(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141345
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
B63H 25/38 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
B63H25/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041594
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000129851
【氏名又は名称】株式会社ケイセブン
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 定友
(57)【要約】 (修正有)
【課題】左舵板と右舵板の抵抗を抑制して船を効率良く走行することができる操舵装置を提供する。
【解決手段】左舷側舵板を、船の底部に固定された左前舵板10と、左前舵板の後側に設けられた左後舵板11で形成し、左後舵板11を、前部の第1左後舵板31と、第1左後舵板後部の後側に設けられた第2左後舵板32で形成し、第1左後舵板の前部を、プロペラの左側に上下方向に延在する左舵軸15に回転自在に固定し、第2左後舵板の前部を、第1左後舵板の後部に上下方向に延在する左フラップ軸34に回転自在に固定し、側面視において、左舵軸と左フラップ軸の間に、上下方向に延在する左支軸35を設け、左支軸の上部を、船の底部に固定し、第2左後舵板の上部に貫通孔を有する左係合部材36を設け、左支軸と左係合部材を左連結部材38で連結し、また、右舷側舵板を同様の構成とした。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船の舵によって操作される駆動装置と、該駆動装置によって回動させられる舵軸と、該舵軸に支持された舵を備える操舵装置において、
平面視において、前記船のプロペラの両側に、左舷側舵板と右舷側舵板を設け、
前記左舷側舵板を、船の底部に固定された左前舵板と、該左前舵板の後側に設けられた左後舵板で形成し、該左後舵板を、前部の第1左後舵板と、該第1左後舵板後部の後側に設けられた第2左後舵板で形成し、
前記右舷側舵板を、船の底部に固定された右前舵板と、該右前舵板の後側に設けられた右後舵板で形成し、該右後舵板を、前部の第1右後舵板と、該第1左後舵板後部の後側に設けられた第2右後舵板で形成し、
前記第1左後舵板の前部を、前記プロペラの左側に上下方向に延在する左舵軸に回転自在に固定し、
前記第2左後舵板の前部を、前記第1左後舵板の後部に上下方向に延在する左フラップ軸に回転自在に固定し、
側面視において、左舵軸と左フラップ軸の間に、上下方向に延在する左支軸を設け、
該左支軸の上部を、船の底部に固定し、
前記第2左後舵板の上部に貫通孔を有する左係合部材を設け、前記左支軸と左係合部材を左連結部材で連結し、
前記第1右後舵板の前部を、前記プロペラの右側に上下方向に延在する右舵軸に回転自在に固定し、
前記第2右後舵板の前部を、前記第1右後舵板の後部に上下方向に延在する右フラップ軸に回転自在に固定し、
側面視において、右舵軸と右フラップ軸の間に、上下方向に延在する右支軸を設け、
該右支軸の上部を、船の底部に固定し、
前記第2右後舵板の上部に貫通孔を有する右係合部材を設け、前記右支軸と右係合部材を右連結部材で連結したことを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記左舵軸の軸心視において、前記第1左後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、
前記左フラップ軸の軸心視において、前記第2左後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、
前記右舵軸の軸心視において、前記第1右後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、
前記右フラップ軸の軸心視において、前記第2右後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転する請求項1記載の操舵装置。
【請求項3】
前記左前舵板の前部を後部よりも前方左側に位置させ、前記右前舵板の前部を後部よりも前方右側に位置させた請求項1又は2記載の操舵装置。
【請求項4】
左側面視において、前記第2左後舵板の前後方向の長さを第1左後舵板の前後方向の長さの略半分に形成し、前記第2右後舵板の前後方向の長さを第1右後舵板の前後方向の長さの略半分に形成した請求項1~3のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項5】
前記左後舵板を、前記左前舵板の後部と、前記左後舵板に固定された上下方向に延在する左舵軸で回転自在に支持し、
前記右後舵板を、前記右前舵板の後部と、前記右後舵板に固定された上下方向に延在する右舵軸で回転自在に支持し、
背面視において、前記左舷側舵板と右舷側舵板の下端部を、前記プロペラの旋回外周部の下端部に位置させた請求項1~4のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項6】
前記左後舵板を、前記左前舵板の後側に設けられた左垂直部と、該左垂直部の下部から右下がりに延在する左傾斜部で形成し、
前記右後舵板を、前記右前舵板の後側に設けられた右垂直部と、該右垂直部の下部から左下がりに延在する右傾斜部で形成し、
側面視において、前記左傾斜部を左前舵板の前部から左垂直部の後部まで延在させ、前記右傾斜部を右前舵板の前部から右垂直部の後部まで延在させ、
背面視において、前記左傾斜部と右傾斜部の下端部を、前記プロペラの旋回外周部の下端部に位置させた請求項1~5のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項7】
前記左前舵板の右面と船尾の下部を左連結部材で連結し、
前記右前舵板の左面と船尾の下部を右連結部材で連結し、
背面視において、前記左連結部材を右傾斜部と平行に設け、前記右連結部材を左傾斜部と平行に設けた請求項6記載の操舵装置。
【請求項8】
平面視において、前記左舵軸と右舵軸を、前記プロペラの前後方向の中心線の後側に近接して設けた請求項1~7のいずれか1項に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船の推進性能を高めるために、プロペラの両側に左舵と右舵を設ける技術が知られている。また、船の完成後には、船の針路を素早く曲げることができる旋回性能と、船を真っすぐ走ることができる保針性能等を測定することが知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の手段では、船の推進性能が高めることができるが、旋回性能を十分に高めることができない恐れがある。また、左舷側舵の左舵板と右舷側舵の右舵板が大型になった場合には、左舵板と右舵板が抵抗となり船を効率良く走行できない恐れがあり、また、左舵板を吊下げる左舵軸と右舵板を吊下げる右舵軸の軸径が過度に太くなる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、船の推進性能が高めると共に、操縦性能に大きな影響を及ぼす旋回性能を高めることができる操舵装置を提供することにある。また、次なる課題は、左舵板と右舵板の抵抗を抑制して船を効率良く走行することができる操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、船の舵によって操作される駆動装置と、該駆動装置によって回動させられる舵軸と、該舵軸に支持された舵を備える操舵装置において、
平面視において、前記船のプロペラの両側に、左舷側舵板と右舷側舵板を設け、前記左舷側舵板を、船の底部に固定された左前舵板と、該左前舵板の後側に設けられた左後舵板で形成し、該左後舵板を、前部の第1左後舵板と、該第1左後舵板後部の後側に設けられた第2左後舵板で形成し、前記右舷側舵板を、船の底部に固定された右前舵板と、該右前舵板の後側に設けられた右後舵板で形成し、該右後舵板を、前部の第1右後舵板と、該第1左後舵板後部の後側に設けられた第2右後舵板で形成し、前記第1左後舵板の前部を、前記プロペラの左側に上下方向に延在する左舵軸に回転自在に固定し、前記第2左後舵板の前部を、前記第1左後舵板の後部に上下方向に延在する左フラップ軸に回転自在に固定し、側面視において、左舵軸と左フラップ軸の間に、上下方向に延在する左支軸を設け、該左支軸の上部を、船の底部に固定し、前記第2左後舵板の上部に貫通孔を有する左係合部材を設け、前記左支軸と左係合部材を左連結部材で連結し、前記第1右後舵板の前部を、前記プロペラの右側に上下方向に延在する右舵軸に回転自在に固定し、前記第2右後舵板の前部を、前記第1右後舵板の後部に上下方向に延在する右フラップ軸に回転自在に固定し、側面視において、右舵軸と右フラップ軸の間に、上下方向に延在する右支軸を設け、該右支軸の上部を、船の底部に固定し、前記第2右後舵板の上部に貫通孔を有する右係合部材を設け、前記右支軸と右係合部材を右連結部材で連結したことを特徴とする操舵装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記左舵軸の軸心視において、前記第1左後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、前記左フラップ軸の軸心視において、前記第2左後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、前記右舵軸の軸心視において、前記第1右後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、前記右フラップ軸の軸心視において、前記第2右後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転する請求項1記載の操舵装置である。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記左前舵板の前部を後部よりも前方左側に位置させ、前記右前舵板の前部を後部よりも前方右側に位置させた請求項1又は2記載の操舵装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、左側面視において、前記第2左後舵板の前後方向の長さを第1左後舵板の前後方向の長さの略半分に形成し、前記第2右後舵板の前後方向の長さを第1右後舵板の前後方向の長さの略半分に形成した請求項1~3のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記左後舵板を、前記左前舵板の後部と、前記左後舵板に固定された上下方向に延在する左舵軸で回転自在に支持し、前記右後舵板を、前記右前舵板の後部と、前記右後舵板に固定された上下方向に延在する右舵軸で回転自在に支持し、背面視において、前記左舷側舵板と右舷側舵板の下端部を、前記プロペラの旋回外周部の下端部に位置させた請求項1~4のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記左後舵板を、前記左前舵板の後側に設けられた左垂直部と、該左垂直部の下部から右下がりに延在する左傾斜部で形成し、前記右後舵板を、前記右前舵板の後側に設けられた右垂直部と、該右垂直部の下部から左下がりに延在する右傾斜部で形成し、側面視において、前記左傾斜部を左前舵板の前部から左垂直部の後部まで延在させ、前記右傾斜部を右前舵板の前部から右垂直部の後部まで延在させ、背面視において、前記左傾斜部と右傾斜部の下端部を、前記プロペラの旋回外周部の下端部に位置させた請求項1~5のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記左前舵板の右面と船尾の下部を左連結部材で連結し、前記右前舵板の左面と船尾の下部を右連結部材で連結し、背面視において、前記左連結部材を右傾斜部と平行に設け、前記右連結部材を左傾斜部と平行に設けた請求項6記載の操舵装置である。
【0013】
請求項8に係る発明は、平面視において、前記左舵軸と右舵軸を、前記プロペラの前後方向の中心線の後側に近接して設けた請求項1~7のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、平面視において、船のプロペラの両側に、左舷側舵板と右舷側舵板を設け、左舷側舵板を、船の底部に固定された左前舵板と、左前舵板の後側に設けられた左後舵板で形成し、左後舵板を、前部の第1左後舵板と、第1左後舵板後部の後側に設けられた第2左後舵板で形成し、右舷側舵板を、船の底部に固定された右前舵板と、右前舵板の後側に設けられた右後舵板で形成し、右後舵板を、前部の第1右後舵板と、第1左後舵板後部の後側に設けられた第2右後舵板で形成し、第1左後舵板の前部を、プロペラの左側に上下方向に延在する左舵軸に回転自在に固定し、第2左後舵板の前部を、第1左後舵板の後部に上下方向に延在する左フラップ軸に回転自在に固定し、側面視において、左舵軸と左フラップ軸の間に、上下方向に延在する左支軸を設け、左支軸の上部を、船の底部に固定し、第2左後舵板の上部に貫通孔を有する左係合部材を設け、左支軸と左係合部材を左連結部材で連結し、第1右後舵板の前部を、プロペラの右側に上下方向に延在する右舵軸に回転自在に固定し、第2右後舵板の前部を、第1右後舵板の後部に上下方向に延在する右フラップ軸に回転自在に固定し、側面視において、右舵軸と右フラップ軸の間に、上下方向に延在する右支軸を設け、右支軸の上部を、船の底部に固定し、第2右後舵板の上部に貫通孔を有する右係合部材を設け、右支軸と右係合部材を右連結部材で連結したので、左舷側舵板と右舷側舵板に大きなキャンバー曲線が形成されて、大きな揚力を発生することができ、また、船の旋回半径を小さくすることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて、左舵軸の軸心視において、第1左後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、左フラップ軸の軸心視において、第2左後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、右舵軸の軸心視において、第1右後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、右フラップ軸の軸心視において、第2右後舵板が、時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転するので、左舷側舵板と右舷側舵板により大きなキャンバー曲線が形成されて、より大きな揚力を発生することができ、また、船の旋回半径をより小さくすることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、左前舵板の前部を後部よりも前方左側に位置させ、右前舵板の前部を後部よりも前方右側に位置させたので、船の直進時に、左前舵板と右前舵板に揚力が発生して、船を前方に直進させる推進効率を高めることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、左側面視において、第2左後舵板の前後方向の長さを第1左後舵板の前後方向の長さの略半分に形成し、第2右後舵板の前後方向の長さを第1右後舵板の前後方向の長さの略半分に形成したので、第2左後舵板と第2右後舵板を過度の力を必要とせずに容易に回転させることができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1~4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、左後舵板を、左前舵板の後部と、左後舵板に固定された上下方向に延在する左舵軸で回転自在に支持し、右後舵板を、右前舵板の後部と、右後舵板に固定された上下方向に延在する右舵軸で回転自在に支持し、背面視において、左舷側舵板と右舷側舵板の下端部を、プロペラの旋回外周部の下端部に位置させたので、船の航行時における左舷側舵板と右舷側舵板の抵抗を抑制して船を効率良く航行させることができる。また、船の旋回性能を高めて、船の縦距、旋回圏を短くすることができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1~5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、左後舵板を、左前舵板の後側に設けられた左垂直部と、左垂直部の下部から右下がりに延在する左傾斜部で形成し、右後舵板を、右前舵板の後側に設けられた右垂直部と、右垂直部の下部から左下がりに延在する右傾斜部で形成し、側面視において、左傾斜部を左前舵板の前部から左垂直部の後部まで延在させ、右傾斜部を右前舵板の前部から右垂直部の後部まで延在させ、背面視において、左傾斜部と右傾斜部の下端部を、プロペラの旋回外周部の下端部に位置させたので、プロペラの前方からプロペラに流入する水流の流速を増速して、プロペラの効率を高めることができる。また、プロペラから流出する高速の回転流のエネルギを効率良く回収して回転流のエネルギロスを抑制することができる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、請求項6に記載の発明の効果に加えて、左前舵板の右面と船尾の下部を左連結部材で連結し、右前舵板の左面と船尾の下部を右連結部材で連結し、背面視において、左連結部材を右傾斜部と平行に設け、右連結部材を左傾斜部と平行に設けたので、プロペラの前方からプロペラに流入する水流の流速をより増速して、プロペラの効率をより高めることができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、請求項1~7のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、平面視において、左舵軸と右舵軸を、プロペラの前後方向の中心線の後側に近接して設けたので、左舵軸と右舵軸を介して回動させられる左後舵板と右後舵板がプロペラの干渉するのを防止することができる。また、プロペラに流入する高速の水流とプロペラから流出する高速の回転流を、左舷側舵板と右舷側舵板に沿って流すことができ、左舷側舵板と右舷側舵板に揚力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の操舵装置を後方右側から視た斜視図である。
【
図6】左旋回時における同操舵装置の平面図である。
【
図7】第2の操舵装置を後方右側から視た斜視図である
【
図11】操舵装置の(a)は右側面図であり、(b)は底面図である。
【
図12】操舵装置の(a)は背面図であり、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の操舵装置>
図1~3に示すように、第1の操舵装置は、プロペラ1の左側に配置される左舷側舵板2と、プロペラ1の右側に配置される右舷側舵板3を備えている。
【0024】
左舷側舵板2は、前部に位置する左前舵板10と、左前舵板10の後側に設けられた左後舵板11から形成されている。また、右舷側舵板3は、前部に位置する右前舵板20と、右前舵板20の後側に設けられた右後舵板21から形成されている。
【0025】
左前舵板10は、上下方向に延在して形成され、上部は、船尾の下部に固定されている。また、左前舵板10における後側下部には、後側上部よりも左後舵板11に向かって突出する矩形状の左凸部10Aが形成され、左凸部10Aの下部には、上下方向に延在する左支軸12が設けられている。
【0026】
左後舵板11は、上下方向に延在する左垂直部13と、背面視において、左垂直部13の下端部から右下がり傾斜に形成された左傾斜部14から形成されている。また、側面視において、略矩形状に形成された左傾斜部14の前部は、左前舵板10の前部に位置し、後部は、左垂直部13の後部に位置している。
【0027】
左垂直部13の上部には、上下方向に延在する左舵軸15が設けられ、左垂直部13における前側下部には、左凸部10Aが挿嵌される矩形状の左凹部13Aが形成されている。
【0028】
左舵軸15の上部は、操舵機室内まで延在し、左舵軸15の上部には、左舵軸15を回動させる操舵機(図示省略)が連結されている。また、左舵軸15の下部は、左凸部10Aの上部に回転自在に回転自在に固定されている。なお、操舵機としては、ロータリーベーン式操舵機、ラプソンスライド操舵機の何れも使用することができる。
【0029】
左垂直部13は、左支軸12と左舵軸15を介して、左凸部10Aに回転自在に支持され、左舵軸15の軸心視において、左支軸12と左舵軸15の軸心は一致して設けられている。これにより、左後舵板11の荷重を、左前舵板10と左舵軸15で分散して支持するので、左舵軸15の軸径が過度に太くなるのを防止することができる。
【0030】
右前舵板20は、上下方向に延在して形成され、上部は、船尾の下部に固定されている。また、右前舵板20における後側下部には、後側上部よりも右後舵板21に向かって突出する矩形状の右凸部20Aが形成され、右凸部20Aの下部には、上下方向に延在する右支軸22が設けられている。
【0031】
右後舵板21は、上下方向に延在する右垂直部23と、背面視において、右垂直部23の下端部から左下がり傾斜に形成された右傾斜部24から形成されている。また、側面視において、略矩形状に形成された右傾斜部24の前部は、右前舵板20の前部に位置し、後部は、右垂直部23の後部に位置している。
【0032】
右垂直部23の上部には、上下方向に延在する右舵軸25が設けられ、右垂直部23における前側下部には、右凸部20Aが挿嵌される矩形状の右凹部23Aが形成されている。
【0033】
右舵軸25の上部は、操舵機室内まで延在し、右舵軸25の上部には、右舵軸25を回動させる操舵機(図示省略)が連結されている。また、右舵軸25の下部は、右凸部20Aの上部に回転自在に回転自在に固定されている。なお、操舵機としては、ロータリーベーン式操舵機、ラプソンスライド操舵機の何れも使用することができる。
【0034】
右垂直部23は、右支軸22と右舵軸25を介して、右凸部20Aに回転自在に支持され、右舵軸25の軸心視において、右支軸22と右舵軸25の軸心は一致して設けられている。これにより、右後舵板21の荷重を、右前舵板20と右舵軸25で分散して支持するので、右舵軸25の軸径が過度に太くなるのを防止することができる。
【0035】
背面視において、左前舵板10と左後舵板11の左垂直部13は、プロペラ1の旋回外周部の左端部よりも左側に所定の間隔を隔てて設けられ、右前舵板20と右後舵板21の右垂直部23は、プロペラ1の旋回外周部の右端部よりも右側に所定の間隔を隔てて設けられている。これにより、左前舵板10と左後舵板11の左垂直部13の右面と、右前舵板20と右後舵板21の右垂直部23の左面のキャビテーションによる腐食を抑制することができる。
【0036】
背面視において、左後舵板11の左垂直部13の下端部と、右後舵板21の右垂直部23の下端部を、プロペラ1の中心とプロペラ1の旋回外周部の下端部の上下方向の略中心に位置させ、左後舵板11の左傾斜部14の下端部と、右後舵板21の右傾斜部24の下端部を、プロペラ1の旋回外周部の下端部に位置させるのが好ましい。
【0037】
内航船の場合には、
図2に示すように、左後舵板11の左傾斜部14の下端部と、右後舵板21の右傾斜部24の下端部を、プロペラ1の旋回外周部の下端部よりも下側に位置させるのが好ましい。これにより、船の旋回性能を高めて、船の縦距、旋回圏を短くすることができる。一方、外航船の場合には、左後舵板11の左傾斜部14の下端部と、右後舵板21の右傾斜部24の下端部を、プロペラ1の旋回外周部の下端部よりも上側に位置させるのが好まし。これにより、左後舵板11と右後舵板21の抵抗を抑制して船を効率良く航行させることができる。
【0038】
背面視において、左前舵板10に、左前舵板10の上部と船尾の下部を連結する左連結部材16を設け、右前舵板20に、右前舵板20の上部と船尾の下部を連結する右連結部材26を設けるのが好ましい。左連結部材16は、右傾斜部24と平行に形成して、プロペラ1を中心として右傾斜部24と対称な位置に設け、右連結部材26は、左傾斜部14と平行に形成して、プロペラ1を中心として左傾斜部14と対称な位置に設けられている。これにより、プロペラ1の前方からプロペラ1に流入する水流の流速を増速して、プロペラ1の効率を高めることができる。なお、側面視において、左連結部材16の前後方向の長さは左前舵板10の前後方向の長さと略同一長さに形成され、右連結部材26の前後方向の長さは右前舵板20の前後方向の長さと略同一長さに形成されている。
【0039】
図4に示すように、船の直進時において、左舷側舵板2の左右面、すなわち、左前舵板10と、左前舵板10に実質的に連続する左後舵板11の左垂直部13で形成される左右面は、流線型に形成し、右舷側舵板3の左右面、すなわち、右前舵板20と、右前舵板20に実質的に連続する右後舵板21の右垂直部23で形成される左右面は、流線型に形成するのが好ましい。これにより、船の直進時において、左舷側舵板2と右舷側舵板3の抵抗をより抑制して船を効率良く航行させることができる。
【0040】
また、
図5に示すように、左舷側舵板2の左面を略直線状に、右面をプロペラ1に向かって膨出状に形成して、右舷側舵板3の右面を略直線状に、左面をプロペラ1に向かって膨出状に形成することもできる。これにより、左舷側舵板2と右舷側舵板3の後部で発生する水流の剥離を防止して、左舷側舵板2と右舷側舵板3に揚力を発生させることができる。
【0041】
図4に示すように、左舷側舵板2は、左舷側舵板2の前部を後部よりも左側に位置させて、前後方向の仮想線に対して反時計方向に所定の迎え角θが設けられ、右舷側舵板3は、右舷側舵板3の前部を後部よりも右側に位置させて、前後方向の仮想線に対して時計方向に所定の迎え角θが設けられている。これにより、プロペラ1から流出する回転流によって、左舷側舵板2には左側前方に向かって揚力が発生し、左舷側舵板2には右側前方に向かって揚力が発生し、これらの揚力の前後方向成分によって、船を前方に航行させる推進力を発生させて、左舷側舵板2と右舷側舵板3によって回転流のエネルギを回収して運動エネルギに効率良く変換することができる。
【0042】
また、
図5に示すように、左舷側舵板2の左前舵板10と左後舵板11の左傾斜部14における左前舵板10の下側に位置する部位は、前後方向の仮想線に対して反時計方向に所定の迎え角θが設け、左後舵板11の左垂直部13と左傾斜部14における左前舵板10の下側に位置する部位は、前後方向の仮想線に沿って設け、右舷側舵板3の右前舵板20と右後舵板21の右傾斜部24における右前舵板20の下側に位置する部位は、前後方向の仮想線に対して時計方向に所定の迎え角θが設け、右後舵板21の右垂直部23と右傾斜部24における右前舵板20の下側に位置する部位は、前後方向の仮想線に沿って設けることもできる。これにより、平面視において、左舵軸15を時計方向に回転させて左傾斜部14の前部をプロペラ1に近づけた場合に、キャビテーションによって発生する左傾斜部14の前部の腐食を防止し、右舵軸25を反時計方向に回転させて右傾斜部24の前部をプロペラ1に近づけた場合に、キャビテーションによって発生する右傾斜部24の前部の腐食を防止することができる。なお、
図5は、迎え角θを15度に設定した形態を図示している。
【0043】
図5に示すように、左舵軸15は、左舷側舵板2の前端部から左舷側舵板2の前後方向の長さの30~35%の位置に設けられている。また、右舵軸25は、右舷側舵板3の前端部から右舷側舵板3の前後方向の長さの30~35%の位置に設けられている。これにより、左舵軸15と左舷側舵板2に加わる荷重の中心が近接するので、左舵軸15の回動する操舵機を小型にすることができ、右舵軸25と右舷側舵板3に加わる荷重の中心が近接するので、右舵軸25の回動する操舵機を小型にすることができる。
【0044】
前後方向において、左舵軸15は、プロペラ1の前後方向の中心線Lの後側に隣接して設けられ、左舵軸15の前部は、プロペラ1の前後方向の中心線Lを越えて前側に延出して設けられている。また、右舵軸25は、プロペラ1の前後方向の中心線Lの後側に隣接して設けられ、右舵軸25の前部は、プロペラ1の前後方向の中心線Lを越えて前側に延出して設けられている。これにより、左舵軸15によって回動される左後舵板11とプロペラ1の干渉を防止することができ、右舵軸25によって回動される右後舵板21とプロペラ1の干渉を防止することができる。また、プロペラ1に流入する高速の水流とプロペラ1から流出する高速の回転流を、左舷側舵板2と右舷側舵板3に沿って流すことができ、左舷側舵板2と右舷側舵板3に大きな揚力を発生させることができる。
【0045】
図6に示すように、船橋の操舵ハンドル(図示省略)を直進から取舵に操作すると、左舵軸15と右舵軸25が時計方向に所定の角度、例えば45度回転して、左後舵板11が左舵軸15を中心として時計方向に45度回転し、右後舵板21が右舵軸25を中心として時計方向に45度回転する。一方、操舵ハンドルを直進から面舵に操作すると、左舵軸15と右舵軸25が反時計方向に所定の角度、例えば45度回転して、左後舵板11が左舵軸15を中心として反時計方向に45度回転し、右後舵板21が右舵軸25を中心として反時計方向に45度回転する。なお、取舵時における左舵軸15と右舵軸25の回転角度と、面舵時における左舵軸15と右舵軸25の回転角度は、コントローラを介して30~60度の範囲で任意に設定することができる。なお、
図6は、内航船に使用された操舵装置で、左舵軸15と右舵軸25の回転角度を45度に設定した形態を図示している。
【0046】
<第2の操舵装置>
次に、第2の操舵装置について説明する。なお、第1の操舵装置と同一部材・部品については、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図7~9に示すように、左前舵板10は、上下方向に延在して形成され、上部は、船尾の下部に固定されている。また、左前舵板10における後側中間部には、後側上部と後側下部よりも左後舵板11に向かって突出する矩形状の左凸部10Aが形成されている。
【0048】
左後舵板11は、上下方向に延在して形成され、左後舵板11における前側中間部には、左凸部10Aが挿嵌される矩形状の左凹部11Aが形成されている。
【0049】
左後舵板11は、左支軸12と左舵軸15を介して、左凸部10Aに回転自在に支持され、左舵軸15の軸心視において、左支軸12と左舵軸15の軸心は一致して設けられている。これにより、左後舵板11の荷重を、左前舵板10と左舵軸15で分散して支持するので、左舵軸15の軸径が過度に太くなるのを防止することができる。
【0050】
右前舵板20は、上下方向に延在して形成され、上部は、船尾の下部に固定されている。また、右前舵板20における後側中間部には、後側上部と後側下部よりも右後舵板21に向かって突出する矩形状の右凸部20Aが形成されている。
【0051】
右後舵板21は、上下方向に延在して形成され、右後舵板21における前側中間部には、右凸部20Aが挿嵌される矩形状の右凹部21Aが形成されている。
【0052】
右後舵板21は、右支軸22と右舵軸25を介して、右凸部20Aに回転自在に支持され、右舵軸25の軸心視において、右支軸22と右舵軸25の軸心は一致して設けられている。これにより、右後舵板21の荷重を、右前舵板20と右舵軸25で分散して支持するので、右舵軸25の軸径が過度に太くなるのを防止することができる。
【0053】
背面視において、左前舵板10と左後舵板11は、プロペラ1の旋回外周部の左端部よりも左側に所定の間隔を隔てて設けられ、右前舵板20と右後舵板21は、プロペラ1の旋回外周部の右端部よりも右側に所定の間隔を隔てて設けられている。これにより、左前舵板10と左後舵板11の右面と、右前舵板20と右後舵板21の左面のキャビテーションによる腐食を抑制することができる。
【0054】
背面視において、左前舵板10と左後舵板11の下端部と、右前舵板20と右後舵板21の下端部を、プロペラ1の旋回外周部の下端部に位置させるのが好ましい。
【0055】
内航船の場合には、
図8に示すように、左前舵板10と左後舵板11の下端部と、右前舵板20と右後舵板21の下端部を、プロペラ1の旋回外周部の下端部よりも下側に位置させるのが好ましい。これにより、船の旋回性能を高めて、船の縦距、旋回圏を短くすることができる。一方、外航船の場合には、左前舵板10と左後舵板11の下端部と、右前舵板20と右後舵板21の下端部を、プロペラ1の旋回外周部の下端部よりも上側に位置させるのが好まし。これにより、左後舵板11と右後舵板21の抵抗を抑制して船を効率良く航行させることができる。
【0056】
<第3の操舵装置>
次に、第3の操舵装置について説明する。
図10に示すように、船のプロペラ1の左舷側には左舷側舵板2が設けられ、右舷側には右舷側舵板3が設けられている。
【0057】
左舷側舵板2は、前部に位置する左前舵板10と、左前舵板10の後側に設けられた左後舵板11から形成されている。また、左後舵板11は、第1左後舵板31の前部を形成する第1左後舵板31と第1左後舵板31の後部を形成するフラップ状の第2左後舵板32から形成されている。左前舵板10は、船の船尾におけるプロペラ1よりも左側下部に上下方向に延在して形成され、左前舵板10の上部は、船の船尾の下部に固定されている。また、側面視において、第2左後舵板32の前後方向の長さは第1左後舵板31の前後方向の長さの略半分に形成されている。
【0058】
右舷側舵板3は、前部に位置する右前舵板20と、右前舵板20の後側に設けられた右後舵板21から形成されている。また、右後舵板21は、第1右後舵板41の前部を形成する第1右後舵板41と第1右後舵板41の後部を形成するフラップ状の第2右後舵板42から形成されている。右前舵板20は、船の船尾におけるプロペラ1よりも右側下部に上下方向に延在して形成され、右前舵板20の上部は、船の船尾の下部に固定されている。また、側面視において、第2左後舵板32の前後方向の長さは第1左後舵板31の前後方向の長さの略半分に形成されている。
【0059】
第1左後舵板31の前部は、左前舵板10の後側に設けられた上下方向に延在する左舵軸15に支持され、第1左後舵板31における前側下部は、左前舵板10における後側下部に回転自在に支持された、いわゆる半つり合い舵に形成されている。これにより、第1左後舵板31を支持する左舵軸15の軸径が過度に大きくなるのを防止することができる。
【0060】
第2左後舵板32の前部は、第1左後舵板31の後部に設けられた上下方向に延在する左フラップ軸34に回転自在に支持され、第2左後舵板32における前側上部は、第1左後舵板31における後側上部に支持され、第2左後舵板32における前側下部は、第1左後舵板31における後側下部に支持された、いわゆるつり合い舵に形成されている。これにより、第2左後舵板32を支持する左フラップ軸34の軸径が過度に大きくなるのを防止することができる。
【0061】
第1左後舵板31の前後方向長さは、左前舵板10の前後方長さに対して略2.5倍の長さに形成され、第2左後舵板32の前後方向長さは、第1左後舵板31の前後方向長さと略同一の長さに形成されている。これにより、左舷側舵板2で発生する揚力が左舵軸15の略中心部に作用するので、左舵軸15を駆動する駆動力を小さくすることができる。
【0062】
第1右後舵板41の前部は、右前舵板20の後側に設けられた上下方向に延在する右舵軸25に支持され、第1右後舵板41における前側下部は、右前舵板20における後側下部に回転自在に支持された、いわゆる半つり合い舵に形成されている。これにより、第1右後舵板41を支持する右舵軸25の軸径が過度に大きくなるのを防止することができる。
【0063】
第2右後舵板42の前部は、第1右後舵板41の後部に設けられた上下方向に延在する右フラップ軸44に支持され、第2右後舵板42における前側上部は、第1右後舵板41における後側上部に支持され、第2右後舵板42における前側下部は、第1右後舵板41における後側下部に支持された、いわゆるつり合い舵に形成されている。これにより、第2右後舵板42を支持する右フラップ軸44の軸径が過度に大きくなるのを防止することができる。
【0064】
第1右後舵板41の前後方向長さは、右前舵板20の前後方長さに対して略2.5倍の長さに形成され、第2右後舵板42の前後方向長さは、第1右後舵板41の前後方向長さと略同一の長さに形成されている。これにより、右舷側舵板3で発生する揚力が右舵軸25の略中心部に作用するので、右舵軸25を駆動する駆動力を小さくすることができる。
【0065】
左舵軸15の上部は、操舵機室内に延出し、左舵軸15の上部には、左右方向に延在する左舵柄(図示省略)が固定され、左舵柄の両側部には、それぞれ、油圧で駆動されるシリンダが連結されている。これにより、船の直進時には、一対のシリンダのロッドを中間位置に移動させて、第1左後舵板31の長手方向を前後方向に沿って位置させることができる。また、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させる場合には、左側のシリンダのロッドを引出位置まで引出し、右側のシリンダのロッドを引込位置まで引込んで、左舵軸15を時計方向に回転させて、第1左後舵板31の後部を第1左後舵板31の前部よりも左側に位置させることができる。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させる場合には、左側のシリンダのロッドを引込位置まで引込み、右側のシリンダのロッドを引出位置まで引出して左舵軸15を反時計方向に回転させて、第1左後舵板31の後部を第1左後舵板31の前部よりも右側に位置させることができる。
【0066】
なお、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させた場合には、左舵軸15を時計方向に45度回転し、第1左後舵板31の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が時計方向に45度になる。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させた場合には、左舵軸15を反時計方向に45度回転し、第1左後舵板31の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が反時計方向に45度になる。
【0067】
右舵軸25の上部は、操舵機室内に延出し、右舵軸25の上部には、左右方向に延在する右舵柄(図示省略)が固定され、右舵柄の両側部には、それぞれ、油圧で駆動されるシリンダが連結されている。これにより、船の直進時には、一対のシリンダのロッドを中間位置に移動させて、第1右後舵板41の長手方向を前後方向に沿って位置させることができる。また、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させる場合には、左側のシリンダのロッドを引出位置まで引出し、右側のシリンダのロッドを引込位置まで引込んで、右舵軸25を時計方向に回転させて、第1右後舵板41の後部を第1右後舵板41の前部よりも左側に位置させることができる。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させる場合には、左側のシリンダのロッドを引込位置まで引込み、右側のシリンダのロッドを引出位置まで引出して右舵軸25を反時計方向に回転させて、第1右後舵板41の後部を第1右後舵板41の前部よりも右側に位置させることができる。
【0068】
なお、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させた場合には、右舵軸25を時計方向に45度回転し、第1右後舵板41の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が時計方向に45度になる。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させた場合には、右舵軸25を反時計方向に45度回転し、第1右後舵板41の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が反時計方向に45度になる。
【0069】
図11,12に示すように、左舵軸15の後側には、上下方向に延在する左支軸35が設けられ、左支軸35の上部は、船の船尾におけるプロペラ1よりも左側下部に固定されている。なお、側面視において、左支軸35は、左フラップ軸34よりも前側に設けられている。
【0070】
第2左後舵板32における後側上部には、前後方向に延在する貫通孔が形成された左左係合部材36が設けられている。また、左支軸35の下部と左左係合部材36は、左連結部材38によって連結されている。左連結部材38の前部は、左支軸35に対して回転自在に外嵌されるように円筒部が形成され、左連結部材38の後部は、貫通孔を前後方向に摺動できるように丸棒状に形成されている。
【0071】
側面視において、左左係合部材36の前後方向の長さは、第2左後舵板32の上部の前後方向の長さと略同一長さに形成されている。また、左左係合部材36の内部にはスライド軸受けを設け、左連結部材38の前部にはベアリングを設けるのが好ましい。これにより、第2左後舵板32の軽量化を図ることができると共に、第2左後舵板32を左フラップ軸34を中心としてスムーズに回動することができる。また、左支軸35の下部と左左係合部材36の連結が外れるのを防止することができる。
【0072】
側面視において、船の直進時での左舵軸15の中心と第2左後舵板32の後端部の長さよりも左支軸35の中心と第2左後舵板32の後端部の長さを短くしている。これにより、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させる場合には、左舵軸15を時計方向に回転させて、第1左後舵板31の後部を第1左後舵板31の前部よりも左側に位置させて、第2左後舵板32の後部を第2左後舵板32の前部よりも左側に位置させることができる。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させた場合には、左舵軸15を反時計方向に回転させて、第1左後舵板31の後部を第1左後舵板31の前部よりも右側に位置させて、第2左後舵板32の後部を第2左後舵板32の前部よりも右側に位置させることができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させた場合には、左舵軸15を時計方向に45度回転し、第1左後舵板31の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が時計方向に45度になり、第2左後舵板32の長手方向と前後方向の仮想線の交差角度が90度になる。すなわち、第2左後舵板32は、第1左後舵板31よりも時計方向に45度大きく回転する。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させた場合には、左舵軸15を反時計方向に45度回転し、第1左後舵板31の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が反時計方向に45度になり、第2左後舵板32の長手方向と前後方向の仮想線の交差角度が90度になる。すなわち、第2左後舵板32は、第1左後舵板31よりも反時計方向に45度大きく回転する。これにより、左舷側舵板2に大きなキャンバー曲線が形成されて、大きな揚力を発生することができ、また、船の旋回半径を小さくすることができる。
【0074】
右舵軸25の後側には、上下方向に延在する右支軸45が設けられ、右支軸45の上部は、船の船尾におけるプロペラ1よりも右側下部に固定されている。なお、側面視において、右支軸45は、右フラップ軸44よりも前側に設けられている。
【0075】
第2右後舵板42における後側上部には、前後方向に延在する貫通孔が形成された右右係合部材46が設けられている。また、右支軸45の下部と右右係合部材46は、右連結部材48によって連結されている。右連結部材48の前部は、右支軸45に対して回転自在に外嵌されるように円筒部が形成され、右連結部材48の後部は、貫通孔を前後方向に摺動できるように丸棒状に形成されている。
【0076】
側面視において、右右係合部材46の前後方向の長さは、第2右後舵板42の上部の前後方向の長さと略同一長さに形成されている。また、右右係合部材46の内部にはスライド軸受けを設け、右連結部材48の前部にはベアリングを設けるのが好ましい。これにより、第2右後舵板42の軽量化を図ることができると共に、第2右後舵板42を右フラップ軸44を中心としてスムーズに回動することができる。右支軸45の下部と右右係合部材46の連結が外れるのを防止することができる。
【0077】
側面視において、船の直進時での右舵軸25の中心と第2右後舵板42の後端部の長さよりも右支軸45の中心と第2右後舵板42の後端部の長さを短くしている。これにより、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させる場合には、右舵軸25を時計方向に回転させて、第1右後舵板41の後部を第1右後舵板41の前部よりも左側に位置させて、第2右後舵板42の後部を第2右後舵板42の前部よりも左側に位置させることができる。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させた場合には、右舵軸25を反時計方向に回転させて、第1右後舵板41の後部を第1右後舵板41の前部よりも右側に位置させて、第2右後舵板42の後部を第2右後舵板42の前部よりも右側に位置させることができる。
【0078】
なお、本実施形態においては、船の舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させた場合には、右舵軸25を時計方向に45度回転し、第1右後舵板41の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が時計方向に45度になり、第2右後舵板42の長手方向と前後方向の仮想線の交差角度が90度になる。すなわち、第2右後舵板42は、第1右後舵板41よりも時計方向に45度大きく回転する。一方、船の舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させた場合には、右舵軸25を反時計方向に45度回転し、第1右後舵板41の長手方向と前後方向の仮想線の鋭角側の交差角度が反時計方向に45度になり、第2右後舵板42の長手方向と前後方向の仮想線の交差角度が90度になる。すなわち、第2右後舵板42は、第1右後舵板41よりも反時計方向に45度大きく回転する。これにより、左舷側舵板2に大きなキャンバー曲線が形成されて、大きな揚力を発生することができ、また、船の旋回半径を小さくすることができる。
【0079】
本実施形態においては、左前舵板10と右前舵板20の長手方向を前後方向に沿って設けているが、左前舵板10の後部よりも前部を左側に位置させ、右前舵板20の後部よりも前部を右側に位置させることもできる。これにより、船の直進時に左前舵板10と右前舵板20からそれぞれ揚力を発生させることができる。
【0080】
本実施形態においては、第1左後舵板31は、左舵軸15軸心視において、左舵軸15を中心として時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転し、第1右後舵板41は、右舵軸25軸心視において、右舵軸25を中心として時計方向に45度回転し、反時計方向に45度回転するが、第1左後舵板31を、左舵軸15軸心視において、左舵軸15を中心として時計方向に40度回転させ、反時計方向に30度回転させ、第1右後舵板41を、右舵軸25軸心視において、右舵軸25を中心として時計方向に30度回転させ、反時計方向に40度回転させることもできる。プロペラ1から第1左後舵板31と第1右後舵板41に向かう水の流れを、第1左後舵板31と第1右後舵板41の間から後方に効率良く流すことができるので船の旋回性能をより高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、船の操舵装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 プロペラ
2 左舷側舵板
3 右舷側舵板
10 左前舵板
11 左後舵板
13 左垂直部
14 左傾斜部
15 左舵軸
16 左連結部材
20 右前舵板
21 右後舵板
23 右垂直部
24 右傾斜部
25 右舵軸
26 右連結部材
31 第1左後舵板
32 第2左後舵板
34 左フラップ軸
35 左支軸
38 左連結部材
41 第1右後舵板
42 第2右後舵板
44 右フラップ軸
45 右支軸
48 右連結部材
L 中心線