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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141392
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/02 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
H01G9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041671
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】緑川 正敏
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ESRが低く、外形が小さく、ばらつきの小さい固体電解コンデンサを高い生産性で製造できる固体電解コンデンサ用セパレータを提供することにある。
【解決手段】
非フィブリル化熱可塑性繊維及びフィブリル化繊維を含み、フィブリル化繊維がフィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維を含み、フィブリル化セルロース繊維がフィブリル化天然セルロース繊維を含み、セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が40質量%以下であり、フィブリル化アラミド繊維の含有率が10質量%以上であり、フィブリル化セルロース繊維の含有率が7質量%以上であり、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%以下であり、厚さが45μm未満であることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非フィブリル化熱可塑性繊維及びフィブリル化繊維を含む固体電解コンデンサ用セパレータであって、フィブリル化繊維がフィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維を含み、フィブリル化セルロース繊維がフィブリル化天然セルロース繊維を含み、
セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が40質量%以下であり、フィブリル化アラミド繊維の含有率が10質量%以上であり、フィブリル化セルロース繊維の含有率が7質量%以上であり、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%以下であり、厚さが45μm未満であることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項2】
セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が1質量%以上である、請求項1記載の固体電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項3】
セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が20質量%以上である、請求項1又は2記載の固体電解コンデンサ用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサ用セパレータ(以下、「固体電解コンデンサ用セパレータ」を「セパレータ」と記す場合がある)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塩溶液に代わり、導電性高分子を負極として用いた固体電解コンデンサ(固体電解キャパシタ)は、等価直列抵抗(以下、「等価直列抵抗」を「ESR」と記す場合がある)が低い特徴がある。
【0003】
スイッチング電源回路においては、近年、トランス、インダクタを小型化する目的で、スイッチング周波数の高周波化が志向されている。スイッチング電源回路においては、リプルを抑制するため、平滑コンデンサと呼ばれるコンデンサが用いられているが、前記スイッチング周波数の高周波化に伴い、充放電に伴う発熱(以下、「充放電に伴う発熱」を「リプル損失」と記す場合がある)の増大が問題になっている。外形の大きなコンデンサを用いることで、発熱量あたりの温度上昇を抑制でき、また、ESRが低いことで、発熱量そのものも抑制できる。しかし、外形の大きなコンデンサを用いた場合、トランス、インダクタを小型化したことの効果が減殺されてしまう。
【0004】
前記の通り、固体電解コンデンサはESRが低いことから、同一の外形で比較して、塩溶液を用いた従来の電解コンデンサ(以下、「塩溶液を用いた従来の電解コンデンサ」を、「液体電解コンデンサ」と記す場合がある)に比してリプル損失が小さい。反対に同一の許容リプル損失で比較すると、液体電解コンデンサと比較して、固体電解コンデンサの素子の外径が小型になる。よって、固体電解コンデンサを用いることで、液体電解コンデンサを用いる場合よりもスイッチング電源回路を小型化できる優位性がある。
【0005】
スイッチング電源回路を小型化できると言う優位性をより発揮するために、同容量、同耐圧で比較して、従来よりも小型の固体電解コンデンサが求められており、その手段の一つとして、セパレータの薄型化が志向されている。
【0006】
固体電解コンデンサ用セパレータとしては、従来、非フィブリル化有機繊維、融点又は熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子を含有した湿式不織布からなるセパレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1による固体電解コンデンサ用セパレータは、従来広く用いられてきた45μm以上の厚みにおいては、非常に良好な特性を示すが、素子の外形を小型化するために求められている45μm未満の厚みとした場合、以下のような問題が生じる。
【0007】
すなわち、固体電解コンデンサの製造工程においては、電極とセパレータを積層して捲回体を作製した後、導電性高分子の溶液若しくは分散液又は導電性高分子の前駆体である単量体(以下、「導電性高分子の溶液若しくは分散液又は導電性高分子の前駆体である単量体」を、「導電性高分子溶液等」と記す場合がある)に浸漬し、セパレータに導電性高分子の溶液又は導電性高分子の前駆体である単量体を含浸し、次いで乾燥又は単量体を重合して、セパレータ表面に導電性高分子が付着した導電路ネットワークを形成している。
【0008】
厚み45μm以上のセパレータを用いた固体電解コンデンサの場合、特許文献1のセパレータを用いた際には、適切に導電路ネットワークが形成され、低いESRを得ることができていた。ところが、厚み45μm未満のセパレータを用いた固体電解コンデンサを用いた場合、導電性高分子溶液等がセパレータ内に浸透する経路となる捲回体端面のセパレータ露出面積が小さく、特許文献1のセパレータを用いた際には、従来と同程度の浸漬時間では、捲回体内に十分に導電性高分子溶液等が行きわたらない個体が生じ易い。その結果、素子に、設計容量よりも容量の少ない個体や、ESRの高い個体が生じ易い問題がある。素子に容量の少ない個体が含まれる場合、容量が少ないことを前提とした回路定数を設定する、言い換えれば、回路上必要な容量よりも大きな設計容量を有するコンデンサを適用した回路設計をせざるを得ず、固体電解コンデンサの容量あたりの体積を小型化したことによる、回路小型化の効果を減殺してしまう。また、設計通りの容量とESRを有する個体と、設計容量よりも容量が少ない、又は設計よりもESRが高い個体とが混在する場合、すなわちコンデンサの容量やESRのばらつきが大きい場合、組み込まれた電子機器の動作に個体差が生じ、回路の動作が不安定になるおそれもある。これらの問題は、捲回体を導電性高分子溶液等に浸漬する時間を長くすることによっても解決することができるが、この場合、固体電解コンデンサの生産性が低下する問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-235293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、外形が小さく、ESRが低く、個体間のばらつきが小さい、すなわち容量が小さい個体やESRの高い個体が生じ難い固体電解コンデンサを高い生産性で製造できる固体電解コンデンサ用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題を解決するための手段は下記の通りである。
【0012】
(1)非フィブリル化熱可塑性繊維及びフィブリル化繊維を含む固体電解コンデンサ用セパレータであって、フィブリル化繊維がフィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維を含み、フィブリル化セルロース繊維がフィブリル化天然セルロース繊維を含み、セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が40質量%以下であり、フィブリル化アラミド繊維の含有率が10質量%以上であり、フィブリル化セルロース繊維の含有率が7質量%以上であり、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%以下であり、厚さが45μm未満であることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータ。
【0013】
(2)セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が1質量%以上である、(1)の固体電解コンデンサ用セパレータ。
【0014】
(3)セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が20質量%以上である、(1)又は(2)の固体電解コンデンサ用セパレータ。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固体電解コンデンサ用セパレータにより、個体間のばらつきが小さい、すなわち容量が小さい個体やESRの高い個体が生じ難い、外形が小さく、ESRの低い固体電解コンデンサを、高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のセパレータは、非フィブリル化熱可塑性繊維及びフィブリル化繊維を含む固体電解コンデンサ用セパレータであり、フィブリル化繊維がフィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維を含み、フィブリル化セルロース繊維がフィブリル化天然セルロース繊維を含み、セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が40質量%以下であり、フィブリル化アラミド繊維の含有率が10質量%以上であり、フィブリル化セルロース繊維の含有率が7質量%以上であり、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%以下であり、厚さが45μm未満であることを技術的特徴とする。この技術的特徴により、厚さが45μm未満という薄いセパレータであっても、ESRが低く、かつ個体間のばらつきが小さい固体電解コンデンサが得られると言う有利な効果が得られる。以下、この点について詳細に説明する。
【0017】
本発明のセパレータは、非フィブリル化熱可塑性繊維非フィブリル化熱可塑性繊維及びフィブリル化繊維を含み、フィブリル化繊維がフィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維を含み、フィブリル化セルロース繊維がフィブリル化天然セルロース繊維を含む。この構成のセパレータでは、耐熱性が高い、信頼性が高い等の効果が得られる。しかし、厚さが45μm未満という薄いセパレータにおいては、フィブリル化繊維の含有率が40質量%を超える場合、セパレータが緻密になり過ぎて、導電性高分子溶液等の浸透を妨げ、固体電解コンデンサ個体間のばらつきが大きくなることを見出した。なお、フィブリル化繊維の含有率が40質量%を超える場合に導電性高分子溶液等の浸透が妨げられ、ばらつきが大きくなるのは、厚さが45μm未満のセパレータに特有の作用であって、導電性高分子溶液等がセパレータ内に浸透する経路となる捲回体端面のセパレータ露出面積が大きい、厚さが45μm以上のセパレータを用いる場合には、フィブリル化繊維の含有率が40質量%を超えても、固体電解コンデンサ個体間のばらつきは実用上支障のない範囲に抑えられる。フィブリル化繊維の含有率は、より好ましくは38質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0018】
一方で、セパレータに含まれるフィブリル化繊維の含有率が低すぎる場合、適切な導電路ネットワークが形成され難いため、ESRが高くなるおそれがある。本発明のセパレータは、10質量%以上のフィブリル化アラミド繊維及び7質量%以上のフィブリル化セルロース繊維を含有するから、合計で少なくとも17質量%のフィブリル化繊維を含有する。ただし、より低いESRが得られることから、フィブリル化繊維の含有率が20質量%以上であることがより好ましい。一定量以上のフィブリル化繊維を含有することによって、低いESRが得られやすくなるのは、固体電解コンデンサに特有の作用であって、他の電気化学素子、例えば液体コンデンサ、電気二重層コンデンサ、リチウムイオン電池等の電気化学素子においては、繊維間の空隙に充填された液状の電解質が導電路となるため、セパレータの空隙率が高いことで、大量の電解質を保持できることや、曲路率が低くて導電路が最短となることが、低いESRを得るための条件であり、固体電解コンデンサ用以外のセパレータにおいては、フィブリル化繊維の含有率に、低いESRを得ると言う観点からの下限はない。
【0019】
本発明のセパレータは、フィブリル化アラミド繊維を必須の成分として含み、フィブリル化アラミド繊維の含有率は10質量%以上である。フィブリル化アラミド繊維は、その高い耐熱性により、これを用いた固体電解コンデンサが高温に暴露された場合であっても劣化しにくいセパレータを得ることができる。さらに、高い水素結合性を有するアミド結合をその構造内に有することから、他の耐熱繊維と比較して、導電性高分子溶液等のセパレータ内への浸透を阻害し難い優位性がある。しかし、フィブリル化アラミド繊維の含有率が10質量%未満の場合には、耐熱性が高い、信頼性が高い等の前記効果を十分に得られない。フィブリル化アラミド繊維は、アラミド繊維を、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等のフィブリル化装置によって処理することで得られる。フィブリル化アラミド繊維の含有率は、より好ましくは13質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上である。また、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0020】
本発明のセパレータは、フィブリル化セルロース繊維の含有率が7質量%以上である。親水性の高いフィブリル化セルロース繊維を7質量%以上含有することで、本発明のセパレータは、厚さが45μm未満と薄いにもかかわらず、導電性高分子溶液等の浸透性が高いことから、ESRが低く、個体間の容量ばらつきの小さい固体電解コンデンサを高い生産性で製造することができる。フィブリル化セルロース繊維の含有率は、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。また、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0021】
本発明のセパレータは、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%以下である。フィブリル化天然セルロース繊維は、強い水素結合性を有しており、フィブリル化のために行われる機械的処理、化学的処理により、その表面に活性の高い官能基を生じる。そのため、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%を超えるセパレータは、固体電解コンデンサの組立工程中で行われる熱処理において、導電性高分子やその前駆体と反応してガスを発生し、捲回体内に気泡を生じてESRが上昇したり、容量が低下したりする等の問題を生じる。
【0022】
一方で、本発明のセパレータでは、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が、5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。この含有率では、前記の問題は生じず、むしろセパレータの強度が向上する等の好ましい効果が得られる。本発明のセパレータにおいて、フィブリル化天然セルロース繊維を含むことの効果を得るための含有率は、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。
【0023】
本発明のセパレータにおいて、フィブリル化天然セルロース繊維以外のフィブリル化セルロース繊維(以下、「フィブリル化天然セルロース繊維以外のフィブリル化セルロース繊維」を「フィブリル化非天然セルロース繊維」と記す場合がある)としては、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維が好ましい。溶剤紡糸セルロース繊維とは、天然セルロースを、N-メチルモルホリンオキシド等の有機溶剤に溶解後、ノズルから水中に押し出す等の方法で製造した再生繊維である。溶剤紡糸セルロース繊維は、各種のリファイナー等を用いて比較的容易にフィブリル化できると同時に、フィブリル化に際し表面に活性の高い官能基を生じ難い特徴がある。溶剤紡糸セルロース繊維としては、レンチングアクチエンゲゼルシャフトの製造するテンセル(登録商標)が例示される。
【0024】
本発明のセパレータにおいて、必須成分として含まれる非フィブリル化熱可塑性繊維は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、これらの誘導体などの樹脂からなる繊維が挙げられ、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。また、本発明の不織布に含まれる非フィブリル化熱可塑性繊維は、1種でも良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。複合繊維は、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。
【0025】
本発明のセパレータが非フィブリル化熱可塑性繊維を含むことで、熱処理により繊維の交点を接着することが可能になり、機械的強度の高いセパレータを得ることができる。また、本発明のセパレータが非フィブリル化繊維を含むことで、セパレータの緻密性が過剰にならず、導電性高分子溶液等の浸透性を低くしない効果も有する。繊維の交点を接着するために必要な熱量を少なくし、高速な熱処理を可能にする観点から、本発明のセパレータは、少なくともその外周部の融点又は軟化点が200℃以下の熱可塑性繊維を含むことが好ましい。又は、接着可能な繊維の交点数を多くする観点から、本発明のセパレータに用いる非フィブリル化熱可塑性繊維の直径は、13μm以下であることが好ましい。さらに、セパレータの緻密性を過剰にしない観点から、本発明のセパレータに用いる非フィブリル化熱可塑性繊維の直径は、2μm以上であることが好ましい。また、本発明において、非フィブリル化熱可塑性繊維の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。また、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは78質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以下である。非フィブリル化熱可塑性繊維の含有率が50質量%未満である場合、セパレータの機械的強度が不十分となる場合があり、80質量%超である場合、ESRが高くなるおそれがある。
【0026】
非フィブリル化熱可塑性繊維の繊維長としては、1mm以上10mm以下が好ましく、1mm以上6mm以下がより好ましい。繊維長が10mmを超えた場合、地合不良となることがある。一方、繊維長が1mm未満の場合には、不織布の機械的強度が弱くなる場合がある。
【0027】
本発明のセパレータは、セパレータに含まれる繊維と、必要に応じ、抄造助剤を水中に分散して繊維スラリーを調成し、円網抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機、長網抄紙機等の抄紙機を用いて抄造して製造される。
【0028】
本発明のセパレータは、非フィブリル化熱可塑性繊維、フィブリル化アラミド繊維、フィブリル化セルロース繊維以外の繊維を含有しても良い。例えば、フィブリル化アラミド繊維以外のフィブリル化合成繊維、非フィブリル化セルロース繊維が挙げられる。
【0029】
本発明において、セパレータの厚さは、45μm未満であり、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは35μm以下である。セパレータの厚さが45μm未満であることによって、外形の小さい固体電解コンデンサを製造することができる。なお、機械的強度の観点から、セパレータの厚さは、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは25μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上である。
【0030】
本発明において、セパレータの坪量は、好ましくは8g/m以上であり、より好ましくは9g/m以上であり、さらに好ましくは10g/m以上である。また、好ましくは25g/m以下であり、より好ましくは20g/m以下であり、さらに好ましくは18g/m以下である。坪量が25g/mを超えると、セパレータが高密度となり過ぎて、ESRが高くなるおそれがあり、坪量が8g/m未満であると、十分な強度を得ることが難しい場合がある。
【実施例0031】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0032】
[非フィブリル化熱可塑性繊維:ポリエステル主体繊維]
ポリエチレンテレフタレート(融点:255℃)からなる、繊維径5.0μm、繊維長3mmの延伸ポリエステル繊維をポリエステル主体繊維とした。
【0033】
[非フィブリル化熱可塑性繊維:ポリエステルバインダー繊維]
芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:255℃)、鞘部が非晶性の共重合体ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体、軟化点:70℃)であり、繊維径9.7μm、繊維長5mm、芯部/鞘部の体積比が50/50の芯鞘型ポリエステル複合繊維を、ポリエステルバインダー繊維とした。
【0034】
[フィブリル化アラミド繊維]
パラアラミド繊維の水中分散物をダブルディスクリファイナーで処理して得られた、JIS P8121-2:2012により測定したカナダ標準濾水度が90mLのフィブリル化アラミド繊維を用いた。
【0035】
[フィブリル化非天然セルロース繊維:フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維]
非フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の2質量%水分散スラリーをダブルディスクリファイナーで処理して得られた、変法濾水度100mLのフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を用いた。なお、「変法濾水度」とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1質量%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠して測定した値である。
【0036】
本発明におけるフィブリル化セルロース繊維の濾水度測定にあたり、JIS P8121-2:2012に記載の方法(カナダ標準濾水度)に代え、前記変法濾水度を用いる理由は以下の通りである。高度にフィブリル化されたフィブリル化セルロース繊維の濾水度を、JIS P8121-2:2012に規定される試料濃度0.3質量%で測定した場合、試料の流動性が低く、再現性良く濾水度を測定することが極めて困難であるため、試料濃度を0.1質量%にする。また、繊維長の短いフィブリル化セルロース繊維の濾水度を、JIS P8121-2:2012に規定されるふるい板で測定した場合、大量の繊維がふるい板を通じて流出してしまい、繊維の脱水され易さ、及びそこから推定される繊維ネットワークの緻密度を評価するという本来の意義で濾水度を測定することが不可能であるため、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用いる。
【0037】
[フィブリル化天然セルロース繊維]
晒しクラフト広葉樹パルプをダブルディスクリファイナーで処理して得られた、前記変法濾水度10mLのフィブリル化天然セルロース繊維を用いた。
【0038】
[セパレータの製造]
表1に示す比率で各繊維を配合した濃度0.1質量%の繊維スラリーを、円網抄紙機を用いて抄造し、実施例1~7及び比較例1~4のセパレータを製造した。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例及び比較例のセパレータについて、下記物性の測定と評価を行い、結果を表2に示す。
【0041】
<セパレータの坪量>
JIS P8124:2011に準拠して、セパレータの坪量を測定した。
【0042】
<セパレータの厚さ>
JIS B7502:2016に規定された外側マイクロメーターを用いて、5N荷重時の厚さを測定した。
【0043】
<セパレータの強度>
卓上型材料試験機(株式会社オリエンテック製、商品名STA-1150)を用いて、JIS P8113:2006に準じて、試験片幅50mm、つかみ間隔100mm、伸張速度100mm/minでセパレータのMD(流れ方向)の引張強度を測定し、以下の指標で評価した。
【0044】
A:500N/m以上。
B:400N/m以上、500N/m未満。
C:400N/m未満。
【0045】
<セパレータの耐熱性>
セパレータを100mm幅×100mm長さに切り取り、200℃の恒温乾燥機に60分静置し、長さ方向及び幅方向の収縮率を測定し、以下の指標で評価した。
【0046】
A:長さ方向及び幅方向の収縮率の平均値が0.5%未満。
B:長さ方向及び幅方向の収縮率の平均値が0.5%以上、0.8%未満。
C:長さ方向及び幅方向の収縮率の平均値が0.8%以上。
【0047】
[固体電解コンデンサ(A)の作製]
エッチング処理及び酸化皮膜形成処理を行った陽極箔と陰極箔とが接触しないように各実施例又は比較例のセパレータを介在させて捲回し、捲回体を作製した。作製した捲回体を、再化成処理後、乾燥した。次いで、捲回体をポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸及び多価アルコール系添加剤を含む導電性高分子水分散液に1分間浸漬後、加熱・乾燥した。次に、捲回体を所定のケースに収納し、開口部を封口後、エージングを行い、定格電圧25V、定格静電容量330μFの固体電解コンデンサ素子(A)を、各セパレータにつき10個ずつ作製した。
【0048】
[固体電解コンデンサ(B)の作製]
一部の実施例、比較例のセパレータについては、捲回体をポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸及び多価アルコール系添加剤を含む導電性高分子水分散液に浸漬する時間を5分間にした以外は、固体電解コンデンサ(A)と同様にして、固体電解コンデンサ(B)を作製した。
【0049】
[ESRの測定]
上記方法で作製した固体電解コンデンサのESR(等価直列抵抗)を、温度20℃、周波数100kHzの条件にてLCRメーターで測定し、10個の平均値をもってESRとした。ESRは、以下の基準で区分した。値が小さい程、通電時の損失が小さく良好である。
【0050】
A:15mΩ未満。
B:15mΩ以上17mΩ未満。
C:17mΩ以上。
【0051】
[ESRばらつきの評価]
ESRが最大のもののESRと、うちESRが最小のもののESRとの差を求め、以下の基準で区分した。ESRの差が小さい程、ESRのばらつきが小さく、良好である。
【0052】
A:3mΩ未満。
B:5mΩ以上7mΩ未満。
C:7mΩ以上。
【0053】
[容量ばらつきの評価]
固体電解コンデンサ(A)及び固体電解コンデンサ(B)の容量を10個測定し、うち容量が最大のものの容量と、うち容量が最小のものの容量との差を求め、以下の基準で区分した。容量の差が小さい程、容量ばらつきが小さく、良好である。
【0054】
A:容量の差が33μF未満。
B:容量の差が33μF以上66μF未満。
C:容量の差が66μF以上。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1~7の固体電解コンデンサ用セパレータは、非フィブリル化熱可塑性繊維及びフィブリル化繊維を含む固体電解コンデンサ用セパレータであり、フィブリル化繊維がフィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維を含み、フィブリル化セルロース繊維がフィブリル化天然セルロース繊維を含み、セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が40質量%以下であり、フィブリル化アラミド繊維の含有率が10質量%以上であり、フィブリル化セルロース繊維の含有率が7質量%以上であり、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%以下であり、厚さが45μm未満であるため、引張強度が高く、耐熱性に優れていた。また、捲回体を導電性ポリマー分散液に浸漬する時間が短くてもESRが低く、容量やESRのばらつきも小さく、コンデンサの生産性に優れていた。
【0057】
セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化アラミド繊維の含有率が10質量%未満である比較例2のセパレータは、耐熱性に劣っていた。
【0058】
セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化繊維の含有率が40質量%を超える比較例1のセパレータは、ESRばらつき、容量ばらつきが大きかった。
【0059】
セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化セルロース繊維の含有率が7質量%未満である比較例3のセパレータは、ESRが高く、ESRばらつき、容量ばらつきが大きかった。
【0060】
セパレータに含まれる繊維全体に対し、フィブリル化天然セルロース繊維の含有率が5質量%を超える比較例4のセパレータは、ESRが高く、容量ばらつきが大きかった。これは、天然セルロース繊維のフィブリル化処理時に繊維表面に生成した活性反応基が、導電性高分子と反応してガスを発生することで、コンデンサ素子捲回体内部に導電性高分子が存在しない空隙が形成されたためと推定される。
【0061】
なお、固体電解コンデンサ(B)のESRばらつき、容量ばらつきの評価結果が示すように、捲回体を導電性ポリマー分散液に浸漬する時間を長くすることで、従来のセパレータによってもESRばらつきや容量ばらつきが小さいコンデンサを得ることはできるが、捲回体を導電性ポリマー分散液に浸漬する時間を長くした場合、コンデンサの生産性が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の固体電解コンデンサ用セパレータは、固体電解コンデンサのセパレータとして好適に使用できる。