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特開2022-141343自動運転方法、コンバイン及び自動運転システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141343
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】自動運転方法、コンバイン及び自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20220921BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A01D41/12 C
A01D69/00 302L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041592
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】村山 昌章
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB01
2B074AC02
2B074AG02
2B074BA13
2B074CE01
2B074DA02
2B074DC01
2B074EA03
2B074EA06
2B074EB06
2B074EC01
2B074EE07
2B074FA10
2B076AA04
2B076EA02
2B076EC05
2B076ED09
(57)【要約】
【課題】刈取部に生じた穀稈の詰まりを、作業者に負担を掛けることなく解消することができる自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムを提供する。
【解決手段】
コンバイン1は、未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部3と、刈取部3の穀稈の詰まりを検出する検出部20と、制御装置50とを備えていて、制御装置50は、刈取部3を制御する刈取制御部63として機能する。刈取部3は、未刈領域から刈り取った穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガ16と、刈り取った穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤ18とを備えている。自動刈取走行か手動刈取走行かに拘わらず、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合、刈取制御部63は、刈取部3による穀稈の刈取を中断させると共に、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの自動運転方法であって、
前記コンバインは、未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部を備えていて、
前記刈取部は、前記未刈領域から刈り取った前記穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガと、刈り取った前記穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤとを備えていて、
当該自動運転方法は、
前記刈取部の前記穀稈の詰まりを検出する検出工程と、
前記刈取部を制御する刈取制御工程を有し、
前記検出工程が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記刈取制御工程は、前記刈取部による前記穀稈の刈取を中断させると共に、前記掻込オーガ及び前記搬送コンベヤのうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させることを特徴とする自動運転方法。
【請求項2】
前記コンバインの自動走行を制御する自動走行制御工程を更に有し、
前記検出工程が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記刈取制御工程は、前記刈取部による前記穀稈の刈取を中断させると共に前記刈取部を前記未刈領域の前記穀稈よりも高く上昇させ、前記自動走行制御工程は、上昇させた前記刈取部が前記未刈領域の上方に重なるように前記コンバインを移動させ、その後、前記刈取制御工程は、前記解消部材を逆転駆動させることを特徴とする請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項3】
前記検出工程が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記自動走行制御工程は、上昇させた前記刈取部が前記コンバインの進行方向にある前記未刈領域の上方に重なるように前記コンバインを移動させることを特徴とする請求項2に記載の自動運転方法。
【請求項4】
前記検出工程が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記自動走行制御工程は、前記コンバインの進行方向にある前記未刈領域の前記進行方向の未刈長が所定の必要長以上の場合には、上昇させた前記刈取部が前記進行方向にある前記未刈領域の上方に重なるように前記コンバインを移動させ、前記未刈長が前記必要長未満の場合には、上昇させた前記刈取部が前記進行方向との交差方向にある前記未刈領域の上方に重なるように前記コンバインを移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の自動運転方法。
【請求項5】
前記解消部材を逆転駆動した後、前記検出工程が前記刈取部の前記穀稈の詰まりの解消を検出した場合、前記刈取制御工程は、前記解消部材の逆転駆動を終了して、前記穀稈の刈取を中断したときの前記刈取部の中断高さまで前記刈取部を下降させてから、前記穀稈の刈取を再開することを特徴とする請求項2ないし4の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項6】
前記コンバインは、前記解消部材を逆転駆動したときに前記未刈領域において前記穀稈を吐き出した吐出位置を記憶する記憶部を更に備えていて、
前記自動走行制御工程は、前記刈取部が前記吐出位置の前記穀稈の刈取を行うとき、予め設定された速度よりも前記コンバインの車速を遅くすることを特徴とする請求項2ないし5の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項7】
前記コンバインの刈取走行時に前記未刈領域において前記刈取部が経由した領域を既刈領域として設定する一方、前記解消部材を逆転駆動させるために前記未刈領域において前記刈取部が重なった領域を既刈領域として設定しないことを特徴とする請求項2ないし6の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項8】
前記検出工程が前記穀稈の詰まりを検出した場合に前記解消部材を逆転駆動させるか否かを選択する選択工程を更に有することを特徴とする請求項2ないし7の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項9】
前記刈取制御工程は、前記解消部材の逆転駆動を開始した後、前記解消部材を逆転できない場合には、前記刈取部による前記穀稈の刈取を停止させることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項10】
未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部と、
前記刈取部の前記穀稈の詰まりを検出する検出部と、
前記刈取部を制御する刈取制御部と、を備え、
前記刈取部は、前記未刈領域から刈り取った前記穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガと、刈り取った前記穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤとを備え、
前記検出部が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記刈取制御部は、前記刈取部による前記穀稈の刈取を中断させると共に、前記掻込オーガ及び前記搬送コンベヤのうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させることを特徴とするコンバイン。
【請求項11】
未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部を備えたコンバインの自動運転システムであって、
前記刈取部の前記穀稈の詰まりを検出する検出部と、
前記刈取部を制御する刈取制御部と、を備え、
前記刈取部は、前記未刈領域から刈り取った前記穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガと、刈り取った前記穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤとを備え、
前記検出部が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記刈取制御部は、前記刈取部による前記穀稈の刈取を中断させると共に、前記掻込オーガ及び前記搬送コンベヤのうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させることを特徴とする自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り取った穀稈の詰まりを解消するコンバインの自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈の刈取を行うコンバインは、刈取部で刈り取った穀稈を脱穀部へ搬送し、脱穀部で穀稈を脱穀して穀粒を取り出す。刈取部は、例えば、未刈領域から刈り取った穀稈を掻き込む掻込オーガと、刈り取った穀稈を脱穀部へ搬送する搬送コンベヤを有するフィーダハウスとを備える。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される収穫機は、圃場の植立穀稈を刈り取る切断装置及びエンジンの動力によって駆動して刈取穀稈を機体横幅方向に横送りするオーガを有する刈取部を備える。また、収穫機は、刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する搬送装置と、搬送装置によって搬送された刈取穀稈を受け入れて脱穀処理する脱穀装置と、オーガの回転数を検出する回転数検出センサと、回転数検出センサからの検出信号に基づいて、オーガの駆動異常を判定するオーガ状態判定部とを備える。オーガ状態判定部は、オーガの回転数の低下からオーガにおける詰まりを判定する。
【0004】
また、特許文献2に開示されるコンバインは、GPSを用いて位置情報を取得し、位置情報に基づいて自律走行が可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-123号公報
【特許文献2】特許675517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような従来のコンバインでは、刈取部に穀稈が詰まった場合、作業者が詰まった穀稈を除去する必要があるので、作業者に負担が掛かる。なお、従来の自動刈取走行を行うコンバインでは、刈取部に穀稈が詰まった場合を考慮しておらず、作業者は詰まりを解消するために手動で自動刈取走行を中断させる必要があり、また、再開位置を設定したり自動刈取走行を再開させたり必要があるので、作業者に負担が掛かる。
【0007】
本発明は、刈取部に生じた穀稈の詰まりを、作業者に負担を掛けることなく解消することができる自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の自動運転方法は、コンバインの自動運転方法であって、前記コンバインは、未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部を備えていて、前記刈取部は、前記未刈領域から刈り取った前記穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガと、刈り取った前記穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤとを備えていて、当該自動運転方法は、前記刈取部の前記穀稈の詰まりを検出する検出工程と、前記刈取部を制御する刈取制御工程を有し、前記検出工程が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記刈取制御工程は、前記刈取部による前記穀稈の刈取を中断させると共に、前記掻込オーガ及び前記搬送コンベヤのうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明のコンバインは、未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部と、前記刈取部の前記穀稈の詰まりを検出する検出部と、前記刈取部を制御する刈取制御部と、を備え、前記刈取部は、前記未刈領域から刈り取った前記穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガと、刈り取った前記穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤとを備え、前記検出部が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記刈取制御部は、前記刈取部による前記穀稈の刈取を中断させると共に、前記掻込オーガ及び前記搬送コンベヤのうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の自動運転システムは、未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部を備えたコンバインの自動運転システムであって、前記刈取部の前記穀稈の詰まりを検出する検出部と、前記刈取部を制御する刈取制御部と、を備え、前記刈取部は、前記未刈領域から刈り取った前記穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガと、刈り取った前記穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤとを備え、前記検出部が前記穀稈の詰まりを検出した場合、前記刈取制御部は、前記刈取部による前記穀稈の刈取を中断させると共に、前記掻込オーガ及び前記搬送コンベヤのうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、刈取部に生じた穀稈の詰まりを、作業者に負担を掛けることなく解消することができる自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るコンバインの側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンバインのブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンバインの刈取部を上昇させた状態の側面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るコンバインにおいて、刈取部に詰まった穀稈を、進行方向にある未刈領域上に吐き出す場合の圃場の例を示す平面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るコンバインにおいて、刈取部に詰まった穀稈を、進行方向との交差方向にある未刈領域上に吐き出す場合の圃場の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態によるコンバイン1について図1等を参照して説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うために刈取等の作業を行うものである。コンバイン1は、例えば、自動運転によって操向を制御する一方、手動操作に応じて走行速度を制御するオート作業や、自動運転によって操向及び走行速度を制御する無人作業を行うように構成され、圃場内で自律して走行、旋回及び作業することができる。
【0014】
コンバイン1は、所定の走行パターンの走行経路に従って自動走行しながら自動刈取する自動刈取走行を行うように構成される。例えば、コンバイン1は、圃場の未刈穀稈を有する領域(以下、未刈領域と称する)において複数の行程を往復する往復刈りや、未刈領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈り等の走行パターンの自動刈取走行を行う。
【0015】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる普通型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0016】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられていて、左右一対のクローラ式走行装置11と、トランスミッション(図示せず)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン31から伝達される動力(例えば、回転動力)によって、クローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置11へ伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0017】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられ、未刈領域における所定の刈取幅の穀稈の刈取を行う。刈取部3は、デバイダ13と、掻込リール14と、刈刃15と、掻込オーガ16と、フィーダハウス17と、搬送コンベヤ18とを備える。
【0018】
デバイダ13は、刈取部3の左前端及び右前端から前方に突出して設けられ、未刈領域の穀稈を刈取幅内に案内する。掻込リール14は、デバイダ13の後方に配置され、左右方向に延びた回転軸周りに回転可能に設けられる。掻込リール14は、デバイダ13によって案内された穀稈の刈取を補助するために、回転駆動することで、穀稈を引き起こしながら穀稈の穂先側を掻き込む。刈刃15は、掻込リール14の下方に配置され、掻込リール14によって掻き込まれた穀稈の稈元側を切断して穀稈の刈取を行う。
【0019】
掻込オーガ16は、掻込リール14及び刈刃15の後方に配置され、左右方向に延びた回転軸周りに回転可能に設けられる。掻込オーガ16は、回転駆動することで、刈刃15によって刈り取った穀稈を掻き込んで後方へ搬送する。
【0020】
フィーダハウス17は、機体フレーム10から前方に延びていて掻込オーガ16の後方に配置され、搬送コンベヤ18の駆動軸18a周りに回動可能に機体フレーム10に支持される。また、フィーダハウス17が回動することでフィーダハウス17の前方に設けられたデバイダ13、掻込リール14、刈刃15及び掻込オーガ16が昇降し、すなわち刈取部3が昇降する。なお、コンバイン1は、フィーダハウス17を回動させて刈取部3を昇降させる昇降装置19を機体フレーム10に備えている。昇降装置19は、例えば、エンジン31から動力を受けて稼動する油圧シリンダ等で構成される。
【0021】
搬送コンベヤ18は、フィーダハウス17内に回転可能に設けられ、フィーダハウス17の回動に伴って移動する。搬送コンベヤ18は、回転駆動することで、掻込オーガ16によってフィーダハウス17内に搬送された穀稈を更に後方に向かって脱穀部4へと搬送する。
【0022】
刈取部3は、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18で搬送される穀稈の詰まりを検出する検出部20を備える。検出部20は、例えば、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18の少なくとも一方の回転数の異常を検出する回転数センサで構成されてよく、回転数が所定の回転数閾値未満の場合に、掻込オーガ16や搬送コンベヤ18の回転異常を判断して穀稈の詰まりを検出してよい。検出部20は、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のそれぞれに個別に設けられて、掻込オーガ16の回転数の異常及び搬送コンベヤ18の回転数の異常をそれぞれ個別に検出してよい。
【0023】
脱穀部4は、刈取部3のフィーダハウス17の後方に設けられ、フィーダハウス17から搬送された穀稈を脱穀する。脱穀部4は、扱胴22と、受網23とを備える。扱胴22は、フィーダハウス17から搬送された穀稈から穀粒を脱穀すると共に、脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。受網23は、扱胴22によって搬送される穀稈を支持すると共に、穀粒をふるいにかけて落下させる。
【0024】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置25と、送風選別装置26と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。揺動選別装置25は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。送風選別装置26は、脱穀部4から落下した脱穀物や揺動選別装置よって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置25及び送風選別装置26によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置25及び送風選別装置26によって選別された穀粒以外の藁屑等を機外へ排出する。
【0025】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク28と、穀粒排出装置29とを備える。グレンタンク28は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。穀粒排出装置29は、排出オーガ等を有して構成され、穀粒の排出作業を行い、グレンタンク28に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。
【0026】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、例えば、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送された排藁を排藁搬送装置によって排藁切断装置へ搬送して、排藁切断装置によって切断した後でコンバイン1の後方に排出する。
【0027】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、貯留部6の下方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン31を備える。動力部8は、エンジン31が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。また、コンバイン1は、動力部8のエンジン31へ供給する燃料を収容する燃料タンクを備える。
【0028】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、作業者が座る運転席(図示せず)と、複数の操作具(図示せず)とを備える。操作具は、コンバイン1の進行方向を変更し、すなわちコンバイン1を操向操作するためのハンドルを含み、作業者は、ハンドル等の操作具を操作することにより、コンバイン1の走行や作業を操縦できる。また、操作具は、コンバイン1の走行部2の走行速度を調整する機構や、刈取部3を昇降させる昇降スイッチを含む。
【0029】
コンバイン1は、図2に示すように、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する測位ユニット33を備えている。測位ユニット33は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット33の位置情報、すなわち、コンバイン1の位置情報を取得する。
【0030】
なお、コンバイン1は、圃場の周囲の畦等に設置された基地局(図示せず)と通信可能に構成されてもよい。基地局は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて基地局の位置情報を取得する。基地局は、基地局の位置情報に基づく補正情報を、コンバイン1(例えば、測位ユニット33)へ送信する。コンバイン1(例えば、測位ユニット33)は、補正情報を基地局から受信し、補正情報に基づいて測位ユニット33の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を補正する。
【0031】
次に、コンバイン1の制御装置50について図2を参照して説明する。
【0032】
制御装置50は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51や、外部機器と通信を行う通信部52に接続されている。記憶部51は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。
【0033】
制御装置50は、例えば、測位ユニット33を制御してコンバイン1の位置情報を取得する。制御装置50は、刈取部3の検出部20を制御して掻込オーガ16や搬送コンベヤ18における穀稈の詰まりを検出させてその検出結果を取得する。
【0034】
記憶部51は、例えば、コンバイン1の作業対象である圃場の圃場情報を記憶する。圃場情報は、圃場外周を構成する圃場端の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等や、圃場の未刈領域の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等を含む。また、記憶部51は、自動刈取走行時に未刈領域に対して設定される走行経路を記憶すると共に、自動刈取走行を行った未刈領域を既刈領域として記憶する。
【0035】
通信部52は、無線通信アンテナを介して、作業者の保有する携帯端末53と無線通信可能となる。制御装置50は、通信部52を制御して携帯端末53と無線通信を行い、携帯端末53との間で各種情報を送受信する。
【0036】
携帯端末53は、コンバイン1の構成要素の一つであって、コンバイン1を遠隔操作可能な端末であり、例えば、タッチパネルを備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。なお、携帯端末53と同様の操作装置が操縦部9に備えられてもよい。
【0037】
携帯端末53は、作業対象の圃場に係る圃場情報について、タッチパネルのタッチ操作等による入力操作を受け付けるように構成され、例えば、圃場情報を設定可能な圃場情報設定画面を表示する。携帯端末53は、圃場情報設定画面において、圃場情報に基づく圃場マップを表示しつつ、圃場マップ上にコンバイン1の走行経路を進行方向が分かるように表示することもできる。
【0038】
携帯端末53は、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターンの選択を受け付ける機能を有し、自動刈取走行の走行経路を作成する場合に、往復刈り又は回り刈りの走行パターンを選択する走行選択画面をタッチパネルに表示する。携帯端末53は、走行選択画面の操作に応じて入力された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)をコンバイン1へ送信して走行経路の作成を指示する。
【0039】
また、制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び刈取制御部63として動作する。なお、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び刈取制御部63は、本発明に係る自動運転方法の自動走行制御工程及び刈取制御工程を実現するものである。なお、刈取部3の検出部20が本発明に係る自動運転方法の検出工程を実現する。携帯端末53の操作に基づく制御装置50が、刈取部3を逆転駆動させるか否かを選択する選択部として機能し、本発明に係る自動運転方法の選択工程を実現する。
【0040】
圃場情報設定部60は、作業対象の圃場に係る圃場情報を自動又は手動で設定して記憶部51に記憶する。例えば、圃場情報設定部60は、携帯端末53の圃場情報設定画面に対する圃場情報の入力操作に応じて、圃場情報を手動で設定する。あるいは、圃場情報設定部60は、外部機器が記憶している圃場情報を受信して自動で設定してもよい。
【0041】
なお、他の例として、圃場情報設定部60は、作業対象の圃場を撮影した圃場画像を取得し、圃場画像を画像解析した結果に基づいて圃場情報を設定してもよい。また、圃場情報設定部60は、携帯端末53の操作に応じて設定した圃場情報や、外部機器から受信した圃場情報と、圃場画像から解析した圃場情報と整合性をとることで、より正確な圃場情報を取得してもよい。
【0042】
圃場画像は、コンバイン1に備わる機体カメラによって撮影してもよく、基地局に備わる固定カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよく、携帯端末53に備わる携帯カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよく、ドローン等の空撮装置に備わる空撮カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよい。圃場情報設定部60は、機体カメラ、固定カメラ、携帯カメラ又は空撮カメラのうち、1つのカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよく、2つ以上のカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよい。なお、制御装置50は、機体カメラ、固定カメラ、携帯カメラ又は空撮カメラによって撮影した圃場画像を操縦部9のモニタに表示させたり、携帯端末53へ送信して携帯端末53のモニタに表示させたりしてもよい。
【0043】
走行経路作成部61は、圃場をコンバイン1が自動運転で自動走行及び自動刈取(自動刈取走行)を行うために参照する走行経路を作成して記憶部51に記憶する。走行経路は、走行に関する走行設定だけでなく、刈取等の作業に関する作業設定も含む。走行設定は、圃場における走行位置に加えて、各走行位置での走行速度及び進行方向(操向方向及び前進又は後退)を含む。作業設定は、各走行位置での刈取の稼働又は停止、刈取速度及び刈取高さ、刈取幅(若しくは、刈取条数)、他の作業に関する情報を含む。
【0044】
走行経路作成部61は、圃場内の未刈領域に対して、走行しながら刈取を行う行程を直線状に設定し、複数の直線行程を組み合わせて走行経路を設定する。走行経路作成部61は、携帯端末53等の操作に応じて選択された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)に応じた走行経路を作成する。例えば、走行経路作成部61は、未刈領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈りの走行経路や、未刈領域において複数の行程を往復する往復刈りの行程を作成する。走行経路作成部61は、複数の直線行程からなる一連の走行経路において、自動刈取走行を開始する開始位置と、自動刈取走行を完了する終了位置とを設定する。
【0045】
自動走行制御部62は、作業者による操縦部9又は携帯端末53の操作に応じてコンバイン1が自動刈取走行を行うときに、走行経路作成部61で作成された走行経路の走行設定に基づいて、動力部8及び走行部2を制御して、走行経路に応じた自動走行を実行させる。なお、コンバイン1は、ジャイロセンサ及び方位センサを備えてコンバイン1の変位情報及び方位情報を取得し、自動走行制御部62は、変位情報及び方位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を調整してもよい。
【0046】
自動走行制御部62は、圃場情報に基づいて未刈領域を把握すると共に、コンバイン1の位置情報を取得して、未刈領域において刈取部3(例えば、刈取部3の先端)が経由した経路及び領域を算出し、既刈経路及び既刈領域として記憶部51に記憶する。また、自動走行制御部62は、既刈経路及び既刈領域に基づいて、記憶している圃場情報の未刈領域を更新する。
【0047】
自動走行制御部62は、検出部20が刈取部3の掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18で搬送される穀稈の詰まりを検出した場合、自動走行を中断するように動力部8及び走行部2を制御する。更に、自動走行制御部62は、検出部20が穀稈の詰まりの解消を検出した場合、走行経路に応じた自動走行を再開する。
【0048】
刈取制御部63は、作業者による操縦部9又は携帯端末53の操作に応じてコンバイン1が自動刈取走行を行うときに、走行経路作成部61で作成された走行経路の作業設定に基づいて、動力部8及び刈取部3を制御して、走行経路に応じた自動刈取を実行させる。このとき、刈取制御部63は、刈取部3によって走行経路上の未刈穀稈を自動的に刈り取る。
【0049】
例えば、刈取制御部63は、デバイダ13によって案内された未刈領域の穀稈を、掻込リール14を正転駆動させることで掻き込み、掻込リール14に掻き込まれた穀稈を刈刃15によって刈り取る。刈取制御部63は、刈刃15に刈り取られた穀稈を、掻込オーガ16を正転駆動させることで掻き込むと共にフィーダハウス17へ搬送し、これにより穀稈を刈取部3に取り込む。刈取制御部63は、フィーダハウス17へ搬送された穀稈を、搬送コンベヤ18を正転駆動させることで脱穀部4へと搬送し、これにより穀稈をコンバイン1の機内に取り込む。更に、刈取制御部63は、自動刈取に伴い、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を制御して、刈取後の穀稈の脱穀、脱穀後の穀粒や藁屑の選別、選別後の穀粒の貯留、脱穀後の排藁の処理等を自動的に実行させる。
【0050】
刈取制御部63は、検出部20が刈取部3の掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18で搬送される穀稈の詰まりを検出した場合、自動刈取を中断するように動力部8及び刈取部3を制御する。なお、刈取制御部63は、自動刈取を中断するとき、刈取部3だけでなく、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7の動作を停止させてもよく、あるいは、コンバイン1の機内に取り込んだ穀稈を処理するまで、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7の動作を継続してもよい。
【0051】
また、刈取制御部63は、自動刈取を中断して刈取部3による刈取動作を停止させた後、穀稈の詰まりを解消する解消動作として、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを、穀稈の詰まりを解消するための解消部材として、この解消部材を逆転駆動させる。このとき、刈取制御部63は、所定の制限時間が経過するまで、若しくは、穀稈の詰まりが解消するまで、掻込オーガ16や搬送コンベヤ18の解消部材を逆転駆動する。好ましくは、刈取制御部63は、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18を同時に逆転駆動させる。また、刈取制御部63は、解消部材の逆転駆動の開始や終了を携帯端末53等によって事前に作業者に通知してよい。
【0052】
なお、掻込オーガ16や搬送コンベヤ18の解消部材の逆転駆動を開始してから所定の制限時間が経過しても、穀稈の詰まりが解消しない場合には、自動走行制御部62が自動走行を停止すると共に、刈取制御部63が自動刈取を停止して、コンバイン1の自動刈取走行を停止するとよい。また、解消部材の逆転駆動を開始しても、検出部20である回転数センサが解消部材の逆転を検出できない場合や、所定の回転数閾値以上の回転数を検出できない場合も同様に、刈取制御部63は、コンバイン1の自動刈取走行を停止するとよい。
【0053】
換言すれば、刈取制御部63は、掻込オーガ16や搬送コンベヤ18の解消部材の逆転駆動を開始した後、解消部材を逆転できない場合には、刈取部3による穀稈の刈取を停止させる。これにより、穀稈の詰まりによって掻込オーガ16や搬送コンベヤ18を回転できない場合には、刈取を停止させることで掻込オーガ16や搬送コンベヤ18に掛かる負荷を軽減することができ、各部の故障を回避することができる。
【0054】
更に、刈取制御部63は、検出部20が穀稈の詰まりの解消を検出した場合、掻込オーガ16や搬送コンベヤ18の解消部材の逆転駆動を終了し、走行経路に応じた自動刈取を再開する。このとき、刈取制御部63は、穀稈の詰まりの解消を携帯端末53等によって作業者に通知してよく、更に、自動走行の再開、即ち、自動刈取走行の再開の操作を携帯端末53等によって作業者に行わせてよい。なお、刈取制御部63は、未刈領域における自動刈取を再開する前に、既刈領域等で刈取部3の各部を正転駆動して試運転を行ってもよい。
【0055】
制御装置50は、検出部20が穀稈の詰まりを検出したときに、穀稈の詰まりを携帯端末53等によって作業者に通知してよい。また、制御装置50は、自動走行制御部62及び刈取制御部63が自動走行及び自動刈取(すなわち、自動刈取走行)を中断したときに、自動刈取走行の中断を携帯端末53等によって作業者に通知してよく、自動走行の中断位置を記憶部51に記憶してよい。更に、制御装置50は、検出部20が穀稈の詰まりの解消を検出したときに、穀稈の詰まりの解消を携帯端末53等によって作業者に通知してよく、更に、自動走行の再開、即ち、自動刈取走行の再開の操作を携帯端末53等によって作業者に行わせてよい。
【0056】
上記のように、本実施形態によれば、コンバイン1は、未刈領域の穀稈を刈り取る刈取部3と、刈取部3の穀稈の詰まりを検出する検出部20と、制御装置50とを備えていて、制御装置50は、刈取部3を制御する刈取制御部63として機能する。刈取部3は、未刈領域から刈り取った穀稈を掻き込む回転可能な掻込オーガ16と、刈り取った穀稈を搬送する回転可能な搬送コンベヤ18とを備えている。自動刈取走行か手動刈取走行かに拘わらず、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合、刈取制御部63は、刈取部3による穀稈の刈取を中断させると共に、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる。
【0057】
これにより、コンバイン1は、刈取部3で穀稈の詰まりが生じた場合に、掻込オーガ16や搬送コンベヤ18の解消部材を逆転駆動させることで、刈取部3で詰まっている穀稈を吐き出すことができ、穀稈の詰まりを自動的に解消することができる。そのため、作業者に負担を掛けることなく、刈取部3における穀稈の詰まりを解消し、コンバイン1の刈取作業を継続することができる。
【0058】
なお、上記した実施形態では、コンバイン1は、予め作成した走行経路に従った自動刈取走行において、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合に、刈取制御部63が、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、コンバイン1は、作業者による操縦部9の操作に従った手動刈取走行において、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合に、刈取制御部63が、解消部材を逆転駆動させてもよい。
【0059】
なお、上記した実施形態では、コンバイン1は、検出部20が穀稈の詰まりを検出したことのみを条件として、刈取制御部63が、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、コンバイン1は、解消部材を逆転駆動させることを作業者が選択したことを条件に追加してもよい。
【0060】
具体的には、コンバイン1(制御装置50)は、自動刈取走行を開始する前に、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させるか否かを選択させる選択画面を携帯端末53に表示させる。そして、選択画面で逆転駆動の実行が予め選択されたことを条件として、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合に、刈取制御部63が、解消部材を逆転駆動させる。あるいは、コンバイン1(制御装置50)は、自動刈取走行の実行中に検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合に、上記した選択画面を携帯端末53に表示させる。そして、選択画面で逆転駆動の実行が選択されたことを条件として、刈取制御部63が、解消部材を逆転駆動させる。
【0061】
還元すれば、携帯端末53の操作に基づく制御装置50が、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合に刈取部3の解消部材を逆転駆動させるか否かを選択する選択部として機能する。これにより、刈取部3における穀稈の詰まりを自動で解消動作するか否かを、作業者が選択することができるので、コンバイン1の自動刈取走行の利便性を向上することができる。
【0062】
また、上記した実施形態では、刈取部3の穀稈の詰まりを解消する動作として、刈取制御部63が、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、刈取部3の穀稈の詰まりを解消する動作として、刈取制御部63が、解消部材の逆転駆動と正転駆動とを交互に行ってもよい。
【0063】
また、上記した実施形態では、コンバイン1は、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、掻込リール14、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させてもよい。この場合、検出部20は、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18における穀稈の詰まりだけでなく、掻込リール14における穀稈の詰まりも検出できるように構成するとよい。
【0064】
更に、他の実施形態では、コンバイン1は、検出部20が刈取部3の穀稈の詰まりを検出した場合、刈取部3に詰まった穀稈を未刈領域上に吐き出すように各部を制御する。このとき、刈取制御部63は、刈取部3による穀稈の刈取を中断させると共に、昇降装置19を制御して刈取部3を未刈領域の穀稈よりも高く上昇させる(図3参照)。なお、刈取制御部63は、刈取を中断したときの刈取部3の高さ、すなわち中断高さを記憶部51に記憶しておく。
【0065】
また、自動走行制御部62は、上記したように自動走行を中断させるところ、刈取制御部63が刈取部3を上昇させる前に、自動走行の中断位置よりも所定の離間距離だけコンバイン1を後退させるとよい。換言すれば、刈取制御部63は、自動走行制御部62がコンバイン1を後退させてから、刈取部3を上昇させる。なお、自動走行制御部62は、コンバイン1を後退させる前に、コンバイン1を後退させることを携帯端末53等によって作業者に通知するとよい。また、自動走行制御部62は、中断位置からコンバイン1を後退させた位置を再開位置として記憶部51に記憶するとよい。
【0066】
その後、自動走行制御部62は、上昇させた刈取部3が未刈領域の上方に重なるようにコンバイン1を移動させる。このとき、自動走行制御部62は、圃場情報の未刈領域及びコンバイン1の位置情報に基づいて、刈取部3の先端から所定の重複長だけ未刈領域と重なるようにコンバイン1の移動を調整するとよい。なお、自動走行制御部62は、刈取部3が未刈領域と重なるようにコンバイン1を移動させたときに刈取部3(例えば、刈取部3の先端)が経由した経路及び領域は、既刈経路及び既刈領域として記憶しない。
【0067】
例えば、自動走行制御部62は、図4に示すように、コンバイン1の進行方向にある未刈領域を対象領域A1として、上昇させた刈取部3がこの対象領域A1の上方に重なるようにコンバイン1を前進移動させる。なお、図4では、未刈領域を実線で示し、既刈領域を一点鎖線で示す。
【0068】
ところで、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させることにより、穀稈が刈取部3から所定の吐出長(例えば、数メートル)だけ吐き出されることを予測できる。また、自動走行制御部62は、圃場情報の未刈領域及びコンバイン1の位置情報に基づいて、コンバイン1の進行方向にある未刈領域の進行方向の長さ、すなわち未刈長L1、L2を算出することができる(図4図5参照)。刈取部3に詰まった穀稈を未刈領域上に吐き出すためには、未刈領域の未刈長L1、L2が、刈取部3が重なる重複長と刈取部3から穀稈が吐き出される吐出長とを合わせた所定の必要長N以上である必要がある。
【0069】
そこで、自動走行制御部62は、図4に示すように、コンバイン1の進行方向にある未刈領域の進行方向の未刈長L1が所定の必要長N以上の場合には、進行方向にある未刈領域を対象領域A1として、上昇させた刈取部3がこの対象領域A1の上方に重なるようにコンバイン1を前進移動させる。
【0070】
一方、自動走行制御部62は、図5に示すように、進行方向にある未刈領域の未刈長L2が必要長N未満の場合には、進行方向以外にある未刈領域、例えば、進行方向との交差方向にある未刈領域を対象領域A2とする。なお、図5では、未刈領域を実線で示し、既刈領域を一点鎖線で示す。例えば、コンバイン1が、右側が未刈領域となり、左側が既刈領域となるように自動刈取走行を行う場合には、自動刈取走行を中断したコンバイン1の向きに対して右側の未刈領域を対象領域A2とする。そして、自動走行制御部62は、対象領域A2がコンバイン1の進行方向となるように、コンバイン1を旋回し、上昇させた刈取部3がこの対象領域A2の上方に重なるようにコンバイン1を前進移動させる。
【0071】
その後、刈取制御部63は、上昇させた刈取部3が未刈領域の上方に重なった状態で、穀稈の詰まりを解消する解消動作として、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる。これにより、刈取部3に詰まった穀稈が、未刈領域上に吐き出される。なお、コンバイン1(制御装置50)は、未刈領域において穀稈を吐き出した吐出位置を記憶部51に記憶しておく。
【0072】
また、検出部20が穀稈の詰まりの解消を検出して刈取制御部63が上記の解消動作を終了すると、自動走行制御部62は、上記のように記憶部51に記憶した再開位置までコンバイン1を移動させる。コンバイン1が再開位置まで移動すると、刈取制御部63は、昇降装置19を制御して、上昇させた刈取部3を中断高さまで下降させる。なお、進行方向との交差方向にある未刈領域を対象領域A2として解消動作を行う場合には、刈取部3を昇降させる位置は、再開位置でなくてもよく、例えば、対象領域A2から所定の離間距離だけ後退した位置でもよい。
【0073】
その後、自動走行制御部62及び刈取制御部63は、走行経路に従った自動走行及び自動刈取(すなわち、自動刈取走行)を再開する。自動走行制御部62は、刈取部3に詰まった穀稈を吐き出した未刈領域の吐出位置をコンバイン1が走行してこの吐出位置に植えられた穀稈の刈取を刈取部3が行うとき、走行経路に予め設定された速度よりも走行部2の車速を遅くするように制御する。また、コンバイン1(制御装置50)は、作業者による操縦部9の操作に従った手動刈取走行を行う場合も、刈取部3に詰まった穀稈を吐き出した未刈領域の吐出位置をコンバイン1が走行してこの吐出位置に植えられた穀稈の刈取を刈取部3が行うときには、操縦部9の操作に基づいて設定された速度よりも走行部2の車速を遅くするように制御する。なお、自動走行制御部62又は制御装置50は、詰まり穀稈の吐出位置のために減速することを携帯端末53等によって作業者に通知するとよい。
【0074】
上記のように、他の実施形態によれば、コンバイン1は、コンバイン1の自動走行を制御する自動走行制御部62を更に備える。そして、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合、刈取制御部63は、刈取部3による穀稈の刈取を中断させると共に刈取部3を未刈領域の穀稈よりも高く上昇させる。自動走行制御部62は、上昇させた刈取部3が未刈領域の上方に重なるようにコンバイン1を移動させる。その後、刈取制御部63は、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させる。
【0075】
これにより、コンバイン1は、刈取部3に詰まった穀稈を未刈領域上に吐き出すことができる。そのため、コンバイン1は、未刈領域の刈取走行を行うことによって、未刈領域に植えられた穀稈だけでなく、未刈領域上に吐き出された穀稈もコンバイン1の機内に取り込むことができる。このように、コンバイン1は、刈取部3から穀稈が既刈領域上に吐き出されることを抑制することができ、刈取部3から吐き出された穀稈を自動的にコンバイン1の機内に取り込むので、刈取部3から吐き出された穀稈を作業者が手作業で処理する負担を軽減することができる。
【0076】
例えば、他の実施形態のコンバイン1では、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合、自動走行制御部62は、コンバイン1の進行方向にある未刈領域を対象領域A1として、上昇させた刈取部3が対象領域A1の上方に重なるようにコンバイン1を移動させるとよい。
【0077】
これにより、刈取部3に穀稈が詰まった場合に、コンバイン1を前進移動させるだけで、上昇させた刈取部3を未刈領域上に配置することができる。そのため、コンバイン1の移動を最小限に抑えつつ、刈取部3に詰まった穀稈を未刈領域上に吐き出すことができ、刈取部3から吐き出された穀稈を自動的にコンバイン1の機内に取り込むことができる。
【0078】
あるいは、他の実施形態のコンバイン1では、検出部20が穀稈の詰まりを検出した場合、自動走行制御部62は、進行方向にある未刈領域の進行方向の未刈長L1が所定の必要長N以上の場合には、コンバイン1の進行方向にある未刈領域を対象領域A1として、上昇させた刈取部3が対象領域A1の上方に重なるようにコンバイン1を移動させる。一方、進行方向にある未刈領域の進行方向の未刈長L2が所定の必要長N未満の場合には、自動走行制御部62は、コンバイン1の進行方向との交差方向にある未刈領域を対象領域A2として、上昇させた刈取部が対象領域A2の上方に重なるようにコンバイン1を移動させる。
【0079】
これにより、刈取部3に穀稈が詰まった場合に、未刈領域の状態に応じて、穀稈の吐き出しに十分な大きさの未刈領域を自動的に選択することができる。そのため、刈取部3に詰まった穀稈が既刈領域上に吐き出されることを抑制して、より確実に未刈領域上に吐き出させることができ、刈取部3から吐き出された穀稈を自動的にコンバイン1の機内に取り込むことができる。
【0080】
また、他の実施形態のコンバイン1では、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つの解消部材を逆転駆動した後、検出部20が刈取部3の穀稈の詰まりの解消を検出した場合、刈取制御部63は、解消部材の逆転駆動を終了して、穀稈の刈取を中断したときの刈取部の中断高さまで刈取部を下降させてから、穀稈の刈取を再開する。
【0081】
これにより、穀稈が詰まった刈取部3の刈取を中断して、刈取部3に詰まった穀稈を未刈領域上に吐き出した後、刈取部3を自動的に中断前の状態に戻すことができるので、刈取走行を中断前の状態から再開することができる。
【0082】
また、他の実施形態のコンバイン1では、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つの解消部材を逆転駆動したときに未刈領域において穀稈を吐き出した吐出位置を記憶する記憶部51を更に備えている。自動走行制御部62は、刈取部3が吐出位置の穀稈の刈取を行うとき、予め設定された速度よりもコンバイン1の車速を遅くするように走行部2を制御する。
【0083】
刈取部3から穀稈が吐き出された未刈領域の吐出位置で刈取走行を行う場合、刈取部3は、未刈領域に植えられた穀稈を刈り取ってコンバイン1の機内に取り込むだけでなく、刈取部3から未刈領域上に吐き出された穀稈もコンバイン1の機内に取り込むことになる。そのため、未刈領域の吐出位置における刈取走行によって刈取部3が取り込む穀稈の量は、未刈領域の他の位置における刈取走行よりも多くなる。そこで、コンバイン1は、未刈領域の吐出位置で走行速度を減速することにより、単位距離当たりの穀稈の取り込み量を少なくすることができるので、吐出位置で増量した穀稈を安定して処理することができる。
【0084】
また、他の実施形態のコンバイン1では、制御装置50は、コンバイン1の刈取走行時に未刈領域において刈取部3が経由した領域を既刈領域として設定する。一方、制御装置50は、掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つの解消部材を逆転駆動させるために未刈領域において刈取部3が重なった領域を既刈領域として設定しない。
【0085】
これにより、刈取部3に詰まった穀稈を未刈領域上に吐き出す際に、刈取を行うことなく、未刈領域の上方に刈取部3が重なるような走行をコンバイン1が行った場合でも、刈取が行われていない未刈領域を誤って既刈領域と設定されることがなく、穀稈の詰まり解消のための走行は刈取走行として認識されない。そのため、圃場情報の未刈領域が誤って更新されることを抑制することができ、刈取部3の穀稈の詰まりを解消した後、中断位置から自動刈取走行を適切に再開することができる。
【0086】
なお、上記した実施形態では、コンバイン1の制御装置50が圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び刈取制御部63として機能する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、携帯端末53が圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び刈取制御部63として機能するように構成されてもよい。換言すれば、本発明に係る自動運転システムは、コンバイン1の制御装置50及び携帯端末53の少なくとも一つを適用して、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び刈取制御部63として機能し、刈取部3の穀稈の詰まりを検出した場合に、刈取部による穀稈の刈取を中断させると共に、刈取部3の掻込オーガ16及び搬送コンベヤ18のうち少なくとも一つを解消部材として逆転駆動させればよい。
【0087】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
16 掻込オーガ
18 搬送コンベヤ
19 昇降装置
20 検出部
50 制御装置
51 記憶部
53 携帯端末
62 自動走行制御部
63 刈取制御部
L1、L2 未刈長
N 必要長
図1
図2
図3
図4
図5