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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141165
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】偽造防止媒体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/337 20140101AFI20220921BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B42D25/337
B41M3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041351
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 美都子
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HA07
2C005JA08
2C005KA06
2H113AA06
2H113BA28
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB32
2H113BC10
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
2H113DA56
2H113DA57
2H113DA58
2H113DA60
2H113DA62
2H113DA63
2H113FA43
2H113FA45
(57)【要約】
【課題】チェンジング効果を有する画像上に保護層を設けてもチェンジング効果が損なわれず、光路のずれなどの影響も無いチェンジング効果を発生させることができる偽造防止媒体を提供する。
【解決手段】基材2上の少なくとも一部に断面が鋸歯状のブレーズド格子3が形成され、該ブレーズド格子の第一の方向を向いた鋸歯面4に第一の画像を形成するパターンが、第二の方向を向いた鋸歯面5に第二の画像を形成するパターンが、それぞれ形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に断面が鋸歯状のブレーズド格子が形成され、該ブレーズド格子の第一の方向を向いた鋸歯面に第一の画像を形成するパターンが、第二の方向を向いた鋸歯面に第二の画像を形成するパターンが、それぞれ形成されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記ブレーズド格子が光透過性のものであることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記第一の画像を形成するパターンおよび前記第二の画像を形成するパターンが、熱転写リボンから転写されたインクにより形成されているものであることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記ブレーズド格子および前記パターンの上に光透過性の保護層がさらに積層されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とする媒体に関し、特に可視光下で画像が変化する潜像効果を有する偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートやIDカードに付与する偽造防止技術として、複数の画像が切り替わる画像のチェンジ効果や、画像が動いて見える動画効果がある。近年では、改ざん防止のため、チェンジング効果や動画効果のあるセキュリティ媒体に可変情報を組み合わせることがある。チェンジ効果と可変情報を組み合わせ、セキュリティを向上させる技術として、公知の技術であるレンチキュラーレンズを応用し、レーザー光を当てると発色する基材上に蒲鉾状のレンズを形成し、後からレーザー光で基材上に可変情報を印字することで、図7に示す異なる角度の視点A、Bから見たときに、例えば個人情報が書かれた文字と顔写真などの様に、異なるパターンが交代して見え、チェンジング効果が得られるとしたものがある(特許文献1)。
【0003】
あるいは、基材上に明暗フリップフロップ性やカラーフリップフロップ性などといった特殊な光学効果を有する印刷パターンを設け、その印刷パターン上に蒲鉾レンズを積層して、媒体を見る角度により異なる画像パターンなどが見えるチェンジング効果を持たせ、セキュリティ性を高めたものがある(特許文献2)。
【0004】
一方、IDカードやパスポートなどのセキュリティ媒体を発行する際、レーザー印字や熱転写プリンタ等で個人情報を付与した後、最後にホログラム層を設けるなどした無色透明の保護層を付与することがある。しかし、これらの媒体にセキュリティ技術としてチェンジング効果を持たせるためにレンチキュラーレンズを採用した場合、図8に示す様に、レンチキュラーレンズの上からホログラムのフィルムなどの保護層を重ねると、光路がずれ、例えば視点Bから見えるべき画像が視点Aから見えてしまい、基材上に設けた画像等のチェンジング効果が損なわれてしまう。その対策としてレンチキュラーレンズの上だけ保護層を付与しない工夫や工程が必要となり、コストの増加や工程の増加が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4765656号
【特許文献2】特許第6300101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チェンジング効果を有する画像上に保護層を設けてもチェンジング効果が損なわれず、光路のずれなどの影響も無いチェンジング効果を発生させることができる偽造防止媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
基材上の少なくとも一部に断面が鋸歯状のブレーズド格子が形成され、該ブレーズド格子の第一の方向を向いた鋸歯面に第一の画像を形成するパターンが、第二の方向を向いた鋸歯面に第二の画像を形成するパターンが、それぞれ形成されていることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0008】
上記偽造防止媒体は、前記ブレーズド格子が光透過性のものであって良い。
【0009】
上記偽造防止媒体は、前記第一の画像を形成するパターンおよび前記第二の画像を形成するパターンが、熱転写リボンから転写されたインクにより形成されているものであって良い。
【0010】
上記偽造防止媒体は、前記ブレーズド格子および前記パターンの上に光透過性の保護層がさらに積層されたものであって良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、IDカードやパスポート等のセキュリティ性を要求される媒体において、好適なチェンジング効果を有する画像が形成された偽造防止媒体を容易に得ることができ、かつ後工程で保護層が付与された場合でも光路の変化などによりチェンジング効果が損なわれることがなく、加工の簡易化とコストダウンが可能となる偽造防止媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の偽造防止媒体のブレーズド格子が形成された部位の概略断面図である。
図2】チェンジング画像のパターンが形成された態様の概略断面図である。
図3】チェンジング効果を説明する概略断面図である。
図4】保護層を設けたときのチェンジング効果を説明する概略断面図である。
図5】本発明の偽造防止媒体をカード状とした例を示す図である。
図6図5の例でのチェンジング効果を説明する外観図である。
図7】チェンジング画像が形成された媒体の従来例の概略断面図である。
図8図7の従来例に保護層を設けたときの態様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0014】
図1は、本発明の偽造防止媒体のブレーズド格子が形成された部位の概略断面図であり、チェンジング画像のパターンが記録される前の状態を示している。偽造防止媒体1は基材2上の少なくとも一部に断面が鋸歯状のブレーズド格子3が形成されている。基材2としては、媒体としての適度な強度、耐久性と加工性を有した素材であれば特に制限はなく、例えばポリカーボネート樹脂が好適に用いられるが、後述するブレーズド格子3の形成に影響しなければ、紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレート樹脂(熱可塑性PET)、ポリ塩化ビニル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、ポリメタクリル樹脂およびポリスチレン樹脂などの合成樹脂であってもよい。
【0015】
基材2の上に形成するブレーズド格子3は、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂(以下、合わせて光硬化性樹脂ともいう)などの樹脂を基材に塗布し、凹凸を有する金型を押圧して樹脂の表面に凹凸を転写した後、この樹脂を硬化させることで形成できる。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルスチレン共重合体、塩化ビニル及びポリメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0017】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、エポキシウレタン、シリコーン、エポキシ及びメラミン樹脂が挙げられる。
【0018】
光硬化性樹脂とは、紫外線及び電子線などの光の照射によって硬化する樹脂をいう。光の照射によってラジカル重合する代表的な樹脂としては、分子中にアクリロイル基を有するアクリル樹脂が挙げられ、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系若しくはポリオールアクリレート系のオリゴマー若しくはポリマー、単官能、2官能若しくは多官能重合性(メタ)アクリル系モノマー(例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート又はペンタエリトリトールテトラアクリレート)又はそのオリゴマー若しくはポリマー、又はこれらの混合物が使用される。
【0019】
以上の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂は、光透過性のものとしても良い。
【0020】
前述のエンボス加工を施したのち、ブレーズド格子の鋸歯状の山に対し、第一の方向を向いた鋸歯面4、すなわち視点Aから見える角度の面に第一の画像である画像A、第二の方向を向いた鋸歯面5、すなわち視点Bから見える角度の面に第二の画像である画像Bが現れるように、インクパターンを形成する(図2)。
【0021】
インクパターンを形成する方法としては、例えば熱転写リボンの熱転写インクのパターンを転写することで形成できる。使用する熱転写リボンは公知のものを適宜選択して使用できるが、画像の視認性を高めるために、熱転写リボンの熱転写インクの色は黒色等の濃色が好ましい。また画像A、Bは、特に限定するものではないが、顔写真、氏名、ID番号等の文字データなど、個別情報を含んだものとすることもできる。
【0022】
第一の方向を向いた鋸歯面4、第二の方向を向いた鋸歯面5に熱転写リボンの熱転写インクで画像のパターンを形成する方法としては、具体的には、熱転写リボンの熱転写インクで、高精細サーマルヘッドを用いて熱転写するほか、レーザー光を利用してより高精細なレーザー熱転写とすることもできる。また、熱転写リボンから中間的な転写媒体に一旦画像A、画像Bの画像パターンをサーマルヘッドまたはレーザー熱転写により転写し、ブレーズド格子上に再度熱ローラなどで熱転写する間接熱転写方式を採用することもできる。
【0023】
熱転写リボンから熱転写インクを転写する上記のような記録方式は、カードや冊子などの媒体に通常の目視画像を記録する方式と共通のものであり、特別な工程を必要としないことから、チェンジング画像を効率的に、かつ低コストで形成することが可能である。
【0024】
またこれ以外にも、インクジェット印刷、レーザープリント技術、スクリーン印刷技術、ホットスタンプ転写、フォトリソグラフィ技術などの公知の画像形成技術を適宜選択して採用しても良いが、個別情報の記録に適したものとするのが好ましい。
【0025】
こうして得られた偽造防止媒体1を観察したイメージが図3であり、視点Aでは第一の方向を向いた鋸歯面4のインクパターンで形成される画像A、視点Bでは第二の方向を向いた鋸歯面5のインクパターンで形成される画像Bが見えることでチェンジング効果が得られている。また、さらに図4のように無色透明の保護層6を設けた場合に光路が変化しても、見えるのは同一の鋸歯面上の画像であり、異なる方向を向いた鋸歯面の画像が見え
てしまうことはなく、例えば視点Aから視点Bの画像が見えてしまうことはなく、チェンジング効果を阻害しない媒体を得ることができる。
【0026】
なお保護層6は、下層側となる偽造防止媒体1表面の各画像が視認できるように実質的に透明な層である。ただし、視認性が損なわれない限りにおいて、例えば透明ホログラム層、印刷層、蒸着層、バリア層などが含まれていても良く、また紫外線吸収剤、赤外線吸収剤その他の各種の添加剤が含まれていても良い。また保護層6は、ブレーズド格子3上の画像も含めた偽造防止媒体1表面の各画像を形成後に、公知の転写、印刷、コーティングなどの方法により設けられても良く、あるいは間接熱転写方式により中間転写媒体から各画像を転写するのと同時に転写されて形成されても良い。
【0027】
図5(a)は、本発明のチェンジング画像を付与した偽造防止媒体の一形態を示す模式図であり、カード7の形態とした例である。カード7は例えばIDカードであり、個別情報である顔写真、氏名その他の個別情報が記録されている。カード7の表面の一部、この例では右下部分の領域Sにブレーズド格子が形成され、チェンジング画像となる画像Aと画像Bが記録されている。画像Aはここでは顔写真であり、画像Bは生年月日を示す文字である。カード7をその法線方向から見たときは、画像Aと画像Bが重なって両方見える態様となる。
【0028】
この例ではブレーズド格子は鋸歯状のパターンがカード7の図の横方向に延びるように形成されている。従って、画像A、画像Bを拡大して法線方向から見ると、図5(b)に示す様に画像Aは鋸歯面Aにあたる部分のみに、画像Bは鋸歯面Bにあたる部分のみに形成されて、横方向に延びる線状のパターンとなっている。また図5(c)に示す部分拡大図の様に、画像A、画像Bの線状のパターンは互い違いとなるような位置関係で形成されていることになる。なお、鋸歯状のパターンを形成する方向は図の横方向に限られず、縦方向や斜め方向に延びるように形成しても良い。
【0029】
図6図5のカード7でのチェンジング効果を説明する外観図で、カード7を上下方向に傾けたときのイメージ図である。例えばカード7を視点Aから見込むような角度に傾けると、領域Sでは画像Aのみが見える態様となる。逆に視点Bから見込むような角度に傾けると、領域Sでは画像Bのみが見える態様となる。このようにしてチェンジング効果が発現する。鋸歯状のパターンを形成する方向が図の縦方向であれば、カード7を左右方向に傾けたときに、同様のチェンジング効果が発現される。
【符号の説明】
【0030】
1・・・偽造防止媒体
2・・・基材
3・・・ブレーズド格子
4・・・第一の方向を向いた鋸歯面
5・・・第二の方向を向いた鋸歯面
6・・・保護層
7・・・偽造防止媒体(カード)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8