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特開2022-14146明るさ感予測装置及び明るさ感予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014146
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】明るさ感予測装置及び明るさ感予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/11 20200101AFI20220112BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220112BHJP
   G06T 7/11 20170101ALI20220112BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20220112BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20220112BHJP
【FI】
H05B47/11
G06T7/00 130
G06T7/11
G01J1/42 K
H05B47/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116335
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成井 智祐
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 利宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 英司
(72)【発明者】
【氏名】奥村 誠司
【テーマコード(参考)】
2G065
3K273
5L096
【Fターム(参考)】
2G065AA02
2G065BA04
2G065BA06
2G065BC33
2G065BC35
2G065DA20
3K273PA09
3K273QA14
3K273QA28
3K273QA37
3K273RA02
3K273RA13
3K273SA04
3K273SA21
3K273SA37
3K273SA60
3K273TA18
3K273TA27
3K273TA28
3K273TA47
3K273TA52
3K273TA68
3K273TA77
3K273TA78
5L096AA06
5L096BA08
5L096CA02
5L096CA24
5L096DA02
5L096FA05
5L096FA32
5L096FA59
5L096FA69
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】対象空間の明るさ感を高精度に予測する。
【解決手段】面種別設定部26は、対象空間を表す輝度画像20内に含まれる各面に対応する各画像領域を定義し、定義した複数の画像領域の面種別を設定する。明るさ感予測部28は、輝度画像20内において定義され得る各面種別に対して、明るさ感への寄与度を示す重みが関連付けられた重み情報22を参照し、面種別設定部26が設定した各画像領域40に含まれる複数の画素の輝度値の代表値と、各画像領域40の面種別の重みに基づいて、輝度画像20が表す対象空間の明るさ感を予測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間を表す輝度画像に含まれる各面に対応する各画像領域の面種別を設定する面種別設定部と、
各面種別に対して明るさ感への寄与度を示す重みが関連付けられた重み情報を参照し、複数の前記画像領域それぞれについての、当該画像領域に含まれる複数の画素の輝度値及び当該画像領域の面種別の重みに基づいて、前記対象空間の明るさ感を予測する明るさ感予測部と、
を備えることを特徴とする明るさ感予測装置。
【請求項2】
前記明るさ感予測部は、前記複数の画像領域のうち、第1画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値と、前記輝度画像において前記第1画像領域の近傍に位置する第2画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値との比にさらに基づいて、前記対象空間の明るさ感を予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の明るさ感予測装置。
【請求項3】
前記明るさ感予測部は、前記複数の画像領域のうち面種別が床面である画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値と、他の画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値との比は考慮せずに、前記対象空間の明るさ感を予測する、
ことを特徴とする請求項2に記載の明るさ感予測装置。
【請求項4】
前記明るさ感予測部は、
間欠的に前記対象空間の明るさ感を予測し、
直前に予測された前記対象空間の明るさ感と、今回予測した前記対象空間の明るさ感との差分に基づいて、今回予測した前記対象空間の明るさ感を補正する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の明るさ感予測装置。
【請求項5】
コンピュータを、
対象空間を表す輝度画像に含まれる各面に対応する各画像領域の面種別を設定する面種別設定部と、
各面種別に対して明るさ感への寄与度を示す重みが関連付けられた重み情報を参照し、複数の前記画像領域それぞれについての、当該画像領域に含まれる複数の画素の輝度値及び当該画像領域の面種別の重みに基づいて、前記対象空間の明るさ感を予測する明るさ感予測部と、
として機能させることを特徴とする明るさ感予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、明るさ感予測装置及び明るさ感予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間が空間に対して感じる明るさ量を示す明るさ感という指標が提案されている。明るさ感とは、あくまで人間が感じる明るさ量であり、物体の表面を照らす光の明るさを表す物理量である照度などとは異なる指標である。したがって、例えば空間に設置されている照明の照度が大きかったとしても、必ずしも当該空間に対する明るさ感が大きくなるとは限らない。
【0003】
従来、空間に対する明るさ感を予測する装置あるいはプログラムが提案されている。例えば、特許文献1には、明るさ感を予測する対象である対象空間を撮像した画像に含まれる各画素の輝度に基づいて、当該空間の明るさ感を予測する明るさ感予測装置が開示されている。また、特許文献2には、対象空間内の鉛直面上の点における照度に基づいて、当該空間の明るさ感を予測する明るさ感予測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3995201号公報
【特許文献2】国際公開第2012/046840号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、装置あるいはプログラムによって対象空間の明るさ感を予測するに当たり、実際に人間が当該対象空間から感じた明るさ感とは異なる明るさ感が予測されてしまう場合があった。すなわち、対象空間に対する明るさ感の予測が適切に行えない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、対象空間の明るさ感を高精度に予測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象空間を表す輝度画像に含まれる各面に対応する各画像領域の面種別を設定する面種別設定部と、各面種別に対して明るさ感への寄与度を示す重みが関連付けられた重み情報を参照し、複数の前記画像領域それぞれについての、当該画像領域に含まれる複数の画素の輝度値及び当該画像領域の面種別の重みに基づいて、前記対象空間の明るさ感を予測する明るさ感予測部と、を備えることを特徴とする明るさ感予測装置である。
【0008】
望ましくは、前記明るさ感予測部は、前記複数の画像領域のうち、第1画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値と、前記輝度画像において前記第1画像領域の近傍に位置する第2画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値との比にさらに基づいて、前記対象空間の明るさ感を予測する、ことを特徴とする。
【0009】
望ましくは、前記明るさ感予測部は、前記複数の画像領域のうち面種別が床面である画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値と、他の画像領域に含まれる複数の画素の輝度値の代表値との比は考慮せずに、前記対象空間の明るさ感を予測する、ことを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記明るさ感予測部は、間欠的に前記対象空間の明るさ感を予測し、直前に予測された前記対象空間の明るさ感と、今回予測した前記対象空間の明るさ感との差分に基づいて、今回予測した前記対象空間の明るさ感を補正する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、コンピュータを、対象空間を表す輝度画像に含まれる各面に対応する各画像領域の面種別を設定する面種別設定部と、各面種別に対して明るさ感への寄与度を示す重みが関連付けられた重み情報を参照し、複数の前記画像領域それぞれについての、当該画像領域に含まれる複数の画素の輝度値及び当該画像領域の面種別の重みに基づいて、前記対象空間の明るさ感を予測する明るさ感予測部と、として機能させることを特徴とする明るさ感予測プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象空間の明るさ感を高精度に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る明るさ感予測装置の構成概略図である。
図2】輝度画像の例を示す図である。
図3】重み情報の例を示す概念図である。
図4】輝度画像において定義された画像領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る明るさ感予測装置10の構成概略図である。明るさ感予測装置10は、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、あるいはタブレット端末などであるが、以下に説明する機能を発揮可能な限りにおいてどのような装置であってもよい。また、本実施形態に係る明るさ感予測装置10は、以下に説明する各機能を1つの装置で発揮するが、複数の装置によって明るさ感予測装置10の各機能が発揮されてもよい。
【0015】
通信部12は、例えばネットワークアダプタなどを含んで構成される。通信部12は、LANやインターネットなどの通信回線を介して、他の装置(例えばカメラや、カメラで撮像した画像を処理する画像処理装置など)と通信する機能を発揮する。例えば、通信部12は、後述の輝度画像20を他の装置から受信する。また、通信部12は、後述の明るさ感予測部28による予測結果を他の装置に送信してもよい。
【0016】
表示部14は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを含んで構成される。表示部14は、種々の画面を表示する。例えば、表示部14は、輝度画像20や、明るさ感予測部28による予測結果を表示可能である。
【0017】
入力部16は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル、マイクなどを含んで構成される。入力部16は、ユーザからの指示を明るさ感予測装置10に入力するために用いられる。
【0018】
記憶部18は、例えばハードディスク、SSD、ROM、あるいはRAMなどを含んで構成される。記憶部18には、明るさ感予測装置10の各部を動作させるための明るさ感予測プログラムが記憶される。また、図1に示す通り、記憶部18には、輝度画像20及び重み情報22が記憶される。
【0019】
輝度画像20は、明るさ感予測装置10によって明るさ感を予測する対象となる空間である対象空間を表す画像である。本明細書における対象空間とは、複数種類の面(例えば壁面、天井面、床面など)を含む空間である。例えば、対象空間は屋内の空間である。
【0020】
図2に、輝度画像20の例が示されている。輝度画像20は、複数の画素が2次元配列されたものである。輝度画像20に含まれる各画素は、画素値として少なくとも輝度値を有していればよい。輝度画像20は、対象空間をカメラで撮影して得られたカメラ画像であってよい。また、カメラ画像は各画素の輝度値のレンジ(範囲)が比較的狭い(例えば0~255)ところ、輝度画像20は、カメラ画像の各画素の輝度のレンジを拡張する処理が施された輝度拡張画像であるのが好適である。なお、輝度画像20としては、カメラ画像に基づく画像ではなく、コンピュータプログラムによって形成された画像、例えばCG画像などであってもよい。明るさ感予測装置10は、上述の通信部12により他の装置から輝度画像20を受信して記憶部18に記憶させる。あるいは、明るさ感予測装置10が輝度画像20を形成してもよい。
【0021】
図1に戻り、重み情報22は、輝度画像20内において定義され得る各面種別に対して、明るさ感への寄与度を示す重みが関連付けられた情報である。上述のように、対象空間には複数種類の面が含まれているところ、本願発明の発明者は、アンケートなどの調査結果に基づいて、対象空間に含まれている面種別に応じて、面に含まれる各画素の輝度値が当該対象空間についての明るさ感に与える影響、すなわち明るさ感への寄与度が異なることを見出した。したがって、当該調査結果に基づく、各面種別に対する明るさ感への寄与度を示す重みが、重み情報22として予め記憶部18に記憶される。
【0022】
図3に重み情報22の例が示されている。図3には、面種別として、天井面、正面壁面、側壁面、及び床面が示されている。天井面とは対象空間の天井に対応する面であり、正面壁面とは、輝度画像20の視野内において輝度画像20の左右方向に延伸する壁に対応する面であり、側壁面とは、輝度画像20の視野内において、奥行方向に延伸する壁に対応する面であり、床面とは対象空間の床に対応する面である。もちろん、面種別としてはこれらに限られず、他の種類の面(例えば窓面など)が含まれていてもよい。
【0023】
図3に示した4つの面種別のうち、対象空間についての明るさ感への寄与度は、大きい方から、正面壁面、天井面、側壁面、床面の順であることを本願発明の発明者は見出した。したがって、当該4つの面種別のうち、正面壁面の重みが最も大きく、天井面の重みが次に大きく、側壁面の重みが次に大きく、床面の重みが一番小さくなっている。重みの実際の値は例であり、明るさ感の算出のための式などに応じて適宜変更されてよい。
【0024】
図1に戻り、制御部24は、例えばCPU、GPU、ASIC、FPGAなどの各種制御装置などを含んで構成される。制御部24は、記憶部18に記憶された明るさ感予測プログラムに基づいて、明るさ感予測装置10の各部を制御する。特に、図1に示すように、制御部24は、面種別設定部26及び明るさ感予測部28としての機能を発揮する。
【0025】
面種別設定部26は、まず、輝度画像20内に含まれる各面に対応する各画像領域を定義する。本実施形態では、面種別設定部26は、輝度画像20に対する画像解析を施すことで複数の画像領域を定義する。具体的には、面種別設定部26は輝度画像20に対してエッジ検出処理を施し、検出したエッジで囲われた領域、あるいは、検出したエッジと輝度画像20の辺によって囲われた領域を1つの画像領域として定義する。なお、このとき、所定面積(画素数)以下の領域は画像領域としては定義せずに無視するようにしてもよい。これにより、輝度画像20に含まれる面以外のオブジェクト(例えば家具や柱など)を除外することができる。また、面種別設定部26は、輝度画像20に対する画像処理を行わず、ユーザからの指示に従って輝度画像20内において複数の画像領域を定義するようにしてもよい。
【0026】
次いで、面種別設定部26は、定義した複数の画像領域の面種別を設定する。本実施形態では、面種別設定部26は、定義した画像領域の形状や輝度画像20内における位置に基づいて、その面種別を設定する。例えば、面種別設定部26は、台形の画像領域であって、上底と下底とが平行であり、下底よりも上底の方が長く、輝度画像20内の上側に位置する画像領域の面種別を天井面と設定する。また、面種別設定部26は、四角形の画像領域であって、左右側の少なくとも一方の辺が垂直である(輝度画像20において上下方向に延伸している)画像領域の面種別を側壁面と設定する。また、面種別設定部26は、定義した画像領域の形状や輝度画像20内における位置に依らず、ユーザからの指示に従って各画像領域の面種別を特定するようにしてもよい。
【0027】
図4に、図2に示した輝度画像20において定義された複数の画像領域40と各画像領域40の面種別が示されている。図4においては、輝度画像20内において、天井面40a、正面壁面40b、側壁面40c、及び床面40dが設定されている。
【0028】
明るさ感予測部28は、輝度画像20が表す対象空間の明るさ感を予測する。対象空間に対する人間が感じる明るさ感は、対象空間の各部の輝度の対数に比例することが知られている。したがって、明るさ感予測部28は、基本的には、輝度画像20を構成する複数の画素の輝度値の幾何平均値である幾何平均輝度値に基づいて、対象空間の明るさ感を数値として予測する。明るさ感の予測値を算出するための式は、従来種々の方式が提案されているためここでは詳細な説明は省略する。なお、輝度画像20内に含まれる光源(例えば電球など)は、明るさ感に与える影響がかなり小さいことが知られているため、明るさ感予測部28は、光源に対応する画素は明るさ感の予測に用いない。具体的には、明るさ感予測部28は、輝度値が所定値以上の画素は光源に対応する画素とみなし、当該画素を除いた他の画素の輝度値の幾何平均値に基づいて明るさ感の予測を行う。
【0029】
特に、本実施形態では、明るさ感予測部28は、重み情報22を参照し、面種別設定部26が設定した各画像領域40に含まれる複数の画素の輝度値の代表値(例えば幾何平均輝度値、以下「輝度代表値」と記載する)と、各画像領域40の面種別の重みに基づいて、輝度画像20が表す対象空間の明るさ感を予測する。具体的には、明るさ感予測部28は、重み情報22が示す各面種別の重みに応じて、対象空間の明るさ感に与える、各画像領域40の輝度代表値の影響度を変えながら、対象領域の明るさ感を予測する。極端な例では、重みが0の画像領域40がある場合、明るさ感予測部28は、当該画像領域40の輝度代表値を無視して対象空間の明るさ感を予測する。
【0030】
その手法はいろいろな手法を採用することができるが、その一例として、明るさ感予測部28は、まず、画像領域40毎に、画像領域40の輝度代表値、例えば幾何平均輝度値を求める。その上で、重みがより大きい画像領域40の輝度代表値をより重視し、換言すれば重みがより小さい画像領域40の輝度代表値をより軽視して対象空間の明るさ感を予測する。
【0031】
例えば、重み情報22が図3に示す通りであるとすると、正面壁面40bの重みが大きいため、正面壁面40bの輝度代表値が大きい場合は、対象空間の明るさ感が大きくなる(明るいと感じる)方向に大きく作用し、また、正面壁面40bの輝度代表値が小さい場合は、対象空間の明るさ感が小さくなる(暗いと感じる)方向に大きく作用する。一方、床面40dの重みが小さいため、床面40dの輝度代表値が大きい場合であっても、対象空間の明るさ感が大きくなる方向にあまり作用せず、また、床面40dの輝度代表値が小さい場合であっても、対象空間の明るさ感が小さくなる方向にあまり作用しない。
【0032】
また、明るさ感予測部28は、輝度画像20内の第1画像領域40の輝度代表値と、輝度画像20において第1画像領域40の近傍に位置する第2画像領域40の輝度代表値との比にさらに基づいて、対象空間の明るさ感を予測するのが好適である。ここで、第1画像領域40の近傍に位置する第2画像領域40とは、代表的には第1画像領域40に隣接する画像領域40であるが、第1画像領域40の近傍に位置していれば、第2画像領域40は必ずしも第1画像領域40に隣接していなくてもよい。
【0033】
本願発明の発明者は、輝度画像20において、近傍にある2つの画像領域40の輝度代表値の比が大きい程、人間は、対象空間に対して暗いと感じる、すなわち明るさ感が小さいと感じることを見出した。なお、2つの画像領域40の輝度代表値の比が大きいとは、両画像領域40の輝度代表値の差が大きいことを意味する。図2を参照して、例えば、中央の天井面と、その側方に隣接する側壁との間の輝度代表値の比が大きいと、当該天井面と当該側壁との間の輝度代表値の比が小さい場合に比して、人間は、対象空間が暗いと感じる。
【0034】
したがって、明るさ感予測部28は、輝度画像20に含まれる各画像領域40(各第1画像領域40)について、その近傍にある他の複数の画像領域40(第2画像領域40)それぞれとの間における輝度代表値の比を算出する。そして、算出された複数の比の合計あるいは平均値を考慮して対象空間の明るさ感を予測する。具体的には、算出された複数の比の合計あるいは平均値が大きい程、対象空間の明るさを小さくし、算出された複数の比の合計あるいは平均値が小さい程、対象空間の明るさを大きくする。
【0035】
一般的に、床面40dは代表輝度値がかなり低くなりやすい。したがって、たとえ対象空間に対して人間が比較的明るいと感じる場合であっても、床面40dに対応する画像領域40と、その近傍にある他の画像領域40(例えば正面壁面40bや側壁面40cに対応する画像領域40)との間の代表輝度値の比は、大きくなる傾向にある。したがって、明るさ感予測部28は、2つの画像領域40間の代表輝度値の比を算出するに当たり、面種別設定部26が設定した床面40dに対応する画像領域40は考慮しないのが好適である。換言すれば、明るさ感予測部28は、床面40dに対応する画像領域40の輝度代表値と、他の画像領域40の輝度代表値との比は考慮せずに、対象空間の明るさ感を予測するのが好適である。
【0036】
また、明るさ感予測部28は、同一の対象空間の明るさ感を間欠的に、換言すれば異なる複数の時刻において予測する。例えば、明るさ感予測部28は、30分毎あるいは5分毎など、定期的に対象空間の明るさを予測する。これは、1日の内の時刻によって対象空間の明るさ感が変化する場合があるためである。例えば、昼間においては太陽光が光源となるから、時刻によって太陽の位置が変化し、それにより対象空間に対する光の当たり方が変化して明るさ感が変動し得る。また、夜になれば主な光源は照明器具であるため、同一対象空間における明るさ感は、昼とは全く異なる場合がある。
【0037】
明るさ感予測部28は、間欠的に取得される複数の輝度画像20に基づいて、対象空間の明るさ感を間欠的に予測する。例えば、ある対象空間を撮像するカメラを固定設置し、当該カメラが対象空間を間欠的に撮影して複数のカメラ画像を取得する。当該複数のカメラ画像を複数の輝度画像20としてもよいし、各カメラ画像の輝度のレンジを拡張する処理が施された複数の輝度拡張画像を複数の輝度画像20としてもよい。
【0038】
空間が明るい空間から暗い空間へと変化した場合、人間(の眼)は、初めのうちは暗さに慣れておらずかなり周りが見えづらいが、時間経過とともに徐々に眼が慣れてきて周りが見え易くなってくる(暗順応)。また、空間が暗い空間から明るい空間へと変化した場合、人間(の眼)は、初めのうちは明るさに慣れておらずかなり周りが見えづらいが、時間経過とともに徐々に眼が慣れてきて周りが見え易くなってくる(明順応)。
【0039】
対象空間の明るさ感を間欠的に予測する場合、明るさ感予測部28は、上述の暗順応又は明順応を考慮して対象空間の明るさ感を予測するようにしてもよい。具体的には、明るさ感予測部28は、直前に予測された対象空間の明るさ感と、今回予測した対象空間の明るさ感との差分に基づいて、今回予測した対象空間の明るさ感を補正するようにしてもよい。
【0040】
詳しくは、明るさ感予測部28は、その直前に予測された当該対象空間の明るさ感から、今回予測した対象空間の明るさ感を差し引いた差が大きい程、今回予測した対象空間の明るさ感が小さくなるように補正する。換言すれば、明るさ感予測部28は、その直前に予測された当該対象空間の明るさ感から、今回予測した対象空間の明るさ感を差し引いた差が小さい程、今回予測した対象空間の明るさ感が大きくなるように補正する。
【0041】
例えば、明るさ感が0~20までの数値で表現されるとし、今回予測した対象空間の明るさが5である(つまり比較的暗いと予測された)とする。このとき、明るさ感予測部28は、直前に予測された当該対象空間の明るさ感が6である場合、すなわち、明るさ感の差が1である場合に比して、直前に予測された当該対象空間の明るさ感が12である場合、すなわち、明るさ感の差が7である場合、つまり差が大きい方が、より今回の明るさ感の予測値が小さくなるように補正をする。
【0042】
また、今回予測した対象空間の明るさが15である(つまり比較的明るいと予測された)とする。このとき、明るさ感予測部28は、直前に予測された当該対象空間の明るさ感が14である場合、すなわち、明るさ感の差が-1である場合に比して、直前に予測された当該対象空間の明るさ感が9である場合、すなわち、明るさ感の差が-6である場合、つまり差が小さい方が、より今回の明るさ感の予測値が大きくなるように補正をする。
【0043】
本実施形態に係る明るさ感予測装置10の構成概要は以上の通りである。明るさ感予測装置10によれば、輝度画像20内において定義された複数の面種別に応じて重みが設定され、当該重みが考慮されて、輝度画像20に基づいて対象空間の明るさ感が予測される。これにより、少なくとも輝度画像20に含まれる面種別を考慮せずに明るさ感を予測した場合に比して、高精度に、すなわち人間の実感により近い明るさ感を予測することができる。
【0044】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 明るさ感予測装置、12 通信部、14 表示部、16 入力部、18 記憶部、20 輝度画像、22 重み情報、24 制御部、26 面種別設定部、28 明るさ感予測部、40 画像領域、40a 天井面、40b 正面壁面、40c 側壁面、40d 床面。
図1
図2
図3
図4