(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141089
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】電動弁制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20220921BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F25B1/00 304L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041228
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 智宏
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真司
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 亮直
(72)【発明者】
【氏名】金子 靖明
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF01
3H062GG02
3H062HH07
3H062HH08
(57)【要約】
【課題】電動弁の静音性を向上させる。
【解決手段】電動弁制御装置は、ロータの回転により弁開度を調整する電動弁と接続される。電動弁制御装置は、ロータの回転角度を検出する回転検出部と、ロータの回転速度および回転方向を指示することにより、ロータを所定の初期位置(停止位置)に向けて移動させる回転制御部を備える。回転制御部は、初期位置へのロータの移動制御に際して、ロータの原点位置における回転角度とロータについて検出された回転角度の差分値が十分に小さいとき、ロータの回転速度を低速化する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転により弁開度を調整する電動弁と接続され、
前記ロータの回転角度を検出する回転検出部と、
前記ロータの回転速度および回転方向を指示することにより、前記ロータを所定の停止位置に向けて移動させる回転制御部と、を備え、
前記回転制御部は、前記停止位置への前記ロータの移動制御に際して、前記ロータの基準位置における回転角度を示す基準角度値と前記ロータについて検出された回転角度の差分値が第1閾値未満であるとき、前記ロータの回転速度を低速化することを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項2】
前記電動弁において、前記ロータが前記基準位置に到達したとき、前記ロータの回転が規制されることを特徴とする請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項3】
前記回転制御部は、前記ロータの低速化後、前記ロータについて検出された回転角度と前記基準角度値の差分値が前記第1閾値以上となったとき、前記ロータの回転速度を高速化することを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁制御装置。
【請求項4】
初期化コマンドを受信する受信部、を更に備え、
前記回転制御部は、前記初期化コマンドが受信されたとき、前記ロータを第1方向に回転させて前記基準位置に到達させたあと、前記基準位置から前記第1方向とは逆の第2方向に第1回転量だけ回転させた位置を前記停止位置として前記ロータを前記停止位置に移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電動弁制御装置。
【請求項5】
前記回転制御部は、前記ロータを前記基準位置に到達させたあと、更に、前記ロータの前記第1方向への第2回転量の回転を指示することにより、前記ロータを前記停止位置に移動させることを特徴とする請求項4に記載の電動弁制御装置。
【請求項6】
前記回転制御部は、前記ロータを前記停止位置に移動させるとき、前記停止位置に向かう方向の逆方向に前記ロータを第3回転量だけ回転させたあと、前記ロータを前記停止位置に向かう方向に回転させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電動弁制御装置。
【請求項7】
前記回転検出部は、前記ロータについて単位回転量が指示されるごとに前記ロータの回転角度を検出し、
前記回転制御部は、前記検出された回転角度に基づいて前記ロータの回転量を検出し、前記単位回転量に対する前記検出された回転量の比率が第2閾値以下となる状態が所定回数以上検出されたことを条件として、前記ロータが前記基準位置に到達したタイミングを判定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電動弁制御装置。
【請求項8】
電動弁のロータの回転角度を検出する機能と、
前記ロータの回転速度および回転方向を指示することにより、前記ロータを所定の停止位置に向けて移動させる機能と、
前記停止位置への前記ロータの移動制御に際して、前記ロータの基準位置における回転角度を示す基準角度値と前記ロータについて検出された回転角度の差分値が第1閾値未満であるとき、前記ロータの回転速度を低速化する機能と、をコンピュータに発揮させることを特徴とする電動弁制御プログラム。
【請求項9】
ロータの回転により弁開度を調整する電動弁と接続され、
前記ロータの回転角度を検出する回転検出部と、
励磁パターンを設定することにより前記ロータの回転速度および回転方向を指示し、前記ロータを所定の停止位置に向けて移動させる回転制御部と、を備え、
前記回転制御部は、前記停止位置への前記ロータの移動制御に際して、前記ロータの基準位置における励磁パターンの設定値と前記ロータに設定した励磁パターンの差分値が所定の閾値未満であるとき、前記ロータの回転速度を低速化することを特徴とする電動弁制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動弁に関し、特にロータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。冷凍サイクルには、膨張装置としての膨張弁など、冷媒の流れを制御するために各種制御弁が設けられている。近年の電気自動車等の普及に伴い、駆動部としてモータを備える電動弁が広く採用されつつある。
【0003】
このような電動弁として、弁開度を検出するための磁気センサを備えるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。ロータとともに回転する作動ロッドの一端に弁体が設けられ、他端にマグネット(センサマグネット)が設けられる。そのセンサマグネットと軸線方向に対向するように磁気センサが設けられる。ロータの回転運動は、ねじ送り機構により弁体の軸線運動に変換される。ロータの回転に伴う磁束の変化を磁気センサで捉えることによりセンサマグネットの回転角度ひいては弁体の軸線方向位置を検出でき、弁開度を算出できる。
【0004】
電動弁内において上下動する作動ロッドには、制御の基準となる基準位置が設定される。ロータが弁閉方向への回転を続けて「原点」ともよばれる基準位置に至ったとき、ロータはストッパにより回転を規制される(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-135908号公報
【特許文献2】特開2020-204344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気自動車は静音性が高いため、電動弁から発生するわずかな機械音でも耳につきやすい。電動弁から発生する機械音の中でも、特に、ロータを基準位置付近に移動させたときのストッパの衝突音は異音として認識されやすい。
【0007】
本発明の主たる目的は、電動弁の静音性を向上させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様における電動弁制御装置は、ロータの回転により弁開度を調整する電動弁と接続される。
この装置は、ロータの回転角度を検出する回転検出部と、ロータの回転速度および回転方向を指示することにより、ロータを所定の停止位置に向けて移動させる回転制御部と、を備える。
回転制御部は、停止位置へのロータの移動制御に際して、ロータの基準位置における回転角度を示す基準角度値とロータについて検出された回転角度の差分値が第1閾値未満であるとき、ロータの回転速度を低速化する。
【0009】
本発明のある態様における電動弁制御プログラムは、電動弁のロータの回転角度を検出する機能と、ロータの回転速度および回転方向を指示することにより、ロータを所定の停止位置に向けて移動させる機能と、停止位置へのロータの移動制御に際して、ロータの基準位置における回転角度を示す基準角度値とロータについて検出された回転角度の差分値が第1閾値未満であるとき、ロータの回転速度を低速化する機能と、をコンピュータに発揮させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動弁の静音性を向上させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ステータおよびその周辺の構成を表す図である。
【
図4】磁気センサとセンサマグネットおよびセンサマグネットから発生する磁力線の関係を示す模式図である。
【
図6】センサマグネットの感知角とセンサ出力値との関係を示すグラフである。
【
図7】角度値とステップの関係を示すグラフである。
【
図10】初期化処理の処理過程を示すフローチャートである。
【
図11】同調上昇時における指示方向と感知角の関係を示す第1の概念図である。
【
図12】同調上昇時における指示方向と感知角の関係を示す第2の概念図である。
【
図13】
図10のS12における原点探索処理の処理過程を示すフローチャートである。
【
図14】原点探索処理時における指示方向と感知角の関係を示す第1の概念図である。
【
図15】原点探索処理時における指示方向と感知角の関係を示す第2の概念図である。
【
図16】再同調時における指示方向と感知角の関係を示す第1の概念図である。
【
図17】再同調時における指示方向と感知角の関係を示す第2の概念図である。
【
図18】初期位置設定時における指示方向と感知角の関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る電動弁を表す断面図である。
電動弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張弁、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電動弁1は、その冷凍サイクルの膨張弁として機能する。
【0014】
電動弁1は、弁本体2とモータユニット3とを組み付けて構成される。弁本体2は、弁部を収容したボディ5を有する。ボディ5は、「バルブボディ」として機能する。ボディ5は、第1ボディ6と第2ボディ8とを同軸状に組み付けて構成される。第1ボディ6および第2ボディ8は、ともにステンレス鋼(以下「SUS」と表記する)からなる。第2ボディ8には弁座24が設けられるため、耐摩耗性に優れた材質が選定されている。第1ボディ6は第2ボディ8よりも溶接性に優れ、第2ボディ8は第1ボディ6よりも加工性に優れている。
【0015】
第1ボディ6は、外径が下方に向けて段階的に縮径する段付円筒状をなす。第1ボディ6の上端部の外径がやや縮径され、段差による係止部52が構成されている。第1ボディ6の下部外周面には、電動弁1を図示しない配管ボディに組み付けるための雄ねじ10が形成されている。なお、配管ボディには、凝縮器側から延びる配管や、蒸発器につながる配管などが接続されるが、その詳細については説明を省略する。第1ボディ6における雄ねじ10のやや上方の外周面には、環状溝からなるシール収容部12が形成され、シールリング14(Oリング)が嵌着されている。
【0016】
第1ボディ6の下部には、円穴状の凹状嵌合部16が設けられている。第2ボディ8は有底円筒状をなし、その上部が凹状嵌合部16に圧入されている。第2ボディ8の下部外周面には環状溝からなるシール収容部18が形成され、シールリング20が嵌着されている。第2ボディ8の底部を軸線方向に貫通するように弁孔22が設けられ、その弁孔22の上端開口部に弁座24が形成されている。第2ボディ8の側部に入口ポート26が設けられ、下部に出口ポート28が設けられている。第1ボディ6および第2ボディ8の内方に弁室30が形成されている。入口ポート26と出口ポート28とは、弁室30を介して連通している。
【0017】
ボディ5の内方には、モータユニット3のロータ60から延びる作動ロッド32が挿通されている。作動ロッド32は、弁室30を貫通する。作動ロッド32は、非磁性金属からなる棒材を切削加工して得られ、その下部にニードル状の弁体34が一体に設けられている。弁体34が弁室30側から弁座24に着脱することにより弁部を開閉する。
【0018】
第1ボディ6の上部中央には、ガイド部材36が立設されている。ガイド部材36は、非磁性金属からなる管材を段付円筒状に切削加工して得られ、その軸線方向中央部の外周面に雄ねじ38が形成されている。ガイド部材36の下端部が大径となっており、その大径部40が第1ボディ6の上部中央に圧入され、同軸状に固定されている。ガイド部材36は、その内周面により作動ロッド32を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ60の回転軸62を回転摺動可能に支持する。
【0019】
作動ロッド32における弁体34のやや上方にばね受け42が設けられ、ガイド部材36の底部にもばね受け44が設けられている。ばね受け42,44間に、弁体34を閉弁方向に付勢するスプリング46(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0020】
一方、モータユニット3は、ロータ60とステータ64とを含む三相ステッピングモータとして構成されている。モータユニット3は、有底円筒状のキャン66を有し、そのキャン66の内方にロータ60を配置し、外方にステータ64を配置して構成されている。キャン66は、弁体34およびその駆動機構が配置される空間を覆うとともにロータ60を内包する有底円筒状の部材であり、冷媒の圧力が作用する内方の圧力空間(内部空間)と作用しない外方の非圧力空間(外部空間)とを画定する。
【0021】
キャン66は、非磁性金属(本実施形態ではSUS)からなり、その下部が第1ボディ6の上端部に外挿されるようにして同軸状に組み付けられている。キャン66は、その下端が係止部52に係止されることによりその挿入量が規制される。キャン66の下端と第1ボディ6との境界に沿って全周溶接が施されることにより(図示略)、ボディ5とキャン66との固定およびシールが実現されている。ボディ5とキャン66とに囲まれた空間が、上記圧力空間を形成している。
【0022】
ステータ64は、積層コア70の内周部に複数の突極を等間隔に配置して構成される。積層コア70は、環状のコアが軸線方向に積層されて構成される。各突極には、コイル73(電磁コイル)が装着されたボビン74が組み付けられている。これらコイル73およびボビン74により「コイルユニット75」が構成される。本実施形態では、三相電流を供給するためのモータユニット3つのコイルユニット75が、積層コア70の中心軸に対して120度ごとに設けられている(詳細後述)。
【0023】
ステータ64は、モータユニット3のケース76と一体に設けられている。すなわち、ケース76は、耐食性を有する樹脂材の射出成形(「インサート成形」または「モールド成形」ともいう)により得られる。ステータ64は、その射出成形によるモールド樹脂によって被覆されている。ケース76は、そのモールド樹脂からなる。以下、ステータ64とケース76とのモールド成形品を「ステータユニット78」とも称する。
【0024】
ステータユニット78は、中空構造を有し、キャン66を同軸状に挿通しつつボディ5に組み付けられている。第1ボディ6における係止部52のやや下方の外周面には、環状溝からなるシール収容部80が形成され、シールリング82(Oリング)が嵌着されている。第1ボディ6の上部外周面とケース76の下部内周面とに間にシールリング82が介装されることにより、キャン66とステータ64との間隙への外部雰囲気(水など)の侵入が防止されている。
【0025】
ロータ60は、回転軸62に組み付けられた円筒状のロータコア102と、ロータコア102の外周面に設けられたロータマグネット104と、ロータコア102の上端面に設けられたセンサマグネット106を備える。ロータコア102は、回転軸62に組み付けられている。ロータマグネット104は、その周方向に複数極に磁化(着磁)されている。センサマグネット106も複数極に磁化(着磁)されている。ロータマグネット104およびセンサマグネット106は、ロータコア102に一体成型されたマグネット部に後工程で着磁して得られたものであるが、その詳細については後述する。
【0026】
回転軸62は、有底円筒状の円筒軸であり、その開口端を下にしてガイド部材36に外挿されている。回転軸62の下部内周面に雌ねじ108が形成され、ガイド部材36の雄ねじ38と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構109によって、ロータ60の回転運動が作動ロッド32の軸線運動に変換される。それにより弁体34が軸線方向、つまり弁部の開閉方向に移動(昇降)する。
【0027】
作動ロッド32の上部が縮径され、その縮径部110が回転軸62の底部112を貫通している。縮径部110の先端部には環状のストッパ114が固定されている。一方、縮径部110の基端と底部112との間には、作動ロッド32を下方(つまり閉弁方向)に付勢するスプリング116が介装されている。このような構成により、開弁時には、ストッパ114が底部112に係止される態様で作動ロッド32がロータ60と一体変位する。一方、閉弁時には、弁体34が弁座24から受ける反力によりスプリング116が押し縮められる。このときのスプリング116の弾性反力により弁体34を弁座24に押し付けることができ、弁体34の着座性能(弁閉性能)を高められる。
【0028】
モータユニット3は、キャン66の外側に回路基板118を有する。回路基板118は、ケース76の内方に固定されている。本実施形態では、回路基板118の下面に制御部や通信部として機能する各種回路が実装されている。具体的には、モータを駆動するための駆動回路、駆動回路に制御信号を出力する制御回路(マイクロコンピュータ)、制御回路が外部装置と通信するための通信回路、各回路およびモータ(コイル)に電力を供給するための電源回路等が実装されている。ケース76の上端は、蓋体77により閉止されている。ケース76における蓋体77の下方の空間に回路基板118が配設されている。
【0029】
回路基板118におけるセンサマグネット106との対向面には、磁気センサ119が設けられている。磁気センサ119は、キャン66の底部端壁を介してセンサマグネット106と軸線方向に対向する。ロータ60の回転に伴ってセンサマグネット106による磁束が変化する。磁気センサ119は、この磁束の変化を捉えることでロータ60の変位量(本実施形態ではロータ60の回転角度)を検出する。制御部は、そのロータ60の変位量に基づいて弁体34の軸線方向位置ひいては弁開度を算出する。
【0030】
それぞれのボビン74からはコイル73につながる一対の端子117が延出し、回路基板118に接続されている。回路基板118からは電源端子、グランド端子および通信端子(これらを総称して「接続端子81」ともいう)が延出し、それぞれケース76の側壁を貫通して外部に引き出されている。ケース76の側部にコネクタ部79が一体に設けられ、そのコネクタ部79の内方に接続端子81が配置されている。
【0031】
ロータ60の下方にはストッパ90が形成される。特許文献2に示すようにストッパ90の構成は既知である。作動ロッド32が弁閉位置に至ると、ロータ60にはスプリング116による弾性反力がかかり、弁閉が安定維持される。最終的には、ストッパ90がガイド部材36の一部として形成される図示しない突部(係止部)に当接することにより、ロータ60の弁閉方向への回転が完全に規制される。以下、このときのロータ60の位置、いいかえれば、ストッパ90が突部と当接する地点を「原点」とよぶ。また、本実施形態においては原点を「基準位置」とする。
【0032】
図2は、ステータ64およびその周辺の構成を表す図である。
図2(A)は
図1のA-A矢視断面に対応し、ステータユニット78の断面図である。
図2(B)はステータ64のみ(樹脂モールド前の状態)を表す図である。なお、
図2(A)には参考のため、キャン66およびロータ60を示している(二点鎖線参照)。
【0033】
モータユニット3が三相のモータであるため、
図2(A)に示すように、ロータ60の軸線Lの周りに等間隔でコイルユニット75が設けられている。
図2(B)にも示すように、積層コア70の内周部に軸線Lに対して120度の間隔でスロット120a~120c(これらを特に区別しないときは「スロット120」と総称する)が設けられている。各スロット120には、その中央から半径方向内向きに突出する突極122a~122c(「突極122」と総称する)が形成され、それぞれU相コイル73a、V相コイル73b、W相コイル73c(「コイル73」と総称する)が組み付けられている。互いに隣接するスロット120の間にも、横断面U字状のスリット124が形成され、磁路の最適化が図られている。
【0034】
ロータマグネット104は、キャン66を介して突極122a~122cと対向する。本実施形態では
図2(A)に示すように、ロータマグネット104が雄ねじ10極に磁化されているが、その極数については適宜設定できる。
【0035】
次に、ロータ60におけるマグネットの構成について詳細に説明する。
図3は、ロータ60の構成を表す図である。
図3(A)は斜視図、
図3(B)は正面図、
図3(C)は平面図、
図3(D)は
図3(C)のB-B矢視断面図である。図中の「N」はN極、「S」はS極を示す。なお、同図においては、説明の便宜上、回転軸62(
図1参照)の表記を省略している。
【0036】
ロータ60は、ロータコア102の外周面に沿ってロータマグネット104を有し、ロータコア102の軸端部にセンサマグネット106を有する(
図3(A),
図3(D))。ロータマグネット104は円筒状をなし、外周面10極着磁とされている(
図3(B),
図3(C))。一方、センサマグネット106は環状をなし、平面2極着磁とされている。
【0037】
図3(D)に示したように、ロータマグネット104の内周面が環状溝140に嵌合し、センサマグネット106の下面が環状溝144に嵌合している。すなわち、環状溝140は、ロータコア102からのロータマグネット104の脱落を防止する脱落防止構造として機能する。同様に、環状溝144は、ロータコア102からのセンサマグネット106の脱落を防止する脱落防止構造として機能する。
【0038】
以上の構成を前提として、次に、磁気センサ119がロータ60の回転角度を検出する方法について説明する。なお、以下においては、
図1の上下方向を「開閉方向」または「上下方向」とよぶ。
【0039】
図4は、磁気センサ119とセンサマグネット106およびセンサマグネット106から発生する磁力線の関係を示す模式図である。
図4は、磁気センサ119およびセンサマグネット106を側面から見たときの模式図である。
図4に示すようにセンサマグネット106(永久磁石)のNからSに磁力線が発生する。センサマグネット106の直上に位置する磁気センサ119は、センサマグネット106から発生する磁力線を検出する既知構成のロータリーセンサである。磁気センサ119は、磁力線の方向に基づいて、センサマグネット106(ロータ60)の回転角を検出する(詳細後述)。なお、本実施形態において、磁気センサ119はセンサマグネット106の回転角を検出可能であるが、磁気センサ119により、センサマグネット106までの距離、いいかえれば、作動ロッド32の開閉方向における移動量を直接検出することはできないものとして説明する。
【0040】
図5は、センサマグネット106の平面図である。
ステータ64のコイル73に後述の方法にて駆動電流を流すことにより、ロータ60に回転駆動力が与えられる。ロータ60を閉弁方向(下方向)に回転させると(以下、「下降回転」とよぶ)、ロータ60に連動して作動ロッド32(弁体34)は閉弁方向、すなわち、
図1の図面下方向に移動する。ロータ60を開弁方向に回転させると(以下、「上昇回転」とよぶ)、ロータ60と連動して作動ロッド32(弁体34)は開弁方向、すなわち、
図1の図面上方に移動する。
【0041】
ロータ60の回転に連動して、センサマグネット106も回転する。センサマグネット106の回転にともなって、センサマグネット106の磁界方向MAも変化する。
図5に示すようにXY座標系(
図1における水平面に対応)を設定したとき、磁界方向MAがX軸となす角度をθとする。磁気センサ119は、特許文献1の角度センサに示す既知の方法にて、センサマグネット106の回転角度θを検出する。
【0042】
図6は、センサマグネット106の感知角とセンサ出力値との関係を示すグラフである。
横軸は、磁気センサ119により検出されたセンサマグネット106の実際の回転角度θを示す(以下、「感知角」とよぶ)。縦軸は、磁気センサ119の出力値(以下、「センサ値」とよぶ)である。センサ値は、更に、磁気センサ119により「下限値0~上限値TA」の範囲で正規化される。上限値TAは任意に設定可能である。
図6に示すように、磁気センサ119は感知角に対応してノコギリ型の波形にてセンサ値を出力する。以下、センサ値を上記範囲にて正規化した値を「角度値」とよぶ。角度値に基づいて、制御回路は感知角、すなわち、センサマグネット106の実際の回転角度を検出できる。
【0043】
図7は、角度値とステップの関係を示すグラフである。
本実施形態において、弁体34を最上位点(弁開)から最下位点(弁閉)まで移動させるとき、ロータ60は合計4回転する。詳細は後述するが、制御回路は3相のコイル73に供給する駆動電流を変化させ、コイル73の磁界方向を変化させることでロータ60を回転させる。本実施形態においては、制御回路はロータ60をu1度単位で回転させる(詳細後述)。以下、この単位回転量のことを「ステップ」とよぶ。360度×4回転÷u1度=1440/u1より、制御回路は作動ロッド32の動作範囲においてロータ60に合計(1440/u1)ステップ分の回転を指示することになる。ロータ60の4回転に対応して、角度値は0~TAの間で4回変化する。
【0044】
制御回路はU相コイル73aに所定レベルの駆動電流を流す。このとき、V相コイル73bおよびW相コイル73cについても同様に所定レベルの駆動電流が流される。各コイル73に駆動電流を流すことによりロータ60に指示する回転角度を設定する。以下、コイル73から発生する磁界方向を「指示方向」とよぶ。U相コイル73a、V相コイル73bおよびW相コイル73cそれぞれに与える駆動電流の電流値の組み合わせを「励磁パターン」とよぶ。本実施形態における励磁パターンはN種類である。ある励磁パターンを1つ隣りの励磁パターンに変化させることが「1ステップ」の回転、いいかえれば、単位回転量分の回転指示に対応する。
【0045】
励磁パターンの変化により、いいかえれば、1ステップずつ励磁パターンを変更することにより、指示方向が変化する。指示方向の変化に同期して、ロータ60が回転し、感知角θも変化する。励磁パターンを変化させたあと、磁気センサ119により検出される角度値から感知角θを算出することで、制御回路は、指示方向(ロータ60に指示した回転角度)と感知角θ(磁気センサ119により検出したロータ60の実際の回転角度)が追従しているか否かを判定できる。
以下、指示方向に感知角が追従している状態を「同調」、指示方向に感知角が追従できていない状態を「脱調」とよぶ。
【0046】
励磁パターンにはN種類のパターンIDが付与される。パターンID=N1の励磁パターン(以下、「励磁パターン(N1)」のように表記する)におけるU相コイル73a、V相コイル73bおよびW相コイル73cそれぞれの駆動電流値をIU(N1)、IV(N1)、IW(N1)とする。すなわち、励磁パターン(N1)とは{IU(N1)、IV(N1)、IW(N1)}の組み合わせを意味する。駆動電流IU(N1)、IV(N1)およびIW(N1)によりコイル73における磁界バランスが変化するため、駆動電流により指示方向を決めることができる。
【0047】
制御回路が励磁パターン(N1)を励磁パターン(N1+1)、すなわち、{IU(N1+1)、IV(N1+1)、IW(N1+1)}に変更すると、3つのコイル73から発生する磁界の方向(指示方向)が変化し、これにともなってロータ60は単位回転量だけ上昇回転する。制御回路が励磁パターン(N1)を励磁パターン(N1-1)に変更すると、ロータ60は単位回転量だけ下降回転する。N種類(一周期)の励磁パターンはNステップ分に対応する。
【0048】
制御回路が励磁パターンをNステップ分進めるとき、ロータ60はF度回転する。ロータ60を1周(360度回転)させるためには、励磁パターンを(360/F)周期分変化させる必要がある。感知角の360度(1周)は、N×(360/F)ステップに対応する。
【0049】
励磁パターンを変化させることで指示方向を変化させ、指示方向の変化にともなってロータ60に回転駆動力が与えられる。弁体34が弁座24に着座したあとは、スプリング116の弾性反力によりロータ60の弁閉が安定維持される。
【0050】
本実施形態においては、ストッパ90がガイド部材36(より厳密にはガイド部材36の突部)と当接するときのロータ60の位置を原点(基準位置)とし、制御回路はこのときの角度値および励磁パターンを「原点情報(基準情報)」として記録している。以下、ストッパ90がガイド部材の突部に当接することを「回転規制」とよぶ。また、ストッパ90が突部と当接することにより発生する接触音のことを「衝突音」とよぶ。
【0051】
製造上のばらつきが生じるため、電動弁1ごとに原点情報は異なる。回路基板118は不揮発性メモリを搭載する。電動弁1は、製造時において原点位置の検査が行われており、不揮発性メモリに電動弁1に固有の原点情報を記録しておく。
【0052】
一例として、電動弁1aの原点情報における角度値は「15」であるとする。一方、別の電動弁1bの原点情報における角度値は「23」であるとする。電動弁1には個体差があるため、原点情報も電動弁1ごとに設定される。
【0053】
電動弁1aに対して、外部から初期化コマンドが送信されたとする。回路基板118の制御回路は、初期化コマンド等の各種コマンドをマスター(外部装置)から受信する。初期化コマンドが受信されたときには、制御回路はロータ60を少しずつ下降回転させながら原点を探索する。制御回路は、下降回転中に磁気センサ119により角度値を検出する。制御回路は、原点情報の角度値と磁気センサ119から検出した角度値を比較することにより、基準位置を探る。たとえば、電動弁1aの制御回路は、下降回転中に検出した角度値が「15」となるときにはロータ60が原点に到達した可能性があると判断できる。同様にして電動弁1bの制御回路は、下降回転中に検出した角度値が「23」となるときにはロータ60が原点に到達した可能性があると判断できる。原点探索の詳細は後述する。
【0054】
制御回路は、原点(弁閉位置)を基準としてロータ60の回転量に対応するステップ数を指定することにより、作動ロッド32の移動量、すなわち、電動弁1の弁開度を調整する。
【0055】
上述したように、原点情報は、原点における角度値および励磁パターンを含む。
図7の場合、原点P0における角度値および励磁パターンが原点情報として不揮発性メモリに記録されている。弁体34を最上位点から最下位点まで移動させるとき、ロータ60は合計4回転するため、原点情報と同一の角度値は4回検出される。
図7においては点P1,P2,P3,P4が該当する。以下、実際の原点P0のことを「真原点」または単に「原点」とよび、原点P0と同一の原点情報を有するものの原点ではない点P1,P2,P3,P4のことを「偽原点」とよぶ。
【0056】
本実施形態においては、初期化コマンドが送信されたとき、制御回路はロータ60を原点P0よりも少しだけ開方向に上昇回転させた位置である初期位置Qに設定する。初期位置Qは「停止位置」に対応する。制御回路は、ロータ60をいったん初期位置Qに設定した上で、ロータ60の回転量および回転方向を指示することで弁開度を調整する。以後、初期位置Qが制御の基準点となる。なお、原点P0と初期位置Qを異なる位置に設定する理由については後述する。
【0057】
図8は、ロータ60の移動範囲の模式図である。
図8の右方向はロータ60の開方向(上昇方向)、左方向は閉方向(下降方向)を示す。原点P0は、ストッパ90が回転規制を受け、ロータ60がそれ以上の下降回転をできなくなる限界位置である。原点P0からM2ステップ分だけロータ60が上昇回転した位置が弁開点Wである。本実施形態におけるM2は任意に設定されればよい。原点P0から弁開点Wまでの範囲では、スプリング116の弾性反力により弁体34が弁座24に押し付けられるため、弁閉状態は維持される。ロータ60が原点P0から上昇回転を続け、弁開点Wを超えたとき弁体34は弁座24から離脱し、開弁状態となる。弁開点Wを超えたあともロータ60の上昇回転が続くと弁開度は徐々に拡大し、入口ポート26から出口ポート28への流量が増加する。
【0058】
初期位置Qは、原点P0からM1ステップだけロータ60を上昇回転させた位置である。本実施形態におけるM1は任意に設定されればよい。なお、M1<M2である。すなわち、ロータ60が初期位置Qにあるときには弁閉状態となる。
【0059】
初期位置Qを原点P0としてもよいが、この場合にはストッパ90が突部と近すぎるため衝突音が発生しやすくなる。たとえば、ロータ60が原点P0にあるときに、ロータ60を始動させると、ロータ60が揺動して衝突音が発生しやすくなる。あるいは、ロータ60が原点P0にあるとき、車両の振動がロータ60に伝わることで衝突音が発生する可能性もある。そこで、本実施形態においては、初期位置Qを原点P0から離すことで、ストッパ90と突部に間隙(余裕)を作り、衝突音の発生を抑制している。
【0060】
上述したように、原点P0は電動弁1固有の位置であるため、初期位置Qも電動弁1ごとに異なる。制御回路は、初期化コマンドを受信したとき、原点P0からM1ステップだけ上昇回転した初期位置Qにロータ60を設定する。以下、ロータ60を初期位置Qに移動させることを「初期化処理」とよぶ。
以下においては、初期化処理を中心として説明する。
【0061】
図9は、電動弁制御装置200の機能ブロック図である。
電動弁制御装置200の各構成要素は、回路基板118上における制御回路(マイクロコンピュータ)、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェア(制御回路)と、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバおよびアプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0062】
電動弁制御装置200は、データ処理部202、通信部204、基準情報記憶部206およびロータインタフェース部208を含む。
通信部204は、接続端子81を介して外部装置に対するインタフェースとして機能する。ロータインタフェース部208は、磁気センサ119およびコイルユニット75に対するインタフェースとして機能する。基準情報記憶部206は、原点情報(基準情報)を記憶する。基準情報記憶部206は不揮発性メモリに構成される記憶領域である。データ処理部202は、基準情報および通信部204、ロータインタフェース部208から取得された各種データに基づいて各種処理を実行する。データ処理部202は、通信部204、ロータインタフェース部208および基準情報記憶部206のインタフェースとしても機能する。
【0063】
通信部204は、外部装置からデータおよびコマンドを受信する受信部210と、外部装置にデータを送信する送信部212を含む。
【0064】
ロータインタフェース部208は、回転指示部214および回転検出部216を含む。回転指示部214は、励磁パターンに応じて、U相コイル73a、V相コイル73bおよびW相コイル73cそれぞれに駆動電流を出力する。回転検出部216は、磁気センサ119から角度値を取得する。
【0065】
データ処理部202は、回転制御部218を含む。回転制御部218は、原点情報に基づいて回転指示部214を制御する。回転制御部218は、角度値に基づいて感知角を算出する。回転制御部218は、感知角の追従性に基づいて原点P0(基準位置)および初期位置Qを特定する。
【0066】
図10は、初期化処理の処理過程を示すフローチャートである。
電動弁制御装置200の受信部210が、接続端子81を介して外部装置から初期化コマンドを受信したとき、
図10に示す初期化処理が開始される。初期化に際して、ロータ60は所定量だけ上昇回転する(以下、「同調上昇」とよぶ)(S10)。同調上昇は、励磁パターンによる指示方向とロータ60の実際の回転角度である角度値を同調させるための処理である。また、ロータ60の回転開始時において、ガイド部材36とロータ60の間のねじ送り機構109に金属屑のような不純物が挟まっている可能性がある。同期上昇にともなうロータ60の上昇回転により、ロータ60による不純物の噛み込みを解くことができる。このほか、同期上昇を行うことでねじ送り機構109に適度な振動を与え、不純物のねじ送り機構109からの脱落を促すことができる。同調上昇については、
図10、
図11に関連して後述する。
【0067】
次に、ロータ60を原点P0に移動させるための「原点探索処理」が実行される(S12)。ロータ60を初期位置Qに移動させる前に、電動弁制御装置200は指示方向を下降回転方向に動かしながら、ロータ60を原点P0に移動させる。回転制御部218は原点情報に基づいて、原点P0を特定する。原点探索処理の詳細は、
図13、
図14、
図15に関連して後述する。
【0068】
回転制御部218は、原点P0にロータ60を到達させたあと、いったんロータ60を脱調させた上で上昇回転させ、感知角を再び指示方向と同調させる(以下、「再同調」とよぶ。)(S14)。再同調時の上昇回転においても同期上昇と同様にして、不純物の噛み込みの解除とその除去を促すことができる。再同調の詳細は
図16、
図17に関連して後述する。
【0069】
最後に、回転制御部218はロータ60を初期位置Qに移動させる(以下「初期位置設定」とよぶ)(S16)。初期位置設定の詳細は
図18に関連して後述する。
【0070】
図11は、同調上昇時における指示方向と感知角の関係を示す第1の概念図である。
上述したように、N種類の励磁パターンを切り替えることにより、指示方向(磁界方向)が少しずつ変化する。
図11の上側は、N種類の励磁パターンによる1周期分の指示方向を円で表したものである。
図11の円において、励磁パターンによる指示方向を反時計回りに変化させることはロータ60の上昇回転に対応し、指示方向を時計回りに変化させることはロータ60の下降回転に対応する。
【0071】
励磁パターンを1ステップ変化させることで、コイル73における指示方向A(磁界方向)が変化し、指示方向Aの変化によりロータ60にu1度分の回転駆動力が与えられる。本実施形態においては、励磁パターンをNステップ(1周期)変化させることでロータ60はF度回転する。励磁パターンを(360/F)周期変化させることでロータ60は1回転する。
図11の上側は、指示方向A(コイル73において発生する磁界の方向)と感知角B(ロータ60の向き)の関係を概念的に示している。
【0072】
たとえば、F=360であれば、励磁パターンをNステップ(1周期)変化させることにより、ロータ60は1回転(360度回転)する。この場合、励磁パターンを1ステップ変化させるごとに、ロータ60は(360/N)度だけ回転する。Nステップの変化により、ロータ60は360度回転する。
【0073】
F=180であれば、励磁パターンをNステップ(1周期)変化させることにより、ロータ60は半回転(180度回転)する。この場合、励磁パターンを1ステップ変化させるごとに、ロータ60は(180/N)度だけ回転する。Nステップの変化により、ロータ60は180度回転する。励磁パターンを所定方向にNステップ分だけ変化させてロータ60を半回転させたあと、励磁パターンをNステップ分だけ再度同じ方向に変化させることでロータ60も更に半回転する。すなわち、励磁パターンを2周期分だけ同一方向に変化させることで、ロータ60に1周分の回転駆動力を与えることができる。このように励磁パターンの周期とロータ60の周期は同一である必要はない。
【0074】
初期化コマンドの受信時においては、回転制御部218は所定の励磁パターンを回転指示部214に指示し、回転指示部214は励磁パターンにしたがって駆動電流を流す。一般的には、カーエアコン(Car Air Conditioner)の電源がオンされたとき、電動弁制御装置200に初期化コマンドが送信される。
【0075】
励磁パターンが設定されると、コイル73から所定方向の磁界が発生することにより指示方向A(コイル73からの磁界方向)が設定される。ロータ60はコイル73の磁力により回転駆動力を与えられる。このため、感知角B(ロータ60の方向)は指示方向A(励磁パターンの指示する磁界方向)に近づこうとする。励磁パターンの設定時において感知角Bは指示方向Aとすぐに一致するかもしれないが、感知角Bと指示方向Aが離れすぎているときには感知角Bは指示方向Aに引き寄せられるものの一致まではしないかもしれない。
【0076】
回転制御部218は、励磁パターンを上昇方向に1ステップずつ切り替えることで、指示方向Aを順次変化させる。
図11においては、感知角Bは指示方向Aよりも上側にあるため、感知角Bは下降方向へ引き寄せられる。
【0077】
図12は、同調上昇時における指示方向と感知角の関係を示す第2の概念図である。
回転制御部218は、指示方向Aを上昇方向にNステップ分(1周期)移動させる。ロータ60は指示方向Aに引き寄せられるので、やがて指示方向Aと感知角Bは同期する。
図12は指示方向Aと感知角Bの同調時点を示している。いったん同調した後は、指示方向Aを上昇方向に1ステップだけ移動させるのと同期して、ロータ60はu1度だけ上昇回転する。
【0078】
図13は、
図10のS12における原点探索処理の処理過程を示すフローチャートである。
電動弁1の製造後、工場において原点検査が行われ、原点特有のデータである原点情報は基準情報記憶部206に記録される。原点探索処理は、この原点情報を参照しながら行われる。回転制御部218はロータ60を回転させながら角度値を検出する。以下、原点情報として登録されている角度値を「基準角度値」、ロータ60について検出された角度値を「現在角度値」とよぶ。回転制御部218は、基準角度値と現在角度値が近いとき、ロータ60が原点付近にあると判定する。ただし、
図7に示したように偽原点P1、P2、P3、P4においても現在角度値は基準角度値と一致する。したがって、原点情報のみでは原点P0を特定することはできない。
【0079】
回転制御部218は、ロータ60を下降回転させ、基準角度値と現在角度値が近づいたときにはロータ60の回転速度を落とす。これは、真原点P0では衝突音が発生するため、ロータ60を低速化して衝突音を小さくするためである。偽原点の付近であれば、ロータ60は下降回転を続けることができるので、やがて基準角度値と現在角度値は乖離していく。基準角度値と現在角度値が離れたときには、回転制御部218はロータ60の回転速度を元に戻す、あるいは、上昇させる。一方、真原点P0に到達したときには、ストッパ90の回転規制により、励磁パターンが示す指示方向に感知角が追従しなくなる。このような現象が生じていれば、回転制御部218はロータ60が原点P0に到達したと判断する。
【0080】
原点探索処理の開始時においては、指示方向と感知角は同調している。この状態で、回転制御部218は、まず、カウンタCを「0」にリセットする(S20)。カウンタCは原点候補を判定するために用意される変数である。次に、回転制御部218はロータ60の下降回転速度を回転速度V1に設定する(S22)。
【0081】
回転制御部218は、回転速度V1にしたがって一定のペースにて下降回転させる。回転指示部214は、ロータ60を1ステップ分だけ下降回転させる(S24)。磁気センサ119は感知角を検出し、回転検出部216は磁気センサ119から出力されるセンサ値により角度値(0~TA)を計算する。回転制御部218は、基準角度値と現在角度値の差分値D(絶対値)が所定の閾値T1よりも小さいか否かを判定する(S26)。差分値Dが閾値T1以上であるとき(S26のN)、すなわち、ロータ60が真原点付近でも偽原点付近でもないときには、回転速度はV1(高速)となる(S28)。なお、閾値T1は任意である。
【0082】
差分値Dが閾値T1未満であるとき(S26のY)、すなわち、ロータ60が真原点P0または偽原点P1,P2,P3,P4の付近にあるときには、回転制御部218は回転速度をV2に設定する(S30)。V2<V1である。低速化は、現在位置が真原点P0付近であった場合に備え、衝突音を小さくするためである。
【0083】
回転検出部216は電動弁1ステップ分の下降回転指示に対して、センサマグネット106の実際の回転変化量aを計算する。通常、1ステップ分の回転指示に対しては、上述したようにu1度の回転変化量aが想定される。回転制御部218は、回転変化量aが閾値T2未満であるか否かを判定する(S32)。いいかえれば、回転制御部218は、指示方向の変化量(回転量)に対する感知角の変化量(回転量)の比率(追従性)が所定の閾値未満となっているか否かを判定する。閾値T2は任意であるが、たとえば、0.3×u1~0.7×u1度程度に設定される。
【0084】
回転変化量aが閾値T2未満であるとき、原点に到達し、ロータ60が回転規制を受けている可能性がある。あるいは、金属屑などの不純物によりロータ60が一時的な回転規制を受けている可能性も考えられる。いずれにしても、ロータ60の追従性がなんらかの理由により低下している。このように、回転変化量aが閾値T2未満であるときには、ロータ60が真原点P0に近づいている可能性もあるが、真原点P0ではない位置で一時的にロータ60の追従性が低下している可能性も残る。
【0085】
回転変化量aが閾値T2以上のとき(S32のN)、すなわち、ロータ60が十分に追従できているときには、回転制御部218はカウンタ値Cを「0」にリセットする(S34)。また、回転制御部218は後述の最新原点情報HPが保存されているときにはこれをクリアする(S36)。そのあと、処理はS24に戻り、回転制御部218は再び1ステップ分の下降回転を指示する。
【0086】
一方、回転変化量aが閾値T2未満であって(S32のY)、カウンタ値C=0のとき(S38のY)、すなわち、初めて回転変化量aが閾値T2未満となったときには、回転制御部218は現在角度値および現在の励磁パターンを最新原点情報HPとして一時保存する(S40)。そのあと、回転制御部218はカウンタ値Cをインクリメントする(S42)。カウンタ値Cがゼロではないとき(S38のN)、すなわち、「回転変化量aが閾値T2未満となる事象(以下、「追従性低下検出」とよぶ)」が連続検出されたときには、S40の処理はスキップされる。最新原点情報HPはそのまま維持される。追従性低下検出が連続する限り、最新原点情報HPは維持され、カウンタ値Cは増加しつづける。
【0087】
カウンタ値Cが閾値K1未満のとき(S44のN)、最新原点情報HPを保存したまま処理はS24に戻る。閾値K1は任意の自然数である。一方、カウンタ値Cが閾値K1以上、すなわち、追従性低下検出がK1回以上連続したときには(S44のY)、
図10に示した再同調(S14)に移行する。この場合には、回転制御部218は、最新原点情報HPの検出時点においてロータ60が原点P0に到達したと判定する。以下、S40にて保存された最新原点情報に含まれる角度値を「原点角度値」、励磁パターンを「原点励磁パターン」とよぶ。通常、原点情報と最新原点情報は同一となる。最新原点情報に基づいて以降の処理が実行される。
【0088】
図14は、原点探索処理時における指示方向と感知角の関係を示す第1の概念図である。
同調上昇により指示方向Aと感知角Bを同調させたあと、
図13に関連して説明したように回転制御部218は励磁パターンを切り替えながらロータ60を下降回転させる。偽原点付近では、回転制御部218はロータ60の回転速度をV1からV2に低速化する。たとえば、
図14に示すように偽原点P2付近ではロータ60の回転速度はV2(低速)となり、偽原点P2から離れると回転速度はV1に戻る。
【0089】
図15は、原点探索処理時における指示方向と感知角の関係を示す第2の概念図である。
ロータ60が真原点P0に到達したとき、ロータ60は回転規制を受ける。このため、励磁パターンの変化によって下降回転を指示しても、ロータ60は下降回転をそれ以上続けることができなくなる。このあとも、回転制御部218は励磁パターンを下降回転方向に切り替え続ける。
図15は、
図12の「S44のY」の状態に対応する。回転規制状態がK1回検出されたとき、真原点P0に到達後、励磁パターンがK1ステップだけ進んだとき、最新原点情報HPが真原点P0に対応することが判明する。指示方向Aは下降方向に進むものの、感知角Bは下降方向に進めなくなるので、
図15に示すようにロータ60はいったん脱調する。
【0090】
図16は、再同調時における指示方向と感知角の関係を示す第1の概念図である。
ロータ60が真原点P0に到達したあとも、回転制御部218は励磁パターンを下降回転方向に切り替え続ける。
図16に示す位置に指示方向Aに至ったときには、ロータ60にとって指示方向Aは下降方向側からよりも上昇方向側からの方が近くなるため、ロータ60は上昇方向に回転駆動力を受ける。励磁パターンにより発生する磁界とロータ60の相対的な位置関係によって、ロータ60の回転方向が決まる。
【0091】
図17は、再同調時における指示方向と感知角の関係を示す第2の概念図である。
回転制御部218は、真原点P0から、M3ステップ分だけ励磁パターンを下降回転方向に切り替え続ける。
図16に示したようにロータ60は上昇方向に回転駆動力を受ける。このように真原点P0到達後も励磁パターンを下降回転方向に動かし続けることにより、やがて感知角Bと指示方向Aが相対的に近づき、再び両者は一致(同調)する。以上のように、回転制御部218は、最新原点情報HPに登録された原点励磁パターンから、M3ステップだけ励磁パターンを進める。
【0092】
指示方向Aの真原点P0からの下降方向への移動量はM3ステップなので、真原点P0から指示方向Aまでの上昇方向の距離(ステップ数)は「N-M3」となる。回転制御部218は真原点P0から「N-M3」ステップ分だけ上昇回転した位置における角度値を
図7に示したデータに基づいて求め、想定される角度値と、感知角Bの実際の角度値の差分値が所定の閾値以内であるかを確認してもよい。いいかえれば、回転制御部218は指示方向Aを真原点P0からM3ステップだけ下降方向に移動させたとき、指示方向Aと感知角Bが実際に同調できているか、いいかえれば、脱調が発生していないかを確認してもよい。
【0093】
図18は、初期位置設定時における指示方向と感知角の関係を示す概念図である。
図8に示したように、初期位置Qは原点P0からM1ステップだけ上昇方向の位置にある。励磁パターンは1周Nステップであるため、回転制御部218は
図17の状態から、「N-M3-M1」ステップだけ励磁パターンを下降方向に進める。以上の処理を経て、ロータ60は初期位置Qに到達する。
【0094】
[総括]
以上、実施形態に基づいて電動弁1、特に、電動弁制御装置200について説明した。
電動弁制御装置200は、原点情報に基づいて、原点の可能性がある地点においてロータ60を低速化させる。このような制御方法により、大きな衝突音が発生するのを未然に防ぐことができる。また、偽原点を通過したあとは、ロータ60の回転速度を再び高速化することで、原点探索処理に要する時間を短縮できる。
【0095】
電動弁制御装置200は、原点探索処理の前に同期上昇を実行する。初期化処理の開始時に指示方向を上昇回転方向に動かすことで、感知角を指示方向に同調させることができる。また、ロータ60を下降回転させる前に上昇回転させることにより、ねじ送り機構109に適度な振動を与えることができるので、残存しているかもしれない不純物を効果的に除去できる。
【0096】
また、電動弁制御装置200は、ロータ60を真原点P0に到達させたあと、ロータ60を脱調させた上で、ロータ60を一時的に上昇回転させている(
図16、
図17参照)。原点到達後においてもロータ60を少しだけ上昇回転させた上で下降回転させることにより、不純物の除去を促すことができる。
【0097】
本実施形態においては、初期位置Qを原点P0からM1ステップだけ離れた位置に設定している。ロータ60の動作開始時においてはロータ60が上下に揺動することがある。初期位置Qと原点P0が同一である場合、この揺動により衝突音が発生する可能性がある。また、車両の振動によってもロータ60が揺れる場合がある。初期位置Qと原点P0との間に余裕を設けることにより、衝突音の発生を抑制できる。また、ストッパ90と突起の衝突はこれらの部品の摩耗につながるため好ましくない。初期位置Qと原点P0との間に余裕をもたせることで部品の摩耗を抑制できる。
【0098】
本実施形態によれば、ロータ60の追従性の低下を磁気センサ119により検知することで、原点(基準位置)を特定できる。電動弁制御装置200は、ロータ60を電動弁1ステップずつ回転させるごとにロータ60の追従性を検査できる。
【0099】
本実施形態においては、回転変化量aがK1回以上連続して閾値T2を下回った位置を原点として特定する。K1を複数回と設定することにより、不純物により作動ロッド32が一時的に動きづらくなった地点が原点と誤認されるリスクを低減している。K1は1以上の任意の整数であればよい。
【0100】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0101】
[変形例]
本実施形態においては弁閉位置を原点(基準位置)と想定して説明した。変形例として弁全開位置を基準位置として設定してもよい。基準位置は作動ロッド32をロータ60で駆動するための基準となるべき位置であればよい。ストッパ90によりロータ60の回転を規制可能な位置であれば任意に基準位置を定めることができる。初期位置(停止位置)を基準位置に設定してもよい。
【0102】
本実施形態においては、ステッピングモータに供給する駆動電流を励磁パターンにより定義し、励磁パターンを電動弁1ステップずつ切り替えることでロータ60を単位回転量ずつ変化させるとして説明した。これに限らず、ロータ60を一定速度にて連続的に回転させ、回転制御部218は単位時間あたりの感知角の追従性に基づいて、基準位置を探索してもよい。
【0103】
本実施形態においては、原点情報に含まれる角度値である基準角度値と、ロータ60について検出された角度値である現在角度値が近いとき、回転制御部218はロータ60が原点付近にあると判定し、ロータ60の回転速度を落とすとして説明した。変形例として、角度値ではなく励磁パターンに基づいて、回転制御部218はロータ60が原点付近にあるか否かを判定してもよい。まず、原点情報として登録されている励磁パターン、すなわち、原点において設定される励磁パターンのステップ値を「基準励磁値」、ロータ60について実際に設定した励磁パターンのステップ値を「現在励磁値」とよぶことにする。回転制御部218は、基準励磁値と現在励磁値が近いとき、ロータ60が原点付近にある可能性がある、と判定する。
【0104】
具体的には、回転制御部218は、ロータ60を下降回転させ、
図13のS26において、基準励磁値と現在励磁値の差分値DX(絶対値)が所定の閾値TXよりも小さいか否かを判定する。差分値DXが閾値TXよりも小さいときには(S26のY)、回転制御部218は回転速度をV2(低速)に設定する。このように、角度値ではなく、励磁パターンに基づいて、ロータ60が原点付近にあるか否かを判定してもよい。
【0105】
本実施形態においては、回転変化量aが閾値T2を連続的に下回ることを条件として基準位置を特定するとして説明した。変形例として、連続検出であるか否かに関わらず、回転変化量aが閾値T2を下回る合計回数が所定回数以上となるとき、回転制御部218は基準位置を特定するとしてもよい。
【0106】
上記実施形態では、磁気センサ119をセンサマグネット106と軸線方向に対向させる構成を例示した(
図1参照)。変形例においては、センサマグネットの側方(径方向外側)に磁気センサを配置してもよい。すなわち、両者を径方向に対向させてもよい。センサマグネットの外周面に着磁してもよい。その極数については、例えば弁本体2極とするなど適宜設定できる。
【0107】
上記実施形態では、ロータマグネット104とセンサマグネット106とが軸線方向に離隔する構成を例示した。変形例においては、ロータマグネットとセンサマグネットとを一体に構成してもよい。マグネット部成形工程において、ロータマグネット部とセンサマグネット部とを一体成形してもよい。その場合、磁気センサが磁束を確実に検出できるよう、センサマグネットの面積(外径)を大きくしてもよい。センサマグネットがロータコアの外周にはみ出すことになるため、センサマグネットとロータマグネットを射出成形しやすくなる。
【0108】
各実施形態では、ステータのコアとして積層コア(積層磁心)を例示した。変形例においては、圧粉コアその他のコアを採用してもよい。圧粉コアは、「圧粉磁心」とも呼ばれ、軟磁性材料を粉末にし、非導電性の樹脂等でコーティングした紛体と、樹脂バインダとを混練し、圧縮成型・加熱することで得られる。
【0109】
各実施形態では、回路基板の下面に駆動回路、制御回路、通信回路および電源回路が実装される構成を例示したが、実装される回路については適宜変更できる。例えば、駆動回路および電源回路を実装する一方、制御回路を電動弁の外部に設置してもよい。また、各回路を回路基板の上面に実装してもよい。
【0110】
各実施形態では、モータユニットとして、PM型ステッピングモータを採用したが、ハイブリッド型ステッピングモータを採用してもよい。また、上記実施形態では、モータユニットを三相モータとしたが、二相,四相、五相などその他のモータとしてもよい。ステータにおける電磁コイルの数もモータユニット3つや第1ボディ6つに限らず、モータの相数に合わせて適宜設定してよい。
【0111】
各実施形態の電動弁は、冷媒として代替フロン(HFC-134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルに凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。
【0112】
各実施形態では、上記電動弁を膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁や流量制御弁として構成してもよい。
【0113】
各実施形態では、上記電動弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用する例を示したが、車両用に限らず電動膨張弁を搭載する空調装置に適用可能である。また、冷媒以外の流体の流れを制御する電動弁として構成することもできる。
【0114】
本実施形態における1は電気自動車に限らず、各種の自動車に応用可能である。
【0115】
センサマグネット106を両面4極着磁(片面弁本体2極の両面着磁)としてもよい。上面と下面で磁極の極性を反転させることで磁束を強化できる。この場合、ロータ60が閉弁方向に変位してセンサマグネット106と磁気センサ119との距離が大きくなっても、磁気センサ119の感度を良好に維持できる。
【符号の説明】
【0116】
1 電動弁、2 弁本体、3 モータユニット、5 ボディ、6 第1ボディ、8 第2ボディ、10 雄ねじ、12 シール収容部、14 シールリング、16 凹状嵌合部、18 シール収容部、20 シールリング、22 弁孔、24 弁座、26 入口ポート、28 出口ポート、30 弁室、32 作動ロッド、34 弁体、36 ガイド部材、38 雄ねじ、40 大径部、42 ばね受け、44 ばね受け、46 スプリング、52 係止部、60 ロータ、62 回転軸、64 ステータ、66 キャン、70 積層コア、73 コイル、73a U相コイル、73b V相コイル、73c W相コイル、74 ボビン、75 コイルユニット、76 ケース、77 蓋体、78 ステータユニット、79 コネクタ部、80 シール収容部、81 接続端子、82 シールリング、90 ストッパ、102 ロータコア、104 ロータマグネット、106 センサマグネット、108 雌ねじ、109 ねじ送り機構、110 縮径部、112 底部、114 ストッパ、116 スプリング、117 端子、118 回路基板、119 磁気センサ、120 スロット、122 突極、124 スリット、140 環状溝、144 環状溝、200 電動弁制御装置、202 データ処理部、204 通信部、206 基準情報記憶部、208 ロータインタフェース部、210 受信部、212 送信部、214 回転指示部、216 回転検出部、218 回転制御部、Q 初期位置