(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014154
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】乗用作業機
(51)【国際特許分類】
B60G 1/02 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
B60G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116347
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】大内 和也
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301BA06
3D301CA33
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA51
3D301DA96
(57)【要約】
【課題】安価な構成で乗り心地と接地性の良い4輪駆動走行が可能な乗用作業機の前輪におけるダンパー取付構造を提供することを課題とする。
【解決手段】前輪2,2はハブケース4,4を介してフロントアクスルケース5に連結し、これら前輪2,2、ハブケース4,4、フロントアクスルケース5を含む前輪ユニットYを、フロントアクスルケース5のセンターピン6を中心に揺動可能に支持するセンターピボット形態に構成し、該センターピン6と車体1とを、センターピン6の枢支部7から横方向へ延設する左右1対のスイングアーム8L,8Rで連結し、該左右スイングアーム8L,8Rの車体1側枢支軸9L,9R間の幅内に、車体1とフロントアクスルケース5間を弾発支持する左右一対のダンパーDL,DRを設けて連結した乗用作業機の構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)前部に操向可能の一対の前輪(2),(2)と、車体(1)後部に一対の後輪(3),(3)を設けた4輪駆動形態の走行が可能な乗用作業機において、前輪(2),(2)はハブケース(4),(4)を介してフロントアクスルケース(5)に連結し、これら前輪(2),(2)、ハブケース(4),(4)、フロントアクスルケース(5)を含む前輪ユニット(Y)を、フロントアクスルケース(5)のセンターピン(6)を中心に揺動可能に支持するセンターピボット形態に構成し、該センターピン(6)と車体(1)とを、センターピン(6)の枢支部(7)から横方向へ延設する左右1対のスイングアーム(8L),(8R)で連結し、該左右スイングアーム(8L),(8R)の車体(1)側枢支軸(9L),(9R)の左右幅内に、車体(1)とフロントアクスルケース(5)間を弾発支持する左右一対のダンパー(DL),(DR)を設けて連結したことを特徴とする乗用作業機。
【請求項2】
車体(1)とフロントアクスルケース(5)間を、ダンパー(DL),(DR)上側支点(D1),(D1)、又はダンパー(DL),(DR)下側支点(D2),(D2)のいずれか一方に枢着したダンパーアーム(10),(10)を介して連結したことを特徴とする請求項1に記載の乗用作業機。
【請求項3】
左右一対のダンパー(DL),(DR)を平地静止状態の正面視において、逆ハの字形態に配置連結したことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用、建築、運搬用の乗用作業機の前輪部に関するもので、詳しくは前輪で操向と駆動が可能の4輪駆動の乗用作業機におけるダンパー取付構成の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラクター等の乗用作業機において不整地での走行を容易にするために、操向可能な前輪をセンターピボット形態で支持する構成、例えば特許文献1が知られている。しかしながらセンターピボット形態のみでは乗り心地が悪く、タイヤの接地性能も劣るものであった。又、4輪駆動の前輪であっても左右の前輪を独立して揺動させる独立懸架方式を採用しているものもあるが、構造が複雑になり高価になるという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安価な構成で乗り心地と接地性の良い4輪駆動走行が可能な乗用作業機の前輪におけるダンパー取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、車体1前部に操向可能の一対の前輪2,2と、車体1後部に一対の後輪3,3を設けた4輪駆動形態の走行が可能な乗用作業機において、前輪2,2はハブケース4,4を介してフロントアクスルケース5に連結し、これら前輪2,2、ハブケース4,4、フロントアクスルケース5を含む前輪ユニットYを、フロントアクスルケース5のセンターピン6を中心に揺動S可能に支持するセンターピボット形態に構成し、該センターピン6と車体1とを、センターピン6の枢支部7から横方向へ延設する左右1対のスイングアーム8L,8Rで連結し、該左右スイングアーム8L,8Rの車体1側枢支軸9L,9Rの左右幅内に、車体1とフロントアクスルケース5間を弾発支持する左右一対のダンパーDL,DRを設けて連結した乗用作業機の構成とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、車体1とフロントアクスルケース5間を、ダンパーDL,DR上側支点D1,D1、又はダンパーDL,DR下側支点D2,D2のいずれか一方に枢着したダンパーアーム10,10を介して連結した構成とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、左右一対のダンパーDL,DRを平地静止状態の正面視において、逆ハの字形態に配置連結した構成とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、前輪2,2、ハブケース4,4、フロントアクスルケース5を含む前輪ユニットYを、フロントアクスルケース5のセンターピン6を中心に揺動S可能に支持するセンターピボット形態に構成し、該センターピン6と車体1とを、センターピン6の枢支部7から横方向へ延設する左右1対のスイングアーム8L,8Rで連結し、車体1とフロントアクスルケース5間を左右一対のダンパーDL,DRで弾発支持しているので、センターピン6が車体1に対して上下方向に揺動するとともに、センターピン6を中心に前輪ユニットY又は車体1が左右方向へも揺動Sするので、左右前輪2,2の接地性が良い。又、左右スイングアーム8L,8Rの車体1側枢支軸9L,9Rの左右幅内に、車体1とフロントアクスルケース5間を弾発支持する左右一対のダンパーDL,DRを配置しているので、ダンパーDL,DRがフロントアクスルケース5上側のセンターピン6近傍を支持した形態となり、ダンパーDL,DRの伸縮ストロークが短く、小型の安価なダンパーDL,DRを使っても左右前輪2,2の揺動量を大きく確保することができ、簡素、安価な構成で乗り心地の良い乗用作業機を提供できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、車体1とフロントアクスルケース5間を、ダンパーDL,DR上側支点D1,D1、又はダンパーDL,DR下側支点D2,D2のいずれか一方に枢着したダンパーアーム10,10を介して連結しているので、前輪2,2の左右揺動量を更に大きく確保することができ、前輪2,2の接地追従性能を高く維持できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、左右一対のダンパーDL,DRを平地静止状態の正面視において、逆ハの字形態に配置連結しているので、ダンパーDL,DRの下側支点D2,D2がセンターピン6に接近した位置を支持するとともに、ダンパーDL,DRを傾斜させて取着しているので、乗り心地や接地追従性能を高く維持できる。更に、ダンパーDL,DRを低く狭い範囲に収納でき、車体1高さも低く構成できるので、車体1重心位置を低く構成可能でバランスの良い安定した走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】前輪部の一部平面図及び揺動状態を示す一部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態として乗用草刈機を例に説明する。乗用草刈機等の農業用機械は、操縦者が乗り果樹園や畑等の地面の凸凹が激しい不整地で草刈作業を行う機械であり、操縦者の乗り心地や走破性の観点から前輪2,2や後輪3,3の接地性は重要である。しかし一方で農業用機械であることから、自動車のような複雑で高価なサスペンション機能は不要で、不整地での走破性や車輪の接地性が重要視される。
【0013】
図面に基づいて本発明の乗用草刈機は、左右一対の前輪2,2と後輪3,3を備えた4輪駆動走行可能な車体1の腹部に、平行リンクアーム15を介して昇降自在の刈取装置16を装着し、刈取装置16上方には単座の運転席17を設け、該運転席17前方には前輪2,2を操向可能のハンドル18と、運転席17後方にはエンジン19を配置している。エンジン19は刈取装置16の刈刃20の伝動、及び走行用トランスミッション21のHST(油圧無段変速装置)22を介して後輪3,3又は前輪2,2を駆動する。運転席17の左右両側には各種操作レバー類を配置し、運転席17後方のエンジン19はエンジンカバー23で覆い、運転席17前方にフロア24のハンドル18基部の右側にアクセルペダル25と左側にブレーキペダル26とを設けている。
図5に示す通り、エンジン19の駆動をトランスミッション21及びHST22に伝動し後輪3,3への伝動を行い、油圧回路(ホース)27の油圧力により前輪2,2を駆動できる4輪駆動走行が可能な乗用草刈機である。28はHST22用のオイルタンクである。
【0014】
フロントアクスルケース5内の左右両側にはハブケース4を設け、このハブケース4内の操向軸29を介して前輪軸30が伝動されて、前輪軸30に取着した前輪2,2が駆動される。左右のハブケース4,4間はロッド32で連結されており、右側のハブケース4に取着した操向ロッド31は、ハンドル18回動操作に伴って作動する操向アーム(図示せず)に連結されていて、操縦者がハンドル18を回動操作することで左右前輪2,2を操舵可能な構成である。
【0015】
フロントアクスルケース5上側の左右中央部には、センターピン6を枢支する枢支部7を設け、センターピン6の枢支部7からこのセンターピン6を回動中心とする左右両方向へ向け延出のスイングアーム8L,8Rを設けている。スイングアーム8L,8Rの左右外端部は、枢支軸9L,9Rにより車体1フレームFに枢支している。又、フロントアクスルケース5と車体1フレームF間には左右一対のダンパーDR,DLを設け、前輪ユニットYとフレームF間を弾発支持している。この構成により、前輪ユニットYはセンターピン6を中心に左右揺動S可能であるとともに、ダンパーDL,DRの伸縮により上下方向にも揺動可能である。
【0016】
ここにおいて、車体1前部に操向可能の一対の前輪2,2と、車体1後部に一対の後輪3,3を設けた4輪駆動形態の走行が可能な乗用作業機において、前輪2,2はハブケース4,4を介してフロントアクスルケース5に連結し、これら前輪2,2、ハブケース4,4、フロントアクスルケース5を含む前輪ユニットYを、フロントアクスルケース5のセンターピン6を中心に揺動S可能に支持するセンターピボット形態に構成し、該センターピン6と車体1とを、センターピン6の枢支部7から横方向へ延設する左右1対のスイングアーム8L,8Rで連結し、該左右スイングアーム8L,8Rの車体1側枢支軸9L,9Rの左右幅内に、車体1とフロントアクスルケース5間を弾発支持する左右一対のダンパーDL,DRで連結した乗用作業機の構成としている。
【0017】
これは、前輪2,2、ハブケース4,4、フロントアクスルケース5を含む前輪ユニットYを、フロントアクスルケース5のセンターピン6を中心に揺動S可能に支持するセンターピボット形態に構成し、該センターピン6と車体1とを、センターピン6の枢支部7から横方向へ延設する左右1対のスイングアーム8L,8Rで連結し、車体1とフロントアクスルケース5間を左右一対のダンパーDL,DRで弾発支持しているので、センターピン6が車体1に対して上下方向に揺動するとともに、センターピン6を中心に左右方向へも揺動Sするので、左右前輪2,2の接地性が良い。又、左右スイングアーム8L,8Rの車体1側枢支軸9L,9R間の幅内に、車体1とフロントアクスルケース5間を弾発支持する左右一対のダンパーDL,DRを配置しているので、ダンパーDL,DRがフロントアクスルケース5上側のセンターピン6近傍を支持した形態となり、ダンパーDL,DRの伸縮ストロークが短く、小型の安価なダンパーDL,DRを使っても左右前輪2,2の揺動量を大きく確保することができ、簡素、安価な構成で乗り心地の良い乗用作業機を提供できる。
【0018】
又、センターピン6左右のフロントアクスルケース5上側にダンパーDL,DRの下側支点D2,D2を枢支し、ダンパーDL,DRの上側支点D1,D1と車体1フレームFとの間はダンパーアーム10,10を介して連結した構成としている。
【0019】
車体1とフロントアクスルケース5間を、ダンパーDL,DR上側支点D1,D1、又はダンパーDL,DR下側支点D2,D2のいずれか一方に枢着したダンパーアーム10,10を介して連結しているので、前輪2,2の左右揺動量を更に大きく確保することができ、前輪2,2の接地追従性能を高く維持できる。尚、ダンパーアーム10はダンパーDL,DRの上側支点D1,D1に枢支しているが、これに限定するものではなく上側支点D1,D1か下側支点D2,D2のいずれか一方に枢支すれば良い。
【0020】
又、左右一対のダンパーDL,DRを平地静止状態の正面視において、逆ハの字形態に配置連結した構成としている。これは、左右一対のダンパーDL,DRを平地静止状態の正面視において、逆ハの字形態に配置連結しており、ダンパーDL,DRの下側支点D2,D2がセンターピン6に接近した位置を支持するとともに、ダンパーDL,DRを傾斜させて取着しているので、乗り心地や前輪2,2の接地追従性能を高く維持できる。更に、ダンパーDL,DRを低く狭い範囲に収納でき、車体1高さも低く構成できるので、車体1重心位置を低く構成可能でバランスの良い安定した走行が可能となる。
【0021】
平地静止状態でダンパーアーム10の上面は、下側が開放されたコの字形状の連結フレームFa上側底面に当接している。
図3(B)に示す通り、左前輪2が上った状態になると、左側のダンパーアーム10は連結フレームFaに当接したままの状態で、左ダンパーDLが縮み枢支軸9Lを中心にスイングアーム8Lのセンターピン6側が回動するとともに、ダンパーセンターピン6を中心に前輪ユニットYの左側が上る方向へ、フロントアクスルケース5の上部が揺動ストッパ33に当接するまでの範囲で揺動する。この時、右ダンパーDRは伸びきった状態で右側のダンパーアーム10が連結フレームFaから離間Tした状態となる。これにより、前輪ユニットYをセンターピン6を中心に、右側ダンパーDRの伸縮ストローク範囲以上に揺動させることが可能となる。34は規制アームで35はストッパピンであり、この規制アーム34とストッパピン35は、前輪ユニットY全体が地面から浮いた状態、すなわち、車体1フレームFから前輪ユニットYを吊り下げた状態になる際に、センターピン6が所定範囲以下に下降しないよう規制する規制手段である。
【符号の説明】
【0022】
1 車体
2 前輪
3 後輪
4 ハブケース
5 フロントアクスルケース
6 センターピン
7 枢支部
8L スイングアーム
8R スイングアーム
9L 枢支軸
9R 枢支軸
10 ダンパーアーム
D1 上側支点
D2 下側支点
DL ダンパー
DR ダンパー
F フレーム
Fa 連結フレーム
Y 前輪ユニット