(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141476
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】連棟式建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
E04H1/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041803
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 篤弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲也
(57)【要約】
【課題】建物高さ方向において建物のプランニング上の制約を低減させることができる連棟式建物を得る。
【解決手段】連棟式建物10において、隣り合う住戸12間に境界壁部14が配置されている。また、住戸12の外壁22は、その一部が外側壁部24で構成されている。そして、住戸12は、その内側に床部20を備えており、床部20は、住戸12内を建物高さ方向において仕切るように配置されると共に、住戸12における下階18の居室56の天井側に配置されている。この床部20は、境界壁部14に沿って境界壁部14に当接された状態で、外側壁部24に建物高さ方向下側から支持されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う住戸間に配置された境界壁部と、
前記住戸の外壁の一部を構成する外側壁部と、
前記住戸内を建物高さ方向において仕切るように配置され、又は当該住戸の居室の天井側に配置され、前記境界壁部に沿って当該境界壁部に当接された状態で前記外側壁部に建物下方側から支持された仕切部と、
を有する連棟式建物。
【請求項2】
前記境界壁部は、組積造又は鉄筋コンクリート造とされている、
請求項1に記載の連棟式建物。
【請求項3】
前記外側壁部は、鋼製の壁フレームを含んで構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の連棟式建物。
【請求項4】
前記仕切部は、前記住戸の上階と下階との境界部に配置された当該上階の床部とされている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の連棟式建物。
【請求項5】
前記床部は、鋼製の床フレームを含んで構成されている、
請求項4に記載の連棟式建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連棟式建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、壁パネル接合方法に関する発明が開示されている。この壁パネル接合方法では、上階側の壁パネルと下階側の壁パネルとの間に軽量気泡コンクリート製の床板が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の先行技術では、連棟式建物に適用する場合、隣り合う住戸間に配置された境界壁部を各階毎に配置する必要があり、建物を建物高さ方向に増築する場合等に、建物のプランニング上の制約が生じることとなる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、建物高さ方向において建物のプランニング上の制約を低減させることができる連棟式建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る連棟式建物は、隣り合う住戸間に配置された境界壁部と、前記住戸の外壁の一部を構成する外側壁部と、前記住戸内を建物高さ方向において仕切るように配置され、又は当該住戸の居室の天井側に配置され、前記境界壁部に沿って当該境界壁部に当接された状態で前記外側壁部に建物下方側から支持された仕切部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る連棟式建物では、隣り合う住戸間に境界壁部が配置されている。また、住戸の外壁は、その一部が外側壁部で構成されている。そして、住戸は、その内側に仕切部を備えており、当該仕切部は、住戸内を建物高さ方向において仕切るように配置されているか、又は、当該住戸の居室の天井側に配置されている。
【0008】
ところで、仕切部が境界壁部によって建物下方側から支持されているような構成では、建物を建物高さ方向に増築する場合等に、仕切部の建物上方側に新たに境界壁部を設置することが必要となり、建物のプランニング上の制約が生じることとなる。
【0009】
ここで、本態様では、仕切部が、境界壁部に沿って当該境界壁部に当接された状態で、外側壁部に建物下方側から支持されている。このため、本態様では、建物を建物高さ方向に増築する場合等に、建物のプランニング上の制約を受けることなく境界壁部を建物高さ方向に延長することができる。
【0010】
第2の態様に係る連棟式建物は、第1の態様に係る連棟式建物において、前記境界壁部は、組積造又は鉄筋コンクリート造とされている。
【0011】
第2の態様に係る連棟式建物では、境界壁部が組積造又は鉄筋コンクリート造とされており、建物を建物高さ方向に増築する場合等に境界壁部を建物高さ方向に延長することが容易となる。また、境界壁部で仕切られる一方の住戸と他方の住戸との間での音の伝達を境界壁部によって抑制することができる。
【0012】
第3の態様に係る連棟式建物は、第1の態様又は第2の態様に係る連棟式建物において、前記外側壁部は、鋼製の壁フレームを含んで構成されている。
【0013】
第3の態様に係る連棟式建物では、外側壁部が鋼製の壁フレームを含んで構成されており、当該壁フレームが木製とされているような構成に比し、住戸の外壁に作用する荷重に対する外側壁部の剛性を確保することができる。
【0014】
第4の態様に係る連棟式建物は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に係る連棟式建物において、前記仕切部は、前記住戸の上階と下階との境界部に配置された当該上階の床部とされている。
【0015】
第4の態様に係る連棟式建物では、住戸の上階と下階との境界部に、当該上階の床部が配置されている。
【0016】
ところで、境界壁部が住戸の上階と下階との境界部において上階の床部で区切られているような構成では、下階側において境界壁部を構築した後に上階の床部を構築し、その後に上階側において境界壁部を構築する必要があり、工程が煩雑になることが考えられる。
【0017】
ここで、本態様では、上階の床部が、境界壁部に沿って当該境界壁部に当接されており、境界壁部を複数階に亘って構築することができる。
【0018】
第5の態様に係る連棟式建物は、第4の態様に係る連棟式建物において、前記床部は、鋼製の床フレームを含んで構成されている。
【0019】
第5の態様に係る連棟式建物では、上階の床部が鋼製の床フレームを含んで構成されており、当該床フレームが木製とされているような構成に比し、当該床部に作用する荷重に対する当該床部の剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、第1の態様に係る連棟式建物では、建物高さ方向において建物のプランニング上の制約を低減させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
第2の態様に係る連棟式建物では、建物高さ方向において建物のプランニング上の制約をより低減させることができると共に、建物の遮音性能を確保することができるという優れた効果を有する。
【0022】
第3の態様に係る連棟式建物では、建物に作用する外力に対する建物の外壁の剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0023】
第4の態様に係る連棟式建物では、建物の建築時において、工程が煩雑になることを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0024】
第5の態様に係る連棟式建物では、建物の上階の床部に作用する負荷に起因する騒音の発生を抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る連棟式建物の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る連棟式建物において上階側と下階側との境界部の構成を模式的に示す断面図(
図4の2-2線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図3】本実施形態に係る連棟式建物において住戸と境界壁部との関係を模式的に示す断面図(
図1の3-3線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図4】本実施形態に係る連棟式建物の構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1~
図4を用いて、本発明に係る連棟式建物の実施形態の一例について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る「連棟式建物10(以下、建物10と称する)」は、所定の方向に連なる「住戸12」と、隣り合う住戸12間に配置された「境界壁部14」とを含んで構成されている。なお、
図1~
図4では、建物10において住戸12の連なる方向を矢印X(以下、X方向と称する)で示し、矢印Xの方向と直交する住戸12の奥行方向を矢印Y(以下、Y方向と称する)で示し、住戸12の高さ方向を矢印Z(以下、Z方向と称する)で示している。
【0027】
詳しくは、
図1及び
図4に示されるように、境界壁部14は、組積造又は鉄筋コンクリート造とされており、厚さ方向をX方向とされて、Z方向に延在している。そして、各住戸12は、一対の境界壁部14間に配置されており、各住戸12が境界壁部14で仕切られた状態となっている。
【0028】
住戸12は、「上階16」と「下階18」とを備えており、上階16と下階18とは、仕切部としての上階16の「床部20」で仕切られている。また、住戸12の「外壁22」は、その下階18側の部分が「外側壁部24」で構成されており、その上階16側の部分が外側壁部26で構成されている。
【0029】
外側壁部24は、下階18のY方向一方側と他方側とのそれぞれに配置されており、
図2にも示されるように、鋼製の「壁フレーム28」と、外壁材30とを含んで構成されている。そして、壁フレーム28は、Z方向に延在する複数の縦桟32と、X方向に延在する横桟34とを含んで構成されている。この壁フレーム28は、そのZ方向下側の部分が、建物10の基礎36に図示しない固定部材で固定されており、そのZ方向上側の部分が、後述するように、床部20をZ方向下側から支持している。
【0030】
一方、外壁材30は、矩形の板状とされており、X方向に複数連なって配置されると共に、壁フレーム28に住戸12の屋外側から図示しない取付部材で取り付けられている。なお、外側壁部26は、鋼製の壁フレーム38と、外壁材40とを含んで、基本的に外側壁部24と同様の構成とされており、上階16のY方向一方側と他方側とのそれぞれに配置されている。
【0031】
床部20は、鋼製の「床フレーム42」と、床材44とを含んで構成されている。そして、床フレーム42は、X方向に延在する複数の床大梁46、床大梁46間に掛け渡された複数の床小梁48、Y方向に延在する複数の床大梁50及び床大梁50間に掛け渡された複数の床小梁52を含んで構成されている。
【0032】
一方、床材44は、矩形の板状とされており、床フレーム42の上面に複数枚敷設されることで、床部20の床面54を構成している。
【0033】
上記のように構成された床部20において、床フレーム42の屋外側に位置する床大梁46は、
図2に示されるように、壁フレーム28によって、Z方向下側から支持されている。そして、壁フレーム28のZ方向上側の横桟34は、床大梁46に図示しない固定部材によって固定されている。
【0034】
一方、床フレーム42の屋内側に位置する床大梁46及び床大梁50は、下階18の居室56を仕切る図示しない間仕切壁の壁フレームによって、Z方向下側から支持されている。
【0035】
また、床フレーム42の屋外側に位置する床大梁46のZ方向上側には、壁フレーム38が配置されており、床大梁46は、壁フレーム38をZ方向下側から支持している。そして、壁フレーム38のZ方向下側の横桟34は、床大梁46に図示しない固定部材によって固定されている。
【0036】
一方、床フレーム42において、境界壁部14側に位置する床大梁50は、
図3に示されるように、境界壁部14に沿って境界壁部14に当接された状態で配置されると共に、境界壁部14に設けられた図示しないスタッドボルト等の取付部材を介して境界壁部14に取り付けられている。
【0037】
なお、床フレーム42には、Z方向下側に垂下する図示しない複数の吊部材が取り付けられており、当該吊部材には、下階18の天井面を構成する図示しない天井材が取り付けられている。つまり、本実施形態において、床フレーム42は、下階18の天井の躯体としても機能していると見なすことができる。
【0038】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0039】
本実施形態では、
図1に示されるように、隣り合う住戸12間に境界壁部14が配置されている。また、住戸12の外壁22は、その一部が外側壁部24で構成されている。そして、住戸12は、その内側に床部20を備えており、床部20は、住戸12内を建物高さ方向において仕切るように配置されると共に、住戸12における下階18の居室56の天井側に配置されている。
【0040】
ところで、床部20が境界壁部14によってZ方向下側から支持されているような構成では、建物10をZ方向に増築する場合等に、床部20の建物上方側に新たに境界壁部14を設置することが必要となり、建物10のプランニング上の制約が生じることとなる。
【0041】
ここで、本実施形態では、床部20が、境界壁部14に沿って境界壁部14に当接された状態で、外側壁部24にZ方向下側から支持されている。このため、本実施形態では、建物10をZ方向に増築する場合等に、制約を受けることなく境界壁部14をZ方向に延長することができる。したがって、本実施形態では、Z方向において建物10のプランニング上の制約を低減させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、境界壁部14が組積造又は鉄筋コンクリート造とされており、建物10をZ方向に増築する場合等に境界壁部14を建物高さ方向に延長することが容易となる。また、境界壁部14で仕切られる一方の住戸12と他方の住戸12との間での音の伝達を境界壁部14でによって抑制することができる。したがって、本実施形態では、Z方向において建物10のプランニング上の制約をより低減させることができると共に、建物10の遮音性能を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態では、外側壁部24が鋼製の壁フレーム28を含んで構成されており、壁フレーム28が木製とされているような構成に比し、住戸12の外壁22に作用する荷重に対する外側壁部24の剛性を確保することができる。したがって、本実施形態では、建物10に作用する外力に対する建物10の外壁22の剛性を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態では、住戸12の上階16と下階18との境界部に、上階16の床部20が配置されている。
【0045】
ところで、境界壁部14が住戸12の上階16と下階18との境界部において上階16の床部20で区切られているような構成では、下階18側において境界壁部14を構築した後に上階16の床部20を構築し、その後に上階16側において境界壁部14を構築する必要があり、工程が煩雑になることが考えられる。
【0046】
ここで、本実施形態では、上階16の床部が、境界壁部14に沿って境界壁部14に当接されており、境界壁部14を複数階に亘って構築することができる。したがって、本実施形態では、建物10の建築時において、工程が煩雑になることを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上階16の床部20が鋼製の床フレーム42を含んで構成されており、床フレーム42が木製とされているような構成に比し、床部20に作用する荷重に対する床部20の剛性を確保することができる。したがって、本実施形態では、建物10の上階16の床部20に作用する負荷に起因する騒音の発生を抑制することができる。
【0048】
加えて、本実施形態では、隣接する住戸12同士が、境界壁部14で仕切られているため、これらの住戸12のうち一方の住戸12において増築や取り壊し等の工事を行っても他方の住戸12に当該工事が影響を及ぼすことを抑制することができる。したがって、本実施形態では、建物10のプランニング上の制約をより低減させることができる。
【0049】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、建物10が複数階建ての建物とされていたが、建物10は、平屋であってもよい。また、建物10を平屋とする場合には、床フレーム42のZ方向の寸法を小さくしたものを住戸12の天井フレームとして採用し、住戸12の居室の天井を構成してもよい。このような構成においても、隣接する住戸12同士が、境界壁部14で仕切られているため、各住戸12において工事を行っても他の住戸12に当該工事が影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0050】
(2) また、上述した実施形態では、壁フレームや床フレームが鋼製とされていたが、建物10の仕様に応じて、これらのフレームを木材や炭素繊維強化樹脂で構成してもよい。
【0051】
(3) さらに、上述した実施形態では、住戸12の床部20が外側壁部24で支持されていたが、これに限らない。例えば、建物10の仕様に応じて、外側壁部24に床部20を支持可能な支持部を設けると共に、当該支持部で床部20を支持する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 連棟式建物
12 住戸
14 境界壁部
16 上階
18 下階
20 床部(仕切部)
22 外壁
24 外側壁部
28 壁フレーム
42 床フレーム