(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141400
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】FI測定ユニット、FI測定プログラム、FI測定プログラムを記録した記録媒体、FI情報システム、及び、FIデータベースの構築方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220921BHJP
B01D 61/10 20060101ALI20220921BHJP
B01D 65/10 20060101ALI20220921BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20220921BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20220921BHJP
B01D 61/32 20060101ALI20220921BHJP
B01D 61/30 20060101ALI20220921BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20220921BHJP
A61M 1/16 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
C02F1/44 Z
B01D61/10
B01D65/10
C02F1/00 Z
B01D61/12
B01D61/32
B01D61/30
G01N33/18 A
A61M1/16 161
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041682
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】594152620
【氏名又は名称】ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 哲也
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD14
4C077HH05
4C077HH20
4C077JJ04
4C077JJ16
4C077KK11
4C077KK13
4D006GA03
4D006GA06
4D006JA53Z
4D006JA63Z
4D006JA70Z
4D006JA71
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KD11
4D006KD12
4D006KD14
4D006LA06
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】FI値の測定を行う際の作業負担を軽減すると共に、測定装置の小型化及び軽量化を図るための、また、水質管理を行う上で、FI値をより有効に活用できるようにするための、FI測定ユニット、FI情報システム、FI測定プログラム等を提供する。
【解決手段】FI測定ユニット1は、加圧された水が流通する流通路R1を備える水処理装置100の流通路に分岐するように接続される採水路R2と、測定者により交換可能に採水路の途中に配置されるフィルタ2と、フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を計測する計時部と、計時部が計測した濾過時間をT1、T1の計測後の一定時間Tの経過後に計時部が計測した濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算するFI演算部と、演算結果を出力するFI出力部とを備える。
[式1]FI=PF/T
[式2]PF=100×(1-T1/T2)
但し、PFは詰まり係数とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された水が流通する流通路を備える水処理装置の前記流通路に分岐するように接続される採水路と、
測定者により交換可能に前記採水路の途中に配置され、前記採水路を流通する水を濾過するフィルタと、
前記フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する計時部と、
前記計時部が計測した前記濾過時間をT1、前記T1の計測後の一定時間Tの経過後に前記計時部が計測した前記濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算するFI演算部と、
前記FI演算部の演算結果であるFI値を出力するFI出力部と、を備える、FI測定ユニット。
[式1]
FI=PF/T
[式2]
PF=100×(1-T1/T2)
但し、PFは詰まり係数とする。
【請求項2】
前記水処理装置が、逆浸透膜を有する濾過部を備える、請求項1に記載のFI測定ユニット。
【請求項3】
前記流通路を流通する水が、透析用水の原料水である、請求項1又は2に記載のFI測定ユニット。
【請求項4】
前記フィルタの濾過水を貯留する計量容器と、
前記計時部に接続され、前記計量容器の水量が前記目標水量に達したことを検出する水量検出センサと、を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のFI測定ユニット。
【請求項5】
前記採水路の途中に配置されて前記フィルタへの給水量を調節する供給バルブと、
前記計量容器からの排水量を調節する排出バルブと、
前記供給バルブと前記排出バルブとを個別制御するバルブ制御部と、を備える、請求項4に記載のFI測定ユニット。
【請求項6】
前記FI出力部は、前記水処理装置に関する所定情報を出力する情報出力部を兼ねている、請求項1~5のいずれか1項に記載のFI測定ユニット。
【請求項7】
少なくとも1つの情報端末と相互通信する通信部を備え、
前記通信部は、前記計時部の計測結果、及び、前記FI演算部の前記演算結果のうちの少なくともいずれかを前記情報端末に向けて送信する、請求項1~6のいずれか1項に記載のFI測定ユニット。
【請求項8】
少なくとも1つの情報端末と相互通信する通信部を備え、
前記通信部は、前記計時部の計測、及び、前記FI演算部の演算のうちの少なくともいずれかを実行させる実行指令を前記情報端末から受信する、請求項1~7のいずれか1項に記載のFI測定ユニット。
【請求項9】
前記通信部は、前記FI出力部により出力される前記FI値と、前記計時部の計測に関連する情報とを含むFI関連情報を、前記情報端末に向けて送信する、請求項7又は8に記載のFI測定ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の前記通信部により送信される前記FI関連情報を受信するFI関連情報受信部と、
前記FI関連情報受信部が受信した複数の前記FI関連情報を蓄積して記録するFI関連情報記憶部と、
前記FI関連情報記憶部に記録された複数の前記FI関連情報の各々に含まれる複数の情報を、ユーザの求めにより選出して出力するFI情報出力部と、を備える、FI情報システム。
【請求項11】
加圧された水が流通する流通路を備える水処理装置を制御する制御プログラムを更新して前記制御プログラムにFI測定機能を付加するFI測定プログラムであって、
前記水処理装置に備えられて前記水処理装置の少なくとも一部の機能を制御する水処理制御器に読み込まれ、
前記流通路に分岐するように採水路が接続され、前記採水路の途中に前記採水路を流通する水を濾過するように、測定者により交換可能にフィルタが配置された状態において、前記フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する計測ステップと、
前記計測ステップにおいて、計測した前記濾過時間をT1、前記T1の計測後の一定時間Tの経過後に計測した前記濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算する演算ステップと、
前記演算ステップの演算結果であるFI値を出力する出力ステップと、を前記水処理制御器に実行させる、FI測定プログラム。
[式1]
FI=PF/T
[式2]
PF=100×(1-T1/T2)
但し、PFは詰まり係数とする。
【請求項12】
請求項11に記載する前記FI測定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項13】
加圧された水が流通する流通路に分岐するように採水路が接続され、測定者により交換可能に、前記採水路の途中に前記採水路を流通する水を濾過するようにフィルタが配置された状態において、前記フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する計測処理と、計測した前記濾過時間をT1、前記T1の計測後の一定時間Tの経過後に計測した前記濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算する演算処理と、を、同一の又は異なる前記流通路を流通する水に対して行うことにより得られた複数の前記FI値と、前記計測に関連する情報とを含む複数のFI関連情報を、蓄積して記録する、FIデータベースの構築方法。
【請求項14】
前記異なる流通路は、水源が異なる水が流通する流通路、及び、異なる水処理装置が備える流通路のうちの少なくともいずれかを含む、請求項13に記載のFIデータベースの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水質管理を行う手法の一つであるFI測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水質管理を行う手法として、FI(Fouling Index)測定方法が知られている。FIは、水中の懸濁物質量を間接的に表す指標であり、例えばJIS K3802:2015に定義される。FI測定方法は、特許文献1に開示されるSDI(Silt Density Index)測定方法に相当する。FIによれば、例えば、逆浸透膜により濾過しようとする水が逆浸透膜に生じさせる汚れの程度や、当該水により付着する逆浸透膜の汚れの傾向等を検討できる。FIは、人工透析の透析用水の製造に用いられる原水の水質管理等において有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
FI値を測定する場合、専用の測定装置を用い、加圧された測定対象水を所定時間をおいて複数回フィルタで濾過し、各濾過時間を計測する必要がある。このため、FI値を測定するためには相当の手間及び時間が要求される。また、測定対象水を加圧してフィルタで濾過する必要がある。この加圧を行うためのポンプやコンプレッサを備えることで、測定装置が大型化及び複雑化する。またFIは、水質管理を行う上で高い有用性を有しているものの、現在のところ積極的に活用されているとは言い難い状況にある。
【0005】
そこで本開示は、FI値の測定を行う際の作業負担を軽減すると共に、FI値を測定する測定装置の小型及び軽量化を図れるようにすることを目的とする。また、水質管理を行う上で、FI値をより有効に活用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るFI測定ユニットは、加圧された水が流通する流通路を備える水処理装置の前記流通路に分岐するように接続される採水路と、測定者により交換可能に前記採水路の途中に配置され、前記採水路を流通する水を濾過するフィルタと、前記フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する計時部と、前記計時部が計測した前記濾過時間をT1、前記T1の計測後の一定時間Tの経過後に前記計時部が計測した前記濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算するFI演算部と、前記FI演算部の演算結果であるFI値を出力するFI出力部と、を備える。
[式1]
FI=PF/T
[式2]
PF=100×(1-T1/T2)
但し、PFは詰まり係数とする。
【0007】
上記構成によれば、フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を計時部が計測し、式1と式2とに基づいて、FI演算部がFI値を演算する。また、FI出力部がFI値を出力する。またフィルタは、測定者により交換可能に採水路の途中に配置される。このため測定者は、主にフィルタの配置のみの作業負担で、FI値を得ることができる。よって、FI測定を行う際の測定者の作業負担を軽減できる。
【0008】
また、このFI測定ユニットによれば、加圧された水が流通する流通路を備える水処理装置に対し、流通路に分岐するように採水路が接続される。このため、水を加圧して採水路に流通させるためのポンプやコンプレッサ等の装置が不要である。よって、FI測定ユニットを小型化及び軽量化できる。また、FI測定ユニットを低コストで実現できる。
【0009】
前記水処理装置が、逆浸透膜を有する濾過部を備えていてもよい。これにより、上記FI測定ユニット1を用いることで、少ない作業負担で、逆浸透膜の良好な濾過性能を維持できるように水質管理を行える。
【0010】
前記流通路を流通する水が、透析用水の原料水であってもよい。これにより、透析用水を用いる水処理装置の既存設備を利用して、FI測定ユニットの小型化及び軽量化を図れる。また、透析用水の原料水の水質を管理できる。よって、適切な透析治療を行える。
【0011】
前記フィルタの濾過水を貯留する計量容器と、前記計時部に接続され、前記計量容器の水量が前記目標水量に達したことを検出する水量検出センサと、を備えていてもよい。このように、FI測定ユニットが計量容器及び水量検出センサを備えることで、FI値の測定に伴う作業負担を軽減しながら、手動で水量を調節してFI値を測定する場合に比べ、正確なFI値が得られる。
【0012】
前記採水路の途中に配置されて前記フィルタへの給水量を調節する供給バルブと、前記計量容器からの排水量を調節する排出バルブと、前記供給バルブと前記排出バルブとを個別制御するバルブ制御部と、を備えていてもよい。これにより、供給バルブ及び排出バルブをバルブ制御部により自動で制御できる。よって、FI値の測定に伴う作業負担を更に軽減できる。
【0013】
前記FI出力部は、前記水処理装置に関する所定情報を出力する情報出力部を兼ねていてもよい。これにより、例えば、水処理装置に備えられた既存の情報出力部を利用してFI出力部を構成できる。よって、FI測定ユニットの構成を更に簡素化できる。
【0014】
少なくとも1つの情報端末と相互通信する通信部を備え、前記通信部は、前記計時部の計測結果、及び、前記FI演算部の前記演算結果のうちの少なくともいずれかを前記情報端末に向けて送信してもよい。これにより、FI測定に伴う測定者の作業負担を軽減しつつ、情報端末のユーザは、FI値の測定現場にいなくても、計時部の計測結果、及び、FI演算部の演算結果の少なくともいずれかを知ることができる。
【0015】
少なくとも1つの情報端末と相互通信する通信部を備え、前記通信部は、前記計時部の計測及び前記FI演算部の演算のうちの少なくともいずれかを実行させる実行指令を前記情報端末から受信してもよい。これにより測定者は、FI値の測定現場にいなくても、FI測定ユニットに対し、遠隔でFI測定の実行指示を行える。よって、FI値の測定に伴う作業負担を更に一層軽減できる。
【0016】
前記通信部は、前記FI出力部により出力される前記FI値と、前記計時部の計測に関連する情報とを含むFI関連情報を、前記情報端末に向けて送信してもよい。これにより、情報端末のユーザは、小型化及び軽量化されてFI測定に伴う作業負担が軽減されたFI測定ユニットにより得られるFI関連情報を参照し、FI値の測定条件を含む広範囲な視点からFI値を検討できる。
【0017】
本開示の一態様に係るFI情報システムは、上記した前記通信部により送信される前記FI関連情報を受信するFI関連情報受信部と、前記FI関連情報受信部が受信した複数の前記FI関連情報を蓄積して記録するFI関連情報記憶部と、前記FI関連情報記憶部に記録された複数の前記FI関連情報の各々に含まれる複数の情報を、ユーザの求めにより選出して出力するFI情報出力部と、を備える。
【0018】
これによりユーザは、FI測定ユニットの通信部より送信され、FI関連情報記憶部に蓄積して記録された豊富なFI関連情報の各々の中から、所望の情報を選出してFI情報出力部に出力させることで、選出した情報同士を比較検討し易くできる。よってユーザは、例えば各FI関連情報間において、水質の違いや水質の変化の傾向等を把握し易くできる。
【0019】
本開示の一態様に係るFI測定プログラムは、加圧された水が流通する流通路を備える水処理装置を制御する制御プログラムを更新して前記制御プログラムにFI測定機能を付加するFI測定プログラムであって、前記水処理装置に備えられて前記水処理装置の少なくとも一部の機能を制御する水処理制御器に読み込まれ、前記流通路に分岐するように採水路が接続され、前記採水路の途中に前記採水路を流通する水を濾過するように、測定者により交換可能にフィルタが配置された状態において、前記フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する計測ステップと、前記計測ステップにおいて、計測した前記濾過時間をT1、前記T1の計測後の一定時間Tの経過後に計測した前記濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算する演算ステップと、前記演算ステップの演算結果であるFI値を出力する出力ステップと、を前記水処理制御器に実行させる。
[式1]
FI=PF/T
[式2]
PF=100×(1-T1/T2)
但し、PFは詰まり係数とする。
【0020】
また、本開示の一態様に係る記録媒体は、上記したFI測定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0021】
また、本開示の一態様に係るFIデータベースの構築方法(製造方法)は、加圧された水が流通する流通路に分岐するように採水路が接続され、測定者により交換可能に、前記採水路の途中に前記採水路を流通する水を濾過するようにフィルタが配置された状態において、前記フィルタが目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する計測処理と、計測した前記濾過時間をT1、前記T1の計測後の一定時間Tの経過後に計測した前記濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算する演算処理と、を、同一の又は異なる前記流通路を流通する水に対して行うことにより得られた複数の前記FI値と、前記計測に関連する情報とを含む複数のFI関連情報を、蓄積して記録する。
【0022】
上記方法によれば、同一の又は異なる流通路について、FI関連情報を蓄積して記録したデータベースを構築することで、同一の又は異なる流通路の水質変化の傾向や、異なる流通路を流通する水の水質の違い等を比較検討し易くできる。これにより、同一の又は異なる流通路を流通する水の水質を、FI値を含む広範囲な視点から検討して管理できる。よって、FI値をより有効に活用できる。
【0023】
前記異なる流通路は、水源が異なる水が流通する流通路、及び、異なる水処理装置が備える流通路のうちの少なくともいずれかを含んでいてもよい。これにより、例えば、異なる水源の水、又は、異なる水処理装置で用いられる水の水質変化の傾向や水質の違い等を、FIデータベースを用いて比較検討し易くできる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、FI測定を行う際の作業負担を軽減できると共に、FI測定に必要な装置の小型化及び軽量化を図れる。また本開示によれば、また、水質管理を行う上で、FI値をより有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る水処理装置の概要図である。
【
図2】
図2は、
図1のFI測定ユニットの機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の水処理装置の動作フローチャートのFI測定プログラムをインストールする前後での変化を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の水処理装置の駆動時に表示されるメニュー画面を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4のメニュー画面を操作して表示される操作画面を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の操作画面を操作して表示されるFI測定用画面を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るFI情報システムの概要図である。
【
図8】
図8は、
図8は、
図7のFI関連情報記憶部に記憶されるFI関連情報のデータ構造を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る複数のFI関連情報により構成されるFIデータベースを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、各実施形態について各図を参照しながら説明する。本明細書で言及するFI測定方法は、JIS K 3802:2015の番号1006、及び、ASTM D4189-95に記載の方法に準拠する。
(第1実施形態)
[水処理装置]
図1は、第1実施形態に係る水処理装置100の概略図である。
図2は、
図1のFI測定ユニット1の機能ブロック図である。水処理装置100は、透析液により、複数人の患者を一度に血液透析する多人数用透析システムに備えられる。水処理装置100は、後述するようにFI測定ユニット1が備えられ、水処理装置100の処理対象水の水質管理がなされている。一例として、FI測定ユニット1を除く水処理装置100の構成としては、例えばダイセン・メンブレン・システムズ(株)製透析用水作製装置(RO装置)「RC-REシステム」を例示できるが、これに限定されない。
【0027】
図1に示すように、水処理装置100は、加圧された水が流通する流通路R1を備える。また水処理装置100は、逆浸透膜(RO膜)114を有する濾過部101を備える。濾過部101は、例えば、水道水、井水、地下水、透析排水の再処理水のうちのいずれかの原水を限外濾過することにより透析用水を製造する。言い換えると、流通路R1を流通する水は、少なくとも1人の患者に供給される透析用水の原料水である。この透析用水は、透析液調整水であり、精製水である。濾過部101は、一例として血液透析用水を製造する。
【0028】
透析用水は、JSDT透析液水質基準2008に規定される10-6CFU/mL未満、及び、0.001EU/mL未満の微生物学的汚染物質濃度の水質基準を満たし、且つ、ISO 23500:2011に規定される「無菌 発熱性物質を含まない」基準を満たす清浄度を有する。ここで、「CFU/mL」は生菌数単位、「EU/mL」はエンドトキシン単位をそれぞれ示す。また透析用水は、日本透析医学会(2016年版 透析液水質基準)に記載の透析用水化学物質管理基準を満たす。
【0029】
水処理装置100は、濾過部101よりも上流側に、原水タンク102、原水ポンプP1、複数のプレフィルタPF1、PF2、軟水装置103、活性炭濾過装置104、及び、ROポンプP2が設けられている。また水処理装置100は、濾過部101よりも下流側に、RO水タンク(供給タンク)105、供給ポンプP3、及び、次段フィルタUF1、UF2が設けられている。
【0030】
水処理装置100の駆動時には、原水ポンプP1の駆動により原水タンク102内の原水が流通路R1を流通する。原水は、上流側プレフィルタPF1、軟水装置103、活性炭濾過装置104、及び、下流側プレフィルタPF2を順次通過する。これにより、原水中のエンドトキシン等の物質が除去される。その後原水は、ROポンプP2の駆動により、濾過部101に導入されて濾過される。濾過部101により濾過された水は、RO水タンク105に供給される。RO水タンク105内の水は、供給ポンプP3の駆動力により、次段フィルタUF1により濾過された後に透析用水として下流側に供給される。一部の透析用水は、次段フィルタUF2に濾過されてRO水タンク105に戻される。
【0031】
図1及び2に示すように、水処理装置100は、流通路R1の流通方向の複数個所に配置されて流通路R1を流通する水量を調節する少なくとも1つの電磁式バルブV5と、バルブV5を個別制御するPLC装置(シーケンサ)106とを備える。また水処理装置100は、PLC装置106を制御するRO制御部120と、水処理装置100に関する所定情報を記憶するRO記憶部121と、ユーザに所定情報を表示するRO出力部122と、ユーザから所定情報が入力されるRO入力部123とを備える。RO記憶部121には、水処理装置100の動作を制御するための制御プログラム(以下、単に制御プログラムと称する。)が格納される。RO記憶部121に格納された各情報は、後述する水処理制御器(CPU108)等により読み出される。RO出力部122は、水処理装置100に関する所定情報を出力する情報出力部である。また水処理装置100は、少なくとも1つの情報端末150と相互通信する通信部124を備える。通信部124は、RO制御部120と接続される。
【0032】
水処理装置100では、RO制御部120、RO記憶部121、RO出力部122、RO入力部123、及び、通信部124は、CPU108、ストレージ109、ディスプレイ110、及び、通信用アンテナ115を有するコンピュータ107により実現される。CPU108は、1又は複数のプロセッサを含む。本実施形態のコンピュータ107は、パーソナルコンピュータ(PC)であり、一例としてタブレットPCである。この場合、ディスプレイ110は、入力及び出力が可能なタッチパネルディスプレイである。コンピュータ107の形式は、これに限定されない。
【0033】
CPU108は、水処理装置100に備えられて水処理装置100の少なくとも一部の機能を制御する水処理制御器である。RO制御部120は、制御プログラムを読み込んだCPU108により実現される。RO出力部122とRO入力部123とは、ディスプレイ110により実現される。RO記憶部121は、ストレージ109により実現される。ストレージ109は、ROM、RAM、及び、HDDのうちの少なくともいずれかである1又は複数の記憶装置を含む。通信部124は、制御プログラムを読み込んだCPU108と、通信用アンテナ115とにより実現される。コンピュータ107は、有線又は無線の通信により、PLC装置106と接続される。
【0034】
また水処理装置100は、FI測定ユニット1を備える。FI測定ユニット1は、流通路R1を流通する加圧された水のFI値を測定する。この測定対象水は、濾過部101に導入される前の水である。FI測定ユニット1は、採水路R2、レギュレータPI、フィルタ2、ホルダ3、計量容器4、水量検出センサ5、複数の供給バルブV1~V3、排出バルブV4、及び、バルブ制御部6を備える。採水路R2は、流通路R1に分岐するように接続される。採水路R2は、その上流端が、ポンプP2により加圧された水が流れる流通路R1の部分に接続される。この部分での水圧は、一例として0.4Mpa以上1.0Mpa以下の範囲の値である。従って、流通路R1の前記部分に採水路R2を接続することで、FI測定のために必要な採水路R2での水圧(約0.2MPa)が得られる。
【0035】
レギュレータPIは、採水路R2の水圧を一定範囲で減圧する。フィルタ2は、採水路R2を流通する水を濾過する。フィルタ2としては、公知のものを利用できる。フィルタ2は、一例として、セルロース混合エステルタイプである。またフィルタ2は、孔径が1μm以下の範囲の値であり、直径が50mm以下の範囲の値である円盤状のメンブレンフィルタである。このようなフィルタ2としては、例えば、アドバンテック東洋(株)製「A045A047A」、メルク(株)製「HABG04700」、アズワン(株)製「047045GWS-MFMCE」、GVSジャパン(株)製「3037800」を例示できるが、これに限定されない。
【0036】
フィルタ2は、フィルタ2を脱着自在に保持するホルダ3に保持される。ホルダ3は、フィルタ2を厚み方向に挟んで保持する一対のホルダ部材30、31を有する。ホルダ部材30、31は、螺合により組み合わされる。FI測定を行う測定者(以下、単に測定者とも称する。)は、ホルダ部材30、31の螺合を解放することで、ホルダ部材30、31からフィルタ2を外し、フィルタ2を容易に交換できる。このようにフィルタ2は、測定者により交換可能に採水路R2の途中に配置される。
【0037】
計量容器4は、フィルタ2の濾過水を貯留する。計量容器4は、上下方向に延びている。計量容器4は、上端側に供給口を有し、下端側に排出口を有する。計量容器4の供給口付近には、水量検出センサ5が配置される。水量検出センサ5は、計量容器4の水量が目標水量(一例として500mL)に達したことを検出する。水量検出センサ5は、後述する計時部130に接続される。
【0038】
水量検出センサ5としては、例えば公知のフロート式レベルセンサを利用できる。水量検出センサ5の市販品としては、例えば、測定対象水が水道水と同等の電気伝導度を有する場合、オムロン(株)製「61F-GN」が好適である。また例えば、測定対象水が純水に近い程度に低い電気伝導度を有する場合、オムロン(株)製「61F-HSL」が好適である。測定対象水がある程度の電気伝導度を有する場合、電極式レベルセンサを水量検出センサ5として用いてもよい。また計量容器4の排出口には、排出路R4が接続される。
【0039】
供給バルブV1~V3は、採水路R2の途中に配置されてフィルタ2への給水量を調節する。供給バルブV1は、採水路R2の上流端とレギュレータPIとの間に配置される。供給バルブV2は、採水路R2のレギュレータPIとフィルタ2との間に配置された空気抜き流路R3の途中に配置される。供給バルブV3は、採水路R2のフィルタ2の直前に配置される。排出バルブV4は、計量容器4からの排水量を調節する。排出バルブV4は、排出路R4の途中に配置される。
【0040】
バルブV1~V4は、一例として電磁式である。バルブ制御部6は、供給バルブV1~V3と排出バルブV4とを個別制御する。本実施形態のバルブ制御部6は、PLC装置106により実現される。即ち、PLC装置106は、バルブ制御部6を兼ねている。このように、FI測定ユニット1がバルブ制御部6を備えることでバルブV1~V4の開閉動作は、バルブ制御部6により自動で行われる。
【0041】
またFI測定ユニット1は、計時部130、FI演算部131、FI出力部132、FI記憶部133、FI入力部134、及び、通信部135を備える。計時部130は、フィルタ2が目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する。FI演算部131は、公知の方法でFI値を演算する。即ちFI演算部131は、計時部130が計測した濾過時間をT1、T1の計測後の一定時間Tの経過後に計時部130が計測した濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算する。
[式1]
FI=PF/T
[式2]
PF=100×(1-T1/T2)
但し、PFは詰まり係数(指数)とする。
【0042】
FI出力部132は、FI演算部131の演算結果であるFI値を出力する。FI記憶部133は、FI測定に関する所定情報を記憶する。この所定情報は、FI測定のための各種設定条件と、FI演算部131の演算結果とを含む。FI入力部134は、測定者から所定情報が入力される。通信部135は、少なくとも1つの情報端末150と相互通信する。通信部135は、計時部130の計測結果、及び、FI演算部131の演算結果のうちの少なくともいずれかを情報端末150に向けて送信する。また通信部135は、計時部130の計測、及び、FI演算部131の演算のうちの少なくともいずれかを実行させる実行指令を情報端末150から受信する。即ち、FI測定ユニット1は、外部から情報端末150により遠隔操作が可能である。
【0043】
本実施形態では、計時部130、FI演算部131、FI出力部132、FI記憶部133、FI入力部134、及び、通信部135は、コンピュータ107により実現される。計時部130とFI演算部131とは、後述するFI制御プログラムにより更新された制御プログラムを読み込んだCPU108により実現される。FI記憶部133は、ストレージ109により実現される。FI出力部132とFI入力部134とは、ディスプレイ110により実現される。通信部135は、前記更新された制御プログラムを読み込んだCPU108と、通信用アンテナ115とにより実現される。即ち本実施形態では、計時部130、FI演算部131、FI出力部132、FI記憶部133、FI入力部134、及び、通信部135を実現するための専用のコンピュータを別途用意しなくてもよい。
【0044】
[FI測定プログラム]
FI測定ユニット1によりFI測定を行う場合、予め制御プログラムがFI測定プログラムにより更新されている必要がある。FI測定プログラムは、水処理装置100を制御する制御プログラムを更新して制御プログラムにFI測定機能を付加する更新プログラムである。一例として、FI測定プログラムは、制御プログラムの差分プログラムとして構成される。FI測定プログラムは、有線又は無線による通信、或いは、フラッシュメモリ等の既存のコンピュータ読み取り可能な記録媒体M(
図1参照)を介して、コンピュータ107にインストールされ、所定のタイミングでCPU108に読み込まれる。このインストールは、FI測定ユニット1の機能を用いる前に一度行えばよい。制御プログラムの書換対象部分は、CPU108により書き換えられる。これにより、制御プログラムがFI測定プログラムにより部分的に更新される。
【0045】
図3は、
図1の水処理装置100の動作フローチャートのFI測定プログラムをインストールする前後での変化を示す図である。
図3の左側に、FI測定プログラムをインストールする前の動作フローチャートQ1が示されている。
図3の右側に、FI測定プログラムをインストールした後の動作フローチャートQ2が示されている。
【0046】
図4は、
図1の水処理装置100の駆動時に最初に表示されるメニュー画面111を示す図である。
図5は、
図4のメニュー画面111を操作して表示される操作画面112を示す図である。
図6は、
図5の操作画面112を操作して表示されるFI測定用画面113を示す図である。メニュー画面111と操作画面112とは、RO出力部122に表示される。FI測定用画面113は、FI出力部132に表示される。本実施形態の画面111~113は、いずれもディスプレイ110に表示される。
【0047】
動作フローチャートQ1に示すように、制御プログラムがFI測定プログラムにより更新されていない水処理装置100の駆動時には、操作者は、メニュー画面111に表示された操作画面選択ボタン111aを押下する。これに伴い、CPU108は、次に操作画面112を表示する。またCPU108は、水処理装置100に予め備えられた複数の機能(A1~An)のいずれかを実行指示する入力がなされたか否かを個別に判定する判定ステップ(S1~Sn)を順に実行する。
【0048】
CPU108は、操作画面112に表示される複数の機能(A1~An)についてのいずれかの選択ボタンが押下された場合、当該選択ボタンに対応する機能を実行指示する入力がなされたと判定する。CPU108は、判定ステップ(S1~Sn)のいずれかにおいて当該入力がなされた(Yes)と判定した場合、ステップ(Sn+1)において、当該入力がなされた項目の機能に関する所定のサブ画面を表示する。CPU108は、判定ステップ(S1~Sn)のいずれでも入力がなされなかった(No)と判定した場合、ステップ(Sn+2)において、電源を遮断する指示がある(Yes)と判定するまで、各ステップ(S1~Sn、Sn+2)を繰り返し実行する。
【0049】
これに対し、
図5に示すように、制御プログラムがFI測定プログラムにより更新され、制御プログラムにFI測定機能が付与されると、CPU108は、操作画面112中にFI値測定機能についての選択ボタン112aを表示する。また動作フローチャートQ2に示すように、FI測定機能(An+1)を実行指示する入力がなされたか否かをCPU108が判定する判定ステップ(Sn+3)が、動作フローチャートQ1に追加される。
【0050】
動作フローチャートQ2によれば、ステップ(Sn+3)において、CPU108は、FI測定機能(An+1)を実行指示する入力がなされた(Yes)と判定した場合、ステップ(Sn+1)において、FI測定用画面113を表示させる。一例として、FI測定用画面113には、空気抜き工程の操作開始ボタン113a、FI測定の待機を開始する測定待機ボタン113b、FI測定を停止する測定停止ボタン113c、及び、画面を操作画面112に戻す戻りボタン113dが表示される。またFI測定用画面113には、濾過時間T1、T2、及び、FI値が表示される。またFI測定用画面113には、操作画面112に表示されたFI値をリセットするリセットボタン113eが表示される。これにより測定者は、FI測定用画面113中に表示される情報に従って各入力項目を入力することで、FI測定を含む各種操作を行える。
【0051】
[FI測定時について]
次にFI測定について説明する。選択ボタン112aが押下され、ステップ(Sn+3)において、FI測定機能(An+1)を実行指示する入力がなされた(Yes)とCPU108が判定した場合、以後のCPU108は、計時部130及びFI演算部131としても機能し、ディスプレイ110は、FI出力部132としても機能する。測定者は、フィルタ2を手動で交換した後、所望のタイミングで操作開始ボタン113aを押下する。これにより、計時部130は、供給バルブV1、V2と排出バルブV4とを解放するようにバルブ制御部6を制御する。供給バルブV1、V2が解放されることで、採水路R2は、空気が抜かれて水が満たされる。またバルブV4が解放されることで、計量容器4内の不要な水が排出される。測定者は、所定時間経過後に空気抜き工程を終了させる。
【0052】
次に測定者は、測定待機ボタン113bを押下する。これに伴い、FI測定が開始される。計時部130は、バルブV1、V3を解放し、バルブV2、V4を閉塞するように、バルブ制御部6を制御する。この状態で、計時部130は、フィルタ2で濾過した水を計量容器4に貯留し、水量検出センサ5から出力される検出信号を受信するまで濾過時間T1を計測する。一例として、計時部130は、PLC装置106等に備えられたタイマーを利用して濾過時間T1を計測する。
【0053】
計時部130は、濾過時間T1を計測後、バルブV1、V3、V4を解放し、バルブV2を閉塞するように、バルブ制御部6を制御する。これにより、計量容器4内の不要な水が排出される。また計時部130は、濾過時間T1の計測開始から一定時間T(一例として15分)を経過した時点で、濾過時間T1の計測と同様に濾過時間T2を計測する。計時部130は、濾過時間T2を計測後、バルブV2、V3、V4を解放し、バルブV1を閉塞するように、バルブ制御部6を制御する。
【0054】
次にFI演算部131は、式1及び2に基づいてFI値を演算する。
図6に示すように、FI出力部132は、時間T1、T2及び演算結果のFI値を表示する。またFI演算部131は、演算結果のFI値を通信部135に送信する。通信部135は、FI演算部131から送られたFI値に関する情報を情報端末150に送信する。これにより、情報端末150のユーザ(測定者)は、FI出力部132及び情報端末150のいずれからでもFI値を確認できる。よって測定者は、FI値の測定場所から離れていてもFI値を確認できる。
【0055】
なおCPU108は、戻りボタン113dが押下されると、操作画面112を表示させる。またCPU108は、操作画面112に表示される戻りボタン112bが押下されると、メニュー画面111を表示させる。これにより測定者は、ディスプレイ110の表示内容を容易に切り替えることができる。
【0056】
このように、CPU108により実行されるFI測定プログラムは、以下の計測ステップ、演算ステップ、及び、出力ステップを有する。計測ステップは、流通路R1に分岐するように採水路R2が接続され、採水路R2の途中に採水路R2を流通する水を濾過するように、測定者により交換可能にフィルタ2が配置された状態において、フィルタ2が目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測するステップである。演算ステップは、式1と式2とに基づいてFI値を演算するステップである。出力ステップは、演算ステップの演算結果であるFI値を出力するステップである。
【0057】
次に、FI測定ユニット1を備える水処理装置100において、FI値に応じてFI演算部131及び測定者が行う対応措置を例示する。
【0058】
(i)FI演算部131は、演算結果であるFI値が、予め設定された判定基準値(一例として3)未満である場合、測定対象水の水質には問題ないと判定する。この場合、FI演算部131は、特に対応措置を行わない。
【0059】
(ii)FI演算部131は、演算結果であるFI値が判定基準値を大きく超えている(一例として5を超えている)場合、FI値が上限を超えているとの警報であるFI上限警報をFI出力部132及び通信部135に出力させる。このFI上限警報の出力は、例えば、ディスプレイ110及び情報端末150のディスプレイのうちのいずれかに「FI上限警報」とのメッセージを表示させることで実現される。FI上限警報の出力方法は、これに限定されない。
【0060】
(iii)FI値が判定基準値を大きく超えている状態が、例えば1週間継続した場合、FI上限警報を確認した測定者は、プレフィルタPF1を、通常の目開きの公称孔径10μmのものから、公称孔径5μm、2μm、1μm、又は0.5μmのいずれかのものに変更する。これにより測定者は、FI値が低下するように図る。なおこの場合、測定者は、プレフィルタPF1の濾過閉塞及び流量低下を防止するため、公称孔径が大きいものから小さいものへ段階的に交換し、FI値の推移を確認することが望ましい。
【0061】
(iv)FI値が判定基準値を大きく超えている状態が、例えば1カ月継続した場合、FI上限警報を確認した測定者は、交換用の逆浸透膜114を準備し、又は、逆浸透膜114の薬液による洗浄(膜洗浄)の準備を開始する。これにより測定者は、逆浸透膜114の閉塞及び流量低下に備える。
【0062】
(v)測定されたFI値が判定基準値を大きく超えている状態が、例えば3カ月継続した場合、又は、逆浸透膜114の流量低下が発生し、透析治療に必要な透析用水の差異定流量を下回った場合、FI上限警報を確認した測定者は、逆浸透膜114を交換し、又は、逆浸透膜114の薬液による洗浄(膜洗浄)を行う。これにより測定者は、逆浸透膜114の閉塞及び流量低下を防止する。なお測定者は、年間でFI値が判定基準を超過した日数又は回数を集計し、集計した数が一定数を超えた場合、逆浸透膜114を交換する交換周期の短縮を検討することが好ましい。
【0063】
以上説明したように、FI測定ユニット1によれば、フィルタ2が目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間T1、T2を計時部130が計測し、式1と式2とに基づいて、FI演算部131がFI値を演算する。また、FI出力部132がFI値を出力する。またフィルタ2は、測定者により交換可能に採水路R2の途中に配置される。このため測定者は、主にフィルタ2の配置のみの作業負担で、FI値が得られる。よって、FI測定を行う際の測定者の作業負担を軽減できる。またFI測定ユニット1によれば、比較的容易にFI測定を行える。よって、例えばFI測定を繰り返し行う場合、予め定められた時刻通りに何度でもFI測定を行い易くできる。これにより、日常的に、FI値を用いた定期的な水質管理を行い易くできる。
【0064】
また、このFI測定ユニット1によれば、加圧された水が流通する流通路R1を備える水処理装置100に対し、流通路R1に分岐するように採水路R2が接続される。このため、水を加圧して採水路R2に流通させるためのポンプやコンプレッサ等の装置が不要である。よって、FI測定ユニット1を小型化及び軽量化できる。また、FI測定ユニット1を低コストで実現できる。またFI測定ユニット1は、流通路R1から分岐させた採水路R2を流通する水を測定対象とする。このため、例えば測定対象水を遠隔地にある測定施設まで輸送する必要がない。よって、輸送コストが不要である。また、輸送時間の経過により測定対象水が変質する問題も回避できる。
【0065】
また、このFI測定ユニット1は、フィルタ2を測定者により交換可能にしたことで、比較的簡素な構造を有する。このため、FI測定ユニット1は、故障が起こりにくい。また、測定者がFI測定前にフィルタ2を確認することで、例えば、フィルタ2が新品に交換されていないことにより、変調や逸脱を生じた不正確なFI値が計測されるのを防止できる。
【0066】
また本実施形態の水処理装置100は、逆浸透膜114を有する濾過部101を備えている。これにより、FI測定ユニット1を用いることで、少ない作業負担で、逆浸透膜114の良好な濾過性能を維持できるように水質管理を行える。
【0067】
また本実施形態では、流通路R1を流通する水が、透析用水の原料水である。これにより、透析用水を用いる水処理装置100の既存設備を利用して、FI測定ユニット1の小型化及び軽量化を図れる。また、透析用水の原料水の水質を管理し、適切な透析治療を行える。また、例えば水処理装置100が透析用水を製造するための濾過部101を備える場合、水質低下による濾過部101の目詰まりを防止できる。よって、安定した透析治療を行える。また通常、透析用水は、常温(水温25℃付近)にて製造される。この温度帯では、FI測定を良好に行える。従って、FI測定を行うに際し、測定対象水を温度調節する必要がない。
【0068】
また、FI測定ユニット1が計量容器4及び水量検出センサ5を備える。これにより、FI値の測定に伴う作業負担を軽減しながら、手動で水量を調節してFI値を測定する場合に比べ、正確なFI値が得られる。
【0069】
またFI測定ユニット1は、供給バルブV1~V3と、排出バルブV4と、供給バルブV1~V3と排出バルブV4とを個別制御するバルブ制御部6とを備える。これにより、供給バルブV1~V3及び排出バルブV4をバルブ制御部6により自動で制御できる。よってFI値の測定に伴う作業負担を更に軽減できる。
【0070】
またFI出力部132は、水処理装置100に関する所定情報を出力する情報出力部を兼ねている。これにより、例えば、水処理装置100に備えられた既存の情報出力部を利用してFI出力部132を構成できる。よって、FI測定ユニット1の構成を更に簡素化できる。
【0071】
またFI測定ユニット1は、少なくとも1つの情報端末150と相互通信する通信部135を備え、通信部135は、計時部130の計測結果、及び、FI出力部132により出力される演算結果のうちの少なくともいずれかを情報端末150に向けて送信する。これにより、FI測定に伴う測定者の作業負担を軽減しつつ、情報端末150のユーザは、FI値の測定現場にいなくても、計時部130の計測結果、及び、FI演算部131の演算結果の少なくともいずれかを知ることができる。また測定者は、例えば一日に一度、FI測定場所においてフィルタ2を交換した後、情報端末150を用いて、FI測定場所から遠隔した場所でFI値を確認できる。よって、例えば、少ない手間でフィルタ2を交換してFI測定場所とは異なる作業場所を巡回しながら、FI測定場所で測定されたFI値を異なる場所から確認できる。
【0072】
また通信部135は、計時部130の計測及びFI演算部131の演算のうちの少なくともいずれかを実行させる実行指令を情報端末150から受信する。これにより測定者は、FI値の測定現場にいなくても、FI測定ユニット1対し、遠隔でFI測定の実行指示を行える。よって、FI値の測定に伴う作業負担を更に一層軽減できる。
以下、その他の実施形態について説明する。
【0073】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るFI情報システム151の概要図である。
図8は、
図7のFI関連情報記憶部153に記憶されるFI関連情報140のデータ構造を模式的に示す図である。
図7に示すように、FI情報システム151は、FI関連情報受信部152、FI関連情報記憶部153、及び、FI情報出力部154を備える。FI関連情報受信部152は、FI測定ユニット1の通信部135により送信されるFI関連情報140を受信する。FI関連情報記憶部153は、FI関連情報受信部152が受信した複数のFI関連情報140を蓄積して記録する。FI関連情報受信部152が蓄積して記録する複数のFI関連情報140は、同一のFI測定ユニット1の通信部135により送信される複数のFI関連情報140、及び、異なるFI測定ユニット1の通信部135により送信される複数のFI関連情報140のうちの少なくともいずれかを含む。FI情報出力部154は、FI関連情報記憶部153に記録された複数のFI関連情報140の各々に含まれる複数の情報を、ユーザの求めにより選出して出力する。
【0074】
FI情報システム151は、コンピュータ107とは別のコンピュータにより構成される。一例として、FI情報システム151を構成するコンピュータは、コンピュータ107と同様に、CPU、ストレージ、ディスプレイ、及び、通信用アンテナを有する。FI関連情報受信部152は、CPUと通信用アンテナとにより実現される。FI関連情報記憶部153は、ストレージにより実現される。FI情報出力部154は、ディスプレイにより実現される。FI情報出力部154は、有線又は無線による通信によりFI関連情報記憶部153と接続され、FI関連情報記憶部153に対して遠隔した場所にあるディスプレイであってもよい。
【0075】
図8に示すFI関連情報140は、FI測定ユニット1から送信されるパケット単位のデータである。FI関連情報140は、FI出力部132から出力されるFI値と、計時部130の計測に関連する情報とを含む。当該情報の具体例として、FI関連情報140は、発信元のIPアドレス及びユーザデータを含むヘッダ141と、FI値、FI値の測定場所、及び、測定時刻等の情報を含む測定関連情報142とを含む。
【0076】
FI関連情報140は、その他の任意情報143を含んでいてもよい。この任意情報143は、例えば、FI測定ユニット1を備える水処理装置100に関する情報である装置関連情報を含む。装置関連情報としては、FI値が測定された際の水処理装置100内の特定部分の水圧、プレフィルタPF1、PF2、軟水装置103、活性炭濾過装置104、濾過部101のうちのいずれかの運転水圧、水処理装置100内の特定部分の水の流量(例えば原水の流量、逆浸透膜114の透過水流量、濃縮水の流量)のうちのいずれかの情報を例示できる。また装置関連情報としては、測定対象水の水質関連情報(例えば、原水側の電気伝導度、逆浸透膜114の透過水の電気伝導度、水温、外気温、残留塩素濃度等の情報)を例示できる。また装置関連情報は、水処理装置100のメンテナンス実績や、水処理装置100が配置された病院等の情報を例示できる。装置関連情報は、これらのものに限定されない。
【0077】
このようにFI関連情報140は、複数の情報を含む。このため例えば、FI値に基づいて具体的な検討を進める目的で、複数のFI関連情報140に含まれる所定の情報のみを抽出して出力することが、FI情報システム151のユーザにより要求される場合がある。FI情報出力部154は、このようなユーザの求めに応じ、複数のFI関連情報140の各々に含まれる複数の情報を選出して出力する。
【0078】
上記構成を有するFI情報システム151によれば、そのユーザは、FI測定ユニット1の通信部135より送信され、FI関連情報記憶部153に蓄積して記録された豊富なFI関連情報140の各々の中から、所望の情報を選出してFI情報出力部154に出力させることで、選出した情報同士を比較検討し易くできる。よってユーザは、例えば各FI関連情報140間において、水質の違いや水質の変化の傾向等を把握し易くできる。
【0079】
図9は、第2実施形態に係る複数のFI関連情報140により構成されるFIデータベース170を模式的に示す図である。一例としてFIデータベース170では、複数のFI関連情報140の各々に含まれる一部情報が、抽出されて所定の項目順に並べられるように整理される。
図9に示す例では、FIデータベース170は、複数のFI関連情報140の測定関連情報142と任意情報143とから抽出されたFI値、FI値の測定場所、測定時刻、及び、水処理装置100のメンテナンス実績を含む一部情報が、並べて整理される。これによりユーザは、異なるFI関連情報140間で各情報を比較することで、例えば、いつどこで、どのような目的で、どの程度の水質の水が使用されたかについて、水処理装置100のメンテナンス実績と照らして詳細に検討できる。
【0080】
本実施形態のFIデータベース170の構築方法は、加圧された水が流通する流通路R1に分岐するように採水路R2が接続され、測定者により交換可能に、採水路R2の途中に採水路R2を流通する水を濾過するようにフィルタ2が配置された状態において、フィルタ2が目標水量の水を濾過するのに要する濾過時間を、異なるタイミングで計測する計測処理と、計測した濾過時間をT1、T1の計測後の一定時間Tの経過後に計測した前記濾過時間をT2とするとき、式1と式2とに基づいてFI値を演算する演算処理と、を、同一の又は異なる流通路R1を流通する水に対して行うことにより得られた複数のFI値と、前記計測に関連する情報とを含む複数のFI関連情報140を、蓄積して記録する。
【0081】
このFIデータベース170の構築方法によれば、同一の又は異なる流通路R1について、FI関連情報140を蓄積して記録したFIデータベース170を構築することで、同一の又は異なる流通路R1の水質変化の傾向や、異なる流通路R1を流通する水の水質の違い等を比較検討し易くできる。これにより、同一の又は異なる流通路R1を流通する水の水質を、FI値を含む広範囲な視点から検討して管理できる。よって、FI値をより有効に活用できる。
【0082】
一例として、計測処理で計測対象とする異なる流通路R1は、水源が異なる水が流通する流通路R1、及び、異なる水処理装置100が備える流通路R1のうちの少なくともいずれかを含む。これにより、例えば、異なる水源の水、又は、異なる水処理装置100で用いられる水の水質変化の傾向や水質の違い等を、FIデータベース170を用いて比較検討し易くできる。
【0083】
また水質の変動要因としては、地域変動(水源河川や湖沼等での水質変動)、季節や天候による水質の変動、浄水場での水処理条件の変更や給水系統の状態変化等が挙げられる。FI値は、例えば、測定対象水中のコロイダルシリカ等の懸濁物質量により変化する。測定対象水中のコロイダルシリカ等の懸濁物質量は電気伝導度や濁度等の計測値では、状況の解析が難しい。よって、このような解析ではFI値を検討することが有効となる。また、これらの変動要因の特定や水質変動の傾向を調べるには、異なる場所で測定されたFI値を測定条件と共に検討することが有効である。本実施形態のFIデータベース170及びその構築方法によれば、複数のFI関連情報140を有効活用して前記検討を行い易くできる。また、FI値により測定対象水の水質を監視することにより、例えば第1実施形態のように、透析用水の原水の水質管理に寄与でき、安定的な透析治療の維持に貢献できる。
【0084】
各実施形態における各構成、及び、それらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及び、その他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0085】
第1実施形態において、水処理装置100が備えられる透析システムは、1人の患者のみを血液透析するものであってもよい。また透析システムは、例えばオンライン血液濾過透析以外の透析方法により血液透析を行う構成であってもよい。また透析システムは、電気再生式脱イオン(EDI)装置を備えていてもよい。
【0086】
また水処理装置100は、透析用水以外の水を処理する装置であってもよい。また水処理装置100は、濾過部101を備えていなくてもよい。流通路R1を流通する水は、工業用水、工業排水(放流水)、ボイラー用水原水、又は各種配管を流通する水等、透析用水以外の水であってもよい。
【0087】
各種配管を流通する水を測定対象水として測定したFI値を検討することにより、例えば、配管の老朽、腐食、水垢等の汚れの付着の程度を診断できる。また、受水槽の水と、給水末端の水とを測定対象水として測定した複数のFI値を比較検討することにより、このような診断を一層有効に行える。また配管が鋼管である場合、配管の錆具合の程度を診断することもできる。また、フィルタ2に付着した捕捉物を分析することで、配管の腐食の原因物質を特定できる。これにより、例えば、配管の交換時期を検討できる。
【0088】
また、配管の水垢による汚れの付着程度の診断は、測定対象水(例えば水道水)に含まれる有機物等に起因する配管の汚れ具合や、汚れの付着具合の予想についての診断に活用できる。また、配管に比較的清澄な水の使用を要求する機器が接続される場合、当該機器に水を供給するための専用の分岐路を配置することや、配管の途中にフィルタを配置すること、又は、配管の管内清浄を行うこと等の措置を講じることもできる。
【0089】
また、工業排水を測定対象水として測定したFI値を、その他の所定の水質管理項目と併せて検討することにより、広範囲な視点から排水処理(例えば沈殿処理や膜処理等)の良否について有効に検討できる。また例えば、イオン交換水等の比較的高純度の補給水をボイラー用水原水とする場合、当該原水を測定対象水として測定したFI値を検討することにより、水質基準を満たすボイラー用水原水を安定して得るための診断を有効に行える。
【0090】
また、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含む。このためプロセッサは、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されるハードウェアであってもよい。ハードウェアは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されるその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアは、ハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0091】
M 記録媒体
R1 流通路
R2 採水路
V1~V3 供給バルブ
V4 排出バルブ
1 FI測定ユニット
2 フィルタ
4 計量容器
5 水量検出センサ
6 バルブ制御部
100 水処理装置
101 濾過部
108 CPU(水処理制御器)
114 逆浸透膜
121 RO表示部(情報出力部)
130 計時部
131 FI演算部
132 FI出力部
135 通信部
140 FI関連情報
150 情報端末
151 FI情報システム
152 FI関連情報受信部
153 FI関連情報記憶部
154 FI関連情報出力部
170 FIデータベース