(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141304
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】位置検出センサおよび位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220921BHJP
G06F 3/046 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G06F3/041 420
G06F3/046 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041535
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】松浦 光児
(72)【発明者】
【氏名】泉澤 武瑠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅充
(57)【要約】
【課題】 電磁誘導方式の位置検出センサであって、高精度に機能する円形の位置検出センサを実現する。
【解決手段】 円形基板10に対して、第1の方向に複数の第1のループコイルX1~X8が配設され、第1の方向と交差する第2の方向に複数の第2のループコイルが配設されて構成される。複数の第1のループコイルのそれぞれは、第1の方向に対して交差する方向に延伸された直線部SL、S1、S2と、円形基板10の外縁に沿う周縁部EG、E1、E2とからなる。同様に、複数の第2のループコイルのそれぞれは、第2の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、円形基板の外縁に沿う周縁部とからなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導方式の位置検出回路に接続される位置検出センサであって、
円形基板と、
前記円形基板に対して、第1の方向に配設される複数の第1のループコイルと、
前記円形基板に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に配設される複数の第2のループコイルと
を備え、
複数の前記第1のループコイルのそれぞれは、前記第1の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
複数の前記第2のループコイルのそれぞれは、前記第2の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなる
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
複数の前記第1のループコイルの内、前記第1の方向の両端のそれぞれに配置されるループコイルは、前記直線部と前記円形基板の外縁に沿う円弧状の前記周縁部とからなり、他のループコイルは、対向する直線部と対向する周縁部とからなる
ことを特徴する位置検出センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記第1のループコイルのそれぞれは、複数ターンのものであり、
前記第1の方向の両端のそれぞれに配置される端部のループコイルと他のループコイルとからなり、
前記端部のループコイルは、前記直線部と前記円形基板の外縁に沿う円弧状の前記周縁部とを有し、ターンの異なる前記直線部は、第1の方向に所定間隔分隔てられて設けられ、ターンの異なる前記周縁部は密接して設けられ、
他のループコイルは、対向する直線部と対向する周縁部とからなり、ターンの異なる前記直線部は、第1の方向に所定間隔分隔てられて設けられる
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
複数の前記第2のループコイルの内、前記第2の方向の両端のそれぞれに配置されるループコイルは、前記直線部と前記円形基板の外縁に沿う円弧状の前記周縁部とからなり、他のループコイルは、対向する直線部と対向する周縁部とからなる
ことを特徴する位置検出センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記第2のループコイルのそれぞれは、複数ターンのものであり、
前記第2の方向の両端のそれぞれに配置される端部のループコイルと他のループコイルとからなり、
前記端部のループコイルは、前記直線部と前記円形基板の外縁に沿う円弧状の前記周縁部とを有し、ターンの異なる前記直線部は、第2の方向に所定間隔分隔てられて設けられ、ターンの異なる前記周縁部は密接して設けられ、
他のループコイルは、対向する直線部と対向する周縁部とからなり、ターンの異なる前記直線部は、第2の方向に所定間隔分隔てられて設けられる
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとは、前記円形基板の異なる面に設けられる
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとは、前記円形基板上に配置されたセンサ部と、前記円形基板から引き出されて前記位置検出回路に接続される引き出し線部とからなる
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項8】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記円形基板と、前記第1のループコイルと、前記第2のループコイルとによって、フレキシブル基板の構成とされる
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項9】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記円形基板に対して設けられた前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとの外側であって、前記円形基板の外縁に沿って、1ターン以上の1以上の最外周ループコイル
を設けたことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記円形基板に対して設けられた前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとの外側であって、前記円形基板の外縁に沿って、1ターン以上の1以上の最外周ループコイルを設け、
前記最外周ループコイルを、前記最外周ループコイルの内側に電子ペンが存在するか否かの電子ペンの存在確認用に用いる
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項11】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記円形基板に対して設けられた前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとの外側であって、前記円形基板の外縁に沿って、1ターン以上の1以上の最外周ループコイルを設け、
前記最外周ループコイルを、磁気信号送信用とし、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとを磁気信号受信用とする
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項12】
位置検出センサと位置検出回路とで構成される電磁誘導方式の位置検出装置であって、
前記位置検出センサは、
円形基板と、
前記円形基板に対して、第1の方向に配設される複数の第1のループコイルと、
前記円形基板に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に配設される複数の第2のループコイルと
を備え、
複数の前記第1のループコイルのそれぞれは、前記第1の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
複数の前記第2のループコイルのそれぞれは、前記第2の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
前記位置検出回路は、
送信期間においては、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとに対して順次に信号を供給する信号供給回路と、
受信期間においては、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとから順次に信号を受信して、位置指示器の傾きの方向と傾きの角度を検出する傾き検出用回路と
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項13】
位置検出センサと位置検出回路とで構成される電磁誘導方式の位置検出装置であって、
前記位置検出センサは、
円形基板と、
前記円形基板に対して、第1の方向に配設される複数の第1のループコイルと、
前記円形基板に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に配設される複数の第2のループコイルと、
前記円形基板に対して設けられた前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとの外側であって、前記円形基板の外縁に沿って設けられる、1ターン以上の1以上の最外周ループコイルと、
を備え、
複数の前記第1のループコイルのそれぞれは、前記第1の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
複数の前記第2のループコイルのそれぞれは、前記第2の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
前記位置検出回路は、
送信期間において、前記最外周ループコイルに対して信号を供給する第1の信号供給回路と、
受信期間において、前記最外周ループコイルから信号を受信して、位置指示器が存在しているか否かを検出する第1の位置検出用回路と、
前記第1の位置検出用回路を通じて、前記位置指示器が存在していることが検出されている場合に、前記送信期間において、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとに対して順次に信号を供給する第2の信号供給回路と、
前記第1の位置検出用回路を通じて、前記位置指示器が存在していることが検出されている場合に、前記受信期間において、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとから順次に信号を受信して、位置指示器の傾きの方向と傾きの角度を検出する第2の位置検出用回路と
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項14】
位置検出センサと位置検出回路とで構成される電磁誘導方式の位置検出装置であって、
前記位置検出センサは、
円形基板と、
前記円形基板に対して、第1の方向に配設される複数の第1のループコイルと、
前記円形基板に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に配設される複数の第2のループコイルと、
前記円形基板に対して設けられた前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとの外側であって、前記円形基板の外縁に沿って設けられる、1ターン以上の1以上の最外周ループコイルと、
を備え、
複数の前記第1のループコイルのそれぞれは、前記第1の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
複数の前記第2のループコイルのそれぞれは、前記第2の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
前記位置検出回路は、
送信期間においては、前記最外周ループコイルに対して信号を供給する信号供給回路と、
受信期間においては、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとから順次に信号を受信して、位置指示器の傾きの方向と傾きの角度を検出する位置検出用回路と
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、いわゆる電子ペン(位置指示器)による指示入力を可能にする位置検出センサ、当該位置検出センサを用いて構成される位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後に記す特許文献1には、外縁に曲線部を有する表示画面が用いられる場合であっても、当該表示画面上の指示位置を適切に検出できるようにする位置検出センサ、位置検出装置に関する発明が開示されている。特許文献1に開示された位置検出センサは、例えば四隅が曲線部になっている表示画面に対応するため、当該四隅の近傍に位置することになるセンサ電極を当該表示画面の曲線部に応じた形状とするものである。これにより、表示画面の形状に合致して外縁に曲線部を含む検出領域を有する位置検出センサを実現できる。換言すれば四隅に曲線部を有する表示画面の形状に対応した検出領域を備えた位置検出センサが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後においては、円形の表示画面に対応する位置検出センサの提供が要求される場合もあると考えられる。円形の表示画面の場合には、当該表示画面の円周を内接円とする矩形状の位置検出センサを用いることで、当該円形の表示画面上のどの位置を指示しても指示位置の検出が可能である。しかし、当該内接円の外側に位置検出に寄与しないセンサ領域が生じることになり無駄である。このため、円形の表示画面に対応した円形の位置検出センサの提供が望まれる。
【0005】
また、いわゆるジョイスティック(joystick)を電磁誘導方式の電子ペンと位置検出センサとにより構成することが考えられる。ジョイスティックは、スティック(レバー)を傾けることで方向入力が行える入力機器である。当該スティック部分に電子ペンを用い、スティックの動き(傾けた方向と角度)を位置検出センサで検出することで、構成が簡単で高精度に機能するジョイスティックが実現できる。ジョイスティックの場合、スティックをどのように操作しても、スティックの先端は、所定の円内を移動しているに過ぎないため、無駄のない円形の位置検出センサが必要になる。
【0006】
以上のことに鑑み、この発明は、電磁誘導方式の位置検出センサであって、高精度に機能する円形の位置検出センサと当該円形の位置検出センサを用いた位置検出装置とを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の位置検出センサは、
電磁誘導方式の位置検出回路に接続される位置検出センサであって、
円形基板と、
前記円形基板に対して、第1の方向に配設される複数の第1のループコイルと、
前記円形基板に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に配設される複数の第2のループコイルと
を備え、
複数の前記第1のループコイルのそれぞれは、前記第1の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなり、
複数の前記第2のループコイルのそれぞれは、前記第2の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、前記円形基板の外縁に沿う周縁部とからなる
ことを特徴とする。
【0008】
この発明の位置検出センサによれば、円形基板に対して、第1の方向に複数の第1のループコイルが配設され、第1の方向と交差する第2の方向に複数の第2のループコイルが配設されて構成される。複数の第1のループコイルのそれぞれは、第1の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、円形基板の外縁に沿う周縁部とからなる。また、複数の第2のループコイルのそれぞれは、第2の方向に対して交差する方向に延伸された直線部と、円形基板の外縁に沿う周縁部とからなる。これにより、円形のセンサ領域が適切に形成される位置検出センサが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の位置検出センサが用いられて構成される位置検出祖装置の構成例を説明するための図である。
【
図2】実施の形態の位置検出センサの構成例を説明するための図である。
【
図3】実施の形態の位置検出センサの構成例を説明するための図である。
【
図4】実施の形態の位置検出センサの外観形状を説明するための図である。
【
図5】実施の形態の位置検出センサの他の構成例を説明するための図である。
【
図6】実施の形態の位置検出センサの他の構成例を説明するための図である。
【
図7】実施の形態の位置検出センサが用いられて構成される位置検出装置の他の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照しながら、この発明による位置検出センサ、位置検出装置の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態の位置検出センサ、位置検出装置は、電磁誘導方式のものである。電磁誘導方式の位置検出装置について簡単に説明する。電磁誘導方式の位置検出装置は、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数のループコイルを配設した位置検出センサと、位置検出回路とからなる。当該位置検出回路は、当該位置検出センサの複数のループコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し当該位置検出センサの複数のループコイルを通じて順次に外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける。
【0011】
対応する電子ペン(位置指示器)は、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備え、当該位置検出センサ部からの磁界に応じて、当該コイルに電流が流れることにより位置指示信号を発生させ、これを位置検出センサに送信する。電子ペンから送信された位置指示信号は、受信期間において位置検出センサを通じて位置検出回路が受信して、位置検出センサ状の指示位置を検出する。なお、当該位置指示信号には、筆圧情報を含めることも可能であり、位置指示信号に筆圧情報が含められている場合には、指示位置とともに筆圧の検出もできる。
【0012】
このように、以下に説明する位置検出装置は、対応する電子ペンとの間で信号(磁気信号)を送受することにより、電子ペンに対して給電すると共に、電子ペンにより指示された位置検出センサ上の指示位置を検出できるものである。また、以下に説明する実施の形態の位置検出センサは、上述したように複数のループコイルが用いられて構成される電磁誘導方式のものである。以下においては説明を簡単にするため、X軸方向とY軸方向のループコイルの数は、それぞれ8本である場合を例にして説明する。
【0013】
[位置検出装置の構成例]
図1は、実施の形態の位置検出センサ1が用いられて構成される位置検出装置100の構成例を説明するための図である。
図1に示すように、位置検出装置100は、位置検出センサ1と位置検出回路2とから構成され、位置検出センサ1に対して、電子ペン200により位置指示操作がされる。電子ペン200は、
図1の左上に示すように、信号送受信用に用いられるコイルLと、例えば可変容量コンデンサである筆圧検出部Cvと、電子ペン200に搭載されている回路基板上に設けられた共振コンデンサCf等が並列に接続されることにより共振回路の構成とされたものである。
【0014】
位置検出センサ1は、詳しくは後述するが、円形基板10に対して、X軸方向ループコイル群XGとY軸ループコイル群YGとが積層されて構成されたものである。位置検出センサ1のセンサ領域(位置検出領域)は、
図1に示すように円形(この実施の形態では真円)の形状とされている。
【0015】
位置検出回路2は、選択回路21と、発振器22と、電流ドライバ23と、切り替え接続回路24と、受信アンプ25と、位置検出用回路26と、筆圧検出用回路27と、処理制御部28とを備える。処理制御部28は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどが接続されて構成されたマイクロプロセッサである。処理制御部28は、後述もするように、選択回路21におけるループコイルの選択、切り替え接続回路24の切り替えを制御すると共に、位置検出用回路26及び筆圧検出用回路27での処理タイミングを制御する。
【0016】
選択回路21には、位置検出センサ1のX軸方向ループコイル群XG及びY軸方向ループコイル群YGが接続される。選択回路21は、処理制御部28の制御に応じて、2つのループコイル群XG、YGのうちの一のループコイルを順次選択する。発振器22は、周波数f0の交流信号を発生させ、電流ドライバ23と筆圧検出用回路27に供給する。電流ドライバ23は、発振器22から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路24の送信側端子Tへ供給する。切り替え接続回路24は、処理制御部28からの制御により、選択回路21によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。
【0017】
すなわち、送信期間においては、接続先が送信側端子Tに切り替えられ、受信期間においては、接続先が受信側端子Rに切り替えられる。
図1に示すように、送信側端子Tには電流ドライバ23が、受信側端子Rには受信アンプ25が接続されている。従って、送信期間においては、選択回路21において選択されたループコイルに電流が供給されることにより、磁界が発生し、磁気信号が電子ペン200に送信される。これにより、位置検出センサ1上にある電子ペン200のコイルLには誘導電圧が発生し、これに応じてコイルLの周囲には磁界が発生して、磁気信号が位置検出センサ1側に送信される。
【0018】
受信期間においては、X軸方向ループコイル群XGの各ループコイルX1~X8及びY軸方向ループコイル群YGの各ループコイルY1~Y8には、電子ペン200から送信される磁気信号(電波)によって誘導電圧が発生する。選択回路21により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路21及び切り替え接続回路24を介して受信アンプ25に送られる。受信アンプ25は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、位置検出用回路26及び筆圧検出用回路27へ送出する。
【0019】
位置検出用回路26は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波して、その検波出力信号をデジタル信号に変換し、処理制御部28に出力する。処理制御部28は、位置検出用回路26からのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン200のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0020】
筆圧検出用回路27は、受信アンプ25の出力信号を発振器22からの交流信号で同期検波して、それらの間の位相差(周波数偏移)に応じたレベルの信号を得、その位相差(周波数偏移)に応じた信号をデジタル信号に変換して処理制御部28に出力する。処理制御部28は、筆圧検出用回路27からのデジタル信号、すなわち、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数偏移)に応じた信号のレベルに基づいて、電子ペン200に印加されている筆圧を検出する。
【0021】
処理制御部28において検出された位置検出センサ1上の指示位置の座標値と、電子ペン200に印加されている筆圧とは、この位置検出装置が搭載されている情報処理装置に供給されて、種々の処理に利用される。このように、この実施の形態の位置検出装置100は、円形の位置検出センサ1を備えることにより、例えば、円形の表示画面を備えた表示装置と共に電磁誘導方式の入力デバイスとして機能する。また、電子ペン200をジョイスティックのスティック(レバー)として操作可能にすることにより、電子ペン200と位置検出装置100とによって、電磁誘導方式のジョイスティックを実現できる。
【0022】
なお、位置検出センサ1の電極を構成するループコイルX1~X8及びループコイルY1~Y8のそれぞれは、1ターンの場合もあれば、2ターン以上の複数ターンの場合もある。以下においては、ループコイルX1~X8及びループコイルY1~Y8のそれぞれが、1ターンの場合の構成と、複数ターンの場合の例として2ターンの場合の構成について具体的に説明する。
【0023】
[1ターンのループコイルを用いて構成する位置検出センサ]
図2、
図3は、位置検出センサの構成例を説明するための図であり、1ターン(1回巻き)のループコイルを用いて位置検出センサ1を構成した場合の例である。
図2(A)に示すように、円形基板10の第1の面(円形面部)10Aには、X軸方向に1ターンの8本のループコイルX1~X8が配設されて、位置検出領域(センサ面)を構成している。各ループコイルX1~X8は、位置検出回路2に接続するために引き出された部分以外の部分は、第1の面10Aから突出することがないようにされている。ループコイルX1~X8は、X軸方向に対して交差する方向(Y軸方向)に延伸された直線部と、円形基板10の第1の面10Aの外縁に沿う周縁部とからなる。
【0024】
具体的には、
図2(B)に示すように、X軸方向の左端に配置されるループコイルX1は、X軸方向に対して交差する方向(Y軸方向)に延伸された直線部SLと、円形基板10の第1の面10Aの外縁に沿う周縁部EGとからなる。
図2(B)に示したように、ループコイルX1は、右側が直線部SLとなり、左側が周縁部EGとなっている。X軸方向の右端に配置されるループコイルX8は、ループコイルX1と同一形状のものであるが、右側が円形基板10の外縁となるので、右側が周縁部EGとなり、左側が直線部SLとなる。
【0025】
ループコイルX1の右側に位置するループコイルX2は、
図2(C)に示すように、X軸方向に対して交差する方向(Y軸方向)に延伸された対向する直線部S1、S2と、円形基板10の第1の面10Aの外縁に沿う対向する周縁部E1、E2とからなる。ループコイルX8の左側に位置するループコイルX6は、ループコイルX2と同一形状のものであるが、右側に直線部S2が位置し、左側に直線部S1が位置するものとなる。
【0026】
このように、X軸方向の左右両端のループコイルX1、X8以外のループコイルX2~X7は、Y軸方向に延伸された対向する2本の直線部と、2本の直線部の端部間を接続する線部であって、第1の面10Aの外縁に沿う対向する2本の周縁部とからなる。この場合、2本の直線部の内、円形基板10の中心に近い側の直線部の長さが、中心から離れた側の直線部の長さよりも長くなる。これにより、
図2(A)に示したように、円形基板10の第1の面に対して、直線部をX軸方向にほぼ均等な間隔で配置できると共に、X軸方向の両端部分には、円形基板10の外縁に沿って周縁部EGを配置できる。
【0027】
また、
図3に示すように、円形基板10の第2の面(第1の面10Aの反対側(裏側)の円形面部)10Bには、Y軸方向に1ターンの8本のループコイルY1~Y8が配設されて、位置検出領域(センサ面)を構成している。すなわち、この実施の形態の位置検出センサ1は、第1の面10Aには、第1の方向(X軸方向)に8本のループコイルX1~X8を配設し、第2の面10Bには、第1の方向に交差する第2の方向(Y軸方向)に8本のループコイルY1~Y8を配設している。この例では、第1の方向と第2の方向とは、直交しているが、交差する角度は適宜の角度とすることが可能である。
【0028】
なお、第2の面10Bに配設されるループコイルY1~Y8は、配設される方向がY軸方向となるだけで、第1の面10Aに配設されるループコイルX1~X8と同様に配設される。すなわち、
図3に示すように、Y軸方向の両端に配置されるループコイルY1、Y8は、Y軸方向に対して交差する方向(X軸方向)に延伸された直線部と、円形基板10の第2の面10Bの外縁に沿う周縁部とからなるものである。従って、ループコイルY1は、上端部が第2の面10Bの外縁に沿う周縁部となり、下側が直線部となっている。逆に、ループコイルY8は、下端部が第2の面10Bの外縁に沿う周縁部となり、上側が直線部となっている。
【0029】
また、Y軸方向の両端のループコイルY1、Y8以外のループコイルY2~Y7は、X軸方向に延伸された対向する2本の直線部と、2本の直線部の端部間を接続する線部であって、第2の面10Bの外縁に沿う対向する2本の周縁部とからなる。この場合、2本の直線部の内、円形基板10の中心に近い側の直線部の長さが、中心から離れた側の直線部の長さよりも長くなる。これにより、
図3に示したように、円形基板10の第2の面10Bに対して、直線部をY軸方向にほぼ均等な間隔で配置できると共に、Y軸方向の両端部分には、円形基板10の外縁に沿って周縁部を配置できる。
【0030】
このように、円形基板10の第1の面10Aには、X軸方向ループコイルX1~X8を配設し、円形基板10の第2の面10Bには、Y軸方向ループコイルY1~Y8を配設する。これにより、指示位置をピンポイントで特定可能な円形の位置検出センサ1が形成できる。なお、
図2(A)、
図3に示したように、X軸方向ループコイル群XGの配置とY軸方向ループコイル群YGの配置を明確に示すため、それぞれの引き出し部は90度異なる方向から引き出すようにした。しかし、実際には、X軸方向ループコイル群XGの引き出し部とY軸方向ループコイル群YGの引き出し部とは同一方向に形成される。
【0031】
例えば、X軸方向ループコイル群XGの引き出し部に対して、Y軸方向ループコイル群YGの引き出し部を揃える場合を考える。この場合には、第2の面10Bの各ループコイルY1~Y8を、例えば中央付近にスルーホールを設けて、第1の面10Aに導き、X軸方向ループコイル群XGに並列して、引き出し部に向かって、各ループコイルY1~Y8を引き出すようにすればよい。また、Y軸方向ループコイル群YGの引き出し部に対して、X軸方向ループコイル群XGの引き出し部を揃える場合にも、同様にすればよい。すなわち、第1の面10Aの例えば中央付近からY軸方向ループコイル群YGの引き出し部に向かって、各ループコイルX1~X8を引き出すようにすればよい。
【0032】
もちろん、ループコイルY1~Y8からの引き出し線を、円形基板10の周囲を引き回すようにしたり、ループコイルX1~X8からの引き出し線を、円形基板10の周囲を引き回すようにしたりしてもよい。要は、X軸方向ループコイル群XGの引き出し部とY軸方向ループコイル群YGの引き出し部とを揃えるようにする種々の方法を用いること可能である。
【0033】
図4は、実施の形態の位置検出センサ1の外観形状を説明するための図である。
図4に示すように、位置検出センサ1の外観は、センサ領域(位置検出領域)を形成する円形基板10部分と、円形基板10部分に配設されるX軸方向ループコイル群XGとY軸方向ループコイル群YGとを引き出す引き出し部11とからなる。このように、この実施の形態の位置検出センサ1は、円形の位置検出センサであり、引き出し部11が、位置検出回路2の選択回路21に接続される部分となる。従って、
図2、
図3を説明したようにループコイルが配設されて構成される円形の位置検出センサ1が位置検出回路2に接続されて、
図1に示した位置検出装置100が構成される。
【0034】
[2ターンのループコイルを用いて構成する位置検出センサ]
図5は、位置検出センサの他の構成例を説明するための図であり、2ターン(2回巻き)のループコイルを用いて位置検出センサ1Aを構成した場合の例である。この例の位置検出センサ1Aは、
図1に示した位置検出センサ1に変えて用いることができるものであり、
図1に示した位置検出回路2と共に、位置検出装置100Aを構成できる。
図5(A)に示すように、この例の位置検出センサ1Aもまた、円形基板10が用いられて構成さされるものである。
【0035】
円形基板10の第1の面(円形面部)10Aには、X軸方向に2ターンの8本のループコイルXa~Xhが配設されて、位置検出領域(センサ面)を構成している。各ループコイルXa~Xhは、位置検出回路2に接続するために引き出された部分以外の部分は、第1の面10Aから突出することがないようにされている。基本的に
図2、
図3を用いて説明した位置検出センサ1の場合と同様に、ループコイルXa~Xhは、X軸方向に対して交差する方向(Y軸方向)に延伸された直線部と、円形基板10の第1の面10Aの外縁に沿う周縁部とからなる。
【0036】
具体的には、
図5(B)に示すように、X軸方向の左端に配置されるループコイルXaは、X軸方向に対して交差する方向(Y軸方向)に延伸された直線部SL1、SL2と、円形基板10の第1の面10Aの外縁に沿う周縁部EG1、EG2とからなる。
図5(B)に示したように、ループコイルXaは、直線部SL1と周縁部EG1とで1ターン目を構成し、直線部SL2と周縁部EG2とで2ターン目を構成する。この場合、右側(円形基板10の中心側)から直線部SL1→直線部SL2→周縁部EG2→周縁部EG1の順にループコイルXaの部分が並ぶ。
【0037】
X軸方向の右端に配置されるループコイルXhは、ループコイルXaと同一形状のものであるが、右側が円形基板10の外縁となるので、右側が周縁部EG1、EG2となり、左側が直線部SL1、SL2となる。ループコイルXhの場合にも、直線部SL1と周縁部EG1とで1ターン目を構成し、直線部SL2と周縁部EG2とで2ターン目を構成する。この場合、ループコイルXaとは逆に、左側(円形基板10の中心側)から直線部SL1→直線部SL2→周縁部EG2→周縁部EG1の順にループコイルXhの部分が並ぶ。
【0038】
ループコイルXaの右側に位置するループコイルXbは、
図5(C)に示すように、X軸方向に対して交差する方向(Y軸方向)に延伸された対向する直線部S1、S2、S3、S4と、円形基板10の第1の面10Aの外縁に沿う対向する周縁部E1、E2、E3、E4とからなる。この場合、直線部S1と周縁部E1と直線部S2と周縁部E2とで1ターン目を構成し、直線部S3と周縁部E3と直線部S4と周縁部E4とで2ターン目を構成している。
【0039】
従って、ループコイルXbは、右側(円形基板10の中心側)から直線部S1→直線部S3→直線部S4→直線部S2の順にループコイルXaの直線部が並ぶ。また、直線部S1と直線部S2とを接続する周縁部E1と、直線部S3と直線部S4とを接続する周縁部E3とが
図5(C)の上端側に並ぶ。また、直線部S2と直線部S3とを接続する周縁部E2と、直線部S4から引き出し部に戻る周縁部E4とが
図5(C)の下端側に並ぶ。
【0040】
ループコイルXhの左側に位置するループコイルXfは、ループコイルXbと同一形状のものとなるが、ループコイルXfの直線部の並びがループコイルXbとは逆になる。すなわち、ループコイルXfの場合には、左側(円形基板10の中心側)から直線部S1→直線部S3→直線部S4→直線部S2の順にループコイルXfの直線部が並ぶ。また、直線部S1と直線部S2とを接続する周縁部E1と、直線部S3と直線部S4とを接続する周縁部E3と
図5(C)の上端側に並ぶ。また、直線部S2と直線部S3とを接続する周縁部E2と、直線部S4から引き出し部に戻る周縁部E4とが
図5(C)の下端側に並ぶ。
【0041】
このように、X軸方向の左右両端のループコイルXa、Xh以外のループコイルXb~Xgは、Y軸方向に延伸された対向する4本の直線部と、4本の直線部の端部間を接続する線部であって、第1の面10Aの外縁に沿う対向する4本の周縁部とからなる。この場合、4本の直線部の内、円形基板10の中心に近い側の直線部の長さが、中心から離れた側の直線部の長さよりも長くなる。これにより、
図5(A)に示したように、円形基板10の第1の面10Aに対して、直線部をほぼ均等な間隔で配置できると共に、X軸方向の両端部分には、円形基板10の外縁に沿って周縁部を配置できる。
【0042】
なお、図示しないが、円形基板10の第2の面(第1の面10Aの反対側(裏側)の円形面部)10Bには、Y軸方向に2ターンの8本のループコイルYa~Yhが配設されて、位置検出領域(センサ面)が構成される。この例の位置検出センサ1Aは、第1の面10Aには、第1の方向(X軸方向)に8本の2ターンのループコイルXa~Xhを配設し、第2の面10Bには、第1の方向に交差する第2の方向(Y軸方向)に8本の2ターンのループコイルYa~Yhを配設する。第2の面10Bには、第1の面10Aに配設されたループコイルXa~Xhを90度回転させて、第2の面10Bに配設するようにすれば、位置検出センサ1Aが構成できる。この例では、第1の方向と第2の方向とは、直交するものとしているが、第1の方向と第2の方向との交差する角度は適宜の角度とすることが可能である。
【0043】
このように、円形基板10の第1の面10Aには、X軸方向ループコイルXa~Xhを配設し、円形基板10の第2の面10Bには、Y軸方向ループコイルYa~Yhを配設する。これにより、指示位置をピンポイントで特定可能な円形の位置検出センサ1Aが形成できる。なお、この例の位置検出センサ1Aにおいても、X軸方向ループコイルXa~XhとY軸方向ループコイルYa~Yhの引き出し部は、同一方向に形成される。
【0044】
従って、この例の位置検出センサ1Aもまた、
図4に示したように、センサ領域(位置検出領域)を形成する円形基板10部分と、円形基板10部分に配設されるX軸方向ループコイル群XGとY軸方向ループコイル群YGとを引き出す引き出し部11とからなる。従って、
図5を用いて説明したようにループコイルが配設されて構成される円形の位置検出センサ1Aが、位置検出回路2に接続されることにより位置検出装置を構成できる。
【0045】
なお、位置検出センサ1Aにおいては、2ターンのループコイルを用いる場合を例にして説明したが、3ターン以上のループコイルを用いる場合にも、同様に構成することができる。すなわち、各ループコイルは、配列方向と交差する方向に延伸された直線部と、円形基板の外縁に沿う周縁部とを備えるように構成すればよい。より詳しくは、各直線部は、配列方向に所定の間隔を空けて配設する。このようにすれば、円形基板10に対して、ほぼ全面に渡って指示位置を良好に検出可能な位置検出センサを構成できる。
【0046】
[周辺電極の採用]
図6は、実施の形態の位置検出センサの他の構成例を説明するための図である。この例の位置検出センサ1Bは、円形基板20の第1の面20Aと第2の面20Bに対して、
図2、
図3を用いて説明した位置検出センサ1の場合と同様にループコイルX1~X8、ループコイルY1~Y8を設ける。更に、位置検出センサ1Bの場合には、
図6に示すように、円形基板20の第1の面20Aには、その外縁に沿って、ループコイルCR1、CR2を設ける。
【0047】
ループコイルCR1、CR2は、他のループコイルX1~X8、Y1~Y8と同様に、磁気信号の送受信に用いる。このループコイルCR1、CR2のみを動作させると、円形基板20上の広い範囲で対応する電子ペン200が存在するか否かを判別することが可能になる。これにより、処理制御部28は、ループコイルCR1、CR2を通じて、電子ペン200の存在を検出できない場合は、ループコイルX1~X8、Y1~Y8を用いた位置指示の検出を休止するように各部を制御することができる。また、処理制御部28は、ループコイルCR1、CR2によって円形基板20上に対応する電子ペン200の存在を検出した場合には、ループコイルX1~X8、Y1~Y8を用いた指示位置の検出を行うように各部を制御することができる。従って、当該位置検出センサ1Bを用いた位置検出装置の場合には、円形基板20上に電子ペン200が位置している場合においてのみ機能する省電力モードを備えた位置検出装置を実現できる。
【0048】
より具体的には、
図1に示した位置検出装置100において、位置検出センサ1に替えて、
図6を用いて説明した位置検出センサ1Bを用いるようにする。この場合、X軸方向ループコイルX1~X8、Y軸方向ループコイルY1~Y8に加えて、ループコイルCR1、CR2も選択回路21に接続される。まず、処理制御部28は、送信期間においては、切り替え接続回路24を端子T側に切り替え、ループコイルCR1、CR2の両方を、あるいは、これらを順次に選択するようにして、ループコイルCR1、CR2から磁気信号を送出する。次に、処理制御部28は、受信期間において、切り替え接続回路24を端子R側に切り替え、ループコイルCR1、CR2の両方を、あるいは、これらを順次に選択するようにする。これにより、ループコイルCR1、CR2を通じて磁気信号を受信して、位置検出用回路26を通じて電子ペン200が位置検出センサ1Bの位置検出領域上の指示位置を検出するようにする。
【0049】
処理制御部28は、位置検出用回路26からの検出出力に基づいて、電子ペン200が位置検出センサ1Bの位置検出領域上に存在するか否かを判別する。処理制御部28において、電子ペン200の存在が確認できたとする。この場合には、送信期間において、処理制御部28は、切り替え接続回路24を端子T側に切り替え、ループコイルCR1、CR2に加えて、X軸方向ループコイルX1~X8、Y軸方向ループコイルY1~Y8を順次に切り替えて、磁気信号を送信する。また、受信期間において、処理制御部28は、切り替え接続回路24を端子R側に切り替え、ループコイルCR1、CR2に加えて、X軸方向ループコイルX1~X8、Y軸方向ループコイルY1~Y8を順次に切り替える。これにより、磁気信号を受信し、位置検出用回路26、筆圧検出用回路27を通じて電子ペンによる指示位置及び筆圧を検出する。
【0050】
なお、処理制御部28において、電子ペン200の存在が確認できなかった時には、ループコイルCR1、CR2を用いた磁気信号の送信、受信を行い、電子ペン200の存在が確認できるのを待つ。また、処理制御部28において、電子ペン200の存在が確認できた後に、ループコイルCR1、CR2を通じて、電子ペン200の存在が確認できなくなったとする。この場合には、処理制御部28は、X軸方向ループコイルX1~X8、Y軸方向ループコイルY1~Y8の利用を停止する。これにより、位置検出装置の省電力化が実現できる。
【0051】
また、ループコイルCR1、CR2を、磁気信号の電力送信用にのみ用いるようにし、電子ペン200に対して電力の供給を効率よく行うことができるようにすることもできる。また、ループコイルCR1、CR2を、磁気信号の送信専用(給電用)に用いて、ループコイルX1~X8、Y1~Y8を受信専用(指示位置検出用)にしてもよい。また、ループコイルCR1、CR2と同様にして、円形基板20の第2の面20Bにも、その外縁に沿って、ループコイルCR3、CR4を設けてもよい。このようにすれば、より効率よく電子ペン200に対して電力を供給し、また、電子ペン200の存在の検知を適切に行うことができる。
【0052】
ここで、ループコイルCR1、CR2を、磁気信号の送信用(給電用)に用いて、ループコイルX1~X8、Y1~Y8を受信用(指示位置検出用)に用いる場合の具体的な構成について考える。基本的には、
図1に示した位置検出装置100において、位置検出センサ1に替えて、
図6を用いて説明した位置検出センサ1Bを用いるようにする。この場合、X軸方向ループコイルX1~X8、Y軸方向ループコイルY1~Y8に加えて、ループコイルCR1、CR2も選択回路21に接続される。
【0053】
この場合において、処理制御部28は、送信期間においては、ループコイルCR1、CR2の両方を、あるいは、これらを順次に選択し、切り替え接続回路を端子T側に切り替えて、ループコイルCR1、CR2から磁気信号を送出する。一方、受信期間において、処理制御部28は、ループコイルCR1、CR2は選択せずに、X軸方向ループコイルX1~X8、Y軸方向ループコイルY1~Y8を順次に切り替えて、磁気信号を受信し、位置検出用回路26及び筆圧検出用回路27を通じて、電子ペン200による指示位置及び筆圧を検出するようにすればよい。
【0054】
また、ここでは、1ターンのループコイルを用いた位置検出センサ1Bを構成する場合について説明したが、これに限るものではない。2ターン以上のループコイルを用いる場合であっても、同様にして、周辺電極としてのループコイルCR1、CR2やループコイルCR3、CR3を設けて位置検出センサを構成し、上述したように用いることも可能である。また、ループコイルCR1、CR2、CR3、CR4が、複数ターンのループコイルであってももちろん良い。また、円形基板の外縁に沿って設けるループコイルCR1、CR2、…の数も適宜の数とすることができる。
【0055】
[位置検出センサ上の指示位置の特定方法]
上述した位置検出センサ1と位置検出回路2とにより、
図1に示した位置検出装置100を構成できる。また、位置検出センサ1に替えて位置検出センサ1A(
図5)、位置検出センサ1B(
図6)を用いるようにしてもよい。いずれの位置検出センサを用いる場合であっても、電子ペン200による指示位置の検出は、従来からある矩形の位置検出センサの場合と同様である。具体的には、まず、Y軸方向ループコイルを順次に選択して受信信号のレベルを確認し(Y軸ループコイルのスキャン処理)、次にX軸ループコイルを順次に選択して受信信号のレベルを確認する(X軸ループコイルのスキャン処理)。これにより、受信信号レベルの一番高い、Y軸方向ループコイルとX軸ループコイルとの交点が指示位置となる。
【0056】
なお、円形の位置検出センサ1、1A、1Bの外縁近傍が指示位置の場合には、複数のループコイルが存在しているために精度よく指示位置が特定できない場合がある。そこで、処理制御部28の例えば不揮発性メモリ(図示せず)に、円形の位置検出センサのセンサ面の外縁近傍の指示位置を正確に検出するためのいわゆるルックアップテーブルを用意しておく。このルックアップテーブルは、センサ面の外縁近傍の電子ペン200による指示位置と、その時の指示位置近傍のX軸方向ループコイル群XGとY軸方向ループコイル群YGの複数のループコイルに発生する電圧値とを対応付けて記憶保持するものである。
【0057】
そして、電子ペン200による指示位置が、センサ面の外縁近傍であることが検出されたとする。この場合、その時の指示位置近傍の複数のループコイルに発生している誘導電圧に基づいて、処理制御部28の不揮発性メモリのルックアップテーブルを参照し、適切な指示位置を特定する。これにより、指示位置はセンサ面の外縁のどの位置にあるのかを適切に判別できる。このように、円形の位置検出センサを用いる場合であっても、電子ペン200による位置検出センサ上の指示位置を適切に特定することができる。
【0058】
もちろん、センサ面の外縁近傍だけでなく、外縁近傍以外の部分でも、電子ペンによる指示位置の検出にルックアップテーブルを用いることもできる。特に、位置検出センサが、
図5を用いて説明したように、2ターンのループコイルを用いて構成されるものである場合には、異なるループコイルが重なりあう部分も多くなる。このため、処理制御部28のルックアップテーブルに、位置検出センサのセンサ面上の電子ペン200による種々の指示位置と、その時の指示位置近傍のループコイル群XGとループコイル群YGの複数のループコイルに発生する電圧値とを対応付けて記憶保持しておく。
【0059】
このように構成されたルックアップテーブルを用いることによって、2ターンのループコイルを用いて構成した位置検出センサの場合であっても、電子ペンによる指示位置を適切に補正して、位置検出センサのセンサ面上の正確な指示位置を特定できる。このことは、2ターン以上のループコイルを用いて位置検出センサを構成する場合についても言えることである。すなわち、電子ペンの指示位置を適切に特定するために、ループコイルのターン数、配設の仕方に応じて、指示位置と各ループコイルの電圧値とを対応付けたルックアップテーブルを処理制御部28に用意しておく。これにより、円形の位置検出センサを用いる場合であっても、電子ペンによる指示位置を適切に特定することができる。
【0060】
[ジョイスティック用の位置検出装置の構成例]
図7は、実施の形態の位置検出センサ1が用いられて構成される位置検出装置の他の構成例を説明するための図であり、いわゆるジョイスティック用の位置検出装置100Aの構成例である。
図7に示した位置検出装置100Aにおいて、
図1に示した位置検出装置100と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分の説明は重複するため省略する。
【0061】
ジョイスティックは、ゲームの操作装置で広く用いられているように、基準位置にあるスティック(レバー)を種々の方向に傾けるように操作し、傾けた方向と傾けた角度により操作情報を入力する。従って、ジョイスティックの場合には、電子ペンにより実現するスティック(レバー)を基準位置に傾け操作が可能なように固定し、当該スティックの傾けた方向と傾けた角度を検出できるようにすればよい。このため、ジョイスティックのスティック(レバー)として機能する電子ペン200Aは、
図7の左上に示したように、筆圧検出部Cvは備えずに、コイルLとコンデンサCf等が並列に接続されて形成された共振回路を備えるものでよい。
【0062】
一方、
図7に示した位置検出装置100Aは、位置検出センサ1と位置検出回路2Aとからなる。
図7と
図1とを比較すると分かるように、位置検出回路2Aは、筆圧検出用回路27は備えず、位置検出用回路26に替えて、傾き検出用回路29が設けられたものである。ジョイスティックのスティック(レバー)として機能する電子ペン200Aは、位置検出センサ1の円形基板10の中心の真上にペン先を円形基板10に向け、傾け操作が可能なように固定されることになる。
【0063】
この例の位置検出装置100Aもまた、
図1に示した位置検出装置100の場合と同様に、送信期間と受信期間とを設けて機能する。すなわち、位置検出装置100Aは、位置検出センサ1の複数のループコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し位置検出センサ1の複数のループコイルを通じて順次に外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける。
【0064】
受信期間においては、傾き検出用回路29において、位置検出センサ1の各ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波して、その検波出力信号をデジタル信号に変換し、処理制御部28に出力する。処理制御部28は、傾き検出用回路29らのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン200Aの傾きの方向と傾きの角度を算出する。
【0065】
すなわち、電子ペン200Aのペン先に近いループコイルには、より多くの誘導電圧が発生する。また、電子ペン200Aの傾き角度が小さければ、電子ペン200Aからの磁気信号に応じて誘導電圧が発生するループコイルの範囲は狭く、電子ペン200Aの傾き角度が大きければ、電子ペン200Aからの磁気信号に応じて誘導電圧が発生するループコイルの範囲は広くなる。従って、誘導電圧が高いループコイルの位置により、電子ペン200の傾き方向を特定でき、誘導電圧が発生するループコイルの範囲に応じて、傾き角度を特定できる。
【0066】
このようにして、位置検出センサ1を用いて、電子ペン200Aをスティック(レバー)として操作するジョイスティック用として好適な位置検出装置100Aを構成できる。なお、位置検出センサは、
図2、
図3を用いて説明した位置検出センサ1を用いる場合に限るものではなく、
図5を用いて説明した2ターンのループコイルを用いた位置検出回路2Aを用いるようにしてもよい。また、3ターン以上のループコイルを用いて、
図5を用いて説明した位置検出センサ1Aと同様に構成される円形の位置検出センサを用いてもよい。
【0067】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の位置検出センサ1、1A、1Bによれば、従来にない円形の位置検出センサを実現できる。円形の位置検出センサは矩形の位置検出センサとは異なり、四隅が無いので省スペースに組み込みが可能になる。また、円形の表示デバイスが用いられる場合においても、これに対応する円形の位置検出センサが実現できる。すなわち、円形の位置検出センサにより、円形の表示デバイスに対応したセンサ領域を無駄なく形成することができる。また、円形の位置検出センサ1、1A、1Bと位置検出回路2Aとによって、いわゆるジョイスティックを構成する場合に用いて好適な位置検出装置100Aを実現できる。
【0068】
[変形例]
上述した実施の形態の位置検出センサ1、1A、1Bでは、ループコイルX1~X8、Y1~Y8において、周縁部は円形基板10、20の外縁に沿って曲線となるようにした。周縁部は、できるだけ円形基板10、20の外縁に沿っていることが望ましいためである。しかし、周縁部は、曲線によって構成する場合に限るものではない。ループコイルの周縁部は、複数の直線の組み合わせによって構成してもよい。また、例えば、
図2(C)に示した周縁部E1、E2や
図5(C)に示した周縁部E3、E4などの比較的に長さが短い周縁部の場合には、単一の直線により構成してもよい。
【0069】
また、位置検出センサ1、1A、1Bは、いわゆるフレキシブル基板(FPC(Flexible Printed Circuits))の構成とすることにより、種々の機器に搭載しやすくすることができる。フレキシブル基板の構成とされた位置検出センサは、円形基板10、20を薄膜状の絶縁体(ベースフィルム)で形成し、その上にループコイルを配設して構成することができる。フレキシブル基板は、柔軟性があり、弱い力で繰り返し変形させることが可能であり、変形した場合にもその電気的特性を維持する特性をもつものである。
【0070】
また、2ターン以上のループコイルを用いる場合には、1つのループコイルの直線部は、例えば、
図5に示したように、互いに所定間隔を空けて配設するようにしたが、これに限るものではない。1つのループコイルの直線部のいくつかを密接させるように配設することも可能である。このため、2ターン以上のループコイルを用いる場合であっても、
図2、
図3を用いて説明した態様で、ループコイルを配設することも可能である。この場合には、より強い磁気信号を送出したり、受信する磁気信号のレベルを大きくしたりするなどのことが可能である。
【0071】
要は、ループコイルについて、直線部と周縁部とを設けるようにし、円形のセンサ面を形成できるように、ループコイルを配設すればよい。換言すれば、各ループコイルは、直線部と周縁部とからなり、周縁部が少なくとも円形基板の外縁(外周)の円弧の一部に対応するように設ければよい。
【0072】
なお、複数ターンのループコイルを用いる場合において、1つのループコイルの各直線部を、所定間隔を空けて配設した場合には、電子ペンから送信される磁気信号を高精度に受信することができるエリアを広範囲に設けることができる。また、上述した実施の形態では、円形基板10、20は真円であるものとして説明したが、必ずしも真円である必要はない。楕円形や半円形の位置検出センサを構成することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B…位置検出センサ、10、20…円形基板、10A…第1の面、10B…第2の面、11…引き出し部、X1~X8…X軸方向ループコイル、Y1~Y8…Y軸方向ループコイル、Xa~Xh…X軸方向ループコイル、Ya~Yh…Y軸方向ループコイル、SL、SL1、SL2、S1、S2、S3、S4…直線部、EG、EG1、EG2、E1、E2、E3、E4…周縁部、2、2A…位置検出回路、21…選択回路、22…発振器、23…電流ドライバ、24…切り替え接続回路、25…受信アンプ、26…位置検出用回路、27…筆圧検出用回路、28…処理制御部、29…傾き検出用回路、100、100A…位置検出装置、200、200A…電子ペン