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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141139
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】発泡構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/58 20060101AFI20220921BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20220921BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220921BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20220921BHJP
   B29C 45/70 20060101ALI20220921BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B29C44/58
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
B29C44/00 D
B29C45/56
B29C45/70
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041312
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】711008836
【氏名又は名称】鈴木 康公
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康公
【テーマコード(参考)】
4F074
4F202
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA12D
4F074AA66
4F074AA70
4F074AA98
4F074BA34
4F074BC12
4F074CA26
4F202AB02
4F202AG20
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK19
4F202CK42
4F202CK73
4F202CK74
4F202CK75
4F202CK86
4F206AB02
4F206AG20
4F206JA04
4F206JM06
4F206JN25
4F206JN35
4F206JQ81
4F214AB02
4F214AG20
4F214UA08
4F214UB01
4F214UL25
4F214UL35
4F214UM81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発泡倍率が大きな発泡成形品が得られる金型装置を提供する。
【解決手段】発泡剤を用いて発泡成形を行う射出発泡成形に用い、モールド・バック又はコア・バックを行うことのできる2枚型又は3枚型の金型装置において、成形空間4と接するパーティング面が必ず先に開けられる先型開機構10を設けた金型装置である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃でそれに掛かる圧力が1気圧の雰囲気で、性状が気体又は/および、液体又は/および、固体の発泡剤を用いて発泡成形を行う樹脂の射出発泡成形加工に於(お)いて、
金型構造が2枚型の構造、又は3枚型の構造の何れかで、
発泡成形品の発泡倍率を高める事を目的に、
モールド・バック、又はおよびコア・バックを予定する、前記3枚型に於いて、
先に成形空間と接するパーティング面が必ず先に開けられる先型開機構を設けた
発泡成形品の発泡成形加工に用いる金型装置。
【請求項2】
前記請求項1記載の発泡成形加工を行う金型装置のパーティング面の固定側、又は/および
可動側に、スプリング(バネ)、ゴム、ガス・スプリング、油圧シリンダー、空圧シリンダー、機械的な機構を先型開機構に設置した金型装置。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2記載の発泡成形品の加工の用いる金型装置は、
エジェクターピンを加重式Oリング、U字形状のOリングを用いてシールし、
パーティング(PL)面は、成形空間を、固定側、又はおよび可動側にOリングを設置した、
GCP用の金型装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項2に記載の金型装置を用いた発泡倍率を高めた発泡成形品。
【請求項5】
前記請求項3記載のシール金型を用い、GCP装置を用いて予め前記請求項3記載のシール金型内を加圧した状態で、発泡剤を用いて発泡性を付与させ、発泡性を持たせた発泡性樹脂を充填し、充填の途中、又は充填の完了後に、予め金型内を加圧した気体を排気し、排気途中、排気完了後に金型を後退させ、成形空間に充填した、発泡性樹脂を拡張して、
高発泡倍率の発泡成形品製造に用いる金型装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至請求項5に用いる金型装置は、先に金型のパーティング面の設置された先型開機構によって開かれ、モールド・バック、コア・バックによって発泡倍が高められ、冷却・固化が完了した後、引っ張りリング、引っ張りボルト(棒)、チェーンの何れかはストリッパー・プレートに繋がれ、金型の開きの力を用いて、
金型によって
ストリッパー・プレートを引っ張り、スプール・ランナーをはらう機構を持たせた発泡成形用の金型装置。











【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、23℃でそれに掛かる圧力が1気圧の雰囲気で、性状が気体又は/および、液体又は/および、固体の発泡剤を用いて発泡成形を行う樹脂の射出発泡成形加工に於いて、
金型構造が2枚型の構造、又は3枚型の構造の何れかで、成形空間内に発泡性樹脂を充填させ、モールド・バック、又は/およびコア・バックして発泡倍率の高い発泡成形品を得る手段を提供する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂(プラスチック)と発泡剤とからなる成形材料をインサートが配置された型内に未充填部を残してショート・ショットし、発泡剤の発泡による膨張力で未充填部を充填する発泡成形方法が記載されている。樹脂は、母材樹脂と、母材樹脂と同種で母材樹脂より低分子量の低分子量樹脂とからなる。
特許文献2には、発泡成形に於いて表面に発生するスワール・マーク{(発泡縞模様)略号は「SM」}を抑える手段のガス・カウンター・プレッシャー(略号は「GCP」)法と、その金型構造が説明され、U字形状のOリングの使用が記載されている。
特許文献3にはPC系樹脂の組成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-103919号公報
【特許文献2】特開平11-216748号公報
【特許文献3】国際公開第2003/026357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高い発泡倍率の発泡成形品を得るには、成形空間に発泡性樹脂を充填後にモールド・バック、コア・バックをして、成形空間を開ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
モールド・バック、コア・バックをした時に金型のPLを強制的に開ける機構を、金型に組み込んだ。
【発明の構成、作用、効果】
【0006】
(構成)
請求項1乃至請求項6に係る発明は、金型のPL面を必ず、真っ先に開ける先型開機構を持たせた金型装置で、PLにはバネ、ウレタンゴムなど、ガス・スプリングなどで強制的に開けられる部品を配置された金型装置。
更に前記金型装置には、スプール・ランナーを払いのけるストリッパー・プレートには、引っ張りリング、引っ張りボルト、チェーンなどによって払われる機構部品が用いられている。
ストリッパー・プレートは前記引っ張りロングだけでなく、固定側の型板などに油圧シリンダー、空圧シリンダーを用いてストリッパー・プレートを動かし、スプール・ランナーを払いのける事も出来(でき)る。
【0007】
(作用)
請求項1乃至請求項6に係る発明は、PLが必ず先に開かれる金型の構造なので、高い発泡倍率の発泡成形品が得られる。
GCPを用いる事で、表面はスワール・マーク(発泡縞模様)のない綺麗なスキン層、内部はモールド・バック、コア・バックによって成された、発泡倍率の高い発泡層を持つ発泡成形品(発泡構造体)で、GCPを適用すればGCPによって作られた表面のスキン層は強度が高いので、GCPを用いずに、表面にスワール・マークのある発泡成形品より衝撃強度が高い
【0008】
(効果)
請求項1乃至請求項6に係る発明は、金型のPLに簡単な先型開機構が設けれ、ストリッパー・プレートには引っ張りリングなどでスプール・ランナーを払いのける機構を持った金型装置を用いれば高発泡倍率の発泡成形品が得られる。
上記先型開機構はGCPのPL、ストリッパー・プレートのシールの邪魔にはならないので、この機構を込み(組み)こんでも金型費はそれ程は高くならない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】比較例、実施例に用いた成形品の模式図(キャビ側の図)である。本成形品の金型は、文献PCT/JP2016/86380中の図2図3に示すGCP用にシールした金型構造とした。
図2】比較例、実施例に用いた成形品の模式図(コア側の図)である。
図3】PC樹脂{SDポリカ(商品名)301-15(グレード)に全硬度18ppmの市水をを用いた発泡成形品で、市水が発泡剤と作用している事は2mm乃至5mm程度の粗い発泡セルが確認される。実施例7のモールド・バック前の発泡成形品の図(写真)である。発泡セルが粗いのは起泡核剤を用いていないからである。図3はGCPを実施していないので、表面にはスワール・マークが確認される。
図4図3の成形品をGCP排気後直ぐに、可動側の金型を1mm後退させて、板厚2mmからGCP排気後直ぐに1mmモールド・バックさせ発泡倍率を高めている。モールド/バックによって樹脂の、成形品の圧力が下がり結果発泡セルは10mm、場所によっては20mmに達するまで大きくなっている。これだけ大きな発泡セルを持つ成形品にも関らず、図15に示すGCP装置を使用して金型内を1MPaまで圧気して、与圧した中に水を用いて発泡性を付与した前記PC成形品の表面にスワール・マークは全くなく、平滑で綺麗である。
図5】実施例10の発泡成形品の写真である。301-15のペレットを90部、SI8000Lのペレットを10部混ぜ合わせ、SI8000L中の成分を起泡核剤に活用した結果で、図3図4に比べると発泡セルは微細化され、1mm以下の発泡セルが成形品の内部に均一に分散されている事は目視確認した。発泡セルの直径は1mm程度、成形品全体に存在し、GCPの作用・効果によって成形品の表面にスワール・マークは全くなく、平滑で綺麗である。
図6】モールド・バック、コア・バックさせる時に先にPLが開かなければならないので、PLが先に開く機構を金型に組み込んだ事を示す模式図。図6図7図8中の「PL」は金型面が合わさった部分のパーティングの略号である。
図7】モールド・バック、コア・バックさせる時に先にPLが開かなければならないので、PLが先に開く機構を金型に組み込んだ事を示す模式図。
図8】金型の開閉が縦方向で、射出ユニット(射出装置)を横に配置し、PL射出をして、スタック・モールドを行い事を示した模式図。
図9】引っ張りボルトを示した模式図。
図10】ICトレイの実際の成形品を示す写真。
図11】モールド・バック(PLは平見切り。)のプロセスを示した模式図である。金型を閉めた状態で成形空間(附番4)へ発泡性樹脂が充填された状態を示し、可動側(附番44)の金型は後退はさせていない。
図12図11から、附番44を後退させ、附番4の成形空間を拡張させ、発泡倍率を高めた事を示す模式図である。PLはモールド・バックさせた。附番44は成形空間が拡張し、発泡倍率が高まった状態を示している。附番45はPLに隙間(附番46)が発生した事を示し、附番45を大きくするとバリ発生が懸念されるので、それ程は大きくは出来ない。
図13】コア・バック(PLは縦見切り。)のプロセスを示した模式図である。金型を閉めた状態で成形空間(附番4)へ発泡性樹脂が充填された状態を示し、可動側(附番44)の金型は図13では後退はさせていない。附番46は前進している。
図14】可動側の金型を後退させ、成形空間の拡張をさせた事を示す模式図で、附番53のPLに隙間は大きく開いても金型(金型のPL)は縦見切り(附番49の樹脂部と、附番50の金型)としているのでバリ発生の問題はない。PLの開き(開く)量(後退をさせる距離)は大きくても附番49の部分を持たせているのでバリ発生の問題は低減される。高い発泡倍率の発泡成形品を得る目的で、後退の距離を大きくしてしまうと、発泡剤を用いただけの発泡力では、付番54の拡張の速度よりも、成形空間(附番4)に充填された発泡性性樹脂の拡大の速度が遅いと、金型から離れてしまい、転写性が低下する。特に高発泡倍率の発泡成形品を求める場合この金型の転写性低下の問題を解決するには成形品の内部に、成形機のノズルから、又は/およびスプール・ランナーから、又は/および成形品へ直接に高圧ガスを入れ、内部を一旦中空として、その中空の高圧のガスの圧力で金型への転写性を維持しながら、附番54を拡張させる。拡張の完了前に、拡張の完了後、拡張の完了後遅延時間を取ってから、成形品内部へ注入した高圧ガスの圧力を下げれば良い。この方法では数倍、十倍を超える高い発泡倍率を持つ発泡成形品が得られる。
図15】金型内を予め圧気して、与圧をする、発泡性樹脂を充填後に圧気を排気する機能を持たせたGCP装置で、本GCP装置の制御(圧気と排気の弁の開閉)は成形機に組み込まれているシーケンサー(PLC)にプログラムされている。
図16】実施例10の発泡成形品にリペレ#1100を塗装して、塗膜の付着性などを示した図(表)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(用語の定義)
まず、本発明に於いて用いる用語を定義する。
「金型キャビティ」とは、射出成形、ブロック成形、又は注型成形に於いて、発泡性を持たせた樹脂、又は/および非発泡性の樹脂で満たされる空間を言う。又「キャビティ内」とは、金型キャビティの内部、空間、又は体積を言う。
「成形空間」とは「金型キャビティ」と同義語である。単に「キャビティ」と言う場合もある。
【0011】
本発明は、上記例示された射出成形以外にはシート押出(押し出し)成形、異形押出成形、ブロー成型などでも実施は可能である。
【0012】
「射出」とは、金型キャビティ内に発泡性を持たせた樹脂、又は/および非発泡性の樹脂を充填する事、注入する事、又はその工程(プロセス)を言う。
「押出」とは、加熱溶融された発泡性樹脂を、又は/および非発泡性樹脂をダイを通じて連続的に押出成形を行う事である。
非発泡性樹脂と、発泡性樹脂とを押出機ノズル内で混ぜ合わせ(ミックスして、ミックスドとも言う。)、発泡性を付与する手段、又新保實方式の様に押出機ノズル内で気体を、又は/および液体を加熱溶融された樹脂に混ぜ合わせ発泡性を付与する手段も含まれる。
【0013】
「ブロー」とはパリソンの金型内に入れ、パリソンの中からエアーなどの気体を用いて加圧して成形をする技法を言う。パリソンを発泡性樹脂とすると、発泡性樹脂を用いたブロー成形となる。
【0014】
「充填」とは、射出成形、ブロック成形などの加工に於いて、金型キャビティ内に発泡性を持たせた樹脂、又は/および非発泡性の樹脂を満たす事を言う。金型キャビティ内の体積よりも少ない量の充填は、ショート・ショット、又はショート・モールドと、同等な量の充填は、フル・ショット、又はフル・パックと、体積よりも多い量の充填は、オーバー・ショット、又はオーバー・パックと言う。ヒケを少なくする、又は転写性を向上するため、フル・ショット後に成形機加熱筒から樹脂の保圧をかける場合は、保圧を使用した事を本発明では明示する。ブロック成形の場合の非加圧、加圧の区分けは、充填後は非加圧、充填後に加圧などと加圧の有無を明示する。
【0015】
「加熱筒内の樹脂」とは、加熱溶融前のペレット、バルク、パウダーなど固体(固形)の状態、可塑化途中の段階、可塑化が完了して溶融状態にある熱可塑性樹脂を言う。
【0016】
「発泡剤」の性状は、気体、液体、固体の何れもがあり、大きくは物理発泡剤、化学発泡剤に分類され、其々無機系、有機系のモノ(物)がある。気体は窒素ガス、炭酸ガス(二酸化炭素)、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスに代表される不活性ガス、水素などの可燃性ガスが上げられ、これ等は単独で、又は混合ガスとして使用する。液体の発泡剤はNTP{Natural Temperature Pressure,Natural Temperature and Pressure,Normal Temperature Pressure,Normal Temperature and Pressure=温度が23℃、圧力が1気圧(1atm)}で性状が液体である物質を言い、エタノール、プロパノールに代表される1価のアルコール、2価以上のアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類などと、蒸留水、イオン交換水、市水(水道水)、井戸水などの気化性の物質、加圧と冷却とで液化させた液化炭酸ガス(液体の二酸化炭素)などを言う。固体は化学発泡剤の無機系の熱分解型では炭酸水素塩、炭酸塩、亜硝酸塩、水素化合物、カルボン酸、カルボン酸塩などがある。アドバンセル(商品名)などのミクロバルーン(マクロバルーン、マイクロバルーン)、構造水を含む硫酸銅{硫酸銅5水和物、(今は「結晶水」の概念ではなく「水和物」と言う。)を持っているので、勿論この5モルの構造水も加熱筒内で、加熱筒の温度、加熱溶融された溶融樹脂の温度で気化し、水蒸気は発泡性ガスとして作用する。}、水中に浸漬して含水させたシリカゲル、ABSを水中に長い時間、例えば6時間浸漬し、遠心分離などで表面の水分を除去し、含水させたモノ(ABS)、ABSと同様にPCを、およびPC系樹脂(この場合はPC/ABSとした。)を水中に浸漬し、含水させたモノも水分が、前記構造水と同じ様に加熱筒内で気化し発泡剤として機能するので発泡剤として使用出来る。これらは水の場合を例示したが、水に限らずアルコールの有機溶剤でも良(よ)い。極端な例ではあるが、白米を水の中に浸漬して含水させたモノも発泡剤として使用出来る。勿論固体の炭酸ガス(ドライアイス)は固体の発泡剤である。
【0017】
無機系の熱分解型の発泡剤には上述した様に炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムに代表される炭酸水素塩、炭酸塩などが例示され、有機系の熱分解型の発泡剤にはアゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジ化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール化合物などがあり、反応型ではイソシアネート化合物がある。ADCA{アゾ・ジ(ダイ)・カルボン酸アミド}、HDCA(ヒドロ・ジ・カルボン酸アミド)、アゾ・ジ・カルボキシレート(ADCAのBa塩)、HDCAのBa塩、DPT(ジ・ニトロソ・ペンタメチレンテトラミン)、OBSH{P-P’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)}、AIBN(アゾ・ビス・イソブチロ・ニトリル)〕などがあげられる。発泡剤、発泡成形の詳細は、株式会社技術情報協会1993年8月発行の各種高分子と発泡成形技術に記載されている。
【0018】
液体を発泡剤として熱可塑性樹脂に用いる場合、成形品の重量(wt.)に対して最適な容量を測定(計量)して、加熱筒内の熱可塑性樹脂に注入し、加熱筒と加熱筒内の温度、加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂の温度、又は/およびノズルの温度、又は/および金型の温度によって気化して、又は/および熱分解して、又は/および化学反応をさせて、又は熱を必要としないで分解、又は/および化学反応させて発泡に有用(有効)な発泡性ガスを発生させる。
【0019】
発生させたガスは、加熱筒内の熱可塑性樹脂中に計量の段階の物理的な力、充填の場合の物理的な力で溶融樹脂中に微分散又は/および加圧溶解させ、加熱筒内の熱可塑性樹脂は、発泡性を有する熱可塑性樹脂となる。これを金型キャビティ内に充填して、発泡構造を有する成形品を製造する事が出来る。別言すると、「発泡成形」とは、加熱筒内の樹脂に対して、発泡性ガスを分散又は/および溶解(加圧溶解を含む。)などをさせて発泡性を付与した樹脂を金型に充填をして発泡構造体を得る事、およびその工程を言う。押出の場合は金型ではなくダイである。
【0020】
「溶融樹脂への発泡性の付与」とは、気体(例えば窒素ガス)の場合は大きな塊の発泡性ガス(窒素ガス)をスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/および溶融樹脂中に微分散させる事を言う。液体の場合は加熱筒内の温度、溶融樹脂の温度などによって、気化、熱分解などをして、発泡性ガスが発生し、発泡性ガスをスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/および溶融樹脂中に微分散させる事を言う。固体の発泡剤の場合は、化学反応によって発生した発泡性ガスをスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/および溶融樹脂中に微分散させる事を言う。ミクロ(マクロ、マイクロ)バルーンの場合も発生した発泡性ガスをスクリューの回転の力で分散し、背圧の圧力で加圧溶融、又は/および溶融樹脂中に微分散させる事を言う。ノズルに気体の発泡剤の注入口、液体の発泡剤の注入口、加熱溶融された発泡性を持たせた樹脂と非発泡性の樹脂とを混ぜ合わせる場合も含まれる。
【0021】
「起泡」とは、外部からの圧力、例えばGCP、背圧、射出圧力などの力によって発泡性ガスが抑えられた状態(樹脂中に圧縮され体積が小さく微分散した状態又は/および加圧溶解された状態)から、外部からの圧力が少なくなり、又はなくなり、樹脂中の発泡性ガスの体積が増す事、又は/および加圧溶解されていた発泡性ガスが気体になる事を言う。又「起泡」には、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂が加熱筒から押出されて発泡する場合、又は液状、又は固体の発泡剤の気化、熱分解、化学反応によって発泡性ガスが発生する工程も「起泡」と言う。
【0022】
「発泡」とは、発泡性ガスを溶融状態の熱可塑性樹脂中に微分散又は/および加圧溶解させ、圧力を下げる事で、熱可塑性樹脂の内部、又は/および表面で発泡セルが形成させる事を言う。熱硬化性樹脂の場合は、発泡剤を加熱する事で、発泡剤が気化、熱分解、化学反応して、発泡性ガスを発生し、熱硬化性樹脂の内部、又は/および表面で発泡セルを形成させる事を言う。この様に発泡によって内部、又は外部に発泡層を持った成形品を発泡成形品又は発泡構造体と言う。
【0023】
「発泡性樹脂」とは、発泡成形に有用な発泡性ガスを微分散させた、又は/および加圧溶解させた溶融状態の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を言う。別言すると、「発泡性樹脂」とは、気体の発泡剤、液体の発泡剤、固体の発泡剤を含んだ熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を言う。本発明では「溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂」、「発泡剤含有の熱可塑性樹脂、又は発泡剤含有の熱硬化性樹脂」と発泡性を持たせた事、気体の発泡剤、液体の発泡剤、固体の発泡剤を含有する事など樹脂の状態を出来るだけ正確に記す。
【0024】
「発泡成形品」とは、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を成形加工した、内部に不連続な発泡セル(Cell)を持っている樹脂成形品を言う。発泡セルは、その大きさが1,000μm{ミクロン(μ)、マイクロメーターミクロン(μm)}以下である。本発明では、中空部分と発泡セルとが混在する場合も発泡成形品とする。
【0025】
「併用」とは、それだけでなく、別のモノとともに用いる事、組み合わせる事を言う。例えば成形加工法の1つでも効果があるが、別の方法との併用も可能で、相乗効果を求めたり、一方又は/および両方の効果の向上が期待出来る。発泡剤も、単独ではなく数種類を併用する事もある。気体、液体、固体の発泡剤を併用する事もある。
【0026】
「発泡助剤」とは、発泡剤の分解温度を下げたり、発泡剤に分解を促進させる目的で使用する物質を言う。有機系発泡剤の発泡助剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、金属石鹸、尿素(ADCAの分解温度を下げる作用・効果がある。)、亜鉛華などがあげられ、炭酸塩、炭酸水素塩の分解に用いる無機系、有機系(例えばクエン酸)の酸も発泡助剤であるとも言える。然しPC系樹脂の場合は分解の危険性があるので、其々の物質の添加による物性の低下を事前に確認をする。特に塩基性酸化物(金属酸化物の別言)のCaO、BaO、CsOなどはPC系樹脂のPCを分解する危険性が大きい。
【0027】
(PC系樹脂用の起泡核剤、発泡核剤)
「起泡(発泡)核剤、気泡核剤」とは、微細な発泡セルを形成させる目的で、成形予定の樹脂、発泡剤に混ぜ合わせる物質である。起泡核剤は溶融樹脂と起泡核剤との比熱の差を利用して、溶融樹脂と起泡核剤との境界に小さなヒケ(空間)が作られ、そのヒケを核として発泡が開始(そのヒケ=小さな空間に発泡性ガスを集め、発泡ガスが集まり、起泡が始まるスタートの起点)とされ、発泡セルが形成される。この様に起泡核剤は温度差{(比熱の違い。昇温の速度の違い。)(起泡核剤は加熱され周りの溶融樹脂よりも温度が高くなる場合など、反対に低くなる場合などである。)}を利用して発泡セルを微細にする作用・効果を齎す。起泡核剤を例示すると、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、W(タングシテン)、Cr(クロム)などの金属粉、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などの非金属粉、およびこれらの酸化物、窒化物、炭化物などがある。
【0028】
それ以外には難燃剤も起泡核剤になり、起泡核剤としての作用・効果を齎す。臭素化エポキシなどの代表されるハロゲン系難燃剤、リン酸系難燃剤、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、非(ノン)ハロゲンリン酸エステル{DAIGUARD-1000(商品名)}に代表される非ハロゲンリン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル{CR-7335(商品名)}、芳香族縮合リン酸エステル{CR-741(商品名)}、芳香族縮合リン酸エステル{PX-200(商品名)}に代表される非ハロゲン系リン酸エステル、トリス(クロロプロピル)ホスフェート{TMCPP(商品名)}、トリス(トリブリモネオペンチル)ホスフェート{CR-900(商品名)}に代表される含ハロゲンリン酸エステル、{CR-504L(商品名)}、{CR-570(商品名)}、{DAIGUARD-540(商品名)}に代表される含ハロゲン縮合リン酸エステル、{DAIGUARD-580(商品名)}、{DAIGUARD-880(商品名)}、{DAIGUARD-850(商品名)}に代表される非ハロゲン縮合リン酸エステルなどが上げられる。
【0029】
又上記難燃剤もを併用する、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化) (略号:PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(略号:PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)(略号:FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(略号:ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化) (略号:PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化) (略号:PCTFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(略号:ECTFE)などのフッ素含有の樹脂の微粒子も起泡核剤として作用する。粒径がナノレブルの金属粒子も起泡核剤として作用する。
【0030】
例えば水を発泡剤に用いた場合で、ASとABSとではASに比べてABSの方が発泡セルは小さくなる。PSとHIPSではABS同様にHIPSの方が発泡セルは小さくなる。これは樹脂中に配合されているブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト共重合させたゴム(グラフトゴム)がASの海に島に様に点在する海島構造を持ち、このグラフトゴムが起泡核剤の作用をした。
PC単体でなくPC/ABSの方が発泡セルは小さくなる事が確認されている。これは同じく互いのポリマーの比熱が異(違)なり界面、境界領域で微細な収縮が生じた結果、起泡核剤としての作用・効果を奏した。
上記起泡核剤は単独でも使用も可能、必要に応じて2種類以上混ぜ合わせても良い。
【0031】
PC樹脂の発泡成形に有用な発泡剤は気負体の窒素ガス、炭酸ガスに代表される気体を計量中に加熱筒に注入し加熱筒内の可塑化溶融された溶融樹脂に発泡性を付与させる、前記気体と同様に水を加熱筒内に入れ、加熱筒の熱(熱エネルギー)、加熱溶融された溶融樹脂の熱(熱エネルギー)の両方、又は何れかによって気化させ、加熱筒内の溶融樹脂中に微分散させ発泡性を付与する。
一般的に起泡核剤は単独での使用と、2種類以上を混ぜ合わせ使用する場合がある事は上述した。
【0032】
PC系樹脂の場合起泡核剤がPC系樹脂の分解を促進させる触媒として作用する物、起泡核剤自らがPC系樹脂を分解してしまう場合がある。特にPC樹脂の発泡に水を用いる場合PC系樹脂を加水分解させない物質が選ばれる。
【0033】
PC系樹脂の発泡成形に於ける有用な起泡核剤は、PCを分解し物性低下をしない事から酸化銀、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、および炭化ケイ素などが例示される。本発明の起泡核剤における成分の含有比率は、発明者らが鋭意検討を重ねた結果、酸化アルミニウムが40&#12316;60重量部、酸化銀が20&#12316;40重量部、二酸化ケイ素が1&#12316;10重量部、炭化ケイ素が1&#12316;10重量部である事が好ましい。酸化銀以外の成分の粒子径は、PC系樹脂に配合させるために、30μm以下である事が好ましい。30μmを超えると、樹脂に均一に分散する事が出来ず、又十分な光拡散効果が得られないため好ましくない。より好ましくは、100nm&#12316;10μmである。これらの成分は市販のモノを使用しても、任意の粒子径に合成しても良い。又粒子径が大きいモノを粉砕しても良い。合成方法は特に限定されるモノではない。
【0034】
酸化銀はPC系樹脂用の起泡核剤としては有用で酸化銀の代わりにCuO、ZnO、Al、MgO、TiO、ZrO、V、V、酸化タングステン、FeO、Fe、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化In、インジューム(In)ティン(Ti)オキサイド、酸化Ge、酸化錫、酸化鉛、コランダム、カーボランダム、Al・MgO(スピネル)、WC(タングステンカーバイト)、TiN(窒化チタン)、CrN(窒化クロム)なども有望である。
【0035】
一方例えば、炭酸カルシウム(Ca)、炭酸マグネシウム(Mg)炭酸バリウム(Ba)などの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、有機酸のアルカリ金属塩、特にクエン酸2水素1ナトリウム塩、クエン酸2水素1カリウム塩などは有効な起泡核剤の作用をするがPCの分解が懸念される。ヘリカルD(白石カルシウム製のCa含有の無機フィラーである。)も起泡核剤の作用をする。上記の発泡助剤のステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、金属石鹸なども起泡核剤として作用はする。硝子繊維、硝子ビーズ、炭素繊維、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどの炭素の粉体、カーボンナノチューブ(CNT)なども起泡核剤の作用を持つ。更には金属の粉体でも良い。足立新産業(株)のナノマテリアルも起泡核剤になる。樹脂の添加剤、例えば顔料なども起泡核剤として作用する。
【0036】
{起泡核剤の粒子径(粒径)}
起泡核剤の粒径は微細であれば、樹脂中に均一に分散し、発泡セルを、発泡セルの大きさを均一にする事が出来る。使用する起泡核剤によって異なるが、一般的には250ミクロン(μm)以下、好ましくは100μm以下、均一な分散を考慮すれば50μm以下が好ましい。更に微細な100nm(ナノメーター)から10μm程度が良い。
【0037】
(起泡核剤の使用)
使用する起泡核剤は一種類(単一)でも良いが、2種類以上を混ぜ合わせて使用(複合使用)しても良い。粒径も単一でも良いが、単一の場合でも粒径の異なる物を使用しても良い。複合使用の場合には其々の起泡核剤の粒径は同じ物でも、異なる物を使用しても良い。
【0038】
(起泡核剤のマスター・バッチ)
PC系樹脂の発泡成形で使用する有用な起泡核剤は金属の酸化物、金属の炭化物などがあり、これ等の起泡核剤は、樹脂中に混ぜ合わせ(分散をさせて)使用するが、液体の発泡剤ならば、この液体に混ぜ合わせて使用する。発泡予定の樹脂のペレットの中に濃度(起泡核剤の含有量)の高いモノを製造し、マスター・バッチとして使用しても良い。起泡核剤が数種類におよぶ場合は其々の単体(本発明では一種類の物質の意味)で起泡核剤のマスター・バッチ化して於いて、発泡成形予定の樹脂のペレットに其々の単体の起泡核剤のマスター・バッチを混ぜ合わせ使用する。加熱溶融混錬(例えば押し出し機を用いた溶融混錬、ペレタイザーを用いたペレット化すいる手段。)して起泡核剤のマスター・バッチを製造しても良いが、PCT/JP2020/ 15536に記載の発泡予定の樹脂のペレットの表面に担持する方法でも起泡核剤のマスター・バッチ製造は出来る。
【0039】
「混合比」とは、例えば起泡核剤のマスター・バッチの重量(wt.)、又は容量(vol.)を1とし、成形予定の樹脂の重量、又は容量との比で表す。発泡成形予定の樹脂中(一般的には重量を用いる。)に含まれる起泡核剤のマスター・バッチの割合(重量の割合)で表す。例えば、樹脂に対して2wt(重量)%、2vol(容量、体積)%などである。2:100(或いは1:50、或いは1/50)、又は2wt%、2vol%などと表現する。液状発泡剤を使用する場合も同様とする。
【0040】
(起泡核剤の添加量)
起泡核剤の添加量は、樹脂の物性に影響を与えない範囲内で、物性の低下が許容出来る範囲内で添加出来る。添加量は添加予定の発泡をさせる樹脂によって異なり、又発泡を付与する発泡性ガス(例えば窒素ガス、炭酸ガス其々を単独で使用する場合、其々の発泡性ガス、例えば窒素ガス、一酸化炭素、炭酸ガス、水蒸気などを混ぜ合わせ複合ガスとする場合とがある。)
発泡予定の樹脂に対する起泡核剤の配合量は、樹脂100重量部に対して起泡核剤を0.01から10重量部である。起泡核剤の配合量が0.01重量部未満では発泡セルの粒径が大きくなる。反対に起泡核剤の添加量が多いと発泡セルが微細になり、発泡力が大きくなるので、GCPで表面に発生するスワール・マーク(発泡縞模様)をなくし、表面が平滑で綺麗な外観の発泡成形品を得るには、一般に使用する気体の種類と圧力(発明者は、経済的な事と、発泡成形の容易さを考慮して圧力が1.4MPaのエアーとしている。)を変更する。GCPの圧力を高めればスワール・マークを抑える事は可能、エアーではなく炭酸ガスを用いれば、金型内に充填された発泡性を付与した溶融樹脂の流動先端に炭酸ガスは溶け込み、スワール・マークが少なくなる。参考であるが炭酸ガスを用いたGCPは非発泡性の樹脂の場合も表面は綺麗になる。硝子繊維など複合材も硝子繊維を沈み込ませる作用・効果を持つ。
【0041】
〔ポリカーボネート系樹脂、ポリ炭酸エステル{ポリカーボネート(PC)}〕
本発明で使用するPCに付(つ)いて説明する。PCはビスフェノールAとホスゲン、若しくはジ(ダイ)フェニルカーボネートを原料として製造されるポリ炭酸エステルである。塩化カルボニルを用いる場合は界面縮重合でポリマー化される。ジフェニルカーボネートを用いる場合はエステル交換による重合で合成される。PCは特に限定されず、公知の樹脂を何れも使用出来る。例えば芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲン又は炭酸ジエステルとを溶融法又は溶液法で反応させて得られる樹脂が使用出来る。芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的な例として、2,2&#8722;ビス(4&#8722;ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、1,1&#8722;ビス(4&#8722;ヒドロキシフェニル)エタン、1,1&#8722;ビス(4&#8722;ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2&#8722;ビス(4&#8722;ヒドロキシ&#8722;3,5&#8722;ジメチルフェニル)プロパン、2,2&#8722;ビス(4&#8722;ヒドロキシ&#8722;3&#8722;メチルフェニル)プロパン、ビス(4&#8722;ヒドロキシフェニル)サルファイド(スルフィド、Sulfide)、ビス(4&#8722;ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。これらの中でも特にビスフェノールAが好ましく、汎用されている。本発明では、汎用のPCであるビスフェノールA系のPC以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造したポリカーボネ&#8722;トを使用する事が可能である。
【0042】
更に、以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用しても良い。3価以上のフェノールとしては、フロログルシン、4,6&#8722;ジメチル&#8722;2,4,6&#8722;トリ&#8722;(4&#8722;ヒドロキシフェニル)&#8722;ヘプテン、2,4,6&#8722;ジメチル&#8722;2,4,6&#8722;トリ&#8722;(4&#8722;ヒドロキシフェニル)&#8722;ヘプタン、1,3,5&#8722;トリ&#8722;(4&#8722;ヒドロキシフェニル)&#8722;ベンゾール、1,1,1&#8722;トリ&#8722;(4&#8722;ヒドロキシフェニル)&#8722;エタンおよび2,2&#8722;ビス&#8722;〔4,4&#8722;(4,4・&#8722;ジヒドロキシジフェニル)&#8722;シクロヘキシル〕&#8722;プロパンなどが挙げられる。
【0043】
本発明で使用されるPCの粘度平均分子量は、1,000&#12316;100,000である。より好ましくは10,000&#12316;50,000であり、かかるPCを製造するに際し、分子量調節剤、触媒などを必要に応じて使用する事が出来る。PC系樹脂は、単独で用いても良く、2種以上を適宜混合して使用しても良い。
【0044】
(PC系樹脂組成物の製造に付いて)
本発明の起泡核剤を混合したPC系樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではないが、本発明の樹脂組成物の好ましい製造方法は、二軸押出機の如き多軸押出機を用いて各成分を溶融混練する方法である。二軸押出機の代表的な例としては、ZSK(WernerアンドPfleiderer社製、商品名)を挙げる事が出来る。同様のタイプの具体例としてはTEX{(株)日本製鋼所製、商品名}、TEM{東芝機械(株)製、商品名}、KTX{(株)神戸製鋼所製、商品名}などを挙げる事が出来る。その他、FCM(Farrel社製、商品名)、Ko&#8722;Kneader(Buss社製、商品名)、およびDSM(Krauss&#8722;Maffei社製、商品名)などの溶融混練機も具体例として挙げる事が出来る。
【0045】
(PC系樹脂の発泡の目的と意味)
PCは衝撃強度に於いて肉厚依存性が大きい樹脂である。例えばソリッド成形品で肉厚が5mm、6mmの厚い成形品の衝撃強度はABSよりも低い。然し肉厚を薄く1mm、2mmとすると衝撃強度は極端に高くなる。0.2mmのPCを積層すれば大きな衝撃を加えても割れない事は確認されている。ならばPCの物性に影響を与えない水を発泡剤に用いて発泡させ、モルード・バック、コア・バックなどの拡張コアをさせ、発泡倍率を高め表面および内部に肉厚の薄いPCの発泡セルを形成させれば衝撃強度が十分にあるPCの発泡構造体を得る事が出来る。これが本発明で述べているPC、およびPCを主成分とする樹脂の発泡成形の意味で目的である。PCは他の樹脂例えばABSとのポリマーアロイが多用されているが、この場合も同じ様にABS中でPCは薄い層を持つのでPC/ABSを、又PC/PS、PC/HIPSなどの発泡成形に水を発泡剤に用いる事は可能である。
【0046】
(PC系樹脂の発泡倍率を上げる手段)
発泡剤に水を用い、成形機加熱筒内で発泡性を付与した樹脂を成形空間に充填する。充填後に予め定めた距離だけ金型を後退(一般的には可動側の金型を後退させる事である。別言をすればPLを予め定められた距離を開く事である。)させる。以下詳細なプロセスを示す。金型が閉められ、成形空間に発泡性を付与した樹脂が充填される。充填と同時に、或いは充填から少し時間を遅延させて、予め定められた距離だけ金型を開く。この時に発泡性樹脂の発泡力によって成形品は拡張する。別に内部を中空(発泡性樹脂を用いた中空成形で、高圧の窒素ガスなどを成形機のノズルから、又は/およびランナーから、又は/および成形品へ直接ガスを注入して)にしてその内部のガスの力で拡張させる場合(特に図13図14に示すコア・バックは、PLが縦見切りなので、金型を大きく開けてもバリ発生は少ない。然し体積を2倍、5倍、10倍と発泡倍率を極端に大きくすると、発泡力だけでは、金型への転写性は乏しく、そのままでコア・バックをさせると金型から成形品は離れてしまい(しまうので)、結果型再現性は低下する。結果高倍率を持つ発泡成形品は得られない。GCPを適用した発泡成形では更に型再現性は低下するので表面が平滑で綺麗な高い発泡倍率の発泡成形品は得られない。この課題を解決する手段に発明者は発泡性樹脂を用いた中空成形を実施し、型再現性が十分得られる事を確認した。またGCPを用い、発泡性樹脂に中空成形を行いモールド・バック、コア・バックすれば表面が綺麗な高発泡倍率の発泡成形品が得られる事も確認をした。)もある。冷却・固化が完了し、成形品の内部に高圧ガスを注入した場合は高圧ガスを排気して、内部の圧力を膨れ、バーストが発生しない圧力まで下げて、金型を開いて発泡成形品を取り出す。この時に3枚型構造の金型では予めPLが一定の距離開かれていれば、そのままPLを開けてもストリッパー・プレートが開かず、スプール・ランナーは払えないので、金型にはPLが先に開けられても、ストリッパー・プレートも後で開く機構を組み込む必要がある。
尚このモルード・バック、コア・バックをコントロールするソフトは外部にシーケンサー(PLC、PLCを用いたコントローラーボックス)を用い、成形機と信号の交換を行い実施する以外に、成形機に組み込んであるPLCにこれらの動作をさせるソフトを付加させる事も出来る。
【0047】
本発明の起泡核剤およびPC系樹脂の押出機への供給方法は特に限定されないが、以下の方法が代表的に例示される。
(1)本発明の起泡核剤およびPC系樹脂を独立して押出機中に供給する方法。
(2)本発明の起泡核剤およびPC系樹脂添加剤をスーパーミキサーなどの混合機を用いて予備混合した後、押出機に供給する方法。
【0048】
上記の方法に限らず、起泡核剤を原料のPCに任意量混合した後、樹脂を製造しても良い。PC系樹脂組成物の製造方法は何ら限定されるものではない。本発明の起泡核剤を含有したPC系樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、およびフィルムなどの形での発泡成形にも使用する事が出来る。更に特定の延伸操作をかける事により熱収縮チューブとして成形する事も可能である。
更には回転成形やブロー成形により成形品とする事も出来る。難燃性を有するPC系樹脂組成物(難燃剤、難燃助剤を添加して難燃性を持たせた樹脂)、硝子繊維などのミネラルを添加して剛性などを高めた樹脂の成形品でも実施は可能である。この成形品には、塗装、鍍金などの各種表面処理を行う事も可能である。
【0049】
PC系樹脂の中でPCを主成分とするポリマーアロイ、ポリマーブレンドはPC/PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC/PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC/ABS(ブタジエンにアクリル・ニトリルとスチレンとをグラフト共重合させたアクリル・ニトリル・スチレン・グラフト三元共重合体と、AS(アクリル・ニトリルとスチレンとの共重合体)}、PC/AES、PC/AAS、PC/ASA、PC/PS(ポリスチレン)、PC/PP(ポリプロピレン、ポリメチル化ビニル)、PC/PE(ポリエチレン、ポリ水素化ビニル)、PC/塩化ビニル、PC/PPOなどの発泡成形では、起泡核剤の選定を誤ると本来のPCの物性が発揮されない。
PC系樹脂の発泡成形に有用な発泡剤は水であるが、ポリマーアロイ、ポリマーブレンドでPET、PBTを含む場合はPETなどのエステル系樹脂は分解し物性が著しく下がる。
【0050】
「相溶性」とは、熱可塑性樹脂の場合に其々の樹脂が加熱溶融の段階で分子レベルで混ざり合う性質を言い、例えばABSに対しての、ASは相溶性がある、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)にはPS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)が相溶する。本発明でPPOとPPEとは同物質として取り扱い、「PPO」とする。HIPS又は/およびPSを用いて変性、変成(混ぜ合わせてブレンドポリマー、ポリマーアロイとした。)PPOを変成-PPO、変性-PPO、m-PPOと言う。
【0051】
「相容性」とは、相溶せず一方の樹脂中に他方の樹脂が分散し、海島構造、又はその他の構造を示す場合で、例えばABS中のBゴム{ブタジエンゴムにアクリロ・ニトリル(シアン化ビニル)とスチレン(フェニル化ビニル)とをグラフト共重合させた重合体(高分子)}はASに対して相容性を示す。相溶、相容する場合は物性低下はない、或いは少ない。
【0052】
{相容(溶)化剤}
PCを主成分とするPC/PET、PC/PBT、PC/AS、PC/ABS、PC/PS、PC/HIPSなどのポリマーアロイ、ポリマーブレンドを製造する場合、必要に応じて相容(溶)化剤を使用する。これ等に使用する相容(溶)化剤を例示すると日本油脂などから販売されている。相容(溶)化剤の添加量が少ないと、十分に相容(溶)しないので樹脂の物理的な性質、化学的な性質が十分に発揮出来ない。多い場合は物性の低下が著しいので、添加量はPCの重量に対して物性への影響が少ない範囲内である事が望ましい。
【0053】
(塗装適正)
PC系樹脂成形品の場合内部応力(内部の歪)が大きいと、塗料の溶剤(シンナー)によってマイクロクラックが入りPCの高い衝撃強度が発揮されない。本発明の発泡成形では、射出成形の場合は保圧を使用しない押し切り(打ち切り)の成形であるので、内部応力の存在は少ない。このままで塗装を施しても高い保圧を掛け、内部応力の大きい成形品よりクラック発生による物性低下は少ない。更に2時間程度アニールをして、内部応力を除去すれば更にマイクロクラックによる物性低下(割れなど)は軽減される。
【0054】
(PC系樹脂の発泡成形の実施の形態)
PC系樹脂の発泡成形を実施するに当たり後述の比較例1(使用した発泡剤は炭酸水素ナトリウム)、比較例2(使用した発泡剤はADCA)、比較例3(使用した発泡剤はエタノール)で明らかな様にPCの発泡成形では全くPCとしての特性(衝撃強度が高い事=容易には割れない事)が発揮されない。然し実施例1に示した様に発泡剤を水(化学名は「酸化水素」、化学式は「HO」)を使用すればPCの物性低下は少ない事を確認した。
【0055】
(GCP)
発泡剤に水を用いて、文献PCT/JP2015/062611の図1図4図5記載の液体の注入装置、加熱筒に設けた注入口で射出成形機加熱筒内に水を注入し発泡成形を実施した。発泡成形品の表面は発泡剤の水に起因するスワール・マークが発生する。文献PCT/JP2015/062611の図20、乃至図22のノズルと、図23図25記載のGCP用にシールがなされたシール金型、図24記載のGCP装置を用いて、1.4MPaのエアーを用いGCPを行ったところ、表面のスワール・マークはなく綺麗で平滑なスキン層を持ち、内部は微細な発泡層を持つ発泡成形品の生産が可能な事を確認した。
【比較例1】
【0056】
直鎖状芳香族PC系樹脂{帝人化成(株)製、パンライト&#8722;L1225WP}、色はナチュラルカラー(透明)を予め80℃で2時間の脱湿関乾燥を行ったペレットに、無機系の化学発泡剤の重曹{(炭酸水素ナトリウム、重炭酸曹達、NaHCO)原末なので性状は白色の粉末}を0.7wt.%混ぜ合わせ、図1図2に示す製品形状(天肉の板厚は2mm)金型を、東洋機械金属(株)製の180トンの射出成形機で、GCPなしの発泡成形を行った。成形時の金型の表面温度は固定(キャビ)側、可動(コア)側ともに約45℃、溶融樹脂温度は260℃である。保圧を用いずに射出成形機にスクリューは前進端の打ち切り、ややショート・モールド気味{形状の欠け(ショート・モールド、ショート・ショット)などはなし。}で射出成形加工して、発泡剤に重曹を用いた発泡成形品を得た。
得られた発泡成形品の表面はGCPを実施していないのでスワール・マークが発生している。強度を確認する目的で、成形品を床に置き、上からゆっくりと体重が75kgの者が全体重を掛けて荷重した結果、本来のPCの強度は全くなく、海老煎餅の様に脆い事が確認され、重曹を発泡剤に用いたPCの発泡成形品は通常の使用に耐えない。PCの発泡成形には、発泡剤の重曹は不向きである。
【比較例2】
【0057】
比較例2は前記比較例1に於いて用いた発泡剤の重曹を、有機系化学発泡剤のADCA(原末なので性状は黄色の粉末)に変更した。添加量は重曹の0.7wt.%の半分の0.35wt.%とした。その他使用した金型、射出成形機、成形条件は同じである。得られた成形品を比較例1と同様に荷重して強度を確認したが、比較例1と同様に強度はなく、ADCAを発泡剤に用いたPC成形品は通常のPC成形品の様な使用に耐えない。PCの発泡成形には、発泡剤のADCAは不向きである。
【比較例3】
【0058】
文献PCT/JP2015/062611の図1記載の液体の注入装置、加熱筒に設けた注入口(PCT/JP2015/062611の図4図5に記載)を用い、加熱筒内のスクリューの圧縮ゾーンの初めに、成形品重量(1回の計量値)に対して1.5wt.%のエタノール(化学式はCOH)を計量開始から計量の終了までの間に一定量を連続的に注入をして、可塑化された溶融樹脂にエタノールを用いて発泡性を付与(加熱筒内で気化させエタノール蒸気を計量中の溶融混錬をした溶融樹脂中に加圧溶解、および又は微分散をさせた。)し、前記比較例1、比較例2と同様にして発泡成形品を得た。比較例1と同様に荷重を掛け強度を確認したが、前記比較例1、比較例2と同様に強度はなく、エタノールを発泡剤に用いたPCの発泡成形品は使用に耐えない。PCの発泡成形には、発泡剤のエタノールは不向きである。エタノールの代(替、か)わりにイソプロパノール(COH)でも同様でPCの発泡成形品の生産にはアルコールは使用には不向きである。
【0059】
前記エタノール、イソプロパノールを用いたABSの発泡成形品、スチレン変性のPPO(E)、PPの発泡成形品、6ナイロンの発泡成形品では前記PCの様に物性低下は殆ど見られない。加熱筒内で超臨界状態となった、エタノール、イソプロパノールの蒸気がアタックして、結果PCの分子構造が変わり物性低下が生じたと推測した。同様な理由でPET、PBTを用いたエタノール、イソプロパノールの発泡成形でも物性低下は著しい。
【比較例4】
【0060】
前記比較例1、比較例2、比較例3はGCPを掛けていないので、何れの発泡成形品の表面はスワール・マークが発生している。文献PCT/JP2015/062611の図20、乃至図22のノズルと、図23図25記載のGCP用にシールがなされたシール金型、図24記載のGCP装置を用いGCPを掛けた(使用した気体はレシプロタイプのコンプレッサーで圧縮した1.4MPaのエアーである。)発泡成形を行い、表面のスワール・マークのない綺麗なスキン層を、内部は微細な発泡セル(発泡層)を持つ発泡成形品を得たが、比較例1、比較例2、比較例3と同様に強度を確認をした結果、比較例1,比較例2、比較例3同様に強度低下は著しい。
【実施例0061】
前記比較例1乃至比較例4からPC系樹脂の発泡剤を模索する中、未乾燥のPC〔直鎖状芳香族PC系樹脂{帝人化成(株)製、パンライト&#8722;L1225WP}〕樹脂ペレット(吸水率は0.1wt.%程度)を比較例1で発泡剤の重曹を使用せずそのままで成形加工を行った結果、樹脂中の水分(元々吸湿していた水分)の起因した数個のボイドが、スプール・ランナーと、成形品に発生した。然しこの未乾燥のPCを用いた成形品は強度低下が起きていなかった。この事から発明者はPCの発泡成形には、水が使用出来るのではないかとの仮説を立て、予備実験の結果から水の可能性・有効性を見出し、鋭意研究を行い、PC系樹脂、広くはエステル系の樹脂の発泡成形には水が有効との事象を確認、本発明の完成に至った。
【0062】
比較例3に於いてエタノールの代わりに0.5wt.%の水(蒸留水、イオン交換水、水道水、市水)を用い発泡成形を行った結果、図3に示す様に発泡セルは数mm(ミリメートル)と大きいが水を発泡剤として用いた場合は、エタノールの様には物性低下はなく、荷重しても割れはなく、PCの発泡成形品としての物性は十分に維持し、PC成形品として十分に使用可能な発泡成形品を得るには水は有効な発泡剤である。
【実施例0063】
(起泡核剤)
直鎖状芳香族PC系樹脂{帝人化成(株)製、パンライト&#8722;L1225WP}100重量部に対し、
酸化アルミニウム5重量部をタンブラーを用いて均一に混合し、かかる混合物をベント式二軸押出器に投入してペレット状樹脂組成物を製造し起泡核剤の酸化アルミニウム5重量部含有のマスター・バッチのA001とした。
【0064】
同様に酸化アルミニウムの代わりに酸化銀を5重量部含有の起泡核剤のマスター・バッチB001を製造した。
【0065】
同様に酸化アルミニウムの代わりに二酸化ケイ素を5重量部含有の起泡核剤のマスター・バッチC001を製造した。
【0066】
同様に酸化アルミニウムの代わりに炭化ケイ素を5重量部含有の起泡核剤のマスター・バッチD001を製造した。
【実施例0067】
前記実施例1では起泡核剤を用いていないので発泡セルは大きく、粗かったが、実施例2では起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素其々で、発泡セルを微細化出来るか作用・効果を確認した。
パンライト&#8722;L1225WPに起泡核剤のマスター・バッチA001、マスター・バッチB001、マスター・バッチC001、マスター・バッチD001其々を別々にPC樹脂ペレット100に対し5を混ぜ合わせ(混合比=100:5)、比較例1と同じ様に(条件で)加熱筒内に水(使用した水は蒸留水)を樹脂の容量に対して水の容量を0.4%で注入、水を発泡剤に使用したPCの発泡成形品を得た。本実施例3で得られた射出発泡成形品は起泡核剤のA001、B001、C001、D001其々で起泡核剤の作用・効果によって微細な発泡セルを持った発泡構造体が得られた。実施例3の結果からPCに含有した起泡核剤のマスター・バッチA001、マスター・バッチB001、マスター・バッチC001、マスター・バッチD001に含有する発泡成形の発泡セルを微細にする其々の物質は、発泡セルを十分に微細化させた。得られた起泡核剤酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素含有の発泡成形品を比較例1などの場合と同様に荷重して強度を確かめた結果、起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素が含有された事によるPCの物性の低下は殆どない。勿論の事発泡剤の水による物性低下の影響も殆ど確認されない。
【実施例0068】
前記実施例3で前記比較例4に記載したGCPを適用すると、表面はスワール・マークのない綺麗なスキン層が、内部は約50μm以下の発泡セルを持った発泡成形品を得た。
【実施例0069】
前記実施例3、実施例4では起泡核剤のマスター・バッチA001、マスター・バッチB001、マスター・バッチC001、マスター・バッチD001を別々に、単独で用いたが、添加量を実施例の混合比の5を、A001を2.5とB001を2.5に、或いはA001を2.5とC001を2.5になどと2種類以上の起泡核剤のマスター・バッチ混ぜ合わせ使用した。、A001、B001、C001と3種類の場合で混合比を5に、或いはA001、B001、C001、D001全てを用いた場合も其々の起泡核剤の作用・効果は十分に発揮され、発泡セルを微細化させる事は確認した。当然の事起泡核剤の添加量を多くすると発泡セルはより微細に、少なくすると発泡セルは粗くなる。マスター・バッチとしているので、添加量の多い、少ないのコントロールで所望する発泡セルの大きさと、GCPを実施する場合には、表面のスワール・マーク発生の有無(起泡核剤を多く入れると発泡セルはより微細にはなるが、発泡力が高くなり、表面にスワール・マークが発生する。この場合はGCPの圧力を高める、或いはGCPに炭酸ガスを使用するなどでスワール・マークのない表面が綺麗な発泡成形を製造出来る。)を確認して最適な添加量を見つけ出す。
【実施例0070】
本起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素は、PC単独でなくPC系樹脂でも発泡セルの微細化は出来るか。水を発泡剤としての使用が有効かの有用性の確認をした結果、以下の示す成形材料の全てに於いて実施例2乃至実施例4の手段でも同様に行い、有効との結果を得た。使用した樹脂はPC/ABS、PC/PS(ポリスチレン)、PC/PVC(塩化ビニル)、PC/ポリアミド(PA)などでも実施可能であった。PC系樹脂で水は発泡剤として使用する場合は、蒸留水が望ましく、イオン交換水でも良い。市水でも、井戸水でも使用可能であるが、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)が存在すると、PCの分解が促進されるので全硬度(カルシウムイオンとマグネシウムイオンの総和の濃度)が100ppm以下の物(水)が望ましく、更には35ppmの物が良い。PC/PET、PC/PBT、PC/PEN(ポリエチレンナフタレート)でも起泡核剤の作用・効果はあったが、上述した様にPET、PBT、PENではこれ等の樹脂が加水分解してしまい、結果物性の低下は著しく。
これ等の起泡核剤はPC系樹脂に限定されるものでなく、ABS、HIPSなどのスチレン系樹脂、PPの代表されるオレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、塩ビなどのビニル系樹脂にも起泡核剤として使用が出来る。
【実施例0071】
住化ポリカーボネート(株)製のPC{SDポリカ(商品名)301-15(グレード)}に可塑化計量の中に、図1図2に示す成形品重量に対し、0.5wt.%のイオン交換水を、計量の開始から、計量終了まで注入し加熱筒内で気化させ、加熱溶融されたPC系樹脂に発泡性を付与させ、図3の成形品を得た。得られた成形品は起泡核剤が混ぜ込まれていなかったので、発泡セルは2mm乃至5mm程度と粗いく大きいが、重曹、ADCA、エタノールの様に物性の低下はなく、PC本来の物性を示した(図3)。
【0072】
GCP排気後直ぐに、可動側の金型を1mm後退させて、板厚2mmからGCP排気後直ぐに1mmモールド・バックさせ発泡倍率を高めた。モールド・バックによって樹脂の、成形品に掛かる圧力が下がり結果発泡セルは10mm、場所によっては20mmに達するまで大きくなっている(図4)。これだけ大きな発泡セルを持つ成形品にも関らず、図15に示すGCP装置を使用して金型内を1MPaまで圧気して、与圧した中に水を用いて発泡性を付与した前記PC系樹脂成形品の表面にスワール・マークは全くなく、平滑で綺麗である(図4)。
【0073】
圧力が1MPa、エアーでGCPを行い表面が綺麗な発泡成形品を得たが、起泡核剤が配合されていなかったので、発泡セルは非常に大きな物{大きさ(直径)は5mm程度、場所によっては5mm以上となった。(図3図4
【実施例0074】
住化ポリカーボネート(株)製のPC{SDポリカ(商品名)SI8000L(グレード)}を同様にイオン交換水で発泡成形をしたところ、超微細な発泡セルが得られた。同様のエアーで圧力1MPaでGCPを行ったところ発泡力が強すぎて、表面のスワール・マークを押させる事は出来なかった。
前記実施例7は301-15だけであったので発泡セルは粗く大きかったが、SI8000Lを用いる(混ぜ合わせる。)事で発泡セルは微細化され、GCPによって表面のスワール・マークを幾らかは抑え込めることを確認した。301-15のペレットを70部、SI8000Lのペレットを30部混ぜ合わせ、SI8000L中の成分を起泡核剤に活用した結果で、図3図4に比べると発泡セルは微細化され、1mm以下の発泡セルが成形品の内部に均一に分散されている事は目視確認した(図5)。
【実施例0075】
301-15のペレットを80部、SI8000Lのペレットを20部混ぜ合わせた混合樹脂を同じようにイオン交換水を用いて発泡成形を実施した。実施例7、実施例8と同様にGCPを実施したが実施例8に比べて更に表面のスワール・マークは少なくなったが、スワール・マークのない綺麗な発泡成形は得られなかった。
【実施例0076】
前記実施例9の混合比を変更したのが実施例10で、その混合比は301-15を90部、SI8000Lの混合比10部とした結果、1MPaのエアーを用いたGCP(使用した気体はコンプレッサーで圧縮した圧力が1から1.2MPa程度のエアー)で表面のスワール・マークはなくなり、表面が平滑で綺麗な、発泡セルが微細で綺麗なPCの発泡成形品を得た。得られた発泡成形品の強度は十分にある事を確認した。図5は本実施例8に於いてGCP排気後にコア側を0.5mm後退させて発泡倍率{(2mm+0.5mm(金型の後退量=金型を開けた距離)÷2mm(初めの板厚)=1.25(25vol.%の体積拡大)を高めた事を示したのが図5(写真)で、発泡セルの直径は1mm程度、成形品全体に存在し、GCPの作用・効果によって成形品の表面にスワール・マークは全くなく、平滑で綺麗である。
【実施例0077】
住化ポリカーボネート(株)製のPCとABSとのポリマーアロイ{SDポリカ(商品名)IM6011(グレード)}を前記実施例7と同様にイオン交換水を用いて発泡成形を行った。GCPはエアーで圧力は1MPaである。本実施例11に用いたPC/ABS(「PC/ABS」はPCとABSとのポリマーアロイの意味)の色は黒色、顔料が起泡核剤の作用をして、内部は微細な発泡層を持ち、表面はスワール・マークのない平滑で綺麗な発泡成形品を得た。
【実施例0078】
実施例11に用いた樹脂を他社の物で確認したのが本実施例12である。IM6011の代わりに日本エイアンドエル(株)のPC/ABS{テクニエース(商品名)T-251T-15(グレード)}とした。得られた発泡成形品は実施例11と同様に表面は平滑で内部は微細な発泡セルを持った発泡成形品である。
【実施例0079】
住化ポリカーボネート(株)製のPCとPET(ポリエチレンテレフタレート)とのポリマーアロイ{SDポリカ(商品名)IM401-18(グレード)}を用い前記実施例7同様にイオン交換水で発泡成形したが、PC/PETの物性は全く出ず、理由はPETの加水分解と推測をした。
(実施形態1)
【0080】
比較例1乃至比較例4と、実施例1乃至実施例5から、PC系樹脂を用い、水を発泡剤として、酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素を起泡核剤として用いれば、射出成形機だけでなく押出成形でも実施可能、ダイから出た(押出された)発泡性を有する樹脂を圧力が0.6MPa以上の気体(エアーでも、窒素ガスでも、炭酸ガスでも可)の中を通り、GCPの原理・手段を押出成形でも実施すれば表面の発泡を抑え、スワール・マークのない押出成形が可能である。
(実施形態2)
【0081】
実施例1乃至実施例5、および実施形態1では発泡剤に水を用いる事を述べたが、窒素ガス、炭酸ガスなどの気体を用いた発泡成形のミューセル、アモテックでも、本発明で例示した起泡核剤の酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素などは、PC系樹脂を用い、射出成形、押出成形、ブロー成形での実施での起泡核剤の作用・効果は十分発揮させる。
(実施形態3)
【0082】
本発明では、本内容はPCT/JP2015/062611、PCT/JP2015/069216、PCT/JP2016/086380、PCT/JP2020/015536の内容の発泡成形に掛かる部分GCP装置、シール金型、成形機、およびシャット・オフ・ノズルなどの付帯設備)の全てを包含する事を加筆し、主張する。
(実施形態4)
【0083】
PC系樹脂の発泡成形に於いて本発明の実施例に用いた発泡剤は水であり、起泡核剤に酸化アルミニウム、酸化銀、二酸化ケイ素、炭化ケイ素以外、PCを分解させなければ良く他にも使用可能な物は多々ある。未乾燥のPC(吸水したPC)と他の起泡核剤とを混ぜ合わせ(少量の水によってPC表面に展着させて)、射出成形機を用い、試験片を成形して物性の著しい低下の有無(PCの分解)を確認、著しい物性低下がなければ使用が可能な起泡核剤と判断しても良い。
(実施形態5)
【0084】
(発泡倍率を高める手段)
発泡成形に於いて発泡倍率を高める手段は、発泡剤の添加量を多くして、樹脂の発泡力を増す方法、成形空間へ発泡性樹脂を充填して、金型の一部を拡張して充填された発泡性樹脂の圧力を下げ発泡を容易にする方法、スクリューを下げて発泡性樹脂の圧力を下げ発泡を容易にする方法以外に、金型を開けて発泡倍率を高める方法がある。金型を開ける場合、金型の構造は、PL(パーティング)が平見切りの場合(図11図12に記載の金型構造、可動側金型後退の動き)と縦見切りの場合(図13図14に記載の金型構造と可動側金型後退の動き)とがある。前者をモールド・バック、後者をコア・バックと言い本発明では区別をする。モールド・バックは大きく金型を開くとPLにバリ発生の危険性があるのでそれ程大きくは開けない。コア・バックの場合はPLにバリ発生の危険性が少ないので発泡倍率の大きな成形品が得られる。
【0085】
(金型装置)
本実施形態5はモールド・バック、コア・バック何れでも実施可能である。射出成形の金型(金型の構造)は2枚型と3枚型とがある。2枚型でモールド・バック、コア・バックをさせる場合、射出成形機の可動側のダイプレートを予め定められた量(距離)後退させ成形空間(金型、キャビティ)を拡大させ発泡倍率を高める。一般の射出成形に於ける3枚型の型開きはPLが先に開くとストリッパー・プレート(スプール・ランナーの払い板)を開けるのが困難な場合があるので、PLにはPLロックの機構を持たせて、初めに固定の型板と、ストリッパー・プレートを開かせるのが一般的である。しかしこの金型構造で射出成形機の可動側ダイプレートを後退しても、PLロックの為にストリッパー・プレートが開いてしまい、モールド・バック、コア・バックとはならない。この問題を解決する手段として発明者はPLロックを用いず、PLにバネ、ウレタンゴムなどをはめ込み、可動側のダイプレートを予め定められた距離を後退させれば前記のバネ、又はウレタンゴムなどによって必ず先にPLが開かれモールド・バック、コア・バックが出来る。バネ、ウレタンゴムなどの代わりに、ガス・スプリングでも構わない。油圧シリンダー、空圧シリンダーも使用出来る。これを発明者は先金型開機構と称した。モールド・バック、コア・バックして発泡倍率を高めて、金型内で冷却固化が完了してから、ダイプレートを下げて(後退をさせて、)発泡成形品を取り出すが、PLロックがないので、ストリッパー・プレートは動かずスプール・ランナーは金型から離れない。そこで発明者は可動側の金型と、ストリッパー・プレートを引っ張りリング、引っ張りボルト(竿)、チェーン、鎖などを用いて、型開きを利用してストリッパー・プレートを動かして、スプール・ランナーを金型から外す(離型する)。引っ張りリング、チェーン、鎖などが型開きで壊れない、切れない様にする工夫(例えば引っ張りボルトにバネを仕込むなどの構造)をする。
可動側金型と、ストリッパー・プレートとを引っ張りリングなどで直接繋ぐ以外に、可動側の金型と固定側の金型とを引っ張りリングなどで繋ぎ、固定側の金型と、ストリッパー・プレートとを引っ張りリングなどで繋いでもよい。
図6図7は上述の引っ張りリングなどを用いる3枚型を示しているが、2枚型の場合もPLにバネ、ウレタンなどを設置しても良く、設置するとモールド・バック、コア・バックで金型の後退の補助が出来る。
【0086】
この型構造はGCPの場合でも実施可能である。背面取り構造の(例えばスタック・モールドなど)金型でも有効で、3枚型と同じように其々の製品面のPLに同様にダイプレートの後退で必ず先に開く様にバネ、ウレタンゴムなどを設置すれば良い。この場合もシール金型を用いればGCPを行い表面にスワール・マークのない表面が平滑で綺麗で、発泡倍率の高いGCPを適用した発泡成形品を得られる。
PLを先に開く機構はホット・ランナーが組み込まれた金型での実施も可網、この場合に使用するホット・ランナーはバネ式、ニードル式などの開閉機構(弁)を持った物が好ましい。
【0087】
スタック・モールド実施の場合、一般には横型の射出成形機でも可能であるが、PLからの発泡性樹脂の射出を行う場合は、型締めの機構が縦型で、射出機構が横型の射出成形機(一般的には縦型の射出成形機と言う。)を用いる。この場合にPL射出のスタック・モールドの場合、バネ式、ニードル式などの開閉機構が組み込まれたシャット・オフ・ノズルを用いる。この様にスタック・モールドの適する発泡成形品には、発泡成形の加工には、例えば半導体の製造工場で半導体の運搬に用いるICトレイなどの平面形状(平板形状、平板に近い形状)では特に生産性を高めるのには有効な手段である。ICトレイの場合は、導電性が要求されるので、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどの導電性カーボン、カーボン・ナノ・チューブ(CNT)等を添加する。成形用樹脂は耐熱性の高いm-PPO、PC系樹脂を主成分としたポリマーアロイが使用される。PC系樹脂単独の場合もあり、耐熱性の要求が満たされれば樹脂の種類は問わない。
【0088】
通常発泡成形は保圧を用いない、或いは用いても短時間であるので、其々の成形品(成形空間)への充填バランスを正確にする必要はなく、成形空間へ発泡性樹脂を略(ほぼ)一杯に、成形空間の体積を100として70以上充填させればい。モールド・バック、コア・バックをさせるのでショート・モールドでも構わない。100を越えてもモールド・バック、コア・バックするので最終は100を越える事はない。其々の成形空間に発泡性樹脂を充填させるには略同時(充填の条件は一つで)に行うが、シーケンシャル制御で別々の充填でも構わない。
【0089】
本実施形態5で実施する発泡成形は射出成形機を用いた発泡成形であり、樹脂に発泡性を付与する物質、所謂発泡剤の性状は、気体のモノ、例えばミューセル、アモテックの様に圧縮した気体、液化炭酸ガスを用いる技法、アルコール、水などのNPTで液体のモノを用いる技法、ミクロバルーン、マクロバルーン、マイクロバルーン、重曹などの炭酸水素塩、アゾ・ダイ・カルボン酸アミド(ADCA)に代表されるアゾ化合物、ダイ・ニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン(DPT)に代表されるニトロソ化合物を用いる発泡成形の技法の全てに適用される。
【0090】
ICトレイの場合は、化学発泡剤を用いると発泡残渣がICに、ICの足に悪影響を与える危険性があるので、十分に確認する必要がある。気体を用いた発泡成形、液体を用いた発泡成形では発泡残渣が成形品に混ざり込まないので問題はない。実際に発明者は図10(写真)に示すICトレイの金型を用い、成形用樹脂にアセチレンブラックを含有させたm-PPOを用い、発泡剤に水、エタノール、プロパノール、エタノール40wt.%含有の水との混合物、プロパノール40wt.%含有の水との混合物、エタノールとプロパノールとの1:1で混ぜ合わせた混合物を用いて、樹脂(成形品)の重量に対し、1wt.%程度を加熱筒内に入れ、気化させ発泡性樹脂として、GCPなしの発泡成形を行い重量軽減が6~10程度の結果を得た。GCPを実施した場合は5~8%程度の重量の軽減であった。其々の成形品の衝撃強度はソリッド(中実)成形品を100とした場合、GCPなしが約70%低下、GCPありは約25%の低下に留まった。上記実施例はm-PPOで行っているが、PC系樹脂でも同様の結果が推測される。この場合に使用する発泡剤は水が好ましく最適である。
ICトレイに適する成形材料は耐熱温度と、価格からm-PPO、又はPC系樹脂を主成分とする導電性を付与した樹脂が好ましく、それ程耐熱性の要求が高くない場合は、ABS等のスチレン系樹脂をを主成分とする導電性を付与した樹脂でも良い。
【0091】
成形品の板厚(肉厚)に対し25%分をモールド・バックさせた結果、重量軽減25%程度の、GCPなしの場合の成形品と、ありの場合との成形品を得た。この場合の成形品の衝撃強度は更に低下したが、m-PPOに含まれるグラフトゴム(ブタジエンゴムにスチレンをグラフト共重合させた2元共重合体)を予め衝撃強度低下を想定して添加しておけば良い。ゴムの粒径を大きくして衝撃強度を高める事も可能で、この場合は粒径の異なるグラフトゴムを使用すると更に衝撃強度の向上になる。
【0092】
ブタジエンゴムの代わりにEPDM{エチレンゴム(エチレン・プロピレン・ジエンモノマー)}を用いると更に衝撃強度向上は図れる。EPDMはブタジエンゴムに比べ熱安定性が非常に高く、EPDMのグラフトゴムを用いたm-PPOはリサイクル性が高い(リサイクルを繰り返し、熱履歴が加えられても物理的な、機械的な物性低下は少ない。)。m-PPOを製造する場合、PPOと、PSと、グラフトゴムとを溶融混練するが、PSの代わりに破棄された発泡スチロール(成分はPSで発泡残渣の残らないペンタンなどを用いて発泡させているので使用は可能である。)を減容化した物を使用すれば環境負荷の低減に寄与する事が出来る。必要に応じて一般の起泡核剤、本発明に記載したPC系樹脂の起泡核剤を使用しても構わない。ICトレイはm-PPOにアセチレンブラックなどの導電性材料を混ぜ込むので、アセチレンブラックも起泡核剤の作用をする。m-PPOの代わりにPC系樹脂でも構わない。
【0093】
図10の金型を用いて、m-PPOの代わりにPC{SDポリカ(商品名)301-15(グレード)に導電性を持たせた樹脂をイオン交換水を用いて発泡成形させ、前記m-PPOと同様に発泡成形可能、軽量化も可能である事を確認した。導電性を付与させるケッチェンブラック、アセチレンブラックなどの導電性カーボンは気泡核剤として作用した。
CNTでも試みた結果CNTも起泡核剤としての作用・効果を示す事から、ICトレイなど導電性が求められる成形品にはこれ等導電性を付与する導電性材料は起泡核剤には有効、十分使用は出来る。
【0094】
上述の実施例、実施形態は説明のために例示したもので、本発明としてそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、および図面の記載から当事者が認識する事が出来る本発明の技術的思想に反しない限り、変更、および付加が可能である。
【0095】
本発明で説明をしたPC系樹脂の起泡核剤はPC系樹脂を用いた押出の発泡成形に使用する。この場合に使用される発泡剤は液体の水が最適である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
PC系樹脂の発泡成形品の、特に外観に発生するスワール・マークのない外観が綺麗な、発泡倍率が高い発泡成形品の製造に適用される。PC系樹脂の発泡成形には水が最適な発泡剤である。
【0097】
モールド・バック、コア・バックを実施する金型のPLを優先的に開けて発泡倍率を高める金型構造を提供する。モールド・バック、コア・バックを用いてより生産性を向上する手段として、発泡成形を用いた場合に、横型の、又は縦型の射出成形機を用いてのスタック・モールドの提案をする。
【0098】
本発明で使用する金型の構造図、GCP装置の構造図、実施した結果を示す図(写真を含む。)、塗装などの結果を記した図(表)などを示した。
【符号の説明】
【0099】
1.可動側の取付(取付け、取り付け)板で、エジェクターロットの穴は図示せず。
2.エジェクタープレートで、エジェクターピン、スペーサーブロックは図示せず。
3.可動側の型板を示し、多くの金型は入子(入れ子)構造とするが、入れ子などは図示せず。
4.成形空間(キャビティ、溶融樹脂が充填させる空間)を示す。
5.符番4に設けた引っ張りリングを止めるボルトなどで、引っ張りリングは自由に可働(動ける様に)出来る様に、引っ張りリングは固定せず、締め付けずにクリアランス(余裕、遊び)を持たせてある。
6.引っ張りリングで可動の型板(符番3)と、ストリッパー・プレート(符番8)とに繋げ、金型の後退(開き完了)の完了の時点で、ストリッパー・プレートは開けられ、スプール・ランナーをはらう。符番8にはランナーロックピンは図示していないが、ランナーロックピンは必要に応じて設ける。
7.符番8に設けた引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
8.ストリッパー・プレートでスプール・ランナー(図示せず。)が掘(ほ)り込まれている。
9.固定側の取り付け板で、スプール・ブッシュなどは図示せず。
10.モールド・バック、コア・バックさせる場合にPLが先に開く様にPLに填(は)め込まれたバネである。このバネによってモールド・バック、コア・バック(金型後退)させた場合、必ず先にPLは開き、成形空間は拡張され、中に充填された発泡性樹脂は、発泡力によって膨らみ、結果発泡倍率の高い発泡成形品が得られる。
11.図6は符番3と、符番8とを符番8によって開ける事が出来る金型の構造を示したが、図7は引っ張りリング(符番13、符番14)を別々に設けた金型の構造で、符番11は固定側の型板の設けた引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
12.可動側の型板の設けた引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
13.可動側型板と固定側型板とを繋ぐ引っ張りリングで、可動側の金型が後退し、引っ張りリング(符番13)によって符番15は引っ張られ、続いて符番14に引っ張られ符番8は開き、スプール・ランナーをはらう
14.符番8と符番15との間の引っ張りリングである。
15.固定側の型板を示す。
16.ホッパー
17.成形機に加熱筒で、液体の発泡剤、気体を発泡剤として使用する場合は、此ところに穴を開け注入する。
18.成形機のノズル。
19.分枝させたノズルで符番24の成形空間に樹脂をPLから射出(パーティング射出)する。
20.分枝させたノズルで符番25の成形空間に樹脂をPLから射出(パーティング射出)する。
21.成形機の射出装置。
22.符番24へPLから射出している(パーティング射出)事を示している。
23.符番25へPLから射出している(パーティング射出)事を示している。
24.成形空間
25.成形空間
26.モールド・バック、コア・バックさせ、符番24を拡張させる時、PLを先に開く目的でPLに組み込まれた機構で、縦の型締め(符番36)の場合は、ウレタンより力の強いガス・スプリング、油圧シリンダーの方が良い。
27.モールド・バック、コア・バックさせ、符番25を拡張させる時、PLを先に開く目的でPLに組み込まれた機構で、縦の型締め(符番36)の場合は、ウレタンより力の強いガス・スプリング、油圧シリンダーの方が良い。
28.符番32の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
29.符番32の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
30.符番33の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
31.符番33の引っ張りリングを止めるボルトなどを示す。
32.引っ張りリングを示す。
33.引っ張りリングを示す。
34.下側(横型の場合の固定型に相当する。)の金型の取り付け板を示す。但し符番36の金型開閉の機構が下側の場合もあり、その場合はこの取り付け板の方が可動する事になる。
35.上側(横型の場合の固定型に相当する。)の金型の取り付け板を示す。
36.金型を開閉する機構が上側にあり。符番35に付けられた金型を持ち上げる事を示す矢印で、図8はスタック・モールド(符番24と符番25との背面でのセット取り)を示している。符番36は下側としても構わない。
37.分枝したノズルを示している。符番19、符番20の先端は発泡成形での洟垂(ハナタ)れを防止する為に内部には、バネで、油圧で、空圧で、機械的な機構で開閉するニードルなどの弁の機能が組み込まれいる。
38.発泡成形画可能なスタック・モールドの金型装置を示す模式図で、エジェクターピンを例えば荷重式Oリング、U字形状のOリングなどを用いてシールし、その他スプール・ブッシュ、型板と取り付け板の間、PL、型板の合わせ面などをOリングでシールしたGCP実施可能なシール金型、エジェクターピンのシールをエジェクターボックス構造でシールしたGCP実施可能なシール金型装置を示している。
尚符番38乃金型装置は、シールをせずに、GCPを行わずに発泡成形しても良い。
39.図9は符番32などの引っ張りリングの代わりを果たす引っ張りボルトを示している。符番39は引っ張りボルトの竿(本体)である。
40.引っ張りボルトの鍔部である。
41.引っ張りボルトの鍔部である。符番40、又は符番41をボルトとして、符番39に組み込む。
42.金型を後退し過ぎた時に符番40、符番41の鍔が破損するのを防ぐ目的で符番39に組み込まれたバネを示す。
43.固定側の金型。
44.可動側の金型
45.成形空間{附(付)番4}へ充填された発泡性樹脂。
46. 可動側の金型を後退(モールド・バック)させた事で、成形空間(附番4)が拡大する事で、成形空間内に充填された発泡性樹脂(附番45)は拡張(拡大)しているがPLの隙間が発生している事を示す。
47.モールド・バックさせた事で成形空間(附番4)内に充填された発泡性樹脂(附番45)が拡張され発泡倍率が高くなった事を示す発泡成形品。
48.成形空間(附番4)へ充填された発泡性樹脂。成形空間(附番4)は初めは附番50のコア・バックの金型部分が入り込んでいる事を示している。
49.固定の金型と、可動の金型(附番50に示すコア・バックの金型部分)は縦見切りとしているが、其々の金型が接する事で金型同士(附番43と附番50とが、)が擦れる。擦れる事を防止する為に附番49の隙間を持たせ、樹脂が流れ込む空間を作り、金属同士が擦れない様にしている。
50.コア・バックさせる前に成形空間へ入り込んだ可動側の金型を示す。
51.コア・バックさせた事で、附番44は後退する。附番44に組み込まれた附番50も同じように後退して、附番48を拡張させた。
52.コア・バックさせた事で成形空間(附番4)内に充填された発泡性樹脂(附番48)が拡張され発泡倍率が高くなった事を示す発泡成形品。
53.発泡倍率を高める目的でコア・バックさせた事でPLは大きな隙間が生じる事を示している。但しコア・バックの場合、金型は縦見切りして、可動側の金型(付番44)の後退によって附番50が附番51まで後退する。附番49に示す樹脂の部分が存在するので、PLにバリが張る事は少ない。図11図12は成形空間の拡張モールド・バックを、図13図14は成形空間の拡張コア・バックを示した。形状が3次元の物で開口部などがある場合は、其々の場所(形状)でモールド・バック、コア・バックとする事もある。
54.コア・バックによって拡張させた成形空間を示す。
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