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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141447
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20220921BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20220921BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20220921BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01F30/10 R
H01F30/10 E
H01F27/24 W
H01F41/12 F
H01F5/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041761
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 定勝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】針生 誠
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044BA04
(57)【要約】
【課題】巻線を構成する線材の発熱を抑制できるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、第一筒部10aを有する第一ボビン10と、第一筒部10aに巻き付けられる第一巻線30と、第一筒部10aに挿通され、第一筒部10a内の位置においてギャップ2cを有するコア2と、を備え、第一ボビン10は、第一筒部10aの径方向においてギャップ2cと重なる位置に、第一筒部10aの外周面から突出した壁部10bを有し、第一巻線30は、第一筒部10aにおける壁部10bの軸方向両側に巻き付けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部を有するボビンと、
前記筒部に巻き付けられる巻線と、
前記筒部に挿通され、前記筒部内の位置においてギャップを有するコアと、
を備え、
前記ボビンは、前記筒部の径方向において前記ギャップと重なる位置に、前記筒部の外周面から突出した壁部を有し、
前記巻線は、前記筒部における前記壁部の軸方向両側に巻き付けられるコイル部品。
【請求項2】
前記壁部は、前記外周面の周方向全体から突出している請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記壁部には、前記軸方向に貫通して前記巻線が通る案内通路が形成されている請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記軸方向における前記壁部の幅が、前記ギャップの幅よりも広くなっている請求項1~3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記軸方向における前記壁部の幅が、前記ギャップの幅よりも狭くなっており、
前記軸方向において前記壁部の端から前記ギャップの端に至る長さが、前記巻線の線径以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記ボビンは、前記軸方向に互いに連結される2つのボビン構成体を備え、一方の前記ボビン構成体に前記壁部が設けられている請求項1~5のいずれか1項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒状のボビンの内側にコアを挿通し、ボビンの外側に巻線を巻き付けたコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-088312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイル部品には、励磁インダクタンスを得るために、コアをボビンの内側において軸方向に分断することでコアにギャップを形成したものもある。この種のコイル部品では、コアのギャップに生じる漏れ磁束によって、巻線を構成する線材のうち径方向においてコアのギャップと重なる部分に渦電流損失が生じる。このため、コアのギャップと重なる線材部分が局所的に発熱しやすい、という問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、巻線を構成する線材の発熱を抑制できるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒部を有するボビンと、前記筒部に巻き付けられる巻線と、前記筒部に挿通され、前記筒部内の位置においてギャップを有するコアと、を備え、前記ボビンは、前記筒部の径方向において前記ギャップと重なる位置に、前記筒部の外周面から突出した壁部を有し、前記巻線は、前記筒部における前記壁部の軸方向両側に巻き付けられるコイル部品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコイル部品では、ボビンは、筒部の径方向においてギャップと重なる位置に、筒部の外周面から突出した壁部を有している。巻線は、筒部における壁部の軸方向両側に巻き付けられる。これにより、巻線の少なくとも一部が径方向においてギャップと重なることを抑制できる。このため、巻線がギャップの径方向外側に巻き付けられる場合と比較して、ギャップに生じる漏れ磁束が通る巻線の領域を狭めることができる。したがって、漏れ磁束が線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、線材の発熱を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
図2】上記コイル部品を示す分解斜視図である。
図3図1のIII-IIIの位置での上記コイル部品の要部を模式的に示す断面図である。
図4】上記コイル部品から第二ボビン及び第二巻線を取り除いた状態を模式的に示す側面図である。
図5】上記コイル部品の第一ボビンを模式的に示す分解斜視図である。
図6】本発明の第二実施形態に係るコイル部品において、コアのギャップと第一ボビンの壁部と第一巻線の線材との関係を示す模式図である。
図7】本発明の第三実施形態に係るコイル部品において、第二ボビン及び第二巻線を除いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第一実施形態〕
以下、図1図5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。図3図5では、本発明に係るコイル部品1の各構成を模式的に示している。本実施形態では、コイル部品1をトランスに適用している。図1及び図2に示すように、コイル部品1は、第一ボビン10(請求項の「ボビン」に相当)と、第二ボビン20と、第一巻線30と、第一巻線30と、第二巻線40と、カバー部品3と、コア2と、端子台8と、を備える。コイル部品1は、第一巻線30と第二巻線40との間に生じるリーケージインダクタンスを利用して共振コイルの機能を得る。
【0010】
図2及び図3に示すように、第一ボビン10は、硬質プラスチック等の電気的な絶縁性を有する材料からなる。第一ボビン10は、筒状の第一筒部10a(請求項の「筒部」に相当)と、第一筒部10aの軸方向の中途部に配置される壁部10bと、第一筒部10aの軸方向の一端に配置される第一鍔部10cと、を有している。
壁部10b及び第一鍔部10cは、それぞれ、第一筒部10aの外周面の周方向全体から径方向外側に突出している。以下、第一筒部10aの軸方向を単に「軸方向」、第一筒部10aの径方向を単に「径方向」、第一筒部10aの周方向を単に「周方向」とする。
【0011】
図2から図4に示すように、軸方向における壁部10bの幅は、後述する第一巻線30及び第二巻線40を構成する線材の線径よりも大きい。壁部10bには、当該壁部10bを軸方向に貫通して第一巻線30の線材が通る2つの案内通路10b1,10b2(第一案内通路10b1、第二案内通路10b2)が周方向に間隔をあけて形成されている。2つの案内通路10b1,10b2は、径方向において壁部10bの外周縁側に開口している。第一案内通路10b1は、軸方向に対して周方向に傾斜している。第二案内通路10b2は、周方向に直交している。第一鍔部10cの外縁は、軸方向から見て、壁部10bの外縁よりも径方向外側に位置している。軸方向において壁部10bから第一鍔部10cに至る距離は、軸方向において壁部10bから第一筒部10aのうち第一鍔部10cとは反対側の他端に至る距離よりも長い。
【0012】
図3及び図5に示すように、第一ボビン10は、軸方向に並んで互いに連結される2つのボビン構成体11,12(第一のボビン構成体11、第二のボビン構成体12)から構成されている。第一のボビン構成体11は、壁部10bと、第一筒部10aのうち壁部10bを基準として軸方向において第一鍔部10cとは反対側に配置される重複部位10a1と、を有している。重複部位10a1の内周面のうち壁部10bに対応する部分には、径方向外側に凹む凹部13が形成されている。凹部13は、周方向に沿って環状に形成されている。
【0013】
第二のボビン構成体12は、第一鍔部10cと、第一筒部10aのうち壁部10bを基準として軸方向において第一鍔部10c側に配置される非重複部位10a2と、を有している。非重複部位10a2の外径寸法は、重複部位10a1の外径寸法よりも小さい。非重複部位10a2の外径寸法は、凹部13の形成部分における重複部位10a1の部分の内径寸法と同等である。非重複部位10a2の内径寸法は、凹部13の形成部分を除く重複部位10a1の部分の内径寸法と同等である。第二のボビン構成体12は、その非重複部位10a2のうち第一のボビン構成体11側の一端部が凹部13の内側に挿通される。これにより、第二のボビン構成体12は、第一のボビン構成体11に連結される。第一のボビン構成体11と第二のボビン構成体12とを連結した状態では、第一のボビン構成体11の重複部位10a1の内周面と第二のボビン構成体12の非重複部位10a2の内周面とが面一となる。なお、非重複部位10a2の外径寸法は、重複部位10a1の外径寸法と同等であっても、重複部位10a1の外径寸法よりも大きくてもよい。また、第一ボビン10において、重複部位10a1及び非重複部位10a2の内径寸法が互いに異なり、重複部位10a1の内周面と非重複部位10a2の内周面とが階段状につながってもよい。
【0014】
第二ボビン20は、硬質プラスチック等の電気的な絶縁性を有する材料からなる。第二ボビン20は、筒状の第二筒部20aと、第二筒部20aの軸方向の一端部に配置される第二鍔部20bと、を有している。第二鍔部20bは、第二筒部20aの外周面の周方向全体から径方向外側に突出している。第二筒部20aの内径寸法は、第一ボビン10の壁部10bの外径寸法よりも大きい。第二筒部20aの内側には、第一ボビン10の第一のボビン構成体11が挿通されている。軸方向における第二筒部20aの両端は、軸方向において第一のボビン構成体11の内側に位置している。
なお、図3に示すように、第二鍔部20bは、第二筒部20aの軸方向の両端部に設けられてもよい。
【0015】
第一巻線30は、第一筒部10aの外周面に巻き付けることで筒状に形成されている。第一巻線30の線材は、複数本のエナメル線が撚り合わされたリッツ線である。第一巻線30は、電源回路(不図示)に接続される入力側の一次巻線である。第一巻線30は、軸方向における第一ボビン10の壁部10bの両側において線材を第一筒部10aの外周面に二層巻き付けて構成されている。すなわち、第一巻線30は、第一筒部10aの重複部位10a1の外周面と、第一筒部10aの非重複部位10a2の外周面とにそれぞれ二層ずつ巻き付けられている。以下の説明では、第一巻線30のうち、重複部位10a1に巻き付けられている部分を重複巻線31と呼び、非重複部位10a2に巻き付けられている部分を非重複巻線32と呼ぶ。非重複巻線32の軸方向の長さは、重複巻線31の軸方向の長さよりも長い。
【0016】
ここで、図2及び図3を参照して、第一巻線30の巻き付け方法の一例について説明する。第一巻線30を第一筒部10aに巻き付けるためには、まず、重複部位10a1のうち軸方向において壁部10b側の端部から、重複部位10a1のうち軸方向において壁部10b側のとは反対側の端部まで、外周面に線材を巻き付けて重複巻線31を形成する。続いて、第一巻線30の線材の一方の端部30aを、第一案内通路10b1(図5参照)を通して、非重複部位10a2側から引き出す。また、重複部位10a1のうち軸方向において壁部10b側の端部から、第二案内通路10b2に通して、非重複部位10a2の第一鍔部10cとは反対側の端部まで軸方向に直線状に線材を延ばす。続いて、非重複部位10a2の外周面に線材を巻き付けて非重複巻線32を形成する。最後に、第一巻線30の線材の他方の端部30aを、非重複部位10a2(図5参照)側から引き出すことで、第一巻線30の巻き付け方法が完了する。なお、第一筒部10aに巻き付けられる第一巻線30の層数は、一層でも三層以上であってもよい。また、第一巻線30における重複巻線31の層数と非重複巻線32の層数とが異なってもよい。第一巻線30の巻き付け方法は、上記した例に限られず、図4の模式図に示すような巻き付け方法を取ってもよい。
【0017】
図2に示すように、第二巻線40は、第二筒部20aの外周面に巻き付けることで筒状に形成されている。第二巻線40の線材は、複数本のエナメル線が撚り合わされたリッツ線である。第二巻線40は、負荷装置(不図示)に接続される出力側の二次巻線である。第一巻線30の重複巻線31及びこれを巻き付けた第一筒部10aの重複部位10a1を第二筒部20aに挿通した状態において、第二巻線40は、径方向において第一巻線30の重複巻線31と重なっている。なお、第二巻線40は、第二筒部20aに複数層巻き付けられてもよい。
【0018】
カバー部品3は、端壁部26と、カバー部27とを有している。端壁部26は、軸方向において、第二ボビン20を挟んで第一ボビン10とは反対側に設けられている。端壁部26は、軸方向を厚さ方向とする板状に形成されている。端壁部26の外形は、軸方向から見て第一鍔部10cの外形と同形状である。端壁部26には、当該端壁部26を軸方向に貫通する挿通孔26aが形成されている。挿通孔26aは、軸方向から見て第一筒部10aの内周面と同形状に形成されている。挿通孔26aは、第一筒部10aと連通する。
【0019】
カバー部27は、端壁部26の外縁の周方向の一部において径方向の外側に開口している。カバー部27の開口は、コイル部品1の第一巻線30及び第二巻線40を保護する充填樹脂(不図示)が注入されるカバー部品3の注入口3a(図1参照)として機能する。注入口3aは、第一巻線30の線材の端部30a及び第二巻線40の線材の端部40aの引出口としても機能する。
カバー部27は、軸方向に並ぶ第一カバー構成体27aと、第二カバー構成体27bとを有している。
第一カバー構成体27aは、端壁部26の外縁から第二ボビン20の第二鍔部20bの外縁まで軸方向に延びている。これにより、第一カバー構成体27aは、径方向において第一筒部10aの重複部位10a1及び第二筒部20aの外側に重なる。第一カバー構成体27aは、第一巻線30の重複巻線31と第二巻線40とを径方向外側から覆う。
第二カバー構成体27bは、軸方向において第二筒部20aの隣に連ねて形成されている。第二カバー構成体27bは、第二鍔部20bの外縁から第一ボビン10の第一鍔部10cの外縁まで軸方向に延びている。これにより、第二カバー構成体27bは、径方向において第一筒部10aの非重複部位10a2の外側に重なると共に第一カバー構成体27aに対して軸方向に並ぶ。第二カバー構成体27bは、第一巻線30の非重複巻線32を径方向外側から覆う。
【0020】
コア2は、例えばフェライト等の磁性材料からなる部材である。図2に示すように、コア2は、2つのコア片50により形成される。2つのコア片50は、略同一であるため、一方のコア片50についてのみ説明する。コア片50は、円柱状に形成された内側片51と、内側片51に対して径方向の両側に配置される2つの外側片52と、2つの外側片52を径方向に連結する連結片53と、を有している。
【0021】
内側片51の軸方向の長さは、2つのコア片50のうち第一ボビン10側のコア片50の方が長い。以下、2つのコア片50のうち第一ボビン10側のコア片50を第一円柱部2a、第二ボビン20側のコア片50を第二円柱部2bとする。
2つの外側片52はそれぞれ、厚さ方向が径方向のうち注入口3aの開口方向と直交する方向と一致する矩形板状に形成されている。2つの外側片52は、径方向において内側片51の両側に間隔をあけて位置する。外側片52の軸方向の長さは、2つのコア片50のうち第一ボビン10側のコア片50の方が長い。
連結片53は、厚さ方向が軸方向と一致する矩形板状に形成されている。連結片53には、内側片51の軸方向の端部が連なっている。連結片53のうち注入口3aが開口する側の端面には、凹部53aが形成されている。凹部53aは、その底部53a2から凹部53aが開口する連結片53の端面に向かうにしたがって広がるテーパ状に形成されている。凹部53aは、平坦な底部53a2と、底部53a2の両側から連結片53の端面まで傾斜して延びる平坦な2つの側部53a1とを有している。
【0022】
上述したコア片50は、注入口3aの開口方向から見てE字状に形成されている。2つのコア片50は、それぞれの内側片51を軸方向において互いに逆側から第一筒部10aの内部に挿通することで、第一ボビン10、第二ボビン20及びカバー部品3に取り付けられる。2つのコア片50を第一ボビン10、第二ボビン20及びカバー部品3に取り付けた状態では、2つのコア片50の外側片52の先端同士が当接する。当接した2つのコア片50の外側片52同士は、例えば接着等によって固定されている。2つのコア片50を第一ボビン10、第二ボビン20及びカバー部品3に取り付けた状態において、2つのコア片50の連結片53は、第一ボビン10、第二ボビン20及びカバー部品3を軸方向から挟むように配置されている。
第一筒部10aの内部に挿通された2つのコア片50の内側片51は、第一筒部10aの内部で軸方向に離間している。すなわち、第一筒部10aの内部に挿通された第一円柱部2aと第二円柱部2bとは、軸方向にギャップ2cを空けて配置されている。すなわち、コア2は、第一筒部10aの内側に位置する軸方向の中途部にギャップ2cを有する。ギャップ2cは、径方向において壁部10bと重なっている。軸方向におけるギャップ2cの幅D2は、軸方向における壁部10bの幅よりも短い。軸方向におけるギャップ2cの両端は、軸方向において壁部10bの内側に位置している。ギャップ2cは、径方向において第二巻線40と重ならない。
【0023】
端子台8は、カバー部品3の端壁部26と、第一ボビン10の第一鍔部10cとに1個ずつ設けられている。端子台8は、端壁部26及び第一鍔部10cにおける注入口3aの開口方向の端部に設けられている。端子台8は、端子台本体8aと、台座8bと、を備えている。2つの端子台8のうち端壁部26側の端子台8についてのみ説明し、第一鍔部10c側の端子台8は端壁部26側の端子台8と同様の構成であるため説明を省略する。
端子台8は、端壁部26と一体に形成されている。端子台本体8aは、端壁部26から軸方向外側に張り出している。端子台本体8aは、軸方向及び注入口3aの開口方向と直交する方向に延びている。端子台本体8aにおける注入口3aの開口方向と反対側の端面は、凹部53aに沿っている。これにより、端子台本体8aは、凹部53aに嵌め込まれる。台座8bは、端子台本体8aの長手方向の両端部に設けられた矩形板状の部材である。台座8bの板厚方向は、注入口3aの開口方向に一致している。台座8bは、凹部53aが開口する側の連結片53の端面上に載置されている。台座8bには、六角ナットが配置されるナット配置部8cが形成されている。ナット配置部8cは、注入口3aの開口方向とは反対側からみて六角形状に形成された凹部である。各台座8bには、端子9が取り付けられている。
【0024】
端子9は、例えば銅等の金属材料から形成されている。端子9は、端子本体9aと、支持部9bと、を有している。
端子本体9aは、板厚方向が注入口3aの開口方向と一致する矩形板状に形成されている。端子本体9aは、台座8b上に載置されている。端子本体9aは、台座8b側に延びる爪部を有し、爪部によるスナップフィットによって、台座8bに固定されている。端子本体9aには、端子本体9aを板厚方向に貫通する貫通孔9cが設けられている。端子本体9aと台座8bとの間には、六角ナットが配置されている。当該六角ナットは、台座8bのナット配置部8c内に回転不可に配置されている。端子本体9aには、例えばボルト締結により、外部の電源回路の端子(不図示)が接続される。
支持部9bは、一対の端子本体9aの内側に設けられている。支持部9bは、軸方向に沿って延びている。支持部9bの軸方向外側の端部は、端子本体9aよりも軸方向外側に位置している。支持部9bの軸方向外側の端部は、軸方向から見て、一対の端子本体9aにおける対向方向内側に開口するU字状に形成されている。支持部9bの軸方向外側の端部内には、巻線30,40を構成する線材の端部30a,40aが配置されている。端部30a,40aは、支持部9bの軸方向外側の端部に加締められた状態で溶接する等して、支持部9bに固定される。
【0025】
コイル部品1が適用されたトランスでは、第一巻線30と第二巻線40との電気的結合が、重複巻線31では密となっており、非重複巻線32では疎となっているため、第一巻線30と第二巻線40との間に生じるリーケージインダクタンスは、重複巻線31では小さくなり、非重複巻線32では大きくなる。このため、第一巻線30の非重複巻線32の巻き数を調整することで、第一巻線30と第二巻線40との相対的な位置関係や、第一巻線30の重複巻線31及び第二巻線40の巻き数を変えることなく、リーケージインダクタンスを変化させることができる。これにより、トランスの容積の変化を小さく抑えながら、リーケージインダクタンスを適当な大きさに調整することができる。
【0026】
以上説明したように、第一実施形態に係るコイル部品1によれば、第一ボビン10は、第一筒部10aの径方向においてギャップ2cと重なる位置に、第一筒部10aの外周面から突出した壁部10bを有している。第一巻線30は、第一筒部10aにおける壁部10bの軸方向両側に巻き付けられる。これにより、第一巻線30の少なくとも一部が径方向においてギャップ2cと重なることを抑制できる。このため、第一巻線30がギャップ2cの径方向外側に巻き付けられる場合と比較して、ギャップ2cに生じる漏れ磁束が通る第一巻線30の領域を狭めることができる。したがって、漏れ磁束が第一巻線30の線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、第一巻線30の線材の発熱を抑制できる。
【0027】
第一実施形態では、壁部10bは、第一筒部10aの外周面の周方向全体から突出している。これにより、壁部10bよりも軸方向両外側に巻線を巻き付けることで、第一巻線30が径方向においてギャップ2cと重なることを周方向全体に亘って確実に抑制できる。このため、壁部10bが外周面の周方向の一部から突出している場合と比較して、ギャップ2cに生じる漏れ磁束が通る第一巻線30の領域を狭めることができる。したがって、漏れ磁束が第一巻線30の線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、第一巻線30の線材の発熱を抑制できる。
【0028】
第一実施形態では、壁部10bには、軸方向に貫通して巻線が通る案内通路10b1,10b2が形成されている。これにより、第一巻線30を構成する線材を案内通路10b1,10b2に通すことができる。このため、壁部10bの径方向外側に線材を周方向に巻き付けることなく、壁部10bよりも軸方向両外側に第一巻線30を巻き付けることができる。よって、壁部10bの径方向外側に第一巻線30の線材を周方向に巻き付ける場合と比較して、ギャップ2cに生じる漏れ磁束が通る第一巻線30の領域を狭めることができる。したがって、漏れ磁束が第一巻線30の線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、第一巻線30の線材の発熱を抑制できる。
【0029】
第一実施形態では、第一案内通路10b1は、第一筒部10aの軸方向に対して周方向に傾斜している。このため、第一巻線30において、線材が第一筒部10aにおいて巻き付けられる方向(概ね周方向)と線材が第一案内通路10b1において通る方向との角度差を小さくすることができる。これにより、線材を第一案内通路10b1に通すために線材を折り曲げる角度を小さくすることができる。したがって、線材のうち第一案内通路10b1を通る部分に係る応力を軽減することができる。
【0030】
第一実施形態では、軸方向における壁部10bの幅が、ギャップの幅D2よりも広くなっている。これにより、ギャップ2cより径方向外側に第一巻線30を巻き付けることができるので、第一巻線30が径方向においてギャップ2cと重なることを防止できる。このため、第一巻線30がギャップ2cの径方向外側に巻き付けられる場合と比較して、ギャップ2cに生じる漏れ磁束が通る第一巻線30の領域を狭めることができる。したがって、漏れ磁束が第一巻線30の線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、第一巻線30の線材の発熱を抑制できる。
【0031】
第一実施形態では、第一ボビン10は、第一筒部10aの軸方向の一端において第一筒部10aの外周面から突出した環状の第一鍔部10cを有する。このため、第一筒部10aに巻き付けられた第一巻線30は、第一鍔部10cによって第一筒部10aの軸方向外側から支持される。したがって、第一巻線30の線材が第一筒部10aの軸方向外側に巻き崩れることを抑制又は防止することができる。
【0032】
第一実施形態では、第一ボビン10は、軸方向に配列されて互いに連結される第一のボビン構成体11と第二のボビン構成体12とを備えている。これにより、軸方向の長さが異なる第一のボビン構成体11と第二のボビン構成体12とをそれぞれ複数種類用意しておくことにより、これら複数種類の第一のボビン構成体11と第二のボビン構成体12とを適宜組み合わせて、より多くの種類の第一ボビン10を簡単に製造できる。
さらに、壁部10bは、第一のボビン構成体11に設けられているので、第二のボビン構成体12を適宜組み合わせることで、壁部10bの位置を容易に調整できる。したがって、コア2の仕様変更に伴うギャップ2cの位置が変化した場合であっても、ギャップ2cに生じる漏れ磁束が通る第一巻線30の領域を狭めることができる。よって、漏れ磁束が第一巻線30の線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、第一巻線30の線材の発熱を抑制できる。
【0033】
第一実施形態において、第一鍔部10cは、第一筒部10aの軸方向の一端だけではなく、第一筒部10aの軸方向の他端にも設けられてもよい。第一筒部10aの他端に設けられる第一鍔部10cは、第一筒部10aに一体に形成されてもよいし、第一筒部10aと別個に形成された上で第一筒部10aに連結されてもよい。また、第一ボビン10は、第一鍔部10cを有していなくてもよい。
【0034】
第一実施形態において、軸方向におけるコア2のギャップ2cの両端は、軸方向における壁部10bの両端と重なってもよい。
【0035】
〔第二実施形態〕
次に、図6を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。図6では、第二ボビン20及び第二巻線40を省略している。
【0036】
図6に示すように、本実施形態のコイル部品1Aは、第一実施形態のコイル部品1と同様の構成を備えるが、以下の点で第一実施形態のコイル部品1と相異する。軸方向におけるコア2のギャップ2cの幅D2は、軸方向における第一ボビン10の壁部10bの幅よりも長い。軸方向におけるギャップ2cの両端は、軸方向において壁部10bの外側に位置している。軸方向において壁部10bの第一円柱部2a側の端からギャップ2cの第一円柱部2a側の端に至る長さD3、及び、軸方向において壁部10bの第二円柱部2b側の端からギャップ2cの第二円柱部2b側の端に至る長さD4はそれぞれ、第一巻線30を構成する線材の線径D1以下となっている。
【0037】
第二実施形態によれば、基本的に第一実施形態と同様の効果を奏するが、以下の点で第一実施形態と相異する。第二実施形態では、軸方向におけるコア2のギャップ2cの両端が軸方向において壁部10bの外側に位置するため、第一筒部10aに巻き付けられて周方向に延びる第一巻線30の線材の一部が軸方向において壁部10bの近くに位置することで、当該線材の一部が径方向においてギャップ2cと重なり得る。ただし、軸方向において壁部10bの端からギャップ2cの端に至る長さD3,D4が、第一巻線30の線材の線径D1以下である。これにより、壁部10bと軸方向で隣り合う第一巻線30の線材の全体が径方向においてギャップ2cと重なることを防止できる。このため、軸方向において壁部10bの端からギャップ2cの端に至る長さD3,D4が、第一巻線30の線材の線径よりも大きい場合と比較して、ギャップ2cに生じる漏れ磁束が通る第一巻線30の領域を狭めることができる。したがって、漏れ磁束が第一巻線30の線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、第一巻線30の線材の発熱を抑制できる。
【0038】
第二実施形態において、軸方向におけるコア2のギャップ2cの両端のうち一方の端は、軸方向において壁部10bの内側に位置してもよいし、軸方向における壁部10bの端と重なってもよい。
【0039】
〔第三実施形態〕
次に、図7を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。図7では、第二ボビン20及び第二巻線40を省略している。
【0040】
図7に示すように、本実施形態のコイル部品1Bは、第一実施形態のコイル部品1と同様の構成を備えるが、以下の点で第一実施形態のコイル部品1と相異する。第一ボビン10において、第一筒部10aの外周面から突出する壁部10bの突出高さは、径方向における第一巻線30の厚さよりも小さく、第一巻線30を構成する線材の線径と略同じとなっている。壁部10bには、壁部10bを軸方向に貫通する案内通路10b3が一つだけ形成されている。案内通路10b3は、例えば第一実施形態の第一案内通路10b1及び第二案内通路10b2(図5参照)のいずれか一方と同様である。第一鍔部10cは、第一筒部10aの軸方向の両端に形成されている。第一筒部10aの重複部位10a1と非重複部位10a2とは一体に形成されている。
【0041】
第一巻線30は、線材を第一筒部10aの外周面に一層巻き付けたベース層33と、線材をベース層33の径方向外側に一層重ねて巻き付けた第二層34とを有する。ベース層33を構成する線材は、軸方向における壁部10bの両側に位置する重複部位10a1の外周面と非重複部位10a2の外周面とにおいて、主に第一筒部10aの周方向に延びるように巻き付けられている。ベース層33を構成する線材は、壁部10bの案内通路10b3において主に第一筒部10aの軸方向に延びている。径方向におけるベース層33の厚さは、径方向における壁部10bの突出高さと略同じとなっている。第二層34を構成する線材は、ベース層33及び壁部10bの径方向外側に重なるように、主に第一筒部10aの周方向に延びるように巻き付けられている。
【0042】
第三実施形態によれば、基本的に第一実施形態と同様の効果を奏するが、以下の点で第一実施形態と相異する。第一巻線30のベース層33を構成する線材のうち径方向においてコア2のギャップ2cと重なる部分は、壁部10bの案内通路10b3を通ることで、主に第一筒部10aの軸方向に延びる。これにより、コア2のギャップ2cと重なるベース層33の線材の長さを短く抑えて、ギャップ2cに生じる漏れ磁束が通るベース層33の領域を狭めることができる。したがって、漏れ磁束がベース層33の線材を通過することによって生じる渦電流損失を抑制できるので、ベース層33をなす線材の発熱を抑制できる。
【0043】
一方、第一巻線30の第二層34を構成する線材のうち径方向においてコア2のギャップ2cと重なる部分(重複部分)は、第一筒部10aの周方向に延びるためにギャップ2cと重なる線材の長さが長くなるが、径方向においてベース層33よりもコア2のギャップ2cから離れて位置する。このため、コア2のギャップ2cに生じる漏れ磁束によって第二層34を構成する線材の重複部分に生じる渦電流損失を小さく抑えて、第二層34を構成する線材の発熱を抑えることができる。したがって、第一実施形態と同様に、第一巻線30を構成する線材の発熱を抑制できる。
【0044】
第三実施形態において、第一巻線30のベース層33は、第一筒部10aの外周面に複数層巻き付けられてもよい。また、第一巻線30の第二層34は、ベース層33及び壁部10bの径方向外側に複数層巻き付けられてもよい。
【0045】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、第一巻線30を二次巻線とし、第二巻線40を一次巻線としてもよい。また、第二巻線40線材の線径は、第一巻線30の線材の線径D1と同等であってもよく、第一巻線30の線材の線径D1よりも大きくても小さくてもよい。
【0046】
本発明において、コイル部品1は第二ボビン20を備えなくてもよい。例えば、第一巻線30の外周面に絶縁テープを巻き付けて当該絶縁テープの上から第二巻線40を巻き付けてもよい。
【0047】
本発明において、壁部10bは、第一筒部10aの外周面の周方向全体から径方向外側に突出していなくてもよい。壁部10bは、第一筒部10aの外周面の周方向における少なくとも一部から径方向外側に突出していればよい。
【0048】
本発明のコイル部品1は、トランスに限らずチョークコイル等に適用されてもよい。コイル部品は、少なくとも第一ボビン10と、第一巻線30と、コア2とを備えていればよい。
【符号の説明】
【0049】
1,1A,1B コイル部品
2 コア
2c ギャップ
10 第一ボビン(ボビン)
10a 第一筒部(筒部)
10b 壁部
10b1,10b2,10b3 案内通路
11 第一のボビン構成体(ボビン構成体)
12 第二のボビン構成体(ボビン構成体)
30 第一巻線(巻線)
D1 線径
D2 幅
D3,D4 壁部10bの端からギャップ2cの端に至る長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7