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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141314
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/18 20120101AFI20220921BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20220921BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20220921BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220921BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B60W10/18
B60W30/06
B60W10/00 120
B60W10/04
B60W60/00
B60T7/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041549
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】521080336
【氏名又は名称】ウーブン・アルファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】三栗谷 祥
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241AE02
3D241AE41
3D241BA01
3D241BA30
3D241BA55
3D241BB01
3D241BB06
3D241CC01
3D241CC08
3D241CE04
3D241DB20Z
3D241DC33Z
3D246DA01
3D246EA02
3D246GB33
3D246GC16
3D246HA86A
3D246HB11A
3D246JA03
3D246JB11
3D246KA15
3D246KA19
(57)【要約】
【課題】運転支援用の車両制御装置を利用して、車両を自動運転制御することを可能とする車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置は、車両10のドライバの運転を支援するための運転支援用制御装置2から通信部21を介して受信した第1の加減速要求に含まれる、車両10の目標加減速度を、車両10の自動運転制御において車両10に要求される加減速度に従って修正し、修正された目標加減速度を含む第2の加減速要求を、通信部21を介してアクセル制御装置3へ出力する加減速要求修正部32を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両のドライバの運転を支援するための運転支援用制御装置から通信部を介して受信した第1の加減速要求に含まれる、前記車両の目標加減速度を、前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される加減速度に従って修正し、修正された前記目標加減速度を含む第2の加減速要求を、前記通信部を介して前記車両のアクセルを制御するアクセル制御装置へ出力する加減速要求修正部、
を有する制御装置。
【請求項2】
前記通信部を介して受信した第1の制動要求に含まれる、前記車両のブレーキの制動力による前記車両の目標減速度を、前記車両の自動運転制御において要求される、前記ブレーキの制動力による減速度に従って修正し、修正された前記目標減速度を含む第2の制動要求を、前記通信部を介して前記ブレーキを制御するブレーキ制御装置へ出力する制動要求修正部をさらに有する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制動要求修正部は、前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される加減速度が前記車両の減速を表す場合、前記第1の制動要求に含まれる前記目標減速度を、前記車両の自動運転制御において要求される、前記ブレーキの制動力による減速度に従って修正し、一方、前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される加減速度が前記車両の加速を表す場合、前記第1の制動要求に含まれる前記目標減速度を修正しない、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
車両の制御方法であって、
前記車両のドライバの運転を支援するための運転支援用制御装置から通信部を介して受信した第1の加減速要求に含まれる、前記車両の目標加減速度を、前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される加減速度に従って修正し、
修正された前記目標加減速度を含む第2の加減速要求を、前記通信部を介して前記車両のアクセルを制御するアクセル制御装置へ出力する、
ことを含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を自動運転制御するための制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバによる車両の運転を支援するために、車両のアクセル、ブレーキ及びステアリングの何れかを所望の制御目的に応じて制御するための制御装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された走行制御装置は、目標の走行状態を含む目標スライディングモード面(SM面)を用いたスライディングモード制御で、先行車両に追従するように自車両を制御する第1走行制御部と、自車両の走行状態を目標のSM面に収束するまで、自車両の走行を制御する第2走行制御部とを備える。そして第2走行制御部は、自車両の走行状態が目標のSM面に収束するまで、走行状態における自車両と目標との偏差に基づいて目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求め、自車両の加減速度が下限速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定し、目標加減速度となるように自車両の走行を制御することを繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-100244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転支援用の車両制御装置は、車両の挙動を自動で制御するものであるものの、目的となる運転支援機能を逸脱するような制御を車両に実行させる入力を受け付けないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、運転支援用の車両制御装置を利用して、車両を自動運転制御することを可能とする車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車両の制御装置が提供される。この制御装置は、車両のドライバの運転を支援するための運転支援用制御装置から通信部を介して受信した第1の加減速要求に含まれる、車両の目標加減速度を、車両の自動運転制御において車両に要求される加減速度に従って修正し、修正された目標加減速度を含む第2の加減速要求を、通信部を介して車両のアクセルを制御するアクセル制御装置へ出力する加減速要求修正部を有する。
【0008】
この制御装置は、通信部を介して受信した第1の制動要求に含まれる、車両のブレーキの制動力による車両の目標減速度を、車両の自動運転制御において要求される、ブレーキの制動力による減速度に従って修正し、修正された目標減速度を含む第2の制動要求を、通信部を介してブレーキを制御するブレーキ制御装置へ出力する制動要求修正部をさらに有することが好ましい。
【0009】
また、この制御装置において、制動要求修正部は、車両の自動運転制御において車両に要求される加減速度が車両の減速を表す場合、第1の制動要求に含まれる目標減速度を、車両の自動運転制御において要求される、ブレーキの制動力による減速度に従って修正し、一方、車両の自動運転制御において車両に要求される加減速度が車両の加速を表す場合、第1の制動要求に含まれる目標減速度を修正しないことが好ましい。
【0010】
本発明の他の形態によれば、車両の制御方法が提供される。この制御方法は、車両のドライバの運転を支援するための運転支援用制御装置から通信部を介して受信した第1の加減速要求に含まれる、車両の目標加減速度を、車両の自動運転制御において車両に要求される加減速度に従って修正し、修正された目標加減速度を含む第2の加減速要求を、通信部を介して車両のアクセルを制御するアクセル制御装置へ出力する、ことを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両の制御装置は、運転支援用の車両制御装置を利用して、車両を自動運転制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両の制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】車両の制御装置の一実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】車両制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しつつ、車両の制御装置、及び、その制御装置において実行される車両の制御方法について説明する。この制御装置は、例えば、車両のドライバの運転を支援するための制御装置(以下、運転支援用制御装置と呼ぶ)が実装された車両に対して、運転支援用制御装置とは別個に、後から車両に取り付けられ、その運転支援用制御装置を利用して、車両を自動運転制御する。そのために、この制御装置は、運転支援用制御装置から、車両の目標加減速度を含む加減速要求信号を受信し、その目標加減速度を、車両の自動運転制御において車両に要求される加減速度に従って修正し、修正された目標加減速度を含む加減速要求信号を、車両のアクセルを制御するアクセル制御装置へ出力する。さらに、この制御装置は、アクセル制御装置から受信した、車両のブレーキの制動力による車両の目標減速度を含む制動要求信号を受信し、その目標減速度を、車両の自動運転制御において車両に要求される、ブレーキの制動力による減速度に従って修正し、修正された目標減速度を含む制動要求信号を、ブレーキを制御するブレーキ制御装置へ出力する。このように、この制御装置は、運転支援用制御装置がアクセル及びブレーキを制御する際の加減速要求信号及び制動要求信号の形式を利用して、その加減速要求信号に含まれる目標加減速度及び制動要求信号に含まれる目標減速度を自動運転制御のための値に書き換えることで、車両の自動運転制御を可能とする。
【0014】
図1は、車両の制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、運転支援用制御装置2と、アクセル制御装置3と、ブレーキ制御装置4と、本実施形態による車両10の制御装置の一例である電子制御装置(ECU)5とを有する。運転支援用制御装置2と、アクセル制御装置3と、ブレーキ制御装置4と、ECU5とは、互いに通信可能に接続される。車両制御システム1は、さらに、車両10の周囲を撮影するための少なくとも一つのカメラ(図示せず)、LiDAR、レーダあるいはソナーといった、車両10の周囲に位置する物体までの距離を測定するための少なくとも一つの距離センサ(図示せず)、及び、車両10の自動運転制御に用いられる地図情報を記憶するストレージ装置(図示せず)を有してもよい。さらにまた、車両制御システム1は、GPS受信機といった、衛星測位システムに準拠して車両10の自己位置を測位するための受信機(図示せず)、他の機器と無線通信するための無線端末(図示せず)、及び、車両10の走行予定ルートを探索するためのナビゲーション装置(図示せず)を有していてもよい。
【0015】
運転支援用制御装置2は、所定の状況下で車両10のドライバの運転を支援するための車両10の制御を実行する。本実施形態では、運転支援用制御装置2は、所定の状況下での運転支援のために、少なくとも、車両10に要求される加減速度を設定する。所定の状況は、例えば、車両10の前方を走行する他の車両と車両10間の車間距離を一定に保つことが求められる状況であり、運転支援用制御装置2は、アクティブクルーズコントロール用の制御装置である。あるいは、所定の状況は、車両10を駐車する状況であり、運転支援用制御装置2は、車両10を自動駐車するための制御装置である。
【0016】
本実施形態では、車両10の車室内に設けられた、運転支援処理を動作させるか否かを設定するためのスイッチを介して、あるいは、ECU5により、車両10が自動運転制御されている間、運転支援用制御装置2は動作するように設定される。そして運転支援用制御装置2は、車両10が自動運転制御されている間、所定の周期ごとに、車両10の目標加減速度を含む加減速要求信号(第1の加減速要求)を出力する。また、目標加減速度は、車両10を加速させる場合には、正の信号値として表され、一方、車両10を減速させる場合には、負の信号値として表される。なお、車両10が自動運転制御されている間、運転支援用制御装置2が出力する加減速要求信号に含まれる目標加減速度は、ECU5にて修正されるので、その目標加減速度は実際には車両10の自動運転制御には利用されない。
【0017】
アクセル制御装置3は、運転支援用制御装置2から受信した加減速要求信号、あるいは、ECU5から受信した加減速要求信号(第2の加減速要求)に従って、車両10の加減速度がその加減速要求信号に含まれる目標加減速度に近付くように車両10のアクセルを制御する。本実施形態では、車両10がECU5により自動運転制御されている間、アクセル制御装置3は、ECU5から受信した加減速要求信号に従って車両10のアクセルを制御する。
【0018】
例えば、アクセル制御装置3は、目標加減速度とアクセル開度との対応関係を表す参照テーブルを記憶し、その参照テーブルを参照することで、目標加減速度に応じたアクセル開度を決定する。そしてアクセル制御装置3は、決定したアクセル開度となるようにアクセルを制御する。そしてそのアクセル開度に応じて、車両10のエンジンの燃料噴射量、あるいは、車両10の駆動用のモータへの電力供給量が制御される。
【0019】
さらに、アクセル制御装置3は、その目標加減速度に従って、車両10のブレーキにより発揮される制動力に相当する目標減速度を算出し、その目標減速度を含む制動要求信号(第1の制動要求)を出力する。その際、アクセル制御装置3は、ブレーキ制御装置4を介して車両10に設けられた車速センサ(図示せず)から受信した、車両10の車速を参照して、目標減速度を算出してもよい。例えば、目標加減速度が、車両10を加速させることを示している場合には、アクセル制御装置3は、目標減速度も、車両10が加速することに相当する値(例えば、正の値)に設定する。ただし、停止状態から車両10が発進する場合には、スムーズな発進のために、車両10が加速しつつ、ブレーキもある程度掛け、ブレーキを徐々に弱めることが好ましい。そこで、車両10の車速が、車両10の発進時に相当する所定の速度閾値以下である場合には、アクセル制御装置3は、目標減速度を、ブレーキによる制動力が発揮される値(例えば、負の値)に設定してもよい。なお、車両10が自動運転制御されている間、制動要求信号に表される目標減速度は、ECU5にて修正されるので、その目標減速度は、実際には車両10の自動運転制御には利用されない。
【0020】
ブレーキ制御装置4は、アクセル制御装置3から受信した制動要求信号、あるいは、ECU5から受信した制動要求信号(第2の制動要求)に従って、車両10の減速度がその制動要求信号に含まれる目標減速度に近付くように車両10のブレーキを制御する。本実施形態では、車両10がECU5により自動運転制御されている間、ブレーキ制御装置4は、ECU5から受信した制動要求信号に従って車両10のブレーキを制御する。例えば、ブレーキ制御装置4は、目標減速度と制動力との対応関係を表す参照テーブルを記憶し、その参照テーブルを参照することで、目標減速度に応じた制動力を決定する。そしてブレーキ制御装置4は、決定した制動力が発揮されるようにブレーキを制御する。さらに、ブレーキ制御装置4は、ブレーキが動作したか否かを表す信号を運転支援用制御装置2またはアクセル制御装置3へ出力してもよい。
【0021】
図2は、ECU5のハードウェア構成図である。ECU5は、運転支援用制御装置2を利用して、車両10を自動運転制御する。そのために、ECU5は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。なお、通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、互いに異なる回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0022】
通信インターフェース21は、通信部の一例であり、ECU5を、運転支援用制御装置2、アクセル制御装置3及びブレーキ制御装置4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、運転支援用制御装置2から加減速要求信号を受信する度に、受信した加減速要求信号をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、アクセル制御装置3から制動要求信号を受信する度に、受信した制動要求信号をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、プロセッサ23により修正された加減速要求信号をアクセル制御装置3へ出力するとともに、プロセッサ23により修正された制動要求信号をブレーキ制御装置4へ出力する。さらにまた、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った、車両10のステアリングを制御するための制御信号を、ステアリングの制御装置(図示せず)へ出力してもよい。
【0023】
さらにまた、通信インターフェース21は、カメラ(図示せず)から受信した車両10の周囲を表す画像、距離センサ(図示せず)から受信した測距信号、GPS受信機(図示せず)から受信した測位信号、無線通信端末(図示せず)から受信した、車両10外の他の機器からの信号、あるいは、ナビゲーション装置(図示せず)から受信した、車両10の走行予定ルートを表す信号をプロセッサ23へわたす。
【0024】
メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU5のプロセッサ23により実行される車両制御処理のアルゴリズム、車両制御処理において使用される各種のデータ及びパラメータを記憶する。例えば、メモリ22は、地図情報、車両制御処理で利用される識別器を特定するためのパラメータセットなどを記憶する。さらに、メモリ22は、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一定期間記憶する。
【0025】
プロセッサ23は、制御部の一例である。本実施形態では、プロセッサ23は、例えば、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。また、プロセッサ23は、数値演算回路またはグラフィック処理ユニット(Graphics Processing Unit, GPU)といった所定の演算目的に利用される演算回路を有してもよい。
【0026】
プロセッサ23は、車両10が自動運転制御されている間、車両制御処理を実行する。
【0027】
図3は、車両制御処理に関する、ECU5のプロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、運転計画部31と、加減速要求修正部32と、制動要求修正部33とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。また、プロセッサ23が有するこれらの各部は、専用の演算回路としてプロセッサ23に実装されてもよい。
【0028】
運転計画部31は、車両10が自動運転制御されている間、車両10の現在位置から所定距離(例えば、500m~1km)先までの所定区間において車両10が走行する予定の軌跡(以下、単に走行予定軌跡と呼ぶ)を設定し、その走行予定軌跡に沿って車両10が走行するための目標加減速度及び目標減速度を算出する。走行予定軌跡は、例えば、所定区間を車両10が走行する際の各時刻における、車両10の目標位置の集合として表される。
【0029】
運転計画部31は、例えば、走行予定ルートに沿うように走行予定軌跡を設定する。すなわち、直近の所定区間において、走行予定ルート上で右折する地点及び左折する地点が無ければ、運転計画部31は、車両10が現在走行中の車線に沿って走行するよう、走行予定軌跡を設定すればよい。一方、直近の所定区間において、走行予定ルート上で右折する地点または左折する地点がある場合、運転計画部31は、その地点において車両10が右折または左折できるように走行予定軌跡を設定する。その際、車両10が右折または左折するために、車両10が走行中の車線と異なる目標車線へ移動する必要がある場合には、運転計画部31は、車両10が目標車線へ車線変更するよう、走行予定軌跡を設定する。なお、運転計画部31は、車両10に設けられたカメラにより得られた車両10の周囲の画像に表された地物と、地図情報に表された車両10の周囲の地物とを照合することで、車両10が現在走行中の車線、及び、車両10の現在位置を特定すればよい。
【0030】
さらに、運転計画部31は、車両10がその周囲に存在する物体(例えば、他の車両)と衝突しないように走行予定軌跡を設定する。そのために、運転計画部31は、車両10に搭載されたカメラにより、直近の所定期間において得られた時系列の一連の画像のそれぞれを、車両10の周囲の物体を検出するように予め学習された識別器に入力することで、各画像から車両10の周囲に存在する1以上の物体を検出する。あるいは、運転計画部31は、距離センサにより、直近の所定期間において得られた時系列の一連の測距信号のそれぞれを、車両10の周囲の物体を検出するように予め学習された識別器に入力することで、各測距信号から車両10の周囲に存在する1以上の物体を検出する。運転計画部31は、そのような識別器として、例えば、コンボリューショナルニューラルネットワーク(以下、単にCNNと呼ぶ)型のアーキテクチャを持つ、いわゆるディープニューラルネットワーク(以下、単にDNNと呼ぶ)を使用することができる。このような識別器は、検出対象となる物体が表された画像あるいは測距信号を多数用いて、誤差逆伝搬法といった学習手法に従って予め学習される。運転計画部31は、各画像あるいは各測距信号から検出された個々の物体に対して所定の追跡処理を実行することで各物体を追跡して直近の所定期間における各物体の軌跡を求め、求めた軌跡に対して所定の予測処理を適用することで、物体ごとに、その物体が通ると想定される予測軌跡を推定する。そして運転計画部31は、追跡中の各物体の予測軌跡に基づいて、何れの物体についても所定時間先までの追跡中の物体のそれぞれと車両10間の距離の予測値が所定距離以上となるように、車両10の走行予定軌跡を設定する。
【0031】
さらに、運転計画部31は、車両10に設けられたカメラにより得られた画像から、車両10の進行方向に位置する信号機の点灯状態を検出する。その際、運転計画部31は、上述したように、画像を識別器に入力することで、信号機の点灯状態を検出すればよい。そして検出した信号機の点灯状態が赤信号である場合、運転計画部31は、車両10を減速させ、その信号機が設けられた交差点の停止位置にて車両10が一時停止するように走行予定軌跡を設定する。一方、運転計画部31は、車両10が交差点にて赤信号により一時停止している場合において、信号機の点灯状態が赤信号から青信号に変わったことを検知すると、車両10が発進して徐々に加速するように走行予定軌跡を設定する。
【0032】
運転計画部31は、走行予定軌跡を設定すると、車両10がその走行予定軌跡に沿って走行するように目標加減速度及び目標減速度を求める。すなわち、この目標加減速度及び目標減速度は、車両10が自動運転制御されている場合において車両10に要求される値となる。例えば、運転計画部31は、所定の周期ごとに、走行予定軌跡、車両10の現在位置、及び、車速センサ(図示せず)により測定された車両10の現在の車速に従って、車両10の目標加減速度及び目標減速度を算出する。特に、自動運転制御上の要求から車両10を減速させる場合、運転計画部31は、目標加減速度を、減速を表す値にするとともに、目標加減速度に応じて目標減速度も算出する。例えば、運転計画部31は、車両10の減速時には、アクセル制御装置3により調整可能な制動力(例えば、エンジンブレーキによる制動力)とブレーキによる制動力とが合成されて、走行予定軌跡に沿って車両10が走行するための減速度を達成するように、目標加減速度及び目標減速度を算出すればよい。特に、運転計画部31は、アクセル制御装置3により調整可能な制動力の上限値以下となるように目標加減速度を設定し、設定された目標加減速度と目標減速度の合計が、走行予定軌跡に沿って車両10が走行するための減速度となるように、目標減速度を設定すればよい。さらに、運転計画部31は、車両10が走行予定軌跡に沿って走行するように車両10のステアリングの操舵角を算出し、その操舵角を表す制御信号を、通信インターフェース21を介してステアリングを制御するための制御装置へ出力してもよい。
【0033】
運転計画部31は、目標加減速度及び目標制動量を算出する度に、算出した目標加減速度を加減速要求修正部32及び制動要求修正部33へわたすとともに、算出した目標減速度を制動要求修正部33へわたす。
【0034】
加減速要求修正部32は、通信インターフェース21を介して運転支援用制御装置2から受信した加減速要求信号に含まれる目標加減速度を、運転計画部31により算出された、車両10の自動運転制御において車両10に要求される目標加減速度を表す値に修正する。そして加減速要求修正部32は、修正した加減速要求信号を、通信インターフェース21を介してアクセル制御装置3へ出力する。
【0035】
制動要求修正部33は、通信インターフェース21を介してアクセル制御装置3から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度を、運転計画部31により算出された、車両10の自動運転制御において車両10に要求される目標減速度に修正する。そして制動要求修正部33は、修正した制動要求信号を、通信インターフェース21を介してブレーキ制御装置4へ出力する。
【0036】
なお、自動運転制御上の要求から車両10を加速する場合、一般に、目標減速度は、加速を表す値(例えば、正の値)となる。この場合、ブレーキ制御装置4は、制動要求信号を受信しても何もしない。したがって、アクセル制御装置3から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度、及び、運転計画部31により算出された修正後の目標加減速度の何れもが車両10の加速を表す値である場合、制動要求修正部33は、アクセル制御装置3から受信した制動要求信号を修正しなくてよい。
【0037】
さらに、上記のように、停止状態から車両10が発進する場合には、スムーズな発進のために、車両10が加速しつつ、ブレーキもある程度掛け、ブレーキを徐々に弱めることが好ましい。そのため、このような場合には、運転計画部31により算出された修正後の目標加減速度は、加速を表す値となる一方、アクセル制御装置3から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度は、減速を表す値(例えば、負の値)となることが有る。この場合、ブレーキ制御装置4からアクセル制御装置3に出力される、ブレーキが動作したか否かを表す信号が、ブレーキが動作していないことを表す値となると、アクセル制御装置3がエラーを起こす可能性が有る。そのため、このような場合には、制動要求修正部33は、アクセル制御装置3から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度を修正しないことが好ましい。
【0038】
図4は、プロセッサ23により実行される、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、車両10が自動運転制御されている間、所定の周期ごとに、下記の動作フローチャートに従って車両制御処理を実行する。
【0039】
プロセッサ23の運転計画部31は、車両10の自動運転制御において車両10が走行予定軌跡に沿って走行するための目標加減速度及び目標減速度を算出する(ステップS101)。
【0040】
プロセッサ23の加減速要求修正部32は、通信インターフェース21を介して運転支援用制御装置2から受信した加減速要求信号に含まれる目標加減速度を、運転計画部31が算出した目標加減速度となるよう修正する(ステップS102)。そして加減速要求修正部32は、修正した目標加減速度を含む加減速要求信号を、通信インターフェース21を介して、アクセル制御装置3へ出力する(ステップS103)。
【0041】
また、プロセッサ23の制動要求修正部33は、運転計画部31が算出した目標加減速度を参照して、自動運転制御上、車両10に減速が要求されているか否か判定する(ステップS104)。車両10に減速が要求されている場合(ステップS104-Yes)、制動要求修正部33は、通信インターフェース21を介してアクセル制御装置3から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度を、運転計画部31が算出した目標減速度となるよう修正する(ステップS105)。そして制動要求修正部33は、修正した目標減速度を含む制動要求信号を、通信インターフェース21を介して、ブレーキ制御装置4へ出力する(ステップS106)。
【0042】
一方、車両10に減速が要求されていない場合(ステップS104-No)、制動要求修正部33は、通信インターフェース21を介してアクセル制御装置3から受信した制動要求信号を修正せずにそのままブレーキ制御装置4へ出力する(ステップS107)。ステップS106またはステップS107の後、プロセッサ23は、車両制御処理を終了する。
【0043】
以上に説明してきたように、この車両の装置は、運転支援用制御装置から受信した加減速要求信号に含まれる目標加減速度、及び、アクセル制御装置から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度を、車両の自動運転制御において要求される値に修正する。そしてこの制御装置は、修正後の目標加減速度を含む加減速要求、及び、修正後の目標減速度を含む制動要求に従って車両が制御されるようにする。そのため、この制御装置は、運転支援用制御装置を利用して、車両を自動運転制御することができる。
【0044】
上記の実施形態では、アクセル制御装置3が、受信した加減速要求信号に従って制動要求信号を生成している。しかし、変形例によれば、運転支援用制御装置2が、加減速要求信号だけでなく、制動要求信号を生成してもよい。この場合には、制動要求修正部33は、通信インターフェース21を介して運転支援用制御装置2から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度を、運転計画部31により算出された目標減速度となるように修正すればよい。
【0045】
他の変形例によれば、運転計画部31が算出した目標加減速度が、自動運転制御上、車両10に加速が要求されていることを示している場合でも、制動要求修正部33は、受信した制動要求信号に含まれる目標減速度を、運転計画部31が算出した目標減速度となるよう修正してもよい。
【0046】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 車両制御システム
2 運転支援用制御装置
3 アクセル制御装置
4 ブレーキ制御装置
5 電子制御装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 運転計画部
32 加減速要求修正部
33 制動要求修正部
図1
図2
図3
図4