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  • 特開-微細気泡発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141456
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/40 20220101AFI20220921BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20220921BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20220921BHJP
   B01F 25/50 20220101ALI20220921BHJP
【FI】
B01F5/00 D
B01F5/00 G
B01F3/04 Z
B01F5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041772
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 淳志
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB04
4G035AC11
4G035AC29
4G035AC44
(57)【要約】
【課題】これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる微細気泡発生装置を提供する。
【解決手段】微細気泡発生装置11は、液体12の液面に接する気体を確保しながら液体12の動きを案内する案内路13と、液面を波立たせながら、案内路13内で液体12の流れを作り出す波生成装置14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の液面に接する気体を確保しながら前記液体の動きを案内する案内路と、
前記液面を波立たせながら、前記案内路内で前記液体の流れを作り出す波生成装置と
を備えることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
直立姿勢の軸心を有し上端で開放された円筒体を含む案内路と、
前記円筒体の内空間に湛えられる液体中に液体を噴出し、噴出する前記液体で前記軸心回りに前記液体の旋回流を引き起こす液管と、
前記円筒体の内壁面に沿って配置され、前記旋回流を妨げる抵抗物と
を備えることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の微細気泡発生装置において、前記案内路には、前記円筒体の底から前記液管に前記液体を戻す戻し路が接続されることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項4】
重力方向に上向きに開放され、液体の液面に接する気体を確保しながら前記液体の動きを案内する案内路と、
前記液面を波立たせながら、前記案内路内で前記液体の流れを作り出す波生成装置と
を備えることを特徴とする微細気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の動きを案内する案内路と、案内路内で液体の流れを作り出す波生成装置とを備える微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は微細気泡発生装置を開示する。微細気泡発生装置は、密閉された中空円筒体の容器(案内路)を備える。中空円筒体の中空空間は液体(例えば水)で満たされる。中空空間には、円筒面の接線方向から加圧された液体が導入される。中空空間では軸心回りに液体の旋回流が生成される。液体の旋回流は、底板に同軸に形成される気体導入孔から気体を引き込む。中空円筒体の軸心に沿って一端から他端に向かって気体の流れが形成される。気体が中空円筒体の他端から静液体に流入することで、静液体内に微細気泡は作り出されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/69550号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ファインバブルマガジン,“ファインバブルの技術”,[online],[令和2年10月5日検索],インターネット<URL:https://finebubble.net/technology>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の微細気泡発生装置では気体は旋回流の負圧に応じて液体中に導入されることができる。このとき、中空円筒体の底板には円筒体に同軸に気体導入孔が形成されなければならない。気体導入孔には、密閉された中空空間を満たす液体よりも上方で大気に開放される気体導入管が結合されなければならない。気体の導入にあたって複雑な構造が必要とされる。
【0006】
本発明は、これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によれば、液体の液面に接する気体を確保しながら前記液体の動きを案内する案内路と、前記液面を波立たせながら、前記案内路内で前記液体の流れを作り出す波生成装置とを備える微細気泡発生装置は提供される。
【0008】
本発明者の検証によれば、案内路を流れる液体の液面が波立つと、液体中に微細気泡が生成される。このことは本発明者の実験で実証された。気体は波立つ液面に接するだけでよいことから、気体の導入にあたって複雑な構造は要求されずに済む。微細気泡発生装置は、これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる。
【0009】
本発明の第2側面によれば、直立姿勢の軸心を有し上端で開放された円筒体を含む案内路と、前記円筒体の内空間に湛えられる液体中に液体を噴出し、噴出する前記液体で前記軸心回りに前記液体の旋回流を引き起こす液管と、前記円筒体の内壁面に沿って配置され、前記旋回流を妨げる抵抗物とを備える微細気泡発生装置は提供される。
【0010】
液体の旋回流が抵抗物に衝突すると、液面が波立つことで液体中に微細気泡が生成される。このことは本発明者の実験で実証された。気体は波立つ液面に接するだけでよいことから、気体の導入にあたって円筒体の上端が開放されるだけで済む。微細気泡発生装置は、これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる。
【0011】
前記案内路には、前記円筒体の底から前記液管に前記液体を戻す戻し路が接続されてもよい。円筒体から流出する液体は液管から円筒体内に流入する。こうして液体は循環する。循環に応じて液体中の微細気泡は増加していく。こうして液体の単位体積当たりに必要量の微細気泡は生成されることができる。
【0012】
本発明の第3側面によれば、重力方向に上向きに開放され、液体の液面に接する気体を確保しながら前記液体の動きを案内する案内路と、前記液面を波立たせながら、前記案内路内で前記液体の流れを作り出す波生成装置とを備える微細気泡発生装置は提供される。
【0013】
本発明者の検証によれば、案内路を流れる液体の液面が波立つと、液体中に微細気泡が生成される。このことは本発明者の実験で実証された。気体は波立つ液面に接するだけでよいことから、気体の導入にあたって案内路は上向きに開放されれば済む。微細気泡発生装置は、これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる微細気泡発生装置は提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る微細気泡発生装置の構成を概略的に示す図である。
図2】比較例に係る気泡発生ノズルの構成を概略的に示す拡大断面図である。
図3】微細気泡の分布を示すグラフである。
図4】本発明の第2実施形態に係る微細気泡発生装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態に係る微細気泡発生装置の構成を概略的に示す。微細気泡発生装置11は、液体12の液面12aに接する気体を確保しながら液体12の動きを案内する案内路13と、液面12aを波立たせながら、案内路13内で液体12の流れを作り出す波生成装置14とを備える。案内路13を流れる液体12の液面12aが波立つと、液体12中に微細気泡が生成される。液体12には例えば水が用いられることができる。
【0018】
案内路13は、直立姿勢の軸心15aを有し上端で開放された円筒体15と、円筒体15の底板に接続されて、円筒体15の内空間から流出する液体12を案内する流出管16とを有する。円筒体15の底板は逆さ円錐形(または漏斗の形状)に形成される。円錐形の頂点に流出管16の上流端は結合される。流出管16は円筒体15に例えば同軸に配置される。円筒体15に代えて例えば逆さ円錐体が用いられてもよい。
【0019】
波生成装置14は、円筒体15の内空間に湛えられる液体12中に液体12を噴出し、噴出する液体12で円筒体15の軸心15a回りに液体12の旋回流を引き起こす液管17と、案内路13内に配置されて、層流から乱流を生成する物体18とを備える。液管17には液ポンプ19が接続される。液ポンプ19は所定の圧力で液管17に液体12を供給する。
【0020】
液管17は、円筒体15の上端から円筒体15の軸心15aに平行に線形に延びる第1体17aと、第1体17aの下端に接続されて、軸心15a回りに円筒面の接線方向に延びる第2体17bとを有する。第2体17bの先端から接線方向に液体12は吐出される。液管17は円筒体15の周壁に沿って配置されることから、円筒体15の内空間に湛えられる液体12には、吐出される液体12から最大限に軸心15a回りの旋回力は付与されることができる。ここでは、液体12の深さは液面12aに形成される波の大きさに応じて適宜に設定されることができる。
【0021】
物体18は、円筒体15の内壁面に沿って配置され、旋回流を妨げる抵抗物を含む。ここでは、抵抗物は、円筒体15の上端から円筒体15の軸心15aに平行に線形に周壁に沿って延びる円柱体として形成される。抵抗物は周壁の下端で途切れる。ただし、抵抗物の長さは液面12aに形成される波の大きさに応じて適宜に設定されることができる。例えば、円筒体15の内径430[mm]に対して円柱体の直径は28[mm]に設定される。円筒体15の大きさと円柱体の大きさとは液面12aに形成される波の大きさに応じて適宜に設定されることができる。ここでは、液管17の第1体17aの直径は抵抗物の直径に等しく設定される。したがって、液管17は1つの抵抗物として機能する。液管17および抵抗物は円筒体15の軸心15a回りに等間隔に配置される。抵抗物は軟質塩化ビニルといった樹脂材から成形されてもよくステンレス鋼といった金属材から成形されてもよい。
【0022】
抵抗物に代えて、円筒体15の周壁は、層流から乱流を生成する形状を有してもよい。円筒体15の周壁は案内路13の側面に相当する。形状は、流れに速度差を生み出す凸面および凹面の少なくともいずれかを含めばよい。
【0023】
案内路13には、円筒体15の底から液管17に液体12を戻す戻し管21が接続される。ここでは、戻し管21は流出管16および液ポンプ19を接続する。戻し管21は、流出管16から液ポンプ19に液体12を戻す。こうして戻し管21は、案内路13の下流から上流に液体12を戻す戻し路を区画する。液体12は、液ポンプ19、液管17、円筒体15、流出管16および戻し管21を循環する。
【0024】
流出管16または戻し管21には、循環経路から分岐して液体12を溜める液溜め22が接続されてもよい。液溜め22に微細気泡は蓄えられることができる。このとき、液ポンプ19には液体12を補充する液源(図示されず)が接続されることができる。
【0025】
次に微細気泡発生装置11の動作を説明する。円筒体15に液体12は溜められる。液ポンプ19が作動すると、液体12は液管17、円筒体15、流出管16および戻し管21を循環する。このとき、液管17の第2体17bから吐出する液体12は円筒体15内の液体12に軸心15a回りの旋回力を付与する。軸心15a回りに液体12の流れは生成される。
【0026】
液体12の旋回流が物体(抵抗物)18に衝突すると、液面12aが波立つことで液体12中に微細気泡が生成される。このことは本発明者の実験で実証された。気体は波立つ液面12aに接するだけでよいことから、気体の導入にあたって円筒体15の上端が開放されるだけで済む。微細気泡発生装置11は、これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる。
【0027】
本実施形態では、円筒体15から流出する液体12は液管17から円筒体15内に流入する。こうして液体12は循環する。循環に応じて液体12中の微細気泡は増加していく。こうして液体12の単位体積当たりに必要量の微細気泡は生成されることができる。微細気泡は液溜め22に蓄えられることができる。
【0028】
本発明者は微細気泡発生装置11の効率を検証した。検証にあたって本発明者は微細気泡発生装置11を用意した。円筒体15の内径430[mm]に対して液管17の外径および物体18の直径は28[mm]に設定された。円筒体15の周壁に沿って1本の液管17および2本の物体18は軸心15a回りに等間隔に配置された。円筒体15内には15[リットル]の水が湛えられた。水の液面12aは周壁の下端から75[mm]の高さまで達した。液管17の内径は11[mm]に設定された。液ポンプ19の流量は46[リットル/分]に設定された。水の流れが1時間にわたって継続された後に、微細気泡の直径ごとに微細気泡の個数が計測された。
【0029】
検証にあたって本発明者は比較例を用意した。比較例では同様な円筒体内に気泡発生ノズルが設置された。図2に示されるように、気泡発生ノズル24は、先端で導管25の管壁に差し込まれて、気体管26から延びて導管25の内壁面で開口する通路27を区画するハウジング28と、通路27の一端でハウジング28に組み込まれて、空孔を含み、通路27を流通する気体を透過させる多孔質体29とを備える。多孔質体29は導管25の内壁に連続する露出面29aを有する。多孔質体29は、導管25内を流通する液体に露出面29aで接触する。気体は、気体管26から通路27に進入し、多孔質体29を通過して露出面29aから液体内に噴出する。
【0030】
比較例では円筒体内に15[リットル]の水が湛えられた。導管25内の流量は46[リットル/分]に設定された。通路27の流量は10[リットル/分]に設定された。気体には空気が用いられた。水および空気の流れが1時間にわたって継続された後に、微細気泡の直径ごとに微細気泡の個数が計測された。
【0031】
図3に示されるように、本実施形態に係る微細気泡発生装置11では気泡径200[nm]以下で良好に微細気泡が形成されることが確認された。特に、気泡径80[nm]~100[nm]の範囲で微細気泡の発生は最大化することが確認された。比較例に比べて効率的に微細気泡は発生されることができた。
【0032】
図4は本発明の第2実施形態に係る微細気泡発生装置の構成を概略的に示す。微細気泡発生装置31は、重力方向に上向きに開放され、液体32の液面32aに接する気体を確保しながら液体32の動きを案内する案内路33と、液面32aを波立たせながら、案内路33内で液体32の流れを作り出す波生成装置34とを備える。案内路33を流れる液体32の液面32aが波立つと、液体32中に微細気泡が生成される。液体32には例えば水が用いられることができる。
【0033】
案内路33は、特定の方向35に線形に延びる底板36aと、底板36aの側縁から底面に垂直に立ち上がって、底面上に特定の方向35に延びる空間を仕切る2つの側壁36bとを有する。底面は例えば平面で形成されることができる。底面は水平面でもよい。底面が特定の方向35に傾けば、重力の働きで液体32の流れは生成されることができる。
【0034】
波生成装置34は、案内路33の上流端に接続されて、案内路33に液体32を導入する導入管37と、案内路33内に配置されて、層流から乱流を生成する物体38とを備える。導入管37には液ポンプ39が接続される。液ポンプ39は所定の圧力で導入管37に液体32を供給する。導入管37の先端から特定の方向35に液体32は吐出される。こうして案内路33内に液流れは生成されることができる。ここでは、液体32の深さは液面32aに形成される波の大きさに応じて適宜に設定されることができる。
【0035】
物体38は、側壁36bの内壁面に沿って配置され、線形流を妨げる抵抗物を含む。ここでは、抵抗物は、側壁36bの上端から重力方向に線形に側壁36bに沿って延びる円柱体として形成される。抵抗物は底板36aに至る。ただし、抵抗物の長さは液面32aに形成される波の大きさに応じて適宜に設定されることができる。抵抗物は例えば特定の方向35に等間隔に配置されることができる。抵抗物は2つの側壁36bで互い違いに配置されてもよい。抵抗物は軟質塩化ビニルといった樹脂材から成形されてもよくステンレス鋼といった金属材から成形されてもよい。
【0036】
抵抗物に代えて、側壁36bの内壁面は、層流から乱流を生成する形状を有してもよい。形状は、流れに速度差を生み出す凸面および凹面の少なくともいずれかを含めばよい。その他、案内路33の底面は、層流から乱流を生成する形状を有してもよい。形状は、流れに速度差を生み出す凸面および凹面の少なくともいずれかを含めばよい。
【0037】
案内路33には、案内路33の下流端から案内路33の上流端に液体32を戻す戻し管41が接続される。ここでは、戻し管41は案内路33の下流端および液ポンプ39を接続する。戻し管41は、案内路33の下流端から液ポンプ39に液体32を戻す。こうして戻し管41は、案内路33の下流から上流に液体32を戻す戻し路を区画する。液体32は、液ポンプ39、導入管37、案内路33および戻し管41を循環する。戻し管41には、循環経路から分岐して液体32を溜める液溜め42が接続されてもよい。液溜め42に微細気泡は蓄えられることができる。このとき、液ポンプ39には液体32を補充する液源(図示されず)が接続されることができる。
【0038】
次に微細気泡発生装置31の動作を説明する。案内路33に液体32は溜められる。液ポンプ39が作動すると、液体32は導入管37、案内路33および戻し管41を循環する。このとき、案内路33では特定の方向35に液体32の流れは生成される。
【0039】
案内路33内で液体32が物体38に衝突すると、液面32aが波立つことで液体32中に微細気泡が生成される。気体は波立つ液面32aに接するだけでよいことから、気体の導入にあたって案内路33は上向きに開放されれば済む。微細気泡発生装置31は、これまでに比べて簡素化された構造で微細気泡を発生することができる。
【符号の説明】
【0040】
11…微細気泡発生装置、12…液体、13…案内路、14…波生成装置、15…円筒体、15a…軸心、17…液管、18…物体(抵抗物)、21…戻し管(戻し路)、31…微志気泡発生装置、32…液体、33…案内路、34…波生成装置、38…物体。
図1
図2
図3
図4