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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141482
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】平面研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 47/22 20060101AFI20220921BHJP
   B24B 49/08 20060101ALI20220921BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20220921BHJP
   B24B 7/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B24B47/22
B24B49/08
B24B49/10
B24B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041816
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正行
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB27
3C034BB32
3C034BB73
3C034BB92
3C034BB94
3C034CA12
3C034CA13
3C034CA26
3C034CB01
3C034DD12
3C043BA01
3C043CC03
3C043DD01
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
(57)【要約】
【課題】検出センサによるワーク表面の測定精度が高く、ワークを高精度に研削加工することができる平面研削装置を提供する。
【解決手段】ワークテーブル4に保持されたワークWを回転しながら研削する研削といし2と、研削といし2を支持するといし軸頭3と、ワークWの被加工面の位置を検出する検出センサ10と、検出センサ10を移動自在に支持するセンサ支持機構20と、を備え、センサ支持機構20は、ワークテーブル4の保持面に向かって延在して軸心の方向に往復動自在且つ回動自在な旋回カム軸21と、旋回カム軸21に設けられ径方向にオフセットした位置に検出センサ10を支持するアーム部材27と、を有し、検出センサ10は、軸心の方向に移動しながら旋回してワークテーブル4に接近及び離間する。これにより検出センサ10をワークWの研削点に近づけて測定精度を高くすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワークテーブルと、
前記ワークテーブルに保持された前記ワークを回転しながら研削する研削といしと、
前記研削といしを支持するといし軸が設けられたといし軸頭と、
前記ワークの被加工面の位置を検出する検出センサと、
前記といし軸頭に設けられ前記検出センサを移動自在に支持するセンサ支持機構と、を備え、
前記センサ支持機構は、前記ワークテーブルの前記ワークを保持する保持面に向かって延在して軸心の方向に往復動自在且つ前記軸心を中心として回動自在な旋回カム軸と、
前記旋回カム軸に設けられ前記軸心から径方向にオフセットした位置に前記検出センサを支持するアーム部材と、を有し、
前記検出センサは、前記軸心に沿った方向に移動しながら前記軸心を中心として旋回して前記ワークテーブルに接近及び離間することを特徴とする平面研削装置。
【請求項2】
前記センサ支持機構は、前記旋回カム軸を前記軸心の方向に送る駆動手段と、
前記旋回カム軸を移動自在に支持するローラを有するカムフォロアと、
前記旋回カム軸に形成され前記ローラが嵌められて前記カムフォロアに支持されるカム溝と、を有し、
前記カム溝は、前記軸心の方向に延在し上端近傍において斜め円周方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の平面研削装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記旋回カム軸に連結されたピストンロッドで前記旋回カム軸を送るエアシリンダであることを特徴とする請求項2に記載の平面研削装置。
【請求項4】
前記カムフォロアは、前記旋回カム軸を中心として対向するよう一対設けられ、
前記カム溝は、前記カムフォロアに対応するよう前記旋回カム軸の外周に一対形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の平面研削装置。
【請求項5】
前記検出センサは、前記軸心を中心として回動して前記研削といしに接近した位置において前記被加工面を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の平面研削装置。
【請求項6】
前記検出センサは、前記被加工面に接触して位置を検出するタッチプローブであることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の平面研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面研削装置に関し、特に、ワークの被加工面の位置を正確に検出することができるセンサ機構を備えた平面研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークテーブルの上面に沿って略水平方向に延在するといし軸に支持された研削といしで、ワークテーブルに載置されたワークの上面を研削する平面研削装置において、ワーク等の表面に接触して位置検出を行う接触式の検出センサを備えたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、左右方向に往復移動可能なワークテーブルと、前後方向に移動可能なといしと、を有する平面研削装置であって、といし軸頭の側面に、タッチプローブを備えるセンサユニットが取り付けられた平面研削装置が開示されている。
【0004】
同文献に開示されたタッチプローブは、先端のスタイラスが、ワークテーブル上に設けられた基準ブロックの上面及びワークの上面に接触する。これにより、ワークテーブルから基準ブロックの上面及びワークの上面までの高さが検出され、研削する取り代量が演算手段によって算出される。
【0005】
また例えば、特許文献2には、ワークの切り込み方向及び送り方向の位置を検出する接触式のセンサを有し、該センサによって検出される位置情報に基づいて、といし及びテーブルを相対移動させる範囲を演算し、といしによる加工を自動で開始する自動研削装置が開示されている。
【0006】
同文献に開示された検出センサは、といしカバーの側方または前面に設けられ、下方向に突出するプローブと、該プローブの下端に設けられた略球状の接触子と、を有する。接触子がワークやテーブルに接触することにより、検出センサは、ワークやテーブルの位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-52444号公報
【特許文献2】特開2020-110893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来技術の平面研削装置は、研削加工の精度を高めるために、検出センサによるワークの測定について改善すべき点があった。
【0009】
具体的には、従来技術の平面研削装置では、ワークの位置情報を検出するタッチプローブ等のセンサを研削といしの近傍に設けても、検出センサによる計測点は、研削といしによるワークの研削点から離れた位置にあった。
【0010】
即ち、検出センサを研削といしの近傍、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術のようにといし軸頭の側方等に設けて、検出センサを上下方向に送っても、検出センサの接触子とワークとの接触位置は、研削といしとワークとの接触位置から離れた位置となる。
【0011】
そのため、従来技術の平面研削装置では、検出センサによる測定点と研削といしによる研削点が離れていることに起因して測定の誤差が大きくなることがあり、検出センサによる測定の精度を高めることが難しかった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検出センサによるワーク表面の測定精度が高く、ワークを高精度に研削加工することができる平面研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の平面研削装置は、ワークを保持するワークテーブルと、前記ワークテーブルに保持された前記ワークを回転しながら研削する研削といしと、前記研削といしを支持するといし軸が設けられたといし軸頭と、前記ワークの被加工面の位置を検出する検出センサと、前記といし軸頭に設けられ前記検出センサを移動自在に支持するセンサ支持機構と、を備え、前記センサ支持機構は、前記ワークテーブルの前記ワークを保持する保持面に向かって延在して軸心の方向に往復動自在且つ前記軸心を中心として回動自在な旋回カム軸と、前記旋回カム軸に設けられ前記軸心から径方向にオフセットした位置に前記検出センサを支持するアーム部材と、を有し、前記検出センサは、前記軸心に沿った方向に移動しながら前記軸心を中心として旋回して前記ワークテーブルに接近及び離間することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の平面研削装置によれば、ワークの被加工面の位置を検出する検出センサと、といし軸頭に設けられ検出センサを移動自在に支持するセンサ支持機構と、を備え、センサ支持機構は、ワークテーブルのワークを保持する保持面に向かって延在して軸心の方向に往復動自在且つ軸心を中心として回動自在な旋回カム軸と、旋回カム軸に設けられ軸心から径方向にオフセットした位置に検出センサを支持するアーム部材と、を有し、検出センサは、軸心に沿った方向に移動しながら軸心を中心として旋回してワークテーブルに接近及び離間する。このような構成により、平面研削装置は、検出センサによる計測点を研削といしによるワークの研削点に近づけて、検出センサによるワーク表面の測定精度を高くすることができ、ワークを高精度に研削加工することができる。
【0015】
また、本発明の平面研削装置によれば、前記センサ支持機構は、前記旋回カム軸を前記軸心の方向に送る駆動手段と、前記旋回カム軸を移動自在に支持するローラを有するカムフォロアと、前記旋回カム軸に形成され前記ローラが嵌められて前記カムフォロアに支持されるカム溝と、を有し、前記カム溝は、前記軸心の方向に延在し上端近傍において斜め円周方向に傾斜している。このような構成により、センサ支持機構は、検出センサを、ワークから離れてワークの計測を行わない退避位置から、ワークの計測を行う検出位置まで、またはその逆方向に、好適に送ることができる。
【0016】
例えば、退避位置から検出位置までの移動では、検出センサは、駆動手段に押され、旋回カム軸の軸心の方向に送られてワークに接近する。そして、検出センサは、ワークに近づいたところで旋回カム軸の軸心を中心として旋回してワークの研削点に接近する。よって、検出センサは、といし軸頭等に衝突することのない好適な軌跡で退避位置からワークの研削点に近い検出位置まで移動する。そして、ワークの研削点の近傍において、検出センサによる高精度な測定が行われる。
【0017】
また、本発明の平面研削装置によれば、前記駆動手段は、前記旋回カム軸に連結されたピストンロッドで前記旋回カム軸を送るエアシリンダであっても良い。このような構成により、検出センサは、エアシリンダに供給される空圧を動力源として、旋回カム軸の軸心の方向に送られてワークに接近すると共に、旋回カム軸の軸心を中心として旋回し、ワークの研削点に接近する。よって、空気の圧力を利用して検出センサの高精度且つ高効率な移動が行われる。
【0018】
また、本発明の平面研削装置によれば、前記カムフォロアは、前記旋回カム軸を中心として対向するよう一対設けられ、前記カム溝は、前記カムフォロアに対応するよう前記旋回カム軸の外周に一対形成されても良い。これにより、検出センサの高精度且つ高効率な直動旋回送りが可能となる。
【0019】
また、本発明の平面研削装置によれば、前記検出センサは、前記軸心を中心として回動して前記研削といしに接近した位置において前記被加工面を検出する。これにより、誤差が小さい高精度な測定が行われる。
【0020】
また、本発明の平面研削装置によれば、前記検出センサは、前記被加工面に接触して位置を検出するタッチプローブであっても良い。これにより、検出センサの接触子がワークの被加工面に接触することにより、ワークの位置を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る平面研削装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る平面研削装置の研削といし及びセンサ機構の近傍を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る平面研削装置の研削といし及びセンサ機構の近傍を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る平面研削装置のセンサ支持機構の概略構成を示す分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る平面研削装置のセンサ支持機構のカム溝近傍を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る平面研削装置の検出センサが退避位置にある状態を示す(A)平面図、(B)側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る平面研削装置の検出センサが送られる状態を示す(A)平面図、(B)側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る平面研削装置の検出センサが検出位置にある状態を示す(A)平面図、(B)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る平面研削装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る平面研削装置1の概略構成を示す斜視図である。
【0023】
図1に示すように、平面研削装置1は、ワークWの被加工面を研削する工作機械である。平面研削装置1は、例えば、CNC(Computerized Numerical Control)研削盤であり、自動数値制御を行う図示しない操作盤を有する。
【0024】
平面研削装置1は、ワークWを研削する工具としての研削といし2と、ワークWを保持するワークテーブル4と、を有し、回転する研削といし2によってワークWの被加工面である表面が研削される。
【0025】
平面研削装置1は、例えば、ワークWの上面を平面研削するCNC平面研削盤でも良いし、複雑形状の研削が可能なCNC成形研削盤でも良い。また、平面研削装置1は、例えば門型研削盤でも良いし、その他形式の研削盤でも良い。
【0026】
ワークテーブル4は、正面から見て左右方向水平(以下、適宜「X方向」と言う。)に往復動自在である。研削といし2は、上下方向(以下、適宜「Y方向」と言う。)に往復動自在に構成されたといし軸頭3に設けられている。また、研削といし2を支持するといし軸頭3は、前後方向水平(以下、適宜「Z方向」と言う。)に往復動自在に構成されたサドル15に支持されている。
【0027】
なお、平面研削装置1はコラム形式の平面研削盤でも良く、その場合には、といし軸頭3は、Z方向に往復動自在に構成されたコラムに支持されている。また、ワークテーブル4がZ方向に往復動自在に構成されても良い。
【0028】
といし軸頭3には、研削といし2を支持する図示しないといし軸が回転自在に設けられている。そして、といし軸頭3に支持された研削といし2は、といし軸と共に回転し、といし軸頭3と共にY方向及びZ方向に移動する。
【0029】
研削といし2は、略円板状に形成されている。平面研削装置1は、研削といし2を回転させる、例えば、モータ等の図示しない回転駆動手段を有する。研削といし2が回転しながらワークWの表面と接することにより、ワークWの表面が研削される。
【0030】
また、研削といし2は、下方が開口するといしカバー16によって覆われている。前述の通り、研削といし2は、Y方向及びZ方向に移動するといし軸頭3に支持されている。よって、研削といし2は、といし軸頭3と連動して、ワークテーブル4に対してY方向及びZ方向に相対移動する。
【0031】
研削といし2の下方には、ワークWを載置するための支持手段となるワークテーブル4が設けられている。ワークテーブル4は、例えば、電磁石等を内部に備える電磁チャック等であり、磁力によって、載置されたワークWを移動しないように支持することができる。
【0032】
また、前述の通り、ワークテーブル4は、送り方向となるX方向に、研削といし2に対して相対移動可能に構成されている。これにより、ワークWを移動させて、研削といし2とワークWのX方向の相対位置を調節することができる。このように、ワークテーブル4及びといし軸頭3を相対移動させることにより、研削といし2とワークWとの相対位置を3軸方向、即ち、X方向、Y方向及びZ方向にそれぞれ変えることができる。
【0033】
研削といし2を支持するといし軸頭3及びワークWを支持するワークテーブル4は、図示しない操作盤に設けられた数値制御手段によって数値制御される図示しない送り手段によって送られて、前述の方向に相対的に往復移動する。
【0034】
なお、研削といし2及びワークテーブル4が配置された研削加工領域は、図示しないハウジングによって覆われていても良い。ハウジングには、作業者がワークWのセット及び取り外し等を行うための開口部を有し、該開口部には、開閉自在な図示しない扉が設けられている。
【0035】
平面研削装置1は、ワークWの被加工面の位置を検出するセンサ機構5を備えている。センサ機構5は、ワークWの被加工面の位置を検出する検出センサ10と、といし軸頭3に設けられ検出センサ10を移動自在に支持するセンサ支持機構20と、を有する。
【0036】
検出センサ10は、研削といし2による切り込み方向、即ちY方向のワークWの位置を検出すると共に、切り込み方向に垂直な送り方向、即ちX方向及びZ方向のワークWの位置を検出する。例えば、検出センサ10は、下方向に突出するプローブ11及びその先端に設けられた接触子12を有する接触式のセンサである。
【0037】
このように、検出センサ10が被加工面に接触して位置を検出するタッチプローブであることにより、検出センサ10の接触子12がワークWの被加工面に接触して、ワークWの位置を高精度に検出することができる。
【0038】
なお、検出センサ10として、例えば、レーザ光等によってワークWの有無を検出する非接触式のセンサ、エアセンサ等の非接触式のセンサ、振動を検出する圧電素子等を有するAEセンサ等、その他の各種センサが採用されても良い。
【0039】
検出センサ10は、といし軸頭3に設けられているので、といし軸頭3と共にY方向及びZ方向に移動することになる。なお、検出センサ10が取り付けられる位置は、といしカバー16の後方であるが、といしカバー16の側面または前面等でも良い。
【0040】
なお、ワークテーブル4の近傍には、検出センサ10でワークWの位置を測定する際に基準となる図示しない基準ブロックや基準プレート等が設けられても良い。また、基準ブロックの上面には、位置測定の基準となる略球状の基準球等が設けられても良い。
【0041】
図2は、平面研削装置1の研削といし2及びセンサ機構5の近傍を示す正面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る平面研削装置1では、正面視で研削といし2の右側に、ワークWの位置を検出するセンサ機構5が設けられている。
なお、本実施形態ではセンサ機構5が研削といし2の右側に設けられる例を挙げているが、センサ機構5は、研削といし2の左側に設けられても良い。
【0042】
図3は、平面研削装置1の研削といし2及びセンサ機構5の近傍を示す側面図である。
図3に示すように、センサ機構5は、研削といし2の背面側のといし軸頭3に設けられている。前述の通り、センサ機構5は、ワークWの被加工面の位置を検出する検出センサ10と、検出センサ10を移動自在に支持するセンサ支持機構20と、を有する。
【0043】
図2及び図3を参照して、検出センサ10は、ワークWの計測を行わない退避位置13と、ワークWの計測を行う検出位置14と、の間を移動自在に支持されている。
具体的には、センサ支持機構20は、検出センサ10を回転自在に支持する旋回カム軸21を有する。旋回カム軸21は、ワークテーブル4のワークWを保持する保持面に向かって延在し、軸心の方向、即ちY方向、に往復動自在且つ軸心を中心として回動自在である。
【0044】
旋回カム軸21の下端近傍には、旋回カム軸21の軸心から径方向にオフセットした位置に検出センサ10を支持するアーム部材27が設けられている。即ち、検出センサ10は、旋回カム軸21の軸心に沿ったY方向に移動しながら、旋回カム軸21の軸心を中心として旋回して、ワークテーブル4に接近及び離間する。
【0045】
ワークWの検出を行わない検出センサ10の退避位置13は、研削といし2の研削点、即ち研削といし2の外周の最下部、よりも上方であり、且つ、研削点から後方に離れた位置にある。
【0046】
詳しくは、検出センサ10は、研削といし2の中心軸近傍まで上昇した位置にあり、且つ、旋回カム軸21の軸心を中心として後方に約180度旋回した位置にある。これにより、ワークW加工時に検出センサ10が邪魔にならない。
【0047】
ワークWの被加工面を検出する検出センサ10の検出位置14は、プローブ11の先端に設けられた接触子12が研削といし2の研削点よりも下方であり、且つ、研削といし2の研削点に近接した位置にある。
【0048】
即ち、検出センサ10は、退避位置13から旋回カム軸21に沿ってY方向に下降すると共に、旋回カム軸21を中心としてアーム部材27と共に旋回し、研削といし2の研削点に近い検出位置14に移動する。
【0049】
このような構成により、平面研削装置1は、検出センサ10による計測点を研削といし2によるワークWの研削点に近づけて、検出センサ10によるワークW表面の測定精度を高くすることができ、ワークWを高精度に研削加工することができる。
【0050】
図4は、センサ支持機構20の概略構成を示す分解斜視図である。
図4を参照して、センサ支持機構20は、アーム部材27を有し検出センサ10をY方向に旋回移動自在に支持する旋回カム軸21と、検出センサ10を移動させる駆動手段としてのエアシリンダ30と、を有する。
旋回カム軸21は、Y方向に延在する略円柱状の形態を成し、前述の通り、軸心に沿って往復動自在且つ回動自在に設けられている。
【0051】
具体的には、旋回カム軸21は、上下一対の支持ブッシュ25に内嵌されている。支持ブッシュ25は、例えば、滑り軸受であり、旋回カム軸21を、軸心の方向に移動自在且つ軸心を中心として回動自在に支持する。旋回カム軸21を支持する一対の支持ブッシュ25は、支持部材26であるブッシュホルダによって、といし軸頭3(図1参照)の側面近傍に固定されている。
【0052】
旋回カム軸21の下端近傍には、アーム部材27が設けられており、旋回カム軸21から離れたアーム部材27の先端近傍には、検出センサ10が設けらえている。これにより、検出センサ10は、旋回カム軸21の軸心を中心として旋回自在となる。
【0053】
旋回カム軸21の上方には、空気の圧力によって旋回カム軸21をY方向に送るエアシリンダ30が設けられている。エアシリンダ30は、空気の圧力を利用してピストンロッド31を上下動させる複動式エアシリンダである。エアシリンダ30に内嵌されているピストンロッド31の下端近傍は、フローティングロータリージョインを介して回動自在に、旋回カム軸21の上端近傍に連結されている。
【0054】
エアシリンダ30は、支持具33、支柱34及び支持部材26等を介して、といし軸頭3に固定されている。即ち、支持部材26の上部には、旋回カム軸21に沿って上下方向、即ちY方向、に延在する複数の支柱34が設けられており、支柱34の上端近傍には、エアシリンダ30を支持する支持具33が固定されている。
【0055】
エアシリンダ30には、図示しない空気供給装置がエア配管32を介して接続されている。空気供給装置は、エアシリンダ30の内部を加減圧してピストンロッド31を上下動させる駆動源となる空気をエアシリンダ30の内部に送る。
【0056】
なお、センサ支持機構20の検出センサ10を上下動させるための駆動手段は、エアシリンダ30に限定されるものではない。センサ支持機構20の駆動手段は、油圧によって駆動する油圧シリンダや、モータ及びボールねじ等を有し電力によって駆動する電力アクチュエータ等、その他の駆動手段であっても良い。
【0057】
支持部材26の上部近傍には、旋回カム軸21を移動自在に支持するローラ29を有するカムフォロア28が設けられている。旋回カム軸21の外周には、ローラ29が嵌められるカム溝22が形成されている。
【0058】
なお、カムフォロア28は、旋回カム軸21を中心として対向するよう一対設けられている。そしてカム溝22は、一対のカムフォロア28に対応するよう旋回カム軸21の外周に一対形成されている。即ち、カム溝22は、互いの位置が旋回カム軸21の外周の約180度反対の位置になるよう外周の両側に形成されている。
【0059】
カムフォロア28は、支持部材26を介してといし軸頭3に固定されている。よって、カムフォロア28は、といし軸頭3に対して相対移動しない。旋回カム軸21は、カム溝22に嵌められたカムフォロア28のローラ29に支持され移動する。即ち、所定の固定位置にあるローラ29がカム溝22に沿うように旋回カム軸21が移動することになる。
【0060】
なお、支柱34の近傍外側には、支柱34及び旋回カム軸21を覆うような保護カバー35が設けられても良い。これにより、旋回カム軸21のカム溝22に研削屑等が付着することを防止することができる。
【0061】
図5は、センサ支持機構20のカム溝22近傍を示す図である。
図5に示すように、旋回カム軸21の外周に形成されたカム溝22には、軸心の方向、即ちY方向、に延在する直動溝部23が形成されている。また、旋回カム軸21の上端近傍において、カム溝22には、斜め円周方向に傾斜している旋回溝部24が形成されている。即ち、旋回溝部24は、旋回カム軸21の外周に略螺旋状に形成されている。
【0062】
図4及び図5を参照して、旋回カム軸21は、カムフォロア28のローラ29が直動溝部23を支持した状態で移動すると、Y方向に直動することになる。他方、旋回カム軸21は、カムフォロア28のローラ29が旋回溝部24を支持した状態で移動すると、ローラ29及びカム溝22にガイドされて、旋回しながらY方向に移動することになる。即ち、旋回カム軸21は、略螺旋状に旋回しながらY方向に移動することになる。
【0063】
このような構成により、センサ支持機構20は、検出センサ10を、ワークWから離れてワークWの計測を行わない退避位置13から、ワークWの計測を行う検出位置14まで、またはその逆方向に、好適に送ることができる。
【0064】
なお、カムフォロア28は、旋回カム軸21を中心として対向するよう一対設けられている。そしてカム溝22は、一対のカムフォロア28に対応するよう旋回カム軸21の外周に一対形成されている。これにより、検出センサ10の高精度且つ高効率な直動旋回送りが可能となる。
【0065】
次に、図6から図8を参照して、検出センサ10が退避位置13から検出位置14まで移動する工程について詳細に説明する。
図6(A)は、検出センサ10が退避位置13にある状態を示す平面図である。図6(B)は、検出センサ10が退避位置13にある状態を示す側面図である。
【0066】
図6(A)及び図6(B)を参照して、退避状態において、検出センサ10は、ワークテーブル4の保持面から上方に離れ、且つ、研削といし2から後方に離れた退避位置13にある。
【0067】
図7(A)は、検出センサ10が送られる状態を示す平面図である。図7(B)は、平面研削装置1の検出センサ10が送られる状態を示す側面図である。
図7(A)及び図7(B)を参照して、ワークWの検出を行う際には、検出センサ10は、ワークテーブル4の保持面に接近するよう、即ちワークWに接近するよう、退避位置13から移動する。
【0068】
具体的には、エアシリンダ30に供給される空圧を動力源として、エアシリンダ30によって旋回カム軸21が下方に押され、旋回カム軸21及びアーム部材27と共に、検出センサ10が下方に移動する。
【0069】
この時、旋回カム軸21は、軸心に沿って直線状に延在するカム溝22部の直動溝部23がカムフォロア28のローラ29によってガイドされるので、軸心に沿って上方から下方に略直線状に移動する。よって、アーム部材27の先端近傍に保持されている検出センサ10も、旋回カム軸21に沿って上方から下方に略直線状に移動する。
【0070】
図8(A)は、検出センサ10が検出位置14にある状態を示す平面図である。図8(B)は、検出センサ10が検出位置14にある状態を示す側面図である。
図8(A)及び図8(B)を参照して、旋回カム軸21が下降し、カム溝22の旋回溝部24がカムフォロア28のローラ29に達すると、螺旋状に形成された旋回溝部24がローラ29にガイドされることになる。
【0071】
そうすると、旋回カム軸21は、カム溝22の旋回溝部24がカムフォロア28のローラ29によってガイドされて、螺旋状に旋回しながら下方へ移動する。旋回カム軸21の下端近傍に設けられたアーム部材27は、旋回カム軸21の軸心を中心として旋回しながら下降することになる。よって、アーム部材27の先端近傍に設けられている検出センサ10は、旋回カム軸21を中心として旋回しながら下方に向かって螺旋状に移動することになる。
【0072】
そして、検出センサ10は、ワークテーブル4の保持面に更に接近しつつ、研削といし2に接近する。詳しくは、検出センサ10は、旋回下降して、研削といし2によるワークWの研削点に接近する。
【0073】
このように検出センサ10は、直動的に下降してワークWに近づいたところで、旋回カム軸21を中心として旋回してワークWの研削点に接近する。
そして、検出センサ10は、研削といし2に接近し、研削点の近傍においてワークWの被加工面を検出する。これにより、誤差が小さい高精度な測定が行われる。
【0074】
このように、本実施形態に係る平面研削装置1では、空気の圧力を利用して高精度且つ高効率な検出センサ10の移動が行われ、ワークWの研削点の近傍において、検出センサ10による高精度な測定が行われる。
【0075】
例えば、タッチプローブ等の検出センサ10により、ワークWの被加工面を高精度に検出することができる。検出センサ10による高精度な検出結果から、図示しない演算手段によって、ワークWの研削の取り代量が正確に算出される。
【0076】
本実施形態に係るセンサ機構5は、ワークWの表面形状を正確に確認する手段としても使用可能である。例えば、タッチプローブ等の検出センサ10による計測は、CADデータを利用してワークWの数値制御加工を実行する機械加工方法等に利用されても良い。
【0077】
具体的には、CADデータを利用してワークWの被加工面の測定経路が生成され、その測定経路に沿って検出センサ10で被加工面の形状が測定されて点群データが取得され、その点群データから被加工面の形状データが生成されても良い。そして、取得されたワークWの被加工面の高精度な形状データに基づいて加工経路が演算され、その加工経路に沿って研削といし2及びワークWを相対移動させる加工プログラムによって、ワークWの加工が実行されても良い。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 平面研削装置
2 研削といし
3 といし軸頭
4 ワークテーブル
5 センサ機構
10 検出センサ
11 プローブ
12 接触子
13 退避位置
14 検出位置
15 サドル
16 といしカバー
20 センサ支持機構
21 旋回カム軸
22 カム溝
23 直動溝部
24 旋回溝部
25 支持ブッシュ
26 支持部材
27 アーム部材
28 カムフォロア
29 ローラ
30 エアシリンダ
31 ピストンロッド
32 エア配管
33 支持具
34 支柱
35 保護カバー
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8