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特開2022-141585車両の操舵角を制御するための制御装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141585
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】車両の操舵角を制御するための制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20220921BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D119:00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022018498
(22)【出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】10 2021 202 482.3
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ケスラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ファイク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ジーモン
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA02
3D232DA15
3D232DC11
3D232DD06
3D232DD07
3D232DD17
3D232DD18
3D232EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】操舵角を制御する制御動作部への介入のためのインタフェースが設けられていない場合にも、そのような介入を可能にする制御装置を提供する。
【解決手段】第1制御ユニットに重ね合わせる制御部7は、リターンパスと、プレフィルタ4とを備え、リターンパスは、第1制御ユニットから出力変数として供給される、実操舵角情報φに基づいて、第1適応変数A1を供給し、プレフィルタ4は、目標操舵角情報φsollに基づいて第2適応変数A2を供給し、重ね合わせ制御部7は第1および第2適応変数A1,A2に基づいて第1制御ユニットへの入力情報を生成し、プレフィルタ4は、第1補正部4.1を備え、その伝達動作が制御変数sに基づいて適応可能であり、プレフィルタ4は、第2補正部4.1を備え、その伝達動作が制御変数sに基づいて適応可能であり、重ね合わせ制御部7は第1制御ユニットの制御利得P(s)が制御変数sに基づいて適応可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵角を制御するための制御装置において、第1制御ユニット(2)を備え、前記第1制御ユニット(2)に重ね合わせる制御部(7)が設けられ、前記制御部(7)は、リターンパス(3)と、プレフィルタ(4)とを備え、前記リターンパス(3)は、前記第1制御ユニット(2)から出力変数として供給される、実際の操舵角情報(φ)に基づいて、第1適応変数(A1)を供給し、前記プレフィルタ(4)は、目標の操舵角情報(φsoll)に基づいて、第2適応変数(A2)を供給し、前記重ね合わせ制御部(7)は、前記第1および第2適応変数(A1,A2)に基づいて、前記第1制御ユニット(2)への入力情報を生成するように構成され、前記リターンパス(4)は、第1補正部(4.1)を備え、その伝達動作が、少なくとも1つの制御変数(s)に基づいて、適応可能であり、前記プレフィルタ(4)は、第2補正部(4.1)を備え、その伝達動作が、少なくとも1つの制御変数(s)に基づいて、適応可能であり、前記重ね合わせ制御部(7)は、少なくとも前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))が、前記制御変数(s)に基づいて、適応可能であるように構成される、制御装置。
【請求項2】
前記制御利得(P(s))は、有理数であるか、または、複素フィルタ関数により構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1補正部(3.1)は、前記実際の操舵角情報(φ)に、前記制御変数(s)に依存する係数、または、複素フィルタ関数を乗算するように構成される、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記係数は、(1-P(s))であり、P(s)は、前記制御信号(s)に依存する補正係数であり、その値は、前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))の適応を示すか、または、P(s)は、前記制御信号に依存する複素フィルタ関数である、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2補正部(4.1)は、前記目標の操舵角情報(φsoll)に、前記制御変数(s)に依存する係数、または、複素フィルタ関数を乗算するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記係数は、(1-P(s))であり、P(s)は、前記制御信号(s)に依存する補正係数であり、その値は、前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))の適応を示すか、または、P(s)は、前記制御信号に依存する複素フィルタ関数である、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記係数は、P(s)であり、P(s)は、前記制御信号(s)に依存する補正係数であり、その値は、前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))の適応を示すか、または、P(s)は、前記制御信号に依存する複素フィルタ関数である、請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
総和点(5)が設けられ、前記総和点(5)において、前記目標の操舵角情報(φsoll)に、前記第1適応変数(A1)が加算され、前記総和点(5)において、前記目標の操舵角情報(φsoll)から、前記第2適応変数(A2)が減算され、前記総和点(5)の出力情報は、第1制御ユニット(2)の入力変数を構成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
総和点(6)が設けられ、前記総和点(6)において、前記第1適応変数(A1)および前記第2適応変数(A2)が加算され、前記総和点(6)の出力情報は、第1制御ユニット(2)の入力変数を構成する、請求項1~5および7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1および第2補正部(3.1,4.1)は、同一の前記制御変数(s)に基づいて、適応可能である、請求項1~9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第1制御ユニット(2)は、外部インタフェースを備えていない自己完結型制御ユニットであって、前記自己完結型制御ユニットを介して、前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))は適応可能である、請求項1~10のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御変数(s)は、以下の情報:
-前記車両がおかれている走行状況;
-運転者が操舵ホイールにより与えるトルク;
-電動パワーステアリングの摩擦値;
-電動パワーステアリングの推定振動パラメータ;
-前記第1制御ユニット(2)に供給される入力情報の信号雑音比
のうちの少なくとも1つに依存する、請求項1~11のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
制御利得(P(s))は、前記制御変数(s)により、0.2~3の数値範囲において適応可能である、請求項1~12のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
車両の操舵角を制御するための方法において、第1制御ユニット(2)が設けられ、前記第1制御ユニット(2)に重ね合わせる制御部(7)が設けられ、前記制御部(7)は、リターンパス(3)と、プレフィルタ(4)とを備え、前記リターンパス(3)は、前記第1制御ユニット(2)から出力変数として供給される、実際の操舵角情報(φ)に基づいて、第1適応変数(A1)を供給し、前記プレフィルタ(4)は、目標の操舵角情報(φsoll)に基づいて、第2適応変数(A2)を供給し、前記重ね合わせ制御部(7)は、前記第1および第2適応変数(A1,A2)に基づいて、前記第1制御ユニット(2)への入力情報を供給し、前記リターンパス(3)は、第1補正部(3.1)を備え、その伝達動作が、少なくとも1つの制御変数(s)に基づいて、適応され、前記プレフィルタ(4)は、第2補正部(4.1)を備え、その伝達動作が、少なくとも1つの制御変数(s)に基づいて、適応され、前記重ね合わせ制御部(7)を用いて、少なくとも前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))が、前記制御変数(s)に基づいて、適応される、方法。
【請求項15】
前記第1制御ユニット(2)は、外部インタフェースを備えていない自己完結型制御ユニットであって、前記自己完結型制御ユニットを介して、前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))および/または伝達関数は適応可能であり、前記第1制御ユニット(2)の制御利得(P(s))および/または伝達関数は、前記目標の操舵角情報(φsoll)の適応と、リターンされた実際の操舵角情報(φ)の適応とにより、前記制御変数(s)に依存して調整される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵角を制御するための制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steeringとも称される)が知られている。この場合、プログラム制御電気サーボモータが、運転者の操舵動作を支援かつ重ね合わせて、このプログラム制御電気サーボモータは、力を操舵機構に伝達する。
【0003】
また、電動パワーステアリングが、制御装置を備え、(SAEレベル2以上の)自動運転時に、干渉による影響を緩和または抑制することも知られている。そのような制御装置は、一体型制御部材を有し、作用する横力を補償する。
【0004】
周知の制御装置は、制御動作を適応可能なインタフェースを備える。これにより、制御動作を、走行状態、つまり、各走行状況に適応させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
問題となるのは、制御装置がそのようなインタフェースを備えていないか、制御装置の構成が未知である場合、上述のような制御動作への介入が不可能であり、それにより、走行状況に依存した、制御動作の適応が不可能であることである。したがって、その場合、例えば、操舵角制御部に搭載された一体型部材により、望ましくない車両動作がさらに生じる可能性がある。
【0006】
よって、本発明の課題は、操舵角を制御する制御動作部への介入のためのインタフェースが設けられていない場合にも、そのような介入を可能にする、制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、独立請求項1の特徴を備える装置により解決される。好ましい実施形態が、従属請求項の主題である。車両の操舵角を制御するための方法が、並列独立請求項13の主題である。
【0008】
第1態様によると、本発明は、車両の操舵角を制御するための制御装置に関する。制御装置は、第1制御ユニットを備え、その制御動作部は、少なくとも1つの一体型部材を有する。この第1制御ユニットは、好ましくは、基本操舵角制御部を構成し、その制御動作が適応されてよい。これは、制御変数を供給する制御部と、制御変数を受け取るサーボモータと、操舵機械要素とを含む。さらに、第1制御ユニットに重ね合わせる制御部が設けられる。この重ね合わせ制御部は、重ね合わされる第1制御ユニットの制御動作を変更するように構成される。重ね合わせ制御部は、リターンパスと、プレフィルタとを備える。リターンパスは、第1制御ユニットから出力変数として供給される、実際の操舵角情報に基づいて、第1適応変数を供給するように構成される。プレフィルタは、目標の操舵角情報に基づいて、第2適応変数を供給するように構成される。また、重ね合わせ制御部は、第1および第2適応変数に基づいて、第1制御ユニットへの入力情報を生成するように構成される。ここで、リターンパスは、第1補正部を備え、その伝達動作が、少なくとも1つの制御変数に基づいて、適応可能である。プレフィルタは、第2補正部を備え、少なくとも1つの制御変数に基づいて、適応可能である。重ね合わせ制御部は、少なくとも第1制御ユニットの制御利得が、制御変数に基づいて、適応可能であるように構成される。ここで、本開示における「少なくとも制御利得が適応可能である」とは、伝達動作が、有理数の第1制御ユニットの利得を変更することのみによって、または、複素フィルタ関数を用いることより変更されることを意味する。
【0009】
本発明に係る制御装置の技術的に有利な点は、それ自体では、制御利得または伝達動作の適応に介入するための直接的な手段を備えていないものの、重ね合わせ制御部によって、制御変数に基づいて、第1制御ユニットの制御利得または伝達動作を適応可能であることにある。言い換えれば、第1制御ユニットに供給される入力情報への介入によって、例えば、第1制御ユニットの制御利得または伝達動作が、制御変数により直接的に変更可能である場合、同様の結果が得られる。これにより、特に、振動を回避することができ、一体型制御部材の制御動作部の干渉による影響を低減することができるといった、改善が可能である。
【0010】
1つの実施形態例によると、第1補正部は、実際の操舵角情報に、制御変数に依存する係数、または、複素フィルタ関数を乗算するように構成される。言い換えれば、第1補正部は、これにより、実際の操舵角情報として、第1制御ユニットから供給される出力情報を受け取り、これを、制御変数に基づいて、第1適応変数へと修正し、第1適応変数に基づいて、第1制御ユニットに供給される入力情報が修正される。
【0011】
1つの実施形態例によると、係数は、(1-P(s))であり、P(s)は、制御信号sに依存する補正係数であり、その値は、第1制御ユニットの制御利得の適応を示すか、または、P(s)は、制御信号に依存する複素フィルタ関数である。この係数またはそのような関数を用いることにより、第1制御ユニット自体に直接的に影響を及ぼすことなく、第1制御ユニットの制御利得または伝達動作を外部から適応させることができる。
【0012】
1つの実施形態例によると、第2補正部は、目標の操舵角情報に、制御変数に依存する係数、または、複素フィルタ関数を乗算するように構成される。言い換えれば、第2補正部は、これにより、上位の制御ユニット、例えば、運転支援システムの制御ユニットから供給される操舵角情報を受け取り、これを、制御変数に基づいて、第2適応変数へと修正する。その一方、適応変数は、第1制御ユニットに供給される入力情報に影響を及ぼす。
【0013】
1つの実施形態例によると、係数は、(1-P(s))であり、P(s)は、制御信号sに依存する補正係数であり、その値は、第1制御ユニットの制御利得の適応を示すか、または、P(s)は、制御信号に依存する複素フィルタ関数である。その一方、これにより、第1制御ユニット自体に直接的に影響を及ぼすことなく、第1制御ユニットの制御利得または伝達動作を外部から適応させることができる。
【0014】
別の1つの実施形態例によると、第2補正部で用いられる係数は、P(s)であり、P(s)は、制御信号sに依存する補正係数であり、その値は、第1制御ユニットの制御利得の適応を示すか、または、P(s)は、制御信号に依存する複素フィルタ関数である。また、この係数を用いることにより、第1制御ユニット自体に直接的に影響を及ぼすことなく、第1制御ユニットの制御利得または伝達動作を外部から適応させることができる。
【0015】
1つの実施形態例によると、総和点が設けられ、総和点において、目標の操舵角情報に、第1適応変数が加算され、総和点において、目標の操舵角情報から、第2適応変数が減算され、総和点の出力情報は、第1制御ユニットの入力変数を構成する。このようにして目標の操舵角情報を適応させることにより、第1制御ユニットの制御利得を非直接的に外部から適応させることができる。
【0016】
別の1つの実施形態例によると、総和点が設けられ、総和点において、第1適応変数および第2適応変数が加算され、総和点の出力情報は、第1制御ユニットの入力変数を構成する。このようにして目標の操舵角情報を適応させることにより、第1制御ユニットの制御利得を非直接的に外部から適応させる代替形態が可能になる。
【0017】
1つの実施形態例によると、第1および第2補正部は、同一の制御変数に基づいて、適応可能である。これにより、単純化された制御装置が達成される。
【0018】
1つの実施形態例によると、第1制御ユニットは、外部インタフェースを備えていない自己完結型制御ユニットであって、自己完結型制御ユニットを介して、第1制御ユニットの制御利得は適応可能である。言い換えれば、第1制御ユニットは、いわゆるブラックボックスを構成し、その制御動作は、外部からは適応不可能であり、制御動作を状況に応じて変更することができる。その一方、そのようなインタフェースの欠如を、外部制御ループにより埋め合わせることが、重ね合わされる制御ユニットとしての第1制御ユニットに重ね合わせる制御部により可能になる。
【0019】
1つの実施形態例によると、制御変数は、以下の情報:
-車両がおかれている走行状況;
-運転者が操舵ホイールにより与えるトルク;
-電動パワーステアリングの摩擦値;
-電動パワーステアリングの推定振動パラメータ;
-第1制御ユニット(2)に供給される入力情報の信号雑音比、のうちの少なくとも1つに依存する。
【0020】
これにより、制御装置の制御動作を、走行状態または走行状況に応じて適応させることができる。
【0021】
1つの実施形態例によると、制御利得は、制御変数により、0.2~3、特に、0.6~1.5の数値範囲において適応可能である。これにより、制御動作への望ましい介入を有利に達成することができる。
【0022】
さらなる態様によると、本発明は、車両の操舵角を、第1制御ユニットを用いて制御するための方法に関し、その制御動作部は、少なくとも1つの一体型部材を有する。第1制御ユニットに重ね合わせる制御部が設けられ、制御部は、リターンパスと、プレフィルタとを備える。リターンパスは、第1制御ユニットから出力変数として供給される、実際の操舵角情報に基づいて、第1適応変数を供給する。プレフィルタは、目標の操舵角情報に基づいて、第2適応変数を供給する。重ね合わせ制御部は、第1および第2適応変数に基づいて、第1制御ユニットへの入力情報を供給する。リターンパスは、第1補正部を備え、その伝達動作が、少なくとも1つの制御変数に基づいて、適応される。プレフィルタは、第2補正部を備え、その伝達動作が、少なくとも1つの制御変数に基づいて、適応される。重ね合わせ制御部を用いて、少なくとも第1制御ユニットの制御利得が、制御変数に基づいて、適応される。
【0023】
本方法の1つの実施形態によると、第1制御ユニットは、外部インタフェースを備えていない自己完結型制御ユニットであって、自己完結型制御ユニットを介して、第1制御ユニットの制御利得および/または伝達関数は適応可能であり、第1制御ユニットの制御利得および/または伝達関数は、目標の操舵角情報の適応と、リターンされた実際の操舵角情報の適応とにより、制御変数に依存して調整される。これにより、第1制御ユニットの制御利得および/または伝達関数を非直接的に外部から適応させることができる。
【0024】
「重ね合わせ制御部」は、重ね合わされる制御ユニット、つまり、階層の観点から見て下位の制御構成への入力情報に影響を及ぼす、制御回路の一部と理解される。重ね合わせ制御部は、特に、重ね合わされる制御ユニットの制御動作に影響を及ぼすために、重ね合わされる制御ユニットの信号または情報を用いることができる。
【0025】
本発明において、「約」、「略」、または、「ほぼ」という表現は、各正確な値から+/-10%の乖離、好ましくは、+/-5%の乖離、かつ/または、関数にとって有意でない変化分の乖離を意味する。
【0026】
本発明の発展形態、有利な点、および適用可能な構成は、実施形態例の以下の説明および図面から得られる。ここで、説明され、かつ/または図示される特徴のすべては、それ自体で、または、任意の組み合わせにおいて、特許請求の範囲に記載されるその要約またはその参照に依存することなく、一般に本発明の主題である。また、特許請求の範囲の内容は、本記載の一部となる。
【0027】
以下、本発明を、実施形態例について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、車両の電動パワーステアリングの操舵角制御部としての第1制御ユニットの例示的な概略図である。
図2図2は、車両の電動パワーステアリングの操舵角制御部としての、望ましい、修正される第1制御ユニットの例示的な概略図である。
図3図3は、制御利得を制御変数に依存して適応可能な、図1に示す第1制御部と、重ね合わせ制御部とを備える、制御装置の第1実施形態の例示的な概略図である。
図4図4は、制御利得を制御変数に依存して適応可能な、図1に示す第1制御部と、重ね合わせ制御部とを備える、制御装置の第2実施形態の例示的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、電気機械式駆動装置を備える操舵装置(EPS:electric power steeringとも称される)を制御するために用いられる第1制御ユニットの例示的な概略フロー図を示す。そのような操舵装置において、プログラム制御電気モータは、運転者の操舵動作を支援するか、自律走行または部分的な自律走行において少なくとも部分的に操舵動作それ自体を行う。
【0030】
ブロック図において、Rが付されたブロックは、操舵角制御を示し、操舵角制御は、電動パワーステアリングEPS用の制御変数を供給する。この場合、電動パワーステアリングEPSは、操舵機構と、サーボモータとを有する。
【0031】
第1制御ユニット2は、入力情報として、例えば、目標の操舵角φsollを受け取り、φsollは、例えば、電気制御装置、特に、自律走行機能または部分的に自律の走行機能を制御する制御ユニットにより供給される。目標の操舵角φsollには、ここでは、「目標の操舵角情報」の概念も用いられる。
【0032】
目標の操舵角φsollと、以下、実際の操舵角情報とも称される、実際の操舵角φとに基づいて制御差が生成される、第1制御ユニット2の減算点の下流には、制御変数としての制御差に基づいて、例えば、目標の操作トルクを供給する、例えば、操舵角制御部Rが設けられる。操舵角制御部Rは、例えば、PID制御部であってよい。操舵角制御部Rは、一体型部材を備える。この一体型部材は、例えば、操舵動作の振動など、望ましくない運転動作を生じる場合がある。この操舵動作の振動は、不安定な運転動作の原因となり、運転者にとっては不自然な運転動作であり、このことは、多くの場合、干渉と感じられるものである。
【0033】
第1制御ユニット2は、外部制御信号を供給するためのインタフェースを備えていない、例えば、自己完結型またはカプセル化型制御ユニットであり、これを介して、車両状態に応じて、状況に応じて、かつ/または、人間の運転者の走行命令に応じて、制御動作に影響を及ぼすことができる。したがって、第1制御ユニット2においては、特に、一体型部材により生じる干渉する制御動作を補償するための直接的な構成は設けられていない。
【0034】
図2は、図1に示す第1制御ユニット2の修正を示す。この修正される第1制御ユニット2’は、望ましい操舵角制御部を示している。修正点は、修正される第1制御ユニット2’の制御動作が、制御変数sにより適応可能であることにある。特に、制御利得(P(s))が、制御変数(s)に基づいて、適応可能である。これにより、一体型部材による影響を低減するように、制御利得(P(s))は、状況に応じて適応可能である。このことは、例えば、制御利得(P(s))を、所定の状況下で、制御信号sを用いて低減させることにより、行われる。このようにして、例えば、直線走行の際、操舵動作の振動を低減させることができ、これにより、高い走行快適性が得られる。また、運転者が操舵ホイールにより操舵トルクを与える、強調運転の際、制御利得(P(s))を、制御信号sを用いて低減させることにより、運転者の操舵トルクに対して作用する制御動作を低減させることは、有利である。
【0035】
他の走行状況下、特に、例えばタイムクリティカルな操作の際、例えば、緊急退避時において、制御利得(P(s))を増加させることにより、各走行状況に対して動的に対応可能とすることができる。その場合、操舵角制御部は、制御動作の不安定性を回避するために、十分な動的特性を備えるべきであることが理解される。
【0036】
その一方、自己完結型またはカプセル化型制御ユニットとしての第1制御ユニット2の上記構成を理由に、制御利得(P(s))を、制御信号sに基づいて変更することは、直接的には不可能である。
【0037】
図3は、自己完結型制御ユニット2において、制御利得(P(s))の適応を可能にするように構成される、制御装置1の第1実施形態例を示す。
【0038】
制御装置1は、第1制御ユニット2と、さらに、重ね合わせ制御部7とを備え、これを用いることで、制御利得(P(s))は、制御変数sに依存して、適応可能になる。重ね合わせ制御部7は、リターンパス3と、プレフィルタ4とを備える。リターンパス3は、実際の操舵角情報φが供給される、第1制御ユニット7の出力インタフェースを、出力側において第1制御ユニット2の入力インタフェースと接続されている総和点5と接続する。
【0039】
リターンパス3には、第1補正部3.1が設けられ、その伝達動作が、制御変数sを用いて、適応可能である。第1補正部3.1の伝達関数Hは、例えば、以下の関数により特徴付けられてよい。
【数1】
【0040】
ここで、P(s)は、第1制御ユニット2で達成されるべき制御利得(P(s))であり、sは、制御変数を示す。リターンパス3は、第1適応変数A1を供給し、第1適応変数A1は、総和点5に供給され、そこで、目標の操舵角情報φsollに加算される。
【0041】
プレフィルタ4は、第2補正部4.1を備え、同様に、その伝達動作が、制御変数sを用いて、適応可能である。第2補正部4.1の伝達関数Hは、例えば、以下の関数により特徴付けられてよい。
【数2】
【0042】
ここで、P(s)は、第1制御ユニット2で達成されるべき制御利得(P(s))であり、sは、制御変数を示す。プレフィルタ4は、第2適応変数A2を供給し、第2適応変数A2は、総和点5に供給され、そこで、目標の操舵角情報φsollから減算される。
【0043】
図3の実施形態例において、プレフィルタ4は、制御装置1の入力信号のバイパスに設けられており、つまり、総和点5には、目標の操舵角情報φsollに加えて、さらに、第1適応変数A1および第2適応変数A2が供給されるため、目標の操舵角情報φsollそして第1制御ユニット2の適応変数A1およびA2に基づいて、その入力インタフェースに、修正された入力情報が供給される。重ね合わせ制御部7が入力情報を修正するため、その結果、第1制御ユニット2は、制御変数sに基づいて変更可能な制御利得(P(s))を有することになる。言い換えれば、図3に示す制御装置は、これにより、図2の修正される第1制御ユニット2’の制御動作に対応する制御動作を有することになる。
【0044】
これにより、第1制御ユニット2に供給される入力情報へ介入し、入力情報が、実際の操舵角情報φの修正と、目標の操舵角情報φsoll修正とにより適応されたものであることから、状況に応じて変更可能な制御利得を用いて、望ましい制御動作を達成することができる。
【0045】
図4は、自己完結型制御ユニット2において、制御利得(P(s))の適応を可能にするように構成される、制御装置1の第2実施形態例を示す。
【0046】
その一方、制御装置1は、第1制御ユニット2と、さらに、重ね合わせ制御部7とを備え、これを用いることで、制御利得(P(s))は、制御変数sに依存して、適応可能になる。重ね合わせ制御部7は、リターンパス3と、プレフィルタ4とを備える。リターンパス3は、実際の操舵角情報φが供給される、第1制御ユニット7の出力インタフェースを、出力側において第1制御ユニット2の入力インタフェースと接続されている総和点6と接続する。
【0047】
リターンパス3には、第1補正部3.1が設けられ、その伝達動作が、制御変数sを用いて、適応可能である。第1補正部3.1の伝達関数Hは、例えば、以下の関数により特徴付けられてよい。
【数3】
【0048】
ここで、P(s)は、第1制御ユニット2で達成されるべき制御利得(P(s))であり、sは、制御変数を示す。リターンパス3は、第1適応変数A1を供給し、第1適応変数A1は、総和点6に供給され、そこで、修正対象である目標の操舵角情報に加算される。
【0049】
プレフィルタ4は、第2補正部4.1を備え、同様に、その伝達動作が、制御変数sを用いて、適応可能である。第2補正部4.1の伝達関数Hは、例えば、以下の関数により特徴付けられてよい。
【数4】
【0050】
ここで、P(s)は、第1制御ユニット2で達成されるべき制御利得(P(s))であり、sは、制御変数を示す。プレフィルタ4は、第2適応変数A2を供給し、第2適応変数A2は、修正された目標の操舵角情報として、総和点6に供給される。言い換えれば、つまり総和点6において、第1および第2適応変数A1,A2が加算され、それにより得られる第1制御ユニット2用の総和情報が、入力情報として供給される。
【0051】
その一方、重ね合わせ制御部7が入力情報を修正するため、その結果、第1制御ユニット2は、制御変数sに基づいて変更可能な制御利得(P(s))を有することになる。言い換えれば、図4に示す制御装置1は、これにより、図2の修正される第1制御ユニット2’の制御動作に対応する制御動作を有することになる。
【0052】
これにより、第1制御ユニット2に供給される入力情報へ介入し、入力情報が、実際の操舵角情報φの修正と、目標の操舵角情報φsoll修正とにより適応されたものであることから、状況に応じて変更可能な制御利得を用いて、望ましい制御動作を達成することができる。
【0053】
制御変数sとして、1つまたは複数の以下の情報を用いてよい。
-人間の運転者が操舵ホイールにより与える操舵トルク。これにより、例えば、人間の運転者が操舵トルクを増加させることで、制御利得を低減させることができ、運転者が開始した操舵操作に対するサーボモータによる望ましくない妨げを低減することができる。
-所定の走行状況に関する情報、例えば、検知された工事現場に関する情報。この場合、有利には、制御利得を低減することにより、運転者が開始した操舵操作に対する操舵角制御部による妨げを低減する。
-耐用期間において変化する、電動パワーステアリングの推定摩擦。つまり、時間経過とともに摩擦が減少すると、その結果、操舵システムの減衰性能が低下する。この場合、当初に選択した制御利得が高すぎであるか、または、位相余裕が小さすぎる可能性がある。また、摩擦において、操舵角の継続的な振動が、リミットサイクルの形で発生する場合があり、その特徴値である振動振幅および振動周波数は、摩擦の大きさと、操舵角制御部の干渉伝達関数の周波数特性とに依存する。したがって、リミットサイクルの特徴値を一定としたい場合、変更された摩擦パラメータは、操舵角制御部の周波数特性の適応を必要とする。
-例えば、電動パワーステアリングの操舵角制御部により生じる振動の振幅および周波数などの推定振動パラメータ。
-第1制御ユニット2に供給される入力情報の信号雑音比。
【0054】
制御利得(P(s))は、Pmin<P(s)<Pmaxの数値範囲で変更されてよい。ここでは、Pminは、例えば、値が0.2、特に値が0.6であってよく、Pmaxは、例えば、値が3、特に値が1.5であってよい。
【0055】
上記説明では、第1および第2補正部により変更される係数が、制御利得(P(s))であり、つまり、第1制御ユニット2の利得を修正可能な有理数であるとされている。
【0056】
これの変形として、係数は、複素フィルタ関数により構成されてもよく、これを用いて、第1制御ユニット2の伝達動作、つまり操舵角制御部の伝達動作を、対応する入力により外部から修正する。
【0057】
この場合、複素フィルタ関数は、特に、例えば、移相余裕が小さすぎることにより生じる、例えば、EPSの操舵角制御Rの共振ブーストを、事後的にまたは所定のように低減させるべき場合に、考慮に入れられる。これにより、操舵ホイールの振動振幅と、したがって、また、車線ガイダンス中の車両の横方向振動の特徴値とに、有利に影響を与えることができる。最も単純なこれに好適なフィルタ関数は、ハイパスフィルタリング動作のフィルタであり、例えば、PD構成である。ここでは、制御変数sを用いて、PD構成の零点の配置と、したがって、振動減衰の度合とを、変更することができる。また、さらに、PD構成の利得を変更することができ、これにより、同様に、振動減衰の度合に介入することができる。
【0058】
走行状況に起因して、第1制御ユニット2の動的特性を、制御変数sを入力することで高めるべき場合、安定性を考慮して、自然な所定の上限値までのみの、より高い利得Pを選択してよい。その一方、自然な上限値を超える回路利得が要求される場合、有利には、P(s)が有理数である利得の代わりに、複素フィルタ関数が用いられ、その極および零点が、制御の安定判別(例えば、ナイキスト判別法)を考慮して選択される。これにより、多くの場合、開角制御回路の位相応答が平均周波数の範囲内で上昇するように、フィルタの零点が配置される。最も単純な場合、フィルタ関数は、2つの零点と、技術的実現可能性の理由からまた2つの極と、を備える伝達構成からなる。より高い操舵角制御動的特性を一時的に実現する適用例は、例えば、緊急退避操作であり、それを実行するために、第1制御ユニット2の構成により予め定められているよりも、角度の高い動的特性が必要とされてよい。
【0059】
以上、本発明を、実施形態例に基づいて説明した。請求項に記載の保護範囲から逸脱することなく、多くの変更および修正が可能であることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0060】
1 制御装置
2 第1制御ユニット
2’ 修正される第1制御ユニット
3 リターンパス
3.1 第1補正部
4 プレフィルタ
4.1 第2補正部
5 総和点
6 総和点
7 重ね合わせ制御部
A1 第1適応変数
A2 第2適応変数
EPS 電動パワーステアリング
P(s) 制御利得
R 動作角制御
s 制御変数
φsoll 目標の操舵角情報
φ 実際の操舵角情報
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】