(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141446
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】トランス
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20220921BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20220921BHJP
H01F 5/02 20060101ALI20220921BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20220921BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01F30/10 R
H01F30/12 Z
H01F5/02 G
H01F27/30
H01F41/12 F
H01F30/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041760
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 定勝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】針生 誠
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
【Fターム(参考)】
5E043FA07
5E044BA04
(57)【要約】
【課題】容積変化を小さく抑えながら、リーケージインダクタンスを自在に調整できる汎用性に優れたトランスを提供する。
【解決手段】トランス1は、第一筒部11を有する第一ボビン10と、第一筒部11に巻き付けられる第一巻線20と、第二筒部31を有し、第二筒部31が第一筒部11の径方向に第一筒部11と重なるように第一ボビン10に組み付けられる第二ボビン30と、第二筒部31に巻き付けられる第二巻線40と、第一及び第二筒部11,31に挿通されるコア2と、を備え、第一ボビン10は、第二筒部31と径方向に重なる重複部位111と、第二筒部31と径方向に重ならない非重複部位112とに、第一筒部11を軸方向に分割する中央鍔部12cを有し、第一ボビン10は、第一筒部11における重複部位111よりも非重複部位112において、第一巻線20を第一筒部11の径方向の厚みが大きくなるように巻き付け可能に構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筒部を有する第一ボビンと、
前記第一筒部に巻き付けられる第一巻線と、
第二筒部を有し、前記第二筒部が前記第一筒部の径方向に前記第一筒部と重なるように前記第一ボビンに組み付けられる第二ボビンと、
前記第二筒部に巻き付けられる第二巻線と、
前記第一及び第二筒部に挿通されるコアと、を備え、
前記第一ボビンは、前記第二ボビンが組み付けられた状態において、前記第二筒部と径方向に重なる重複部位と、前記第二筒部と径方向に重ならない非重複部位とに、前記第一筒部を軸方向に分割する壁部を有し、
前記第一ボビンは、前記第一筒部における前記重複部位よりも前記非重複部位において、前記第一巻線を前記第一筒部の径方向の厚みが大きくなるように巻き付け可能に構成されているトランス。
【請求項2】
前記第二ボビンは、前記第一ボビンに対して前記第一筒部の軸方向に相対移動可能に組み付けられる請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
前記第二ボビンは、前記第一筒部における前記重複部位の径方向外側に組み付けられる請求項1又は2に記載のトランス。
【請求項4】
前記第二ボビンは、前記第一筒部における前記重複部位の径方向内側に組み付けられる請求項1又は2に記載のトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一次巻線及び二次巻線をコアに巻き付け、一次巻線が、二次巻線と積層する部分(重複部位)と、二次巻線と積層しない部分(非重複部位)と、を有するトランスが開示されている。特許文献1のトランスでは、一次巻線の巻き幅や巻き数を調整することで、トランスにおけるリーケージインダクタンスを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のトランス(装置)では、筒状とされた一次巻線及び二次巻線の径寸法(外径寸法及び内径寸法)はそれぞれ、軸方向において一定となっている。このため、トランスにおけるリーケージインダクタンスを調整するためには、一次巻線や二次巻線の径寸法を変化させる必要がある。このことから、リーケージインダクタンスの調整に応じてトランスの軸方向の寸法や径方向の寸法が大きく変化してしまう。すなわち、リーケージインダクタンスの調整に応じてトランスの容積変化が大きくなってしまう。このため、例えば部品との関係によってトランスの容積が制限される場合、従来のトランスでは、リーケージインダクタンスを自在に調整できず、汎用性に欠けていた。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みたものであり、容積変化を小さく抑えながら、リーケージインダクタンスを自在に調整できる汎用性に優れたトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第一筒部を有する第一ボビンと、前記第一筒部に巻き付けられる第一巻線と、第二筒部を有し、前記第二筒部が前記第一筒部の径方向に前記第一筒部と重なるように前記第一ボビンに組み付けられる第二ボビンと、前記第二筒部に巻き付けられる第二巻線と、前記第一及び第二筒部に挿通されるコアと、を備え、前記第一ボビンは、前記第二ボビンが組み付けられた状態において、前記第二筒部と径方向に重なる重複部位と、前記第二筒部と径方向に重ならない非重複部位とに、前記第一筒部を軸方向に分割する壁部を有し、前記第一ボビンは、前記第一筒部における前記重複部位よりも前記非重複部位において、前記第一巻線を前記第一筒部の径方向の厚みが大きくなるように巻き付け可能に構成されているトランスである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトランスでは、第一ボビンは、重複部位よりも非重複部位において、第一巻線を径方向の厚みが大きくなるように巻き付け可能に構成されている。これにより、製造者は、重複部位における第一巻線の径方向の厚みを変化させることなく、非重複部位における第一巻線の径方向の厚みを変化できる。このため、製造者は、重複部位と径方向で重なる第二巻線の径方向の厚みを変化させることなく、リーケージインダクタンスを調整できる。非重複部位における第一巻線の径方向の厚みを変化させることにより、重複部位における第一巻線及び第二巻線の径方向の厚みを変化させる場合と比べて、第一巻線及び第二巻線の径方向の容積変化を小さく抑えることができる。
また、第一ボビンは、第二ボビンが組み付けられた状態において、重複部位と、非重複部位とに、第一筒部を軸方向に分割する壁部を有している。これにより、製造者は、第一ボビンと第二ボビンとを組み付けるだけで、第二巻線と径方向で重なる重複巻線と、第二巻線と径方向で重ならない非重複巻線と、に第一巻線を軸方向に分割できる。したがって、製造者は、第一ボビンに壁部が設けられていない場合と比べて、重複巻線と非重複巻線とを容易に形成できる。よって、製造者は、重複部位及び非重複部位のそれぞれにおいて、第一巻線の径方向の厚みや軸方向の長さ等を容易に調整できる。
したがって、容積変化を小さく抑えながら、リーケージインダクタンスを自在に調整できる汎用性に優れたトランスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトランスを示す斜視図である。
【
図3】
図1のIII-IIIの位置での上記トランスの要部を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る第一巻線の巻き付け方法の第一例を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る第一巻線の巻き付け方法の第二例を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る第一巻線の巻き付け方法の第三例を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る第一巻線の巻き付け方法の第四例を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る第一巻線の巻き付け方法の第五例を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るトランスの要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図8を参照して本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係るトランス1は、
図1~
図3に示すように、コア2と、第一ボビン10と、第一巻線20と、第二ボビン30と、第二巻線40と、カバー部品3と、端子台8と、を有する。トランス1は、第一巻線20と第二巻線40との間に生じるリーケージインダクタンスを利用して共振コイルの機能を得る。
【0010】
コア2は、例えばフェライト等の磁性体により形成されている。
図2に示すように、コア2は、2つのコア片50により形成される。2つのコア片50は、略同一であるため、一方のコア片50についてのみ説明する。コア片50は、円柱状に形成された内側片51と、内側片51に対して径方向の両側に配置された2つの外側片52と、2つの外側片52を径方向に連結する連結片53と、を有している。
内側片51の軸方向の長さは、2つのコア片50のうち後述する第一ボビン10側のコア片50の方が長い。以下の説明では、内側片51の軸方向を単に「軸方向」、内側片51の径方向を単に「径方向」、内側片51の周方向を単に「周方向」とする。
図3の模式図では、簡略化するために、一対の内側片51が一体とされ、単にコア2として図示されている。
2つの外側片52はそれぞれ、厚さ方向が径方向と一致する矩形板状に形成されている。2つの外側片52は、径方向において内側片51の両側に間隔をあけて位置する。連結片53は、厚さ方向が軸方向と一致する矩形板状に形成されている。外側片52の軸方向の長さは、2つのコア片50のうち後述する第一ボビン10側のコア片50の方が長い。
連結片53は、厚さ方向が軸方向と一致する矩形板状に形成されている。連結片53には、内側片51の軸方向の端部が連なっている。連結片53の端面うち外側片52の対向方向及び軸方向に直交する方向の一端面には、凹部53aが形成されている。凹部53aは、その底部53a2から凹部53aが開口する連結片53の端面に向かうにしたがって広がるテーパ状に形成されている。凹部53aは、平坦な底部53a2と、底部53a2の両側から連結片53の端面まで傾斜して延びる平坦な2つの側部53a1とを有している。
コア2は、上述した2つのコア片50の外側片52の軸方向先端同士を当接して接着剤等によって結合することによって形成される。
【0011】
第一ボビン10は、例えば硬質プラスチック等の絶縁材料によって形成されている。第一ボビン10は、第一筒部11と、第一鍔部12とを有する。第一筒部11は、円筒状に形成されている。第一筒部11の内径寸法は、コア2の外径寸法よりも大きい。第一筒部11の内側には、コア2の内側片51が挿通される。
【0012】
第一鍔部12は、第一筒部11における軸方向の一端11bに配置される一端鍔部12bと、第一筒部11における軸方向の中央部11cに配置される中央鍔部12c(請求項の「壁部」に相当)と、を有している。
一端鍔部12b及び中央鍔部12cは、それぞれ第一筒部11の外周面から径方向外側に張り出している。以下の説明では、第一筒部11のうち、中央鍔部12cを基準として軸方向に一端鍔部12bとは反対側の領域を重複部位111とし、一端鍔部12bと中央鍔部12cとの間の領域を非重複部位112とする。第一筒部11を中央鍔部12cの周方向の一部には、重複部位111と非重複部位112とを繋ぐ通路が形成されている。
なお、
図3に示すように、第一鍔部12は、一端鍔部12b及び中央鍔部12cに加えて、第一筒部11における軸方向の他端11aに配置される他端鍔部12aを有していてもよい。
【0013】
第一巻線20は、電源回路(不図示)に接続される入力側の一次巻線である。第一巻線20は、第一筒部11の外周面に対してその周方向に線材を巻き付けることにより形成されている。すなわち、第一巻線20は、第一ボビン10を介してコア2に巻き付けられることで、筒状に形成されている。以下の説明では、第一巻線20のうち、重複部位111に巻き付けられている部分を重複巻線21とし、非重複部位112に巻き付けられている部分を非重複巻線22とする。
第一巻線20の線材は、複数本のエナメル線が撚り合わされたリッツ線である。
【0014】
重複巻線21と非重複巻線22とは軸方向において互いに隣り合う。非重複巻線22の径方向における厚みは、重複巻線21の径方向における厚みよりも大きい。非重複巻線22と重複巻線21とは、中央鍔部12cに設けられた通路に第一巻線20の線材が通ることで繋がっている。
【0015】
第一巻線20は、線材を重複部位111及び非重複部位112に少なくとも一層ずつ巻き付けたベース層23を形成している。
図3では、線材を重複部位111及び非重複部位112にそれぞれ一層ずつ巻き付けてベース層23を形成した例を図示しているが、線材を二層以上巻き付けてベース層23を形成してもよい。なお、ベース層23の層数は、重複部位111と非重複部位112とで異なっていてもよい。
【0016】
上記した第一巻線20の線材の両端は、第一端子5a及び第二端子5b(
図4~
図8参照)に接続される。第一及び第二端子5a,5bは、第一巻線20を電源回路に接続するための端子であり、第一ボビン10の一端鍔部12b(後述するコア2の第四部位2d)に対応する位置に配置されている。第一及び第二端子5a,5bは、例えば第一ボビン10の一端鍔部12bに設けられてもよい。
【0017】
第二ボビン30は、例えば硬質プラスチック等の絶縁材料によって形成されている。第二ボビン30は、第一筒部11における重複部位111の径方向外側に配置されている。第二ボビン30は、第一ボビン10に対して軸方向にスライドして相対移動可能に組み付けられている。第二ボビン30は、第二筒部31と、第二鍔部32とを有する。第二筒部31の内側には、コア2の内側片51が挿通されている。第二筒部31の内径寸法は、第一筒部11における重複部位111の外径寸法よりも大きい。第二筒部31と第一筒部11と径方向の離間距離は、第一巻線20の線材の径寸法の2倍以上となっている。
【0018】
第二鍔部32(一端鍔部32b)は、第二筒部31における軸方向の両端31a,31bのうち、中央鍔部12c側の一端31bに設けられている。第二鍔部32は、第二筒部31から径方向外側に張り出している。
なお、
図3に示すように、第二鍔部32は、一端鍔部32bに加えて、第二筒部31における軸方向の他端31aに配置される他端鍔部32aを有していてもよい。
【0019】
第二巻線40は、負荷装置(不図示)に接続される出力側の二次巻線である。第二巻線40は、第二筒部31の外周面に対してその周方向に線材を巻き付けることにより形成されている。すなわち、第二巻線40は、第二ボビン30を介してコア2に巻き付けられることで、筒状に形成されている。第二巻線40の線材は、複数本のエナメル線が撚り合わされたリッツ線である。第二巻線40の線材の径寸法は、第一巻線20の線材の径寸法よりも大きい。第二巻線40は径方向において第一巻線20の重複巻線21と重なっている。軸方向において重複巻線21の隣に位置する第一巻線20の非重複巻線22は、第二筒部31に挿通されないため、第二巻線40は、径方向において非重複巻線22と重ならない。第二巻線40は、軸方向において第一巻線20の非重複巻線22のうちベース層23よりも径方向外側の部分に隣り合わせて位置する。
【0020】
カバー部品3は、第二ボビン30を挟んで第一ボビン10と軸方向で反対側に設けられている。カバー部品3は、端壁部26と、カバー部27とを有している。端壁部26は、第二ボビン30の第二筒部31を挟んで第一ボビン10とは反対側に設けられている。端壁部26は、軸方向を厚さ方向とする板状に形成されている。端壁部26の外形は、軸方向から見て一端鍔部12bの外形と同形状である。端壁部26には、当該端壁部26を軸方向に貫通する挿通孔26aが形成されている。挿通孔26aは、軸方向から見て第一筒部11の内周面と同形状に形成されている。カバー部27は、端壁部26の外縁の周方向の一部において径方向の外側に開口している。カバー部27の開口は、トランス1の第一巻線20及び第二巻線40を保護する充填樹脂(不図示)が注入されるカバー部品3の注入口3a(
図1参照)として機能する。
【0021】
カバー部27は、軸方向に並ぶ第一カバー構成体27aと、第二カバー構成体27bとを有している。第一カバー構成体27aは、端壁部26の外縁から第二ボビン30の第二鍔部32の外縁まで軸方向に延びている。これにより、第一カバー構成体27aは、径方向において第一筒部11の重複部位111、第一巻線20の重複巻線21、第二筒部31及び第二巻線40の外側を覆う。第二カバー構成体27bは、第二鍔部32の外縁から第一ボビン10の一端鍔部12bの外縁まで軸方向に延びている。これにより、第二カバー構成体27bは、径方向において第一筒部11の非重複部位112及び第一巻線20の非重複巻線22の外側を覆う。
【0022】
図1及び
図2に示すように、端子台8は、カバー部品3の端壁部26と、第一ボビン10の一端鍔部12bとに1個ずつ設けられている。端子台8は、端壁部26及び一端鍔部12bにおける注入口3aの開口方向の端部に設けられている。端子台8は、端子台本体8aと、台座8bと、を備えている。2つの端子台8のうち端壁部26側の端子台8についてのみ説明し、一端鍔部12b側の端子台8は端壁部26側の端子台8と同様の構成であるため説明を省略する。
端子台8は、端壁部26と一体に形成されている。端子台本体8aは、端壁部26から軸方向外側に張り出している。端子台本体8aは、軸方向及び注入口3aの開口方向と直交する方向に延びている。端子台本体8aにおける注入口3aの開口方向と反対側の端面は、凹部53aに沿っている。これにより、端子台本体8aは、凹部53aに嵌め込まれる。台座8bは、端子台本体8aの長手方向の両端部に設けられた矩形板状の部材である。台座8bの板厚方向は、注入口3aの開口方向に一致している。台座8bは、凹部53aが開口する側の連結片53の端面上に載置されている。台座8bには、六角ナットが配置されるナット配置部8cが形成されている。ナット配置部8cは、注入口3aの開口方向とは反対側からみて六角形状に形成された凹部である。各台座8bには、端子9が取り付けられている。
【0023】
端子9は、例えば銅等の金属材料から形成されている。端子9は、端子本体9aと、支持部9bと、を有している。
端子本体9aは、板厚方向が注入口3aの開口方向と一致する矩形板状に形成されている。端子本体9aは、台座8b上に載置されている。端子本体9aは、台座8b側に延びる爪部を有し、爪部によるスナップフットよって、台座8bに固定されている。端子本体9aには、端子本体9aを板厚方向に貫通する貫通孔9cが設けられている。端子本体9aと台座8bとの間には、六角ナットが配置されている。当該六角ナットは、台座8bのナット配置部8c内に回転不可に配置されている。端子本体9aには、例えばボルト締結により、外部の電源回路の端子(不図示)が接続される。
支持部9bは、一対の端子本体9aの内側に設けられている。支持部9bは、軸方向に沿って延びている。支持部9bの軸方向外側の端部は、端子本体9aよりも軸方向外側に位置している。支持部9bの軸方向外側の端部は、軸方向から見て、一対の端子本体9aにおける対向方向内側に開口するU字状に形成されている。支持部9bの軸方向外側の端部内には、巻線20,40を構成する線材の端部20a,40aが配置されている。端部20a,40aは、支持部9bの軸方向外側の端部に加締められた状態で溶接する等して、支持部9bに固定される。
【0024】
次に、上記したトランス1における第一巻線20の巻き付け方法について説明する。以下の巻き付け方法の説明は、
図3~
図8の模式図を参照して行われる。
図4~
図8には、それぞれ異なる巻き付け方法が示されている。
図4~
図8では、トランス1のうちコア2及び第一巻線20のみを示している。
図4~
図8では、
図3と同様に、一対の内側片51が一体とされ、単にコア2として図示されている。
図4~
図8に記載の矢印は、第一巻線20の線材の巻き進める方向を模式的に示している。以下の説明では、
図3に示すように、コア2のうち、軸方向において第一巻線20の重複巻線21のうち他端鍔部12a側の端部に対応する部位を、第一部位2aとする。コア2のうち、軸方向において重複巻線21の中央鍔部12c側の端部に対応する部位を、第二部位2bとする。コア2のうち、軸方向において第一巻線20の非重複巻線22の中央鍔部12c側の端部に対応する部位を、第三部位2cとする。コア2のうち、軸方向において非重複巻線22の一端鍔部12b側の端部に対応する部位を、第四部位2dとする。
【0025】
図4に示す第一巻線20の巻き付け方法の第一例では、コア2の第一部位2aを線材の巻き付け開始部位Aとする。第一例では、まず、第一端子5aから第一部位2aまでコア2の外周面に沿って軸方向に線材を延ばし、巻き付け開始部位Aである第一部位2aから第四部位2dまで、線材を一層分巻き付ける。これにより、第一部位2aから第二部位2bまでの範囲に一層の重複巻線21が形成され、第一部位2aから第四部位2dまでの範囲に一層の重複巻線21を含む一層のベース層23が形成される。続いて、第四部位2dから第三部位2cまでの範囲で線材を往復させながら複数層(
図4では二層)分巻き付ける。これにより、第三部位2cから第四部位2dまでの範囲に、ベース層23を含む複数層(
図4では三層)の非重複巻線22が形成される。非重複巻線22の形成後には、第四部位2dから第二端子5bまで線材を延ばして第二端子5bに線材の端部を接続することで、第一例の巻き付け方法が完了する。
【0026】
図5に示す第一巻線20の巻き付け方法の第二例では、コア2の第二部位2bを線材の巻き付け開始部位Aとする。第二例では、まず、巻き付け開始部位Aである第二部位2bから第一部位2aまで、線材を一層分巻き付ける。これにより、第一部位2aから第二部位2bまでの範囲に、一層の重複巻線21が形成される。続いて、第一部位2aから第一端子5aまで線材を延ばして第一端子5aに線材の一端を接続する。また、巻き付け開始部位Aである第二部位2bから第四部位2dまで線材を一層分巻き付ける。これにより、第一部位2aから第四部位2dまでの範囲に、一層の重複巻線21を含む一層のベース層23が形成される。続いて、第四部位2dから第三部位2cまでの範囲で線材を往復させながら複数層(
図5では二層)分巻き付ける。これにより、第三部位2cから第四部位2dまでの範囲に、ベース層23を含む複数層(
図5では三層)の非重複巻線22が形成される。非重複巻線22の形成後には、第四部位2dから第二端子5bまで線材を延ばして第二端子5bに線材の他端を接続することで、第二例の巻き付け方法が完了する。
【0027】
図6に示す第一巻線20の巻き付け方法の第三例では、コア2の第四部位2dを線材の巻き付け開始部位Aとする。第三例では、まず、第二端子5bから巻き付け開始部位Aである第四部位2dまで線材を延ばし、第四部位2dから第一部位2aまで、線材を一層分巻き付けする。これにより、第一部位2aから第二部位2bまでの範囲に、一層の重複巻線21が形成され、第一部位2aから第四部位2dまでの範囲に一層の重複巻線21を含む一層のベース層23が形成される。続いて、第一部位2aから第三部位2cまで線材を巻き付けずに軸方向に延ばした上で、第三部位2cから第四部位2dまでの範囲で線材を往復させながら複数層(
図6では二層)分巻き付ける。これにより、第三部位2cから第四部位2dまでの範囲に、ベース層23を含む複数層(
図6では三層)の非重複巻線22が形成される。非重複巻線22の形成後には、第三部位2c及び第四部位2dの何れかの部位から第一端子5aまで線材を延ばして第一端子5aに線材の他端を接続することで、第三例の巻き付け方法が完了する。
【0028】
図7に示す第一巻線20の巻き付け方法の第四例では、コア2の第四部位2dを線材の巻き付け開始部位Aとする。第四例では、まず、第二端子5bから巻き付け開始部位Aである第四部位2dまで線材を延ばし、第四部位2dから第一部位2aまでの範囲で線材を往復させながら複数層(
図7では二層)分巻き付ける。これにより、第一部位2aから第二部位2bまでの範囲に、複数層(
図7では二層)の重複巻線21が形成され、第一部位2aから第四部位2dまでの範囲に、複数層の重複巻線21を含む複数層(
図7では二層)のベース層23が形成される。続いて、第四部位2dから第三部位2cまでの範囲で、線材を一層分巻き付ける。これにより、第三部位2cから第四部位2dまでの範囲に、重複巻線21よりも一層分の多い複数層(
図7では三層)の非重複巻線22が形成される。非重複巻線22の形成後には、第三部位2c及び第四部位2dの何れかの部位から第一端子5aまで線材を延ばして第一端子5aに線材の他端を接続することで、第四例の巻き付け方法が完了する。なお、第四例においては、例えば複数層のベース層23を形成した後に、第四部位2dから第三部位2cまでの範囲で、線材を往復させながら複数層巻き付けてもよい。
【0029】
図8に示す第一巻線20の巻き付け方法の第五例では、コア2の第四部位2dを線材の巻き付け開始部位Aとする。第五例では、まず、第二端子5bから巻き付け開始部位Aである第四部位2dまで線材を延ばし、第四部位2dから第三部位2cまで線材を一層分巻き付ける。続いて、第三部位2cから第一部位2aまで線材を巻き付けずに軸方向に延ばし、第一部位2aから第四部位2dまで線材を一層分巻き付ける。これにより、第一部位2aから第二部位2bまでの範囲に、一層の重複巻線21が形成され、第一部位2aから第四部位2dまでの範囲に、ベース層23が形成される。ベース層23は、第一部位2aから第二部位2bまでの範囲では重複巻線21からなる一層、第三部位2cから第四部位2dまでの範囲では非重複巻線22を構成する二層となっている。続いて、第四部位2dから第三部位2cまでの範囲で、線材を複数層分巻き付ける。これにより、第三部位2cから第四部位2dまでの範囲に、重複巻線21よりも層数が多い複数層(
図8では三層)の非重複巻線22が形成される。非重複巻線22の形成後には、第三部位2c及び第四部位2dの何れかの部位から第一端子5aまで線材を延ばして第一端子5aに線材の他端を接続することで、第五例の巻き付け方法が完了する。なお、第五例においては、例えばベース層23を形成した後に、第四部位2dから第三部位2cまでの範囲で、線材を往復させながら複数層巻き付けてもよい。第一巻線20の巻き付け方法は、上記した第一例~第五例に限られなくてよい。
【0030】
トランス1では、第一巻線20と第二巻線40との電気的結合が、重複巻線21では密となっており、非重複巻線22では疎となっているため、第一巻線20と第二巻線40との間に生じるリーケージインダクタンスは、重複巻線21では小さくなり、非重複巻線22では大きくなる。このため、非重複巻線22における第一巻線20の巻き数を調整することで、リーケージインダクタンスを変化させて適当な大きさに調整することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るトランス1によれば、第一ボビン10は、第一筒部11における重複部位111よりも非重複部位112において、第一巻線20を第一筒部11の径方向の厚みが大きくなるように巻き付け可能に構成されている。これにより、製造者は、重複部位111における第一巻線20の径方向の厚みを変化させることなく、非重複部位112における第一巻線20の径方向の厚みを変化できる。このため、製造者は、重複部位111と径方向で重なる第二巻線40の径方向の厚みを変化させることなく、リーケージインダクタンスを調整できる。非重複部位112における第一巻線20の径方向の厚みを変化させることにより、重複部位111における第一巻線20及び第二巻線40の径方向の厚みを変化させる場合と比べて、第一巻線20及び第二巻線40の径方向の容積変化を小さく抑えることができる。
第一ボビン10は、第二ボビン30が組み付けられた状態において、第二筒部31と径方向に重なる重複部位111と、第二筒部31と径方向に重ならない非重複部位112とに、第一筒部11を軸方向に分割する中央鍔部12cを有している。これにより、製造者は、第一ボビン10と第二ボビン30とを組み付けるだけで、第二巻線40と径方向で重なる重複巻線21と、第二巻線40と径方向で重ならない非重複巻線22と、に第一巻線20を軸方向に分割できる。したがって、製造者は、第一ボビン10に中央鍔部12cが設けられていない場合と比べて、重複巻線21と非重複巻線22とを容易に形成できる。よって、製造者は、重複部位111及び非重複部位112のそれぞれにおいて、第一巻線20の径方向の厚みや軸方向の長さ等を容易に調整できる。
したがって、容積変化を小さく抑えながら、リーケージインダクタンスを自在に調整できる汎用性に優れたトランス1を提供できる。
【0032】
本実施形態では、第二ボビン30は、第一ボビン10に対して軸方向に相対移動可能に設けられている。これにより、製造者は、第一ボビン10と第二ボビンと30の軸方向の相対位置を調整できる。このため、製造者は、第一巻線20と第二巻線40との重なり部分の位置や軸方向の長さを調整できるので、リーケージインダクタンスを自在に調整できる。
【0033】
本実施形態では、第二ボビン30は、重複部位111の径方向外側に組み付けられている。これにより、製造者は、重複部位111における第一巻線20の径方向の厚みを変化させることなく、第二巻線40の径方向の厚みを変化できる。第二巻線40の径方向の厚みを変化させることにより、重複部位111における第一巻線20及び第二巻線40の径方向の厚みを変化させる場合と比べて、第一巻線20及び第二巻線40の径方向の容積変化を小さく抑えることができる。
また、製造者は、第一ボビン10に第二ボビン30が組み付けられた状態で、第二巻線40の径方向の厚みや軸方向の長さを容易に変更できる。したがって、製造者は、第二巻線40の径方向の厚みや軸方向の長さを調整することにより、リーケージインダクタンスを容易に調整できる。
【0034】
本実施形態では、第一巻線20は、線材を重複部位111及び非重複部位112に少なくとも一層ずつ巻き付けたベース層23を形成した上で、線材を非重複部位112に位置するベース層23の部位に重ねて巻き付けられている。これにより、第一巻線20を構成するために、線材を非重複部位112だけに複数層分巻き付けた後に重複部位111に巻き付ける場合と比較して、第一巻線20と第二巻線40との相対的な軸方向位置にバラツキが生じることを抑制することができる。また、第一巻線20に応力が生じることを抑制又は防止することができる。
【0035】
上記の点について具体的に説明すれば、第一巻線20の線材を非重複部位112だけに複数層分巻き付けた後に重複部位111に巻き付けると、線材が非重複部位112から重複部位111へ径方向内側に向かうことになる。このため、第二巻線40が第一巻線20のうち「径方向内側に向かう線材の部分」と干渉する。さらに、「径方向内側に向かう線材の部分」の態様にはバラツキが生じやすい。このため、第一巻線20と第二巻線40との相対的な軸方向位置にバラツキが生じてしまう。また、第二巻線40が「径方向内側に向かう線材の部分」と干渉することで、「径方向内側に向かう線材の部分」に応力が生じてしまう。
【0036】
これに対し、
図4~
図8に例示したように線材を巻き付けて第一巻線20を構成する場合には、非重複部位112から重複部位111へ「径方向内側に向かう線材の部分」が存在しない。これにより、第一巻線20と第二巻線40との相対的な軸方向位置にバラツキが生じることを抑制することができる。また、第一巻線20が第二巻線40と干渉することがないため、第二巻線40によって第一巻線20の線材に応力がかかることを抑制又は防止することができる。
【0037】
本実施形態では、第二筒部31と第一筒部11と径方向の離間距離は、第一巻線20の線材の径寸法の2倍以上となっている。これにより、製造者は、第二巻線40の径方向の厚みを変化させることなく、第二筒部31と第一筒部11と間の空間に第一巻線20を複数回巻き付けることができる。したがって、製造者は、第一巻線20うち重複巻線21の径方向の厚みを変化させることより、第一巻線20及び第二巻線40の径方向の厚みを変化させる場合と比べて、トランス1全体の容積変化を抑えながら、リーケージインダクタンスを調整できる。
【0038】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0039】
本発明においては、
図9に示すように、第二巻線40が第一巻線20の重複巻線21の径方向内側に配置されてもよい。
図9は、
図3に対応する模式図である。以下、
図9に示すトランス1の構成を具体的に説明する。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0040】
第一筒部11は、小径部15と、大径部16とを有している。小径部15は、筒状に形成されている。小径部15の内径寸法は、コア2の外径寸法よりも大きい。小径部15の軸方向両端部には、第一鍔部12の一端鍔部12bと中央鍔部12cとが設けられ、小径部15から径方向外側に張り出している。大径部16は、小径部15と同軸の筒状に形成されている。大径部16の内径寸法は、小径部15の内径寸法よりも大きい。大径部16は、軸方向において中央鍔部12cから一端鍔部12bとは反対側に延びている。大径部16のうち軸方向において中央鍔部12cとは反対側の端部には、第一鍔部12の他端鍔部12aが設けられ、大径部16から径方向外側に張り出している。他端鍔部12a及び中央鍔部12cの内径寸法は一端鍔部12bの内径寸法よりも大きく、他端鍔部12aの外径寸法は一端鍔部12b及び中央鍔部12cの外径寸法と略同じである。
【0041】
第二ボビン30の第二筒部31の内径寸法は、第一ボビン10の小径部15の内径寸法と略同じであり、第二ボビン30の第二鍔部32の外径寸法は、第一ボビン10の大径部16の内径寸法よりも小さい。第二ボビン30は、大径部16の内側に挿通されている。第二ボビン30が大径部16に挿通されている状態で、第二ボビン30は、軸方向において第一ボビン10の小径部15のうち大径部16よりも径方向内側に位置する部位と隣り合う。これにより、第二ボビン30の第二筒部31に巻き付けられた第二巻線40が、第一ボビン10の大径部16に巻き付けられた第一巻線20の重複巻線21の径方向内側に配置され、小径部15に巻き付けられた第一巻線20の非重複巻線22に対して軸方向に隣り合う。コア2は、第一ボビン10の小径部15の内側と、第一ボビン10の大径部16に挿通された第二ボビン30の内側とに挿通される。第二巻線40の線材の径寸法は、第一巻線20の線材の径寸法と略同じである。第二筒部31と第一筒部11と径方向の離間距離は、第一巻線20の線材の径寸法と略同じである。このため、第二筒部31には、第二巻線40を一層分巻き付け可能となっている。
【0042】
本変形例では、第二ボビン30は、重複部位111の径方向内側に組み付けられている。これにより、製造者は、第二巻線40の径方向の厚みを変化させることなく、重複部位111における第一巻線20の径方向の厚みを変化できる。重複部位111における第一巻線20の径方向の厚みを変化させることにより、重複部位111における第一巻線20及び第二巻線40の径方向の厚みを変化させる場合と比べて、第一巻線20及び第二巻線40の径方向の容積変化を小さく抑えることができる。
また、製造者は、第一ボビン10に第二ボビン30が組み付けられた状態で、重複部位111における第一巻線20の径方向の厚みや軸方向の長さを容易に変更できる。したがって、製造者は、重複部位111における第一巻線20の径方向の厚みや軸方向の長さを調整することにより、リーケージインダクタンスを容易に調整できる。
【0043】
本発明では、第二ボビン30は、樹脂成型された部品に限定されない。第二ボビン30は、例えば、第一巻線20の外周面に巻き付けられた絶縁テープであってもよい。
【0044】
本発明では、コア2の形状は、円柱状に限定されない。コア2は、例えば角柱状に形成されてもよい。
【0045】
本発明では、第一巻線20を二次巻線とし、第二巻線40を一次巻線としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 トランス
2 コア
10 第一ボビン
11 第一筒部
111 重複部位
112 非重複部位
12c 中央鍔部(壁部)
20 第一巻線
30 第二ボビン
31 第二筒部
40 第二巻線