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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141448
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20220921BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20220921BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01F30/10 E
H01F30/10 J
H01F30/10 G
H01F41/12 F
H01F41/12 A
H01F5/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041762
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 定勝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】針生 誠
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044AD07
(57)【要約】
【課題】コイル部品において、樹脂に起因するコアの割れを防いで、コイル部品の信頼性を向上することができるようにする。
【解決手段】コイル部品1は、筒部23,31を有するボビン10と、筒部23,31に巻き付けられる巻線3,7と、ボビン10に取り付けられ、巻線3,7を外側から覆うカバー部品21と、を備え、カバー部品21は、ボビン10に取り付けられることにより、筒部23,31との間に樹脂充填空間を形成するとともに、充填樹脂を注入するための注入口を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部を有するボビンと、
前記筒部に巻き付けられる巻線と、
前記ボビンに取り付けられ、前記巻線を外側から覆うカバー部品と、
を備え、
前記カバー部品は、前記ボビンに取り付けられることにより、前記筒部との間に樹脂充填空間を形成するとともに、樹脂を注入するための注入口を形成するコイル部品。
【請求項2】
前記ボビンは、
第一筒部を有する第一ボビンと、
前記第一筒部が挿通される第二筒部を有する第二ボビンと、
を有し、
前記第一筒部は、
径方向において前記第二筒部と重なる重複部位と、
軸方向において前記重複部位の隣に位置することで径方向において前記第二筒部と重ならない非重複部位と、
を有する請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記ボビンは、
第一筒部を有する第一ボビンと、
軸方向において前記第一筒部の隣に位置する第二筒部を有する第二ボビンと、
を有する請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記ボビンは、前記樹脂充填空間を、前記第一筒部よりも径方向外側に形成される第一空間と、前記第二筒部よりも径方向外側に形成される第二空間と、に区画する区画壁部を備える請求項2または請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記カバー部品は、
径方向において前記第二筒部の外側に重なる第一カバー構成体と、
軸方向において前記第二筒部の隣に連ねて形成され、径方向において前記第一筒部の外側に重なると共に前記第一カバー構成体に対して軸方向に並ぶ第二カバー構成体と、
を有する請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記ボビンは、
第一筒部を有する第一ボビンと、
前記第一筒部が挿通される第二筒部を有する第二ボビンと、
前記樹脂充填空間を、前記第一筒部よりも径方向外側かつ前記第二筒部よりも径方向内側に形成される第一空間と、前記第二筒部よりも径方向外側に形成される第二空間と、に区画する区画壁部と、
を有し、
前記第一筒部は、径方向において前記第二筒部と重なる重複部位を有し、
前記注入口は、
前記第一筒部よりも径方向外側に設けられ、前記第一空間と連通し、径方向外側に開口する第一注入口と、
前記第二筒部よりも径方向外側に設けられ、前記第二空間と連通し、径方向外側に開口する第二注入口と、
を有する請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第一注入口は、前記第二筒部よりも軸方向両外側に一対設けられ、前記第二筒部よりも径方向外側に開口する請求項6に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒状のボビンに巻線(コイル)を巻き付け、ボビンに二つのE型のコア片からなるコアを取り付けたコイル部品(リアクトル)が開示されている。特許文献1のコイル部品では、ボビン、巻線及びコアを収容したケース内に樹脂を充填する等して、ボビン、巻線及びコアが樹脂によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-147106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコイル部品では、コアも樹脂によって覆われているため、コアに触れる樹脂の熱変形や吸湿に基づく樹脂の膨張収縮によってコアに応力がかかってしまう。コアに応力が作用するとコアが割れてしまう可能性があるため、コイル部品の信頼性が低い、という問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、樹脂に起因するコアの割れを防いで、コイル部品の信頼性を向上することができるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒部を有するボビンと、前記筒部に巻き付けられる巻線と、前記ボビンに取り付けられ、前記巻線を外側から覆うカバー部品と、を備え、前記カバー部品は、前記ボビンに取り付けられることにより、前記筒部との間に樹脂充填空間を形成するとともに、樹脂を注入するための注入口を形成するコイル部品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコイル部品によれば、カバー部品は、ボビンに取り付けられることにより、筒部との間に樹脂充填空間を形成するとともに、樹脂を注入するための注入口を形成している。これにより、コアと樹脂とがボビン及びカバー部品によって隔離されるため、樹脂はコアに触れない。このため、樹脂の熱変形や吸湿によって樹脂が膨張収縮しても、樹脂の膨張収縮に基づいてコアに応力がかかることを防止することができる。したがって、樹脂に起因するコアの割れを防いで、コイル部品の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態に係るトランスを示す斜視図である。
図2】上記トランスを示す分解斜視図である。
図3】上記トランスにおける第一ボビンを示す分解斜視図である。
図4図1のIV-IVの位置での上記トランスを示す断面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係るトランスの第一変形例を示す分解斜視図である。
図6】上記トランスを示す断面図である。
図7】本発明の第一実施形態に係るトランスの第二変形例を示す分解斜視図である。
図8】上記トランスを示す断面図である。
図9】本発明の第一実施形態に係るトランスの第三変形例を示す分解斜視図である。
図10】上記トランスを示す断面図である。
図11】本発明の第一実施形態に係るトランスの第四変形例を示す分解斜視図である。
図12】上記トランスを示す断面図である。
図13】本発明の第二実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
図14】上記コイル部品を示す分解斜視図である。
図15図13のXV-XVの位置での上記コイル部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第一実施形態〕
以下、図1図4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。本実施形態では、図1及び図2に示すように、コイル部品1は、トランス1Aに適用されている。コイル部品1は、ボビンケース2と、第一巻線3と、第二巻線7と、充填樹脂4(請求項の「樹脂」に相当)と、コア5と、端子台8と、を備える。
【0010】
ボビンケース2は、硬質プラスチック等の電気的な絶縁性を有する材料からなる。ボビンケース2は、例えばエポキシ樹脂やウレタン樹脂、シリコン樹脂等から形成されている。図2に示すように、ボビンケース2は、ボビン10と、カバー部品21と、を備えている。
【0011】
ボビン10は、第一ボビン20と、第二ボビン30と、を有している。
第一ボビン20は、第一巻線3が巻き付けられる円筒状の第一筒部23と、第一筒部23の軸方向の中央部に配置される壁部24aと、第一筒部23における軸方向の一端に配置される第一鍔部24と、を有している。
壁部24a及び第一鍔部24は、それぞれ第一筒部23の外周面から径方向外側に張り出している。以下、第一筒部23の軸方向を単に「軸方向」、第一筒部23の径方向を単に「径方向」、第一筒部23の周方向を単に「周方向」とする。
【0012】
図3及び図4に示すように、第一ボビン20は、軸方向に並んで互いに連結される第一のボビン構成体20a及び第二のボビン構成体20bから構成されている。
第一のボビン構成体20aは、壁部24aと、第一筒部23のうち壁部24aを基準として軸方向において第一鍔部24とは反対側に配置される重複部位23aと、を有している。重複部位23aの内周面のうち壁部24aに対応する部分には、径方向外側に凹む凹部23cが形成されている。凹部23cは、周方向に沿って環状に形成されている。
第二のボビン構成体20bは、第一鍔部24と、第一筒部23のうち壁部24aを基準として軸方向において第一鍔部24側に配置される非重複部位23bと、を有している。非重複部位23bは、軸方向において重複部位23aの隣に位置している。非重複部位23bの外径寸法は、重複部位23aの外径寸法よりも小さい。非重複部位23bの外径寸法は、凹部23cの形成部分における重複部位23aの内径寸法と同等である。非重複部位23bの内径寸法は、凹部23cの形成部分を除く重複部位23aの部分の内径寸法と同等である。第二のボビン構成体20bは、その非重複部位23bのうち第一のボビン構成体20a側の一端部が凹部23cの内側に挿通される。これにより、第二のボビン構成体20bは、第一のボビン構成体20aに連結される。第一のボビン構成体20aと第二のボビン構成体20bとが連結された状態では、第二のボビン構成体20bの非重複部位23bの内周面は、第一のボビン構成体20aの重複部位23aの内周面と面一となる。
【0013】
壁部24aには、当該壁部24aを軸方向に貫通して第一巻線3の線材が通る二つの案内通路24a1,24a2が周方向に間隔をあけて形成されている。第一案内通路24a1は、軸方向に対して周方向に傾斜している。第二案内通路24a2は、周方向に直交している。
【0014】
図2及び図4に示すように、第二ボビン30は、第一筒部23における重複部位23aの径方向外側に配置されている。第二ボビン30は、第一ボビン20に対して軸方向にスライドして相対移動可能に組み付けられている。第二ボビン30は、第二筒部31と、第二鍔部32とを有している。
第二筒部31は、筒状に形成されている。第二筒部31の軸方向の長さは、第一のボビン構成体20aの軸方向の長さと同等である。第二筒部31の内径寸法は、第一筒部23の外径寸法よりも大きい。第二筒部31の内部に第一筒部23が挿通されることで、第二筒部31は第一筒部23と同軸に配置される。第二筒部31は、径方向において第一筒部23の重複部位23aに重なると共に、径方向において第一筒部23の非重複部位23bに重ならないように配置される。
第二鍔部32は、第二筒部31における軸方向で壁部24a側の一端に配置されている。第二鍔部32は、第二筒部31の外周面から径方向外側に張り出している。
【0015】
カバー部品21は、端壁部26と、カバー部27とを有している。端壁部26は、軸方向において、第二ボビン30を挟んで第一ボビン20とは反対側に設けられている。端壁部26は、軸方向を厚さ方向とする板状に形成されている。端壁部26の外形は、軸方向から見て第一鍔部24の外形と同形状である。端壁部26には、当該端壁部26を軸方向に貫通する挿通孔26aが形成されている。挿通孔26aは、軸方向から見て第一筒部23の内周面と同形状に形成されている。挿通孔26aは、第一筒部23と連通する。
【0016】
カバー部27は、端壁部26の外縁の周方向の一部において径方向の外側に開口している。カバー部27は、軸方向に並ぶ第一カバー構成体27aと、第二カバー構成体27bとを有している。第一カバー構成体27aは、端壁部26の外縁から第二ボビン30の第二鍔部32の外縁まで軸方向に延びている。これにより、第一カバー構成体27aは、径方向において第一筒部23の重複部位23a及び第二筒部31の外側に重なる。第二カバー構成体27bは、軸方向において第二筒部31の隣に連ねて形成されている。第二カバー構成体27bは、第二鍔部32の外縁から第一ボビン20の第一鍔部24の外縁まで軸方向に延びている。これにより、第二カバー構成体27bは、径方向において第一筒部23の非重複部位23bの外側に重なると共に第一カバー構成体27aに対して軸方向に並ぶ。
上述したカバー部品21は、例えば接着剤等を用いてボビン10に取り付けられる。カバー部品21は、ボビン10に取り付けられることにより、径方向における第一筒部23及び第二筒部31の外側を囲む。これにより、第一筒部23及び第二筒部31とカバー部品21との間に樹脂充填空間Sが形成されている。樹脂充填空間Sには、電気的な絶縁性を有する充填樹脂4が充填される。端壁部26の外縁の周方向の一部に形成されたカバー部27の開口は、ボビンケース2に形成された注入口2aとなる。注入口2aは、樹脂充填空間Sに充填樹脂4を注入するためのものである。注入口2aは、第一筒部23の径方向外側に開口している。
【0017】
第一巻線3は、電源回路(不図示)に接続される入力側の一次巻線である。第一巻線3は、第一筒部23の外周面に対してその周方向に線材を巻き付けることにより形成されている。すなわち、第一巻線3は、第一ボビン20を介してコア5に巻き付けられることで、筒状に形成されている。第一巻線3の線材は、複数本のエナメル線が撚り合わされたリッツ線である。第一巻線3は、カバー部品21によって外側から覆われている。第一巻線3の線材の両端部3aは、注入口2aからボビンケース2の外側に引き出される。
第二巻線7は、負荷装置(不図示)に接続される出力側の二次巻線である。第二巻線7は、第二筒部31の外周面に対してその周方向に線材を巻き付けることにより形成されている。すなわち、第二巻線7は、第二ボビン30を介してコア5に巻き付けられることで、筒状に形成されている。第二巻線7と第一巻線3との間には、第二筒部31が介在する。これにより、第二巻線7は、第二ボビン30によって第一巻線3に対して絶縁された状態で、第一巻線3よりも径方向外側に巻き付けられる。第二巻線7の線材は、複数本のエナメル線が撚り合わされたリッツ線である。第二巻線7の線材の線径は、第一巻線3の線材の線径よりも大きい。第二巻線7は、カバー部品21によって外側から覆われている。第二巻線7の線材の両端部7aは、注入口2aからボビンケース2の外側に引き出される。
【0018】
コア5は、例えばフェライト等の磁性材料からなる部材である。図2に示すように、コア5は、2つのコア片50により形成される。2つのコア片50は、略同一であるため、一方のコア片50についてのみ説明する。コア片50は、円柱状に形成された内側片51と、内側片51に対して径方向の両側に配置された2つの外側片52と、2つの外側片52を径方向に連結する連結片53と、を有している。
【0019】
内側片51の軸方向の長さは、2つのコア片50のうち第一ボビン20側のコア片50の方が長い。
2つの外側片52はそれぞれ、厚さ方向が径方向のうち注入口2aの開口方向と直交する方向と一致する矩形板状に形成されている。2つの外側片52は、径方向において内側片51の両側に間隔をあけて位置する。外側片52の軸方向の長さは、2つのコア片50のうち第一ボビン20側のコア片50の方が長い。
連結片53は、厚さ方向が軸方向と一致する矩形板状に形成されている。連結片53には、内側片51の軸方向の端部が連なっている。連結片53のうち注入口2aが開口する側の端面には、凹部53aが形成されている。凹部53aは、その底部53a2から凹部53aが開口する連結片53の端面に向かうにしたがって広がるテーパ状に形成されている。凹部53aは、平坦な底部53a2と、底部53a2の両側から連結片53の端面まで傾斜して延びる平坦な2つの側部53a1とを有している。
【0020】
上述したコア片50は、注入口2aの開口方向から見てE字状に形成されている。2つのコア片50は、それぞれの内側片51を軸方向において互いに逆側からボビンケース2の第一筒部23の内部に挿通することで、ボビンケース2に取り付けられる。第一筒部23の内部に挿通された2つのコア片50の内側片51は、第一筒部23の内部で軸方向に離間している。2つのコア片50を2つのボビンケース2に取り付けた状態では、2つのコア片50の外側片52の先端同士が当接する。当接した2つのコア片50の外側片52同士は、例えば接着等によって固定されている。2つのコア片50をボビンケース2に取り付けた状態において、2つのコア片50の連結片53は、ボビンケース2を軸方向から挟むように配置されている。ボビンケース2に取り付けられたコア5は、ボビンケース2によって樹脂充填空間Sと隔離されている。
【0021】
端子台8は、カバー部品21の端壁部26と、第一ボビン20の第一鍔部24とに1個ずつ設けられている。端子台8は、端壁部26及び第一鍔部24における注入口2aの開口方向の端部に設けられている。端子台8は、端子台本体8aと、台座8bと、を備えている。2つの端子台8のうち端壁部26側の端子台8についてのみ説明し、第一鍔部24側の端子台8は端壁部26側の端子台8と同様の構成であるため説明を省略する。
端子台8は、端壁部26と一体に形成されている。端子台本体8aは、端壁部26から軸方向外側に張り出している。端子台本体8aは、軸方向及び注入口2aの開口方向と直交する方向に延びている。端子台本体8aにおける注入口2aの開口方向と反対側の端面は、凹部53aに沿っている。これにより、端子台本体8aは、凹部53aに嵌め込まれる。台座8bは、端子台本体8aの長手方向の両端部に設けられた矩形板状の部材である。台座8bの板厚方向は、注入口2aの開口方向に一致している。台座8bは、凹部53aが開口する側の連結片53の端面上に載置されている。台座8bには、六角ナットが配置されるナット配置部8cが形成されている。ナット配置部8cは、注入口2aの開口方向とは反対側からみて六角形状に形成された凹部である。各台座8bには、端子9が取り付けられている。
【0022】
端子9は、例えば銅等の金属材料から形成されている。端子9は、端子本体9aと、支持部9bと、を有している。
端子本体9aは、板厚方向が注入口2aの開口方向と一致する矩形板状に形成されている。端子本体9aは、台座8b上に載置されている。端子本体9aは、台座8b側に延びる爪部を有し、爪部によるスナップフィットによって、台座8bに固定されている。端子本体9aには、端子本体9aを板厚方向に貫通する貫通孔9cが設けられている。端子本体9aと台座8bとの間には、六角ナットが配置されている。当該六角ナットは、台座8bのナット配置部8c内に回転不可に配置されている。端子本体9aには、例えばボルト締結により、外部の電源回路の端子(不図示)が接続される。
支持部9bは、一対の端子本体9aの内側に設けられている。支持部9bは、軸方向に沿って延びている。支持部9bの軸方向外側の端部は、端子本体9aよりも軸方向外側に位置している。支持部9bの軸方向外側の端部は、軸方向から見て、一対の端子本体9aにおける対向方向内側に開口するU字状に形成されている。支持部9bの軸方向外側の端部内には、巻線3,7を構成する線材の端部3a,7aが配置されている。端部3a,7aは、支持部9bの軸方向外側の端部に加締められた状態で溶接する等して、支持部9bに固定される。
【0023】
ここで、図2及び図4を参照して、トランス1Aの組み立て方法の一例について説明する。トランス1Aを組み立てるためには、まず、第一筒部23の非重複部位23bに線材を三層巻き付け、第一筒部23の重複部位23aに線材を一層巻き付けて第一巻線3を形成する。なお、第一巻線3の巻き付け層数は適宜変更可能である。
【0024】
続いて、第二ボビン30の第二筒部31の外周面に線材を一層巻き付けて第二巻線7を形成する。なお、第二巻線7の巻き付け層数は適宜変更可能である。続いて、第二筒部31の内部に、第一筒部23の重複部位23aを挿通し、第一筒部23及び第二筒部31が同軸になるように第一ボビン20及び第二ボビン30を組み付ける。第一ボビン20及び第二ボビン30を組み付けた状態では、第一筒部23の非重複部位23bが第二カバー構成体27bによって覆われる。組み付けた第一ボビン20と第二ボビン30とは、接着剤で接合される。
【0025】
続いて、カバー部品21の第一カバー構成体27aの内側に第一ボビン20の第一筒部23の重複部位23a及び第二ボビン30の第二筒部31を挿通して、カバー部品21の挿通孔26aと第一筒部23及び第二筒部31とが同軸になるようにカバー部品21、第一ボビン20及び第二ボビン30を組み付ける。カバー部品21と第二ボビン30とは、接着剤で接合される。これにより、ボビンケース2が形成される。その後、ボビンケース2の注入口2aから樹脂充填空間Sに充填樹脂4を注入する。これにより、第一巻線3及び第二巻線7が充填樹脂4によって覆われる。充填樹脂4が固化した後には、第一筒部23の内部にコア5を構成する2つのコア片50の内側片51を挿通する。2つのコア片50の外側片52同士を接着剤で接合することで、コア5をボビンケース2に取り付ける。このようにしてトランス1Aが組み立てられる。
【0026】
トランス1Aでは、第一巻線3と第二巻線7との電気的結合が、重複部位23aでは密となっており、非重複部位23bでは疎となっているため、第一巻線3と第二巻線7との間に生じるリーケージインダクタンスは、重複部位23aでは小さくなり、非重複部位23bでは大きくなる。このため、非重複部位23bにおける第一巻線3の巻き数を調整することで、リーケージインダクタンスを変化させて適当な大きさに調整することができる。また、第一巻線3と第二巻線7との相対的な位置関係や、重複部位23aにおける第一巻線3及び第二巻線7の巻き数、第一巻線3及び第二巻線7の線径等を変化させることによっても、リーケージインダクタンスを変化させて適当な大きさに調整することができる。
【0027】
以上説明したように、第一実施形態に係るコイル部品1によれば、カバー部品21は、ボビン10に取り付けられることにより、筒部23,31との間に樹脂充填空間Sを形成するとともに、充填樹脂4を注入するための注入口2aを形成している。これにより、コア5と充填樹脂4とがボビン10及びカバー部品21によって隔離されるため、充填樹脂4はコア5に触れない。このため、充填樹脂4の熱変形や吸湿によって充填樹脂4が膨張収縮しても、充填樹脂4の膨張収縮に基づいてコア5に応力がかかることを防止することができる。したがって、充填樹脂4に起因するコア5の割れを防いで、コイル部品1の信頼性を向上することができる。
【0028】
第一実施形態では、第一筒部23は、径方向において第二筒部31と重なる重複部位23aと、軸方向において重複部位23aの隣に位置することで径方向において第二筒部31と重ならない非重複部位23bと、を有している。これにより、第一筒部23における重複部位23aと非重複部位23bとの割合を調整することで、第一巻線3と第二巻線7との電気的結合の疎密及び漏れインダクタンスを調整できる。したがって、リーケージインダクタンスを自在に調整できる汎用性に優れたコイル部品1を提供できる。
【0029】
第一実施形態では、カバー部品21は、径方向において第二筒部31の外側に重なる第一カバー構成体27aと、軸方向において第二筒部31の隣に連ねて形成され、径方向において第一筒部23の外側に重なると共に第一カバー構成体27aに対して軸方向に並ぶ第二カバー構成体27bと、を有している。これにより、第一筒部23に第一巻線3を巻き付けた後に第二カバー構成体27bを第一筒部23よりも径方向外側に配置し、第二筒部31に第二巻線7を巻き付けた後に第一カバー構成体27aを第二筒部31よりも径方向外側に配置できる。したがって、第一巻線3を容易に第一筒部23に巻き付け、第二巻線7を容易に第二筒部31に巻き付けることができる。
【0030】
第一実施形態では、第一巻線3及び第二巻線7が樹脂充填空間Sに充填された充填樹脂4によって覆われる。このため、通電によって第一巻線3及び第二巻線7に生じた熱を充填樹脂4及びボビンケース2に逃がして、第一巻線3及び第二巻線7の温度上昇を抑えることができる。
【0031】
第一実施形態では、巻線3,7及びコア5の両方を樹脂で覆う従来のコイル部品と比較して、充填樹脂4の使用量が減るため、コイル部品1の軽量化や小型化を図ることもできる。
【0032】
第一実施形態において、第一巻線3及び第二巻線7は、それぞれ第一筒部23及び第二筒部31に取り付けられる前の状態で予め筒状に形成されてもよい。すなわち、筒状に形成された第一巻線3を第一筒部23に取り付け、筒状に形成された第二巻線7を第二筒部31に取り付けてもよい。
【0033】
次に、図5図12を参照して、上記したコイル部品1の4つの変形例について説明する。
【0034】
コイル部品1の第一変形例について説明する。第一変形例では、上述した第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図5及び図6はコイル部品1(トランス1A)の第一変形例を示している。第一変形例のコイル部品1には、端子台8及び端子9が設けられていない。
【0035】
第一ボビン20は、第一筒部23における軸方向で第一鍔部24とは反対側の他端に配置される第三鍔部25を有している。
第二ボビン30は、第二筒部31における軸方向で第二鍔部32とは反対側の他端に配置される第四鍔部33を有している。第二ボビン30の第二筒部31及び第二鍔部32は、区画壁部34を構成している。
【0036】
区画壁部34は、樹脂充填空間Sを、第一筒部23よりも径方向外側に形成される第一空間S1と、第二筒部31よりも径方向外側に形成される第二空間S2とに区画する。第一空間S1の一部は、区画壁部34の第二筒部31によって径方向外側から覆われている。第一空間S1には、第一巻線3が配置される。第二空間S2には、第二巻線7が配置される。
【0037】
カバー部27は、第一実施形態とは異なり、第一カバー構成体27a及び第二カバー構成体27b(図2参照)に分割されていない。カバー部27は、カバー部品21に設けられ、カバー部品21の端壁部26から第一ボビン20の第一鍔部24の外縁まで軸方向に延びている。これにより、第一筒部23と、第二筒部31と、カバー部27とが、別個の部品(第一ボビン20、第二ボビン30、カバー部品21)によって構成されている。
【0038】
ボビンケース2の注入口2aは、区画壁部34によって、第一空間S1に充填樹脂4を注入するための第一注入口2a1と、第二空間S2に充填樹脂4を注入するための第二注入口2a2とに区画されている。第一注入口2a1及び第二注入口2a2は、それぞれ第一筒部23及び第二筒部31の径方向外側に開口しており軸方向に並んでいる。第一注入口2a1は、第一空間S1に連通している。第一注入口2a1からは、第一巻線3の線材の端部3aがコイル部品1の外部に引き出される。第二注入口2a2は、第二空間S2に連通している。第二注入口2a2からは、第二巻線7の線材の端部7aがコイル部品1の外部に引き出される。
【0039】
第一変形例では、ボビン10は、樹脂充填空間Sを、第一筒部23よりも径方向外側に形成される第一空間S1と、第二筒部31よりも径方向外側に形成される第二空間S2と、に区画する区画壁部34を備えている。これにより、第一巻線3及び第二巻線7をそれぞれ異なる充填樹脂4で覆うことができる。
具体的に、第一巻線3及び第二巻線7をそれぞれ熱伝導率が異なる充填樹脂4で覆うことができる。例えば、第一空間S1及び第二空間S2のうち発熱の大きい巻線が配置された空間に熱伝導率が高い充填樹脂4を注入できる。この場合、樹脂充填空間Sが第一空間S1と第二空間S2とに区画されておらず、樹脂充填空間Sに熱伝導率が高い充填樹脂4のみが注入される場合と比べて、熱伝導率が高い充填樹脂4の使用量を減らすことができる。一般に、熱伝導率が高い充填樹脂4は熱伝導率が低い樹脂よりもコストが高いため、熱伝導率が高い充填樹脂4の使用量を減らすことで、コイル部品1の製造コストの削減を図ることができる。
【0040】
第一変形例では、注入口2aは、第一空間S1と連通する第一注入口2a1と、第二空間S2と連通する第二注入口2a2と、を有している。これにより、第一空間S1と第二空間S2とにそれぞれ異なる充填樹脂4を注入する場合に好適となる。
【0041】
第一変形例では、第一筒部23と、第二筒部31と、カバー部27とが、別個の部品(第一ボビン20、第二ボビン30、カバー部品21)によって構成されている。これにより、第一ボビン20と第二ボビン30とを組み付けた後に、第一ボビン20及び第二ボビン30の径方向外側をカバー部27で覆うことができる。したがって、第一ボビン20と第二ボビン30とを組み付けた後に、第一巻線3及び第二巻線7の巻き数を調整してリーケージインダクタンスを調整できる。リーケージインダクタンスを調整した後に、第一ボビン20及び第二ボビン30にカバー部27を組み付けることができる。よって、リーケージインダクタンスを自在に調整できる汎用性に優れたコイル部品1を提供できる。
【0042】
第一変形例では、第一注入口2a1及び第二注入口2a2がそれぞれ、第一筒部23及び第二筒部31の径方向外側に開口している。これにより、第一筒部23に巻き付けた第一巻線3の線材の端部3aを、第一注入口2a1から簡単にボビン10の外側に引き出し、第二筒部31に巻き付けた第二巻線7の線材の端部7aを、第二注入口2a2から簡単にボビン10の外側に引き出すことができる。すなわち、第一注入口2a1は、第一巻線3の線材の端部3aの引出口としても機能し、第二注入口2a2は、第二巻線7の線材の端部7aの引出口としても機能する。これにより、1つの工程で、第一空間S1に充填樹脂4を注入できるとともに、第一巻線3の線材の端部3aを第一注入口2a1から引き出した状態で固定できる。また、1つの工程で、第二空間S2に充填樹脂4を注入できるとともに、第二巻線7の線材の端部7aを第二注入口2a2から引き出した状態で固定できる。したがって、コイル部品1を効率よく製造することができる。
【0043】
コイル部品1の第二変形例について説明する。第二変形例では、上述した第一実施形態及び第一変形例と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図7及び図8は、コイル部品1(トランス1A)の第二変形例を示している。第二変形例では、第二筒部31の軸方向の長さが、第一筒部23の軸方向の長さと同等である。このため、第二筒部31に巻き付けられる第二巻線7の軸方向の長さは、第一筒部23に巻き付けられる第一巻線3の軸方向の長さと同等になる。すなわち、第二筒部31の内部に第一筒部23が挿通された状態では、軸方向における第一巻線3及び第一筒部23の全体が、径方向においてそれぞれ第二巻線7及び第二筒部31と重なる。第二ボビン30の第四鍔部33は、軸方向から見て第二ボビン30の第二鍔部32と同形状に形成されている。区画壁部34は、第二ボビン30の第二筒部31、第二鍔部32及び第四鍔部33によって構成されている。
【0044】
第一ボビン20の第一鍔部24には、第一膨出部28が形成されている。第一膨出部28は、注入口2a側に位置する第一鍔部24の外縁部に形成されている。第一膨出部28は、軸方向において第一鍔部24からボビンケース2の外側に膨らむように形成されている。第一膨出部28の外形は、軸方向から見て連結片53の凹部53aと略同形状に形成されている。トランス1Aを組み立てると、第一膨出部28は凹部53aに入り、第一膨出部28の軸方向の端面は軸方向に直交する連結片53の端面と面一となる。トランス1Aを組み立てた状態において、第一膨出部28は、第二筒部31によって覆われた第一空間S1を第二筒部31の軸方向で第一鍔部24側において径方向外側に開放する第一通路部28aを構成する。第一通路部28aは、第一注入口2a1の一部を構成する。
【0045】
カバー部品21の端壁部26には、第二膨出部29が形成されている。第二膨出部29は、注入口2a側に位置する端壁部26の外縁部に形成されている。第二膨出部29は、軸方向において端壁部26からボビンケース2の外側に膨らむように形成されている。第二膨出部29の外形は、軸方向から見て連結片53の凹部53aと略同形状に形成されている。トランス1Aを組み立てると、第二膨出部29は凹部53aに入り、第二膨出部29の軸方向の端面は軸方向に直交する連結片53の端面と面一となる。トランス1Aを組み立てた状態において、第二膨出部29は、第二筒部31によって覆われた第一空間S1を第二筒部31の軸方向で端壁部26側において径方向外側に開放する第二通路部29aを構成する。第二通路部29aは、第一注入口2a1の一部を構成する。
第一注入口2a1は、第二筒部31よりも軸方向両外側に一対設けられ、第二筒部31よりも径方向外側に開口している。
【0046】
第一巻線3は、第一筒部23の外周面に一層巻き付けられている。第一巻線3の線材の両端部3aは、それぞれ第一通路部28a及び第二通路部29aからトランス1Aの外部に引き出されている。
【0047】
第二変形例では、第一注入口2a1は、第二筒部31よりも軸方向両外側に設けられ、第二筒部31よりも径方向外側に開口している。これにより、第一筒部23全体が第二筒部31によって覆われていても、第一注入口2a1を通じて第一空間S1に充填樹脂4を注入することができる。また、一方の第一注入口2a1から第一空間S1に充填樹脂4を注入することで、第一空間S1の空気を他方の第一注入口2a1からコイル部品1の外側に排出することができる。これにより、第一空間S1に充填された充填樹脂4内に気泡(ボイド)が残ることを抑制することができる。
【0048】
第二変形例において、第二筒部31によって覆われた第一空間S1を径方向外側に開放する第一注入口2a1は、軸方向における第二筒部31の外側に形成されることに限らず、例えば第二筒部31の外周面から径方向外側に延びて第二筒部31の内側と連通する管路部によって構成されてもよい。第二筒部31に管路部を設けた構成では、管路部の径方向外側の開口から第二筒部31の内側、すなわち第一空間S1に充填樹脂4を注入することができる。
【0049】
コイル部品1の第三変形例について説明する。第三変形例では、上述した第一実施形態及び各変形例と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図9及び図10はコイル部品1(トランス1A)の第三変形例を示している。第三変形例では、第二ボビン30は、第一ボビン20と略同形状に形成されている。すなわち、第二ボビン30の第二筒部31、第二鍔部32及び第四鍔部33の形状はそれぞれ、第一ボビン20の第一筒部23、第一鍔部24及び第三鍔部25と略同形状となっている。第二ボビン30の第二筒部31は、軸方向において第一ボビン20の第一筒部23の隣に位置している。第二筒部31は、第一筒部23と同軸になっている。
【0050】
区画壁部34は、第二筒部31の第二鍔部32によって構成されている。区画壁部34は、ボビンケース2の樹脂充填空間Sを軸方向に並ぶ第一空間S1と第二空間S2とに区画する。
【0051】
第一巻線3は、第一筒部23の外周面に三層巻き付けられている。第二巻線7は、第二筒部31の外周面に三層巻き付けられている。第二巻線7は、第一巻線3に軸方向に並んで配置される。第二巻線7は、第一巻線3と、軸方向及び径方向の長さが同等である。第二巻線7の線材の線径は、第一巻線3の線材の線径と同等である。
【0052】
第三変形例では、ボビン10は、第一筒部23を有する第一ボビン20と、軸方向において第一筒部23の隣に位置する第二筒部31を有する第二ボビン30と、を有している。これにより、第一巻線3と第二巻線7との軸方向のギャップを調整することで、第一巻線3と第二巻線7との電気的結合の疎密及び漏れインダクタンスを調整できる。したがって、リーケージインダクタンスを自在に調整できる汎用性に優れたコイル部品1を提供できる。
【0053】
コイル部品1の第四変形例について説明する。第四変形例では、上述した第一実施形態及び各変形例と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図11及び図12はコイル部品1(トランス1A)の第四変形例を示している。第四変形例では、第二ボビン30は、第二鍔部32及び第四鍔部33(図5及び図6参照)を有しておらず、第二筒部31のみから構成されている。このため、第二実施形態とは異なり、樹脂充填空間Sは、第一空間S1と第二空間S2(図6参照)とに区画されていない。
【0054】
第四変形例では、第二ボビン30は、第二筒部31のみから構成されている。これにより、第一ボビン20が第二ボビン30に挿通される場合であっても、樹脂充填空間S全体に充填樹脂4を容易に注入できる。したがって、コイル部品1を効率よく製造することができる。
【0055】
〔第二実施形態〕
次に、図13図15を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0056】
図13図15に示すように、本実施形態のコイル部品1は、第一実施形態のコイル部品1と同様の構成を備えるが、以下の点で第一実施形態のコイル部品1と相異する。
【0057】
ボビン10は、第一ボビン20から構成されている。
ボビンケース2は、第一ボビン20及びカバー部品21に加えて、固定部22を備えている。
固定部22は、第一固定部22aと、第二固定部22bとを有している。第一固定部22aは、第一ボビン20の第一鍔部24のうち径方向において注入口2aと反対側の端に設けられている。第一固定部22aは、軸方向で第一筒部23と反対側に延びる矩形板状の部材である。第一固定部22aは、軸方向に直交する方向に離間して2本設けられている。第二固定部22bは、カバー部品21の端壁部26のうち径方向において注入口2aと反対側の端に設けられている。第二固定部22bは、軸方向で第一筒部23と反対側に向けて延びる矩形板状の部材である。第二固定部22bは、第一固定部22aと同様に軸方向に直交する方向に離間して2本設けられている。第一固定部22a及び第二固定部22bは、それぞれ放熱部材6に対してボルト締結される。これにより、ボビンケース2が放熱部材6に密着する。
【0058】
ここで、図14及び図15を参照して、コイル部品1の組み立て方法の一例について説明する。コイル部品1を組み立てるためには、まず、第一ボビン20の第一鍔部24と第三鍔部25との間で第一筒部23の外周面に線材を三層巻き付けて第一巻線3を形成する。なお、第一巻線3の巻き付け層数は適宜変更可能である。
【0059】
続いて、カバー部品21のカバー部27の内側に第一ボビン20の第一筒部23を挿通して、カバー部品21の端壁部26の挿通孔26aと第一ボビン20の第一筒部23とが同軸になるようにカバー部品21を第一ボビン20に組み付ける。カバー部品21と第一ボビン20とは、接着剤で接合される。これにより、ボビンケース2が形成される。その後、ボビンケース2の注入口2aから樹脂充填空間Sに充填樹脂4を注入する。これにより、第一巻線3が充填樹脂4によって覆われる。充填樹脂4が固化した後には、第一筒部23の内部にコア5を構成する2つのコア片50の内側片51を挿通し、2つのコア片50の外側片52同士を接着剤で接合することで、コア5をボビンケース2に取り付ける。このようにしてコイル部品1が組み立てられる。コイル部品1は、固定部22で放熱部材6にボルト締結されて取り付けられる。上記したコイル部品1の組み立て方法において、ボビンケース2に対するコア5の取り付けは、例えばボビンケース2を形成した後、かつ、充填樹脂4を樹脂充填空間Sに注入する前であってもよい。
【0060】
第二実施形態では、ボビンケース2は、電気的な絶縁性を有する材料からなり、ボビンケース2を放熱部材6に密着させるための固定部22を有する。このため、放熱部材6がアルミブロックなどのように導電性を有していても、放熱部材6との間に別途絶縁部材を介在させることなく、ボビンケース2を直接放熱部材6に密着させることができる。
【0061】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、トランス1Aにおいては、第一巻線3を二次巻線とし、第二巻線7を一次巻線としてもよい。また、第二巻線7の線材の線径は、第一巻線3の線材の線径よりも大きくても小さくてもよい。
【0062】
本発明において、トランス1Aは第二ボビン30を備えなくてもよい。例えば、第一巻線3の外周面に絶縁テープを巻き付けて当該絶縁テープの上から第二巻線7を巻き付けてもよい。
本発明において、注入口2aは径方向に限らず軸方向に開口してもよい。すなわち、充填樹脂4は軸方向からボビンケース2の樹脂充填空間Sに注入されてもよい。
【0063】
本発明のコイル部品は、チョークコイル等に適用されてもよい。コイル部品1は、少なくもボビンケース2と、第一巻線3と、充填樹脂4と、コア5とを備えていればよい。ボビンケース2は、少なくとも第一ボビン20と、カバー部品21とを有していればよい。
【符号の説明】
【0064】
1 コイル部品
2a 注入口
2a1 第一注入口
2a2 第二注入口
3 第一巻線(巻線)
4 樹脂(充填樹脂)
7 第二巻線(巻線)
10 ボビン
20 第一ボビン
21 カバー部品
23 第一筒部(筒部)
23a 重複部位
23b 非重複部位
27a 第一カバー構成体
27b 第二カバー構成体
30 第二ボビン
31 第二筒部(筒部)
34 区画壁部
S 樹脂充填空間
S1 第一空間
S2 第二空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15