(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141188
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ロボットシステムの位置決め精度測定方法
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
B25J5/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041392
(22)【出願日】2021-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】長末 秀樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707BS10
3C707CS08
3C707HS27
3C707JS02
3C707KS03
3C707KS16
3C707KS17
3C707KS21
3C707KS36
3C707KT03
3C707KX10
3C707LV12
3C707LW03
(57)【要約】
【課題】ロボット先端部の位置決め精度を、特別な測定装置を用いることなく測定できる測定方法を提供する。
【解決手段】識別図形111を工作機械の移動体105又はロボット先端部の一方に配設し、カメラを移動体105又はロボット先端部の他方に配設する。移動体105とロボットの先端部とを第1位置に位置決めして、カメラにより識別図形111を撮像し、その画像に基づいて第1位置におけるカメラと識別図形111との相対位置を算出する。次に、ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させて、ロボット先端部を予め定めた第2位置に位置決めするとともに、移動体105を同方向に同じ距離だけ移動させて、識別図形111を撮像する。次に、得られた画像に基づき、第2位置でのカメラと識別図形111との相対位置を算出し、第1位置及び第2位置におけるカメラと識別図形との相対位置に基づいて、ロボット先端部の位置決め精度を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にエンドエフェクタを有し、このエンドエフェクタを用いて工作機械に対して作業を行うロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備え、
識別図形を前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設し、前記識別図形を撮像するカメラを前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に配設したロボットシステムにおいて、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方の動作によって位置決めされる前記ロボットの先端部の位置決め精度を、前記工作機械を用いて測定する方法であって、
前記カメラによって前記識別図形を撮像可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記カメラによって前記識別図形を撮像し、得られた画像に基づいて、第1位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係を算出する第1工程と、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させた第2位置に位置決めするとともに、前記工作機械の移動体を、前記ロボットの先端部の移動方向に、同じ目標距離だけ移動させる第2工程と、
この後、前記カメラによって前記識別図形を撮像し、得られた画像に基づいて、第2位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係を算出する第3工程と、
前記第1位置及び第2位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係に基づいて、前記ロボットの先端部の前記移動方向における位置決め精度を算出する第4工程とを、順次実施するようにしたことを特徴とするロボットシステムの位置決め精度測定方法。
【請求項2】
先端部にエンドエフェクタを有し、このエンドエフェクタを用いて工作機械に対して作業を行うロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備え、
識別図形を前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設し、前記識別図形を撮像するカメラを前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に配設したロボットシステムにおいて、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方の動作によって位置決めされる前記ロボットの先端部の位置決め精度を、前記工作機械を用いて測定する方法であって、
前記カメラによって前記識別図形を撮像可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記カメラによって前記識別図形を撮像する第1工程と、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させて第2位置に位置決めする第2工程と、
前記工作機械の移動体を前記ロボットの先端部の移動方向に移動させて、前記カメラによって捉えられる前記識別図形のカメラフレーム上の位置が、前記第1位置において撮像された識別図形のカメラフレーム上の位置と一致する位置に位置決めするとともに、前記移動体の移動距離を検出する第3工程と、
前記ロボット先端部の移動距離と、検出された前記移動体の移動距離との差分値を算出して、前記ロボット先端部の前記移動方向における位置決め精度とする第4工程とを、順次実施するようにしたことを特徴とするロボットシステムの位置決め精度測定方法。
【請求項3】
先端部にエンドエフェクタを有し、このエンドエフェクタを用いて工作機械に対して作業を行うロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備え、
検知部を前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設し、前記検知部によって検出される被検知部が前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に設定されたロボットシステムにおいて、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方の動作によって位置決めされる前記ロボットの先端部の位置決め精度を、前記工作機械を用いて測定する方法であって、
前記検知部によって前記被検知部を検出可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記検知部により前記被検知部を検出する第1工程と、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させて第2位置に位置決めする第2工程と、
前記工作機械の移動体を前記ロボットの先端部の移動方向に移動させて、前記検知部が前記被検知部を検知する位置に位置決めするとともに、前記移動体の移動距離を検出する第3工程と、
前記ロボット先端部の移動距離と、検出された前記移動体の移動距離との差分値を算出して、前記ロボットの先端部の前記移動方向における位置決め精度とする第4工程とを、順次実施するようにしたことを特徴とするロボットシステムの位置決め精度測定方法。
【請求項4】
前記工作機械は数値制御装置を備えており、
前記第3工程では、前記移動体の移動距離を、前記数値制御装置から得られる移動体の位置情報に基づいて算出することを特徴とする請求項1又は2記載のロボットシステムの位置決め精度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に対して作業を行うロボット、このロボットを搭載し、工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車、並びにこれらロボット及び無人搬送車の動作を制御する制御装置から構成されるロボットシステムにおいて、当該ロボット先端部の位置決め精度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したロボットシステムの一例として、国際公開第2018/92222号(下記特許文献1)に開示された自走ロボットが知られている。この自走ロボットは、無人搬送車と、この無人搬送車上に設けられた3軸以上の自由度を持つマニピュレータとを備えて構成され、位置基準情報としての電波やレーザ光を観測することで、自身のおよその位置を認識しながら目標位置付近まで移動し、この後、目標物又は目標物に取り付けられたマーカをカメラにより認識することによって、精密な位置決めをするように構成されている。
【0003】
そして、この自走ロボットは、複数の工作機械からそれぞれ送信される、被搬送物を搬送する搬送作業、並びに切屑の廃棄、工具の入れ替えや給油といった保守作業に関する作業要求を受信し、受信した作業を要求元の工作機械に対して実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したマニピュレータ(ロボット)は、複数本のアーム(リンク)をこれらが連続するように関節によって連結した構造を有するものであり、その先端部に設けられるハンド(エンドエフェクタ)の位置決め誤差は、各関節の回転精度によって支配され、各関節部の動作誤差が累積されたものとなる。このため、例えば、経年劣化等によって各関節部の動作誤差が大きくなると、これらが累積される結果として、ハンドの位置決め誤差が大きくなり、この結果、ロボットの動作精度が悪化することになる。
【0006】
また、上述した無人搬送車は、車輪によって移動するように構成されており、従来、この車輪には樹脂製の物が使用されている。このため、無人搬送車が長時間稼働すると車輪が摩耗し、このように車輪が摩耗すると無人搬送車の位置決め精度が悪化することになり、この結果、この無人搬送車上に配設されたロボットのハンドの位置決め精度が悪化することになる。
【0007】
そして、上記のようにして、ロボットのハンドの位置決め精度が悪化すると、ロボットシステムに予定された動作に誤差が生じて、当該動作が完遂されないことになる。
【0008】
したがって、当該ロボットシステムにおける前記ハンドの位置決め精度が許容範囲内のものに保証されるように、例えば、その位置決め精度を定期的に測定して、位置決め精度が許容範囲外になったときには、ロボットの関節部を構成する部品の交換や、無人搬送車の車輪の交換といった保守作業を行う必要がある。
【0009】
ところが、従来、ハンドの位置決め精度を測定するには、それ専用の特別な測定装置が必要であり、このような測定装置は概して高価であるため、一般のユーザにおいては、このような設備コストが嵩む高価な測定装置を用意することは、現実的ではなく、困難なことであった。
【0010】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、前記ロボットシステムおけるロボット先端部の位置決め精度を、特別な測定装置を用いることなく測定できる測定方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、先端部にエンドエフェクタを有し、このエンドエフェクタを用いて工作機械に対して作業を行うロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備え、
識別図形を前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設し、前記識別図形を撮像するカメラを前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に配設したロボットシステムにおいて、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方の動作によって位置決めされる前記ロボットの先端部の位置決め精度を、前記工作機械を用いて測定する方法であって、
前記カメラによって前記識別図形を撮像可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記カメラによって前記識別図形を撮像し、得られた画像に基づいて、第1位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係を算出する第1工程と、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させた第2位置に位置決めするとともに、前記工作機械の移動体を、前記ロボットの先端部の移動方向に、同じ目標距離だけ移動させる第2工程と、
この後、前記カメラによって前記識別図形を撮像し、得られた画像に基づいて、第2位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係を算出する第3工程と、
前記第1位置及び第2位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係に基づいて、前記ロボットの先端部の前記移動方向における位置決め精度を算出する第4工程とを、順次実施するようにしたロボットシステムの位置決め精度測定方法に係る。
【0012】
この態様(第1の態様)の測定方法によれば、まず、ロボットシステムは、識別図形が前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設され、前記識別図形を撮像するカメラが前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に配設された状態に設定される。
【0013】
次に、前記カメラによって前記識別図形を撮像可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記カメラによって前記識別図形を撮像し、得られた画像に基づいて、第1位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係を算出する(第1工程)。例えば、カメラによって撮像された識別図形を含む画像を基に、当該画像上の識別図形の中心位置を算出することによって、カメラと識別図形との相対的な位置関係を算出(認識)する。
【0014】
次に、前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させた第2位置に位置決めするとともに、前記工作機械の移動体を、前記ロボットの先端部の移動方向に、同じ目標距離だけ移動させた後(第2工程)、前記カメラによって前記識別図形を撮像し、得られた画像に基づいて、第2位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係を算出する(第3工程)。
【0015】
前記第2位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係は、上述したように、カメラによって撮像された識別図形を含む画像を基に、当該画像上の識別図形の中心位置を算出することによって得ることができる。尚、移動体の移動距離は、例えば、リニアスケールと称される汎用の測定器を用いて直接的に測定することができ、このような測定器を用いて移動体を移動させることで、当該移動体を、目標とする距離だけ高精度に移動させることができる。或いは、工作機械が数値制御装置を備え、移動体の動作がこの数値制御装置によって制御される場合には、当該移動体を、この数値制御装置による制御の下で移動させることにより、目標とする距離だけ高精度に移動させることができる。
【0016】
そして、前記第1位置及び第2位置におけるカメラと識別図形との相対的な位置関係から、ロボット先端部の前記移動方向における位置決め精度を算出する(第4工程)。即ち、第2位置へのロボット先端部の移動距離と、移動体の移動距離とが高精度に一致していれば、第1位置において撮像された画像上の識別図形の(中心)位置と、第2位置において撮像された画像上の識別図形の(中心)位置とは同じ位置となる。したがって、第1位置において撮像された画像上の識別図形の(中心)位置と、第2位置において撮像された画像上の識別図形の(中心)位置との差分を算出することによって、ロボット先端部の位置決め精度を算出することができる。
【0017】
以上のように、本発明の第1の態様に係る測定方法によれば、従来のような高価な測定装置を用いなくても、ロボットシステムが適用される工作機械を用いることで、ロボット先端部の位置決め精度を測定することができ、また、仮に、移動体の移動距離を測定する必要がある場合でも、汎用の安価な測定器を用いることで、ロボット先端部の位置決め精度を測定することができる。斯くして、この測定方法によれば、ロボット先端部の位置決め精度を安価且つ容易に測定することができる。
【0018】
また、本発明は、先端部にエンドエフェクタを有し、このエンドエフェクタを用いて工作機械に対して作業を行うロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備え、
識別図形を前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設し、前記識別図形を撮像するカメラを前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に配設したロボットシステムにおいて、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方の動作によって位置決めされる前記ロボットの先端部の位置決め精度を、前記工作機械を用いて測定する方法であって、
前記カメラによって前記識別図形を撮像可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記カメラによって前記識別図形を撮像する第1工程と、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させて第2位置に位置決めする第2工程と、
前記工作機械の移動体を前記ロボットの先端部の移動方向に移動させて、前記カメラによって捉えられる前記識別図形のカメラフレーム上の位置が、前記第1位置において撮像された識別図形のカメラフレーム上の位置と一致する位置に位置決めするとともに、前記移動体の移動距離を検出する第3工程と、
前記ロボット先端部の移動距離と、検出された前記移動体の移動距離との差分値を算出して、前記ロボット先端部の前記移動方向における位置決め精度とする第4工程とを、順次実施するようにしたロボットシステムの位置決め精度測定方法に係る。
【0019】
この態様(第2の態様)の測定方法によれば、まず、ロボットシステムは、識別図形が前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設され、前記識別図形を撮像するカメラが前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に配設された状態に設定される。
【0020】
次に、前記カメラによって前記識別図形を撮像可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記カメラによって前記識別図形を撮像する(第1工程)。そして、例えば、カメラによって撮像された識別図形を含む画像を基に、当該撮像画像上の識別図形の中心位置を算出することによって、当該撮像画像上の識別図形の位置を認識する。
【0021】
次に、前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させて第2位置に位置決めする(第2工程)。
【0022】
この後、前記工作機械の移動体を前記ロボットの先端部の移動方向に移動させて、前記カメラによって捉えられる前記識別図形のカメラフレーム(撮像画像)上の位置が、前記第1位置において撮像された識別図形の撮像画像上の位置と一致する位置に位置決めするとともに、前記移動体の移動距離を検出する(第3工程)。尚、移動体の移動距離は、上述と同様に、例えば、リニアスケールと称される汎用の測定器を用いて直接的に測定することができ、或いは、工作機械が数値制御装置を備え、この数値制御装置によって移動体の動作が制御される場合には、移動体の移動距離は、数値制御装置から得られる移動体の位置情報に基づいて算出することができる。斯くして、このようにすることで、移動体の移動距離を高精度に認識することができる。
【0023】
次に、前記ロボット先端部の移動距離と、検出された前記移動体の移動距離との差分値を算出して、前記ロボット先端部の前記移動方向における位置決め精度とする(第4工程)。
【0024】
以上のように、本発明の第2の態様に係る測定方法によれば、上述した第1の態様に係る測定方法と同様に、従来のような高価な測定装置を用いなくても、ロボットシステムが適用される工作機械を用いることで、ロボット先端部の位置決め精度を測定することができ、また、仮に、移動体の移動距離を直接的に測定する場合でも、汎用の安価な測定器を用いることができる。したがって、この測定方法によれば、ロボット先端部の位置決め精度を安価且つ容易に測定することができる。
【0025】
また、本発明は、先端部にエンドエフェクタを有し、このエンドエフェクタを用いて工作機械に対して作業を行うロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備え、
検知部を前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設し、前記検知部によって検出される被検知部が前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に設定されたロボットシステムにおいて、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方の動作によって位置決めされる前記ロボットの先端部の位置決め精度を、前記工作機械を用いて測定する方法であって、
前記検知部によって前記被検知部を検出可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記検知部により前記被検知部を検出する第1工程と、
前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させて第2位置に位置決めする第2工程と、
前記工作機械の移動体を前記ロボットの先端部の移動方向に移動させて、前記検知部が前記被検知部を検知する位置に位置決めするとともに、前記移動体の移動距離を検出する第3工程と、
前記ロボット先端部の移動距離と、検出された前記移動体の移動距離との差分値を算出して、前記ロボットの先端部の前記移動方向における位置決め精度とする第4工程とを、順次実施するようにしたロボットシステムの位置決め精度測定方法に係る。
【0026】
この態様(第3の態様)の測定方法によれば、まず、ロボットシステムは、検知部が前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の一方に配設され、前記検知部によって検出される被検知部が前記工作機械の移動体又は前記ロボットの先端部の他方に配設された状態に設定される。
【0027】
次に、前記検知部によって前記被検知部を検出可能な第1位置に前記工作機械の移動体と前記ロボットの先端部とを位置決めして、前記検知部により前記被検知部を検出する(第1工程)。
【0028】
次に、前記ロボット又は無人搬送車の少なくとも一方を動作させることにより、前記ロボットの先端部を予め定められた方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させて第2位置に位置決めする(第2工程)。
【0029】
この後、前記工作機械の移動体を前記ロボットの先端部の移動方向に移動させて、前記検知部が前記被検知部を検知する位置に位置決めするとともに、前記移動体の移動距離を検出する(第3工程)。移動体の移動距離は、上述と同様に、例えば、リニアスケールと称される汎用の測定器を用いて直接的に測定することができ、或いは、工作機械が数値制御装置を備え、この数値制御装置によって移動体の動作が制御される場合には、移動体の移動距離は、数値制御装置から得られる移動体の位置情報に基づいて算出することができる。斯くして、このようにすることで、移動体の移動距離を高精度に認識することができる。
【0030】
次に、前記ロボット先端部の移動距離と、検出された前記移動体の移動距離との差分値を算出して、前記ロボット先端部の前記移動方向における位置決め精度とする(第4工程)。
【0031】
以上のように、本発明の第3の態様に係る測定方法によれば、上述した第1の態様及び第2の態様に係る測定方法と同様に、従来のような高価な測定装置を用いなくても、ロボットシステムが適用される工作機械を用いることで、ロボット先端部の位置決め精度を測定することができ、また、仮に、移動体の移動距離を直接的に測定する場合でも、汎用の安価な測定器を用いることができる。したがって、この測定方法によれば、ロボット先端部の位置決め精度を安価且つ容易に測定することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明に係る測定方法によれば、従来のような高価な測定装置を用いなくても、ロボットシステムが適用される工作機械を用いることで、ロボット先端部の位置決め精度を測定することができる。また、仮に、移動体の移動距離を直接的に測定する場合でも、汎用の安価な測定器を用いることができる。したがって、この測定方法によれば、ロボット先端部の位置決め精度を安価且つ容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る生産システムの概略構成を示した平面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るロボットシステムの構成を示したブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る工作機械の主要構成を示した斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る無人搬送車及びロボットを示した斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る識別図形を示した説明図である。
【
図6】第1の実施形態に係る位置決め精度測定方法を説明するための説明図である。
【
図7】第1の実施形態に係る位置決め精度測定方法を説明するための説明図である。
【
図8】第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例に係る工作機械の主要構成を示した斜視図である。
【
図9】第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例に係る無人搬送車及びロボットを示した斜視図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る工作機械の主要構成を示した斜視図である。
【
図11】第3の実施形態に係る位置決め精度測定方法を説明するための説明図である。
【
図12】第3の実施形態の変形例に係る無人搬送車及びロボットを示した斜視図である。
【
図13】第3の実施形態の変形例に係る工作機械の主要構成を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
1.第1の実施形態
[システム構成]
まず、本発明の第1の実施形態に係るシステム構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、一例としての本例の生産システム1は、ロボットシステム20、工作機械100、周辺装置としての材料ストッカ120及び製品ストッカ121などから構成され、前記ロボットシステム20は、無人搬送車35、この無人搬送車35に搭載されるロボット25、並びにロボット25及び無人搬送車35を制御する制御装置40などから構成される。
【0036】
前記工作機械100は、数値制御装置(図示せず)によって制御される複合加工型のNC工作機械であって、
図3に示すように、工具を保持して回転させる工具主軸105、それぞれの中心軸が同軸に設けられ、且つ相互に対向するように配設された第1主軸101及び第2主軸103、複数の工具を装着可能なタレット108、並びにこのタレット108を回転自在に保持する刃物台107などから構成される。
【0037】
工具主軸105は、図示しない数値制御装置による制御の下で、同じく図示しない第1Xm軸送り機構、第1Ym軸送り機構及び第1Zm軸送り機構によって、相互に直交するXm軸、Ym軸及びZm軸方向に移動し、同様にして、刃物台107は、図示しない第2Xm軸送り機構及び第2Zm軸送り機構によって、Xm軸及びZm軸方向に移動する。尚、Zm軸は前記第1主軸101及び第2主軸103の軸線と平行な送り軸であり、Xm軸は水平面内でZ軸に直交する送り軸であり、Ym軸は鉛直方向の送り軸である。
【0038】
また、第1主軸101には第1チャック102が装着されるとともに、第2主軸103には第2チャック104が装着されており、これら第1チャック102及び第2チャック104によって、加工前ワークWや加工済ワークW’の両端が把持される。そして、この状態で、前記数値制御装置(図示せず)による制御の下、第1主軸101及び第2主軸103がその軸線回りに回転し、且つ前記工具主軸105や刃物台107がXm軸、Ym軸及びZm軸方向に適宜移動することで、工具主軸105に装着された工具やタレット108に装着された工具によって、加工前ワークWが加工される。
【0039】
尚、本例では、
図3に示すように、前記タレット108の外周面に、加工済ワークW’を支持する支持具109が設けられており、前記ロボットシステム20によって、加工済ワークW’を取り外す際に、この支持具109に加工済ワークW’が仮置きされる。また、
図3では、識別図形111が貼着されたホルダ110を工具主軸105に装着した状態を図示しているが、このホルダ110は、工作機械100によって加工が行われるときには、工具収容部である工具マガジン(図示せず)に格納されており、ロボットシステム20の位置決め精度を測定する際に、工具マガジン(図示せず)から取り出されて工具主軸105に装着される。
【0040】
前記材料ストッカ120は、
図1において工作機械100の左隣に配設され、当該工作機械100で加工される加工前ワークW(材料)をストックする装置である。また、前記製品ストッカ121は、
図1において工作機械100の右隣に配設され、当該工作機械100で加工された加工済ワークW’(製品又は半製品)をストックする装置である。
【0041】
図1及び
図4に示すように、前記無人搬送車35は、その上面である載置面36に前記ロボット25が搭載され、また、オペレータが携帯可能な操作盤37が付設されている。尚、この操作盤37は、データの入出力を行う入出力部、当該無人搬送車35及びロボット25を手動操作する操作部、並びに画面表示可能なディスプレイなどを備えている。
【0042】
また、無人搬送車35は、工場内における自身の位置を認識可能なセンサ(例えば、レーザ光を用いた距離計測センサ)を備えており、前記制御装置40による制御の下で、前記工作機械100、材料ストッカ120及び製品ストッカ121が配設される領域を含む工場内を無軌道で走行するように構成され、本例では、前記工作機械100、材料ストッカ120及び製品ストッカ121のそれぞれに対して設定された各作業位置に経由する。尚、本例では、前記制御装置40は、この無人搬送車35内に配設されている。
【0043】
前記ロボット25は、マニュピレータ部である第1アーム26、第2アーム27及び第3アーム28の3つのアームを備えた多関節型のロボットであり、第3アーム28の先端部には支持軸29が取り付けられ、また、この支持軸29には、エンドエフェクタとしてのハンド30が装着されている。更に、前記支持軸29には、支持バー31が取り付けられ、この支持バー31には、同じくエンドエフェクタとしてのカメラ32が装着されている。そして、ロボット25は、前記制御装置40による制御の下で、これらハンド30及びカメラ32をxr軸,yr軸及びzr軸の直交3軸で定義される3次元空間内で移動させる。尚、本例では、xr軸は無人搬送車35の前面とほぼ平行に設定されている。
【0044】
図2に示すように、前記制御装置40は、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43、マップ情報記憶部44、手動運転制御部45、自動運転制御部46、マップ情報生成部47、位置認識部48及び入出力インターフェース49などから構成される。そして、制御装置40は、この入出力インターフェース49を介して、前記工作機械100、材料ストッカ120、製品ストッカ121、ロボット25、無人搬送車35及び操作盤37に接続している。
【0045】
尚、制御装置40は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記手動運転制御部45、自動運転制御部46、マップ情報生成部47、位置認識部48及び入出力インターフェース49は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。また、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43及びマップ情報記憶部44はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。
【0046】
前記手動運転制御部45は、オペレータにより前記操作盤37から入力される操作信号に従って、前記無人搬送車35及びロボット25を動作させる機能部である。即ち、オペレータは、この手動運転制御部45による制御の下で、操作盤37を用いた、前記無人搬送車35及びロボット25の手動操作を実行することができる。
【0047】
具体的には、手動運転制御部45は、前記操作盤37から、例えば、前記無人搬送車35を、水平面内で当該無人搬送車35に対して設定された直交2軸(xr軸、yr軸)の各方向に移動させる信号が入力されると、入力された信号に対応する方向に、対応する距離だけ、当該無人搬送車35を移動させ、前記xr軸及びyr軸と直交するzr軸(鉛直軸)回りに旋回させる信号が入力されると、入力された信号に応じて当該無人搬送車35を旋回させる。
【0048】
また、操作盤37から、前記ロボット25の先端部を、前記xr軸、yr軸及びzr軸の各方向に移動させる信号が入力されると、手動運転制御部45は、入力された信号に対応する方向に、対応する距離だけ、ロボット25の先端部を移動させる。また、手動運転制御部45は、操作盤37から前記ハンド30を開閉させる信号が入力されると、これに応じて当該ハンド30を開閉させ、操作盤37から前記カメラ32を動作させる信号が入力されると、これに応じて当該カメラ32を動作させる。
【0049】
前記動作プログラム記憶部41は、自動生産時に前記無人搬送車35及び前記ロボット25を自動運転するための自動運転用プログラム、並びに後述する工場内のマップ情報を生成する際に前記無人搬送車35を動作させるためのマップ生成用プログラムを記憶する機能部である。自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムは、例えば、前記操作盤37に設けられた入出力部から入力され、当該動作プログラム記憶部41に格納される。
【0050】
尚、この自動運転用プログラムには、無人搬送車35が移動する目標位置としての移動位置、移動速度及び無人搬送車35の向きに関する指令コードが含まれ、また、ロボット25が順次動作する当該動作に関する指令コード、及び前記カメラ32の操作に関する指令コードが含まれる。また、マップ生成用プログラムは、前記マップ情報生成部47においてマップ情報を生成できるように、無人搬送車35を無軌道で工場内を隈なく走行させるための指令コードが含まれる。
【0051】
前記マップ情報記憶部44は、無人搬送車35が走行する工場内に配置される機械、装置、機器など(装置等)の配置情報を含むマップ情報を記憶する機能部であり、このマップ情報は前記マップ情報生成部47によって生成される。
【0052】
前記マップ情報生成部47は、前記制御装置40の自動運転制御部46による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納されたマップ生成用プログラムに従って無人搬送車35を走行させた際に、前記センサによって検出される距離データから工場内の空間情報を取得するとともに、工場内に配設される装置等の平面形状を認識し、例えば、予め登録された装置等の平面形状を基に、工場内に配設された具体的な装置、本例では、工作機械100、材料ストッカ120及び製品ストッカ121の位置、平面形状等(配置情報)を認識する。そして、マップ情報生成部47は、得られた空間情報及び装置等の配置情報を工場内のマップ情報として前記マップ情報記憶部44に格納する。
【0053】
前記位置認識部48は、前記センサによって検出される距離データ、及び前記マップ情報記憶部44に格納された工場内のマップ情報を基に、工場内における無人搬送車35の位置及び姿勢を認識する機能部であり、この位置認識部48によって認識される無人搬送車35の位置及び姿勢に基づいて、当該無人搬送車35の動作が前記自動運転制御部46によって制御される。
【0054】
前記移動位置記憶部42は、前記無人搬送車35が移動する具体的な目標位置としての移動位置であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した具体的な移動位置を記憶する機能部であり、この移動位置には、上述した工作機械100、材料ストッカ120及び製品ストッカ121に対して設定される各作業位置が含まれる。尚、この移動位置は、例えば、前記手動運転制御部45による制御の下、前記操作盤37により前記無人搬送車35を手動運転して、目標とする各位置に移動させた後、前記位置認識部48によって認識される位置データを前記移動位置記憶部42に格納する操作によって設定される。この操作は所謂ティーチング操作と呼ばれる。
【0055】
前記動作姿勢記憶部43は、前記ロボット25が所定の順序で動作することによって順次変化するロボット25の姿勢(動作姿勢)であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した動作姿勢に係るデータを記憶する機能部である。この動作姿勢に係るデータは、前記手動運転制御部45による制御の下で、前記操作盤37を用いたティーチング操作により、当該ロボット25を手動運転して、目標とする各姿勢を取らせたときの、当該各姿勢におけるロボット25の各関節(モータ)の回転角度データであり、この回転角度データが動作姿勢に係るデータとして前記動作姿勢記憶部43に格納される。
【0056】
ロボット25の具体的な動作姿勢は、前記材料ストッカ120、工作機械100及び製品ストッカ121において、それぞれ設定される。例えば、材料ストッカ120では、当該材料ストッカ120において作業を開始するときの作業開始姿勢(取出開始姿勢)、当該材料ストッカ120に収納された加工前ワークWをハンド30によって把持して、当該材料ストッカ120から取り出すための各作業姿勢(各取出姿勢)及び取り出しを完了したときの姿勢(取出完了姿勢であり、本例では、取出開始姿勢と同じ姿勢)が取出動作姿勢として設定される。また、工作機械100では、加工済のワークW’を工作機械100から取り出すワーク取出動作姿勢、及び加工前ワークWを工作機械100に取り付けるワーク取付動作姿勢が設定される。
【0057】
前記自動運転制御部46は、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムの何れかを用い、当該プログラムに従って無人搬送車35及びロボット25を動作させる機能部である。その際、前記移動位置記憶部42及び動作姿勢記憶部43に格納されたデータが必要に応じて使用される。
【0058】
斯くして、以上の構成を備えた本例の生産システム1によれば、前記制御装置40の自動運転制御部46による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラムが実行され、この自動運転用プログラムに従って、無人搬送車35及びロボット25が動作されて、無人の自動生産が実行される。
【0059】
[位置決め精度測定方法]
次に、上述した生産システム1において、前記ロボットシステム20の位置決め精度を測定する測定方法について説明する。尚、この測定方法では、工作機械100及びロボットシステム20を、それぞれ数値制御装置(図示せず)及び制御装置40による制御の下で、手動操作することによって行うものとし、以下では、ロボット25の先端部のxr軸方向における位置決め精度を測定するものとする。
【0060】
まず、識別図形111が貼着されたホルダ110を工具マガジン(図示せず)から取り出して、工作機械100の移動体である工具主軸105に装着するとともに、無人搬送車35及びロボット25を動作させて、当該ロボット25に装着したカメラ32によって前記識別図形111を撮像可能な位置(この位置を「第1位置」と言う。)に、前記工具主軸105、並びに無人搬送車35及びロボット25を位置決めする。このとき、無人搬送車35は、自身に対して設定された前記x
r軸が、工作機械100におけるZ
m軸と平行になるように、前記第1位置に位置決めされる。このようにして位置決めされた状態のホルダ110とロボット25の先端部の位置関係を
図6(a)において実線で示している。
【0061】
尚、この無人搬送車35の位置決めは、上述したように、前記位置認識部48によって認識される無人搬送車35の位置及び姿勢に係る情報に基づいて行われる。また、前記識別図形111は、
図3及び
図5に示すように、複数の正方形をした画素が二次元に配列されたマトリクス構造を有するものであり、各画素が白または黒で表示されている。
図3及び
図5では、黒色の画素に斜線を付している。
【0062】
次に、前記第1位置において、前記カメラ32により前記識別図形111を撮像し、得られた画像に基づいて、第1位置におけるカメラ32と識別図形111との相対的な位置関係を算出する。
図7(a)に、第1位置において、カメラ32により撮像された識別図形111の画像を示しているが、例えば、x
r軸-z
r軸を基準軸とする撮像画像上における識別図形111の中心位置(x
r1,z
r1)を算出することによって、第1位置におけるカメラ32と識別図形111との相対的な位置関係を得る。
【0063】
次に、ロボット25を駆動して、その先端部をx
r軸プラス方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させた位置(この位置を「第2位置」と言う。)に位置決めするとともに、前記工具主軸105を、ロボット25の先端部の移動方向と同じ方向であるZ
m軸プラス方向に、同じ目標距離だけ移動させる。この状態を
図6(b)において一点鎖線で示している。ロボット25の先端部の移動距離は、手動運転制御部45における制御上の位置情報に基づいて認識され、同様に、工具主軸105の移動距離は、前記数値制御装置(図示せず)における制御上の位置情報に基づいて認識される。
【0064】
そして、この後、カメラ32によって識別図形111を撮像し、得られた画像に基づいて、第2位置におけるカメラ32と識別図形111の相対的な位置関係を算出する。
図7(b)に、第2位置において、カメラ32により撮像された識別図形111の画像を示しているが、上記と同様にして、x
r軸-z
r軸を基準軸とする撮像画像上における識別図形111の中心位置(x
r2,z
r2)を算出することにより、第2位置におけるカメラ32と識別図形111との相対的な位置関係が得られる。
【0065】
そして、前記第1位置におけるカメラ32と識別図形111との相対的な位置関係(xr1,zr1)、及び第2位置におけるカメラ32と識別図形111との相対的な位置関係(xr2,zr2)から、ロボット25の先端部のxr軸方向における位置決め精度を算出する。具体的には、xr軸方向の位置決め精度に相当する位置誤差Δxrを下式によって算出する。
Δxr=xr2-xr1
【0066】
以上のように、この第1の実施形態に係る測定方法によれば、従来のような高価な測定装置を用いなくても、ロボットシステム20が適用される工作機械100を用いることで、ロボット25の先端部の位置決め精度を安価且つ容易に測定することができる。尚、前記位置決め精度は前記カメラ32の解像度に依存するが、このカメラ32として高解像度のものを用いることで、前記位置決め精度を高精度に測定することができる。
【0067】
ところで、この第1の実施形態に係る測定方法では、ロボット25にカメラ32を配設し、工作機械100の工具主軸105に識別図形111を配設したが、カメラ32と識別図形111の配置は相対的なものであり、
図8に示すように、工具主軸105にカメラ112を配設するとともに、
図9に示すように、ロボット25に識別図形を配設しても良い。この状態で、上記と同様の操作を行うことにより、ロボット25の先端部の位置決め精度を測定することができる。尚、
図8に示した例では、カメラ112を保持したホルダ110を工具主軸105に装着している。また、
図9に示した例では、ロボット25の支持バー31の前面に識別図形111を貼着している。
【0068】
2.第2の実施形態
次に、上述した生産システム1を用いた本発明の第2の実施形態に係る測定方法について説明する。この測定方法においても、工作機械100及びロボットシステム20を、それぞれ数値制御装置(図示せず)及び制御装置40による制御の下で、手動操作することによって行うものとし、以下では、ロボット25の先端部のxr軸方向における位置決め精度を測定するものとする。
【0069】
まず、第1の実施形態と同様にして、識別図形111が貼着されたホルダ110を工具マガジン(図示せず)から取り出して、工作機械100の移動体である工具主軸105に装着するとともに(
図3参照)、無人搬送車35及びロボット25を動作させて、当該ロボット25に装着したカメラ32によって前記識別図形111を撮像可能な位置(第1位置)に、前記工具主軸105、並びに無人搬送車35及びロボット25を位置決めする。このとき、無人搬送車35は、自身に対して設定された前記x
r軸が、工作機械100におけるZ
m軸と平行になるように、前記第1位置に位置決めされる(
図6参照)。そして、この第1位置において、カメラ32により識別図形111を撮像する。
【0070】
次に、ロボット25を駆動して、その先端部をxr軸プラス方向に、予め定められた目標とする距離だけ移動させた位置(第2位置)に位置決めした後、前記工具主軸105を、ロボット25の先端部の移動方向と同じ方向であるZm軸プラス方向に移動させて、前記カメラ32によって捉えられる識別図形111のカメラフレーム上の位置が、第1位置において撮像された識別図形111のカメラフレーム上の位置と一致する位置に位置決めするとともに、工具主軸105の移動距離を検出する。
【0071】
識別図形111のカメラフレーム上の位置は、例えば、
図7に示すように、x
r軸-z
r軸を基準軸とする撮像画像上における識別図形111の中心位置((x
r1,z
r1)、(x
r2,z
r2))を算出することによって得られる。したがって、例えば、第1位置において撮像された画像を基に、当該撮像画像上における識別図形111の中心位置(x
r1,z
r1)を算出しておき、前記第2位置に位置決めされたカメラ32によって撮像される識別図形111の中心位置(x
r2,z
r2)が、第1位置における中心位置(x
r1,z
r1)と一致するように、前記工具主軸105を位置決めする。
【0072】
そして、工具主軸105の移動距離を前記数値制御装置(図示せず)における制御上の位置情報に基づいて検出した後、検出された工具主軸105の移動距離と、ロボット25の先端部の移動距離との差分値を算出することにより、ロボット25の先端部のxr軸方向における位置決め精度を算出する。
【0073】
以上のように、この第2の実施形態に係る測定方法によれば、上述した第1の実施形態に係る測定方法と同様に、従来のような高価な測定装置を用いなくても、ロボットシステム20が適用される工作機械100を用いることで、ロボット25の先端部の位置決め精度を安価且つ容易に測定することができる。そして、この態様においても、カメラ32として高解像度のものを用いることで、前記位置決め精度を高精度に測定することができる。
【0074】
また、この態様においても、ロボット25にカメラ32を配設し、工作機械100の工具主軸105に識別図形111を配設したが、カメラ32と識別図形111の配置は相対的なものであり、
図8に示すように、工具主軸105にカメラ112を配設するとともに、
図9に示すように、ロボット25に識別図形を配設しても良い。このようにしても、上記と同様の操作を行うことにより、ロボット25の先端部の位置決め精度を測定することができる。
【0075】
3.第3の実施形態
次に、上述した生産システム1を用いた本発明の第3の実施形態に係る測定方法について説明する。この測定方法においても、工作機械100及びロボットシステム20を、それぞれ数値制御装置(図示せず)及び制御装置40による制御の下で、手動操作することによって行うものとし、以下では、ロボット25の先端部のxr軸方向における位置決め精度を測定するものとする。
【0076】
まず、
図10に示すように、検知部としてのタッチプローブ114を保持したホルダ110を工具マガジン(図示せず)から取り出して、工作機械100の移動体である工具主軸105に装着する。ついで、無人搬送車35及びロボット25を動作させて、当該ロボット25の支持バー31の端面の内、向かって右側の端面が、前記Z
m軸方向において、前記タッチプローブ114よりプラス側の近傍位置(第1位置)に位置するように位置決めする。このとき、無人搬送車35は、自身に対して設定された前記x
r軸が、工作機械100におけるZ
m軸と平行になるように、前記第1位置に位置決めされる(
図11参照)。
【0077】
次に、工具主軸105を、タッチプローブ114が支持バー31の端面に接触して当該支持バー31を検知するまで、Z
m軸プラス方向に移動させる(
図11(a)参照)。尚、前記支持バー31はタッチプローブ114に対する被検知部として機能する。
【0078】
ついで、ロボット25を駆動して、
図11に示すように、その先端部をx
r軸のプラス方向に、予め定められた目標とする距離x
raだけ移動させた第2位置に位置決めした後、前記工具主軸105を、ロボット25の先端部の移動方向と同じ方向であるZ
m軸プラス方向に、タッチプローブ114が支持バー31の端面に接触して当該支持バー31を検知するまで移動させる(
図11(b)参照)。そして、当該工具主軸105の移動距離Z
maを前記数値制御装置(図示せず)における制御上の位置情報に基づいて検出した後、検出された工具主軸105の移動距離Z
maと、ロボット25の先端部の移動距離x
raとの差分値を算出することにより、ロボット25の先端部のx
r軸方向における位置決め精度を算出する。
【0079】
以上のように、この第3の実施形態に係る測定方法によれば、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る測定方法と同様に、従来のような高価な測定装置を用いることなく、ロボットシステム20が適用される工作機械100を用いることで、ロボット25の先端部の位置決め精度を安価且つ容易に測定することができる。
【0080】
また、この態様においても、ロボット25に被検知部を設定し(即ち、配設し)、工作機械100の工具主軸105に検知部としてのタッチプローブ114を配設したが、タッチプローブ114と被検知部の配置は相対的なものであり、
図12に示すように、ロボット25のハンド30によりタッチプローブ114を把持するとともに、
図13に示すように、ブロック状の被検知部116が形成されたホルダ115を工具主軸105に装着した態様としても良い。このような態様によっても、上記と同様の操作を行うことにより、ロボット25の先端部の位置決め精度を測定することができる。
【0081】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、これに限定されるものではない。
【0082】
例えば、上記の第1、第2及び第3の実施形態では、ロボット25の先端部のxr軸方向の位置決め精度を測定するようにしたが、これに限られるものではなく、上記と同様の操作によって、ロボット25の先端部のzr軸方向の位置決め精度を測定することができる。また、ロボット25に限られるものではなく、同様の操作によって、無人搬送車35のxr軸方向の位置決め精度を測定することができる。更には、無人搬送車35及びロボット25の複合動作、即ち双方を移動させる態様での、ロボット25の先端部のxr軸方向又はzr軸方向の位置決め精度を、上記と同様の操作によって測定することができる。
【0083】
また、移動体としての工具主軸105の移動距離は、例えば、リニアスケールと称される汎用の安価な測定器を用いて直接的に測定することができる。
【0084】
また、識別図形は上例のものに限られるものではなく、撮像画像から、カメラと識別図形との相対的な位置関係を取得できれば、どのような形状であっても良い。
【0085】
繰り返しになるが、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 生産システム
20 ロボットシステム
25 ロボット
26 第1アーム
27 第2アーム
28 第3アーム
30 ハンド
31 支持バー
32 カメラ
35 無人搬送車
37 操作盤
40 制御装置
41 動作プログラム記憶部
42 移動位置記憶部
43 動作姿勢記憶部
44 マップ情報記憶部
45 手動運転制御部
46 自動運転制御部
47 マップ情報生成部
48 位置認識部
49 入出力インターフェース
100 工作機械
101 第1主軸
103 第2主軸
105 工具主軸
110 ホルダ
111 識別図形
120 材料ストッカ
121 製品ストッカ