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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014111
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】モータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/06 20160101AFI20220112BHJP
【FI】
H02P21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116277
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】宮重 敬太
(72)【発明者】
【氏名】上辻 清
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智則
(72)【発明者】
【氏名】片桐 慶大
(72)【発明者】
【氏名】門脇 渉
(72)【発明者】
【氏名】牧志 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康
(72)【発明者】
【氏名】水野 峻史
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 駿介
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505CC04
5H505DD08
5H505EE41
5H505FF08
5H505GG02
5H505GG04
5H505HA05
5H505HA10
5H505HA16
5H505HB02
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505LL09
5H505LL22
5H505LL41
5H505LL50
5H505LL58
(57)【要約】
【課題】モータの制御装置において、弱め界磁制御時、モータのロータがスラスト方向に振動することを抑える。
【解決手段】モータMの回転数ωが所定回転数以上である場合で、かつ、振動検知部16によりロータが振動していることが検知されていない場合、弱め界磁制御において、インバータ回路2の出力電圧が一定の電圧になるように回転数ωに応じて求められる負のd軸電流指令値Id*を出力し、回転数ωが所定回転数以上である場合で、かつ、振動検知部16によりロータが振動していることが検知された場合、弱め界磁制御において、インバータ回路2の出力電圧が一定の電圧になるように回転数ωに応じて求められる負のd軸電流指令値Id*より小さいd軸電流指令値Id*を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転数と回転数指令値との差によりd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力する電流指令値出力部と、
前記モータに流れる電流をd軸電流及びq軸電流に変換する第1の変換部と、
前記d軸電流と前記d軸電流指令値との差が小さくなるようにd軸電圧指令値を算出するとともに前記q軸電流と前記q軸電流指令値との差が小さくなるようにq軸電圧指令値を算出する電流制御部と、
前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を前記モータの各相に対応する電圧指令値に変換する第2の変換部と、
搬送波と前記モータの各相に対応する電圧指令値との比較結果に応じた駆動信号を出力するドライブ回路と、
前記駆動信号によりスイッチング素子がオン、オフすることにより、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータを駆動させるインバータ回路と、
前記モータのスラスト方向に前記モータのロータが振動していることを検知する振動検知部と、
を備え、
前記電流指令値出力部は、前記モータの回転数が所定回転数以上である場合で、かつ、前記振動検知部により前記ロータが振動していることが検知されていない場合、弱め界磁制御において、前記インバータ回路の出力電圧が一定の電圧になるように前記モータの回転数に応じて求められる負のd軸電流指令値を出力し、前記モータの回転数が前記所定回転数以上である場合で、かつ、前記振動検知部により前記ロータが振動していることが検知された場合、弱め界磁制御において、前記インバータ回路の出力電圧が一定の電圧になるように前記モータの回転数に応じて求められる負のd軸電流指令値より小さい負のd軸電流指令値を出力する
ことを特徴とするモータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータの制御装置であって、
前記電流指令値出力部は、前記モータの回転数が前記所定回転数以上である場合で、かつ、前記振動検知部により前記ロータが振動していると検知された場合、前記振動検知部により前記ロータが振動していることが検知されなくなるまで前記負のd軸電流指令値を段階的に小さくする
ことを特徴とするモータの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のモータの制御装置であって、
前記振動検知部は、前記モータに流れる電流の波形または前記電圧指令値の波形を用いて、前記ロータが振動していることを検知する
ことを特徴とするモータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの制御装置として、ベクトル制御によりモータの駆動を制御するとともに、モータの高回転時、d軸電流指令値をマイナスの値にすることにより弱め界磁制御を行うものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、弱め界磁制御によりモータの駆動を制御する場合、磁束が周期的に小さくなるため、ロータをラジアル方向(モータの回転軸方向に対して垂直方向)に引き付ける力が周期的に弱まり、ロータがスラスト方向(モータの回転軸方向)に振動するおそれがある。
【0004】
そのため、上記制御装置では、弱め界磁制御時、ロータがスラスト方向に振動してしまうおそれがある。特に、図6に示すモータのように、モータの回転軸方向(破線)においてステータを基準にロータの全体の形状(斜線網掛け部分)が非対称である場合、弱め界磁制御によりモータの駆動が制御されると、ロータのスラスト方向の振動幅が増加するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-099511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、モータの制御装置において、弱め界磁制御時、ロータがスラスト方向に振動することを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態であるモータの制御装置は、モータの回転数と回転数指令値との差によりd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力する電流指令値出力部と、前記モータに流れる電流をd軸電流及びq軸電流に変換する第1の変換部と、前記d軸電流と前記d軸電流指令値との差が小さくなるようにd軸電圧指令値を算出するとともに前記q軸電流と前記q軸電流指令値との差が小さくなるようにq軸電圧指令値を算出する電流制御部と、前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を前記モータの各相に対応する電圧指令値に変換する第2の変換部と、搬送波と前記モータの各相に対応する電圧指令値との比較結果に応じた駆動信号を出力するドライブ回路と、前記駆動信号によりスイッチング素子がオン、オフすることにより、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータを駆動させるインバータ回路と、前記モータのスラスト方向に前記モータのロータが振動していることを検知する振動検知部とを備える。
【0008】
前記電流指令値出力部は、前記モータの回転数が所定回転数以上である場合で、かつ、前記振動検知部により前記ロータが振動していることが検知されていない場合、弱め界磁制御において、前記インバータ回路の出力電圧が一定の電圧になるように前記モータの回転数に応じて求められる負のd軸電流指令値を出力し、前記モータの回転数が前記所定回転数以上である場合で、かつ、前記振動検知部により前記ロータが振動していることが検知された場合、弱め界磁制御において、前記インバータ回路の出力電圧が一定の電圧になるように前記モータの回転数に応じて求められる負のd軸電流指令値より小さい負のd軸電流指令値を出力する。
【0009】
これにより、弱め界磁制御時、ロータがラジアル方向に引き付けられる力が周期的に弱まることを抑制することができるため、ロータがスラスト方向に振動することを抑制することができる。
【0010】
また、前記電流指令値出力部は、前記モータの回転数が前記所定回転数以上である場合で、かつ、前記振動検知部により前記ロータが振動していると検知された場合、前記振動検知部により前記ロータが振動していることが検知されなくなるまで前記負のd軸電流指令値を段階的に小さくするように構成してもよい。
【0011】
これにより、負のd軸電流指令値Id*を比較的大きな変化幅で一度に小さくする場合に比べて、逆起電力の変動幅を抑えることができるため、モータMの制御性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、前記振動検知部は、前記モータに流れる電流の波形または前記電圧指令値の波形を用いて、前記ロータが振動していることを検知するように構成してもよい。
【0013】
これにより、プログラムなどにより振動検知部を構成することができるため、ロータの振動を直接検知する振動センサを用いて振動検知部を構成する場合に比べて、制御装置の製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータの制御装置において、弱め界磁制御時、ロータがスラスト方向に振動することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態のモータの制御装置の一例を示す図である。
図2】トルク/電流指令値変換部の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】実施形態のモータの制御装置の変形例1を示す図である。
図4】実施形態のモータの制御装置の変形例2を示す図である。
図5】実施形態のモータの制御装置の変形例3を示す図である。
図6】モータの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0017】
図1は、実施形態のモータの制御装置の一例を示す図である。
【0018】
図1に示す制御装置1は、例えば、車両(電動フォークリフトやプラグインハイブリッド車など)に搭載されるモータM(永久磁石同期モータなど)を駆動するための制御装置であって、インバータ回路2と、制御回路3とを備える。なお、モータMは、ロータ(回転子)の位置θ(ロータの基準位置から現在の位置までの位相)を検出し、その検出した位置θを制御回路3に出力する電気角検出部Sp(レゾルバなど)を備えているものとする。
【0019】
インバータ回路2は、電源Pから供給される直流電力を交流電力に変換してモータMを駆動するものであって、コンデンサCと、スイッチング素子SW1~SW6(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など)と、電流センサSi1、Si2とを備える。すなわち、コンデンサCの一方端が電源Pの正極端子及びスイッチング素子SW1、SW3、SW5の各コレクタ端子に接続され、コンデンサCの他方端が電源Pの負極端子及びスイッチング素子SW2、SW4、SW6の各エミッタ端子に接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタ端子とスイッチング素子SW2のコレクタ端子との接続点は電流センサSi1を介してモータMのU相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタ端子とスイッチング素子SW4のコレクタ端子との接続点は電流センサSi2を介してモータMのV相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW5のエミッタ端子とスイッチング素子SW6のコレクタ端子との接続点はモータMのW相の入力端子に接続されている。
【0020】
コンデンサCは、電源Pからインバータ回路2に出力される電圧を平滑する。
【0021】
スイッチング素子SW1は、制御回路3から出力される駆動信号S1がハイレベルであるときオンし、駆動信号S1がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW2は、制御回路3から出力される駆動信号S2がハイレベルであるときオンし、駆動信号S2がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW3は、制御回路3から出力される駆動信号S3がハイレベルであるときオンし、駆動信号S3がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW4は、制御回路3から出力される駆動信号S4がハイレベルであるときオンし、駆動信号S4がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW5は、制御回路3から出力される駆動信号S5がハイレベルであるときオンし、駆動信号S5がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW6は、制御回路3から出力される駆動信号S6がハイレベルであるときオンし、駆動信号S6がローレベルであるときオフする。
【0022】
スイッチング素子SW1~SW6がそれぞれオン、オフすることで、電源Pから出力される直流の電圧が、互いに位相が120度ずつ異なる交流電圧Vu、Vv、Vwに変換される。そして、交流電圧VuがモータMのU相の入力端子に印加され、交流電圧VvがモータMのV相の入力端子に印加され、交流電圧VwがモータMのW相の入力端子に印加されることで、モータMに互いに位相が120度ずつ異なる交流電流Iu、Iv、Iwが流れ、モータMのロータが回転する。
【0023】
電流センサSi1は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、モータMのU相に流れる交流電流Iuを検出して制御回路3に出力する。また、電流センサSi2は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、モータMのV相に流れる交流電流Ivを検出して制御回路3に出力する。
【0024】
制御回路3は、記憶部4と、ドライブ回路5と、演算部6とを備える。
【0025】
記憶部4は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。
【0026】
ドライブ回路5は、IC(Integrated Circuit)などにより構成され、演算部6から出力されるU相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*と搬送波とを比較し、その比較結果に応じた駆動信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。なお、搬送波は、三角波、ノコギリ波(鋸歯状波)、逆ノコギリ波などとする。
【0027】
例えば、ドライブ回路5は、U相電圧指令値Vu*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S1を出力するとともにローレベルの駆動信号S2を出力し、U相電圧指令値Vu*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S1を出力するとともにハイレベルの駆動信号S2を出力する。また、ドライブ回路5は、V相電圧指令値Vv*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S3を出力するとともにローレベルの駆動信号S4を出力し、V相電圧指令値Vv*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S3を出力するとともにハイレベルの駆動信号S4を出力する。また、ドライブ回路5は、W相電圧指令値Vw*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S5を出力するとともにローレベルの駆動信号S6を出力し、W相電圧指令値Vw*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S5を出力するとともにハイレベルの駆動信号S6を出力する。
【0028】
演算部6は、マイクロコンピュータなどにより構成され、回転数演算部7と、減算部8と、トルク制御部9と、トルク/電流指令値変換部10と、座標変換部11(第1の変換部)と、減算部12と、減算部13と、電流制御部14と、座標変換部15(第2の変換部)と、振動検知部16とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部4に記憶されているプログラムを実行することにより、回転数演算部7、減算部8、トルク制御部9、トルク/電流指令値変換部10、座標変換部11、減算部12、減算部13、電流制御部14、座標変換部15、及び振動検知部16が実現される。
【0029】
回転数演算部7は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いて、回転数ωを演算する。例えば、回転数演算部7は、位置θを所定時間(演算部6の動作クロックなど)で除算することにより回転数ωを求める。
【0030】
減算部8は、外部から入力される回転数指令値ω*と回転数演算部7から出力される回転数ωとの差Δωを算出する。
【0031】
トルク制御部9は、減算部7から出力される差Δωを用いて、トルク指令値T*を求める。例えば、トルク制御部9は、記憶部4に記憶されている、モータMの回転数とモータMのトルクとが互いに対応付けられている情報を参照して、差Δωに相当する回転数に対応するトルクをトルク指令値T*として求める。
【0032】
トルク/電流指令値変換部10は、トルク制御部9から出力されるトルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に変換する。例えば、トルク/電流指令値変換部10は、記憶部4に記憶されている、モータMのトルクとd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とが互いに対応付けられている情報を参照して、トルク指令値T*に相当するトルクに対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を求める。なお、トルク制御部9及びトルク/電流指令値変換部10により電流指令値出力部が構成されるものとする。すなわち、電流指令値出力部は、モータMの回転数ωと回転数指令値ω*との差Δωによりd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力する。
【0033】
座標変換部11は、電流センサSi1により検出される交流電流Iu及び電流センサSi2により検出される交流電流Ivを用いて、モータMのW相に流れる交流電流Iwを求める。なお、電流センサSi1、Si2により検出される電流は、交流電流Iu、Ivの組み合わせに限定されず、交流電流Iv、Iwの組み合わせ、または、交流電流Iu、Iwの組み合わせでもよい。電流センサSi1、Si2により交流電流Iv、Iwが検出される場合、座標変換部11は、交流電流Iv、Iwを用いて、交流電流Iuを求める。また、電流センサSi1、Si2により交流電流Iu、Iwが検出される場合、座標変換部11は、交流電流Iu、Iwを用いて、交流電流Ivを求める。
【0034】
また、座標変換部11は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いて、交流電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id(逆起電力を制御するための電流成分)及びq軸電流Iq(トルクを制御するための電流成分)に変換する。例えば、座標変換部11は、下記式1に示す変換行列C1を用いて、交流電流Iu、Iv、Iwを、d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。
【0035】
【数1】
【0036】
また、インバータ回路2において、電流センサSi1、Si2の他に、モータMのW相に流れる交流電流Iwを検出する電流センサSi3をさらに備える場合、座標変換部11は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いて、電流センサSi1~Si3により検出される交流電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換するように構成してもよい。
【0037】
減算部12は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるd軸電流指令値Id*と、座標変換部11から出力されるd軸電流Idとの差ΔIdを算出する。
【0038】
減算部13は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるq軸電流指令値Iq*と、座標変換部11から出力されるq軸電流Iqとの差ΔIqを算出する。
【0039】
電流制御部14は、減算部12から出力される差ΔId及び減算部13から出力される差ΔIqを用いたPI(Proportional Integral)制御によりd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。例えば、電流制御部14は、下記式2を用いてd軸電圧指令値Vd*を算出するとともに、下記式3を用いてq軸電圧指令値Vq*を算出する。なお、KpはPI制御の比例項の定数とし、KiはPI制御の積分項の定数とし、LqはモータMを構成するコイルのq軸インダクタンスとし、LdはモータMを構成するコイルのd軸インダクタンスとし、ωは回転数演算部7から出力される回転数とし、Keは誘起電圧定数とする。
【0040】
d軸電圧指令値Vd*=Kp×差ΔId+Ki×∫(差ΔId)-ωLqIq
・・・式2
q軸電圧指令値Vq*=Kp×差ΔIq+Ki×∫(差ΔIq)+ωLdId+ωKe
・・・式3
【0041】
すなわち、電流制御部14は、d軸電流Idとd軸電流指令値Id*との差ΔIdが小さくなるようにd軸電圧指令値Vd*を算出するとともにq軸電流Iqとq軸電流指令値Iq*との差ΔIqが小さくなるようにq軸電圧指令値Vq*を算出する。
【0042】
座標変換部15は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。例えば、座標変換部15は、下記式4に示す変換行列C2を用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。
【0043】
【数2】
【0044】
振動検知部16は、電流センサSi1により検出される交流電流Iu及び電流センサSi2により検出される交流電流Ivの各波形を用いて、モータMのロータがスラスト方向に振動していることを検知する。なお、振動検知部16は、座標変換部11から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iqの各波形を用いて、モータMのロータがスラスト方向に振動していることを検知するように構成してもよい。または、振動検知部16は、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*の各波形を用いて、モータMのロータがスラスト方向に振動していることを検知するように構成してもよい。例えば、振動検知部16は、交流電流Iu及び交流電流Iwの各波形、d軸電流Id及びq軸電流Iqの各波形、または、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*の各波形が所定の波形と異なる場合、ロータがスラスト方向に振動していることを検知する。なお、所定の波形は、弱め界磁制御時において、ロータのスラスト方向の振動幅が比較的小さいときの交流電流Iu及び交流電流Iwの各波形、d軸電流Id及びq軸電流Iqの各波形、または、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*の各波形とし、実験やシミュレーションなどにより予め求められているものとする。
【0045】
図2は、トルク/電流指令値変換部10の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図2に示すフローチャートは、演算部6の動作クロック毎に行われるものとする。
【0046】
まず、トルク/電流指令値変換部10は、上述したように、トルク制御部9から出力されるトルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に変換する(ステップS1)。
【0047】
次に、トルク/電流指令値変換部10は、回転数演算部7から出力される回転数ωが所定回転数より小さい場合(ステップS2:No)、ステップS1で求めたd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を減算部12、13に出力して、今回の動作クロックにおけるトルク/電流指令値変換部10の動作を終了する。すなわち、制御装置1は、回転数演算部7から出力される回転数ωが所定回転数より小さい場合、弱め界磁制御を行わず、通常のベクトル制御によりモータMの駆動を制御する。なお、所定回転数は、モータMの駆動時に生じる逆起電力がインバータ回路2の出力電圧と等しくなるときの回転数ωとする。
【0048】
また、トルク/電流指令値変換部10は、回転数ωが所定回転数以上である場合で(ステップS2:Yes)、かつ、振動検知部16によりモータMのロータがスラスト方向に振動していることが検知されていない場合(ステップS3:No)、弱め界磁制御において、インバータ回路2の出力電圧が一定の電圧になるように回転数ωに応じて求められる負のd軸電流指令値Id*を出力する(ステップS4)。d軸電流指令値Id*を負の値にすることによって、すなわち、電流進角を大きくすることによって、逆起電力を小さくさせることができる。そのため、弱め界磁制御において、インバータ回路2の出力電圧が一定の電圧になるように、回転数ωの増加に応じて負のd軸電流指令値Id*を大きくすることにより、回転数ωの増加に伴って逆起電力を小さくすることができるため、回転数指令値ω*が比較的大きい場合であっても、回転数ωを回転数指令値ω*に追従させることができる。
【0049】
なお、ステップS4において、トルク/電流指令値変換部10は、ステップS1で求めたq軸電流指令値Iq*をそのまま出力してもよいし、d軸電流指令値Id*の変化に応じてq軸電流指令値Iq*を変化させてもよい。
【0050】
また、トルク/電流指令値変換部10は、回転数ωが所定回転数以上である場合で(ステップS2:Yes)、かつ、振動検知部16によりロータがスラスト方向に振動していることが検知された場合(ステップS3:Yes)、弱め界磁制御において、インバータ回路2の出力電圧が一定の電圧になるように回転数ωに応じて求められる負のd軸電流指令値Id*より小さい負のd軸電流指令値Id*sを出力する(ステップS5)。例えば、トルク/電流指令値変換部10は、ステップS4で出力した負のd軸電流指令値Id*を記憶部4に記憶しておき、ステップS5において、記憶部4に記憶した負のd軸電流指令値Id*を出力する。なお、振動検知部16によりロータがスラスト方向に振動していることが検知されていないときに求められる負のd軸電流指令値Id*は、振動検知部16によりロータがスラスト方向に振動していることが検知されたときに求められる負のd軸電流指令値Id*より大きいものとする。トルク/電流指令値変換部10から出力される負のd軸電流指令値Id*が小さくなるに従って、すなわち、電流進角が小さくなるに従って、逆起電力が大きくなる。そのため、弱め界磁制御において、負のd軸電流指令値Id*を小さくする分、モータMに生じる逆起電力を大きくすることができるため、ロータをラジアル方向に引き付ける力が周期的に弱まることを抑制することができる。
【0051】
また、トルク/電流指令値変換部10は、回転数ωが所定回転数以上である場合で(ステップS2:Yes)、かつ、振動検知部16によりロータがスラスト方向に振動していることが検知された場合(ステップS3:Yes)、振動検知部16によりロータが振動していることが検知されなくなるまで負のd軸電流指令値Id*を段階的に小さくするように構成してもよい。例えば、トルク/電流指令値変換部10は、ステップS4で出力した負のd軸電流指令値Id*を記憶部4に記憶しておき、ステップS5を実行する度に、出力する負のd軸電流指令値Id*を、記憶部4に記憶した負のd軸電流指令値Id*に徐々に近づける。このように、弱め界磁制御において、振動検知部16によりロータが振動していることが検知されなくなるまで負のd軸電流指令値Id*を段階的に小さくすることにより、負のd軸電流指令値Id*を比較的大きな変化幅で一度に小さくする場合に比べて、逆起電力の変動幅を抑えることができるため、モータMの制御性の低下を抑制することができる。
【0052】
なお、ステップS5において、トルク/電流指令値変換部10は、ステップS1で求めたq軸電流指令値Iq*をそのまま出力してもよいし、d軸電流指令値Id*の変化に応じてq軸電流指令値Iq*を変化させてもよい。
【0053】
実施形態の制御装置1では、弱め界磁制御において、ロータをラジアル方向に引き付ける力が周期的に弱まることを抑制することができるため、弱め界磁制御によりモータMのスラスト方向においてロータが振動することを抑制することができる。
【0054】
また、実施形態の制御装置1では、モータMに流れる交流電流Iu、Ivの各波形や電圧指令値Vd*、Vq*の各波形を用いて、ロータが振動していることを検知する構成であるため、プログラムなどにより振動検知部16を構成することができ、ロータの振動を直接検知する振動センサを用いて振動検知部16を構成する場合に比べて、制御装置1の製造コストを抑えることができる。
【0055】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0056】
<変形例1>
図3は、実施形態のモータMの制御装置1の変形例1を示す図である。なお、図3において、図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
図3に示す制御装置1において、図1に示す制御装置1と異なる点は、ロータのスラスト方向の振動を直接検知する振動センサにより振動検出部16を構成している点である。
【0058】
このように構成しても、弱め界磁制御において、ロータをラジアル方向に引き付ける力が周期的に弱まることを抑制することができるため、弱め界磁制御によりスラスト方向においてロータが振動することを低減することができる。
【0059】
<変形例2>
図4は、実施形態のモータMの制御装置1の変形例2を示す図である。なお、図4において、図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
図4に示す制御装置1において、図1に示す制御装置1と異なる点は、演算部6において、回転数演算部7の替わりに推定部17を備えている点である。例えば、マイクロコンピュータが記憶部4に記憶されているプログラムを実行することにより、推定部17が実現される。
【0061】
推定部17は、座標変換部11から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iq、並びに、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を用いて、回転数ω及び位置θを推定する。例えば、推定部17は、下記式5に示す電圧方程式を用いて回転数ωを求め、その求めた回転数ωに所定時間(演算部6の動作クロックなど)を乗算することにより位置θを求める。なお、RはモータMを構成するコイルの抵抗成分とし、pは微分演算子とする。
【0062】
【数3】
【0063】
このように構成しても、弱め界磁制御において、ロータをラジアル方向に引き付ける力が周期的に弱まることを抑制することができるため、弱め界磁制御によりスラスト方向においてロータが振動することを低減することができる。
【0064】
<変形例3>
図5は、実施形態のモータMの制御装置1の変形例3を示す図である。なお、図5において、図4に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図5に示す制御装置1において、図4に示す制御装置1と異なる点は、ロータのスラスト方向の振動を直接検知する振動センサにより振動検出部16を構成している点である。
【0066】
このように構成しても、弱め界磁制御において、ロータをラジアル方向に引き付ける力が周期的に弱まることを抑制することができるため、弱め界磁制御によりスラスト方向においてロータが振動することを低減することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 制御装置
2 インバータ回路
3 制御回路
4 記憶部
5 ドライブ回路
6 演算部
7 回転数演算部
8 減算部
9 トルク制御部
10 トルク/電流指令値変換部
11 座標変換部
12 減算部
13 減算部
14 電流制御部
15 座標変換部
16 振動検知部
17 推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6