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  • 特開-アンギュラ玉軸受 図1
  • 特開-アンギュラ玉軸受 図2A
  • 特開-アンギュラ玉軸受 図2B
  • 特開-アンギュラ玉軸受 図2C
  • 特開-アンギュラ玉軸受 図2D
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  • 特開-アンギュラ玉軸受 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141104
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】アンギュラ玉軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/16 20060101AFI20220921BHJP
   F16C 33/62 20060101ALI20220921BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20220921BHJP
   F16C 33/38 20060101ALI20220921BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
F16C19/16
F16C33/62
F16C33/58
F16C33/38
B23B19/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041252
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】竹ヶ鼻 仁
(72)【発明者】
【氏名】古山 峰夫
【テーマコード(参考)】
3C045
3J701
【Fターム(参考)】
3C045FD03
3C045FD12
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA34
3J701BA44
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701EA03
3J701EA36
3J701EA38
3J701EA41
3J701GA31
3J701XB03
3J701XB12
3J701XB18
(57)【要約】
【課題】軸受の内径、外径、幅の基本寸法が従来品と同じでありながら、高速回転性能と負荷容量を十分に両立できるアンギュラ玉軸受を提供する。
【解決手段】本発明は、内輪1および外輪2の軌道面1a,2a間に介在する複数のボール3を有し、これらボール3が円筒形状の保持器4の円周方向複数箇所に設けられたポケットPtに保持されたアンギュラ玉軸受である。そして、ボール3の直径Daに対する、隣接するボール3,3の中心間の距離Pcからボール3の直径Daを差し引いたボール間距離Pdの比が、0.16以上0.35以下である。さらに、外輪2の軌道面2aの溝2gの直径Doをボール3の直径Daで除した外輪溝曲率Roに対する、内輪1の軌道面1aの溝1gの直径Diをボール3の直径Daで除した内輪溝曲率Riの比が、0.97以上0.99以下である。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、これら内輪および外輪の軌道面間に介在する複数のボールと、円筒形状であって前記ボールを円周方向複数箇所に設けられたポケットで保持する保持器とを有するアンギュラ玉軸受において、
前記ボールの直径に対する、隣接する前記ボールの中心間の距離から前記ボールの直径を差し引いたボール間距離の比が、0.16以上0.35以下であり、
前記外輪の軌道面の溝の直径を前記ボールの直径で除した外輪溝曲率に対する、前記内輪の軌道面の溝の直径を前記ボールの直径で除した内輪溝曲率の比が、0.97以上0.99以下であるアンギュラ玉軸受。
【請求項2】
請求項1に記載のアンギュラ玉軸受において、
前記ボールの直径に対する、前記外輪における前記軌道面から外周面までの肉厚の最小値である外輪最小肉厚の比が、0.39以上0.63以下であり、
前記外輪の外径から前記内輪の内径を差し引いて2で除した軸受断面高さに対する、前記ボールの直径の比が、0.44以上0.56以下であるアンギュラ玉軸受。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンギュラ玉軸受において、
前記保持器が、外輪の内周面に案内される外輪案内保持器であるアンギュラ玉軸受。
【請求項4】
請求項1または2に記載のアンギュラ玉軸受において、
前記保持器が、前記ボールである転動体に案内される転動体案内保持器であるアンギュラ玉軸受。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンギュラ玉軸受において、
前記ボールがセラミックス製であるアンギュラ玉軸受。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンギュラ玉軸受において、
工作機械の主軸に用いられるアンギュラ玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば工作機械の主軸に用いられるアンギュラ玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械は各種産業の多様なニーズに応えるため、さらなる性能向上が要求されている。例えば、難削材加工のための高剛性化、高効率な加工のための工程の集約や複合化、複雑形状を加工するための5軸化、省スペース化のための小型化が、代表的な要求項目である。とりわけ、これらの要求項目をすべて満足するワンチャック全加工の要求は強い。このワンチャック全加工は、主軸の中低速回転域での重切削から高速回転域での仕上げ切削までを、1台の工作機械が担う加工であり、その工作機械の主軸に用いられる転がり軸受には、相反関係にある高速回転性能と負荷容量とをより高いレベルで両立することが求められている。
【0003】
また、ワンチャック全加工では、生産性向上のために、主軸やテーブルの送り速度が高速化する。加えて、加工物形状が複雑化するので、主軸先端に取り付けた工具と加工物の予期せぬ衝突が生じやすく、軸受に衝撃荷重が加わる場合がある。この衝突時の荷重がその軸受の許容限界を超えると圧痕が発生し、主軸の円滑かつ高精度な回転が阻害される。したがって、圧痕の発生を防止、軽減するために、主軸用軸受には衝突に対する耐性の強化も求められている。そのためには、例えば、軸受の内径、外径を大きくして負荷容量を高めることが考えられるが、そうするには、軸受周辺の主軸を含む構造を大型化する必要があり、主軸の生産コストの増加や構造の複雑化を招いてしまう。したがって、主軸用軸受には、内径、外径、幅の基本寸法が従来品と同じでありながら、より高い負荷容量をもつことが求められる。
【0004】
具体的には、図3の軸受Aに示したような従来の高速用軸受におけるボールよりも大径のボールを採用することが考えられるが、その場合、軌道面との接触面積の増加やボールの重量増に伴う遠心力の増加により、軸受が発熱しやすくなり、高速回転に不利になる。特に、高速回転で高荷重が伴う条件では、外輪よりも接触面圧が高くて放熱性でも不利な内輪が、より強く発熱する。また、負荷容量を高めるためにはボールの個数は多い方がよいが、多いほど、発熱源であるボール間の距離が短くなって、放熱性も悪くなり、さらに発熱が増加する。
【0005】
また、ボールが大径になると、その分、外輪の肉厚が薄くなるので、高負荷時の外輪軌道面におけるボールの接触位置と非接触位置とで、外輪の外周面における変形の差が大きくなり、振動が大きくなるとともに、加工精度が低下する場合がある。
【0006】
そこで、従来、特許文献1に記載のような冷却技術と、特許文献2に記載のような振動を抑制する技術とを組み合わせた軸受により、高速回転性能と負荷容量との両立を果たそうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-062617号公報
【特許文献2】特開2020-148220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような従来技術による軸受では、適用する工作機械の主軸の構造を大幅に変更したり、複雑化したりする必要があり、従来品と同じ基本寸法での高速回転性能と負荷容量との両立を十分に満足することができなかった。
【0009】
この発明の目的は、軸受の内径、外径、幅の基本寸法が従来品と同じでありながら、高速回転性能と負荷容量を十分に両立できるアンギュラ玉軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアンギュラ玉軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪および外輪の軌道面間に介在する複数のボールと、円筒形状であって前記ボールを円周方向複数箇所に設けられたポケットで保持する保持器とを有し、前記ボールの直径に対する、隣接する前記ボールの中心間の距離から前記ボールの直径を差し引いたボール間距離の比が、0.16以上0.35以下であり、前記外輪の軌道面の溝の直径を前記ボールの直径で除した外輪溝曲率に対する、前記内輪の軌道面の溝の直径を前記ボールの直径で除した内輪溝曲率の比が、0.97以上0.99以下である。
【0011】
高速回転時の軸受の発熱を抑えるためには、内輪溝曲率を外輪溝曲率の0.97以上0.99以下として、より接触面圧が高くなりやすい内輪の接触面圧を外輪の接触面圧と同等程度に抑えつつ、ボール間距離をボールの直径の0.16以上として、放熱性を確保する必要がある。一方、多数のボールにより負荷容量を確保するためには、ボール間距離をボールの直径の0.35以下とする必要がある。本発明のアンギュラ玉軸受は、この条件を満たすので、軸受の内径、外径、幅の基本寸法が従来品と同じでありながら、高速回転時の発熱が抑えられるとともに、負荷容量が確保され、高速回転性能と負荷容量を十分に両立できる。
【0012】
本発明のアンギュラ玉軸受の好ましい構成においては、前記ボールの直径に対する、前記外輪における前記軌道面から外周面までの肉厚の最小値である外輪最小肉厚の比が、0.39以上0.63以下であり、前記外輪の外径から前記内輪の内径を差し引いて2で除した軸受断面高さに対する、前記ボールの直径の比が、0.44以上0.56以下である。
【0013】
外輪の外周面における変形を工作機械の加工に影響が出ない範囲に留めるためには、外輪最小肉厚をボールの直径の0.39以上とし、ボールの直径を軸受断面高さの0.56以下とすることが好ましく、一方、大径のボールにより負荷容量を確保するためには、外輪最小肉厚をボールの直径の0.63以下とし、ボールの直径を軸受断面高さの0.44以上とすることが好ましい。前記好ましい構成はこの条件を満たすので、高速回転時の外輪の外周面における変形に起因する振動が抑えられるとともに、よりいっそう負荷容量が確保される。
【0014】
本発明のアンギュラ玉軸受においては、前記保持器が、外輪の内周面に案内される外輪案内保持器であってもよい。この場合、保持器における、外輪の内周面に案内される案内面に、軸受内の潤滑剤(潤滑油またはグリース)の一部が通過することから、この案内面に過度の摩耗が生じることを防止し得る。したがって、軸受のさらなる高速化を図ることができる。
【0015】
本発明のアンギュラ玉軸受においては、前記保持器が、前記ボールである転動体に案内される転動体案内保持器であってもよい。この場合、外輪の内周面と保持器との径方向の空間を広げ、その広がった空間に、潤滑剤を効率良く保持することができる。
【0016】
また、本発明のアンギュラ玉軸受においては、前記ボールがセラミックス製であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のアンギュラ玉軸受は、工作機械の主軸に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアンギュラ玉軸受は、前記ボールの直径に対する、隣接する前記ボールの中心間の距離から前記ボールの直径を差し引いたボール間距離の比が、0.16以上0.35以下であり、前記外輪の軌道面の溝の直径を前記ボールの直径で除した外輪溝曲率に対する、前記内輪の軌道面の溝の直径を前記ボールの直径で除した内輪溝曲率の比が、0.97以上0.99以下であるので、軸受の内径、外径、幅の基本寸法が従来品と同じでありながら、高速回転時の発熱が抑えられるとともに、負荷容量が確保され、高速回転性能と負荷容量を十分に両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態のアンギュラ玉軸受の縦断面図である。
図2A】同アンギュラ玉軸受の内輪の縦断面図である。
図2B】同アンギュラ玉軸受の外輪の縦断面図である。
図2C】同アンギュラ玉軸受の横断面図である。
図2D図2Cの部分拡大図である。
図3】同アンギュラ玉軸受と従来のアンギュラ玉軸受の比較例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態のアンギュラ玉軸受の縦断面図である。
図5】高速回転試験機の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態のアンギュラ玉軸受について、図にしたがって説明する。図1に示すように、このアンギュラ玉軸受は、内輪1と、外輪2と、これら内輪1および外輪2の軌道面1a,2a間に介在する複数のボール3と、円筒形状であってボール3を円周方向複数箇所に設けられたポケットPtで保持する保持器4とを備える。ボール3は、セラミックス製であることが好ましいが、鋼球でもよい。このアンギュラ玉軸受は、軸受空間に例えば潤滑油を圧縮空気とともに供給するエアオイル潤滑で使用され、潤滑油が、内輪回転による遠心力によって保持器4の内周面4aおよび外輪2の内周面2cに行き渡り、一時的に保持される。保持器4の内周面4aおよび外輪2の内周面2cの潤滑油は、ボール3の表面に付着し、内輪1の軌道面1aおよび保持器4のポケットPtに運ばれることで、長期にわたり、軸受が円滑に回転することが可能となる。
【0021】
保持器4は、外輪2の内周面2c(図1の場合、軸方向左側の内周面2c)に案内される外輪案内保持器である。外輪案内保持器では、保持器4における、外輪2の内周面2cに案内される案内面(図1の場合、軸方向左側の保持器4の外周面4b)に、軸受内の潤滑油の一部が通過することから、この案内面に過度の摩耗が生じることを防止し得る。したがって、軸受のさらなる高速化を図ることができる。
【0022】
保持器4は、ガラス繊維、カーボン繊維等で補強された脂肪族のポリアミド樹脂(ナイロン)、芳香族のポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(略称:PEEK材)、ポリフェニルサルファイド樹脂(略称:PPS材)、フェノール樹脂等の樹脂材料から、形成されている。また、保持器4は、軸心Lを含む平面で切断した断面が矩形状であり、ボール3を保持するポケットPtは、軸方向中央部の円周方向複数箇所に形成されている。保持器4の内周面4aの直径は、ボール3のピッチ円直径PCDよりも小さく設定されている。一方、保持器4の外周面4bの直径は、前記ピッチ円直径PCDよりも大きく、かつ外輪2の内周面2c(図1の場合、軸方向左側の内周面2c)の直径よりも小さく設定されている。
【0023】
ここで、図2Cに示すように、ボール3の直径Da(図1)に対する、隣接するボール3の中心間の距離Pcからボール3の直径Daを差し引いたボール間距離Pdの比Pd/Daが、0.16以上0.35以下であり、好ましくは、0.18以上0.25以下である。なお、図2Cにおける太線の矩形内の拡大図である図2Dに示すように、Pc=2×(PCD/2)× sinαであり、αは、360度をボールの個数で除し、さらに2で除した角度である。
【0024】
また、図2Bに示す外輪2の軌道面2aの溝2gの直径Doをボール3の直径Da(図1)で除した外輪溝曲率Ro(=Do/Da)に対する、図2Aに示す内輪1の軌道面1aの溝1gの直径Diをボール3の直径Daで除した内輪溝曲率Ri(=Di/Da)の比Ri/Ro(=Di/Do)が、0.97以上0.99以下であり、好ましくは、これに加えて、内輪溝曲率Riが1.04以上1.08以下であり、外輪溝曲率Roが1.06以上1.10以下である。
【0025】
さらに、図1に示すように、ボール3の直径Daに対する、外輪2における軌道面2aから外周面2bまでの肉厚の最小値である外輪最小肉厚Tominの比Tomin/Daが、0.39以上0.63以下であり、好ましくは、0.46以上0.57以下である。さらにまた、外輪2の外径から内輪1の内径を差し引いて2で除した軸受断面高さHに対する、ボール3の直径Daの比Da/Hが、0.44以上0.56以下であり、好ましくは、0.48以上0.52以下である。
【0026】
図3は、本実施形態のアンギュラ玉軸受(軸受B,C,D)と従来のアンギュラ玉軸受(軸受A,E)の比較例を示す図である。
従来の軸受Aは、例えば、アンギュラ玉軸受の呼び番号「7014」サイズで、高速回転のための小径ボール仕様である。具体的には、軸受Aのボールの直径は約8.731mm(11/32インチ)、ボールの個数は25個である。
従来の軸受Eは、例えば、アンギュラ玉軸受の呼び番号「7014」サイズで、大径ボール仕様である。具体的には、軸受Eのボールの直径は約11.906mm(15/32インチ)、ボールの個数は21個である。
【0027】
これに対して、本実施形態のアンギュラ玉軸受(軸受B,C,D)は、例えば、アンギュラ玉軸受の呼び番号「7014」サイズで、ボール3の直径Daに対するボール間距離Pdの比Pd/Daが、0.16以上0.35以下であるとともに、外輪溝曲率Roに対する内輪溝曲率Riの比Ri/Roが、0.97以上0.99以下であり、さらに、ボール3の直径Daに対する外輪最小肉厚Tominの比Tomin/Daが、0.39以上0.63以下であるとともに、軸受断面高さHに対するボール3の直径Daの比Da/Hが、0.44以上0.56以下である。
【0028】
これらの呼び番号「7014」の軸受と、同様に諸元を設定した呼び番号「7020」の軸受につき、高速性、高速回転時の振動、負荷容量の評価試験を行い、次の表1の結果を得た。この評価試験は、図5に示すように、4列のアンギュラ玉軸受Bgを背面組合せで構成した主軸を用いて、各軸受Bgにセラミックス製のボールを使用し、VG32(ISO粘度)の潤滑油を使用したエアオイル潤滑で行った。表1において、高速性については、組込後の予圧荷重1400N、回転速度18000rpm、100時間連続回転という第1の条件での評価、高速回転時の振動については、組込後の予圧荷重600N、回転速度0~22000rpmという第2の条件での評価、負荷容量については、第1および第2の条件での評価である。表1における評価基準は以下の通りである。なお、dmn値とは、ボール3のピッチ円直径PCD(mm)に回転速度(rpm)を乗じた値である。
【0029】
<高速性>
◎:回転時の外輪温度上昇が、20℃以下の時、高速性に優れると評価する。
○:回転時の外輪温度上昇が、20℃を超え、25℃以下の時、高速性に問題ないと評価する。
△:回転時の外輪温度上昇が、25℃を超える時、高速性に問題ありと評価する。
<高速回転時の振動>
◎:dmn値200万以下の高速回転時の振動が、同軸受の使用を想定するマシニングセンタの加工精度に影響しない水準である。
○:dmn値160万以下の高速回転時の振動が、同軸受の使用を想定するマシニングセンタの加工精度に影響しない水準である。
△:dmn値140万以下の低中速域の回転時の振動が、同軸受の使用を想定するマシニングセンタの加工精度に影響しない水準である。
<負荷容量> *軸受の内部諸元からの計算値
◎:内部諸元から求めた値が、同軸受の使用を想定するマシニングセンタの重切削加工に、十分余裕をもって単列で受けることができる水準を、負荷容量に優れると評価する。
○:内部諸元から求めた値が、同軸受の使用を想定するマシニングセンタの重切削加工に、単列で受けることができる水準を、負荷容量に問題ないと評価する。
△:内部諸元から求めた値が、同軸受の使用を想定するマシニングセンタの重切削加工に、2列の並列で受ける必要がある水準である。
【0030】
【表1】
【0031】
表1から、本実施形態のアンギュラ玉軸受によれば、軸受の内径、外径、幅の基本寸法が従来品と同じでありながら、高速回転時の発熱が抑えられるとともに、負荷容量が確保されて、高速回転性能と負荷容量を十分に両立でき、さらに、高速回転時の軸受振動が抑えられるとともに、よりいっそう負荷容量が確保されることが明らかである。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態のアンギュラ玉軸受について、図にしたがって説明する。図4に示すように、このアンギュラ玉軸受では、保持器4Aとして、ボール3に案内される転動体案内保持器が採用されているが、その他の構成は、第1実施形態のアンギュラ玉軸受と同様である。第2実施形態のアンギュラ玉軸受によれば、外輪2の内周面2cと保持器4Aとの径方向の空間を広げ、その広がった空間に潤滑油を効率良く保持することができる。
【0033】
なお、本発明のアンギュラ玉軸受は、エアオイル潤滑での使用に限定されず、オイルミスト潤滑、グリース潤滑で使用されてもよい。また、本発明のアンギュラ玉軸受においては、外輪2の内周面2cにおける軸方向両端部または軸方向一端部に、内輪1の外周面1bに対して非接触のシール(図示せず)が設けられていてもよい。例えば、外輪2の内周面2cにシール取付溝が形成され、このシール取付溝に、シールの外径側の基端部が装着されていてもよい。この場合、グリース潤滑での使用において、軸受内部のグリースをより確実に保持することができる。
【0034】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
1…内輪、1a…内輪の軌道面、1g…内輪の軌道面の溝、2外輪、2a…外輪の軌道面、2b…外輪の外周面、2c…外輪の内周面、2g…外輪の軌道面の溝、3…ボール、4,4A…保持器、4a…保持器の内周面、4b…保持器の外周面、Da…ボールの直径、Di…内輪の軌道面の溝の直径、Do…外輪の軌道面の溝の直径、H…軸受断面高さ、Pc…ボールの中心間の距離、Pd…ボール間距離、Pt…保持器のポケット、Ri…内輪溝曲率、Ro…外輪溝曲率、Tomin…外輪最小肉厚
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5