(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141167
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】下ろし器
(51)【国際特許分類】
A47J 43/25 20060101AFI20220921BHJP
B26D 3/24 20060101ALI20220921BHJP
B24B 3/60 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A47J43/25
B26D3/24 C
B24B3/60 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041356
(22)【出願日】2021-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】591130102
【氏名又は名称】株式会社シゲル工業
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】藤田 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正健
【テーマコード(参考)】
3C158
4B053
【Fターム(参考)】
3C158AA06
3C158CA01
3C158CB03
3C158DB00
4B053AA03
4B053CA03
4B053CD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】下ろし操作が容易で且つ洗浄が確実になされるおろし器を提供すること。
【解決手段】下ろし器本体となる金属製の基板1に対して三角錐形状の凹部が残存するように成した切削突起2を前後方向に横一列に且つ前後方向に多段に形成し、切削突起2は一方の下ろし摺動方向のみに対して切削面(凹溝面)21を備えて形成され、反対摺動方向からの研磨によって各切削突起の抉り起こし時に形成される切削縁22のバリを除去してなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板上面に抉り起こして形成した多数の切削突起を設けた下ろし金を備え、野菜の前記基板上の摺動で当該野菜の下ろし調理を行う下ろし器において、切削突起が一方の下ろし摺動方向のみに対して切削面を備え、反対摺動方向からの研磨によって各切削突起の抉り起こし時に形成されるバリが除去されていることを特徴とする下ろし器。
【請求項2】
下ろし金部分が下ろし摺動先方向を下方とする傾斜面とした請求項1記載の下ろし器。
【請求項3】
切削突起の切削面側に金属基板を上下に貫通する落下孔を設けてなる請求項1又は2記載の下ろし器。
【請求項4】
切削突起の切削面を凹溝面に形成してなる請求項3記載の下ろし器。
【請求項5】
切削突起が大小相違し、切削突起の位置を摺動方向に対して横位置をずらして形成してなる請求項1乃至4記載の何れかの下ろし器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜調理に使用する下ろし器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下ろし器は種々の構造のものが知られているが、本発明は特に調理対象野菜の往復摺動で下ろし調理を行うものであって、金属基板上に抉り起こして形成した切削突起を多数設けた下ろし器を対象とするものである(特許文献1~3)。
【0003】
上記の下ろし器の切削突起は、タガネによる手作業やタガネジグによる機械製作によって基板表面を抉り起こして三角山形状に形成しているもので、前記切削突起は下ろし方向に正対して斜列配置に形成され(特許文献1、特許文献3
図7)、または斜向して横列配置に形成されている(特許文献2、特許文献3
図1)。また切削突起列の前後に調理済野菜(下ろされた野菜)の落下孔を形成する構成も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭64-859号公報。
【特許文献2】実開平6-66537号公報。
【特許文献3】登録実用新案3140676号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
野菜の下ろし作業は、野菜と下ろし金(金属基板)を相対的に往復動(手動器具は野菜往復動、電動器具は下ろし板を往復動)を行うために、各動作で下ろしがなされるように切削突起が設けられている。
【0006】
手動器具における往復動作は、野菜を保持して前方への押し出しと、手前側への引き戻しでなされるが、押し込む方向では力が加えやすく、引き戻す方向では前記方向より力が加え難いのに、切削突起を両方向に同一に対応する構成に形成しているので、引き戻し時の抵抗感が強くなってしまう。
【0007】
また抉り起こしで形成した切削突起は、抉り起こし加工時において、金属基板表面と抉られた箇所の境界部分においては微細な「バリ」が生ずる。下ろし調理後には野菜の微細繊維が前記「バリ」に引っ掛かり、流水洗浄後でも微細繊維が下ろし金に残存してしまう。
【0008】
また抉り起こし切削突起からなる下ろし金に落下孔を設けていたとしても、下ろし野菜は金属基板上に滞留した後に落下孔に至るので、下ろし野菜の下ろし金上からの排出がスムーズになされない。
【0009】
そこで本発明は、下ろし操作が容易で且つ洗浄が確実になされる新規なおろし器を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載に係る下ろし器は、金属基板上面に抉り起こして形成した多数の切削突起を設けた下ろし金を備え、野菜の前記基板上の摺動で当該野菜の下ろし調理を行う下ろし器において、切削突起が一方の下ろし摺動方向のみに対して切削面を備え、反対摺動方向からの研磨によって各切削突起の抉り起こし時に形成されるバリが除去されていることを特徴とするものである。
【0011】
而して上記下ろし器は、通常の器具と同様に野菜の下ろし調理を行うもので、野菜は一方向(押し込み方向)への下ろし操作のみで切削されるので、力を加えやすく操作性に優れたものになる。更に、反対摺動方向からの研磨によって戻し操作(下ろし摺動操作後の操作)時の抵抗が少なく操作性をさらに高めると共に、戻し操作時に野菜が抉り起こし加工時に生ずる微細バリで切削されない。尚両方向に対面する切削突起を形成した場合には、何れかの切削突起の切削面に対面してのバフ研磨となるので、結果的に研磨できない。
【0012】
更に下ろし調理後に下ろし金表面に残存する野菜の微細繊維は、全て下ろし操作時に係止突起(バリ部分も含む)に引っ掛かったもので、戻し操作方向からの流水で、微細繊維が簡単に且つ確実に除去されることになる。
【0013】
また本発明の請求項2記載に係る下ろし器は、前記下ろし器具において特に、下ろし金部分が下ろし摺動先方向を下方とする傾斜面としてなるもので、前記傾斜面の形成は、板上の下ろし金部分を受け容器と組み合わせ、或いは下ろし金部分自体に脚部を設けるなどの手段が採用できるもので、これによって下ろし操作が上方から下方へとなり、且つ押し込み操作となるので、下ろし作業の操作性が向上することになる。
【0014】
また本発明の請求項3記載に係る下ろし器は、前記下ろし器具において特に、切削突起の切削面側に金属基板を上下に貫通する落下孔を設けてなるもので、請求項4記載に係る下ろし器は、更に切削突起の切削面を凹溝面に形成してなるものであるから、下ろし操作時に下ろされた野菜切削片が速やかに落下孔から落下することになる。
【0015】
また本発明の請求項5記載に係る下ろし器は、前記下ろし器具において、特に切削突起が大小相違し、切削突起の位置を摺動方向に対して横位置をずらして形成してなるもので、下ろし摺動操作時に野菜の下ろし面全体を切削突起でほぼ均等に切削(下ろし)を行うことになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成は上記のとおり、抉り起こしの切削突起を一方の下ろし方向のみに対面するように設けると共に、戻し方向の研磨でバリ除去を行っているもので、戻し操作時の抵抗が無く且つ野菜切削も行われないので、下ろし作業の操作性が向上すると共に、戻り方向からの流水洗浄で基板表面に残存する下ろし屑(微細繊維片)を容易に排除でき洗浄作業が容易で且つ使用後にも衛生的に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施形態について説明する。
図1乃至3に示した第一実施形態の下ろし器は、下ろし器本体となる金属製の基板1に、抉り起こしで形成した切削突起2と、下ろし調理した野菜切削片及び野菜汁を下ろし面(基板1の表面)から下方に落下させる落下孔3を設けたものである。
【0019】
切削突起2は、従前の器具と同様に基板1に対して三角錐形状の凹部11が残存するように抉り起こして略半円錐形状に形成するものであるが、前記の抉り起こしは、往復動(前後方向の動作)となる野菜摺動方向の後方(器具の手元側)から前方へ抉り起こし、切削面が手元側からみて対面(正対及び斜め対向も含む)するように形成したものである。
【0020】
また前記切削突起2は、前後方向に横一列に且つ前後方向に多段に形成すると共に、
図2に示すように隣接する切削突起2のピッチAの間を4分割する延長線イロハニ上に前後の切削突起2の形成位置をずらして設けたものである。勿論横方向のずれは任意に定めることができるもので、基板1の切削突起2全体が前後方向においての重なりをできるだけ少なくするようにするものである。
【0021】
また前記切削突起2は、例えば後述する加工を施した凹溝面21を形成すると共に、抉り起こし時に生ずる金属表面の剥離によって発生する切削突起2の分離縁となる切削縁22の「バリ」を除去しているものである。
【0022】
落下孔3は、横列した切削突起2の手前側に穿設形成したもので、切削面(凹溝面)21に達する位置まで形成されているものである。前記の切削突起2及び落下孔3の加工手段の一例を
図3に基づいて説明すると、前記した通り基板1の所定位置(横一列)に切削突起2を抉り起こし(
図3ア)、切削突起2の前後間に落下孔3を穿設形成するもので、落下孔3は、切削突起2の切削面側ギリギリの範囲までプレス加工で打ち抜き形成する。次に切り起こした切削面21aを凹溝(例えば三角凹部)に形成するように切削突起2の先端から基板1の背面に達するまで、切削面21aをプレス加工或いは研削加工で抉り取り、凹溝部21を形成する。
【0023】
切削突起2及び落下孔3を形成した後に、基板1を前方から手前側に向かってバフ研磨を行い、切削突起2の切削縁22を研磨し、突起の抉り起こし加工で生じた「バリ」を除去するものである。
【0024】
而して前記の下ろし器は、単独での使用も可能であるが、例えば手前側が高くなるような容器Bと組み合わせて使用すると便利である。
【0025】
下ろし調理は、基板1上での野菜の往復摺動(前後操作)で行うもので、切削突起2が全て手元側に対面しているので、前方への押し込み動作で殆どの下ろし調理がなされ、特に前記の下ろし操作に際して切削突起2の横列位置がずれているので、下ろし野菜の下ろし面全体が平均的に切削突起2によって切削される(下ろされる)ことになり、また戻し操作に際しては切削突起2による切削がなされずに抵抗感なく引き戻れる。従って強く押し込み軽く引き戻すという操作となり、下ろし調理時の動作が非常に高率的に且つ優れた操作性を有することになる。
【0026】
また特に切削突起2の切削面は凹溝面21に形成されており、且つそのままは落下孔3の壁面にもなっているので、野菜切削片は、切削直後に容器b内に落下するものであり、野菜切削片が基板1の表面に残存する量が少なく、次の下ろし操作時に残存する野菜切削片が邪魔することが無い。
【0027】
更に切削突起2の切削縁22が「バリ取り処理」がなされているので、引き戻し操作時に野菜切削片(微細繊維片)が引っ掛かる箇所が存在しないことになり、下ろし調理が終了した際に、落下孔3から落下・流下しない残存切削片(微細繊維片)は、戻し操作方向からの流水で、簡単に洗い落とされ、微細繊維片を残すことが無いので衛生的でもある。
【0028】
図4は本発明の第二実施形態を示したもので、この実施形態の下ろし器は、基板1の前後に脚部12を設けて、基板1aが傾斜するように形成したもので、基板1A上に切削突起2Aと落下孔3Aを設けているものである。
【0029】
切削突起2A(2a,2b,2c)は、第一実施形態と同様に下ろし方向(前方)へ向かって抉り起こされ、戻し方向からのバリ取り処理(バフ研磨)を行っているもので、特に大中小の切削突起2a,2b,2cとしたものであり、下ろし方向に対して斜列し、且つ横にずらして多段に設けたもので、落下孔3Aは切削突起2Aの二列ごとに斜列に対応して斜孔としたものである。
【0030】
従って第二実施形態も第一実施形態と同様に押し込み操作時にのみ切削突起2Aによる下ろし調理がなされ、戻し操作は軽い力で行われることになり、操作性が良好であり、且つ戻し操作での微細繊維片の引っ掛かりが生じないもので、洗浄が容易となる。
【0031】
尚本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、切削突起の形成方向及びバリ取り処理に特徴を有するもので、例えば基板表面に単に切削突起を形成した下ろし器(落下孔を設けていない一枚の下ろし金)で良いし、切削突起の切削面の凹部の有無、切削突起の配列、切削突起の大小組み合わせ、落下孔の有無は任意に定められるものである。
【符号の説明】
【0032】
1,1A 基板
11 凹部
12 脚部
2,2A 切削突起
21 凹溝面
21a 切削面(加工途中)
22 切削縁
3,3A 落下孔