(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141610
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】経頭蓋磁気刺激の送達を促進する為のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 2/04 20060101AFI20220921BHJP
A61B 34/32 20160101ALI20220921BHJP
【FI】
A61N2/04
A61B34/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022039066
(22)【出願日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】20215275
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】522101829
【氏名又は名称】ネクスティム オーイーユィ
【氏名又は名称原語表記】Nexstim Oyj
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヤルネフェルト,グスタフ
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106BB21
4C106CC03
4C106FF11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】経頭蓋磁気刺激(TMS)中の患者に対する不快感を軽減する。
【解決手段】経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する為の装置及び方法であって、人(170)の、少なくとも頭蓋の形状及び頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定する解剖学的データを受信し、トラッキングシステム(130)から、人(170)の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信し、解剖学的データと、頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、TMS刺激デバイス(110)で頭蓋内の所定位置を標的にする為に、TMS刺激デバイス(110)を頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように多軸ロボットアーム(120)を制御することによって行われ、最適な位置及び方向は、TMS刺激デバイス(110)の表面が皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向である、装置及び方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する為の装置(100)であって、
トラッキングシステム(130)と、TMS刺激デバイス(110)を取り付けた多軸ロボットアーム(120)とに機能的に接続されるように構成されたコントローラ(150)を備え、前記コントローラ(150)が、
-人(170)の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、前記人の少なくとも頭蓋の形状と、前記頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものであり、
-前記トラッキングシステム(130)から、前記人(170)の頭部のリアルタイムの位置及び配向の情報を受信し、
-前記解剖学的データと、前記頭部の前記リアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、前記TMS刺激デバイス(110)で前記頭蓋内の所定位置を標的にする為に、前記TMS刺激デバイス(110)を前記頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように前記多軸ロボットアーム(120)を制御するように構成され、
前記最適な位置及び配向は、前記TMS刺激デバイス(110)の表面が前記皮膚の外
表面から所定距離であるような位置及び配向であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記コントローラ(150)が更に、
-前記頭蓋内の前記所定位置を受信し、
-前記受信した前記頭蓋内の前記所定位置に基づいて、前記TMS刺激デバイス(110)が前記皮膚の外表面から前記所定距離である最適な位置及び配向を計算する、
ように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記皮膚の外表面からの前記所定距離は、0.5~5mm、好ましくは2mm以下、最も好ましくは1mm以下である、請求項1乃至2の何れか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラ(150)が更に、
-前記皮膚の外表面を規定する前記人(170)の解剖学的データ、及び
-前記皮膚の外表面からの前記所定距離、
の内の少なくとも1つを、前記TMS刺激デバイス(110)の表面の現在の位置に基づいて調整するように構成されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラ(150)は更に、スイッチ(155)又は前記TMS刺激デバイス(110)の表面に取り付けられた圧力センサからの信号等の更新信号の受信時に調整を実行するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラ(150)は更に、前記TMS刺激デバイス(110)に対する機械的圧力又は接触が検出されるまで前記TMS刺激デバイス(110)を前記頭部に向かって移動させるように構成された制御信号を送信することを含む、少なくとも1つの較正ステップを実行するように構成されている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置(150)が更に、
-前記頭蓋内の位置に送達されるべきTMSの計画された投与量を受け取り、
-前記皮膚の外表面からの前記所定距離を調整しながら、前記投与量が送達されるように前記TMS刺激デバイス(110)に送達されるべき必要エネルギーを計算する、
ように構成されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラ(150)が更に、
-前記多軸ロボットアーム(120)が前記TMS刺激デバイス(110)を前記最適な位置及び配向に移動させる少なくとも1つの経路を計算し、前記経路は、前記多軸ロボットアーム(120)も前記TMS刺激デバイス(110)も前記頭部に接触しないように計算され、
-前記少なくとも1つの経路に沿って前記多軸ロボットアーム(120)を移動させるように構成された制御信号を送信する、
ように構成されている請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記解剖学的データは、磁気共鳴画像MRI、計算された断層撮影CT、X線、及び超音波のうちの少なくとも1つに基づく医療イメージングから得られる、請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラ(150)が更に、
-前記頭部及びTMS刺激デバイス(110)のうちの少なくとも1つの周囲に境界条件を規定し、
-前記境界条件に違反した場合、前記TMS刺激デバイス(110)の作動を防止する、ように構成されている請求項1乃至9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
コントローラ(150)、トラッキングシステム(130)、及びTMS刺激デバイス(110)を取り付けた多軸ロボットアーム(120)を備える装置(100)を介して経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する方法であって、前記方法が、
-人(170)の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、前記人の少なくとも頭蓋の形状及び前記頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものである、ステップと、
-前記人(170)の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を前記トラッキングシステム(130)から受信するステップと、
前記解剖学的データと、前記頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、前記TMS刺激デバイス(110)で前記頭蓋内の所定位置を標的にする為に、前記TMS刺激デバイス(110)を前記頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように、前記多軸ロボットアーム(120)を制御する制御信号を送信するステップと、を含み、
前記最適な位置及び配向は、前記TMS刺激デバイス(110)の表面が前記皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向であることを特徴とする方法。
【請求項12】
更に、
-前記頭蓋内の前記所定位置を受信するステップと、
-前記受信した前記頭蓋内の前記所定位置に基づいて、前記TMS刺激デバイス(110)の表面が前記皮膚の外表面から前記所定距離である前記最適位置及び配向を計算するステップと、
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
更に、
-前記皮膚の外表面を規定する前記人(170)の前記解剖学的データ、及び
-前記皮膚の外表面からの前記所定距離、
のうち少なくとも1つを、前記TMS刺激デバイスの表面の現在の位置に基づいて調整するステップを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記調整ステップは、前記TMS刺激デバイス(110)の表面に固定されたスイッチ(155)又は圧力センサからの信号等の更新信号の受信時に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
更に、前記TMS刺激デバイス(110)に対する機械的圧力又は接触が検出されるまで、前記TMS刺激デバイス(110)を前記頭部に向かって移動させるように構成された制御信号を送信することを含む少なくとも1つの較正ステップ実行するステップを含む、請求項11乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
更に、
-前記頭蓋内の位置に送達されるべきTMSの計画された投与量を受け取るステップと、
-前記皮膚の外表面からの前記所定距離を調整しながら、前記投与量が送達されるように、前記TMS刺激デバイス(110)に供給されるべき必要なエネルギーを計算するステップと、を含む請求項11乃至15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
一組のコンピュータ可読命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、トラッキングシステムと、経頭蓋磁気刺激(TMS)刺激デバイスを取り付けた多軸ロボットアームとに機能的に接続されるように構成された装置に、少なくとも以下を行わせる:
-人の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、前記人の少なくとも頭蓋の形状と、前記頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものであり、
-前記トラッキングシステムから、前記人の前記頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信し、
-前記解剖学的データと、前記頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、前記TMS刺激デバイスで前記頭蓋内の所定位置を標的にする為に、前記TMS刺激デバイスを前記頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように前記多軸ロボットアームを制御する制御信号を送信し、
前記最適な位置及び配向は、前記TMS刺激デバイスの表面が前記皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向であることを特徴とする非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経頭蓋磁気刺激(TMS)及びロボットアームによって実現されるTMSに関する。
【背景技術】
【0002】
TMSを送達する場合、コイル等のTMS刺激デバイスの正確で再現性のある位置決めが非常に重要である。TMS刺激デバイスを保持し位置決めする為の多くのソリューションが存在するが、そのようなソリューションは、刺激送達を最大化し頭部の動きを最小化しようとして、TMS刺激デバイスを頭部に対して確りと配置することに依存している。しかし、TMS刺激デバイスを頭部に押し付けることは、不快感を引き起こし、この不快感故に人がTMS刺激デバイスから後退することにさえなり得る。このような後退は、多くの場合、TMS送達を、不可能ではないにしても困難にする。
【0003】
幾つかのTMS応用例は、ロボットによるソリューションを採用しているが、そのようなソリューションは、単にコイルを固定位置に移動させる為に採用されている。コイルは、TMS送達中にこの固定位置に保持され、TMS適用間で移動される。このようなソリューションは、上述したように、頭部を固定するか、又は頭部に対する圧力を維持することの何れかに依存している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットアームとトラッキングシステムを採用することで、本発明によるTMSソリューションでは、TMS刺激デバイスを頭部に押し付けずに経頭蓋磁気刺激を送達することが可能になる。このような非接触送達は、鬱病又は慢性疼痛等、個人が不快感を経験するか又は装置が頭部に触れることを嫌う可能性がある特定の臨床状況において特に有益である。
【0005】
更に、本発明の実施形態によるTMSソリューションは、機能する為に頭部に対する圧力を必要とするシステムに関連する問題を回避する。頭部に対する圧力を必要とするシステムにおいて、エラー又はその他の理由により、TMS刺激デバイスが強過ぎる力で頭部に当たるべきであると判断される場合がある。その結果、装置が患者の頭部にかなり強く押し付けられ、患者が反動するという事態に至る場合がある。このような反動により、TMSが停止されて、接触を再確立できるまでTMS刺激デバイスが再配置される必要が生じることになるが、それはただ、患者を再び反動させて、患者を不快且つ不自然な位置にさせるだけである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
対照的に、本発明の実施形態は、TMS刺激デバイスが本質的に、頭部に対して固定された位置で頭部の上をホバリングするシステムを提供する。頭部は追跡され、その追跡を用いて、頭部に対する固定ホバリング位置を維持する。このホバリングは、TMS中の患者に対する不快感及び妨害の軽減を提供する。例えば、本発明の実施形態は、頭部との接触が本質的に皆無である為、音、振動及び熱伝達の実質的な減少を提供する。
【0007】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。幾つかの特定の実施形態は従属請求項に定義される。
【0008】
本発明の第1の態様により、経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する為の装置が提供され、前記装置は、トラッキングシステムと、TMS刺激デバイスを取り付けた多軸ロボットアームとに機能的に接続されるように構成されたコントローラを備え、前記コントローラは、
-人の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、前記人の少なくとも頭蓋の形状と、前記頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものであり、
-前記トラッキングシステムから、前記人の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信し、
-前記解剖学的データと、前記頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、前記TMS刺激デバイスで前記頭蓋内の所定位置を標的にする為に前記TMS刺激デバイスを前記頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように前記多軸ロボットアームを制御する、ように構成され、
前記最適な位置及び配向は、前記TMS刺激デバイスの表面が前記皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向である。
【0009】
本発明の第2の態様により、コントローラ、トラッキングシステム、及びTMS刺激デバイスを取り付けた多軸ロボットアームを備える装置を介して経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する方法が提供され、前記方法は、
-人の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、前記人の少なくとも頭蓋の形状と、前記頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものである、ステップと、
-前記人の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を前記トラッキングシステムから受信するステップと、
-前記解剖学的データと、前記頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、前記TMS刺激デバイスで頭蓋内の所定位置を標的にする為に、前記頭部に対する最適な位置及び配向に前記TMS刺激デバイスを維持するように前記多軸ロボットアームを制御する制御信号を送信するステップと、を含み、
前記最適な位置及び配向は、前記TMS刺激デバイスの表面が前記皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向である。
【0010】
本発明の第3の態様により、一組のコンピュータ可読命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体が提供され、前記コンピュータ可読命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、トラッキングシステムと、TMS刺激デバイスを取り付けた多軸ロボットアームとに機能的に接続されるように構成された装置に、少なくとも以下を行わせる:
-人の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、前記人の少なくとも頭蓋の形状と、前記頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものであり、
-前記トラッキングシステムから、前記人の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信し、
-前記解剖学的データと、前記頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、前記頭蓋内の所定位置を前記TMS刺激デバイスで標的にする為に、前記TMS刺激デバイスを前記頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように前記多軸ロボットアームを制御する制御信号を送信し、
前記最適な位置及び配向は、前記TMS刺激デバイスの表面が前記皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向である。
【0011】
本発明の第4の態様により、経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する為の装置が提供され、前記装置は以下を備えている:人の解剖学的データを受信する手段であって、前記解剖学的データは、前記人の少なくとも頭蓋の形状と前記頭蓋を包囲する皮膚の外表面の形状を規定するものである、手段と;前記人の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信する手段と;TMS刺激デバイスを取り付けた多軸ロボットアームを制御する手段であって、前記解剖学的データと、前記頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、前記TMS刺激デバイスで前記頭蓋内の所定位置を標的にする為に、前記TMS刺激デバイスを前記頭部に対して最適な位置及び配向に維持する、手段;前記最適な位置及び配向は、前記TMS刺激デバイスの表面が前記皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることが可能な一例示的装置を示す図である。
【
図2C】TMS刺激デバイスの頭部に対する位置の詳細を示す、本発明の一実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることが可能な一例示的装置の図である。
【
図4】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による方法のフローグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本願を通じて、患者に言及する場合がある。この用語は、便宜上使用され、本発明の実施形態によって可能となる経頭蓋磁気刺激の対象を指すことを理解されたい。
【0014】
この文脈において、TMS刺激デバイスは、コイル、又は電磁コイルを含むが、これらに限定されるものではない。TMS刺激デバイスは、ハウジング、コイル、他の電子部品、及びハンドルを備えていてもよい。
【0015】
皮膚の外表面は、例えば、真皮の外層又はその外表面を指すことがある。皮膚の外表面は幾つかの実施形態では、モデリングを容易にする為に、真皮の層であると仮定されてもよい。そのような縁は、医療イメージングから導出され得る。
【0016】
本明細書に記載の場合、位置は、例えば、場所、位置、点、空間内の点等であってよい。同様に、配向は、例えば、整列又は方向であってもよい。
【0017】
本発明の実施形態は、TMSの一貫した、より快適な送達を促進するシステムを提供する。頭部を追跡し、頭蓋だけでなく頭蓋を包囲する解剖学的構造を考慮することによって、ロボットアームは、TMS刺激デバイスが前記解剖学的構造から離れた設定距離でホバリングするような位置及び配向を維持することが可能である。このホバリングは、患者の不快感を少なくし、TMSパルス送達間の刺激のラウンド中に頭部の移動を可能にすることさえでき、それは、TMSの送達中の患者の快適さを増大させる別の要因である。
【0018】
図1は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による、経頭蓋磁気刺激の送達を促進する為の装置100を示す。図示のように、装置は、トラッキングシステム130に機能的に接続されるように構成されたコントローラ150と、TMS刺激デバイス110を取り付けた多軸ロボットアーム120とを備えている。コントローラ150は、人170の解剖学的データを受信するように構成され、前記解剖学的データは、人の少なくとも頭蓋の形状と、頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものである。コントローラは、トラッキングシステム130から、人170の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信し、解剖学的データと、頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、TMS刺激デバイス110で頭蓋内の所定位置を標的にする為に、TMS刺激デバイス110を頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように多軸ロボットアーム120を制御するようにも構成される。
図1に見られるように、最適な位置及び配向は、TMS刺激デバイス110の表面が皮膚の外表面から所定距離160であるような位置及び配向である。
【0019】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、解剖学的データは、磁気共鳴画像MRI、計算された断層撮影CT、X線、及び超音波の内の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない医療イメージングから導出される。医療画像は、個人の頭蓋及び皮膚を表すものとして直接解釈され得る情報を有し得る。幾つかの実施態様では、解剖学的データは、医療イメージングデータを解釈又は調整することによって導出される。例えば、イメージングデータには、頭蓋の明確な表示はあるが皮膚を明確に示していない場合があり、この場合、頭蓋を包囲する皮膚に関する解剖学的データを提供する為に、皮膚に関する仮定がなされ得る。例えば、皮膚の外表面は、頭蓋から固定距離にあると仮定され得る。特定の実施形態において、人の少なくとも頭蓋の形状を規定する解剖学的データは、例えば、脳の形状又は頭蓋骨の形状であり得る。
【0020】
多種多様なトラッキングシステムが本発明の実施形態で採用され得る。例えば、本発明の特定の実施形態によるトラッキングシステムは、個人の頭部に適用されたマーカを追跡するように構成される。そのようなマーカは、頭部のリアルタイム位置への解剖学的データの一貫したマッピングを提供する為に、解剖学的ランドマークに基づいて一貫した位置に適用されてもよい。
【0021】
TMS刺激デバイス110の位置が決定され得る幾つかの方法及びデバイスが知られており、そのうち幾つかは、少なくとも米国特許出願公開第2008/0058582号「トラッキングデバイスを受け入れる為のアタッチメント部分を備えた経頭蓋磁気刺激誘導コイルデバイス(Transcranial magnetic stimulation induction coil device with attachment portion for receiving tracking device)」に、より詳細に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれている。これらの方法の少なくとも幾つかは、刺激デバイス110上に、又は刺激デバイス110に取り付けられた追跡マーカを含む。しかしながら、少なくとも幾つかの実施形態では、刺激デバイスを有するロボットアームの形状及び位置が刺激デバイスの現在の位置及び配向を提供することができるので、刺激デバイスの追跡は必要ではない。付加的に、マーカは、被験者の頭部の1つ以上の位置に取り付けられ得る。例えば、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるコントローラは、ロボットアームの既知の形状及び位置に基づいて、刺激デバイスの現在の位置及び配向を導出又は計算することができる。このような計算は、例えば、順運動学又は逆運動学を利用して実行され得る。
【0022】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、被験者の頭部とTMS刺激デバイスの少なくとも一方を追跡する為に、画像認識を採用する。例えば、カメラを用いてTMS刺激デバイス及び/又は被験者の頭部の画像を撮影し、その後、画像認識技術によってTMS刺激デバイス及び/又は被験者の頭部の特定の位置及び配向を導出することができる。特定の実施形態は、人工知能(AI)又は機械学習技術を採用して、画像認識によって対象物の追跡を改善する。幾つかの実施形態は、患者の頭部の位置及び配向に関するリアルタイム情報を解剖学的データと共整合する為に画像認識を使用することさえできる。
【0023】
本発明の特定の実施形態による解剖学的データは調整されてもよい。そのような調整は、コントローラにおける受信前又は受信後の何れに行われてもよい。例えば、幾つかの実施形態によるコントローラは、以下のうち少なくとも1つを調整するように構成される:皮膚の外表面を規定する人170の解剖学的データ、及びTMS刺激デバイスの表面の現在の位置に基づく皮膚の外表面からの所定距離。例えば、解剖学的データは、個人の頭部に対するTMS刺激デバイスの位置に関する情報に基づいて、皮膚の外表面が現在TMS刺激デバイスの表面上の点にあると考えられるように、更新又は調整され得る。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態では、解剖学的データは、更新信号の受信時に調整される。このような信号は、例えば、手動スイッチ、ソフトウェアスイッチ、TMS刺激デバイスの面又は表面に取り付けられたセンサ、又は
図1に例示されるようなフットペダル155から供給され得る。TMS刺激デバイスの面又は表面のタッチセンサ等のセンサを採用している実施形態では、較正モードが採用され得る。このような較正モードでは、ロボットアームは「訓練モード」に入ってもよく、訓練モードでは、移動は、制御信号を介して、又はロボットアーム若しくはTMS刺激デバイスを手動で操作することによって指示される。この訓練モードでは、TMS刺激デバイスの面又は表面を人の頭に少なくとも一回接触させるが、何回も接触する可能性がある。接触する度に、解剖学的データを更新する為に新たなデータポイントが導出される。好ましい方法は、解剖学的データを更新する為に、TMS刺激デバイスを患者の頭部に複数の異なる位置で接触させることである。例えば、追跡又は解剖学的データと実世界のデータとの整合における誤差を見込む為に、このような訓練モードを用いて解剖学的データを患者の頭部の実世界の追跡と調整してもよい。訓練モードの使用は、境界条件を提供することもでき、本明細書に記載のデバイス及び方法の安全性及び精度を向上させる。
【0025】
特定の実施形態では、システムは較正される、又は、解剖学的データは、TMS刺激デバイスを患者の頭部に少なくとも1回、例えば少なくとも3回接触させることによって調整される。幾つかの実施形態では、TMS刺激デバイスは、患者の頭部に少なくとも26回接触させられる。このような較正又は調整方法は整合精度を高める。
【0026】
幾つかの実施形態では、コントローラ150は更に、TMS刺激デバイス110に対する機械的圧力又は接触が、例えばTMS刺激デバイスに取り付けられた1つのセンサ及びロボットアームのセンサ(複数可)の内の少なくとも1つによって検出されるまで、TMS刺激デバイス110を頭部に向かって移動させるように構成された制御信号を送信することを含む少なくとも1つの較正ステップを実行するように構成される。
【0027】
図2Aは、本明細書で論じる較正又は解剖学的データ調整中に起こり得る、人の頭部に接触しているTMS刺激デバイス210を示している。TMS刺激デバイスの表面212は、頭蓋272を包囲する皮膚の外表面274に接触している。論じたように、この表面212は、この接触を検出する為のセンサを備えていてもよい。幾つかの実施形態では、センサは、皮膚の外表面274と接触している表面212上の特定の位置に関する情報を提供するようなものであってもよい。
【0028】
図2Aに同様に示すように、TMS刺激デバイス210は、TMS刺激デバイス210のロボットアーム220への接続を可能にするアダプタ225によって保持されている。そのようなアダプタ225は、ロボットアーム220のエンドエフェクタとインターフェースするように構成されてもよい。特定の実施形態では、ロボットアーム220のエンドエフェクタはアダプタ225として機能してもよい。この配置構成は、頭蓋272内の或る位置、例えば大脳皮質等の脳276内の位置を標的にするように、TMS刺激デバイス210を或る位置に位置決めし、配向させることを可能にする。
【0029】
TMSに固定されたタッチセンサに加えて、又はその代わりとして、特定の実施形態では、ロボットアーム自体のセンサが採用される。例えば、ロボットアームのセンサ及び/又はモータは、例えば、モータ及び/又はセンサの電圧、電流、加速度、角速度、角加速度の内の1つ以上を監視することによって、ロボットアームの動きに対して通常以上の抵抗があった場合を判断することが可能である。ロボットアームから得られたそのようなデータは、データ更新をトリガする為、又は他の入力を提供する為に使用され得る。タッチセンサを採用する本発明の特定の実施形態では、タッチセンサは、TMS刺激送達の間、本発明の実施形態によって実現されるホバー方式故に、定常的圧力感知を提供する必要がない。タッチセンサを採用する少なくとも幾つかの実施形態は、センサ自体又はセンサに接続された回路への損傷を避ける為に、刺激中にタッチセンサを選択的に無効にする。
【0030】
特定の実施形態では、ユーザは、TMS刺激デバイスを、例えば、上述したように手動で、患者の頭部に接触する位置に移すことができる。その時点で、ユーザ、又は患者であっても、
図1のフットペダル155のようなスイッチを介して信号を提供することができる。ユーザが接触を探ってもよく、患者に接触を示すように依頼してもよく、又は、患者の頭部との接触を判定する為に上述のスイッチ又は入力のうちの1つが採用されてもよい。
【0031】
本明細書に記載の解剖学的データに対する調整は、イメージング又はイメージングの変換の誤差を見込む為に使用され得る。この調整は、患者の毛髪への対応も提供する。例えば、システムは、TMS刺激デバイスが何か、例えば患者又は患者の近傍の他の実体に接触している及び/又は接触しそうであるというセンサ入力に基づいて、特定のホバリング距離が不可能であることを示してもよい。或いは、ユーザは、解剖学的データによって示される皮膚の外表面からの特定のホバリング距離、又は所定距離が不可能であることに気付くかもしれない。このような指示又は決定がなされると、ユーザは、独自に、又はシステムによって促されるように解剖学的データを調整してもよい。例えば、本明細書で言及した調整及び較正技術に概説されているように調整する。
【0032】
特定の実施形態では、コントローラ150は、特定のタイプの自動較正を行うように構成される。そのような実施形態では、コントローラは、TMS刺激デバイス110を最適な位置及び配向よりも頭部から遠い第1の位置、例えば頭部から約10cmの位置に移動させる制御信号を送信するように構成される。この後、コントローラは、TMS刺激デバイス110に対する圧力が検出されるまで、TMS刺激デバイス110を第1の位置から頭部に向かって移動させる。幾つかの実施形態内では、コントローラは、第1の移動が第1の速度で起こり、第2の移動が第1の速度より遅い第2の速度で起こるように構成される。
【0033】
少なくとも幾つかの実施形態では、頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定する解剖学的データは、較正ステップを介して導出される。例えば、解剖学的データが医療イメージングに基づいている状況では、特定の位置の皮膚層は鮮明でないか、或いは全く映らないことさえある。別の例として、人の毛髪は、TMS刺激デバイスが皮膚の外表面の上でホバリングするように構成されている時でさえ、患者に対して圧力を引き起こす程十分に太いので、皮膚の外表面がオフセットの不当な標的となる可能性がある。
【0034】
特定の実施形態では、頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定する解剖学的データは、コントローラによって受信された時、最初は空白であってもよい。例えば、皮膚の外表面を規定する決定的なデータがない場合がある。そのような状況では、コントローラは、本明細書に記載のデータ調整方法を通じてデータを導出及び/又は更新するように構成され得る。
【0035】
図2B及び
図2Cは、意図されたホバリングと、データの調整が必要な場合の両方を示している。図において、頭蓋272が、頭蓋を包囲する皮膚274及び脳276と共に描写されている。
図2Bにおいて、TMS刺激デバイス210は、ロボットアーム220によってアダプタ225を介して皮膚の外表面274から1mmの所定距離に保持されている。ロボットアームは、TMS送達のセッションの間中、頭部に対してこの位置を維持する。しかしながら、
図2Cに示されるように、時として解剖学的データの調整が必要である。
【0036】
図2Cにおいて、コントローラは、実際に頭部に接触しているか又は潜在的に頭蓋274内にさえある標的位置278を、よって最適位置及び配向を、受け取った状態である。所定オフセット距離が1mmであっても、TMS刺激デバイス210を標的位置278に配置しようとすると、頭部との接触による抵抗に遭遇し、それが検出される。この頭部との接触は、幾つかの実施形態では、警告をトリガし、ロボットアームの動きを停止し、及び/又は本明細書で論じるように較正又は調整ステップを開始することがある。
【0037】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、頭蓋の形状に関する解剖学的データを初期制限として使用して、頭蓋を包囲する皮膚の外表面に関する解剖学的データを定義する較正ステップを採用する。例えば、本明細書に記載の較正ステップを使用して、TMS刺激デバイスは、頭蓋から或る設定距離で開始し、圧力又は接触が検出されるまで頭蓋に接近し、よってその位置に皮膚の外表面を規定してもよい。特定の実施形態は、接触が検出されるまで初期の最適TMS送達位置及び配向に接近し、その後、所定距離を後退して最適位置及び配向に到達してもよい。更に他の実施形態は、送達エネルギー当たり最も強い投与量を提供すると思われる基準位置にコイルを移動させ、その後、圧力が検出されると、設定距離分、後退させる。基準位置は、例えば、頭蓋の、又は頭蓋を包囲する皮膚の直上の位置であってもよい。このような較正ステップは、イメージングとトラッキングの誤差を除外するのに役立つ。
【0038】
本発明の特定の実施形態では、頭蓋の形状を規定する解剖学的データは、頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定する解剖学的データに基づいている。他の実施形態では、頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定する解剖学的データは、頭蓋の形状を規定する解剖学的データに基づいている。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態によれば、コントローラ150は更に、頭蓋内の所定位置を受信し、受信した頭蓋内の所定位置に基づいて、TMS刺激デバイス110の表面が皮膚の外表面から所定距離である最適な位置及び配向を計算するように構成される。特定の実施形態では、皮膚の外表面からの所定距離は0.5~5mm、好ましくは2mm以下、最も好ましくは1mm以下である。
【0040】
本発明の実施形態による少なくとも幾つかのコントローラは、頭蓋内の位置に送達されるべきTMSの計画された投与量を受信し、皮膚の外表面からの所定距離を調整して、その投与量が送達されるようにTMS刺激デバイスに送達されるべき必要なエネルギーを計算するように構成される。特定の実施形態は、コントローラが、TMS刺激デバイスを通電させ従ってTMSを送達させるように構成された信号を送信するように構成される。
【0041】
TMSのセッション中にホバリングする能力によって提供される利点に加えて、本発明の特定の実施形態は、ロボットアームを介した或る場所から別の場所へのTMS刺激デバイスの自動化された移動、例えば、第1の刺激投与量送達位置から第2の刺激投与量送達位置への移動を提供する。そのような実施形態では、コントローラ150は、TMS刺激デバイス110を最適な位置及び配向に移動させる為の多軸ロボットアーム120の少なくとも1つの経路を計算するように構成され、その経路は、多軸ロボットアーム120も、TMS刺激デバイス110も、患者の頭部又は他の部位に接触しないように計算される。その後、コントローラ150は、その少なくとも1つの経路に沿って多軸ロボットアーム120を移動させるように構成された制御信号を送信する。このような自動化された移動は、較正又は解剖学的データ調整を行う特定の実施形態においても採用され得る。
【0042】
本発明の特定の実施形態は、カメラ、例えば、ロボットアーム又はTMS刺激デバイスに取り付けられた2/3Dカメラ又は他のセンサを採用しており、それによって衝突検出と回避を提供する。このようなカメラ又はセンサは、患者、又は、例えば、患者が座っている椅子等の環境内の他の物体との衝突を検出又は回避することができる。この検出と回避は、ロボットアームが移動する経路の計算に組み込まれてもよい。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態はコントローラ150を提供し、コントローラは、頭部及びTMS刺激デバイス110の少なくとも一方の周囲に境界条件を規定し、境界条件に違反した場合にTMS刺激デバイス110の活性化又は通電を防止するように構成されている。これらの境界条件は、較正の欠如又は他のエラーによって、システムがTMS刺激デバイス110を患者に繰り返し押し当てて患者をデバイスから後退させるが、患者がデバイスから後退してもシステムはひたすら患者と接触するのみである状況を防止し得る。境界条件は又、例えば、患者が突然立ち去ることにした場合に、システムが動作を停止するように構成され得るので、安全性を向上させることができる。一例として、境界条件は、空間に描かれた想像上の箱又は他の定義された体積、潜在的にはマッチ箱の大きさ、の形を取ることができる。初期状態では、これらの体積や箱は、頭部やTMS刺激デバイス上の固定点の周りにある。固定点が箱から離れると、コントローラは更なる動作を行うように構成されている。コントローラは、例えば、ロボットアームを患者から退避させるように設定することで、境界条件に違反したインスタンスにおいて偶発的な衝突を防止することができる。又、コントローラは、境界条件が違反された旨の警告信号をオペレータに送信し、任意に他の動作を停止させるように構成されてもよい。
【0044】
図3は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートできる1つの例示的な装置を示している。
図1のコントローラ150等のコンピュータデバイスを例えば含み得るデバイス300が図示されている。デバイス300にはプロセッサ310が含まれ、このプロセッサは、例えば、シングルコア又はマルチコアプロセッサを含み、シングルコアプロセッサは1つの処理コアを備え、マルチコアプロセッサは2つ以上の処理コアを備えている。プロセッサ310は、例えば、クアルコム・スナップドラゴン(Qualcomm Snapdragon)800プロセッサを含んでもよい。プロセッサ310は、2つ以上のプロセッサを備えてもよい。処理コアは、例えば、インテル(Intel)株式会社製のコーテックス(Cortex)-A8処理コアや、アドバンストマイクロデバイス株式会社(Advanced Micro Devices Corporation)製のブリスベン(Brisbane)処理コアを含み得る。プロセッサ310は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路、ASICを備えてもよい。プロセッサ310は、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ、FPGAを備えてもよい。前述のプロセッサの種類は非限定的な例であり、代替的にインテル(Intel)i7プロセッサ、又は他の適切な種類のプロセッサが採用されてもよい。
【0045】
デバイス300はメモリ320を備えてもよい。メモリ320は、ランダムアクセスメモリ及び/又は永久メモリである。メモリ320は、少なくとも1つのRAMチップを備えてもよい。メモリ320は、磁気メモリ、光学メモリ、及び/又はホログラフィックメモリを備えてもよい。メモリ320は、少なくとも部分的にプロセッサ310にアクセス可能であってもよい。メモリ320は、情報格納手段であってもよい。メモリ320は、プロセッサ310が実行するように構成されたコンピュータ命令を含んでもよい。プロセッサ310に特定の動作を実行させるように構成されたコンピュータ命令がメモリ320に格納され、デバイス300全体が、メモリ320からのコンピュータ命令を使用してプロセッサ310の命令の下で実行するように構成される場合、プロセッサ310及び/又はその少なくとも1つの処理コアは、前記特定の動作を実行するように構成されていると見なされ得る。
【0046】
デバイス300は送信機330を備えていてもよい。デバイス300は受信機340を備えていてもよい。送信機330及び受信機340は、夫々、システムに従って情報を送信及び受信するように構成されてもよく、例えば、送信機330は、ユーザに表示する為にモニタに情報を送信してもよく、及び/又は受信機340は、更なるデバイスの位置及び/又は配向に関する入力情報を受信してもよい。
【0047】
デバイス300は、近距離無線通信(NFC)トランシーバ350を含んでいてもよい。NFCトランシーバ350は、NFC、Bluetooth、Wibree又は同様の技術等、少なくとも1つのNFC技術をサポートしてもよい。
【0048】
デバイス300は、ユーザインターフェースUI360を含んでいてもよい。UI360は、ディスプレイ、キーボード、及びタッチスクリーンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。ユーザは、UI360を介して、例えば、プログラムの実行を開始又は終了させる等、デバイス300を操作できる可能性がある。
【0049】
プロセッサ310は、情報を、プロセッサ310から、デバイス300内部の電気リード線を介して、デバイス300に含まれる他のデバイスへ出力する為に配置された送信機を装備していてもよい。このような送信機は、例えば、メモリに格納する為に少なくとも1つの電気リード線を介してメモリ320に情報を出力するように配置されたシリアルバス送信機を備えていてもよい。シリアルバスに代えて、送信機は、パラレルバス送信機を備えていてもよい。同様に、プロセッサ310は、デバイス300に含まれる他のデバイスから、デバイス300内部の電気リード線を介して、プロセッサ310の情報を受信するように配置された受信機を備えていてもよい。このような受信機は、例えば、プロセッサ310での処理の為に、受信機340から少なくとも1つの電気リード線を介して情報を受信するように配置されたシリアルバス受信機を備えていてもよい。シリアルバスに代えて、受信機は、パラレルバス受信機を備えてもよい。
【0050】
デバイス300は、
図3に図示されていない更なるデバイスを備えてもよい。例えば、デバイス300がコンピュータデバイスを備えている場合、主電源が故障した場合にバッテリ電源を供給する為に、少なくとも1つのクロック又は補助電源装置、APUを備えていてもよい。
【0051】
プロセッサ310、メモリ320、送信機330、受信機340、NFCトランシーバ
350及び/又はUI360は、多数の異なる方法でデバイス300内部の電気リード線によって相互接続されてもよい。例えば、前述のデバイスの各々は、デバイスが情報を交換できるように、デバイス300内部のマスターバスに別々に接続されてもよい。しかしながら、当業者が理解するように、これは一例に過ぎず、実施形態によっては、本発明の範囲から逸脱することなく、前述のデバイスの少なくとも2つを相互接続する様々な方法が選択され得る。
【0052】
図4は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による、コントローラ150と、トラッキングシステム130と、固定されたTMS刺激デバイス110を有する多軸ロボットアーム120とを備える装置100を介した経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進にする為の方法のフローグラフを示す。方法は、
図1を参照して説明されるが、別の適切な装置で実行されてもよいことが理解されよう。
図4に示すように、方法は、少なくともステップ410、420及び430を含む。ステップ410は、人170の解剖学的データを受信することを包含し、前記解剖学的データは、人の少なくとも頭蓋の形状と、頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定する。ステップ420は、トラッキングシステム130から、人170の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信することを包含する。ステップ430は、解剖学的データと、頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、TMS刺激デバイス110で頭部内の所定位置を標的にする為にTMS刺激デバイス110を頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように多軸ロボットアーム120を制御する制御信号を送信することを含み、最適な位置及び配向は、TMS刺激デバイス(110)の表面が皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向である。
【0053】
本発明による少なくとも幾つかの方法は更に、頭蓋内の所定位置を受信するステップと、受信した頭蓋内の所定位置に基づいて、TMS刺激デバイス(110)の表面が皮膚の外表面から所定距離である最適な位置及び配向を計算するステップと、を包含する。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態による特定の方法は、皮膚の外表面を規定する人(170)の解剖学的データ、及び皮膚の外表面からの所定距離、のうち少なくとも1つを、TMS刺激デバイスの表面の現在の位置に基づいて調整することを包含する。これらの実施形態の幾つかでは、調整は、TMS刺激デバイス110の表面に固定されたスイッチ155又は圧力センサからの信号等の更新信号の受信時に実行される。
【0055】
本発明による幾つかの方法は更に、TMS刺激デバイス110に対する機械的圧力又は接触が検出されるまでTMS刺激デバイス110を頭部に向かって移動させるように構成された制御信号を送信することを含む、少なくとも1つの較正ステップを実行するステップを含む。特定の方法は更に、頭蓋内の位置に送達されるべきTMSの計画された投与量を受け取るステップと、皮膚の外表面からの所定距離を調整しながら、投与量が送達されるようにTMS刺激デバイス110に送達されるべき必要なエネルギーを計算するステップとを含む。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態は、一組のコンピュータ可読命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体を備え、コンピュータ可読命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、トラッキングシステムと、TMS刺激デバイスを取り付けた多軸ロボットアームとに機能的に接続されるように構成された装置に、少なくとも以下を行わせる:人の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、人の少なくとも頭蓋の形状及び頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものであり;トラッキングシステムから、その人の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信し;TMS刺激デバイスで頭蓋内の所定位置を標的にする為に、解剖学的データと、頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、頭部に対してTMS刺激デバイスを最適な位置及び配向に維持するように多軸ロボットアームを制御する制御信号を送信し;最適な位置及び配向は、TMS刺激デバイスの表面が皮膚の外表面から所定距離であるような位置及び配向である。
【0057】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、本明細書に記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムを含む。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、刺激デバイスは、刺激中に頭部に面する表面の曲率が、頭部の想定又は平均曲率より大きくない限り、使用に適していると考えられる。言い換えると、刺激デバイスは、個人の頭蓋からの距離を維持する問題を避ける為に、刺激される個人の頭部よりも大きい湾曲を有さないことが望ましい。
【0059】
本発明の実施形態は、様々なコイル設計を採用した多種多様なTMS刺激デバイスと共に使用することができる。例えば、バタフライコイル、カーブウィングコイル、及び8の字コイルが使用に大変適している。
【0060】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、コントローラは、TMS刺激デバイス並びにロボットアームの寸法に関するデータを含む。コントローラは、ロボットアームに対するTMS刺激デバイスの位置及び配向に関するデータも含んでいてもよい。
【0061】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態において、標的又は標的位置は、活性化又は通電された時にTMS刺激デバイスによって最大の電界、電場が送達されることになる位置である。標的は、例えば、大脳皮質内であり得る。少なくとも幾つかの実施形態内では、TMS刺激デバイスは、所定の刺激の最大電場がその位置で発生するように、所定位置を標的にするように位置決めされ配向される。特定の実施形態において、選択されたV/m投与量が標的、例えば大脳皮質上の刺激目標に送達されるように、投与量が計算される。幾つかの実施形態は、TMS刺激デバイスが患者の頭部と接触している状態で、元々送達を意図した投与量を取り、TMS刺激デバイスが頭部から離れて維持される所定の距離を補償する。特定の実施形態では、計画された投与量と標的位置を考慮し、前記投与量を送達する患者の頭部からオフセットした位置と方向を決定することで、所定距離に到達する。
【0062】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、計画された投与量が提供され、計画された投与量を提供することになる患者の頭部に接触する位置を決定する為に計算が実行されるシステムを提供する。次いで、最適な位置及び配向が、頭部に接触する位置で頭部から所定距離となるように決定される。それは例えば、頭部から0.5~2mmである。
【0063】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する為の装置を提供するものであり、装置は、
-多軸ロボットアームと、
-多軸ロボットアームに取り付けられたTMS刺激デバイスと、
-個人の少なくとも頭部を追跡するように構成されたトラッキングシステムと、
-多軸ロボットアーム及びトラッキングシステムに機能的に接続されたコントローラと、を備え、
コントローラは、以下のように構成される:
-人の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、人の少なくとも頭蓋の形状と、頭蓋を包囲する皮膚の外表面を規定するものであり、
-トラッキングシステムから、人の頭部のリアルタイムの位置に関する情報を受信し、
-解剖学的データと、頭部のリアルタイムの位置に関する情報に基づいて、TMS刺激デバイスで頭蓋内の所定位置を標的にする為に、TMS刺激デバイスを頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように多軸ロボットアームを制御し、
最適な位置及び配向は、TMS刺激デバイスの表面が、皮膚の外表面から所定距離である位置及び配向である。
【0064】
本発明の特定の実施形態は、トラッキングシステムと、TMS刺激デバイスを取り付けた多軸ロボットアームとに機能的に接続されるように構成された、経頭蓋磁気刺激(TMS)の送達を促進する為の装置を提供するものであり、装置は、少なくとも1つの処理コアと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリとを備え、少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つの処理コアを用いて、装置に少なくとも以下を行わせるように構成される:
-人の解剖学的データを受信し、前記解剖学的データは、人の少なくとも頭蓋の形状と、
頭蓋を包囲する真皮を規定するものであり、
-トラッキングシステムから、人の頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報を受信し、
-解剖学的データと、頭部のリアルタイムの位置及び配向に関する情報とに基づいて、TMS刺激デバイスで頭蓋内の所定位置を標的にする為に、TMS刺激デバイスを頭部に対して最適な位置及び配向に維持するように多軸ロボットアームを制御する制御信号を送信し、
最適な位置及び配向は、TMS刺激デバイスの表面が真皮から所定距離であるような位置及び配向である。
【0065】
本発明の実施形態において使用するのに適したロボット装置は、サーボモータ、ステッパモータ、油圧モータ、又は空気圧モータ等の少なくとも1つのモータを、回転式又は線形ジョイント等の少なくとも1つのジョイントに連結して備えている。好ましい実施形態では、ロボット装置は、少なくとも5つのモータと、次々に配置されるリンクによって連結される少なくとも5つの回転関節とを備えたロボットアームである。前述のモータを制御する別個の又は統合されたコントローラが、ロボットの運動を制御する為に使用される。例えば、ユニバーサルロボティクス社のロボットUR5は、本発明で使用するのに適したロボットである。他のタイプのロボティック・マニピュレータも本発明で使用可能である。
【0066】
本明細書で論じる場合、人の解剖学的データは、人の解剖学的データであってもよいし、人の為に、又は人に関して導出されたものであってもよい。
【0067】
開示された本発明の実施形態は、本明細書に開示された特定の構造、プロセスステップ、又は材料に限定されず、関連する技術分野における通常の熟練者によって認識されるようなその同等物に拡張されることが理解されよう。又、本明細書で採用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0068】
本明細書を通じて、「一実施形態」又は「或る実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書中の様々な場所での「一実施形態において」又は「或る実施形態において」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。
【0069】
本明細書で使用される場合、複数のアイテム、構造的要素、構成的要素、及び/又は材料は、便宜上、共通のリストで示されることがある。しかしながら、これらのリストは、リストの各構成要素が別個且つ一意の構成要素として識別されるかのように解釈されるべきである。従って、そのようなリストの個々の構成要素は、そうでない旨の指示がなければ、共通のグループにおけるそれらの提示にのみ基づいて同じリストの他の構成要素の事実上の等価物と解釈されるべきではない。更に、本発明の様々な実施形態及び実施例は、その様々な構成要素の代替案と共に本明細書で言及されることがある。そのような実施形態、実施例、及び代替案は、互いの事実上の同等物として解釈されるのではなく、本発明の別個の自律的な表現として考慮されることが理解される。
【0070】
更に、記載された特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてもよい。以下の説明において、本発明の実施形態を十分に理解する為に、長さ、幅、形状等の例のような多数の具体的な詳細が提供される。しかしながら、関連する技術分野の当業者であれば、本発明は、1つ以上の特定の詳細がなくても、又は他の方法、構成要素、材料等で実施され得ることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にするのを避ける為に、周知の構造、材料、又は操作は、詳細に示されないか、又は説明されない。
【0071】
上述の実施例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、当業者には、発明的能力を発揮することなく、又本発明の原理及び概念から逸脱することなく、形態、用途及び実施の詳細における多数の変更を行うことができることは明らかであろう。従って、以下に示す請求項による場合を除き、本発明を限定することは意図していない。
【0072】
動詞「備える」及び「含む」は、本書では、同じく引用されていない特徴の存在を排除も要求もしない開放的な限定として使用されている。従属請求項に記載された特徴は、特に明示されない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。更に、本書を通じて「1つの(a又はan)」、即ち単数形の使用は、複数形を除外するものではないことを理解されたい。
【符号の説明】
【0073】
TMS 経頭蓋磁気刺激
100 装置
110 TMS刺激デバイス
120 ロボットアーム
130 トラッキングシステム
150 コントローラ
155 フットペダル/スイッチ
160 所定距離
170 人
210 TMS刺激デバイス
212 TMS刺激デバイスの表面
220 ロボットアーム
225 アダプタ
272 頭蓋
274 皮膚の外表面
276 脳
278 標的位置
300 デバイス
310 プロセッサ
320 メモリ
330 送信機
340 受信機
350 トランシーバ
360 UI
【外国語明細書】