(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141311
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】電子写真用記録材料
(51)【国際特許分類】
G03G 7/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
G03G7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041544
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】立石 真由
(57)【要約】
【課題】優れたトナー画像の定着性と耐傷性を有する電子写真用記録材料を提供する。
【解決手段】フィルム基材の少なくとも片方にトナー画像が定着可能な受像層を有する電子写真用記録材料において、該トナー受像層が一般式(1)で表わされる化合物を0.15~0.62g/m
2含有する。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の少なくとも片方の面にトナー受像層を有する電子写真用記録材料において、該トナー受像層が一般式(1)で表わされる化合物を0.15~0.62g/m
2含有することを特徴とする電子写真用記録材料。
【化1】
(一般式(1)中、mは1または2を表し、nは1以上の整数を表す。Xは、グアニジン部位と塩を形成可能な無機酸を表し、pは有理数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用記録材料に関する。詳しくは、優れたトナー画像の定着性と耐傷性を有する電子写真用記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いて印刷する用途は、端末PC用プリンター、ファックス、または複写機に留まらず、多品種小ロット印刷、可変情報印刷等を可能とする、いわゆるオンデマンド印刷分野でも実用化が進み、技術的進展が目覚ましい。近年では印刷速度、画質の向上に伴い、印刷部数が従来オフセットやグラビア等の印刷で行われていた領域でも利用されている。
【0003】
電子写真印刷は無版の印刷方式であるが故に可変情報を扱えるのが利点である。一方でオフセット印刷やグラビア印刷は可変情報を扱うことはできないものの、高品質の印刷を安価に大量に行うことに適している。そこで電子写真方式においても、印刷機械、トナー、記録材料の面から高画質化、高速化、省電力化、そして低コスト化による印刷の生産性向上に向けた技術開発が進められている。
【0004】
電子写真印刷方式のうち、乾式電子写真方式は事務用複写機等に代表される方式であり、画像を形成するトナーは顔料と合成樹脂からなる固体粉末トナーを使用する。画像形成の方法は、感光体上に一様の電荷を形成して帯電させた後、露光過程で形成した静電潜像にトナーを吸着させ、このトナーを被転写物に転写、加熱する方式である。近年、乾式電子写真方式印刷機における印刷画質の向上は目覚ましく、鮮明な画像品質を得ることが可能となってきたため、従来では乾式電子写真方式印刷機の用途として考慮されることが少なかった写真出力、ならびにフォトブック用途等に用いられる機会が増加している。
【0005】
写真出力に用いられる記録材料では、良好な画質にてトナーを転写する観点から、高い平滑性が要求されるため、記録材料の基材としてはフィルム基材を使用することが好まれる。しかし、フィルム基材のみではトナーの画像定着性が十分ではないため、トナー受像層を設ける構成が提案されている。例えば、特許文献1にはダイマー酸系ポリアミド樹脂と融点が90~160℃の範囲であるワックス微粒子を含有する、印刷画像との密着性に優れる受像層を設けた電子写真用フィルムが記載され、特許文献2にはポリエステル樹脂と鎖状のコロイダルシリカを含み、且つ受像層の表面抵抗が1×109~1×1013Ωの範囲にある、トナー画像の密着性が向上した電子写真用フィルムが記載されている。
【0006】
特許文献3にはセルロース系樹脂を主成分とするポリマー中に潤滑性を有するマット剤とともに分散された金属酸化物を含有する受像層が設けられた、搬送性およびトナー定着性や耐傷性等の画像性に優れる電子写真用透明フィルムが記載され、特許文献4には特定のウレタン樹脂を含有する画像受像層を有する、耐傷性に優れた電子写真用ラミネートフィルムが記載されている。しかしながらこれら特許文献に記載される記録材料においても、トナー画像の耐傷性については更なる改善が求められていた。
【0007】
また、特許文献5には基体上にバインダーと、65℃未満の融点および150℃より高い沸点を有する物質を含有する被覆物を有する、優れたトナー接着性を有する記録シートが開示され、該バインダーとしてポリ(メチレン-グアニジン)塩酸塩が使用できる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-181177号公報
【特許文献2】特開平6-19180号公報
【特許文献3】特開2003-043722号公報
【特許文献4】特開2013-041037号公報
【特許文献5】特開平7-5720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れたトナー画像の定着性と耐傷性を有する電子写真用記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の発明によって達成される。
フィルム基材の少なくとも片方の面にトナー受像層を有する電子写真用記録材料において、該トナー受像層が一般式(1)で表わされる化合物を0.15~0.62g/m2含有することを特徴とする電子写真用記録材料。
【0011】
【0012】
一般式(1)中、mは1または2を表し、nは1以上の整数を表す。Xは、グアニジン部位と塩を形成可能な無機酸を表し、pは有理数を表す。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、優れたトナー画像の定着性と耐傷性を有する電子写真用記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電子写真用記録材料について詳細に説明する。
【0015】
本発明の電子写真用記録材料は、フィルム基材の少なくとも片面にトナー受像層を有する。
【0016】
<フィルム基材>
本発明で用いるフィルム基材とは、特に限定はされないが、プラスチックフィルムが主に用いられる。プラスチックフィルムは、ポリエステル、ポリイミド、ナイロン、ポリカーボネート等を主体としたフィルムがあるが、フィルムの汎用性や価格を考慮すると、ポリエステルフィルム、特にエチレングリコール、テレフタル酸を重縮合して得られるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好ましい。
【0017】
フィルム基材の厚みは特に限定しないが、搬送性の観点から75~150μmが好ましい。
【0018】
<トナー受像層>
本発明の電子写真用記録材料が有するトナー受像層は、一般式(1)で表わされる化合物を含有する。一般式(1)中のXはグアニジン部位と塩を形成可能な無機酸を表し、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等を例示することができる。一般式(1)で表わされる化合物としては、例えば、m=1のポリヘキサメチレングアニジンの塩酸塩、同リン酸塩等、m=2のポリヘキサメチレンビグアニジンの塩酸塩等を挙げることができる。一般式(1)で表わされる化合物はポリマー構造を有することから、他のバインダー樹脂成分を併用しなくてもトナー受像層を形成することが可能であり、これにより効率的にトナー画像の定着性と耐傷性を向上することができる。
【0019】
本発明におけるトナー受像層が含有する一般式(1)で表わされる化合物の含有量は、0.15~0.62g/m2である。これにより優れたトナー画像の定着性と耐傷性を有する電子写真用記録材料とすることができる。この範囲より少ない場合、十分な耐傷性が得られず、この範囲より多い場合は、トナー画像の定着性の低下やゴーストの発生による画質低下が生じる。
【0020】
本発明におけるトナー受像層は、優れたトナー画像の定着性と耐傷性を両立させる観点から、一般式(1)で表わされる化合物単独で形成することが好ましいが、種々目的に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、pH調整剤、増粘剤等の添加剤を適宜含有することもできる。これら添加剤のトナー受像層における含有量は全固形分量の10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
【0021】
本発明において、トナー受像層の塗布に用いられる塗布方式としては、公知の各種塗布方式を用いることができる。例えば、スプレーガン方式、スライドビード方式、スライドカーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
【0022】
フィルム基材のトナー受像層が設けられる面と反対側の面には、カール防止、印字直後に重ね合わせた際のくっつき防止、更なるトナー転写性の向上のために種々のバック層を有してもよい。また、前述したトナー受像層を両面に有してもよい。
【実施例0023】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。以下、「%」は、特に説明のない限り質量%である。
【0024】
(実施例1)
(トナー受像層の作成)
PETフィルム(ダイアホイル(登録商標)T100-100、三菱ケミカル(株)製)をフィルム基材とし、一方の面に下記組成のトナー受像層塗液1をグラビアロール方式にて、トナー受像層塗液1の湿潤塗布量が6g/m2になるようにして塗布を行った。塗布後に25~50℃の加熱空気を吹き付けて乾燥させ、実施例1の電子写真用記録材料を得た。
【0025】
(トナー受像層塗液1)
ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩 3.3%
水 13.3%
エタノール 83.4%
【0026】
(実施例2)
実施例1において、トナー受像層塗液1を下記トナー受像層塗液2に変更した以外は同様にして実施例2の電子写真用記録材料を得た。
【0027】
(トナー受像層塗液2)
ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩 4.2%
水 16.6%
エタノール 79.2%
【0028】
(実施例3)
実施例1において、トナー受像層塗液1を下記トナー受像層塗液3に変更した以外は同様にして実施例3の電子写真用記録材料を得た。
【0029】
(トナー受像層塗液3)
ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩 8.3%
水 33.3%
エタノール 58.4%
【0030】
(実施例4)
実施例1において、トナー受像層塗液1を下記トナー受像層塗液4に変更した以外は同様にして実施例4の電子写真用記録材料を得た。
【0031】
(トナー受像層塗液4)
ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩 4.6%
水 16.2%
エタノール 79.2%
【0032】
(比較例1)
実施例1において、トナー受像層塗液1を塗布せず、PETフィルムをそのまま比較例1の電子写真用記録材料とした。
【0033】
(比較例2)
実施例1において、トナー受像層塗液1を、カチオン当量がトナー受像層塗液2と同量になるように調整した、下記トナー受像層塗液5に変更した以外は同様にして比較例2の電子写真用記録材料を得た。
【0034】
(トナー受像層塗液5)
グアニジン塩酸塩 1.8%
PEG1000(富士フイルム和光純薬(株)製) 2.4%
水 20.8%
エタノール 75.0%
【0035】
(比較例3)
実施例1において、トナー受像層塗液1を下記トナー受像層塗液6に変更した以外は同様にして比較例3の電子写真用記録材料を得た。
【0036】
(トナー受像層塗液6)
ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩 1.7%
水 6.7%
エタノール 91.6%
【0037】
(比較例4)
実施例1において、トナー受像層塗液1を下記トナー受像層塗液7に変更した以外は同様にして比較例4の電子写真用記録材料を得た。
【0038】
(トナー受像層塗液7)
ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩 12.5%
水 50.0%
エタノール 37.5%
【0039】
(トナー定着性の評価)
実施例1~4および比較例1~4の電子写真用記録材料に、乾式電子写真方式のプリンター((株)リコー製 SP C261)を使用して印刷を行った。評価に使用する印刷画像として、ブラックの単色を濃度100%で20mm×20mmの正方形サイズのパターンを出力した。この印刷物にセロハンテープを空気が入らないように強く貼り付けてはがすことを繰り返し、トナーの残り具合を観察して、トナー定着性を評価した。トナー定着性の評価は、以下の基準で行い、◎または〇である場合に、本発明の電子写真用記録材料として基準を満たしていることとした。結果を表1に示す。
【0040】
<トナー定着性評価基準>
◎:10回以上繰り返しても印刷物のトナーが取れていない。
○:5回~9回繰り返しで印刷物のトナーが取れた。
△:3回~4回繰り返しで印刷物のトナーが取れた。
×:2回以下の繰り返しで印刷物のトナーが取れた。
【0041】
(耐傷性の評価)
実施例1~4および比較例1~4の電子写真用記録材料に、乾式電子写真方式のプリンター((株)リコー製 SP C261)を使用して、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、ブルー、グリーンを各色の濃度100%で縦52mm×横16mmの短冊状の図形を繋げた縦52mm×横112mmのパターンを印刷した。その後、連続加重式引掻試験機TYPE:18(新東科学(株)製)に先端が0.2mmの引掻針を装着し、40gの分銅を乗せて前記印刷パターン上を通過させたときの傷の状況を目視で観察して耐傷性を評価した。耐傷性の評価は、以下の基準で行い、◎または〇である場合に、本発明の電子写真用記録材料として基準を満たしていることとした。結果を表1に示す。
【0042】
<耐傷性評価基準>
◎:全く傷が確認されない。
○:微かに傷が確認されるが、実用上問題ない。
×:はっきりと傷が確認され、実用上問題がある。
【0043】
【0044】
表1の結果から本発明の電子写真用記録材料は、優れたトナー定着性と耐傷性に優れることがわかる。