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特開2022-141161排ガス処理装置用筒状部材の製造方法
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  • 特開-排ガス処理装置用筒状部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141161
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】排ガス処理装置用筒状部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20220921BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
F01N3/28 311U
F01N3/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041346
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】藤村 良
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091BA03
3G091CA03
3G091FC07
3G091GA06
(57)【要約】
【課題】歩留まりよく、筒状部材に絶縁層を形成すること。
【解決手段】金属製の筒状本体と前記筒状本体の少なくとも内周面に設けられたガラスを含む絶縁層とを有する排ガス処理装置用筒状部材の製造方法であって、前記筒状本体の内周面の形状に対応する形状を側面に有する壁部材を、前記筒状本体の内周面と所定の隙間をあけて配置する工程と、前記筒状本体の内周面と前記壁部材の前記側面とで形成された前記隙間に、絶縁層形成用塗工液を導入し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜を焼成して前記絶縁層を得る工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筒状本体と前記筒状本体の少なくとも内周面に設けられたガラスを含む絶縁層とを有する排ガス処理装置用筒状部材の製造方法であって、
前記筒状本体の内周面の形状に対応する形状を側面に有する壁部材を、前記筒状本体の内周面と所定の隙間をあけて配置する工程と、
前記筒状本体の内周面と前記壁部材の前記側面とで形成された前記隙間に、絶縁層形成用塗工液を導入し、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成して前記絶縁層を得る工程と、
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記壁部材は、熱により軟化する材料を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記壁部材は、樹脂またはワックスの少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記塗膜の形成後に前記壁部材を除去する工程を含む、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記除去は、前記壁部材を加熱して流出させることにより行う、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記導入された絶縁層形成用塗工液を乾燥する工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁層の厚みが30μm以上である、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置用筒状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
担体に触媒を担持させた触媒担体が、車両エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に用いられている。その際、エンジン始動時に触媒温度が低いと、触媒が所定の温度まで昇温されず、排ガスが十分に浄化されないという問題がある。このような問題を解決するために、導電性を有する担体に通電して担体を発熱させることにより、担体に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)を用いた排ガス処理装置の開発が進んでいる。
【0003】
排ガス処理装置において、EHCは、代表的には、金属製の筒状部材(キャンとも称される)内に収容される。EHCによれば、車両始動時の排ガスの浄化効率に優れ得るが、EHCから周囲の排管へ漏電し、浄化効率を低下させる等の不具合が生じる場合がある。このような問題を解決するために、特許文献1および2には、筒状部材の内周面に絶縁層を形成し、漏電を防ぐことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5408341号公報
【特許文献2】特開2012-154316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記絶縁層は、代表的には、絶縁層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を焼成することにより得ることができる。優れた絶縁性能を得る観点から、例えば、形成される塗膜の厚みを厚くすることが求められる。しかし、厚みを厚くすると、塗膜を得るための歩留まりが低下する場合がある。
【0006】
本発明は、歩留まりよく、絶縁層を形成することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態による排ガス処理装置用筒状部材の製造方法は、金属製の筒状本体と前記筒状本体の少なくとも内周面に設けられたガラスを含む絶縁層とを有する排ガス処理装置用筒状部材の製造方法であって、前記筒状本体の内周面の形状に対応する形状を側面に有する壁部材を、前記筒状本体の内周面と所定の隙間をあけて配置する工程と、前記筒状本体の内周面と前記壁部材の前記側面とで形成された前記隙間に、絶縁層形成用塗工液を導入し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜を焼成して前記絶縁層を得る工程と、を含む。
1つの実施形態においては、上記壁部材は、熱により軟化する材料を含む。
1つの実施形態においては、上記壁部材は、樹脂またはワックスの少なくとも一つを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記塗膜の形成後に上記壁部材を除去する工程を含む。
1つの実施形態においては、上記除去は、上記壁部材を加熱して流出させることにより行う。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記導入された絶縁層形成用塗工液を乾燥する工程を含む。
1つの実施形態においては、上記絶縁層の厚みは30μm以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、歩留まりよく、絶縁性能に優れた絶縁層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態に係る排ガス処理装置に用いられる筒状部材を示す断面図である。
図2A】本発明の1つの実施形態に係る筒状部材の製造工程例を示す断面図である。
図2B図2Aに続く図である。
図2C図2Bに続く図である。
図2D図2Cに続く図である。
図2E図2Dに続く図である。
図3】本発明の1つの実施形態に係る排ガス処理装置の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図4図3の排ガス処理装置を矢印IVの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
図1は本発明の1つの実施形態に係る排ガス処理装置に用いられる筒状部材の概略の構成を示す断面図である。筒状部材100は、金属製の筒状本体110と、筒状本体110上に設けられた絶縁層120とを有する。
【0012】
筒状本体110は、円筒形のストレート部111と、第一端面110a側(図1中左側、上流側)に行くに従って内径が連続的に小さくされた縮径部112と、を有する。このような縮径部に加え、例えば、図示しない別部材と組み合わせて、複雑な構造を形成してもよい。具体的には、ストレート部111の第一端面110a側の端部には第一端面110a側に延び出た延出部113が形成され、縮径部112は延出部113に囲まれている。縮径部112を内側に収容可能な図示しない別部材と延出部113とを嵌合することで、複雑な構造を形成することができる。
【0013】
筒状本体110を構成する材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮が挙げられる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0014】
筒状本体110の厚みは、例えば、耐久信頼性の観点から、0.1mm~10mmであってもよく、0.3mm~5mmであってもよく、0.5mm~3mmであってもよい。筒状本体110の長さは、後述する触媒担体等の収容物のサイズ・数・配置、目的等に応じて適切に設定され得る。筒状本体の長さは、例えば、30mm~600mmであってもよく、40mm~500mmであってもよく、50mm~400mmであってもよい。好ましくは、筒状本体の長さは、後述する電気加熱型触媒担体の長さよりも大きい。この場合、電気加熱型触媒担体は、電気加熱型触媒担体が筒状本体から露出しないようにして配置され得る。
【0015】
筒状本体110の表面(例えば、内周面)は、図示しないが、表面処理が施されていてもよい。表面処理の代表例としては、ブラスト加工等の粗面化処理が挙げられる。粗面化処理により、筒状本体110と絶縁層120との密着性が向上し得る。
【0016】
絶縁層120は、筒状部材100と後述する触媒担体等の収容物との間に電気絶縁性を付与し得る。ここで、電気絶縁性は、周囲の排管への漏電を抑制する点から、代表的にはJIS規格D5305-3を満たすものであり、単位電圧当たりの絶縁抵抗値は例えば100Ω/V以上である。絶縁層120は、好ましくは、水分非透過性および水分非吸収性を有する。具体的には、絶縁層120は、緻密で、水を通さずかつ吸収しないよう構成されることが好ましい。緻密性としては、絶縁層の気孔率は、例えば10%以下であり、また例えば8%以下である。
【0017】
絶縁層120は、ガラスを含む。ガラスの組成は特に限定されず、種々の組成を有するガラスが用いられ得る。ガラスの具体例としては、ケイ酸ガラス、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミノケイ酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、ソーダバリウムガラス等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ガラスは、結晶質を含むガラスであることが好ましい。ガラスが結晶質を含むことにより、高温(例えば、750℃以上)においても軟化および変形し難い絶縁層が得られ得る。また、筒状本体との密着性に優れた絶縁層が得られ得る。具体的には、筒状本体(金属)との熱膨張係数の差を小さくでき、加熱時に発生する熱応力を小さくできる。なお、結晶質(結晶)の有無は、X線回折法により確認することができる。
【0019】
1つの実施形態においては、ガラスはケイ素およびホウ素を含む。ケイ素はSiOの形態でガラスに含有され得;ホウ素はBの形態でガラスに含有され得る。具体的には、ガラスはSiO-B系ガラス(ホウケイ酸ガラス)である。ガラスにおけるケイ素の含有量は、好ましくは5mol%~50mol%であり、より好ましくは7mol%~45mol%であり、さらに好ましくは10mol%~40mol%である。ガラスにおけるホウ素の含有量は、好ましくは5mol%~60mol%であり、より好ましくは7mol%~57mol%であり、さらに好ましくは8mol%~55mol%である。
【0020】
上記ガラスは、ケイ素およびホウ素に加え、マグネシウム、バリウム、ランタン、亜鉛、カルシウム等の他の成分(金属元素)を含み得る。例えば、マグネシウムをさらに含んでいてもよい。マグネシウムは、MgOの形態でガラスに含有され得る。この場合、上記ガラスにおけるマグネシウムの含有量は、好ましくは10mol以上であり、より好ましくは15mol%~55mol%である。また、例えば、バリウムをさらに含んでいてもよい。バリウムは、BaOの形態でガラスに含有され得る。この場合、上記ガラスにおけるバリウムの含有量は、好ましくは3mol%~30mol%であり、より好ましくは5mol%~25mol%であり、さらに好ましくは6mol%~20mol%である。
【0021】
なお、本明細書において「ガラスにおける元素含有量」は、酸素原子を除くガラス中の全原子の量を100mol%としたときの当該元素の原子のモル比である。ガラスにおける各元素の原子の量は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定される。
【0022】
絶縁層120の厚みは、例えば、優れた絶縁性を得る観点から、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上であり、特に好ましくは150μm以上である。一方、絶縁層120の厚みは、例えば800μm以下であり、好ましくは600μm以下である。
【0023】
図示例では、絶縁層120は、筒状本体110の内周面110cの全域に亘って形成されている。また、第一端面110a側の端部では、内周面110cから外周面110dに亘って絶縁層120が形成されている。絶縁層の形成領域は、後述する電気加熱型触媒担体等の収容物のサイズ・数・配置、目的等に応じて適切に設定され得る。例えば、図示例とは異なり、筒状本体110の内周面110cにおいて、第二端面110b側の端部に、絶縁層120が形成されない非形成領域を設けてもよい。
【0024】
絶縁層120は、代表的には、筒状本体110に、絶縁層形成用塗工液の塗膜を形成し、この塗膜を焼成することにより得ることができる。
【0025】
図2A図2Eは、本発明の1つの実施形態に係る筒状部材の製造工程例を示す断面図である。
【0026】
図2Aは、筒状本体110の第二端面110bが載置面S側となるように、載置面Sに筒状本体110を載置した状態を示し、図2Bは、筒状本体110に対し、所定の隙間Gをあけて、金型成形によって成形した壁部材21,22を配置した状態を示している。所定の隙間Gは、例えば、形成される絶縁層の膜厚に依存して調整される。所定の隙間Gは、例えば、30μm~800μmである。壁部材21は筒状本体110の内側に配置され、壁部材22は筒状本体110の外側に配置されている。壁部材21は、筒状本体110の内周面110cの形状に対応する形状を外側側面に有し、筒状本体110の内周面110cと所定の隙間Gをあけて配置し得るサイズに設計されている。壁部材22は、筒状本体110の縮径部112の外周面110dの形状に対応する形状を内側側面に有し、筒状本体110の外周面110dと所定の隙間Gをあけて配置し得るサイズに設計されている。壁部材22には、延出部113に係合する引っ掛け部22aが設けられており、筒状本体110の外周面110dと壁部材22との所定の隙間Gを維持している。絶縁層の膜厚を均一にする観点から、壁部材21,22の中心軸と、筒状本体110の中心軸とが同じ位置となるように、壁部材21,22と筒状本体110とを配置することが好ましい。
【0027】
壁部材は、任意の適切な材料により形成され得る。好ましくは、壁部材は、熱により軟化する材料を含む。このような材料を用いることにより、例えば、後述する壁部材の除去を簡便に行うことができる。壁部材は、樹脂またはワックスの少なくとも一つを含むことが好ましい。このような材料を用いることにより、例えば、上記金型成形により所望の形状を有する壁部材を得ることができる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。ワックスとしては、例えば、彫金用ワックス、蝋が挙げられる。
【0028】
図2Cは、筒状本体110と壁部材21,22とで形成された隙間に、絶縁層形成用塗工液Lを導入し、塗膜を形成した状態を示している。壁部材21の下端部には、外方に延び出た延出部21aが形成されており、筒状本体110の内周面110cと壁部材21との間に導入された絶縁層形成用塗工液Lは、延出部21aにより堰き止められている。筒状本体110の外周面110dと壁部材22との間に導入された絶縁層形成用塗工液Lは、延出部113により堰き止められている。
【0029】
上記絶縁層形成用塗工液は、代表的には、ガラス源および溶媒を含むスラリー(分散体)である。絶縁層形成用塗工液は、ガラス源として素原料を含んでいてもよく、ガラスフリットを含んでいてもよい。1つの実施形態においては、絶縁層形成用塗工液は、素原料からガラスフリットを作製し、得られたガラスフリットと溶媒とを混合することにより得られる。なお、ここでいう溶媒とは、絶縁層形成用塗工液に含まれる液状媒体をいい、溶媒および分散媒を包含する概念である。
【0030】
素原料の具体例としては、珪砂(ケイ素源)、ドロマイト(マグネシウムおよびカルシウム源)、アルミナ(アルミニウム源)、ホウ酸、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化ストロンチウムが挙げられる。素原料は酸化物に限られず、例えば炭酸物または水酸化物であってもよい。ガラスフリットは、代表的には、素原料から合成したガラスを粉砕(例えば、粗粉砕および微粉砕の2段階で粉砕)することにより得られる。上記合成は、代表的には、高温(例えば、1200℃以上)における長時間の溶融により行われる。
【0031】
上記溶媒は、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。溶媒は、水またはアルコール等の水溶性有機溶媒であることが好ましく、より好ましくは水である。溶媒の配合量は、例えば、ガラス源100質量部に対して、50質量部~300質量部であることが好ましく、より好ましくは80質量部~200質量部である。
【0032】
絶縁層形成用塗工液(スラリー)には、スラリー助剤が含まれていてもよい。スラリー助剤としては、例えば、樹脂、可塑剤、分散剤、増粘剤、各種添加剤が挙げられる。スラリー助剤の種類、数、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0033】
上記隙間に導入される絶縁層形成用塗工液の粘度は、例えば40dPa・s以下であり、好ましくは20dPa・s以下であり、より好ましくは10dPa・s以下である。このような粘度によれば、絶縁層形成用塗工液を隙間に導入する際の作業性に優れ、所望の厚みを有する絶縁層を良好に形成し得る。絶縁層形成用塗工液の粘度の下限値については、特に制限はないが、例えば、1dPa・s以上であってもよく、2dPa・s以上であってもよい。絶縁層形成用塗工液の粘度は、例えば、上記溶媒の配合量を調整することにより制御される。
【0034】
上記隙間に導入された絶縁層形成用塗工液Lは、好ましくは、乾燥処理に供され、塗膜が形成される。乾燥により、絶縁層形成用塗工液に含まれる溶媒の除去が促進され得、良好に塗膜が形成され得る。乾燥処理温度は、絶縁層形成用塗工液に含まれる溶媒、壁部材の材質等に応じて、適切な温度に設定され得る。乾燥処理温度は、例えば、上記壁部材の軟化温度未満に設定される。乾燥処理温度は、例えば120℃以下であり、好ましくは50℃~70℃である。乾燥処理時間は、例えば30分~2時間である。
【0035】
図2Dは壁部材21,22の除去が完了し、筒状本体110の表面に塗膜Mが形成された状態を示している。絶縁層形成用塗工液の導入後、図示するように、壁部材21,22は除去されることが好ましい。壁部材を除去する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。図示例では、加熱により壁部材を変形し、流出させて(流れ落として)、壁部材を除去している。加熱温度は、例えば、上記壁部材の軟化温度以上に設定される。加熱温度は、例えば90℃以上であり、好ましくは100℃~150℃である。加熱時間は、例えば10分~2時間である。壁部材は、加熱によって除去する方法以外に、例えば、筒状本体110の端部側(図2中上側、下側)から引き抜くようにして除去してもよい。
【0036】
上述のように、得られた塗膜Mは焼成される。焼成温度は、好ましくは1100℃以下であり、より好ましくは600℃~1100℃であり、さらに好ましくは700℃~1050℃である。焼成時間は、例えば5分~30分であり、8分~15分であってもよい。こうして、図2Eに示す筒状部材100を得る。具体的には、筒状本体110に絶縁層120が形成された筒状部材100を得る。
【0037】
壁部材21,22を用いて塗膜Mを形成することにより、歩留まりよく、絶縁性能に優れた絶縁層120を形成することができる。具体的には、所望の絶縁層の厚みに応じて壁部材21,22を配置し、筒状本体110と壁部材21,22とで形成された隙間に絶縁層形成用塗工液Lを導入することにより、歩留まりよく塗膜Mを形成し、ピンホールやひび割れ等の欠陥の発生を抑制して絶縁性能に優れた絶縁層120を形成することができる。具体的には、筒状本体に絶縁層形成用塗工液をスプレー法等により噴霧して塗膜を形成する場合、噴霧に際して絶縁層形成用塗工液が飛散し歩留まりが低下する虞があるが、壁部材を用いることにより、このような不具合は抑制され得る。また、得られる塗膜Mの厚み・表面形状は壁部材21,22の表面形状が反映され得ることから、筒状本体110の形状・表面状態にかかわらず、滑らかな塗膜M(絶縁層120)を形成し得る。その結果、得られる筒状部材100は、例えば、後述する触媒担体等の収容物をしっかり固定することができる。
【0038】
1つの実施形態においては、上記乾燥処理または上記加熱による壁部材の除去の少なくとも一つと、上記焼成とを連続的に行う。具体的には、上記隙間に絶縁層形成用塗工液を導入後、塗膜の焼成温度まで昇温させる過程において、乾燥処理、加熱による壁部材の除去を行う。
【0039】
図3は本発明の1つの実施形態に係る排ガス処理装置の概略の構成を示す模式的な断面図であり、図4図3の排ガス処理装置300を矢印IVの方向から見た図である。排ガス処理装置300は、エンジンからの排気ガスを流すための流路に設置される。図3では、矢印EXで示すように、排気ガスは、排ガス処理装置300内を左側から右側に向かって流れる。
【0040】
排ガス処理装置300は、筒状部材100と、筒状部材100に収容された排ガスを加熱可能な電気加熱型触媒担体(以下、単に触媒担体と称する場合がある)200とを有する。
【0041】
触媒担体200は、筒状部材100の形状に対応した形状を有し、筒状部材100内に同軸に収容されている。触媒担体200は、筒状部材100の内周面に接して収容されているが、例えば、図示しない保持マットで触媒担体200の外周面を覆った状態で収容されていてもよい。
【0042】
触媒担体200は、ハニカム構造部220と、ハニカム構造部220の側面に(代表的には、ハニカム構造部の中心軸を挟んで対向するようにして)配設された一対の電極部240と、を備える。ハニカム構造部220は、外周壁222と、外周壁222の内側に配設され、第1端面228aから第2端面228bまで延びて排ガス流路を形成する複数のセル226を規定する隔壁224と、を有する。外周壁222および隔壁224は、代表的には、導電性セラミックスで構成されている。一対の電極部240、240にはそれぞれ、端子260、260が設けられている。一方の端子は電源(例えば、バッテリ)のプラス極に接続され、他方の端子は電源のマイナス極に接続されている。端子260、260の周囲には、筒状本体110および絶縁層120と端子260とが絶縁されるように絶縁材料製のカバー270、270が設けられている。
【0043】
触媒は、代表的には、隔壁224に担持されている。隔壁224に触媒を担持させることにより、セル226を通過する排ガス中のCO、NO、炭化水素などを触媒反応によって無害な物質にすることが可能となる。触媒は、好ましくは、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウム、およびこれらの組み合わせを含有し得る。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の実施形態の製造方法により得られる排ガス処理装置用筒状部材は、内燃機関の排ガスの処理(浄化)用途に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0046】
21 壁部材
22 壁部材
100 筒状部材
110 筒状本体
120 絶縁層
200 電気加熱型触媒担体
300 排ガス処理装置

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4