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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141557
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】空間拡張飲料用グラス及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/22 20060101AFI20220921BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220921BHJP
   G06F 3/04845 20220101ALI20220921BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20220921BHJP
【FI】
A47G19/22 S
G02B5/08 Z
G06F3/0484 150
G06F3/0481
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021076805
(22)【出願日】2021-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】510286433
【氏名又は名称】株式会社ネットアプリ
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】西田 誠
【テーマコード(参考)】
2H042
3B001
5E555
【Fターム(参考)】
2H042DE08
3B001AA02
3B001BB10
3B001CC02
3B001CC40
5E555AA27
5E555AA62
5E555AA76
5E555BA04
5E555BA90
5E555BB04
5E555BB40
5E555BC04
5E555BC08
5E555BE17
5E555CA10
5E555CA12
5E555CA15
5E555CA41
5E555CA42
5E555CA44
5E555CA47
5E555CB12
5E555CB14
5E555CB20
5E555CB59
5E555CC24
5E555CC25
5E555DA01
5E555DB32
5E555DB53
5E555DC26
5E555DC27
5E555DC53
5E555DC63
5E555EA22
5E555EA23
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】 本発明はユーザーの眼から見たグラス底面を含むグラス本体内の空間の大きさを拡張出来る空間拡張飲料用グラスを提供することを課題とする。また、その空間拡張飲料用グラスに使用するコンピュータプログラムを収録した記憶媒体を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の空間拡張飲料用グラスはグラス本体と、前記グラス本体の側面に映像表示装置を固定するための固定機構と、前記映像表示装置の画像を前記グラス本体の外部から視認するための透明部と、人物画像と背景画像を前記映像表示装置に表示又は出力するための画像制御部と、センサー部とを備え、前記人物画像は眼と口部を含む顔部を有する架空の人物をコンピュータグラフィックで表現した画像であり、前記センサーの信号により前記人物画像の前記背景画像に対する相対的な大きさが変化することを特徴とする空間拡張飲料用グラス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、
前記グラス本体の側面に映像表示装置を固定するための固定機構と、
前記映像表示装置の画像を前記グラス本体の外部から視認するための透明部と、
人物画像と背景画像を前記映像表示装置に表示又は出力するための画像制御部と、
センサー部と
を備え、
前記人物画像は眼と口部を含む顔部を有する人物又は架空の人物をコンピュータグラフィックで表現した画像であり、
前記画像制御部は前記人物画像の背景部に前記背景画像を合成した合成画像を前記映像表示装置に表示又は出力し、
前記合成画像において前記人物画像と前記背景画像が重なるエリアには前記人物画像が描画されており、
前記センサーの信号により前記人物画像の前記背景画像に対する相対的な大きさが変化し、
ユーザーは前記合成画像を前記グラス本体内の飲料と前記透明部越しに視認することを特徴とする空間拡張飲料用グラス。
【請求項2】
前記合成画像を前記上部開口の方向に反射するための反射鏡を前記グラス本体の内部又は前記グラス本体の底面近傍に備え、
前記合成画像が前記反射鏡を反射した後に前記上部開口を経て前記グラス本体の外部に至ることを特徴とする請求項1に記載の空間拡張飲料用グラス。
【請求項3】
前記画像制御部がコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムであることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の空間拡張飲料用グラス。
【請求項4】
前記画像制御部がコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムとして前記映像表示装置の筐体の内部に実装され、
前記画像制御部は前記センサーの信号の値により前記合成画像を変化させることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空間拡張飲料用グラス。
【請求項5】
前記センサーはカメラセンサー、加速度センサー、マイクロフォン、圧電センサー、タッチパネル、糖度センサー、アルコールセンサーのいずれかであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の空間拡張飲料用グラス。
【請求項6】
前記背景画像は前記人物画像に比して輝度又は明度が低い色が用いられている画像であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の空間拡張飲料用グラス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の空間拡張飲料用グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、
前記コンピュータプログラムが前記人物画像の背後又は背景部に前記背景画像を合成した画像を前記映像表示装置に表示又は出力に表示することを特徴とする記憶媒体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の空間拡張飲料用グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、
前記コンピュータプログラムが前記センサーの信号により前記人物画像の前記背景画像に対する相対的な大きさを変更し、
前記コンピュータプログラムが前記人物画像の背後又は背景部に前記背景画像を合成した画像を前記映像表示装置に表示又は出力に表示することを特徴とする記憶媒体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の空間拡張飲料用グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、
前記コンピュータプログラムが前記センサーの信号により前記人物画像の前記背景画像に対する相対的な大きさを変更し、
前記コンピュータプログラムが前記人物画像と前記背景画像を上下反転及び/又左右反転し、
前記コンピュータプログラムが前記人物画像の背後又は背景部に前記背景画像を合成した画像を前記映像表示装置に表示又は出力に表示することを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用グラス内の空間をユーザーの眼から見て巨大な空間に拡張できる空間拡張飲料用グラスとそれに使用する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料を入れる機能以外に様々な機能を持ったグラスが開発されており、反射鏡をグラス内に配置した飲料用演出グラスと飲料のレンズ効果による画像の歪みをキャンセルする飲料用演出グラスが開発されている。
例えば特許文献1には本願発明者が発明した飲料用演出グラスが開示されている。この飲料用演出グラスは、グラス側面に固定された映像表示装置と、グラス本体内部に配置された反射鏡とを備えてりおり、映像表示装置の映像を疑似的にグラス内部に投影する演出が可能なグラスである。
特許文献2には本願発明者が発明した飲料用演出グラスが開示されている。この飲料用演出グラスは、画像の縦横比を制御する映像縦横比制御部を用いて横方向に圧縮されたスクィーズ画像を出力しグラス本体内部の飲料のレンズ効果による画像の歪みを相殺又はキャンセルすることが可能なグラスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6488049号
【特許文献2】特許第6749668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2の飲料用演出グラスはグラス底面を含むグラス内の空間を広大な空間に拡張出来ない。また、グラス内に展開又は描画されたグラス内の巨大な空間内の人物とインタラクティブにやり取り出来ない。
【0005】
本発明は上記問題を鑑み、ユーザーの眼から見たグラス底面を含むグラス本体内の空間の大きさを拡張出来る空間拡張飲料用グラスを提供することを課題とする。
また、その空間拡張飲料用グラスに使用するコンピュータプログラムを収録した記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空間拡張飲料用グラスは、上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、前記グラス本体の側面に映像表示装置を固定するための固定機構と、前記映像表示装置の画像を前記グラス本体の外部から視認するための透明部と、人物画像と背景画像を前記映像表示装置に表示又は出力するための画像制御部と、センサー部とを備え、前記人物画像は眼と口部を含む顔部を有する人物又は架空の人物をコンピュータグラフィックで表現した画像であり、前記画像制御部は前記人物画像の背景部に前記背景画像を合成した合成画像を前記映像表示装置に表示又は出力し、前記合成画像において前記人物画像と前記背景画像が重なるエリアには前記人物画像が描画されており、前記センサーの信号により前記人物画像の前記背景画像に対する相対的な大きさが変化し、ユーザーは前記合成画像を前記グラス本体内の飲料と前記透明部越しに視認することを特徴とする。
また、前記合成画像を前記上部開口の方向に反射するための反射鏡を前記グラス本体の内部又は前記グラス本体の底面近傍に備え、前記合成画像が前記反射鏡を反射した後に前記上部開口を経て前記グラス本体の外部に至ることを特徴とする。
また、前記画像制御部がコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムであることを特徴とする。
また、前記画像制御部がコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムとして前記映像表示装置の筐体の内部に実装され、前記画像制御部は前記センサーの信号の値により前記合成画像を変化させることを特徴とする。
また、前記センサーはカメラセンサー、加速度センサー、マイクロフォン、圧電センサー、タッチパネル、糖度センサー、アルコールセンサーのいずれかであることを特徴とする。
また、前記背景画像は前記人物画像に比して輝度又は明度が低い色が用いられている画像であることを特徴とする。
本発明の記録媒体は、上記空間拡張飲料用グラスで用いるコンピュータプログラムを保存した記憶媒体であり、前記コンピュータプログラムが前記人物画像の背後又は背景部に前記背景画像を合成した画像を前記映像表示装置に表示又は出力に表示することを特徴とする。
また、前記コンピュータプログラムが前記センサーの信号により前記人物画像の前記背景画像に対する相対的な大きさを変更し、前記コンピュータプログラムが前記人物画像の背後又は背景部に前記背景画像を合成した画像を前記映像表示装置に表示又は出力に表示することを特徴とする。
また、前記コンピュータプログラムが前記センサーの信号により前記人物画像の前記背景画像に対する相対的な大きさを変更し、前記コンピュータプログラムが前記人物画像と前記背景画像を上下反転及び/又左右反転し、前記コンピュータプログラムが前記人物画像の背後又は背景部に前記背景画像を合成した画像を前記映像表示装置に表示又は出力に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空間拡張飲料用グラスは、ユーザーの眼から見たグラス本体内の空間又は容積を実際のグラス本体に比して大きく拡張する。
人間は部屋に居る人物が描かれた人物のイラストや肖像画からも(そのイラストに人物と共に)描かれた部屋や空間の大きさを遠近又はパースにより認識又は類推する事が出来る。そのためグラス本体の側面や底面に設けた映像表示装置を用いて人物画像と背景画像を同時投射してやる事によりユーザーの脳にグラス本体内の空間又は容積が拡大したような錯覚を発生させる事が出来る。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、人物画像の背景画像に対する相対的な大きさを変更する事により(ユーザーが認識又は感じる)グラス本体内の空間の広さをユーザーは任意のタイミングで自由な大きさに変更出来る。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、加速度センサーやカメラセンサー等のセンサーをトリガーとして人物画像の背景画像に対する相対的な大きさを変更する事によりグラスを(乾杯動作等で)傾けたりした際にグラス本体内の空間の広さを広げたり、縮めたりする乾杯演出が可能になる。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、カメラセンサー又はマイクロフォンセンサー等のセンサーを用いる事によりグラス本体内部に飲料が充填されたタイミングでユーザーが認識又は感じる)グラス本体内の空間の広さを伸縮する乾杯演出が可能になる。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、コンピュータグラフィックによってグラス本体内部に疑似的に再現された広大な空間内にいる人物又は架空のキャラクターとタッチパネルやボタンセンサー或いはマイクロフォンを介してインタラクティブに対話する事が出来る。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、グラス内部又は底面に反射鏡を配置する事によりグラスの側面だけでなくグラス底面の空間も疑似的に拡張出来る。これによりユーザーはグラスの側面だけでなくグラスの上部開口部からグラス底面を覗き込んだ場合にもグラス内に広大な空間が広がっているように錯覚出来る。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、ユーザーがグラス本体内の飲料越しに視認可能な疑似的な拡大空間を作り出せるため飲料の色でその空間を演色する演出が可能である。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、ユーザーがグラス本体内の飲料越しに視認可能な疑似的な拡大空間を作り出せるため炭酸飲料の泡の内部の空間に浮かぶ人間を表現できる。
本発明の空間拡張飲料用グラスは、反射鏡とユーザーの遠近に錯覚を引き起こす合成画像を用いることによりグラス底部の空間の拡大が可能であり、飲料行為時にユーザーは飲料底面を視認する際に独特の浮遊感を体験出来るのが最大の特長である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態の空間拡張飲料用グラスを示す斜視図
図2】センサー信号無しの人物画像例を示す斜視図(a)とセンサー信号有りの人物画像例を示す斜視図(b)
図3】第2の実施の形態の空間拡張飲料用グラスを示す斜視図(a)と上方断面図(b)
図4】反射鏡とグラス底面が一体化した例を示す斜視図(a)と断面図(b)
図5】画像制御部のコンピュータプログラムのフローチャート図
図6】人物画像の背景画像に対する相対的サイズ変更を含む画像制御部のコンピュータプログラムのフローチャート図
図7】画像反転処理を含むコンピュータプログラムのフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[空間拡張飲料用グラスの第1の実施の形態]
以下、本発明の空間拡張飲料用グラスの第1の実施の形態を図面を用いて示す。
図1に示すように、空間拡張飲料用グラス1は上部開口11を有する有底の筒状体であるグラス本体10と、映像表示装置80をグラス本体10に固定する固定機構15と、映像表示装置80(厳密には映像表示面81)の画像を外部から視認するための透明部12と、映像表示装置80に人物画像82と背景画像83を表示又は出力するための画像制御部100とセンサー部200とから概略構成される。
グラス本体10は上部開口11を有する有底の筒状体であり、グラス本体10の形状の例としては、図1(a)のように通常のコップ型の形状、取っ手を備えたビールジョッキ型(又はマグカップ型)の形状、上部開口11を塞ぐ蓋を備えたボトル型の形状等が挙げられる。グラス本体10の材質としてはガラスや透明な樹脂等が挙げられる。グラス本体10の内部には飲料Lが充填される。
固定機構15は映像表示装置80をグラス本体10に固定するための固定機構であり、図1の例では固定機構15としてグラス本体10に設けられた格納部を用いている。固定機構15は映像表示装置80をグラス本体10に固定さえ出来ればどのような種類の固定機構を用いても良く、固定機構15はネジ機構や吸盤機構等を組み合わせた物を用いても良い。固定機構15の材料は特に制限は無いが映像表示装置80の映像表示面81を遮らないために透明の材料が望ましい。
透明部12は映像表示装置80の映像表示面81を外部から視認するためにグラス本体10の側面に設けられた透明なエリアである。透明部12の素材としては透明なガラスやアクリル等の透明な樹脂が挙げられる。ユーザーUは透明部12を介してグラス本体10の内部の飲料L越しに映像表示装置80又は映像表示面81に映った画像をグラス本体10の外部から視認する。なお、図1内の破線Pは映像表示装置80(より厳密には映像表示面81)から投射された画像(より厳密には人物画像82と背景画像83との合成画像85)の光の光路Pのイメージを説明のために図示した物であり、光路Pのように映像表示装置80(又は映像表示面81)に表示された画像は飲料Lと透明部12を透過(又は通過)してグラス本体10の外部に至る。
画像制御部100は人物画像82の背景部に背景画像83を合成した合成画像85を映像表示装置80(より厳密には映像表示面81)に表示又は出力する。本発明の空間拡張飲料用グラス1では人物画像82の背景画像83に対する相対的な大きさが変化させることによりユーザーUから視認されるグラス本体内の空間の大きさを変更する。別の言い方をすれば背景画像83の(ユーザーUから見て)手前側に描画される人物画像82の大きさを変更することによりユーザーUが認識するグラス本体内の空間のサイズに遠近法の原理で錯覚を引き起こさせる。画像制御部100は専用ICやASIC等の形態でグラス本体10の底面や壁面内部に埋め込まれていても良い。また、画像制御部100は合成画像85さえ出力又は表示できればコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムとして映像表示装置80の筐体の内部又は外部のコンピュータに実装されていても良い。
センサー200は(合成画像85内の)人物画像82の背景画像83に対する相対的な大きさを変化させる際のトリガーとして用いられる。センサー200はユーザーUのグラス本体10(或いは映像表示装置80)に対する操作をモニター出来るものならどんな種類のセンサーでも構わない。センサー200としては加速度センサー、カメラセンサー、マイクロフォン、糖度センサー、アルコールセンサー、圧電センサー、タッチパネルセンサー等が考えられる。図2(a)及び図2(b)の例ではセンサー200としてカメラセンサーや加速度センサーを用いている。センサー200としてグラス本体10又は映像表示装置80頭頂部に取り付けられたカメラセンサー(又は加速度センサー)を用いてグラス本体10とユーザーの手UHの接触又は衝突をモニターし、グラス本体10とユーザーの手UHの接触の有無により(合成画像85内の)人物画像82の背景画像83に対する相対的な大きさを変化させている。図2(b)の例ではセンサー200の信号(厳密にはユーザーの手UHとグラス本体10の接触検知信号)により人物画像82の背景画像83に対する相対的な大きさを図2(a)の場合(センサー非検知の状態の場合)に比して小さくする事により(遠近の原理で)広大な空間をグラス本体10の側面に出現させている(つまりグラス本体10とユーザーの手UHの接触をトリガーとしてグラス内の空間の広さを変化させている)。このように本発明の空間拡張飲料用グラス1ではセンサー200を備えることによりグラス本体10とユーザーの手UHの接触の有無によりグラス本体10の内部の(ユーザーUの眼から見た視覚的な)空間の広さを任意のタイミング(例えば乾杯動作のタイミング)で変更出来る。センサー200として加速度センサーを用いてユーザーの手UHの衝突の強さをモニターしその衝突の強さ(例えば乾杯動作のグラス間の衝突の強さ)の値により人物画像82の背景画像83に対する相対的な大きさを変更出来るようにしても良い。センサー200はグラス本体10の底部や固定機構15(又は格納部)の内部に配置しても良い。また、映像表示装置80の筐体側に埋め込んだセンサーをセンサー200として用いても良い。
【0010】
人物画像82と背景画像83及びそれらを合成した合成画像85の補足説明をする。
人間は眼前の人物の大きさを基準とすることによりその眼前の人物の居る部屋や空間のおおよその大きさを遠近法の原理により把握できる。同じく、人間は部屋に居る人物が描かれた人物のイラストや肖像画からもそのイラストに描かれた人物の大きさを基準とすることにより相対的にそのイラストに(その人物と共に)描かれた部屋の大きさを認識又は類推する事が出来る(漫画や肖像画では古来よりこの原理を用いて人物の存在する部屋又は空間の大きさを表現している。詳細は遠近法やパースの専門書を参考されたい)。本発明の空間拡張飲料用グラス1では人物画像82の背景画像83に対する相対的な大きさが変化させることによりユーザーUから視認されるグラス本体内の空間の大きさを自由に変更させる事が出来る。別の言い方をすれば空間拡張飲料用グラス1は合成画像85内の背景画像83と人物画像82の大きさを個別に変更することにより図2(b)の例のようにグラス本体内の空間のサイズが大きく拡張したような錯覚を遠近法の原理により引き起こすグラスである。
空間拡張飲料用グラス1は人物画像82と背景画像83の両者の相対的サイズを以って遠近法でグラス本体10内の(ユーザーUが認識又は視認する)空間のサイズを変更する方式のため、原理上、人物画像82のサイズが背景画像83のサイズに比して小さい程グラス本体10内の(ユーザーUが認識又は視認する)空間のサイズは大きくなる。そのため映像表示装置80の解像度が許す範囲で人物画像82のサイズを縮小することによりグラス本体10内の空間をユーザーUが望むだけ巨大化する事が出来る(厳密には巨大化したようにユーザーに錯覚または視認させる事が出来る)。これが空間拡張飲料用グラス1の長所の一つである。
人物画像82は眼と口部を含む顔部を有する人物又は架空の人物をコンピュータグラフィックで表現した画像であり、人物画像82の例としては漫画やアニメーション作品で登場する架空の人型のキャラクターや映画俳優等の実在する人物をコンピュータグラフィックで表現した画像等が挙げられる。人物画像82は顔部さえ含まれていればユーザーU(より厳密にはユーザーUの脳内の視覚情報を処理する部位)は背景画像83との対比で遠近を認識出来るため人物画像82は必ずしも全身描画した画像である必要は無い(つまり原理的には人物画像82はユーザーUが脳内で人間の顔と認識出来る画像なら何でも良い)。
背景画像83は人物画像82が存在する空間を表現した画像なら何でもよく、背景画像83の例としては部屋の内部を表現したコンピュータグラフィック画像、水中、街中、宇宙、空中等を表現したコンピュータグラフィック画像でも良い。極端な話、背景画像83は人物画像82と合成した際にその人物画像82と背景画像83の境界が認識又は識別出来る画像なら何でも良い。例えば単一の模様パターンの繰り返しからなるトーン画像や単一の色で塗潰した画像を背景画像83として用いても良い(漫画やコミックブックのイラスト分野では単一のパターンの繰り返しからなるトーン画像や単一の色で塗潰した背景画像は人物が存在する室内や空間を描画する際の表現手法として、コンピュータフォトレタッチソフトの出現以降、特に良く用いられている)。なお、ユーザーが感じる遠近感を強化するために背景画像83は人物画像82(に用いられている色)に比して明度又は輝度が低い色が用いられている画像にしても良い(つまり背景画像83を人物画像82より暗くしても良い)。
合成画像85についても補足しておくと本発明の空間拡張飲料用グラス1の合成画像85では人物画像82と背景画像83が重なるエリアでは人物画像82が(優先して)描画される(つまり、人物画像82はユーザーUから見て常に背景画像83の手前側に描画される)。なお、合成画像85を作成する際は人物画像82の背後又は余白部分に背景画像83を合成する形態で作成しても良い。
合成画像85は映像表示装置80(厳密には映像表示面81)の発光素子により表示された画像であり紙媒体に印刷された画像と違い発光している画像のため飲料Lが濃い色(例としては赤ワインの赤色)で着色されている時でも映像表示装置80の輝度の出力を上げる事によりユーザーUは合成画像85を飲料越しに視認出来る。
空間拡張飲料用グラス1では人物画像82と背景画像83の相対的なサイズの変更処理のみでグラス内の空間のサイズを変更(又は拡張)する事が出来るため画像制御部100やコンピュータの処理負荷が少なく放熱が少ない為飲料Lが熱せられる心配が無い。
空間拡張飲料用グラス1では映像表示装置80はグラス本体10側面に設けられておりユーザーUは映像表示装置80(厳密には映像表示面81)の人物画像82と背景画像83とを合成した合成画像85をグラス本体10内の飲料Lを透過して視認する事が出来る。そのため、ユーザーUはグラス本体10内の飲料L内の(遠近法の原理で出現した)広大な空間内で泳ぐ漫画やアニメーション作品の架空の人型キャラクターをグラス本体内に展開する事が出来る。
【0011】
空間拡張飲料用グラス1ではセンサー200により飲料L内の(人物画像82の)架空のキャラクターとインタラクティブに対話する事も可能である。例えばセンサー200としてグラス本体10の傾きを検出する加速度センサーを用いればグラス本体10乾杯操作で傾斜させる事により飲料L内で出現させた広大な深海に泳ぐ架空の人型のキャラクターや人物を操作する事が可能になる。
センサー200としてカメラ―センサーを用いれば飲料Lの色により人物画像82と背景画像83の合成画像85により表現される部屋のサイズを変更出来るようにも出来る。
センサー200としてアルコールセンサーや糖度センサーを用いれば飲料Lの糖度やアルコール濃度により人物画像82と背景画像83の合成画像85により表現される部屋のサイズを変更出来るようにも出来る。アルコール濃度の値により人物画像82の顔部の表情を変化させても良い。
センサー200としてマイクロフォン等の音センサーを用いれば飲料Lが炭酸飲料の場合その炭酸飲料の発泡音を検知して飲料L内で出現させた広大な部屋のサイズ及び架空の人物を操作する事が可能になる。
空間拡張飲料用グラス1では図1のようにユーザーUは飲料L越しに人物画像82を視認する方式のため、人物画像82のキャラクターとしては宇宙飛行士やスキューバーダイバーを選択すると飲料時の演出上効果的である(元々、本発明の空間拡張飲料用グラス1は飲料L内の広大な空間で泳ぐ人物とタッチパネルセンサーやマイクロフォンセンサーを介してインタラクティブに対話可能な飲料演出グラスを目指して開発されたグラスでもある事も記載しておく)。
【0012】
[空間拡張飲料用グラスの第2の実施の形態]
以下、本発明の空間拡張飲料用グラスの第2の実施の形態を図面を用いて示すが、上記第1の実施の形態の空間拡張飲料用グラス1と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図3(a)や図4(a)に示すように、本実施の形態の空間拡張飲料用グラス1では映像表示装置80に表示される合成画像85をグラス本体10の上部開口11の方向に反射するための反射鏡30をグラス本体10の内部又は底面近傍に備える。
図3(a)に示すようにグラス本体10内に配置された反射鏡30は映像表示装置80(又は映像表示面81)に表示されている合成画像85を上部開口11方向に反射するように映像表示面81又は上部開口11に対して傾斜して配置されており、図3(a)及び図3(b)のようにユーザーUは反射鏡30を介して(映像表示装置80の)合成画像85を上部開口11より視認する事が出来る。合成画像85は人物画像82と背景画像83を合成したユーザーUの遠近を錯覚させる画像のため、本実施の形態の空間拡張飲料用グラス1ではグラス本体10の側面の空間サイズとグラス本体10の底面の空間サイズを同時に拡張させる事が出来る(厳密にはグラス本体10の側面及び底面の空間が広がったように合成画像85を以ってユーザーUの遠近感覚を錯覚させる事が出来る)。なお、図3(a)の光路Pは映像表示装置80から出た合成画像85の投射光路のイメージ図であり、本実施の形態の空間拡張飲料用グラス1では図3(a)の光路Pのように(映像表示装置80から投射された)合成画像85が反射鏡30を反射した後に上部開口11を経て前記グラス本体の外部に至る。
本実施の形態の空間拡張飲料用グラス1では底面のグラス本体10内の空間も広がるため、センサー200としてカメラセンサー等を用いてユーザーUがグラス本体10を覗き込む動作を検知又はモニターすれば、ユーザーUが飲料行為のためにグラス本体10を覗き込んだタイミングでグラス本体10底面に巨大な空間を展開する事も可能になる。
本実施の形態の空間拡張飲料用グラス1を用いて飲料Lとしてアルコール飲料を飲む場合には、反射鏡30と(ユーザーUの遠近を錯覚させる)合成画像85によるグラス本体10底面の(グラス本体に比して巨大な)拡張空間とアルコール飲料が引き起こす浮遊感との相乗効果によりユーザーUは独特の浮遊感を体験出来る。このアルコール飲料とグラス底面の拡張空間が引き起こすユニークな浮遊感こそが本実施の形態の空間拡張飲料用グラス1の最大の特長である。特にこの浮遊感は上部開口11にユーザーUの顔を接近又はほぼ密着させた状態の時(つまり反射鏡30とユーザーUの距離が最も短い時)に最も強くなるため、ユーザーUはグラス本体10内部の飲料Lを飲む際に上部開口11を覗き込む度に強烈な浮遊感を得られる。この浮遊感を更に強化する方法としては、背景画像83を宇宙空間か水中或いは空中等の巨大な空間を表現した画像にする、背景画像83を動画像にする、人物画像82のサイズをセンサー200の信号により素早く変化させる、の3つが考えられる。
なお、反射鏡30のグラス本体10内の配置位置について補足しておくと、反射鏡30は図3(a)のように必ずしもグラス本体10内部に配置される必要が無く、映像表示装置80の合成画像85を上部開口11の方向に反射出来る位置ならグラス本体10内のどの部分に配置されても構わない。例えば図4(a)や図4(b)のようにグラス本体10の底面に密着させるかその底面と一体化しても良い(なお、図4(a)と図4(b)のグラス本体10の材質は透明な材質を想定している)。また、反射鏡30と映像表示面81のなす角aについて補足しておくと、反射鏡30と映像表示面81(又は上部開口11)のなす角aの理想は45度であり、なす角aの値が45度と大きく違う値の場合ユーザーUが反射鏡30を介して視認する合成画像85は上下方向に伸縮して歪むので反射鏡30を設置する際は注意が必要である。
ユーザーUの視点の向きによっては図4(b)のユーザーU2の視点から見た合成画像85のように合成画像85の向きがユーザーU1に比して上下反転或いは左右反転する事が有る。合成画像85内の人物画像82と背景画像83を予め画像制御部100や別途コンピュータソフトウェア等用いて上下反転又は左右反転処理する事により対応しても良い。センサー200(カメラセンサー等)を用いてリアルタイムでユーザーUの視点の向きをモニター(監視)してそれに合わせて合成画像85の上下反転又は左右反転処理を行っても良い。
【0013】
図5に本発明の空間拡張飲料用グラス1で用いるコンピュータプログラムのフローチャートを示す。
STEP1において人物画像82と背景画像83をコンピュータメモリより取得し、STEP2において人物画像82の背後又は背景部に背景画像83を合成した画像を映像表示装置80に表示又は出力後にプログラムを終了する。
【0014】
図6に本発明の空間拡張飲料用グラス1で用いるコンピュータプログラムのフローチャートを示す。
STEP1において人物画像82と背景画像83をコンピュータメモリより取得し、STEP2においてセンサー200の信号により人物画像82の背景画像83に対する相対的なサイズを変更し、STEP3において人物画像82の背後又は背景部に背景画像83を合成した画像を映像表示装置80に表示又は出力後にプログラムを終了する。
【0015】
図7に本発明の空間拡張飲料用グラス1で用いるコンピュータプログラムのフローチャートを示す。
STEP1において人物画像82と背景画像83をコンピュータメモリより取得し、STEP2においてセンサー200の信号により人物画像82の背景画像83に対する相対的なサイズを変更し、STEP3において人物画像82又は背景画像83に対して上下反転及び/又は左右反転処理を行う、STEP4において人物画像82の背後又は背景部に背景画像83を合成した画像を映像表示装置80に表示又は出力後にプログラムを終了する。
図5図6図7に示したフローチャートのコンピュータプログラムはフラッシュメモリ、DRAM、磁気記憶媒体、光記憶媒体等の既知の記憶媒体に保存しても良い。また、映像表示装置80と同一筐体内のメモリにアプリケーションソフトウェアの形態でインストール(保存)しても良い。図5図6図7に示したフローチャートのコンピュータプログラムのアルゴリズムは一例であり他のアルゴリズムを用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、ユーザーの眼から見たグラス本体の側面の又は底面の空間のサイズを自由に変更出来る空間拡張飲料用グラスであり、ユーザーはグラス本体を操作する事によりグラス本体内の広大な疑似空間内の架空のキャラクターとインタラクティブに対話する事が可能である。ユーザーの遠近を狂わせる画像と反射鏡を用いて拡張されたグラス本体底面の広大な空間とアルコール飲料との相互作用により本グラス本体を覗き込むと独特の浮遊感をユーザーは感じる事が可能である。以上より本発明は産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0017】
U ユーザー
U2 ユーザー
L 飲料(液体)
P 光路
a なす角
1 空間拡張飲料用グラス
10 グラス本体
11 上部開口
12 透明部
15 固定機構
30 反射鏡
80 映像表示装置
81 映像表示面
82 人物画像
83 背景画像
85 合成画像
100 画像制御部
200 センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7