(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141110
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220921BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20220921BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220921BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220921BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220921BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20220921BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L29/78 301Y
H01L29/78 301B
H01L29/78 301W
H01L21/265 601A
H01L29/78 301D
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
H01L29/78 653A
H01L21/316 X
H01L21/314 M
H01L21/314 A
H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041262
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】大内 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】辻 英徳
【テーマコード(参考)】
5F045
5F058
5F140
【Fターム(参考)】
5F045AA03
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB32
5F045AF04
5F045BB16
5F045DC51
5F045DC55
5F045EE19
5F058BA01
5F058BB01
5F058BC02
5F058BC03
5F058BD01
5F058BD04
5F058BD05
5F058BF02
5F058BJ01
5F140AC23
5F140BA06
5F140BB04
5F140BD01
5F140BD05
5F140BD09
5F140BD10
5F140BD11
5F140BD13
5F140BD16
5F140BE02
5F140BE09
5F140BE10
5F140BE16
5F140BF04
5F140BF33
5F140BF43
5F140BF51
5F140BG28
5F140BJ01
5F140BJ05
5F140BJ06
(57)【要約】
【課題】トラップ準位の形成を抑制することができる窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置は、窒化ガリウム層と、窒化ガリウム層上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備える。ゲート絶縁膜は、窒化ガリウム層と接する第1絶縁膜と、第1絶縁膜とゲート電極との間に位置する第2絶縁膜と、を有する。第1絶縁膜は、アルミニウム及びガリウムの少なくとも一方と、酸素とを含み、コランダム型に結晶化した領域を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム層と、
前記窒化ガリウム層上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備え、
前記ゲート絶縁膜は、
前記窒化ガリウム層と接する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜と前記ゲート電極との間に位置する第2絶縁膜と、を有し、
前記第1絶縁膜は、
アルミニウム及びガリウムの少なくとも一方と、酸素とを含み、コランダム型に結晶化した領域を含む、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁膜に含まれるアルミニウムの総量は、前記第1絶縁膜に含まれるガリウムよりも多い、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記第1絶縁膜の膜厚は、0.5nm以上100nm以下である、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜は、ボロン、アルミニウム、シリコン、ガリウム、チタン、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、及びタングステンのいずれか1種類以上を含む酸化物又は酸窒化物である、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜において、
前記コランダム型に結晶化した領域の割合は10%以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記第1絶縁膜は、前記窒化ガリウム層と前記第1絶縁膜との界面から前記第1絶縁膜側へ1nm以内の範囲に位置する界面近傍部、を有し、
前記界面近傍部において、前記コランダム型に結晶化した領域の割合は10%以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
窒化ガリウム層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極を形成する工程と、を備え、
前記ゲート絶縁膜を形成する工程は、
前記窒化ガリウム層と接する第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜及び前記窒化ガリウム層に熱処理を施して、前記第1絶縁膜の少なくとも一部をコランダム型に結晶化させる工程と、
前記熱処理が施された前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程と、を含み、
前記熱処理が施される前の前記第1絶縁膜は酸化アルミニウム膜である、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1絶縁膜を形成する工程では、原子層堆積法(ALD法)によりアモルファスの前記酸化アルミニウム膜を形成する、請求項7に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理は、最大温度が850℃以上の高温熱処理である、請求項7又は8に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)層上に絶縁膜を形成する場合、GaN層と絶縁膜との界面には自然酸化膜(Ga酸化膜)を含む遷移層が形成される。Ga酸化膜を含む遷移層が形成された領域では、空間的に局在したトラップ準位がGaN層のバンドギャップ内に形成され、キャリアのトラップ源となる。例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のチャネル領域にトラップ源が存在すると、キャリアの移動度が低下し、デバイスの電気特性が低下する可能性がある。
【0003】
なお、絶縁膜の成膜プロセスを改善して、遷移層の厚さを低減する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GaN層上に絶縁膜を形成する場合は、予め、GaN層の表面が薬液等で洗浄される。洗浄後のGaN層表面が酸素等を含む雰囲気(例えば、フィルタを通した空気)に晒されると、自然酸化膜(Ga酸化膜)が短時間のうちに形成される。このため、一般のプロセスでは、GaN層と絶縁膜との界面から自然酸化膜を完全に排除することは難しく、この界面におけるGaNのバンドギャップ内には、自然酸化膜に由来するトラップ準位が形成され易い。トラップ準位が形成されると、キャリアの移動度が低下したり、閾値電圧が変動したりするなど、電界効果による制御性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、トラップ準位の形成を抑制することができる窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る窒化物半導体装置は、窒化ガリウム層と、前記窒化ガリウム層上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備える。前記ゲート絶縁膜は、前記窒化ガリウム層と接する第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜と前記ゲート電極との間に位置する第2絶縁膜と、を有する。前記第1絶縁膜は、アルミニウム及びガリウムの少なくとも一方と、酸素とを含み、コランダム型に結晶化した領域を含む。
【0008】
本発明の一態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、窒化ガリウム層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極を形成する工程と、を備える。前記ゲート絶縁膜を形成する工程は、前記窒化ガリウム層と接する第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜及び前記窒化ガリウム層に熱処理を施して、前記第1絶縁膜の少なくとも一部をコランダム型に結晶化させる工程と、前記熱処理が施された前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程と、を含む。前記熱処理が施される前の前記第1絶縁膜は酸化アルミニウム膜である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トラップ準位の形成を抑制することができる窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、ゲート絶縁膜とその周辺部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1絶縁膜であって、GaN層と第1絶縁膜との界面付近に位置する界面近傍部を、GaN層の表面に平行な平面で切断した断面を例示する図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示すフローチャートである。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図6E】
図6Eは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態1に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaN層に設けられたウェル領域と、第1絶縁膜のコランダム型に結晶化した領域とが接する界面付近の、原子の結合状態を示すモデル図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すGaN/α-(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3界面におけるGaNのエネルギーバンドを示す図である。
【
図9】
図9は、参考例1に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaNとα-Ga
2O
3とが接する界面付近の原子の結合状態を示すモデル図である。
【
図10】
図10は、
図9に示すGaN/α-Ga
2O
3界面におけるGaNのエネルギーバンドを示す図である。
【
図11】
図11は、参考例2に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaNとγ-Ga
2O
3とが接する界面付近の原子の結合状態を示すモデル図である。
【
図12】
図12は、
図11に示すGaN/γ-Ga
2O
3界面におけるGaNのエネルギーバンドを示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの構成例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、GaNと絶縁膜との界面(すなわち、Ga酸化膜を含む界面遷移層)において、Ga酸化膜がコランダム型のGa2O3(すなわち、α-Ga2O3)の構造をとれば、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることを抑制することができる、ということを第一原理計算から見出した。
【0012】
すなわち、上記界面において、Ga酸化膜が例えばγ-Ga2O3の構造をとる場合、GaNのギャップ内にトラップ準位が形成される。このトラップ準位は、MOSFETにおける移動度の低下やしきい値電圧の変動など、電界効果による制御性低下の原因になる。本発明者は、GaNの表面に絶縁膜としてコランダム型のAl2O3(α-Al2O3)を含む層を形成し、GaNの表面を覆っていたGa酸化膜をコランダム型のAl2O3(α-Al2O3)に取り込み、α-Ga2O3に対応する状態密度を形成することで、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることを抑制することができる、ということを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
また、以下の説明では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の文言を用いて、方向を説明する場合がある。例えば、X軸方向又はY軸方向は、GaN層12の表面12aに平行な方向である。X軸方向、Y軸方向、又は、X軸方向及びY軸方向の両方を水平方向と呼んでもよい。Z軸方向は、表面12aの法線方向である。Z軸方向は、GaN層12の厚さ方向でもある。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
【0015】
また、以下の説明では、Z軸の矢印方向を「上」と称し、Z軸の矢印の反対方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
【0016】
また、以下の説明で、p又はnは、それぞれ正孔又は電子が多数キャリアであることを意味する。また、pやnに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。但し、同じpとp(又は、nとn)とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0017】
<実施形態1>
(構成例)
図1は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の構成例を示す平面図である。
図2は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の構成例を示す断面図である。
図2は、
図1の平面図をX1-X´1線で切断した断面を示している。
【0018】
図1及び
図2に示すGaN半導体装置100は、例えばパワー半導体デバイスであり、窒化ガリウム基板(以下、GaN基板)10と、GaN基板10に設けられた複数の縦型MOSFET1と、を備える。GaN半導体装置100では、縦型MOSFET1が一方向(例えば、X軸方向)に繰り返し設けられている。1つの縦型MOSFET1が繰り返しの単位構造であり、この単位構造が一方向(例えば、X軸方向)に並んで配置されている。
【0019】
複数の単位構造が設けられた領域を活性領域と称する。図示しないが、活性領域の周囲には、活性領域における電界集中を防ぐ機能を有するエッジ終端構造が設けられている。エッジ終端構造は、ガードリング構造、フィールドプレート構造及びJTE(Junction Termination ExtenSiOn)構造の1つ以上を含んでよい。
【0020】
図1及び
図2に示すように、縦型MOSFET1は、GaN基板10上に設けられたゲート絶縁膜5と、ゲート絶縁膜5上に設けられたゲート電極6と、GaN基板10に設けられたソース電極7及びドレイン電極8と、を有する。
【0021】
GaN基板10は、例えば、GaN単結晶基板11と、GaN単結晶基板11上に設けられたGaN層12(本発明の「窒化ガリウム層」の一例)とを有する。
図1に示すように、GaN層12の表面12aは、GaN基板10の表面10aでもある。GaN層12の表面12aの反対側に位置する裏面12bは、GaN単結晶基板11と接触している。GaN単結晶基板11の裏面11bは、GaN基板10の裏面10bでもある。
【0022】
GaN単結晶基板11の導電型は、例えばn+型である。GaN単結晶基板11に含まれるn型ドーパントは、Si(シリコン)、O(酸素)及びGe(ゲルマニウム)のうちの1種類以上の元素であり、一例を挙げるとOである。GaN単結晶基板11におけるOの不純物濃度は2×1018/cm3以上である。
【0023】
なお、GaN単結晶基板11は、転位密度が1E+7/cm2未満の低転位自立基板であってもよい。GaN単結晶基板11が低転位自立基板であることにより、GaN単結晶基板11上に形成されるGaN層12の転位密度も低くなる。また、GaN単結晶基板11に低転位自立基板を用いることで、GaN単結晶基板11に大面積のパワーデバイスが形成される場合でも、パワーデバイスにおけるリーク電流を少なくすることができる。これにより、製造装置は、パワーデバイスを高い良品率で製造することができる。また、熱処理において、イオン注入された不純物が転位に沿って深く拡散することを防止することができる。なお、E+は、指数表記である。例えば、1E+7は、1×107を意味する。
【0024】
GaN層12は、GaN単結晶基板11上に設けられている。GaN層12は、n-型のGaN単結晶層であり、GaN単結晶基板11上にエピタキシャル成長法で形成された層である。GaN層12に含まれるn型ドーパント(n型不純物)は、Si(シリコン)、O(酸素)及びGe(ゲルマニウム)のうちの1種類以上の元素であり、一例を挙げるとOである。
【0025】
GaN層12の表面12a側には、p-型のウェル領域13と、n+型のソース領域14と、p+型のコンタクト領域16と、が設けられている。GaN層12において、ウェル領域13とソース領域14とコンタクト領域16とが設けられていない領域を、ドリフト領域と呼んでもよい。ドリフト領域は、GaN単結晶基板11とウェル領域13との間の電流経路として機能する。
【0026】
ウェル領域13は、GaN層12の表面12a側からp型ドーパント(p型不純物)がイオン注入され、熱処理によりp型ドーパントが活性化されて形成される。p型ドーパントは、例えばマグネシウム(Mg)である。ウェル領域13は、GaN層12の表面12aに面している。また、ウェル領域13は、水平方向において、ソース領域14と隣接する第1側面と、ゲート絶縁膜5直下のドリフト領域と接する第2側面とを有する。ウェル領域13において、第1側面と第2側面との間に位置し、かつゲート絶縁膜5との接触界面及びその近傍に、縦型MOSFET1のチャネルが形成される。以下、ウェル領域13においてチャネルが形成される領域を、チャネル領域CRという。
【0027】
例えば、チャネル領域CRは、ゲート絶縁膜5と接する表面12aから裏面12b側へ20nm以内の範囲に位置する。チャネル領域CRにおけるp型ドーパント(例えば、Mg)の濃度は、チャネル領域CRに含まれるn型ドーパントよりも多く、一例を挙げると、1E+16/cm3以上である。
【0028】
ソース領域14は、GaN層12の表面12a側からn型ドーパントがイオン注入され、熱処理によりn型ドーパントが活性化されて形成される。n型ドーパントは、例えばSi、O及びGeのうちの1種類以上の元素である。ソース領域14は、GaN層12の表面12aに面しており、ウェル領域13の内側に位置する。ソース領域14の側部と底部は、ウェル領域13に接している。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向において、ソース領域14とウェル領域13は互いに接している。
【0029】
p+型のコンタクト領域16は、GaN層12の表面12a側からp型ドーパントがイオン注入され、熱処理によりp型ドーパントが活性化されて形成される。p型ドーパントは、例えばMgである。コンタクト領域16は、GaN層12の表面12aに面しており、ウェル領域13の内側に位置する。コンタクト領域16の少なくとも底部は、ウェル領域13に接している。Z軸方向において、コンタクト領域16とウェル領域13は互いに接している。
【0030】
図3は、ゲート絶縁膜5とその周辺部を拡大して示す断面図である。
図2及び
図3に示すように、ゲート絶縁膜5は、GaN層12の表面12aと接する第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51とゲート電極6との間に位置する第2絶縁膜52と、を有する。
【0031】
第1絶縁膜51は、GaN層12の表面12a上にアモルファスの酸化アルミニウム(Al2O3)膜が形成され、高温熱処理が施されることにより形成された膜である。第1絶縁膜51が形成される前に、GaN層12の表面12aを覆っていた自然酸化膜(Ga酸化膜)は、Al2O3膜が形成され、高温熱処理が施されることによって、Al2O3膜に取り込まれ、Al2O3膜と混晶化される。その結果、第1絶縁膜51の組成は、例えば、(Al0.9Ga0.1)2O3となる。第1絶縁膜51に含まれるAlの総量は、第1絶縁膜51に含まれるGaよりも多い。第1絶縁膜51の膜厚は、例えば0.5nm以上100nm以下であり、一例を示すと、2nmである。
【0032】
また、上記の高温熱処理により、第1絶縁膜51の少なくとも一部(すなわち、一部又は全部)は、コランダム型に結晶化した領域511となる。コランダム型に結晶化した領域511は、Al
2O
3膜と自然酸化膜(Ga酸化膜)とが混晶、結晶化した領域であり、Al及びGaの少なくとも一方と、酸素(O)とを含む。
図3では、第1絶縁膜51の一部がコランダム型に結晶化した状態を例示している。
【0033】
図4は、第1絶縁膜51であって、GaN層12と第1絶縁膜51との界面付近に位置する部分(以下、界面近傍部)510を、GaN層12の表面12aに平行な平面(例えば、X-Y平面)で切断した断面を例示する図である。
図4に示すように、熱処理後の第1絶縁膜51は、コランダム型に結晶化した領域511と、コランダム型に結晶化していない領域512とを有する。コランダム型に結晶化していない領域512は、例えばアモルファスのAl
2O
3膜である。
【0034】
第1絶縁膜51において、コランダム型に結晶化した領域511の割合は10%以上であることが好ましい。例えば、GaN層12の表面12aの法線方向(例えば、Z軸方向)からの平面視で、コランダム型に結晶化した領域511の面積をS1とし、コランダム型に結晶化していない領域512の面積をS2としたとき、S1÷(S1+S2))×100は10%以上であることが好ましい。これにより、後述の
図8に示すように、GaN層12と第1絶縁膜51との界面において、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることを抑制することができる。
【0035】
また、特に、第1絶縁膜51の界面近傍部510において、コランダム型に結晶化した領域511の割合が高いことが好ましい。例えば、第1絶縁膜51の界面近傍部510では、コランダム型に結晶化した領域511の割合が10%以上であることが好ましい。界面近傍部510で、S1÷(S1+S2))×100が10%以上であることが好ましい。これにより、後述の
図8に示すように、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることをさらに抑制することができる。なお、界面近傍部510は、例えば、GaN層12と第1絶縁膜51との界面から第1絶縁膜51側へ1nm以内に位置する部分である。
【0036】
図2及び
図3に示すように、第1絶縁膜51上に第2絶縁膜52が設けられている。第2絶縁膜52は、例えば酸化シリコン(SiO
2)膜である。第2絶縁膜52の膜厚は、例えば、第1絶縁膜51及び第2絶縁膜52をゲート絶縁膜5とするMOSFETに求められる閾値等に応じて任意に設定される。
【0037】
なお、第2絶縁膜52は、SiO2膜に限定されない。第2絶縁膜52は、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)のいずれか1種類以上を含む酸化物又は酸窒化物であってもよい。また、第2絶縁膜52は、単層膜に限定されない。第2絶縁膜52は、上記のいずれか1種類以上を含む酸化物又は酸窒化物に、他の膜を積層した積層膜であってもよい。
【0038】
ゲート電極6は、ゲート絶縁膜5上に設けられている。ゲート電極6は、平坦なゲート絶縁膜5上に設けられたプレーナ型の電極である。ゲート電極6は、例えば不純物をドープしたポリシリコンで形成されている。
【0039】
図2に示すように、ソース電極7は、n+型のソース領域14上からp+型のコンタクト領域16上にかけて連続して設けられており、ソース領域14及びコンタクト領域16とそれぞれ電気的に接続している。図示しないが、ソース電極7は、層間絶縁膜を介してゲート電極6を覆うように設けられてもよい。ソース電極7は、例えばAl又はAl-Siの合金からなる。
【0040】
ドレイン電極8は、GaN単結晶基板11の裏面11b側に設けられており、GaN単結晶基板11と電気的に接続している。ドレイン電極8は、例えばAl又はAl-Siの合金からなる。
【0041】
(製造方法)
次に、GaN半導体装置100の製造方法を説明する。
図5は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法を工程順に示すフローチャートである。
図6Aから
図6Eは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法を工程順に示す断面図である。なお、GaN半導体装置100は、洗浄装置、成膜装置、熱処理装置、露光装置、エッチング装置など、各種の装置によって製造される。以下、これらの装置を製造装置と総称する。
【0042】
製造装置は、GaN層12の表面12aを含むGaN基板全体を薬液を用いて洗浄する(
図5のステップST1)。この洗浄工程では、
図6Aに示すように、GaN層12の表面12aからパーティクル等と共に自然酸化膜等が一旦除去される。しかし、洗浄工程後(例えば、乾燥工程の際)に、GaN層12の表面12aは酸素等を含む雰囲気(例えば、フィルタを通した空気)に晒される。このため、
図6Bに示すように、GaN層12の表面12aには再び自然酸化膜121が形成される。
【0043】
次に、
図6Cに示すように、製造装置は、GaN層12の表面12aに第1絶縁膜51´を成膜する(
図5のステップST2)。例えば、製造装置は、第1絶縁膜51´として、ALD法によりアモルファスのAl
2O
3膜を成膜する。アモルファスのAl
2O
3膜は、GaN層12の表面12aと直に接するように、又は、自然酸化膜121を介して間接的に接するように成膜される。アモルファスのAl
2O
3膜の膜厚は、例えば0.5nm以上100nmであり、一例を示すと2nmである。
【0044】
次に、製造装置は、第1絶縁膜51´及びGaN層12を含む基板全体に熱処理を施して、
図6Dに示すように、少なくとも一部がコランダム型に結晶化された第1絶縁膜51を形成する(
図5のステップST3)。例えば、この熱処理は、窒素(N
2)雰囲気又は酸素(O
2)雰囲気、若しくは、N
2とO
2とを含む雰囲下で行われる。熱処理工程における最高温度は、例えば850℃以上である。この熱処理により、第1絶縁膜51´は、GaN層12の表面12aを覆う自然酸化膜と混晶化して、少なくとも一部がコランダム型に結晶化した第1絶縁膜51となる。上述したように、第1絶縁膜51の組成は、例えば、(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3である。
【0045】
次に、
図6Eに示すように、製造装置は、第1絶縁膜51上に第2絶縁膜52を成膜する(
図5のステップST4)。例えば、製造装置は、第2絶縁膜52として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりアモルファスのSiO
2膜を成膜する。
【0046】
次に、製造装置は、第2絶縁膜52上にゲート電極6(
図2参照)を形成する(ステップST5)。例えば、製造装置は、第2絶縁膜52上にゲート電極膜を成膜する。ゲート電極膜は、不純物をドープしたポリシリコンであり、その成膜はCVD法で行われる。次に、製造装置は、ゲート電極膜をパターニングすることによって、ゲート電極6を形成する。
【0047】
次に、製造装置は、ゲート電極6や図示しないレジストパターンをマスクに用いて、GaN層12の表面12a側にn型ドーパントやp型ドーパントをイオン注入して、n+型のソース領域14(
図2参照)やp+型のコンタクト領域16(
図2参照)を形成する。次に、製造装置は、GaN層12の表面12a側にソース電極7(
図2参照)を形成する。次に、製造装置は、GaN基板10の裏面10b側にドレイン電極8(
図2参照)を形成する。以上の工程を経て、
図1及び
図2に示したGaN半導体装置100が完成する。
【0048】
(ギャップ内の準位)
(1)実施形態(GaN/α-(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3界面)
図7は、本発明の実施形態1に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaN層12に設けられたウェル領域13と、第1絶縁膜51のコランダム型に結晶化した領域511とが接する界面付近の、原子の結合状態を示すモデル図である。ウェル領域13の組成はp型のGaNである。コランダム型に結晶化した領域511の組成は(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3である。
図7に示す界面は、GaNのGA原子と、コランダム型の(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3のO原子とが接合して、GaN/α-(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3界面となっている。
【0049】
図8は、
図7に示すGaN/α-(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3界面におけるGaNのエネルギーバンドを示す図である。
図8に示すように、GaN/α-(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3界面では、GaNのギャップ内にトラップ準位に由来する状態密度は見られない。GaN表面の自然酸化膜(Ga酸化膜)をα-(Al
0.9Ga
0.1)
2O
3に取り込み、Ga酸化膜をα-Ga
2O
3型に制御することで、Ga酸化膜を含む遷移層に由来するトラップ準位の形成が抑制される。
【0050】
(2)参考例1(GaN/α-Ga
2O
3界面)
図9は、参考例1に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaNとα-Ga
2O
3とが接する界面付近の原子の結合状態を示すモデル図である。
図10は、
図9に示すGaN/α-Ga
2O
3界面におけるGaNのエネルギーバンドを示す図である。
図10に示すように、GaN/α-G
a2O
3界面では、GaNのギャップ内にトラップ準位に由来する状態密度は見られない。Ga酸化膜がα-Ga
2O
3の構造をとれば、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位は形成されないことを、本発明者は第一原理計算で確認した。
【0051】
(3)参考例2(GaN/γ-Ga
2O
3界面)
図11は、参考例2に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaNとγ-Ga
2O
3とが接する界面付近の原子の結合状態を示すモデル図である。
図12は、
図11に示すGaN/γ-Ga
2O
3界面におけるGaNのエネルギーバンドを示す図である。
図12に示すように、GaN/γ-Ga
2O
3界面では、GaNのギャップ内にトラップ準位に由来する状態密度が発生する。Ga酸化膜がγ-Ga
2O
3の構造をとれば、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位は形成されることを、本発明者は第一原理計算で確認した。
【0052】
(実施形態1の効果)
以上説明したように、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置は、GaN層12と、GaN層12上に設けられたゲート絶縁膜5と、ゲート絶縁膜5上に設けられたゲート電極6と、を備える。ゲート絶縁膜5は、GaN層12と接する第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51とゲート電極6との間に位置する第2絶縁膜52と、を有する。第1絶縁膜51は、アルミニウム(Al)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方と、酸素(O)とを含み、コランダム型に結晶化した領域511を含む。例えば、コランダム型に結晶化した領域511は、α-(Al0.9Ga0.1)2O3である。
【0053】
これによれば、コランダム型に結晶化した領域511は、GaN層12と第1絶縁膜51との界面(すなわち、Ga酸化膜を含む界面遷移層)40の状態密度をα-Ga2O3に対応する状態密度に近づけることができ、上記界面40におけるGaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることを抑制することができる。これにより、GaN半導体装置100は、移動度の低下や閾値電圧の変動などを抑制することができ、電界効果による良好なキャリア制御が可能となる。
【0054】
また、第1絶縁膜51において、コランダム型に結晶化した領域511の割合は10%以上であることが好ましい。第1絶縁膜51において、コランダム型に結晶化した領域511の割合が大きいほど、GaN層12と第1絶縁膜51との界面40の状態密度をα-Ga2O3に対応する状態密度により近づけることができ、トラップ準位の形成をより抑制すること可能となる。
【0055】
また、第1絶縁膜51において、界面40に近い位置ほど、コランダム型に結晶化していることが好ましい。例えば、第1絶縁膜51は、GaN層12と第1絶縁膜51との界面40から第1絶縁膜51側へ1nm以内の範囲に位置する界面近傍部510、を有する。界面近傍部510において、コランダム型に結晶化した領域511の割合が10%以上であることが好ましい。これにより、トラップ準位の形成をよりいっそう抑制することが可能となる。
【0056】
なお、第1絶縁膜51の一部ではなく、全部がコランダム型に結晶化していてもよい。例えば、第1絶縁膜51の全部がα-(Al0.9Ga0.1)2O3であってもよい。この場合も、上記と同様にトラップ準位の形成が抑制される。
【0057】
本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法は、GaN層12上にゲート絶縁膜5を形成する工程と、ゲート絶縁膜5上に設けられたゲート電極6を形成する工程と、を備える。ゲート絶縁膜5を形成する工程は、GaN層12と接する第1絶縁膜51´を形成する工程と、第1絶縁膜51´及びGaN層に熱処理を施して、第1絶縁膜51´の少なくとも一部をコランダム型に結晶化させる工程と、熱処理が施された第1絶縁膜51上に第2絶縁膜52を形成する工程と、を含む。熱処理が施される前の第1絶縁膜51´は、酸化アルミニウム膜である。
【0058】
これによれば、第1絶縁膜51内に、Al及びGaの少なくとも一方と、Oとを含み、コランダム型に結晶化した領域511を形成することができる。コランダム型に結晶化した領域511は、GaN層12と第1絶縁膜51との界面40の状態密度をα-Ga2O3に対応する状態密度に近づけることができ、上記界面40におけるGaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることを抑制することができる。
【0059】
<実施形態2>
上記の実施形態1では、GaN半導体装置100が備える縦型MOSFETがプレーナ型である場合を示した。しかしながら、本発明の実施形態において、GaN半導体装置が備える縦型MOSFETは、プレーナ型に限定されず、トレンチゲート型であってもよい。
【0060】
図13は、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの構成例を示す断面図である。
図13に示すように、実施形態2に係るGaN半導体装置100Aは、GaN基板10に設けられたトレンチHを有する。トレンチHは、GaN基板10の表面10a側に開口している。トレンチHはp-型のウェル領域13よりも深く形成されており、トレンチHの底部はn-型のGaN層12(ドリフト領域)まで達している。
【0061】
トレンチHの内側に、ゲート絶縁膜5とゲート電極6とが配置されている。トレンチHの内側の側面と底面とがゲート絶縁膜5の第1絶縁膜51で覆われている。また、ゲート電極6は、ゲート絶縁膜5を介してトレンチHに埋め込まれている。トレンチゲート型の縦型MOSFETでは、ウェル領域13であって、トレンチHの側面に設けられたゲート絶縁膜5を介してゲート電極6と向かい合う領域が、チャネル領域CRとなる。
【0062】
実施形態2に係るGaN半導体装置100Aは、実施形態1に係るGaN半導体装置100と同様に、ゲート絶縁膜5として、GaN層12と接する第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51とゲート電極6との間に位置する第2絶縁膜52と、を有する。第1絶縁膜51は、Al及びGaの少なくとも一方と、Oとを含み、コランダム型に結晶化した領域511を含む。
【0063】
これによれば、GaN半導体装置100Aは、GaN半導体装置100と同様に、GaN層12と第1絶縁膜51との界面において、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることを抑制することができる。GaN半導体装置100Aは、移動度の低下や閾値電圧の変動などを抑制することができ、電界効果による良好なキャリア制御が可能となる。
【0064】
また、GaN半導体装置100Aでは、縦型MOSFETがトレンチゲート構造を採用することにより、チャネル領域CRをより密に配置することが可能となるので、素子の微細化が容易となる。
【0065】
<実施形態3>
上記の実施形態1、2では、GaN半導体装置100、100Aが備えるMOSFETが縦型MOSFETである場合を示した。しかしながら、本発明の実施形態において、GaN半導体装置が備えるMOSFETは、縦型ではなく、横型であってもよい。
【0066】
図14は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bの構成例を示す断面図である。
図14に示すように、実施形態3に係るGaN半導体装置100Bは、GaN層12の表面12a側に設けられたn+型のドレイン領域15を有する。ドレイン電極8は、GaN層12の表面12a上に設けられており、n+型のドレイン領域15と電気的に接続している。横型MOSFETでは、ソース領域14とドレイン領域15とに両側から挟まれ、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極6と向かい合う領域が、チャネル領域CRとなる。
【0067】
実施形態3に係るGaN半導体装置100Bは、実施形態1に係るGaN半導体装置100と同様に、ゲート絶縁膜5として、GaN層12と接する第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51とゲート電極6との間に位置する第2絶縁膜52と、を有する。第1絶縁膜51は、Al及びGaの少なくとも一方と、Oとを含み、コランダム型に結晶化した領域511を含む。
【0068】
これによれば、GaN半導体装置100Bは、GaN半導体装置100と同様に、GaN層12と第1絶縁膜51との界面において、GaNのバンドギャップ内にトラップ準位が形成されることを抑制することができる。GaN半導体装置100Bは、移動度の低下や閾値電圧の変動などを抑制することができ、電界効果による良好なキャリア制御が可能となる。
【0069】
<その他の実施形態>
上記のように、本発明は実施形態及び変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、変形例が明らかとなろう。
【0070】
例えば、縦型MOSFET1に用いられるp型ドーパントは、マグネシウム(Mg)に限定されない。p型ドーパントは、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)又はカドミウム(Cd)であってもよい。例えば、チャネル領域CRは、p型ドーパントとして、Mg、Be、Zn、Cdのいずれか1種類以上を1E+16/cm3以上の濃度で含んでもよい。
【0071】
また、
図2において、ゲート絶縁膜5直下のドリフト領域には、n型のJFET領域が設けられていてもよい。JFET領域は、他のドリフト領域よりもn型ドーパントの濃度が高く、電気抵抗が低い領域である。JFET領域が設けられることによって、縦型MOSFET1のオン抵抗の低減が図られていてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、本発明の「窒化ガリウム層」としてGaN層12を例示したが、「窒化ガリウム層」はGaN層に限定されない。例えば、「窒化ガリウム層」は、バルクのGaN基板であってもよい。また、「窒化ガリウム層」はGaNを主成分とし、アルミニウム(Al)及びインジウム(In)のいずれか1種類以上の元素をさらに含んでもよい。
【0073】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。上記した実施形態及び変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 縦型MOSFET
5 ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 ソース電極
8 ドレイン電極
10 GaN基板
10a、12a 表面
10b、11b、12b 裏面
11 GaN単結晶基板
12 GaN層
13 ウェル領域
14 ソース領域
15 ドレイン領域
16 コンタクト領域
40 界面(Ga酸化膜を含む界面遷移層)
51 第1絶縁膜
52 第2絶縁膜
100、100A、100B GaN半導体装置
121 自然酸化膜
510 界面近傍部
511 コランダム型に結晶化した領域
512 コランダム型に結晶化していない領域
H トレンチ