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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141109
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】山留構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
E02D17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041259
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友理
(72)【発明者】
【氏名】中川 太郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】掘削領域内の切梁の数を減少し、または切梁を無くすことができる山留構造の施工方法を提供する。
【解決手段】山留構造100の施工方法は、掘削領域300の少なくとも1面に第1の山留壁110を形成し、第1の山留壁110の外側に、第1の山留壁110と離間して第2の山留壁120を形成する。山留構造100の施工方法は、掘削領域300の少なくとも1面に第1の山留壁110を形成する第1の山留壁形成工程と、第1の山留壁110の外側に、第1の山留壁110と離間して第2の山留壁120を形成する第2の山留壁形成工程と、切梁を設けずに掘削領域300を掘削する掘削工程と、掘削領域の掘削底面に捨てコンクリートを打設する土工事工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削領域の少なくとも1面に第1の山留壁を形成し、
前記第1の山留壁の外側に、前記第1の山留壁と離間して第2の山留壁を形成する、山留構造の施工方法。
【請求項2】
前記第1の山留壁は、前記掘削領域を取り囲むように形成されている、請求項1に記載の山留構造の施工方法。
【請求項3】
前記第1の山留壁は、部材として、鋼矢板、親杭横矢板、鋼管矢板、ソイルセメント、または鉄筋コンクリートを含む、請求項1または請求項2に記載の山留構造の施工方法。
【請求項4】
前記第2の山留壁は、部材として、鋼矢板、鋼管矢板、ソイルセメント、H形鋼、または鉄筋コンクリートを含む、請求項1または請求項2に記載の山留構造の施工方法。
【請求項5】
前記第1の山留壁と前記第2の山留壁とは、同じ部材を用いて形成される、請求項1または請求項2に記載の山留構造の施工方法。
【請求項6】
前記第1の山留壁と前記第2の山留壁とは、異なる部材を用いて形成される、請求項1または請求項2に記載の山留構造の施工方法。
【請求項7】
さらに、接続部材を用いて、前記第1の山留壁の第1の上端部と前記第2の山留壁の第2の上端部とを接続する、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の山留構造の施工方法。
【請求項8】
前記接続部材は、金属、樹脂、コンクリート、ソイルセメント、または木材である、請求項7に記載の山留構造の施工方法。
【請求項9】
前記接続部材は鋼材であって、
前記第1の上端部と前記第2の上端部とは、前記鋼材を溶接することよって接続される、請求項7に記載の山留構造の施工方法。
【請求項10】
前記接続部材はボルトおよびナットであって、
前記第1の上端部と前記第2の上端部とは、前記ボルトおよびナットの締結によって接続される、請求項7に記載の山留構造の施工方法。
【請求項11】
前記接続部材は接続カバーであって、
前記第1の上端部と前記第2の上端部とは、前記接続カバーで覆われることよって接続される、請求項7に記載の山留構造の施工方法。
【請求項12】
前記第1の山留壁と前記第2の山留壁との間隔が0.5m以上5m以下である、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の山留構造の施工方法。
【請求項13】
掘削領域の少なくとも1面に第1の山留壁を形成する第1の山留壁形成工程と、
前記第1の山留壁の外側に、前記第1の山留壁と離間して第2の山留壁を形成する第2の山留壁形成工程と、
切梁を設けずに前記掘削領域を掘削する掘削工程と、
前記掘削領域の掘削底面に捨てコンクリートを打設する土工事工程と、を含む山留構造の施工方法。
【請求項14】
さらに、前記第1の山留壁の第1の上端部と前記第2の山留壁の第2の上端部とを接続する接続部材を設置する接続部材設置工程を含む、請求項13に記載の山留構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、山留構造および山留構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削する際には、地盤が崩れないように山留壁を設けるとともに、その山留壁を切梁で支持する山留構造を用いた山留工事が行われている。例えば、特許文献1では、建物の壁部、山留形成材、内側壁部とからなる山留壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-143302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、掘削の深さが深い場合には、山留壁が受ける地盤の圧力(土圧)が大きくなるため、山留壁を支持する切梁の数が増え、掘削領域における作業空間が狭くなっていた。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、掘削領域内の切梁の数を減少し、または切梁を無くすことができる山留構造の施工方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る山留構造の施工方法は、掘削領域の少なくとも1面に第1の山留壁を形成し、第1の山留壁の外側に、第1の山留壁と離間して第2の山留壁を形成する。
【0007】
第1の山留壁は、掘削領域を取り囲むように形成されていてもよい。
【0008】
第1の山留壁は、部材として、鋼矢板、親杭横矢板、鋼管矢板、ソイルセメント、または鉄筋コンクリートを含んでいてもよい。また、第2の山留壁は、部材として、鋼矢板、鋼管矢板、ソイルセメント、H形鋼、または鉄筋コンクリートを含んでいてもよい。
【0009】
第1の山留壁と第2の山留壁とは、同じ部材を用いて形成されてもよい。また、第2の山留壁と第2の山留壁とは、異なる部材を用いて形成されてもよい。
【0010】
山留構造の施工方法は、さらに、接続部材を用いて、第1の山留壁の第1の上端部と第2の山留壁の第2の上端部とを接続してもよい。
【0011】
接続部材は、金属、樹脂、コンクリート、ソイルセメント、または木材であってもよい。
【0012】
接続部材は鋼材であって、第1の上端部と前記第2の上端部とは、鋼材を溶接することよって接続されてもよい。また、接続部材はボルトおよびナットであって、第1の上端部と第2の上端部とは、ボルトおよびナットの締結によって接続されてもよい。また、接続部材は接続カバーであって、第1の上端部と第2の上端部とは、接続カバーで覆われることによって接続されてもよい。
【0013】
第1の山留壁と第2の山留壁との間隔が0.5m以上5m以下であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る山留構造の施工方法は、掘削領域の少なくとも1面に第1の山留壁を形成する第1の山留壁形成工程と、第1の山留壁の外側に、第1の山留壁と離間して第2の山留壁を形成する第2の山留壁形成工程と、切梁を設けずに掘削領域を掘削する掘削工程と、掘削領域の掘削底面に捨てコンクリートを打設する土工事工程と、を含む。
【0015】
山留構造の施工方法は、さらに、第1の山留壁の第1の上端部と第2の山留壁の第2の上端部とを接続する接続部材を設置する接続部材設置工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る山留構造の施工方法によれば、掘削領域を取り囲む第1の山留壁を形成し、第1の山留壁を取り囲むように第2の山留壁を形成することで、第1の山留壁が受ける地盤からの圧力を低減することができる。そのため、掘削領域内の切梁の数を減少し、または切梁を無くすことができるため、掘削領域の作業空間が広がり、例えば、地下工事における施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る山留構造の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る山留構造の第1の山留壁および第2の山留壁の配置を説明する平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る山留構造の第1の山留壁および第2の山留壁の別の配置を説明する平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る山留構造において、第1の山留壁と第2の山留壁とを接続する接続部を説明する平面図および断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る山留構造において、第1の山留壁と第2の山留壁とを接続する接続部を説明する平面図および断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る山留構造において、第1の山留壁と第2の山留壁とを接続する接続部を説明する平面図および断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る山留構造を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含まれる。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、または形状などが模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状などはあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0019】
本明細書において、説明の便宜上、「上」もしくは「上方」または「下」もしくは「下方」という語句を用いて説明するが、これらの語句は各構成の上下関係を説明しているに過ぎない。例えば、構造物が設置される場合、構造物が通常設置される設置面側を「下」または「下方」とする。
【0020】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0021】
本明細書および図面において、同一または類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これらの複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、小文字または大文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、1つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0022】
以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る山留構造100の斜視図である。
【0024】
山留構造100は、断面が凹凸形状を有する第1の山留壁110および第2の山留壁120が地盤200に埋設された構造を有する。第1の山留壁110は、掘削領域300を取り囲む(少なくとも掘削領域300の1面を含む)ように形成されている。ここで、掘削領域300とは、地盤200が掘削され、区画化される前の領域または区画化された後の領域をいう。図1には、第1の山留壁110が埋設され、地盤200が掘削されて区画化された後の掘削領域300が示されている。第2の山留壁120は、第1の山留壁110の外側(第1の山留壁110が掘削領域300に面する側と反対側)において、第1の山留壁110を取り囲むように形成されている。また、第2の山留壁120は、第1の山留壁110から所定の間隔を有して形成されている。第1の山留壁110の掘削領域300側には、腹起し部材130が架設されている。また、掘削領域300内には、腹起し部材130を支持するように、切梁140が配置されている。切梁140と腹起し部材130とは、切梁140の隅部において、火打ち135によって接続されている。なお、切梁140、腹起し部材、および火打ち135は、設けなくともよい。
【0025】
本実施形態では、第1の山留壁110は、鋼矢板110aの継手と鋼矢板110bの継手とが嵌合され、鋼矢板110aと鋼矢板110bとが交互に複数連結された構造を有する。鋼矢板110aと鋼矢板110bとは同じU字形状を有する鋼矢板であるが、以下では、便宜上、掘削領域300側に凸面および凹面が向いている鋼矢板を、それぞれ、鋼矢板110aおよび鋼矢板110bとして説明する。
【0026】
第2の山留壁120は、第1の山留壁110と同様の構造を有する。すなわち、第2の山留壁120は、鋼矢板120aの継手と鋼矢板120bの継手とが嵌合され、鋼矢板120aと鋼矢板120bとが交互に複数連結された構造を有する。鋼矢板120aと鋼矢板120bとは同じU字形状を有する鋼矢板であるが、以下では、便宜上、第1の山留壁110側に凸面および凹面が向いている鋼矢板を、それぞれ、鋼矢板120aおよび鋼矢板120bとして説明する。
【0027】
鋼矢板110a、110b、120a、および120bの各々は、例えば、振動式杭打装置による振動打設または油圧圧入装置による圧入によって、地盤200に埋設することができる。鋼矢板110a、110b、120a、および120b各々は、全てが地盤に埋設されてもよく、上端部が地盤200から突出されるように埋設されてもよい。
【0028】
なお、図1に示す山留壁は、いわゆる鋼矢板壁である。また、図1には、第1の山留壁110および第2の山留壁120の構成として、いわゆるU形鋼矢板が示されている。但し、山留壁の種類、部材および部材の形状はこれに限られない。第1の山留壁110の種類は、鋼管矢板壁、親杭横矢板壁、ソイルセメント壁、または場所打ち鉄筋コンクリート地中壁などでもよい。第1の山留壁110の部材は、鋼管矢板、横矢板、ソイルセメント、または鉄筋コンクリートなどを用いることもできる。第2の山留壁120の種類は、鋼管矢板壁、ソイルセメント壁、または場所打ち鉄筋コンクリート地中壁などである。第2の山留壁120の部材は、鋼管矢板、ソイルセメント、H形鋼、または鉄筋コンクリートなどを用いることもできる。また、部材の形状もU形に限定されない。例えば、鋼矢板の場合、ハット形または直線形などを用いることもできる。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係る山留構造100の第1の山留壁110および第2の山留壁120の配置を説明する平面図である。
【0030】
図2に示す第1の山留壁110および第2の山留壁120は、鋼矢板110aと鋼矢板120bとが対向し、鋼矢板110bと鋼矢板120aとが対向するように配置されている。すなわち、鋼矢板110aの凹面と鋼矢板120bの凹面とが最大間隔を有して向かい合い、鋼矢板110bの凸面と鋼矢板120aの凸面とが最小間隔を有して向かい合っている。ここで、第1の山留壁110の鋼矢板110aおよび110bの嵌合位置から対向する第2の山留壁120の鋼矢板120aおよび120bの嵌合位置までの距離を、第1の山留壁110と第2の山留壁120との間隔Dとして定義する。言い換えると、第1の山留壁110と第2の山留壁120との断面の中心間の距離を、間隔Dとして定義する。第1の山留壁110と第2の山留壁との間隔Dは、0.5m以上5m以下であり、好ましくは0.5m以上3m以下であり、さらに好ましくは1m以上3m以下である。間隔Dが狭すぎると、一方の鋼矢板を施工する際に、対向する他方の鋼矢板が重機の邪魔になり、一方の鋼矢板を埋設することができない。また、間隔Dが広すぎると、2つの山留壁を形成する効果が低下する。そのため、間隔Dは、上記範囲が好ましい。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係る山留構造100の第1の山留壁110および第2の山留壁120の別の配置を説明する平面図である。
【0032】
図3に示す第1の山留壁110および第2の山留壁120は、鋼矢板110aと鋼矢板120aとが対向し、鋼矢板110bと鋼矢板120bとが対向するように配置されている。すなわち、鋼矢板110aの凹面と鋼矢板120aの凸面とが向かい合い、鋼矢板110bの凸面と鋼矢板120bの凹面とが向かい合っている。鋼矢板110aの凹面と鋼矢板120aの凸面との間隔、および鋼矢板110bの凸面と鋼矢板120bの凹面との間隔は、第1の山留壁110と第2の山留壁120との間隔Dに等しい。
【0033】
山留構造100の施工方法は、例えば、次のとおりである。鋼矢板110aおよび110bを地盤200に埋設し、掘削領域300を取り囲むように第1の山留壁110を形成する(第1の山留壁形成工程)。次に、鋼矢板120aおよび120bを地盤200に埋設し、第1の山留壁110を取り囲むように第2の山留壁120を形成する(第2の山留壁形成工程)。掘削領域300を掘削し、掘削領域300内に腹起し部材130を配置し、火打ち135を用いて切梁140を架設する(掘削工程)。但し、山留構造100の掘削工程においては、後述するように切梁140、腹起し部材130、および火打ち135を設けない構成とすることもできる。また、掘削領域300の掘削底面には、捨てコンクリートを打設する(土工事工程)。なお、第2の山留壁形成工程および掘削工程は、第2の山留壁の種類によって、工程の順序が入れ替わる場合がある。
【0034】
山留構造100は、掘削領域300が掘削されると、第1の山留壁110の掘削領域300側の面が露出される。第1の山留壁110のみの場合では、地盤200からの圧力が大きく、第1の山留壁110が変形しかねない。そのため、切梁140によって第1の山留壁110を支持する必要がある。これに対し、第1の山留壁110だけでなく、第2の山留壁120を有する山留構造100では、第2の山留壁120が地盤200からの圧力を受け、第1の山留壁110の負荷を低減することができる。すなわち、第1の山留壁110の変形量を小さくすることができる。そのため、掘削工程において、第1の山留壁110を支持する切梁140の数を減少し、または切梁140を無くすことができる。これにより、切梁140の施工作業を削減することができるため、コストを削減し、工期を短縮することができる。また、掘削領域300の作業空間が広がるため、地下工事における施工性が向上する。さらに、山留構造100は、2つの山留壁によって掘削領域300を取り囲んでいるため、掘削領域300内の作業において発生する振動を、第1の山留壁110だけでなく、第2の山留壁120によっても吸収することができる。そのため、第1の山留壁110のみの場合より掘削領域300から外部へ伝わる振動を低減することができる。
【0035】
<第2実施形態>
図4図6を参照して、第1実施形態とは異なる山留構造100A~100Cについて説明する。なお、山留構造100A~100Cの構成が、山留構造100の構成と同様であるとき、それらの構成の説明を省略する場合がある。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係る山留構造100Aにおいて、第1の山留壁110と第2の山留壁120とを接続する接続部材150Aを説明する平面図および断面図である。
【0037】
接続部材150Aは、第1の山留壁110の上端部と第2の山留壁120の上端部との間に設けられ、第1の山留壁110と第2の山留壁120とを接続している。具体的には、接続部材150Aは、第1の山留壁110の鋼矢板110bの凸面および第2の山留壁120の鋼矢板120aの凸面に溶接され、鋼矢板110bと鋼矢板120aとを接続している。
【0038】
接続部材150Aは、金属、樹脂、コンクリート、ソイルセメント、または木材などである。接続部材150Aの形状は、円柱、楕円柱、または角柱などであるがこれに限られない。接続部材150Aの形状は、柱状に限らず、平板状、または略コの字形状などであってもよい。例えば、接続部材150Aは、鋼材であって、鋼板または鋼棒などである。
【0039】
なお、図4では、第1の山留壁110の鋼矢板110bと第2の山留壁120の鋼矢板120aとが接続部材150Aによって接続されているが、接続部材150Aの接続位置はこれに限られない。接続部材150Aは、少なくとも第1の山留壁110の鋼矢板110aおよび110bのうちの1つと第2の山留壁120の鋼矢板120aおよび120bのうちの1つとを接続していればよい。
【0040】
また、図3に示す山留構造100に対して接続部材150Aを適用する場合、第1の山留壁110と第2の山留壁120との間隔Dは凸面であっても凹面であっても等しいため、同じ長さの接続部材を用いることができ、施工性が向上する。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態に係る山留構造100Bにおいて、第1の山留壁110と第2の山留壁120とを接続する接続部材150Bを説明する平面図および断面図である。
【0042】
接続部材150Bは、第1の山留壁110の上端部に設けられた孔と第2の山留壁120の上端部に設けられた孔に挿通され、第1の山留壁110と第2の山留壁120とを接続している。接続部材150Bは、例えば、ボルトおよびナットである。ボルトは、第1の山留壁110の鋼矢板110bの孔および第2の山留壁120の鋼矢板120aの孔に挿通され、挿通されたボルトにナットが締結されている。これにより、鋼矢板110bと鋼矢板120aとを接続することができる。
【0043】
なお、図5では、第1の山留壁110の鋼矢板110bと第2の山留壁120の鋼矢板120aとが接続部材150Bによって接続されているが、接続部材150Bの接続位置はこれに限られない。接続部材150Bは、少なくとも第1の山留壁110の鋼矢板110aおよび110bのうちの1つと第2の山留壁120の鋼矢板120aおよび120bのうちの1つとを接続していればよい。
【0044】
図6は、本発明の一実施形態に係る山留構造100Cにおいて、第1の山留壁110と第2の山留壁120とを接続する接続部材150Cを説明する平面図および断面図である。
【0045】
接続部材150Cは、第1の山留壁110の上端部と第2の山留壁120の上端部とを覆うように設けられ、第1の山留壁110と第2の山留壁120とを接続している。接続部材150Cは、例えば、断面が略コの字形状を有する接続カバーである。接続カバーは、対向する両端が屈曲し、2つの屈曲部を有する。接続カバーは、2つの屈曲部の一方が第1の山留壁110の鋼矢板110aの凸面側に位置し、2つの屈曲部の他方が第2の山留壁120の鋼矢板120bの凸面側に位置するように配置される。これにより、鋼矢板110aと鋼矢板120bとを接続することができる。
【0046】
接続部材150Cは、1つの鋼矢板110aの凸面の少なくとも一部と1つの鋼矢板120bの凸面の少なくとも一部とが覆われるように設けられればよい。また、接続部材150Cは、複数の鋼矢板110aの凸面と複数の鋼矢板120bの凸面とが覆われるように設けられていてもよい。
【0047】
なお、接続部材150A~150Cは、例えば、掘削工程の前に、第1の山留壁の上端部と第2の山留壁の上端部とを接続するように設置される(接続部材設置工程)。但し、接続部材設置工程は、掘削工程中または掘削工程の後に行うこともできる。
【0048】
山留構造100A~100Cでは、第1の山留壁110が接続部材150A~150Cによって第2の山留壁120と接続されている。そのため、第2の山留壁120が地盤200からの圧力を受け、第1の山留壁110の負荷を低減できるとともに、掘削領域300が掘削された場合においても、第2の山留壁120が、接続部材150A~150Cを介して第1の山留壁110を支持することができる。そのため、第1の山留壁110の負荷を低減し、第1の山留壁110の変形量を小さくすることができる。また、第1の山留壁110と第2の山留壁120との間の地盤200が一体化されているため、第1の山留壁110のみの場合よりも剛性の高い山留壁として機能することができる。そのため、第1の山留壁110を支持する切梁140の数を減少し、または切梁140を無くすことができる。これにより、切梁140の施工作業を削減することができるため、コストを削減し、工期を短縮することができる。また、掘削領域300の作業空間が広がるため、例えば、地下工事における施工性が向上する。
【0049】
<第3実施形態>
図7を参照して、第1実施形態および第2実施形態とは異なる100Dについて説明する。なお、山留構造100Dの構成が、山留構造100の構成と同様であるとき、その構成の説明を省略する場合がある。
【0050】
図7は、本発明の一実施形態に係る山留構造100Dを説明する平面図である。
【0051】
山留構造100Dは、第1の山留壁110Dおよび第2の山留壁120Dが地盤200に埋設された構造を有する。第1の山留壁110Dと第2の山留壁120Dとは、山留壁の種類が異なる。第1の山留壁110Dは、いわゆる親杭横矢板壁であり、第2の山留壁120Dは、鋼矢板壁である。第1の山留壁110Dは、一定の間隔で親杭170Dが地盤200に埋設され、隣接する2つの親杭170Dの間に複数の横矢板180Dが挿入された構成である。複数の横矢板180Dは、親杭170Dの延在方向(紙面手前から奥方向)に積み重ねられている。親杭170Dは、例えば、H鋼であるが、これに限られない。
【0052】
第1の山留壁110Dおよび第2の山留壁120Dが、それぞれ、親杭横矢板壁および鋼矢板壁である場合、第1の山留壁110Dと第2の山留壁120Dとの間隔Dは、第1の山留壁110Dの横矢板180Dの中心から第2の山留壁120Dの鋼矢板120aおよび120bの嵌合位置までの距離と定義することができる。なお、山留構造100Dの間隔Dの範囲は、第1実施形態で説明した範囲と同様である。
【0053】
第1の山留壁110Dの施工方法は、例えば、次のとおりである。親杭170Dを地盤200に埋設する。親杭170Dの外側において、鋼矢板120Daおよび鋼矢板120Dbを地盤200に埋設し、第2の山留壁120Dを形成する。掘削領域300を掘削しながら、隣接する2つの親杭170の間に複数の横矢板180Dを挿入し、第1の山留壁110Dを形成する。詳細は図示しないが、掘削領域300内に腹起し部材130を配置し、火打ち135を用いて切梁140を架設する。但し、第2の山留壁120Dによって第1の山留壁110Dの負荷が低減されるため、掘削領域300内に切梁140、腹起し部材130、および火打ち135を設けない構成とすることもできる。
【0054】
山留構造100Dでは、第2の山留壁120Dが遮水壁として機能することができる。そのため、第1の山留壁110Dが、遮水性のない親杭横矢板壁であっても、第2の山留壁120Dは、掘削領域300への地下水の侵入を防止することができる。
【0055】
なお、図7では、第2の山留壁120Dとして鋼矢板壁を示したが、第2の山留壁120Dは、上述のとおり遮水壁として機能すればよく、ソイルセメント壁であってもよい。
【0056】
山留構造100Dは、第2の山留壁120Dが遮水壁として機能することができるため、第1の山留壁110Dとしては、遮水性を有しない安価な山留壁を適用することができる。そのため、山留構造100Dは、施工コストを抑制することができる。また、第1の山留壁110Dおよび第2の山留壁120Dを有する山留構造100Dは、第2の山留壁120Dが地盤200からの圧力を受け、第1の山留壁110Dの負荷を低減することができる。すなわち、第1の山留壁110Dの変形量を小さくすることができる。そのため、第1の山留壁110Dを支持する切梁140の数を減少し、または切梁140を無くすことができる。これにより、切梁140の施工作業を削減することができるため、コストを削減し、工期を短縮することができる。また、掘削領域300の作業空間が広がるため、地下工事における施工性が向上する。さらに、山留構造100Dは、2つの山留壁によって掘削領域300を取り囲んでいるため、掘削領域300内の作業において発生する振動を、第1の山留壁110Dだけでなく、第2の山留壁120Dによっても吸収することができる。そのため、第1の山留壁110Dのみの場合より掘削領域300から外部へ伝わる振動を低減することができる。
【0057】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0058】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0059】
100、100A、100B、100C、100D:山留構造、 110、110D:第1の山留壁、 110a:鋼矢板、 110b:鋼矢板、 120、120D:第2の山留壁、 120a:鋼矢板、120b:鋼矢板、 130:腹起し部材、 135:火打ち、 140:切梁、 150A、150B、150C:接続部材、 170D:親杭、 180D:横矢板、 200:地盤、 300:掘削領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7