(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141338
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】水解性タック紙
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220921BHJP
D21H 17/67 20060101ALI20220921BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20220921BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20220921BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220921BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20220921BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220921BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20220921BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20220921BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20220921BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220921BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C09J7/38
D21H17/67
D21H19/38
D21H27/00 A
B32B27/00 M
B32B27/10
B32B27/30 A
B32B29/00
C09J7/21
C09J133/08
C09J11/06
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041586
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晋輔
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
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4F100YY00C
4J004AA10
4J004AB01
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4J004FA08
4J040DF041
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4L055AA02
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4L055AG10
4L055AG27
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4L055AH37
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4L055AJ04
4L055BE08
4L055CD09
4L055CH30
4L055EA08
4L055EA32
4L055FA30
4L055GA19
4L055GA20
4L055GA42
(57)【要約】
【課題】加温やpH調整がなされていない水で離解を行った場合に、粘着剤層が容易に水解する水解性タック紙を提供する。
【解決手段】課題は、無機顔料層が基紙の片面又は両面に設けられた複合紙11と、前記複合紙11の片面に設けられた粘着剤層12を有し、前記無機顔料層は、カオリンと炭酸カルシウムを有し、前記粘着剤層12が、アクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー、非イオン性界面活性剤、中和剤、脂肪酸石鹸を含む組成物を有するものであり、炭酸カルシウムが10~30質量%含有される、ことを特徴とする水解性タック紙1によって解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料層が基紙の片面又は両面に設けられた複合紙と、
前記複合紙の片面に設けられた粘着剤層を有し、
前記粘着剤層が、アクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー、非イオン性界面活性剤、中和剤、脂肪酸石鹸を含む組成物を有するものであり、
炭酸カルシウムが前記複合紙に10~30質量%含有されるものである、
ことを特徴とする水解性タック紙。
【請求項2】
無機顔料層が基紙の両面に設けられた複合紙と、
前記複合紙の片面に設けられた粘着剤層からなり、
前記粘着剤層が、アクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー、非イオン性界面活性剤、中和剤、脂肪酸石鹸を含む組成物を有するものであり、
炭酸カルシウムが前記複合紙に10~30質量%含有されるものである、
ことを特徴とする水解性タック紙。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚みが10~30μmである、
請求項1又は請求項2に記載の水解性タック紙。
【請求項4】
前記粘着剤層の粘着力が8~25N/25mmである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の水解性タック紙。
【請求項5】
前記組成物100質量部中に占める各組成の含有率は、アクリル酸エステルモノマーが35~65質量部、官能基含有モノマーが10~35質量部、非イオン性界面活性剤が25~40質量部、中和剤が1~4質量部、脂肪酸石鹸が1~5質量部となるものである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の水解性タック紙。
【請求項6】
前記複合紙は、坪量70~100g/m2、紙厚75~120μmとなるものである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の水解性タック紙。
【請求項7】
カオリンが前記複合紙に7~15質量%含まれる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の水解性タック紙。
【請求項8】
前記無機顔料層は、カオリンと炭酸カルシウムを有するものである、
請求項1~7のいずれか1項に記載の水解性タック紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水解性タック紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
持続可能な社会、循環型社会の形成を推進する観点から、従来より種々の紙類を、古紙としてリサイクルする活動が行われている。紙類のリサイクルについては、公益財団法人古紙再生促進センターが古紙標準品質規格を定めており、当該規格によればリサイクル用の古紙には禁忌品の混入は認めないとしている。禁忌品としては、例えば粘着シート(特許文献1)が該当する。この粘着シートは粘着要素(粘着剤)が紙類に付与されているので禁忌品に分類されるものであるが、粘着要素が紙類から取り除かれれば、その紙類は古紙としてリサイクルが可能になる。
【0003】
粘着シートの中でも、特に上質古紙に分類される印刷用塗工紙(顔料塗工紙やキャスト塗工紙等)に用いられるタック紙は、主原料が高白色度の晒クラフトパルプであることから高品質であり、高い利用価値を有する。タック紙を脱墨パルプやWP等に再利用できる技術が確立されれば、古紙を高度利用化でき、また、持続可能な社会、循環型社会の形成が推進されるとの観点からも好ましい。
【0004】
粘着要素を紙類から取り除く技術の一つとして、特許文献2は、水離解性粘着剤組成物に関する技術を提案している。当該水離解性粘着剤組成物は、優れた粘着物性を有し、かつ湿熱環境下においても粘着物性と再分散性の経時変化が少なく、また、粘着剤層が水に対して適当なサイズで再分散し、水質を汚染することなく、再生紙の性能に悪影響を与えないものであるとしている。
【0005】
特許文献3は、容器に貼り付けた紙類を剥離する技術として、温水剥離性ラベルに関する発明を提案している。当該温水剥離性ラベルは、各種容器などに対する粘着力が大きく、運送途中の衝撃や擦過で剥離せず、雨に濡れても剥離しない上、回収時にはおよそ60~80℃の温水による洗浄工程などで数十秒間の処理で容易に剥離できるものであるとしている。
【0006】
特許文献4は、アルカリ可溶型粘着剤組成物に関する技術を提案している。当該アルカリ可溶型粘着剤組成物は、タック紙や粘着テープ等に使用でき、かつ資源保護の目的で再パルプ化する際に容易にアルカリ水で離解できるものであるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-338909号公報
【特許文献2】特開平11-140407号公報
【特許文献3】特開2002-140008号公報
【特許文献4】特開平5-156222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の技術は、粘着剤の粘着力と凝集力の経時バランスを変化させるため、炭酸カルシウムやクレー(カオリンともいう)等の製紙用無機粒子を極力含有しない上質紙やクラフト紙を基紙に用いており、炭酸カルシウムやクレーが粘着剤の水解性を助長するとする観点からみると、離解時に粘着剤層が容易に水解するものとはいえない。特許文献3の技術は、粘着剤が温水で離解されるものであって、製紙工場の古紙再利用工程等のように加温処理されていない水では離解されず、リサイクルの観点からみると、温水を用意するためのコストがかかり非経済的である。特許文献4の技術は、pH調整されたアルカリ水で離解されるものであり、使用済のアルカリ水を中和して環境中に廃水しなければならず、廃水処理が煩雑である。
【0009】
そこで、本発明が解決する課題は、加温やpH調整を行っていない水に対しても、粘着剤層が容易に水解するタック紙及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ね、粘着剤層の分散性や水解性等の特性を考慮し、粘着剤層の容易な水解性に適した基紙の選定を行って、上記課題を解決するに至った。その結果、完成させた発明の態様が次に示すものである。
【0011】
[第1の態様]
無機顔料層が基紙の片面又は両面に設けられた複合紙と、
前記複合紙の片面に設けられた粘着剤層を有し、
前記粘着剤層が、アクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー、非イオン性界面活性剤、中和剤、脂肪酸石鹸を含む組成物を有するものであり、
炭酸カルシウムが前記複合紙に10~30質量%含有されるものである、
ことを特徴とする水解性タック紙。
【0012】
粘着要素であるアクリル酸エステルモノマーは、組成中にカルボキシ基を有するものとなっている。このカルボキシ基が炭酸カルシウムやクレーと化学反応すると、アクリル酸エステルモノマーの粘着力が低下する場合がある。そのため、従来、特許文献1に開示されるようにカルシウム成分の含有率が相対的に少ない粘着シートに関する技術の開発が行われてきた。
【0013】
本態様について発明者等は、アクリル酸エステルモノマーと炭酸カルシウムとの反応性に着目し、炭酸カルシウムの含有率を調節することで、所望の粘着力と水解性が備わるタック紙となるとの知見を得た。本態様では、アクリル酸エステルモノマーを含む組成物を有する粘着剤層が、特定量の炭酸カルシウムを含有する複合紙の一方の面に設けられている構成となっているので、粘着剤層における複合紙に対する粘着力が、アクリル酸エステルモノマー本来の粘着力より経時的に弱まったものとなる。したがって、本態様のタック紙は、水に離解させると、粘着剤層が複合紙から離れ易いものとなる。
【0014】
本態様のタック紙は、離解に用いる水を加温しない水としても容易に粘着剤層が水解する。これは、粘着剤層の組成である、脂肪酸石≡が耐加水分解性が低いので水に対しても水解することによるものと推測される。
【0015】
本態様のタック紙は、pH調整されていない水を用いても容易に離解する。これは、粘着剤層の組成である中和剤は、再分散性が高いので、水に対しても水解し易いものとなっている。
【0016】
[第2の態様]
無機顔料層が基紙の両面に設けられた複合紙と、
前記複合紙の片面に設けられた粘着剤層からなり、
前記粘着剤層が、アクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー、非イオン性界面活性剤、中和剤、脂肪酸石鹸を含む組成物を有するものであり、
炭酸カルシウムが前記複合紙に10~30質量%含有されるものである、
ことを特徴とする水解性タック紙。
【0017】
本態様では、粘着剤層が複合紙の片面に設けられているので、炭酸カルシウムが粘着剤層の粘着性を経時的に低下させ、離解時に粘着剤層が複合紙から容易に分離される。
【0018】
[第3の態様]
前記粘着剤層の厚みが10~30μmである、
第1の態様又は第2の態様の水解性タック紙。
【0019】
粘着剤層の厚みが上記範囲であれば、粘着剤層における基紙側の面に対して反対側の面、すなわち、貼り付け対象物に貼り付ける側の面の粘着力が相対的に強いものとなる。この理由は明らかではないが、おそらく、粘着剤層のうちの基紙側部は、基紙に含まれる炭酸カルシウムと反応し易いが、一方で貼り付け対象物側部は、基紙から厚み方向に距離があり炭酸カルシウムと反応し難いからではないかと推測される。
【0020】
[第4の態様]
前記粘着剤層の粘着力が8~25N/25mmである、
第1~第3の態様のいずれかの態様の水解性タック紙。
【0021】
本態様の水解性タック紙であれば、貼り付け対象物に貼り付けたタック紙が、自然に捲れたり剥がれたりすることがなく、タック紙の端縁を摘まんで剥がそうとしたときにタック紙の一部が同対象物に残る等して破けることがない。
【0022】
[第5の態様]
前記組成物100質量部中に占める各組成の含有率は、アクリル酸エステルモノマーが35~65質量部、官能基含有モノマーが10~35質量部、非イオン性界面活性剤が25~40質量部、中和剤が1~4質量部、脂肪酸石鹸が1~5質量部となるものである、
第1~第4の態様のいずれかの態様の水解性タック紙。
【0023】
水解性タック紙のアクリル酸エステルモノマーが上記含有率の範囲であって、かつ官能基含有モノマーの含有率と非イオン性界面活性剤の含有率が上記範囲であると、粘着剤層の水への水解が際立つとの効果が奏される。また、水解性タック紙のアクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー及び非イオン性界面活性剤のそれぞれの含有率を上記範囲とし、かつ中和剤の含有率と脂肪酸石≡の含有率を上記範囲にすると、加温やpH調整がなされていない水に対して、極めて容易に水解するとの効果が奏される。
【0024】
[第6の態様]
前記複合紙は、坪量70~100g/m2、紙厚75~120μmとなるものである、
第1~第5の態様のいずれかの態様の水解性タック紙。
【0025】
本態様の水解性タック紙であれば、貼り付けたり剥がしたりする際に破けにくく、端縁を摘まむことが容易で、取り扱い易いという効果が奏される。また、水解時に適度なサイズに分散し易く、水解し易いという効果が奏される。
【0026】
[第7の態様]
カオリンが前記複合紙に7~15質量%含まれる、
第1~第6の態様のいずれかの態様の水解性タック紙。
【0027】
本態様の水解性タック紙であれば、製紙工場のパルパー設備等の水解時に粘着剤が溶解し、残成分が残るような場合であっても、吸油性の高いカオリンを特定量含有するため、
上記カオリンが粘着剤の残成分を吸着し、系外に排出する効果が奏される。よって、上記水解性タック紙をより効率的に古紙として再利用することができる。
【0028】
[第8の態様]
前記無機顔料層は、カオリンと炭酸カルシウムを有するものである、
第1~第7のいずれかの態様の水解性タック紙。
【0029】
無機顔料層がカオリンと炭酸カルシウムを有するので、本態様の水解性タック紙は経時的に粘着力が低下し、また水解性タック紙を離解させたときに吸油性に優れるカオリンの作用により、基紙から粘着剤層の分離が容易になされる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれは、加温やpH調整がなされていない水で離解を行った場合に、粘着剤層が容易に水解する水解性タック紙及びその製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0033】
本発明に係る実施形態は、無機顔料層20が基紙10の片面又は両面に設けられた複合紙11と、前記複合紙11の片面に設けられた粘着剤層12を有し、前記粘着剤層12が、アクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー、非イオン性界面活性剤、中和剤、脂肪酸石鹸を含む組成物を有するものであり、炭酸カルシウムが前記複合紙に10~20質量%含有されるものである、ことを特徴とする水解性タック紙1である。以下、各部について詳述する。
【0034】
(複合紙)
複合紙11は、基紙10と無機顔料層20とからなるものである。
【0035】
(無機顔料層)
無機顔料層20は、無機顔料を有する層である。無機顔料としては、水酸化カルシウム、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム及びカオリンを例示できるが、特に炭酸カルシウム及びカオリンが含まれていると水解性、吸油性が備わるので好ましい。
【0036】
(基紙)
基紙10は、パルプを主成分とし、パルプのほか、炭酸カルシウムを含み、また、カオリンが含まれていてもよい。
【0037】
パルプは、基紙100質量部当たり50~90質量部、好ましくは70~80質量部含まれるものとすることができる。パルプとしては、例えば、天然パルプ、合成パルプ等を挙げることができる。天然パルプとしては、特に限定されず、例えば、古紙パルプ(DIP)、化学パルプ、機械パルプやケナフ、バガス、麻、コットンなどの非木材パルプなどから得られるパルプ繊維を挙げることができる。化学パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等を挙げることができる。機械パルプとしては、例えば、サーモメカニカルパルプ(TMP)、プレッシャライズトドクラフトパルプ、リファイナーグランドパルプ、グランドパルプ(GP)等を挙げることができる。古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を挙げることができる。これらの中でも、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ等の晒クラフトパルプは、顔料塗工紙やキャスト塗工紙等の印刷用塗工紙として用いられ、水解性タック紙1の基紙10に好適に用いることができる。これらのパルプは、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0038】
基紙10には炭酸カルシウムが含まれる。粘着剤層12の水解時の粘着力、及び経時的な粘着力は、炭酸カルシウムの含有率によって調節することができる。このメカニズムについては、定かではないが、およそ次のように考えられる。複合紙11の片面に設けられる粘着剤層12には、アクリル酸エステルモノマーが含まれ、このアクリル酸エステルモノマーを構成するカルボキシ基は、カルシウムイオンと化学反応を起こし、他のアクリル酸エステルモノマーと架橋を形成する。この架橋の形成により粘着剤層12の粘着力が経時的に低下して、水解時に適したものとなる。したがって、例えば、炭酸カルシウムの含有率を高めた水解性タック紙1であれば、水解性タック紙1を水で離解したときに、粘着剤層12の水解が促進され、粘着剤層12が複合紙11から離れ易くなる。
【0039】
粘着剤層12は、複合紙11の片面に設けられるものであるが、複合紙11の当該片面が無機顔料層20を有する面であっても、無機顔料層20を有しない面であっても設けることができる。
【0040】
炭酸カルシウムの含有率は、複合紙11に10~30質量%、好ましくは11~20質量%、より好ましくは12~18質量%であるとよい。炭酸カルシウムの当該含有率が10質量%未満だと、水解性タック紙1を水で離解したときに、粘着剤層12が複合紙11から離れ難く、古紙再利用する場合に粘着異物となるおそれがある。当該含有率が30質量%超だと長期に保管された場合に、水解性タック紙1の粘着力が低下し過ぎるおそれがある。例えば、炭酸カルシウムの含有率は、複合紙の組成比の計算によって算出することができる。また、複合紙をX線マイクロアナライザーによる元素分析において、カルシウム比率を基に炭酸カルシウムの含有量を算出することもできる。
【0041】
カオリンは、内添用及び外添用(表面塗工用)として使用される粘土鉱物である。カオリンを粒子径及び形状の基準で分類すると、微粒カオリン、1級カオリン、2級カオリン、デラミネートカオリン等に分類することができ、本実施形態では、特に限定なく、これらのうちのいずれのカオリンであっても用いることができ、中でも微粒カオリンを好適に使用することができる。例えば、カオリンの含有率は、複合紙の組成比の計算によって算出することができる。また、複合紙をX線マイクロアナライザーによる元素分析において、シリカ及びアルミニウ比率を基にカオリンの含有量を算出することもできる。
【0042】
カオリンに備わる吸油性の性質により、油性を帯びる粘着剤はカオリンに一部吸着される。水解性タック紙1の基紙10にカオリンが含有されていると、例えば、粘着剤層12が設けられた基紙表面近傍のカオリンが、粘着剤層12を形成する粘着剤を直接に又は間接に吸着する。この水解性タック紙1を水で離解すると、カオリンが粘着剤を吸着したまま、基紙10から分離するので、粘着剤も基紙10から容易に分離することになる。
【0043】
カオリンは、基紙10又は複合紙11に含まれていればよく、複合紙11に含まれる含有率が0.1質量%を超えていればよいが、好ましくは7~15質量%、より好ましくは8~15質量%、特に好ましくは10~15質量%であるとよい。当該含有率が15質量%を超えていても、カオリンの吸油性能が頭打ちとなり、それ以上の効果が望めない。
【0044】
複合紙11について、坪量と紙厚は特に限定されないが、坪量が70~100g/m2、かつ紙厚が75~120μmであると好ましく、坪量が75~95g/m2、かつ紙厚が80~110μmであるとより好ましい。坪量が70g/m2未満、又は紙厚が75μm未満だと水解性タック紙1の強度が弱く、破れるおそれがある。坪量が100g/m2超、又は紙厚が120μm超だと、貼り付ける対象物が曲面形状であった場合に貼り付いた状態が維持されず、水解性タック紙1の一部が捲れやすくなることがある。また、水解時に適度なサイズに離解出来ず、分散性が悪化するおそれがある。なお、前記複合紙11の坪量は、JIS P8124(2011)に準拠して測定した値である。前記複合紙11の紙厚は、JIS P8118(2014)に準拠して測定した値である。
【0045】
基紙10は、上記原料を用いて抄紙して製造することができる。抄紙は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機又は丸網抄紙機等の抄紙機を用いて行うことができる。抄紙する際には、パルプに添加剤を添加することができる。添加する添加剤として、例えば、ポリビニルアルコール系高分子化合物、尿素樹脂、メラミン樹脂、澱粉等の紙力増強剤、硫酸バンド等の薬品定着剤、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ロジンサイズ、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等のサイズ剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、染料、色顔料、抗菌剤、紫外線吸収剤、pH調整剤等を用いることができる。なお、印画紙やフィルムを基紙10に用いてもよい。
【0046】
複合紙11の緊度は、0.95~1.20g/cm3であるのが好ましく、1.00~1.15g/cm3であるのがより好ましい。複合紙11の緊度が0.95g/cm3を下回ると、複合紙11の表面の凹凸性が大きくなり、粘着剤層12の均一な形成が困難になるおそれがある。複合紙11の緊度が1.20g/cm3を上回ると、基紙のクッション性(弾性力)が不十分になり、水解性タック紙1が柔軟に湾曲しないので、貼り付ける対象面に綺麗に貼り付け難くなるおそれがある。複合紙11の緊度は、例えば、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、熱カレンダー等の公知の装置を用いて調整することができる。なお、複合紙11の緊度は、JIS P 8118(2014)に準拠して測定した値である。
【0047】
(粘着剤層)
粘着剤層12は、粘着剤を複合紙11に塗工して形成されるものであり、粘着力を有し、当該粘着力によって貼り付ける対象物に貼り付くものである。粘着剤層12は、水解性タック紙1を水に離解させると、複合紙11から容易に離れる。粘着剤層12は、次に示す組成物、具体的には、アクリル酸エステルモノマー、官能基含有モノマー、非イオン性界面活性剤、脂肪酸石鹸を含み、さらに中和剤を含んでいる。
【0048】
アクリル酸エステルモノマーは、粘着剤層12の組成物の主成分となるものである。アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを例示でき、具体的には(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、4~12個であると所望の粘着力に調整しやすいので好ましい。アクリル酸エステルモノマーは、粘着剤層12の組成物100質量部当たりの含有率が、好ましくは35~65質量部、より好ましくは40~60質量部、さらに好ましくは45~55質量部含まれていると、粘着力が好適に発現される。
【0049】
官能基含有モノマーは、粘着剤層12に水への分散性を付与する作用を有する。官能基含有モノマーを形成する官能基が、特に、カルボキシル基、アルコキシ基であると、水に対する粘着剤層12の分散性が高く好ましい。官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸のカプロラクタン付加物、メトキシアクリレート、エトキシアクリレート、ブトキシアクリレート等のアルコキシアクリレート、イタコン酸等のアクリル酸エステルから選択された1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル酸エステルモノマーが粘着剤層12の組成物100質量部当たりに35~65質量部含有する場合は、官能基含有ポリマーが好ましくは10~35質量部、より好ましくは20~30質量部の含有率で含まれていると、粘着剤層12の水に対する分散性が高まり好ましい。官能基含有ポリマーの含有率が10質量部未満だと、アクリル酸エステルモノマーに対する官能基含有ポリマーの含有率が小さく、粘着剤層12の水に対する分散性が乏しくなるおそれがある。官能基含有ポリマーの含有率が35質量部超だと、アクリル酸エステルモノマーに対する官能基含有ポリマーの含有率が過剰気味であり、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が高くなり低温での貼付特性等が悪化することや、粘着剤層12の水に対する分散性を高める効果が頭打ちとなり好ましくない。
【0050】
非イオン性界面活性剤は、水解性タック紙1を水中で離解させたときに、複合紙11から分離した粘着剤層12を乳化させて、微細な粒子とするものである。非イオン性界面活性剤の乳化作用により、離解時に、粘着剤層12が複合紙11から離れ易くなる。また、微細な粒子は、非イオン性界面活性剤による乳化作用により凝集化が抑制されるので、凝集化した粘着剤が離解機その他の設備機器に付着することによって引き起こされる不具合を抑制できる。さらに、親油性である粘着剤に対して乳化が促進されるので好ましい。
【0051】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等から選択された1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
アクリル酸エステルモノマーが粘着剤層12の組成物100質量部当たりに35~65質量部含有する場合は、非イオン性界面活性剤が好ましくは20~40質量部、より好ましくは25~35質量部の含有率で含まれていると、乳化作用により、複合紙11から離れた粘着剤層12が微細な粒子となって水中に分散するので好ましい。非イオン性界面活性剤の含有率が35質量部未満だと乳化が十分になされないおそれがある。非イオン性界面活性剤の含有率が65質量部超だと、アクリル酸エステルモノマーに対する非イオン性界面活性剤の含有率が過剰気味であり、乳化による効果が頭打ちとなり非経済である。
【0053】
脂肪酸石鹸は、離解によって生じるパルプの毛羽立ちを抑制し、パルプの品質の劣化を防ぐ目的で、粘着剤層12の組成物に加えることができる。脂肪酸石鹸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のナトリウム塩やカリウム塩から選択される1つ又は2つを組み合わせて用いることができる。脂肪酸石鹸は、粘着剤層12の組成物100質量部当たりの含有率が、好ましくは1~10質量部、より好ましくは3~7質量部であるとよい。
【0054】
中和剤は、アクリル酸エステルモノマーのカルボキシ基の一部又は全部と反応して、アクリル酸エステルモノマーに親水性あるいは水溶性を付与するために用いられる。中和剤としては、塩基性化合物を用いることができるが、アミン類、置換アミン類を好ましく用いることができる。具体的には、アンモニア、アルカリ性を示すアンモニウム塩及びモノエチルアミン、モノエタノールアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン等の2級アミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール等の3級アミン、ジアミン、ポリエチレンイミンなどの1分子中に複数のNを有するアミノ化合物、ピリジン等の環式アミノ化合物等、アルカリ性を示す有機アミノ化合物から選択された1種又は2種を組み合わせて用いることができる。
【0055】
中和剤は、粘着剤層12の組成物100質量部当たりの含有率が、好ましくは1~10質量部、より好ましくは3~7質量部であると中和剤を加えた効果が発現され好ましい。
【0056】
複合紙11の一方の面に設ける粘着剤層12は、厚みが好ましくは10~30μm、より好ましくは15~25μmであるとよい。当該厚みが10μm未満だと、所望の粘着力が付与されないおそれがあり、30μm超だと、離解液に占める粘着剤層12の濃度が高く、離解によって複合紙11から離れた粘着剤層12が再度複合紙11に付着してしまうおそれがある。
【0057】
粘着剤層12の粘着力は、好ましくは8~25N/25mm、より好ましくは10~15N/25mmである。粘着力が8N/25mm未満だと、貼り付ける対象物に貼り付けても、捲れたり剥がれたりし易い。粘着力が25N/25mm超だと、剥がそうとしたときに水解性タック紙1が裂けてしまうおそれがある。
【0058】
(剥離紙)
複合紙11に設けられた粘着剤層12の表面を保護するために、当該表面を覆う剥離可能な剥離紙13を設けることができる。剥離紙13は、例えば、シートの一方の面又は両面に剥離剤、顔料及びバインダーを設けたものを挙げることができる。ここで、粘着剤層12の表面とは、粘着剤層12における複合紙11に対向する面とは反対側の面をいう。
【0059】
シートとしては、上質紙、中質紙や包装用途などで使用されている晒、又は未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)や、純白ロール紙等を例示することができる。
【0060】
剥離紙13に設ける顔料としては、平板顔料や非平板顔料を含有するものを用いることができる。平板顔料や非平板顔料はアスペクト比で区別することができ、例えば、アスペクト比が5以上のものを平板顔料、アスペクト比が5未満のものを非平板顔料と区別できる。アスペクト比は、顔料の粒子径(フェレー径)をその厚さで除した値をいい、電子顕微鏡で拡大観測し、任意に抽出した20個の粒子の平均値により求めることができる。平板顔料がシートに設けられていると、平板顔料が塗工されたシートに剥離剤を塗工したときに、剥離剤がシート内部に浸透するのを抑制することができる。剥離剤は、例えば、トルエン等の有機溶媒で希釈されたシリコーン樹脂を含むものをいう。
【0061】
剥離紙13に設ける平板顔料としては、例えば、クレー(クレー鉱物)、雲母族、脆雲母族、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイト等から選択された1種又は2種以上の組み合わせからなるものを挙げることができ、クレーが好適である。また、非平板顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化チタン、水酸化アルミニウム等から選択された1種又は2種以上の組み合わせからなるものを挙げることができる。
【0062】
剥離紙13に設けるバインダーとしては、合成樹脂製のラテックス等、塗工紙における塗工層を形成する際に用いられるものを用いることができる。ラテックスとしては、例えば、スチレン-ブタジエン系共重合体、アクリル-スチレン系共重合体、メタクリレート-ブタジエン系共重合体、アクリルニトリル-ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ポリエステル系共重合体、ポリウレタン系共重合体から選択された1種又は2種以上の組み合わせからなるものを例示でき、これらに水溶性高分子化合物を結合を含めてもよい。水溶性高分子化合物としてはポリビニルアルコールを例示できる。
【0063】
本実施形態の水解性タック紙1は、加温やpH調整を行っていない水に水解するものとなっている。「加温を行っていない水」とは、蒸気やヒーターなどの設備で温度を上昇させる処理を行っていない水をいう。また、温度を上昇させる処理をしていなくても40℃以上になっている水は、「加温を行っていない水」には含まれない。「pH調整を行っていない水」とは、酸性やアルカリ性にpHを変化させるものを添加していない水をいい、また、pHが6~8の範囲内である水ということもできる。
【実施例0064】
(実施例1の複合紙)
広葉樹クラフトパルプ及び針葉樹湯クラフトパルプからなる原料に炭酸カルシムを填料として添加(灰分率5.0%)して、オントップ型抄紙機にて抄紙して61.0g/m2の原紙を得た。次に得た原紙に、塗料組成物(カオリン50質量部、炭酸カルシウム50質量部の顔料(計100質量部)及び、ラテックス7質量部、スターチ1.5質量部)を原紙片面に絶乾14.0g/m2となるように塗工し、無機顔料層が設けられた複合紙を得、さらにその無機顔料層の外方の面にキャスト塗料組成物(カオリン55質量部と炭酸カルシウム45質量部からなる顔料(計100質量部)に対して有機顔料12質量部、カゼイン等のバインダー30質量部、離型剤とギ酸カルシウムを併せて5質量部)を絶乾で14.0g/m2となるように塗工して、鏡面処理した複合紙(キャストコート紙、89.0g/m2)を作成した。ここで、複合紙における組成比は、パルプとその他の成分:炭酸カルシウム:カオリン=74質量%:14質量%:12質量%となる。
【0065】
(実施例2,3、比較例1,2,4,5の複合紙)
実施例1で得られる複合紙の組成比を変化させて実施例2,3、比較例1,2,4,5の複合紙を得た。
【0066】
(実施例4の複合紙)
広葉樹クラフトパルプ及び針葉樹湯クラフトパルプからなる原料に炭酸カルシムを填料として添加(灰分率8.0%)して、オントップ型抄紙機にて抄紙して60.0g/m2の原紙を得た。次に、得られた原紙に、塗料組成物(カオリン30質量部と炭酸カルシウム70質量部からなる顔料(計100質量部)に対してラテックス7質量部、スターチ1.5質量部)を原紙両面に絶乾25.0g/m2となるように塗工し、無機顔料層が設けられた複合紙(コート紙、89.0g/m2)を作成した。ここで、複合紙における組成比は、パルプとその他の成分:炭酸カルシウム:カオリン=68質量%:25質量%:7質量%となる。
【0067】
(比較例3,6の複合紙)
実施例4で得られる複合紙(コート紙)の組成比を変化させて比較例3、6の複合紙を得た。
【0068】
実施例、比較例の物性、組成及び離解性の評価等を表1に示す。
【0069】
【0070】
(粘着剤)
実施例1~4の粘着剤として粘着剤Aを用いた。粘着剤Aの組成は、アクリル酸エステル50質量%、官能基含有モノマー15質量%、界面活性剤30質量%、中和剤2質量%、脂肪酸石鹸3質量%である。
比較例1~3の粘着剤として粘着剤Bを用いた。粘着剤Bの組成は、アクリル酸エステル30質量%、官能基含有モノマー45質量%、界面活性剤20質量%、中和剤5質量%である。
比較例4~6の粘着剤として粘着剤Cを用いた。粘着剤Cの組成は、アクリル酸エステル70質量%、官能基含有モノマー15質量%、界面活性剤15質量%である。
【0071】
(離解性)
次の操作を行い、離解性を評価した。
(1)実施例1~4、比較例1~6の水解性タック紙を各々5×5cmサイズに断裁し、100g採取した。
(2)15℃の水道水2400mLに断裁された水解性タック紙を投入して混合し、濃度が4重量%になるように調整し、JIS P 8220 付属書Aに規定される標準離解機にて50分間離解して離解液を得た。
(3)前記離解液中の固形分50gを2つ採取し、各々濃度が4重量%になるように水で希釈し、これをさらに10分間離解して、離解原料を2つ得た。
(4)前記離解原料を6カットフラットスクリーンで7分間スクリーニングし(流量10L/分)、その後スクリーン残渣を回収した。
(5)スクリーン残渣を105℃、1時間の乾燥後に重量(絶乾重量)を測定し、離解性を以下に示す評価基準で評価した。また、上記水道水を温水(40~50℃)、弱アルカリ水溶液(pH8)に変えて、離解性を同じ評価基準で評価した。ここで、残渣率は次の計算式により求まる値である。
[数1]
残渣率(%)=[上記操作(4)で回収されたスクリーン残渣の重量(g)/上記(2)で投入された水解性タック紙の投入重量(g)]×100
【0072】
評価基準を次に示す。
◎:残渣率が1.0%未満で、離解性が良好である。
○:残渣率が1.0%超かつ5.0%未満であり、離解性がよいが、若干粘着異物が残っている。
×:残渣率が5.0%を超え、離解性が悪く、粘着異物が目立つ。
【0073】
(粘着力)
実施例、比較例について、粘着力を測定した。粘着力は、JIS Z 0237(2009)に規定される試験方法に準拠して測定した。測定条件は次のとおりである。
ピール:180°ピール(ピール速度300mm/min)
被着体:SUS304
試験片の幅:25mm
圧着:23℃、50%RHの条件下で被着体に貼り付けた試験片を2kgローラーで1往復させて圧着した。
引張試験は、試験片を圧着して1日経過後に行った。