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  • 特開-粒子製造装置 図1
  • 特開-粒子製造装置 図2
  • 特開-粒子製造装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141155
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】粒子製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/04 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
B01J2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041336
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】土井 尚俊
(72)【発明者】
【氏名】長門 琢也
【テーマコード(参考)】
4G004
【Fターム(参考)】
4G004EA05
4G004EA06
(57)【要約】
【課題】所望の粒径の粒子を製造可能な粒子製造装置を提供する。
【解決手段】粒子製造装置1は、処理室3とマイクロ波照射手段4とを備える。処理室3は、液滴Lを吐出するインクジェットノズル2aを収容するノズル収容空間3a、及び、ノズル収容空間3aの下方に設けられ、インクジェットノズル2aから吐出された液滴Lが自然落下する自然落下空間3bを有する。マイクロ波照射手段4は、自然落下空間3bを自然落下する液滴Lにマイクロ波Wを照射する。マイクロ波照射手段4から照射されたマイクロ波Wにより、自然落下空間3bを自然落下する液滴Lが乾燥して粒子Pが形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液の液滴を乾燥させて粒子を製造する装置であって、
前記液滴を吐出するインクジェットノズルを収容するノズル収容空間、及び、該ノズル収容空間の下方に設けられ、前記インクジェットノズルから吐出された前記液滴が自然落下する自然落下空間を有する処理室と、
前記自然落下空間を自然落下する前記液滴にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とを備え、
該マイクロ波照射手段から照射された前記マイクロ波により、前記自然落下空間を自然落下する前記液滴が乾燥して前記粒子が形成されることを特徴とする粒子製造装置。
【請求項2】
複数の隣接した前記処理室と、これらの前記処理室の前記ノズル収容空間の間で、前記インクジェットノズルを移動させる移動機構とを備え、
一の前記処理室で所定量の前記粒子が形成された後に、該処理室の前記ノズル収容空間内の前記インクジェットノズルが、前記液滴を吐出したままの状態で、前記移動機構により、前記一の前記処理室に隣接する他の前記処理室の前記ノズル収容空間内に移動し、該処理室で所定量の前記粒子が形成される請求項1に記載の粒子製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料液の液滴を乾燥させて粒子を製造する粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医薬品、農薬、食品、電池材料等に用いられる粒子を製造する装置の1種として、噴霧乾燥装置が知られている。この噴霧乾燥装置では、二流体ノズル等で原料液を噴霧して生じた液滴を、熱風等の気流で乾燥させて粒子を製造する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-143944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような噴霧乾燥装置では、二流体ノズル等から噴霧されて生じる液滴の大きさが揃っていないことに起因して、あるいは、熱風等の気流によって、乾燥中の液滴同士が結合することに起因して、製造される粒子の粒径が所望のものにならない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、所望の粒径の粒子を製造可能な粒子製造装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る粒子製造装置は、原料液の液滴を乾燥させて粒子を製造する装置であって、前記液滴を吐出するインクジェットノズルを収容するノズル収容空間、及び、該ノズル収容空間の下方に設けられ、前記インクジェットノズルから吐出された前記液滴が自然落下する自然落下空間を有する処理室と、前記自然落下空間を自然落下する前記液滴にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とを備え、該マイクロ波照射手段から照射された前記マイクロ波により、前記自然落下空間を自然落下する前記液滴が乾燥して前記粒子が形成されることを特徴とする。
【0007】
ここで、「自然落下」とは、落下する物体が、気流に流されること無く、自重で落下することを意味する(以下、同様)。また、マイクロ波とは、波長が1mm以上1メートル以下の電波を意味する(以下、同様)。
【0008】
この構成によれば、乾燥させる対象の原料液の液滴は、インクジェットノズルから吐出される。インクジェットノズルは、吐出する液滴の量の制御が可能なので、所望の大きさの液滴を生成することが可能である。従って、乾燥させると所望の粒径の粒子となる大きさの液滴を生成することが可能なので、所望の粒径の粒子を製造することが可能となる。また、自然落下する液滴をマイクロ波によって乾燥するので、液滴の乾燥用の気流が不要となる。従って、乾燥中の液滴同士が結合することを抑制可能なので、所望の粒径の粒子を製造することが可能となる。すなわち、本発明に係る粒子製造装置によれば、所望の粒径の粒子を製造可能な粒子製造装置を提供することが可能である。
【0009】
また、液滴の乾燥用の気流が不要となり、自然落下中の液滴を乾燥させるため、従来のように、液滴を気流によって乾燥させる場合より、乾燥のために必要な空間を縮小可能である。
【0010】
上記の構成において、複数の隣接した前記処理室と、これらの前記処理室の前記ノズル収容空間の間で、前記インクジェットノズルを移動させる移動機構とを備え、一の前記処理室で所定量の前記粒子が形成された後に、該処理室の前記ノズル収容空間内の前記インクジェットノズルが、前記液滴を吐出したままの状態で、前記移動機構により、前記一の前記処理室に隣接する他の前記処理室の前記ノズル収容空間内に移動し、該処理室で所定量の前記粒子が形成されてもよい。
【0011】
この構成であれば、一の処理室で所定量の粒子が形成された後に、他の処理室で粒子が形成されるまでの間、インクジェットノズルが液滴を吐出したままの状態である。従って、この間にインクジェットノズルの吐出口に付着した原料液が乾燥して固化してインクジェットノズルの吐出口が詰まることを抑制できる。また、インクジェットノズルが液滴を吐出したままの状態で移動するので、他の処理室での粒子の形成の開始がスムーズに行われるため、装置全体として、実質的に連続的に粒子を製造可能になる。
【0012】
また、この構成であれば、一の処理室で形成された粒子の処理室からの外部への排出を、他の処理室で粒子を形成する間に行うことが可能である。つまり、粒子の排出と、粒子の形成を別の処理室で行うことができる。これにより、処理室からの粒子の排出に伴う空気の乱れが液滴の自然落下を妨げることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所望の粒径の粒子を製造可能な粒子製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る粒子製造装置の全体を示す概略図である。
図2】インクジェットノズルの周辺を示す概略図である。
図3】液滴の乾燥を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る粒子製造装置の全体を示す概略図である。粒子製造装置1は、原料液Mの液滴Lを乾燥させて粒子Pを製造する装置である。粒子製造装置1は、インクジェットヘッド2と、複数(本実施形態では2つ)の隣接した処理室3と、2つのマイクロ波照射手段4とを主要な構成要素として備える。
【0017】
図2に拡大して示すように、インクジェットヘッド2には、液滴Lを吐出するインクジェットノズル2aが、複数設けられている。本実施形態では、インクジェットノズル2aとして、オンデマンド型のピエゾ方式のものを使用するが、これに限定されず、例えば、オンデマンド型のサーマル方式やバルブ方式、コンティニュアス型のもの等であってもよい。
【0018】
インクジェットノズル2aの吐出口2bの口径は、特に限定されないが、例えば100μm以下、50μm以下、30μm以下に設定することが可能である。インクジェットノズル2aの吐出口2bの口径を、数十μmに設定すれば、数十μmの液滴Lを吐出することができ、この液滴Lを乾燥させることで、数μmの粒径の粒子Pを製造することが可能である。
【0019】
図1に示すように、インクジェットヘッド2には、原料液Mが貯留されている原料液貯留部5が、供給路5aと帰還路5bを介して接続されている。不図示のポンプにより、原料液貯留部5から供給路5aを介してインクジェットヘッド2に原料液Mが供給され、また、インクジェットヘッド2で液滴として使用されなかった原料液Mが、インクジェットヘッド2から帰還路5bを介して原料液貯留部5に戻される(図1の黒矢印参照)。
【0020】
処理室3は、インクジェットヘッド2(インクジェットノズル2a)を収容するノズル収容空間3aと、ノズル収容空間3aの下方に設けられ、インクジェットノズル2aから吐出された液滴Lが自然落下する自然落下空間3bと、自然落下空間3bの下方に設けられ、粒子Pを回収する回収空間3cとを有する。
【0021】
マイクロ波照射手段4は、自然落下空間3bを自然落下する液滴Lにマイクロ波Wを照射する。マイクロ波照射手段4としては、公知のものを使用することができる。
【0022】
図3に拡大して示すように、マイクロ波照射手段4から照射されたマイクロ波Wにより、自然落下空間3bを自然落下する液滴Lが発熱し液滴Lから液体成分が蒸発することで液滴Lが乾燥して粒子Pが形成される。自然落下空間3bで形成された粒子Pが回収空間3c内に自然落下し、堆積する。
【0023】
また、粒子製造装置1は、2つの隣接した処理室3のノズル収容空間3aの間で、図1に白の両矢印で示すように、インクジェットヘッド2(インクジェットノズル2a)を横方向に移動させる移動機構(不図示)を備える。この移動機構により、インクジェットヘッド2は、一方の処理室3のノズル収容空間3a内の粒子形成用の位置と、他方の処理室3のノズル収容空間3a内の粒子形成用の位置との間を往復動する。この移動機構としては、公知の機構を使用することができ、例えばシリンダ機構、送りねじ機構等を使用することができる。
【0024】
一方(図1で右側)の処理室3で所定量の粒子Pが形成された後に、この処理室3のノズル収容空間3a内の粒子形成用の位置にあるインクジェットヘッド2が、液滴Lを吐出したままの状態で、上述の移動機構により、他方(図1で左側)の処理室3のノズル収容空間3a内の粒子形成用の位置に移動し、この処理室3で粒子Pの形成が開始され、所定量の粒子Pが形成される。他方の処理室3で粒子Pを形成している間に、一方の処理室3で形成された粒子Pは、回収空間3cから外部へ排出される。この間は、2つの処理室の間の隔壁6により、一方の処理室3の回収空間3cからの外部への粒子Pの排出に伴う空気の乱れが他方の処理室に伝わることが防止され、他方の処理室3の自然落下空間3bの空気が乱れて液滴の自然落下が妨げられることが防止される。
【0025】
そして、この他方(図1で左側)の処理室3で所定量の粒子Pが形成された後に、この処理室3のノズル収容空間3a内の粒子形成用の位置にあるインクジェットヘッド2が、液滴Lを吐出したままの状態で、上述の移動機構により、一方(図1で右側)の処理室3のノズル収容空間3a内の粒子形成用の位置に移動し、この処理室3で粒子Pの形成が開始され、所定量の粒子Pが形成される。一方の処理室3で粒子Pを形成している間に、他方の処理室3で形成された粒子Pは、回収空間3cから外部へ排出される。この間は、2つの処理室の間の隔壁6により、他方の処理室3の回収空間3cからの外部への粒子Pの排出に伴う空気の乱れが一方の処理室に伝わることが防止され、一方の処理室3の自然落下空間3bの空気が乱れて液滴の自然落下が妨げられることが防止される。
【0026】
以降、同様にして、2つの処理室3で交互に粒子の形成が行われ、装置全体で実質的に連続的に粒子を製造する。
【0027】
なお、2つの処理室の間の隔壁6において、2つのノズル収容空間3aの間に位置する部位6aは、インクジェットヘッド2の移動中には、インクジェットヘッド2が通過可能となり、インクジェットヘッド2がノズル収容空間3a内の粒子形成用の位置にある時には、2つのノズル収容空間3aを隔離するように構成されている。
【0028】
本実施形態では、自然落下空間3bと回収空間3cとが、常に連通状態であるが、例えば、自然落下空間3bと回収空間3cとの間にダンパ等を設けて、自然落下空間3bと回収空間3cとを、連通状態と非連通状態とに切り換え可能にしてもよい。この場合、自然落下空間3bと回収空間3cとを非連通状態にすれば、自然落下空間3bで粒子Pを形成しながら、自然落下空間3bの空気を乱すことを無く、回収空間3cから外部へ粒子Pを排出することが可能になる。
【0029】
本実施形態では、粒子製造装置1が稼働中の処理室3内は、大気圧であるが、大気圧より減圧した状態(例えば実質的な真空状態)であってもよい。この場合には、マイクロ波Wによる液滴Lの乾燥に加えて、減圧に起因した液滴Lからの液体成分の蒸発による液滴Lの乾燥が生じ、液滴Lの乾燥の効率を向上可能である。また、液滴Lの自然落下中の空気抵抗が減少するので、空気抵抗で落下速度が遅くなった液滴L同士が結合することを抑制可能である。また、液滴Lの自然落下中の空気抵抗が減少するので、液滴Lの落下速度が増大することにより、粒子の製造効率を向上可能である。
【0030】
以上のように構成された粒子製造装置1では、乾燥させる対象の原料液Mの液滴Lは、インクジェットノズル2aから吐出される。インクジェットノズル2aは、吐出する液滴Lの量の制御が可能なので、所望の大きさの液滴を生成することが可能である。従って、乾燥させると所望の粒径の粒子Pとなる大きさの液滴Lを生成することが可能なので、所望の粒径の粒子Pを製造することが可能となる。また、自然落下する液滴Lをマイクロ波によって乾燥するので、液滴Lの乾燥用の気流が不要となる。従って、乾燥中の液滴L同士が結合することを抑制可能なので、所望の粒径の粒子Pを製造することが可能となる。すなわち、本実施形態に係る粒子製造装置1によれば、所望の粒径の粒子を製造可能な粒子製造装置を提供することが可能である。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、2つの処理室3の自然落下空間3bのそれぞれに対してマイクロ波照射手段4が設けられていたが、1つのマイクロ波照射手段4で、両方の処理室3の自然落下空間3bを自然落下する液滴Lにマイクロ波を照射するように構成してもよい。また、2つの処理室3の自然落下空間3bのそれぞれに対してマイクロ波照射手段4が複数設けられてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 粒子製造装置
2 インクジェットヘッド
2a インクジェットノズル
3 処理室
3a ノズル収容空間
3b 自然落下空間
4 マイクロ波照射手段
L 液滴
M 原料液
P 粒子
W マイクロ波
図1
図2
図3