間隔で測定することでレーザ光の光軸に沿った断層面の断面画像を前記断層面に直交する方向に向かって重ねた所定粗さのボリューム画像に相当するプレビュー画像データを1回の撮影で取得する工程と、
前記プレビュー画像データを取得するたびに、前記2次元走査の原点を、前記ポイント間隔よりも小さな微小間隔ずつ前記ポイント間隔を埋めるようにずらす工程と、
複数回分の前記プレビュー画像データをメモリに記憶する工程と、
前記被写体の前記所定粗さより精緻なボリューム画像に相当する計測撮影画像データを生成する指示を受け付ける工程と、
前記指示を受け付けた時点までに前記メモリに記憶された複数回分の前記プレビュー画像データを再構成することで前記計測撮影画像データを生成する工程と、
を含むことを特徴とするOCT装置の制御方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のOCT装置の制御装置として機能させるためのOCT装置制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT装置、その制御方法およびOCT装置制御プログラムに係り、特に歯科用のOCT装置、その制御方法およびOCT装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体にレーザ光を照射して光干渉により被写体の内部情報を測定する光干渉断層画像生成装置(Optical Coherence Tomography:OCT装置)が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたOCT装置は、2つの撮影モードとして、計測指示で動作するモード(以下、計測モード撮影という)と、プレビュー指示で動作するモード(以下、プレビューモード撮影という)と、を備えている。
【0003】
この計測モード撮影は、走査機構が所定ピッチで走査することで所定の解像度で被写体の光干渉断層画像(OCT画像)を取得し、OCT画像の静止画を表示装置に表示する。この計測モード撮影は、被写体画像の保存を前提としており、被写体が歯牙の場合、OCT装置のプローブのノズル先端を歯牙に当接させて、計測撮影が終わるまで数秒間だけ患者には動かないようにしてもらう。
【0004】
一方、プレビューモード撮影は、被写体画像の保存を前提としないため走査機構が粗いピッチで走査して低解像度の画像を取得するものであり、連続して行うことで、被写体の断層画像、オンファス画像や3D画像をリアルタイムの動画として表示装置に高速に表示する。そのため、計測モード撮影を行う前に、保存したい画像を得るための撮影箇所を位置決めするために用いることができる。なお、オンファス(en-face)画像とは、被写体の3次元画像の深さ方向のデータを総和して求めた2次元画像である。オンファス画像は、単純な表面画像や正面画像とは異なって、被写体の外表面の情報だけではなく内部情報も利用して生成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のOCT装置では、計測モード撮影において、保存に適した良好な画像が得られる場合もあったが、保存に適さない画像が得られる場合もあった。例えば撮影中に、被写体が動いたり、または、撮影プローブが動いたりした場合、画像が歪むことで、保存に適さない画像が得られる。また、例えば撮影中に、血液や唾液等が被写体上に滲み出してしまった場合、レーザ光が被写体表面で吸収されたり、反射してしまったりすることで、保存に適さない画像が得られる。このように保存に適さない画像が得られた場合、再撮影を行う必要があった。そのため、OCT装置の改良の余地があった。
【0007】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、保存に適した良好な画像を得るための再撮影を低減できるOCT装置、その制御方法およびOCT装置制御プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係るOCT装置は、レーザ光を2次元走査する2次元走査機構を含むプローブから被写体にレーザ光を照射して光干渉により前記被写体の内部情報を測定するOCT装置であって、レーザ光の光軸に沿った方向の被写体情報を2次元走査の予め定められたポイント間隔で測定することでレーザ光の光軸に沿った断層面の断面画像を前記断層面に直交する方向に向かって重ねた所定粗さのボリューム画像に相当するプレビュー画像データを1回の撮影で取得する信号処理手段と、複数回分の前記プレビュー画像データを記憶するメモリと、前記被写体の前記所定粗さより精緻なボリューム画像に相当する計測撮影画像データを生成する指示を受け付ける指示受付手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記プレビュー画像データを取得するたびに、前記2次元走査の原点を、前記ポイント間隔よりも小さな微小間隔ずつ前記ポイント間隔を埋めるようにずらし、複数回分の前記プレビュー画像データを取得し、前記指示を受け付けた時点までに前記メモリに記憶された複数回分の前記プレビュー画像データを再構成することで前記計測撮影画像データを生成することを特徴とする。
【0009】
また、前記課題を解決するために、本発明に係るOCT装置の制御方法は、レーザ光を2次元走査する2次元走査機構を含むプローブから被写体にレーザ光を照射して光干渉により前記被写体の内部情報を測定するOCT装置の制御方法であって、レーザ光の光軸に沿った方向の被写体情報を2次元走査の予め定められたポイント間隔で測定することでレーザ光の光軸に沿った断層面の断面画像を前記断層面に直交する方向に向かって重ねた所定粗さのボリューム画像に相当するプレビュー画像データを1回の撮影で取得する工程と、前記プレビュー画像データを取得するたびに、前記2次元走査の原点を、前記ポイント間隔よりも小さな微小間隔ずつ前記ポイント間隔を埋めるようにずらす工程と、複数回分の前記プレビュー画像データをメモリに記憶する工程と、前記被写体の前記所定粗さより精緻なボリューム画像に相当する計測撮影画像データを生成する指示を受け付ける工程と、前記指示を受け付けた時点までに前記メモリに記憶された複数回分の前記プレビュー画像データを再構成することで前記計測撮影画像データを生成する工程と、を含むことを特徴とする。
なお、本発明は、コンピュータを、前記したOCT装置の制御装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プレビューモード撮影後、改めて計測モード撮影する必要が無く、保存に適さない画像が得られることを低減でき、再撮影を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るOCT装置を模式的に示す構成図である。
【
図2】
図1の制御ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るOCT装置の画像生成表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る計測撮影画像データの生成処理の説明図であって、(a)はA断面画像、(b)はボリューム画像をそれぞれ示している。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るプレビュー画像データの生成処理の説明図であって、(a)はA断面画像、(b)はボリューム画像をそれぞれ示している。
【
図6】従来技術に係る計測撮影画像が表示されるまでの撮影の流れを示す模式図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る計測撮影画像が表示されるまでの撮影の流れを示す模式図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るOCT装置の効果を示す模式図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るOCT装置の制御ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る計測撮影画像が表示されるまでの撮影の流れを示す模式図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係るOCT装置の制御ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係るOCT装置の制御ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図13】本発明の第5実施形態に係るOCT装置の制御ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図15】本発明の第6実施形態に係るOCT装置の制御ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るOCT装置を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係るOCT装置1は、光学ユニット10と、プローブ30と、制御ユニット50と、を主に備え、被写体Sにレーザ光を照射して光干渉により被写体Sの内部情報を測定するものである。
【0013】
光学ユニット10は、一般的な光コヒーレンストモグラフィの各方式が適用可能な光源、光学系、検出部を備えている。光学ユニット10は、被写体Sにレーザ光を周期的に照射する光源11と、被写体Sの内部情報を検出するディテクタ(検出器)23と、光源11とディテクタ23との間の光路中に設けられた光ファイバや各種光学部品等を備えている。光源11としては、例えばSS-OCT(Swept Source Optical Coherence Tomography)方式のレーザ光出力装置を用いることができる。被写体Sは例えば歯牙であるものとする。
【0014】
ここで、光学ユニット10の概略を説明する。光源11から射出された光は、光分割手段であるカップラ12により、計測光と参照光とに分けられる。計測光は、サンプルアーム13のサーキュレータ14からプローブ30に入射する。この計測光は、プローブ30のシャッタ31が開状態において、コリメータレンズ32、2次元走査機構33を経て集光レンズ34によって被写体Sに集光され、そこで散乱、反射した後に再び集光レンズ34、2次元走査機構33、コリメータレンズ32を経てサンプルアーム13のサーキュレータ14に戻る。戻ってきた計測光はカップラ16を介してディテクタ23に入力する。
【0015】
一方、カップラ12により分離された参照光は、レファレンスアーム17のサーキュレータ18からコリメータレンズ19を経て集光レンズ20によってレファレンスミラー21に集光され、そこで反射した後に再び集光レンズ20、コリメータレンズ19を経てサーキュレータ18に戻る。戻ってきた参照光はカップラ16を介してディテクタ23に入力する。つまり、カップラ16が、被写体Sで散乱、反射して戻ってきた計測光と、レファレンスミラー21で反射した参照光とを合波するので、合波により干渉した光(干渉光)をディテクタ23が被写体Sの内部情報として検出することができる。なお、サンプルアーム13の偏光コントローラ15、および、レファレンスアーム17の偏光コントローラ22は、それぞれ、プローブ30を含むOCT装置1内部に生じた偏光を、より偏光の少ない状態に戻すために設置されている。
【0016】
プローブ30は、レーザ光を2次元走査する2次元走査機構33を含み、光学ユニット10からのレーザ光を被写体Sに導くと共に、被写体Sで反射した光を光学ユニット10に導くものである。本実施形態では、2次元走査機構33は、回転軸が互いに直交した2つのガルバノミラーや、各ガルバノミラーのモータ等で構成されている。
【0017】
制御ユニット50は、AD変換回路51と、DA変換回路52と、2次元走査機構制御回路53と、表示装置54と、OCT制御装置100とを備える。
AD変換回路51は、ディテクタ23のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するものである。本実施形態では、AD変換回路51は、光源11であるレーザ出力装置から出力されるトリガ(trigger)に同期して信号の収得を開始し、同じくレーザ出力装置から出力されるクロック信号ckのタイミングに合わせて、ディテクタ23のアナログ出力信号を収得し、デジタル信号に変換する。このデジタル信号は、OCT制御装置100に入力する。
【0018】
DA変換回路52は、OCT制御装置100のデジタル出力信号をアナログ信号に変換するものである。本実施形態では、DA変換回路52は、光源11から出力されるトリガ(trigger)に同期して、OCT制御装置100のデジタル信号をアナログ信号に変換する。このアナログ信号は、2次元走査機構制御回路53に入力する。
【0019】
2次元走査機構制御回路53は、プローブ30内の2次元走査機構33を制御するドライバである。2次元走査機構制御回路53は、OCT制御装置100のアナログ出力信号に基づいて、光源11から出照されるレーザ光の出力周期に同期して、ガルバノミラーのモータを駆動または停止させるモータ駆動信号を出力する。2次元走査機構制御回路53は、一方のガルバノミラーの回転軸を回転させてミラー面の角度を変更する処理と、他方のガルバノミラーの回転軸を回転させてミラー面の角度を変更する処理と、を異なるタイミングで行う。
【0020】
表示装置54は、OCT制御装置100によって生成される光干渉断層画像(以下、OCT画像という)を表示するものである。表示装置54は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等から構成される。
【0021】
OCT制御装置(OCT装置の制御装置)100は、OCT装置1の制御装置であって、光源11から出射されるレーザ光に同期して2次元走査機構33を制御することで撮影を行うと共に、ディテクタ23の検出信号を変換したデータから被写体SのOCT画像を生成する制御を行うものである。OCT画像等は、公知の光干渉断層画像等の生成方法で生成することができる。なお、OCT画像等を例えば特許文献1に記載された手法を用いて生成するようにしてもよい。
【0022】
以下、OCT制御装置100を中心にOCT装置1の構成について更に詳細に
図2を参照して説明する。OCT制御装置100は、信号処理手段110と、メモリ120と、指示受付手段130と、を備えている。
信号処理手段110は、所定粗さのボリューム画像に相当するプレビュー画像データを1回の撮影で取得する。この所定粗さのボリューム画像は、レーザ光の光軸に沿った方向の被写体情報を2次元走査の予め定められたポイント間隔で測定することでレーザ光の光軸に沿った断層面の断面画像を断層面に直交する方向に向かって重ねたものである。信号処理手段110のこの機能は、従来のOCT装置のプレビューモード撮影の機能と同様のものである。
【0023】
メモリ120は、複数回分のプレビュー画像データを記憶するものである。メモリ120は、複数回分のプレビュー画像データを順番に記憶し、記憶容量を超えた場合、古いプレビュー画像データから順番に消去する。
【0024】
指示受付手段130は、プレビュー画像データよりも精緻な画像データを生成する指示を受け付けるものである。ここで、精緻な画像データは、被写体Sの所定粗さより精緻なボリューム画像に相当する計測撮影画像データである。なお、本実施形態のOCT装置1は、計測モード撮影をしないが、従来のOCT装置の計測モード撮影で取得されるデータのように保存に適したデータとなるので、精緻な画像データを計測撮影画像データと呼称する。
指示受付手段130は、図示しない撮影ボタンがクリックされたときに、プレビュー画像データよりも精緻な画像データを生成する指示を受け付けたと判定する。
【0025】
信号処理手段110は、プレビュー画像データを取得するたびに、2次元走査の原点を、ポイント間隔よりも小さな微小間隔ずつポイント間隔を埋めるようにずらし、複数回分のプレビュー画像データを取得する。以下では、2次元走査の原点をスキャン原点ともいう。信号処理手段110は、指示受付手段130によって指示を受け付けた時点までにメモリ120に記憶された複数回分(例えば9回分)のプレビュー画像データを再構成することで計測撮影画像データを生成する。これにより、表示装置54は、計測撮影画像(静止画)を表示する。
【0026】
スキャン原点をずらす方法は、例えば機械的な方法やソフトウェア的な方法によって行うことができる。本実施形態では、機械的な方法を採用し、信号処理手段110は、プレビュー画像データを取得するたびに、2次元走査機構33を制御する2次元走査機構制御回路53に対して、2次元走査機構33における走査開始位置の原点をずらすための信号を出力することで、スキャン原点(2次元走査の原点)をずらすこととする。
【0027】
OCT制御装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、入出力インタフェースを備えたコンピュータから構成される。
【0028】
次に、OCT制御装置100を中心にしたOCT装置1による制御方法について説明する。OCT装置1の制御方法は、プレビュー画像データ取得工程と、原点移動工程と、記憶工程と、指示受付工程と、計測撮影画像データ生成工程と、を含む。
プレビュー画像データ取得工程は、レーザ光の光軸に沿った方向の被写体情報を2次元走査の予め定められたポイント間隔で測定することでレーザ光の光軸に沿った断層面の断面画像を断層面に直交する方向に向かって重ねた所定粗さのボリューム画像に相当するプレビュー画像データを1回の撮影で取得する工程である。
原点移動工程は、プレビュー画像データを取得するたびに、2次元走査の原点を、ポイント間隔よりも小さな微小間隔ずつポイント間隔を埋めるようにずらす工程である。
記憶工程は、複数回分のプレビュー画像データをメモリ120に記憶する工程である。
指示受付工程は、被写体Sの所定粗さより精緻なボリューム画像に相当する計測撮影画像データを生成する指示を受け付ける工程である。
計測撮影画像データ生成工程は、指示を受け付けた時点までにメモリ120に記憶された複数回分のプレビュー画像データを再構成することで計測撮影画像データを生成する工程である。
【0029】
次に、OCT装置の画像生成表示処理の流れについて
図3を参照(適宜
図2参照)して説明する。まず、指示受付手段130は、指示が入力されたか否かを判別する(ステップS1)。すなわち、撮影ボタンがクリックされたか否かを判別する。指示が入力されていない場合(ステップS1:No)、信号処理手段110は、1回分の撮影に相当するプレビュー画像データを取得し(ステップS2)、取得したプレビュー画像データをメモリ120に記憶する(ステップS3)。そして、OCT装置1は、スキャン原点(2次元走査の原点)をずらす処理を行い(ステップS4)、ステップS1に戻る。一方、前記ステップS1において、撮影ボタンがクリックされて、指示が入力された場合(ステップS1:Yes)、信号処理手段110は、それまでにメモリ120に記憶された複数回分のプレビュー画像データを再構成して計測撮影画像データを生成し(ステップS5)、表示装置54が計測撮影画像を表示する(ステップS6)。
【0030】
次に、OCT装置が生成するプレビュー画像データと計測撮影画像データとの具体例について
図5を参照(適宜
図4および
図2参照)して説明する。
図5(a)に示すAラインは、プローブ30において集光レンズ34の光軸(A軸)に沿ってレーザ光が照射される方向を指している。A軸方向のデータ(以下、Aラインデータという)は、被写体Sの表面から深さ方向の断層情報(内部情報)を示すデータに相当する。
図5(a)に示すBラインは、プローブ30においてコリメータレンズ32の光軸(B軸方向)に沿っている。Bラインは、一方のガルバノミラーの往路動作によって被写体Sの幅方向に設定される。
図5(a)に模式的に示す断層画像をA断面画像と呼ぶ。
図5(b)に示すVラインは、A軸およびB軸にそれぞれ直交する方向に沿っている。Vラインは、他方のガルバノミラーの往路動作によって被写体Sの奥行方向に設定される。
図5(b)は、A断面画像を、その面に直交する方向(V軸方向)に重ね合わせると、3D画像を形成できることを模式的に示している。
【0031】
一方、特許文献1に記載さている例(比較例)では、計測モード撮影1回(1ボリューム)分のBラインのポイント数と、Vラインのポイント数は、それぞれ400ポイントである(
図4参照)。
(比較例:従来の計測モード撮影の条件)
Aライン:1024点
Bライン:400ポイント
Vライン:400ポイント
【0032】
上記の比較例の条件の場合から逆算して、本実施形態におけるプレビューモード撮影1回(1ボリューム)分のBラインのポイント数と、Vラインのポイント数を、400ポイントの1/3である134ポイントとした場合の模式図が
図5(a)および
図5(b)になっている。
(実施例:プレビューモード撮影の条件)
Aライン:1024点
Bライン:134ポイント(計測モード撮影の約1/3)
Vライン:134ポイント(計測モード撮影の約1/3)
【0033】
すなわち、実施例では、プレビューモード撮影のBラインのポイント間隔を、計測モード撮影のBラインのポイント間隔の約3倍にしている。また、実施例では、プレビューモード撮影のVラインのポイント間隔を、計測モード撮影のVラインのポイント間隔の約3倍にしている。
【0034】
この場合、本実施形態では、OCT装置1は、プレビューモード撮影1回(1ボリューム)毎に、スキャン原点を、Bラインのポイント間隔の1/3ずつずらすか、または、Vラインのポイント間隔の1/3ずつずらし、間を埋めるようにスキャンをする。この動作を以下では、インターレーススキャンと呼ぶ。インターレーススキャンでは、1回(1ボリューム)毎のスキャンでは、従来のプレビューモード撮影と同じポイント数が設定され、画像表示も同様であるが、9回分の撮影データを合算すると、従来の計測モード撮影とほぼ同じポイント数が設定されたこととなり、同様の精緻な画像表示が可能となる。
【0035】
具体的には、Bラインのポイントの間隔をΔB、Vラインのポイントの間隔をΔVとしたときのスキャン原点位置の変遷の一例を羅列すると、次の通りである。
1回目の原点(0,0)、
2回目の原点(ΔB*1/3,0)、
3回目の原点(ΔB*2/3,0)、
4回目の原点(0,ΔV*1/3)、
5回目の原点(ΔB*1/3,ΔV*1/3)、
6回目の原点(ΔB*2/3,ΔV*1/3)、
7回目の原点(0,ΔV*2/3)、
8回目の原点(ΔB*1/3,ΔV*2/3)、
9回目の原点(ΔB*2/3,ΔV*2/3)。
10回目の原点は、1回目の原点と同じ位置に戻る。
【0036】
次に、OCT装置の計測撮影画像が表示されるまでの撮影の流れについて
図6および
図7を参照(適宜
図2参照)して説明する。
図6、
図7、および後記する
図10において横軸は時間軸であり、符号300は、OCT装置が被写体画像の撮影および表示を行うときの処理の流れを模式的に示している。また、
図6、
図7、および後記する
図10に付したハッチングは、再構成に利用する画像データの取得を表している。なお、各図面の時間軸上の処理の長さは、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0037】
はじめに比較例として従来のOCT装置の動作説明を行う。従来のOCT装置は、主電源を入れると、粗いピッチで走査して低解像度の画像を取得する(プレビューモード撮影:ステップ311)。操作者は、表示装置の画面に表示されるプレビュー撮影画像(OCTの粗い画像)を見ながら、自ら把持するプローブを目的の部位に位置決めする。そして位置決めが完了したら、操作者は、例えば時刻T11に撮影ボタンをクリックする(ステップ410)。これにより、従来のOCT装置は、細かいピッチで走査して高解像度の画像を取得する(計測モード撮影:ステップ312)。計測モード撮影中には、操作者はOCT装置のプローブのノズル先端を歯牙に当接させて、計測撮影が終わるまで数秒間だけ患者には動かないで我慢してもらう。計測撮影の所要時間は適宜設定されており、ここでは、その所要時間は例えば6秒間であるものとする。時刻T11から例えば6秒経過した時刻T2になると、従来のOCT装置は、時刻T11から時刻T2までの間に取得したすべてのデータを用いて高解像度のボリューム画像を再構成する(ステップ320)。そして、従来のOCT装置は、高解像度の計測撮影画像を表示する(ステップ330)。
【0038】
次に実施例1としてOCT装置1の動作説明を行う。OCT装置1は、主電源を入れると、粗いピッチで走査して低解像度の画像(プレビュー撮影画像データ)を取得する(ステップ313,314)。これらステップ313,314は、
図6のステップ311のプレビューモード撮影に相当するが、OCT装置1の場合には、プレビュー撮影画像データを順次メモリ120に記憶する点が相違している。また、ここでは、メモリ120は、少なくとも直近の9回分以上のプレビュー撮影画像データを記憶し、記憶容量を超えた場合、古い画像から消去していく。操作者は、表示装置の画面に表示されるプレビュー撮影画像を見ながら、自ら把持するプローブを目的の部位に位置決めする。そして位置決めが完了したら、プローブのノズル先端を歯牙に当接させて患者には動かないで我慢してもらう。そして、操作者は、従来の計測撮影の所要時間と同程度の時間(例えば6秒間)が経過したと判断したら、例えば時刻T22に撮影ボタンをクリックする(ステップ420)。なお、時刻T21は、時刻T22から、複数回分(例えば9回分)のプレビュー撮影画像データの取得に必要な時間だけ遡った時刻である。そして、OCT装置1は、時刻T22までにメモリ120に記憶された複数回分のプレビュー撮影画像データを用いて高解像度のボリューム画像を再構成する(ステップ320)。そして、OCT装置1は、表示装置54に高解像度の計測撮影画像を表示する(ステップ330)。
実施例1によれば、プレビューモード撮影を工夫することで従来の計測モード撮影と同等の詳細な撮影画像を得ることができる。また、実施例1によれば、従来のようなプレビューモード撮影と計測モード撮影といった区別のない撮影を行うことができる。
【0039】
次に、実施例のOCT装置が、比較例である従来のOCT装置よりも有利な効果を奏する一例について
図8を参照して説明する。
図8の横軸は時刻を示す時間軸である。この時間軸の時刻の下の1行目には、操作者や患者の行動の一例が時刻と関連付けて記載されている。時間軸の時刻の下の2行目には、従来のOCT装置の操作の一例が時刻と関連付けて記載されている。時間軸の時刻の下の3行目には、実施例のOCT装置の操作の一例が時刻と関連付けて記載されている。また、時間軸の上方に記載されたプレビュー画像データ群430は、実施例のOCT装置が、所定時間内に取得してメモリに記憶した複数回分のプレビュー画像データを示している。ここでは、時間方向に連結された矩形の1つ1つが、プレビュー画像データを模式的に示している。
【0040】
まず、操作者や患者の行動の一例について説明する。
時刻T25のときに、操作者がプローブを目的の部位に位置決めしてプローブのノズル先端を歯牙に当接させながら、患者に例えば「これからは動かないで下さい」と声をかける。この一言を発するのに数秒間が経過する。言い終わって、時刻T26のときに、患者が静止する。その後、時刻T27のときに、操作者は、患者が静止したことを確認する。確認するまでに数秒間が経過する。
従来のOCT装置の場合、操作者は、患者の静止を確認後、時刻T27のときに、撮影ボタンをクリックすることにより、計測モード撮影が開始される。
そして、従来のOCT装置で予め決まっている所定時間が経過して時刻T29になると、再構成に利用する画像データの取得が終了し、従来の撮影が終了する。そして、撮影終了時刻である時刻T29のときに、操作者は患者に「撮影が終了しました」と言う。この撮影終了時刻まで、患者の体動がなければ、従来のOCT装置では、時刻T27~T29までに行った計測モード撮影1回(1ボリューム)分の画像データを再構成して、保存に適した良好な画像が得られる。一方、従来の撮影終了前の時刻T28~T29のときに、患者が体動すると、従来のOCT装置では、保存に適さない画像が得られる。この場合、再撮影を行う必要があった。
【0041】
一方、実施例では、計測モード撮影が不要なので、操作者は、患者の静止を確認後、時刻T27のときに、撮影ボタンをクリックすることはしない。
その後、撮影終了時刻である時刻T29のときに、操作者は、撮影ボタンをクリックして、患者に「撮影が終了しました」と言う。OCT装置1では、この撮影終了時刻まで、患者の体動がなければ、プレビュー画像データ群430のうち、例えば、符号431で示す区間、つまり、時刻T27~T29までの区間に含まれる9個のプレビュー画像データを使用して計測撮影画像データを生成することで、保存に適した良好な画像が得られる。一方、時刻T28~T29のときに、患者の体動があったとしても、OCT装置1では、プレビュー画像データ群430のうち、符号431で示す区間よりも前の符号432で示す区間に含まれる9個のプレビュー画像データを使用して計測撮影画像データを生成することで、保存に適した良好な画像が得られる。この場合、再撮影を行う必要がない。なお、
図8に矩形に付したドットは、患者の体動等の影響があることを模式的に示している。
要するに、比較例と実施例を同じ条件で比較すると、患者の体動があったり、または、撮影プローブが動いたりした場合でも、実施例は再撮影を低減する効果を奏する。また、時刻T28~T29のときに、患者の歯牙において血液や唾液等が滲み出てきた場合であっても、実施例は、比較例と比べて再撮影を低減する効果を奏する。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るOCT装置についてOCT制御装置を中心に
図9を参照して説明する。なお、第2実施形態に係るOCT装置の全体図は
図1と同じなので省略する。また、
図2のOCT制御装置100と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。第2実施形態に係るOCT装置は、ブレ感知手段200を備えている。ブレ感知手段200は、操作者によって把持されたプローブ30の振動の時間変化を示すブレ感知信号を生成するものである。本実施形態では、ブレ感知手段200は、プローブ30に内蔵された位置変化を感知するセンサで構成される。ここで、位置変化を感知するセンサは、例えば加速度センサ、ジャイロセンサ、変位センサ、振動を感知すると電気信号に変換する振動センサ等のセンサである。
【0043】
第2実施形態に係るOCT制御装置100Bは、信号処理手段110と、メモリ120と、指示受付手段130と、区間特定手段140と、を備えている。
区間特定手段140は、ブレ感知信号の波形の強度が予め定められた閾値を連続的に超えない時間区間を特定するものである。区間特定手段140は、ブレ感知手段200によって生成されたブレ感知信号が入力されると、ブレ感知信号の波形を基にブレの少ない時間区間を自動的に設定する。区間特定手段140は、ブレ感知信号をメモリ120に記憶させると共に、ブレ感知信号から特定した時間区間を信号処理手段110に出力する。メモリ120は、プレビュー画像データに同期させてブレ感知信号を記憶する。
【0044】
信号処理手段110は、指示受付手段130によって指示を受け付けた時点までの所定時間内に取得されメモリ120に記憶された複数回分のプレビュー画像データのうち区間特定手段140によって特定された時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて計測撮影画像データを生成する。
【0045】
次に、第2実施形態に係るOCT装置の計測撮影画像が表示されるまでの撮影の流れについて
図10を参照して説明する。なお、
図6および
図7と同様の構成には同様の符号を付し、同様の説明を省略する。
図10では、横軸が時間軸を示し、縦軸が信号強度を示している。そして、
図10は、OCT装置が被写体画像の撮影および表示を行うときの処理と、ブレ感知信号とのタイミングチャートを示している。
【0046】
第2実施形態に係るOCT装置1は、主電源を入れると、粗いピッチで走査して低解像度の画像(プレビュー撮影画像データ)を取得する(ステップ315,316,317)。このとき、OCT装置1は、ブレ感知信号の信号強度をプレビュー撮影画像データと対応付けて順次メモリ120に記憶する点が相違している。操作者は、プレビュー撮影画像を参考にしてプロープの位置決めが完了したら、プローブのノズル先端を歯牙に当接させる。そして、操作者は、所定時間(例えば6秒間)が経過したと判断したら、例えば時刻T33に撮影ボタンをクリックする(ステップ420)。
【0047】
なお、
図10において時刻T31よりも前の区間や時刻T32から時刻T33までの区間では、ブレ感知信号の信号強度の振幅が所定の閾値よりも大きくなっている。そのため、ステップ315,317にて取得されたデータは、画像再構成に利用すべきではないデータとなっている。
【0048】
第2実施形態に係るOCT装置1は、ブレ感知信号によって、例えば時刻T31~時刻T32の区間がブレの少ない区間であると特定する。この場合、OCT装置1は、ステップ316にて取得されて、時刻T31~時刻T32の間に検知されたブレ感知信号と対応付けてメモリ120に記憶された複数回分(例えば9回分)のプレビュー撮影画像データを用いて高解像度のボリューム画像を再構成する(ステップ320)。そして、OCT装置1は、表示装置54に高解像度の計測撮影画像を表示する(ステップ330)。
【0049】
本実施形態によれば、ブレの少ない良好な画像を得ることができる。また、第2実施形態を種々に変形することができる。上記の例では、第2実施形態に係るOCT装置1は、通常、ブレの少ない区間について予め定められた規定数(9回分)のプレビュー画像データを再構成することで計測撮影画像データを生成する。ただし、ブレの少ない区間に、毎回のように規定数(9回分)のプレビュー画像データが得られるとは限られない。そこで、ブレの少ない区間のプレビュー画像データの数が規定数(9回分)に満たない場合、その特定された区間内の全データを用いて再構成するようにしてもよい(第1変形例)。この場合、規定数(9回分)のプレビュー画像データを用いた場合に比べて画質が悪くなるが、ブレの少ない画像を得ることができる。
【0050】
また、ブレの少ない区間のプレビュー画像データの数が規定数(9回分)を超えていた場合、その特定された区間内の全データを用いて再構成するようにしてもよい(第2変形例)。このように通常撮影の場合よりも多い枚数のデータを再構成することで、ブレが少なく、かつ、高画質の画像を得ることができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るOCT装置についてOCT制御装置を中心に
図11を参照して説明する。第3実施形態に係るOCT装置のOCT制御装置100Cは、信号処理手段110と、メモリ120と、指示受付手段130と、自動設定の区間特定手段140と、手動設定の区間入力手段150と、を備えている。第3実施形態に係るOCT装置では、区間入力手段150を備え、表示装置54が、ブレ感知信号の波形を表示する点が第2実施形態に係るOCT装置と相違する。つまり、第3実施形態に係るOCT制御装置100Cは、区間特定手段140で自動的に設定されたブレの少ない区間を反映した計測撮影画像を表示することもできる。
【0052】
区間入力手段150は、ブレ感知信号の波形の連続的な時間区間を操作者が選択できるようにブレ感知信号の波形を表示装置54に表示させて操作者に選択された時間区間を入力するものである。信号処理手段110は、区間入力手段150によって操作者に選択された時間区間が入力された場合、当該時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて計測撮影画像データを用いて計測撮影画像データを生成修正する。
本実施形態によれば、操作者は、表示装置54に表示されたブレ感知信号の波形を確認して、自らブレの少ない区間を選んで、区間特定手段140で自動設定されていた区間を修正することができる。
【0053】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るOCT装置についてOCT制御装置を中心に
図12を参照して説明する。第4実施形態に係るOCT装置のOCT制御装置100Dは、信号処理手段110と、メモリ120と、指示受付手段130と、区間入力手段150と、を備えている。第4実施形態に係るOCT制御装置100Dは、ブレの少ない区間を自動で設定することはせずに手動で設定する点が、第3実施形態に係るOCT制御装置100Cと相違している。
【0054】
信号処理手段110は、区間入力手段150によって操作者に選択された時間区間が入力された場合、指示受付手段130によって指示を受け付けた時点までの所定時間内に取得されメモリ120に記憶された複数回分のプレビュー画像データのうち当該時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて計測撮影画像データを生成する。
本実施形態によれば、操作者は、表示装置54に表示されたブレ感知信号の波形を確認して、自らブレの少ない区間を選んで設定することができる。
【0055】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係るOCT装置についてOCT制御装置を中心に
図13を参照(適宜
図9参照)して説明する。前記した第2実施形態では
図9のブレ感知手段200がプローブ30に内蔵された位置変化を感知するセンサで構成されるものとしたが、本実施形態では、OCT制御装置100Eがブレ感知手段200Eを備えている。つまり、ブレ感知手段200Eは、加速度センサやジャイロセンサではなく、画像処理によってOCT画像を解析して、その解析結果に基づいて、操作者によって把持されたプローブ30の振動の時間変化を示すブレ感知信号を生成して区間特定手段140に出力する。
【0056】
ブレ感知手段200Bは、A断面画像の上縁から、当該断面画像中の被写体上面までの距離を算出し、算出された距離の時間変化によってブレ感知信号を生成する。具体的には、前記したプレビューモード撮影の条件(Aライン:1024点、Bライン:134ポイント、Vライン:134ポイント)であれば、Bラインの座標値(B)およびVラインの座標値(V)の中央値は67である。したがって、ブレ感知手段200Bは、例えばプレビューモード撮影1回(1ボリューム)の中央座標(B,V)=(67,67)におけるA断面画像を用いてもよい。1ボリュームの中央座標(B,V)=(67,67)におけるA断面画像の一例を
図14に示す。この場合、ブレ感知手段200Bは、
図14に示すA断面画像500の上縁(符号501で示す位置)から被写体上面(符号502で示す位置)までの距離(
図14において両矢印で示す距離)を使用することができる。また、その1ボリュームの中央座標(B,V)=(67,67)という一箇所だけではなく、その点を中心としてBラインの近傍座標値やBラインの近傍座標値におけるそれぞれの距離を平均した平均値を用いてもよい。その場合には、ノイズ等の影響を受けづらくなる効果も奏するので好ましい。
【0057】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態として、患者の歯牙において血液等が滲み出していない区間のプレビュー画像を用いて保存に適した良好な画像を得るOCT装置についてOCT制御装置を中心に
図15を参照(適宜
図2参照)して説明する。なお、第6実施形態に係るOCT装置の全体図は
図1と同じなので省略する。また、
図2のOCT制御装置100と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0058】
第6実施形態に係るOCT制御装置100Fは、信号処理手段110と、メモリ120と、指示受付手段130と、手動設定の第2区間入力手段160と、を備えている。
本実施形態では、信号処理手段110は、プレビュー画像データ(1ボリューム)ごとにオンファス画像をそれぞれ生成する。ここで、オンファス画像は、プレビュー画像データにおける被写体深さ方向のデータを総和して求めた2次元画像である。第2区間入力手段160は、複数のオンファス画像が連続する時間区間を操作者が選択できるように複数のオンファス画像を表示装置54に表示させて操作者に選択された時間区間を入力するものである。信号処理手段110は、第2区間入力手段160によって操作者に選択された時間区間が入力された場合、指示受付手段130によって指示を受け付けた時点までの所定時間内に取得されメモリ120に記憶された複数回分のプレビュー画像データのうち当該時間区間内に取得したプレビュー画像データを用いて計測撮影画像データを生成する。
【0059】
ここで、信号処理手段110は、オンファス画像の生成タイミングを、例えば第2区間入力手段160の動作に連動させることができる。この場合、信号処理手段110は、第2区間入力手段160によってオンファス画像を表示装置54に表示させるときに、メモリ120に記憶されたプレビュー画像データ(ボリュームデータ)から当該オンファス画像を生成する。
【0060】
信号処理手段110は、プレビュー画像データを取得するたびに、取得したプレビュー画像データからオンファス画像を生成し、生成したオンファス画像をプレビュー画像データと対応付けてメモリ120に記憶するようにしてもよい。このようにすることで、第2区間入力手段160は、メモリ120からオンファス画像を読み出すだけで、当該オンファス画像を迅速に表示装置54に表示させることができる。
【0061】
次に、第2区間入力手段160が複数のオンファス画像を表示装置54に表示させる具体例について
図16を参照して説明する。
図16は、第6実施形態に係るOCT装置の表示装置54の画面表示例である。表示装置54の画面には、
図16に示すように、例えば区間入力画面600が表示される。区間入力画面600は、区間選択領域601と、この区間選択領域601の下に配置されたオンファス画像表示領域602と、を備えている。区間選択領域601は、ここでは、画面幅方向(横)に連結された矩形の1つ1つが、1回のプレビューモード撮影の時間区間を模式的に示している。また、配置された各矩形のうち右側が、より遅い時間区間を表している。
【0062】
オンファス画像表示領域602には、時間区間ごとに、当該区間で取得したプレビュー画像データのオンファス画像603,604が表示される。オンファス画像は、被写体の3次元画像の深さ方向のデータを総和して求めた2次元画像なので、撮影中に血液等が被写体上に滲み出してしまった場合、当然に、オンファス画像には被写体上に滲み出した血液等が描画される。滲み出た血液等は、シミの様に表示されるので、オンファス画像を目視確認することで、血液等の滲み出しを発見することができる。ここでは、オンファス画像603は、正常なオンファス画像を表している。オンファス画像604は、血液が滲み出たときのオンファス画像を表している。
【0063】
図16に示す例では、区間選択領域601において符号605で示すように、シミが無い正常なオンファス画像603が連続的に並んだ9区間が選択されている。ここでは、区間選択領域601の矩形をハッチングで示すことで選択区間を表している。区間選択領域601をチェックボックスとして操作者がマウス等によってレ点(チェックマーク)を入力できるように構成してもよい。
【0064】
オンファス画像表示領域602には、オンファス画像を一列に並べて表示しているために、各画像のサイズが小さく、画像中のシミが判別しにくいことがある。そこで、各オンファス画像をサムネイル表示するようにしてもよい。この場合、サムネイル表示のオンファス画像を、操作者がマウス等によってクリックすることで、クリックされたオンファス画像を拡大表示することができる。これにより、操作者は、シミが無い正常なオンファス画像603と、シミがあるオンファス画像604とを判別しやすくなる。
【0065】
また、撮影中(プレビュー画像取得中)にブレが生じた場合、オンファス画像が歪むので、オンファス画像を目視確認することで、ブレも確認することが可能である。よって、操作者は、ブレもシミも無い正常なオンファス画像が連続的に並んだ区間を選択することができる。
【0066】
第6実施形態は、図示を省略するが、以下の通り、ブレ感知手段を備えるように変形することができる。
(変形例1)第6実施形態に係るOCT装置は、
図9に示すブレ感知手段200と、区間特定手段140と、をさらに備えるようにしてもよい。
(変形例2)第6実施形態に係るOCT装置は、
図11に示すブレ感知手段200と、区間特定手段140と、区間入力手段150と、をさらに備えるようにしてもよい。
(変形例3)第6実施形態に係るOCT装置は、
図12に示すブレ感知手段200と、区間入力手段150と、をさらに備えるようにしてもよい。
(変形例4)第6実施形態に係るOCT装置は、
図13に示すブレ感知手段200Eと、区間特定手段140と、をさらに備えるようにしてもよい。
(変形例5)変形例1~変形例3に係るOCT装置は、ブレ感知手段200をブレ感知手段200Eに置き換えてもよい。
【0067】
本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、OCT制御装置100として協調動作させるプログラム(OCT装置制御プログラム)で実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【0068】
なお、本発明の実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。例えば、前記実施形態では、スキャン原点をずらす方法は機械的な方法を採用したが、ソフトウェア的な方法を採用してもよい。その場合には、信号処理手段110は、2次元走査機構33におけるミラー座標を取り込み、プレビュー画像データを取得するたびに、A断面画像のデータの取得を開始するときのミラー座標をずらすことで、スキャン原点(2次元走査の原点)をずらせばよい。
【0069】
2次元走査機構33として、ガルバノミラーを採用した場合について説明したが、これに限らず、2次元MEMSミラーを採用することもできる。2次元MEMSミラーの素子は、例えば、光を全反射するミラーや、電磁力を発生する電磁駆動用の平面コイル等の可動構造体が形成されたシリコン層と、セラミック台座と、永久磁石と、の3層構造に形成されて、コイルへ通電される電流の大きさに比例してX軸方向及びY軸方向に静的、動的傾斜する制御が可能になっている。
【符号の説明】
【0070】
1 OCT装置
10 光学ユニット
11 光源
12 カップラ
13 サンプルアーム
14 サーキュレータ
15 偏光コントローラ
16 カップラ
17 レファレンスアーム
18 サーキュレータ
19 コリメータレンズ
20 集光レンズ
21 レファレンスミラー
22 偏光コントローラ
23 ディテクタ
30 プローブ
31 シャッタ
32 コリメータレンズ
33 2次元走査機構
34 集光レンズ
50 制御ユニット
51 AD変換回路
52 DA変換回路
53 2次元走査機構制御回路
54 表示装置
100,100B,100C,100D,100E,100F OCT制御装置
110 信号処理手段
120 メモリ
130 指示受付手段
140 区間特定手段
150 区間入力手段
160 第2区間入力手段
200,200E ブレ感知手段
S 被写体