IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同メタル工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-多孔質体およびその製造方法 図1
  • 特開-多孔質体およびその製造方法 図2
  • 特開-多孔質体およびその製造方法 図3
  • 特開-多孔質体およびその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141457
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】多孔質体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/11 20060101AFI20220921BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20220921BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220921BHJP
   C22C 9/01 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
B22F3/11 Z
C22C1/08 F
B22F1/00 N
B22F1/00 L
C22C9/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041773
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根崎 楓真
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018BA02
4K018BA08
4K018BC12
4K018CA44
4K018DA11
4K018DA21
4K018DA33
4K018KA22
(57)【要約】
【課題】銅の含有量を減らしながら銅の抗菌性を発揮させることができる多孔質体を提供する。
【解決手段】多孔質体11は、アルミニウムから形成される多孔質の基材12と、基材12の表面に散在する銅材13とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムから形成される多孔質の基材と、
前記基材の表面に散在する銅材と
を備えることを特徴とする多孔質体。
【請求項2】
アルミニウム粉末およびアルミニウム銅合金粉末の混合物を調製する工程と、
前記混合物を焼結し、多孔質の焼結体を形成する工程と
を備えることを特徴とする多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムから形成される多孔質の基材を備える多孔質体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アルミニウム合金から形成される多孔質体を開示する。アルミニウム合金はアルミニウムおよび銅の合金を含む。多孔質体の焼結にあたってアルミニウム銅合金粉末は用意される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-164978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
銅は抗菌性を有する。銅に気体や液体が接すれば、気体や液体で細菌の増加は抑制されることができる。とはいえ、銅はアルミニウムに比べて高価である。できる限り銅の使用量の削減が望まれる。
【0005】
本発明は、銅の含有量を減らしながら銅の抗菌性を発揮させることができる多孔質体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、アルミニウムから形成される多孔質の基材と、前記基材の表面に散在する銅材とを備える多孔質体は提供される。
【0007】
基材そのものは軽量の金属材多孔質体として機能することができる。したがって、吸音、吸水、フィルター、その他の役割を担うことができる。銅は基材の表面に散在するので、多孔質体は表面に接する気体や液体に対して抗菌性を発揮することができる。多孔質体の表面で細菌の増殖は抑制されることができる。多孔質体の空孔内は清浄に維持されることができる。
【0008】
本発明の第2側面によれば、アルミニウム粉末およびアルミニウム銅合金粉末の混合物を調製する工程と、前記混合物を焼結し、多孔質の焼結体を形成する工程とを備える多孔質体の製造方法は提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、銅の含有量を減らしながら銅の抗菌性を発揮させることができる多孔質体は提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る多孔質体を概略的に示す斜視図である。
図2】電子顕微鏡で観察される多孔質体の表面を示す拡大図である。
図3図2の枠3内の拡大図である。
図4】大腸菌の生菌数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る多孔質体を概略的に示す。多孔質体11は例えばシートに形成される。薄板の環状体その他の形状に形成されてもよい。多孔質体11は、吸音材、吸水材、フィルター、その他の材質として利用されることができる。
【0013】
図2に示されるように、多孔質体11は、アルミニウムから形成され、微細な空孔12aを有する多孔質の基材12と、基材12の表面に島状に散在する銅材13とを備える。空孔12aは、例えばシートの表面から裏面まで連続する。空孔12aの大きさは…[μm]程度に設定される。したがって、気体や液体といった流動体は多孔質体11を透過することができる。多孔質体11の空孔率は60%以下に設定される。空孔率が60%を超えると、十分な構造強度が確保されることができない。
【0014】
多孔質体11では銅の含有量は多孔質体11全体に対して1.0質量%以上5.0質量%以下に設定される。銅の含有量が1.0質量%を下回ると、十分な抗菌性が確保されることができない。銅の含有量が5.0質量%を超えると、焼結体として成立することができない。
【0015】
基材12そのものは軽量の金属材多孔質体として機能することができる。したがって、吸音、吸水、フィルター、その他の役割を担うことができる。銅材13は基材12の表面に散在するので、多孔質体11は表面に接する気体や液体に対して抗菌性を発揮することができる。多孔質体11の表面で細菌の増殖は抑制されることができる。多孔質体11の空孔12a内は清浄に維持されることができる。
【0016】
次に多孔質体11の製造方法を説明する。多孔質体11の製造にあたってアルミニウム粉末およびアルミニウム銅合金粉末の混合物が調製される。個数割合で70%以上は粒径100[μm]~500[μm]の粉末で構成される。アルミニウム銅合金粉末は40質量%のアルミニウムおよび60質量%の銅を含む。アルミニウム粉末およびアルミニウム銅合金粉末の混合比は多孔質体11の銅の含有量に基づき設定される。アルミニウム粉末およびアルミニウム銅合金粉末は均一に混ぜ合わせられる。
【0017】
混合物は予め決められた形状に成形される。混合物は例えば無加圧でセラミックストレイ上に散布される。散布された混合物は還元雰囲気(例えば水素ガスの雰囲気)中で焼結される。焼結炉内では摂氏600度~670度の温度が設定される。セラミックストレイに代えてシリカトレイやアルミナトレイが用いられてもよい。
【0018】
本発明者は本実施形態に係る多孔質体11の抗菌性を検証した。検証にあたってトランスファー法が用いられた。接種菌には大腸菌が用いられた。接種直後および接種後24時間経過時に大腸菌の生菌数は計測された。前述の製造方法に従って多孔質体11は製造された。88質量%のアルミニウム粉末と12質量%のアルミニウム銅合金粉末とに基づき混合物は調製された。焼結にあたって黒鉛トレイ上で多孔質体11のシートの肉厚は3[mm]に設定された。
【0019】
本発明者は比較例に係る多孔質体を用意した。比較例ではアルミニウム粉末に基づき多孔質体は焼結された。アルミニウム粉末にアルミニウム銅合金粉末は混ぜ合わせられなかった。その他は前述の製造方法と同様な条件が用いられた。
【0020】
図4に示されるように、本実施形態に係る多孔質体11では24時間後に大腸菌の生菌数は大幅に減少した。これに対して比較例では大腸菌の生菌数は増加した。多孔質体11の抗菌性は確認された。多孔質体11そのものの機能(吸音、吸水、フィルター、その他)に変化はなかった。
【符号の説明】
【0021】
11…多孔質体、12…基材、13…銅材。
図1
図2
図3
図4