(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014143
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ナノワイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 9/02 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
C01G9/02 A
C01G9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116332
(22)【出願日】2020-07-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】獅野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 勝弥
(72)【発明者】
【氏名】平田 肇
(72)【発明者】
【氏名】池田 宗和
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047AA02
4G047AB02
4G047AD04
(57)【要約】
【課題】基材上に直接ナノワイヤを成長させるナノワイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】基材10の表面に、ピッチが0.1~50μm、深さが0.01~50μmの凹凸構造10Aを形成する工程と、基材を水熱合成溶液21に浸漬させて熱処理し、金属酸化物からなるナノワイヤ12を、基材の表面に直接成長させる熱処理工程とを含み、熱処理工程は、基材を、第1の温度で水熱合成溶液に一定時間浸漬させて熱処理し、金属酸化物の前駆体11を、基材の表面に形成する第1の熱処理工程と、基材を、第1の温度よりも高い第2の温度で、水熱合成溶液に一定時間浸漬させて熱処理し、金属酸化物からなるナノワイヤを基材の表面に直接成長させる第2の熱処理工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に、ピッチが0.1~50μm、深さが0.01~50μmの凹凸構造を形成する工程(a)と、
前記基材を水熱合成溶液に浸漬させて熱処理し、金属酸化物からなるナノワイヤを、前記基材の表面に直接成長させる熱処理工程(b)と
を含み、
前記熱処理工程(b)は、
前記基材を、第1の温度で前記水熱合成溶液に一定時間浸漬させて熱処理し、前記金属酸化物の前駆体を、前記基材の表面に形成する第1の熱処理工程(b1)と、
前記基材を、前記第1の温度よりも高い第2の温度で、前記水熱合成溶液に一定時間浸漬させて熱処理し、前記金属酸化物からなるナノワイヤを前記基材の表面に直接成長させる第2の熱処理工程(b2)と
を含む、ナノワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記水熱合成溶液は、亜鉛源と水酸基源との水溶液からなり、
前記第1の熱処理工程(b1)において、前記基材の表面に水酸化亜鉛が形成され、
前記第2の熱処理工程(b2)において、前記水酸化亜鉛が脱水反応して、前記基材の表面に酸化亜鉛からなるナノワイヤが直接成長される、請求項1に記載のナノワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記第1の熱処理工程(b1)において、前記第1の温度は、30℃~60℃の範囲にあり、
前記第2の熱処理工程(b2)において、前記第2の温度は、60℃~前記基材の耐熱温度の範囲にある、請求項1または2に記載のナノワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記基材は、樹脂、金属、サファイア、及びガラスの何れかからなる、請求項1~3の何れかに記載のナノワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリシロキサン、芳香族ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッカビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、及びシクロオレフィンの何れかからなる、請求項4に記載のナノワイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に直接ナノワイヤを成長させるナノワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛等の金属酸化物からなるナノワイヤ(ナノロッド)の製造方法として、化学気相法、レーザー堆積法、水熱合成法など、様々な方法が知られている。
【0003】
これらのうち、水熱合成法は、比較的簡単にナノワイヤを製造することができる。例えば、特許文献1には、表面にシード層が形成された基材を、硝酸亜鉛とヘキサメチレンテトラミンとを混合した水溶液に浸漬して、酸化亜鉛ナノワイヤを成長させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のナノワイヤの製造方法は、例外なく、基材の上に、予め、ナノワイヤを成長させるためのシード層、あるいは、Au、Ag、Cu、Cr、Si、Znなどの金属層や、SiO2、Al2O3などの金属酸化層に代表される中間層を形成する必要があった。そのため、製造コストが高くなるという問題があった。また、ナノワイヤを利用してデバイスを作製したとき、シード層がデバイス性能を劣化させる要因になるという問題があった。
【0006】
然るに、今まで、基材上にシード層や中間層を形成することなく、直接ナノワイヤを成長させる方法はなかった。従来技術においては、余計な粉末層の形成、並びに粉末の落下及びスキージにおける非効率的な作動を改善する方法については何ら提言が行われていない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、基材上に直接ナノワイヤを成長させるナノワイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るナノワイヤの製造方法は、基材の表面に、ピッチが0.1~50μm、深さが0.01~50μmの凹凸構造を形成する工程(a)と、基材を水熱合成溶液に浸漬させて熱処理し、金属酸化物からなるナノワイヤを、基材の表面に直接成長させる熱処理工程(b)とを含み、熱処理工程(b)は、基材を、第1の温度で水熱合成溶液に一定時間浸漬させて熱処理し、金属酸化物の前駆体を、基材の表面に形成する第1の熱処理工程(b1)と、基材を、第1の温度よりも高い第2の温度で、水熱合成溶液に一定時間浸漬させて熱処理し、金属酸化物からなるナノワイヤを基材の表面に直接成長させる第2の熱処理工程(b2)とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材上に直接ナノワイヤを成長させるナノワイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)~(D)は、本発明の一実施形態におけるナノワイヤの製造方法を示した図である。
【
図2】ポリイミドフィルムの熱処理工程における温度プロファイルを示したグラフである。
【
図3】(A)及び(B)は、それぞれ、ポリイミドフィルムの表面に形成されたZnOナノワイヤの状態を撮影した電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【
図4】混合水溶液を熱処理した後、混合水溶液内に析出する固形分を、X線回折装置を用いて元素分析した波形を示す。
【
図5】ポリイミドフィルムを第1の熱処理した後のポリイミドフィルムの表面を撮影したFE-SEM写真である。
【
図6】(A)~(C)は、ポリイミドフィルムの表面に形成した凹凸構造の大きさを変えたときのポリイミドフィルム表面に形成されたZnOの状態を比較したFE-SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明者等は、樹脂フィルム上に、シード層や中間層を形成することなく、直接ナノワイヤを成長させる方法を見出し、先の出願(特願2020-001840)の明細書に、その基本的な方法を開示している。
【0012】
すなわち、樹脂フィルムの表面に微細な凹凸構造を形成した後、樹脂フィルムを水熱合成溶液に浸漬させることによって、基材の表面にナノワイヤを直接成長させることができる。基材の表面にナノワイヤが直接成長する詳しいメカニズムは明らかではないが、樹脂フィルムの表面に形成された微細な凹凸構造が、従来のシード層や中間層のように、ナノワイヤが成長する核の役目を果たしていると考えられる。
【0013】
本願発明者等は、さらに検討を重ねた結果、樹脂フィルム等の基材の表面に、より多くのナノワイヤを成長させることができる新たな方法を見出した。
【0014】
図1(A)~(D)は、本発明の一実施形態におけるナノワイヤの製造方法を示した図である。なお、以下の実施形態では、ポリイミドフィルムからなる基材上に、ZnO(酸化亜鉛)を形成する場合を例に説明する。
【0015】
まず、
図1(A)に示すように、ナノワイヤを成長させる基材10として、ポリイミドフィルム10を用意する。ポリイミドフィルム10の厚みは、例えば、50~500μmである。
【0016】
次に、
図1(B)に示すように、ポリイミドフィルム10の表面に、微細な凹凸構造10Aを形成する。凹凸構造10Aは、ピッチが0.1~50μm、深さが0.01~50μmの範囲にあることが好ましい。また、凹凸構造10Aの形成方法は特に限定されないが、例えば、プラズマ処理、ラビング処理、ヤスリがけ、酸/アルカリ処理、サンドブラスト、ワイヤーカット、レーザーカット等で形成することができる。
【0017】
次に、
図1(C)、(D)に示すように、ポリイミドフィルム10を、容器20に入れられた水熱合成溶液21に浸漬させて熱処理する。水熱合成溶液40は、例えば、硝酸亜鉛(Zn(NO
3)
2/6H
2O)と、ヘキサメチレンテトラミン(C
6H
12N
4)とを混合した水溶液を用いることができる。
【0018】
水熱合成溶液40に含まれる亜鉛源として、上記の硝酸亜鉛の他に、水溶性Zn化合物(硫酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛の水和物および無水物など)や、不溶解性Zn化合物ナノ粒子(水酸化亜鉛)を用いることができる。また、水熱合成溶液40に含まれる水酸基源として、上記のヘキサメチレンテトラミンの他に、アミン系有機物(メチルアミン、アニリン、トリメチルアミン、エチレンジアミンなど)を用いることができる。
【0019】
また、ポリイミドフィルム10の熱処理は、水熱合成溶液40を常圧下で行っても、あるいは加圧下で行ってもよい。
【0020】
ポリイミドフィルム10を水熱合成溶液21に浸漬させて熱処理する工程は、2段階で行われる。まず、第1段階として、
図1(C)に示すように、ポリイミドフィルム10を、低温(第1の温度)で水熱合成溶液21に浸漬させて熱処理する(第1の熱処理工程)。このとき、水熱合成溶液21中の亜鉛イオン(Zn
2+)と、水酸基(OH
―)が結合して、ZnOの前駆体であるZn(OH)
2(水酸化亜鉛)11が、ポリイミドフィルム10の表面に付着する。第1の熱処理工程における熱処理温度(第1の温度)は、30~60℃の範囲が好ましい。また、熱処理時間は、1~180分の範囲が好ましい。
【0021】
次に、第2段階として、
図1(D)に示すように、ポリイミドフィルム10を、第1の温度よりも高い温度(第2の温度)で、水熱合成溶液21に浸漬させて熱処理する(第2の熱処理工程)。これにより、ポリイミドフィルム10の表面に付着したZn(OH)
2を脱水反応(Zn(OH)
2→ZnO+H
2O)させて、ポリイミドフィルム10の表面にZnOの棒状結晶からなるナノワイヤ12を形成する。また、同時に、水熱合成溶液21で発生したZnOが析出・沈降して、ポリイミドフィルム10の表面に形成されたZnOと結合して、ナノワイヤ12が成長する。第2の熱処理工程における熱処理温度(第2の温度)は、60℃から、ポリイミドフィルム(基材)の耐熱温度の範囲が好ましい。また、熱処理時間は、1~180分の範囲が好ましい。
【0022】
本実施形態では、ポリイミドフィルム10の熱処理工程を、2段階で行うことを特徴とするが、1段階で熱処理を行う場合との効果の違いを次に説明する。
【0023】
図2は、ポリイミドフィルム10の熱処理工程を、2段階で行った場合の温度プロファイル(矢印A)と、1段階で行った場合の温度プロファイル(矢印B)を示したグラフである。矢印Aで示した熱処理工程(工程A)は、水熱合成溶液21を室温から50℃(第1の温度)に上昇させ、50℃の温度を1時間キープし、その後、90℃(第2の温度)に上昇させ、90℃の温度を1時間キープする。矢印Bで示した熱処理工程(工程B)は、水熱合成溶液21を室温から90に上昇させ、90℃の温度を2時間キープする。
【0024】
図3(A)、(B)は、それぞれ、工程A、Bにおいて、ポリイミドフィルム10の表面に形成されたZnOナノワイヤ12の状態を撮影した電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
図3(A)、(B)に示すように、ポリイミドフィルム10の熱処理工程を2段階で行った方が、1段階で行った場合に比べて、ポリイミドフィルム10の表面に、より密にZnOナノワイヤ12が形成されているのが分かる。
【0025】
図4は、硝酸亜鉛とヘキサメチレンテトラミンの混合水溶液を熱処理した際に生じる析出物を、X線回折装置を用いて計測した波形を示す。
図4(A)は、混合水溶液を、50℃(第1の熱処理温度)、1時間、熱処理したときで析出する固形分の波形を示し、
図4(C)は、混合水溶液を、50℃、1時間熱処理した後、90℃(第2の熱処理温度)で、1時間、熱処理したときの析出物の波形を示す。なお、
図4(B)は、Zn(OH)
2の標準波形を示し、
図4(D)は、ZnOの標準波形を示す。
【0026】
図4(A)に示すように、混合水溶液を、50℃、1時間、熱処理(第1の熱処理工程)したときの波形では、
図4(B)に示したZn(OH)
2の標準波形で見られるピークと同じピークが確認できた。さらに、強度は低いものの、
図4(D)に示したZnOの標準波形で見られるピークと同じピーク(矢印Pで示したピーク)も確認できた。
【0027】
この結果から、第1の熱処理工程において、ポリイミドフィルム10の表面に、ZnOの前駆体であるZn(OH)211が付着しているのが分かる。なお、ポリイミドフィルム10の表面には、ZnOもわずかに形成されているが、熱処理温度が低い場合、水熱合成溶液21中の亜鉛イオン(Zn2+)と、水酸基(OH―)との結合が優位に進行して、ポリイミドフィルム10の表面に、多くのZn(OH)211が付着したと考えられる。
【0028】
図5は、第1の熱処理工程をした後のポリイミドフィルム10の表面を撮影したFE-SEM写真で、ポリイミドフィルム10の表面全体に、Zn(OH)
211が付着し、ZnO12がわずかに形成されているのが分かる。
【0029】
一方、
図4(C)に示すように、混合水溶液を、50℃、1時間熱処理した後、90℃、1時間熱処理(第2の熱処理工程)したときの析出物の波形では、
図4(D)に示したZnOの標準波形で見られるピークと同じピークが確認できた。また、
図4(B)に示したZn(OH)
2の標準波形で見られるピークは確認できなかった。
【0030】
この結果から、第2の熱処理工程において、ポリイミドフィルム10の表面に付着したZn(OH)2が、脱水反応を起こして、ZnOからなるナノワイヤ12に変化しているのが分かる。
【0031】
図6(A)~(C)は、ポリイミドフィルム10の表面に形成した凹凸構造10Aの大きさを変えたときのポリイミドフィルム10の表面に形成されたZnOの状態を比較したFE-SEM写真である。ここで、ポリイミドフィルム10は、50℃、1時間の熱処理(第1の熱処理工程)を行った後、90℃、1時間の熱処理(第2の熱処理工程)を行った。
図6(A)は、凹凸構造10Aのピッチが1μm以下、
図6(B)は、凹凸構造10Aのピッチが5μm以下、
図6(C)は、凹凸構造10Aのピッチが5μm以上である。
図6(A)~(C)に示すように、凹凸構造10Aのピッチが大きくなるほど、ZnOの付着量が多くなるのが分かる。
【0032】
以上、説明したように、本実施形態におけるナノワイヤの製造方法は、ポリイミドフィルム(基材)10の表面に、微細な凹凸構造10Aを形成する工程と、ポリイミドフィルム10を水熱合成溶液21に浸漬させて熱処理し、ZnO(金属酸化物)からなるナノワイヤ12を、ポリイミドフィルム10の表面に直接成長させる熱処理工程とを含む。
【0033】
熱処理工程は、ポリイミドフィルム10を、第1の温度で水熱合成溶液21に一定時間浸漬させて熱処理する第1の熱処理工程と、第1の温度よりも高い第2の温度で、水熱合成溶液21に一定時間浸漬させて熱処理する第2の熱処理工程とを含む。
【0034】
第1の熱処理工程では、ZnOの前駆体であるZn(OH)2が、ポリイミドフィルム10の表面に形成される。第2の熱処理工程では、Zn(OH)2が変化して、ポリイミドフィルム10の表面にZnOからなるナノワイヤ12が形成される。これにより、ポリイミドフィルム10の表面に、より多くのZnOからなるナノワイヤを直接成長させることができる。
【0035】
ここで、第1の熱処理工程における第1の温度は、Zn(OH)2が形成される温度であればよく、30~60℃の範囲が好ましい。30℃より低い温度だと、Zn(OH)2が形成されず、また、60℃を超える温度だと、Zn(OH)2が優位に形成されず、ZnOの混在が増えるため、好ましくない。
【0036】
第2の熱処理工程における第2の温度は、Zn(OH)2が脱水反応を起こして、ZnOに変化する温度であればよく、60~100℃の範囲が好ましい。60℃より低い温度だと、Zn(OH)2の脱水反応が進行せず、また、大気下において、100℃を超えると、溶媒が蒸発し、溶媒に溶けているその他の成分が析出し始めるため、好ましくない。なお、環境圧力を高くし、溶媒の蒸発を防ぐ場合は、第2の熱処理温度を基材10の耐熱温度まで上げても構わない。第2の熱処理温度が高いほど、ZnOからなるナノワイヤの結晶成長速度が速くなる。
【0037】
本実施形態における効果を得るためには、ポリイミドフィルム10の表面に形成される凹凸構造10Aは、ピッチが0.1~50μm、深さが0.01~50μmの範囲にあることが好ましい。
【0038】
本実施形態によれば、ポリイミドフィルム10の上に、シード層や中間層を形成することなく、直接、ZnOからなるナノワイヤを成長させることができるため、製造コストの低減を図ることができる。また、ナノワイヤを利用してデバイスを作製したとき、シード層や中間層に起因するデバイス性能の劣化を防止することができる。
【0039】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、ポリイミドフィルム10の熱処理工程を、第1の熱処理工程と、第2の熱処理工程の2段階で行ったが、少なくとも第1の温度における熱処理工程と、第2の温度における熱処理工程を含むものであれば、多段階で行ってもよい。また、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを繰り返し行ってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、ポリイミドフィルム10を基材に用いて、この基材上にZnOからなるナノワイヤを成長させたが、これに限定されず、樹脂、金属、サファイア、ガラス等を用いてもよい。
【0042】
また、ポリイミド以外の樹脂として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリシロキサン、芳香族ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッカビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等を用いてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、ポリイミドフィルム10上にZnOナノワイヤ20を成長させたが、これに限定されず、酸化チタン(TiO)等の他の金属酸化物からなるナノワイヤを成長させることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 ポリイミドフィルム(基材)
10A 微細な凹凸構造
11 Zn(OH)2(前駆体)
12 ZnOナノワイヤ
20 容器
21 水熱合成溶液