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特開2022-141621試験測定システム並びに静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141621
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】試験測定システム並びに静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20220921BHJP
【FI】
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040682
(22)【出願日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】63/161,382
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/260,513
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/688,733
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505436014
【氏名又は名称】ケースレー・インスツルメンツ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Keithley Instruments,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ソボレフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジェイ・ターガヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ディー・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ディー・ブッチ
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA02
2G003AB01
2G003AD01
2G003AE06
2G003AE09
2G003AG03
2G003AH01
2G003AH08
(57)【要約】
【課題】1つのシステムで、静的及び動的の両方のデバイス特性測定を可能にする。
【解決手段】試験測定システムには、電力供給装置50と、測定装置40と、これらを接続する接続部48がある。電力供給装置50には、被試験デバイス(DUT)を接続するインタフェース58があり、プロセッサ52は、DUTの静的又は動的のいずれかの特性測定の命令を受けて、選択されたDUTの特性測定を実行する。測定装置40には、ユーザ・インタフェース(UI)44があり、プロセッサ46は、UI44から静的又は動的のいずれかの特性測定を選択するユーザ入力を受けて、静的又は動的のいずれかの特性測定を選択する命令を接続部48を介して電力供給装置50へ送る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定システムであって、
電力供給装置と、
測定装置と、
上記電力供給装置を上記測定装置に接続する接続部と
を具え、
上記電力供給装置は
1つ以上の被試験デバイス(DUT)への接続を可能にするインタフェースと、
プログラムを実行するよう構成される1つ以上の第1プロセッサと
を有し、
上記1つ以上の第1プロセッサは、上記プログラムが実行されると、上記1つ以上の第1プロセッサに、静的特性測定及び動的特性測定のどちらかを選択する命令を受けさせ、上記1つ以上のDUTの選択された上記静的特性測定又は上記動的特性測定のいずれかを実行させるよう上記電力供給装置を設定させる上記プログラムを実行するよう構成され、
上記測定装置は、
ユーザ・インタフェースと、
プログラムを実行するよう構成される1つ以上の第2プロセッサと
を有し、
上記1つ以上の第2プロセッサは、上記プログラムが実行されると、上記1つ以上の第2プロセッサに、上記ユーザ・インタフェースを通して、少なくとも静的特性測定と動的特性測定のどちらかの選択の指示を含むユーザ入力を受けさせ、
上記静的特性測定と上記動的特性測定のどちらかを選択する命令を上記電力供給装置に送信させる上記プログラムを実行するよう構成される
試験測定システム。
【請求項2】
上記電力供給装置が、上記インタフェースに接続された高電圧回路を更に有し、1つ以上のDUTに電力を供給する請求項1の試験測定システム。
【請求項3】
上記電力供給装置が、上記高電圧回路に接続されたインターロックを更に有する請求項2の試験測定システム。
【請求項4】
上記電力供給装置が、上記DUTの温度を制御する温度制御装置を更に有する請求項1から3のいずれかの試験測定システム。
【請求項5】
上記測定装置の上記1つ以上の第2プロセッサは、遠隔にあるコンピュータと通信するためのプログラムを更に実行する請求項1から4のいずれかの試験測定システム。
【請求項6】
上記測定装置の上記1つ以上の第2プロセッサが、特性測定出力データを生成するプログラムを更に実行する請求項1から5のいずれかの試験測定システム。
【請求項7】
静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法であって、
測定装置のユーザ・インタフェースを介して、1つ以上の被試験デバイス(DUT)の静的特性測定及び動的特性測定のどちらかを選択するユーザ入力を受ける処理と、
上記測定装置と電力供給装置との間の接続部を介して、上記ユーザ入力を送信する処理と、
上記電力供給装置で上記ユーザ入力を受信する処理と、
上記1つ以上のDUTの静的又は動的ないずれかの特性測定を実行するために、上記電力供給装置から上記1つ以上のDUTに供給する信号を制御する処理と、
上記特性測定で得られる出力データを測定装置に送信する処理と
を具える静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法。
【請求項8】
1つ以上のDUTの温度を監視する処理を更に具える請求項7の静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法。
【請求項9】
1つ以上のDUTの中から特性を測定するDUTを選択する指示を含む上記ユーザ入力を上記ユーザ・インタフェースを介して受信する処理と、上記ユーザ入力を接続部を介して上記電力供給装置へ送信する処理とを更に具える請求項7又は8の静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法。
【請求項10】
動的な特性測定を実行する処理が、1つ以上のDUTの中の1つに対してダブル・パルス試験シーケンスを実行する処理を有する請求項7から9のいずれかの静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法。
【請求項11】
1つ以上のDUTの静的な特性測定を実行する処理が、1つ以上のDUTの中の1つに信号を印可して、1つ以上の電流電圧曲線を出力する処理を有する請求項7から10のいずれかの静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、試験測定システム及び特性測定プラットフォームを動作させる方法に関し、特に、デバイスの静的及び動的特性測定の両方を実行するためのシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被試験デバイス(DUT)(例えば、シリコン・カーバイド(SiC:炭化ケイ素)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体デバイス)の特性の測定は、一般に、電流/電圧(I/V)曲線などの静的(スタティック)特性と、スイッチング・パラメータなどの動的(ダイナミック)特性の両方の測定を含むことがある。
【0003】
従来、被試験デバイス(DUT)の高電力特性の測定には、通常、静的特性測定プラットフォームが含まれる。図1は、このようなプラットフォーム10の例を示す。この例では、プラットフォームは、試験測定装置12、DUTが接続されている試験フィクスチャ(fixture:取付具)14及びパワー・エクスパンダ16を含む。こうしたタイプのプラットフォームの例としては、米国キーサイト・テクノロジーズ社のB1505A型パワーデバイス・アナライザ/カーブトレーサなどがある(非特許文献1)。
【0004】
動的な電力特性測定を実行するのには、ユーザは、例えば、大規模なフロア・モデル・プラットフォームである米国キーサイト・テクノロジーズ社のPD1500型ダイナミック・パワー・デバイス・アナライザ/ダブル・パルス・テスター(非特許文献2)のような別個のプラットフォーム、又は、カスタマイズされたプラットフォームを必要とする。
【0005】
図2は、こうしたプラットフォーム20の例を示し、これは、図示したコンポーネントの一部又は全部を有していても良い。試験測定装置22は、実際には、オシロスコープ及びインピーダンス・アナライザなどのような試験測定装置を1つ以上含んでいても良い。試験測定装置22は、高電圧プローブ24によって被試験基板(被試験デバイス:DUT)26に接続される。被試験基板26には、ドライバ(駆動回路)基板28があっても良く、これは、通常、電源のオン・オフを安定的に切り替えて、できる限り電源を保護する。DC(直流)回路32は、直流リンク・コンデンサ、直流電圧電源及び負荷インダクタを含んでいても良い。電流トランスデューサ30と信号発生部34は、被試験基板26を試験できるように、被試験基板26に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-197099号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「B1505Aパワー・デバイス・アナライザ/カーブトレーサ」のデータ・シート、キーサイト・テクノロジー株式会社、[オンライン]、[2022年3月10日検索]、インターネット<https://www.keysight.com/jp/ja/assets/7018-02115/data-sheets/5990-3853.pdf>
【非特許文献2】「Keysight PD1500ダイナミック・パワー・デバイス・アナライザ/ダブル・パルス・テスター」のデータ・シート、キーサイト・テクノロジー株式会社、[オンライン]、[2022年3月14日検索]、インターネット<https://www.keysight.com/jp/ja/assets/7018-06616/data-sheets/5992-3942.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の静的特性測定では、専用の静的特性測定プラットフォームを使用する。また、DUTの従来の動的特性測定には、様々な測定プラットフォームが使用されており、場合によっては、カスタマイズした専用の動的特性測定プラットフォームが使用される。
【0009】
FETなどのようなパワー・デバイスでは、更に複雑な問題が生じることがある。これは、安全動作領域(SOA)の制約のため、パルス信号で特性の測定を行うからである。更に、これには、動的特性測定用に特殊な回路の使用ということも含まれる。
【0010】
このように、デバイスの静的又は動的な特性を測定するには、一般に、別々の大きな装置とフィクスチャ(取付装置)プラットフォームが必要である。
【0011】
本願にて開示される装置及び方法の実施形態は、こうした従来技術における欠点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の実施形態は、2つのコンポーネントを有する組み合わせ型の特性測定システムを提供する。その1つ目のコンポーネントは、オシロスコープ、インピーダンス・アナライザ、これら両方の組み合わせ、又は、他の多種多様な試験測定装置の中の1つ以上であって、インタラクティブな試験測定装置である。簡単のため、本願の説明では、このコンポーネントを試験測定装置と呼ぶことにする。もう一つのコンポーネントは、被試験基板を取り付けるためのDUTインタフェースを有する電力供給及び測定フロント・エンドであり、これを、本願の説明では、フィクスチャとも呼ぶ。本願の実施形態は、大まかに言って、これら2つの別々のコンポーネントを含むが、その反面、これらは、1つのハウジング内に取り付けることもできる。
【0013】
なお、本願で言う「高電圧」という用語は、42ボルト以上の任意の電圧のことを指している。
【0014】
本願の実施形態は、2つの目的を持つ特性測定プラットフォームを提供するもので、いくつかの利点がある。2つのコンポーネントを含む全体でシステムを構成し、このシステムは、1人で運搬が可能である。フィクスチャは、安全のために全ての高圧回路を囲み、更に、インターロックがあり、これは、システムの欠陥によって生じる可能性のある高電圧システムの不適切な動作を防止する。このシステムでは、ユーザは、フィクスチャにDUTを置くだけであるので、セットアップが簡単である。2つのコンポーネントは、1本のケーブルでシンプルに接続されるので、システムを再配線する必要はない。測定機器構成の自動切り替えにより、ユーザは、試験に関して必要な全てのパラメータを取得できる。装置には、更に、加熱装置や冷却装置、デバイスが破損する場合を想定したデバイスの周囲の保護バリアがあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、専用の静的特性測定プラットフォームの例を示す。
図2図2は、専用の動的特性測定プラットフォームの例を示す。
図3図3は、統一測定システムの実施形態を示す。
図4図4は、特性測定回路の実施形態を示す。
図5図5は、静的及び動的特性測定の両方に適応可能な回路の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3は、プラットフォームと呼ぶこともある試験測定システムの実施形態を示し、オシロスコープその他の試験測定装置などの試験測定装置40を有する。説明を簡単にするため、装置40を単に測定装置と呼ぶこともある。システムのその他の部分は、静的及び動的な電力供給及び測定装置50であり、説明を簡単にするため、以下では、電力供給装置とも呼ぶ。これらの用語は、どちらの装置の機能も限定することを意図したものではないので、そのように限定して解釈すべきではない。
【0017】
測定装置40は、ユーザが様々なメニューをインタラクティブに操作可能なユーザ・インタフェース44を含む、多種多様なコンポーネントを有しても良い。ユーザは、ユーザ・インタフェース44により、タッチスクリーンや様々なボタンやノブを備えたディスプレイを介して、実行する試験を選択したり、パラメータを設定したりするなど、様々なことを行うことができる。測定装置40には、1つ以上のプロセッサ46があり、これは、ユーザからの入力を受けてパラメータやその他の選択の指示等を測定装置に送信すると共に、電力供給装置50からの出力信号を受信して、そのデータからユーザのための出力を生成できる。また、パーソナル・コンピューティング・デバイスやスマートフォンなどのコンピューティング・デバイスなどのリモート・デバイス(遠隔に配置されたデバイス)42は、測定装置40又は電力供給装置50を介して試験及び測定プラットフォームにアクセスし、遠隔から操作できる。本願で用いられる用語「プロセッサ」は、命令を受けて、アクションを実行できる任意の電子コンポーネントを意味し、例えば、マイクロコントローラ・フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)などであっても良く、以下で更に詳しく説明する。
【0018】
測定装置40は、ケーブルその他の直接的な接続部48を介して電力供給装置50と互いに通信(交信)する。2つの装置40及び50と、ケーブル48は、1人の個人がポータブルに運搬できるように構成されている。ケーブル48は、接続回路を介して、これら装置40及び50を互いに接続するが、この接続回路により、ケーブル48を再接続することなしに、これら装置40及び50の機器構成(configurations:環境設定)を切り替えることができる。
【0019】
電力供給装置50は、更に、複数の異なる要素を有していても良い。これらとしては、例えば、52のような1つ以上のプロセッサと、被試験デバイス(DUT)に高電圧を提供する高電圧回路56と、高電圧回路56を保護するよう機能するインターロック54とを含んでもよい。インターロック54は、高電圧回路56によって生成される高電圧に起因するデバイスや装置の破損又は危険な状態を防ぐように設計されている。DUTは、DUTインタフェース58にマウントされるが、これには、DUTをマウントするユニバーサルDUTインタフェースがあり、これによって、DUTを電力供給装置50内の種々のコンポーネントに接続できる。
【0020】
高電圧回路56とDUTの動作は、熱を発生させる場合があり、また、DUTは、動作するのに特定の温度範囲にあることを必要とする場合がある。この電力供給装置50は、DUTの温度を制御する温度制御回路62を有していても良い。温度制御回路62は、ファン、切り替え可能なヒートシンク、冷却システム、ヒーター(加熱装置)などを有していても良く、1つ以上のプロセッサ52は、温度を監視して、温度制御回路62を動作させる。電力供給装置50は、また、1つ以上のDUTが破損した場合にDUTを保護するバリア64を有していても良い。電力供給装置50は、更に、スイッチング回路60を有していても良い。
【0021】
動作時、ユーザは、ユーザ・インタフェースを介して、遠隔から又は直接的に入力して、デバイスの静的(スタティック)特性を測定するか又は動的な(ダイナミック)特性を測定するかを選択する。動的特性の測定は、図4に示す実施形態のようなハーフ・ブリッジ回路を用いて達成されても良い。ここで、動的特性測定を行う方法の1つは、ダブル・パルス方式と呼ばれ、この形式の回路を使用する。動作時、下側(bottom、略して、bot)のデバイス(DUT_bot)が、インダクタ(Test_L)を介して所望の電流を得るためにオンにされる。続いて、下側のデバイス(DUT_bot)がオフになり、上側のデバイス(DUT_top)がオンになる。これによって、インダクタ(Test_L)からのインダクタ電流が循環する。これに代えて、もし1つのDUTのみを試験する場合には、上側のデバイスをダイオードに置き換えても良い。回路特性に応じて指定した時間が経過すると、上側のデバイスはオフになり、下側のデバイスはオンになる。所望のデータは、デバイスの両方向の遷移の間に収集されて、エネルギー損失が計算されても良い。この同じプラットフォームは、デバイスを介した電圧と電流の制御に応じて、静的パラメータを抽出するために使用できる。なお、図中、「srcB」は、ソース(信号源)Bを意味する。DC_adjustableは、出力電圧を可変できる直流電圧源である。
【0022】
上側のDUTをダイオード又は短絡(ショート)に置き換えると、下側のデバイスのゲート制御が可能になり、結果として、静的な電流電圧(I/V)曲線の抽出が可能になる。上側のDUTを利用可能にすると、静的データを抽出する追加の方法を利用できる。こうした方法には、下側DUTにおいて、ゲート/ドレインの電位を独立してパルスとして変動させる処理を含んでも良い。そうするために、システムは、下側DUTのゲート電圧を制御することで、デバイスの伝達特性を適切に測定できるようにする。デバイスの静的なI/V特性の測定では、インダクタ(Test_L)は必要ないが、その存在によって、同じ回路で静的特性測定及び動的特性測定の両方の実行が可能となる。もし回路内に上側及び下側の両方のDUTが存在し、かつ、これらが同じ形式のデバイスである場合、最大電力の構成は、これら2つのデバイス間で分割される。いずれかのデバイスのフル・パワーでの試験が必要な場合には、もう一方のデバイスを、短絡(ショート)に置き換えることになろう。
【0023】
図5は、上側デバイス(DUT_top)と下側デバイス(DUT_bot)の間での選択を可能にするスイッチSW1を含むハーフ・ブリッジ・スイッチング回路の実施形態を示す。選択の指示は、測定装置40のユーザ・インタフェース44を使って入力され、ケーブル48を通して電力供給装置50に送られて、電力供給装置50に入ってきても良い。スイッチSW1が追加されていて、もし両方のDUTが設置されている場合、これらDUTの両方ともに、静的及び動的な設定構成で特性を測定できる。図5に示すスイッチSW1の設定構成では、下側デバイス(DUT_bot)が選択される。動作中、ユーザは、図3に示す測定装置40のユーザ・インタフェース44により、静的特性測定又は動的特性測定を選択すると共に、1つ以上のDUTの中から1つを選択する。次いで、1つ以上のプロセッサ46が、これら選択の指示と、その他のパラメータを電力供給装置50に送信する。次いで、電力供給装置50内の1つ以上のプロセッサ52は、その回路に信号を提供し、もし使用されている場合は、スイッチSW1を設定する。
【0024】
この試験測定システムは、複数の設定や装置を使用する必要なく、特定の機器構成とするためにケーブルを再配線/再接続さえする必要なしに、静的特性測定と動的特性測定を組み合わせた機能を提供する。システムは、特性測定データを出力する。このデータは、測定装置のユーザ・インタフェース上に生成されても良いし、解析ソフトウェア・パッケージのファイル形式など、更に分析するためにファイルとして出力されても良い。これは、電力供給装置50又は測定装置40の1つ以上のプロセッサによって実現されても良い。
【0025】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0026】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0027】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Versatile Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0028】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0029】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0030】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。

実施例
【0031】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0032】
実施例1は、試験測定システムであって、
電力供給装置と、
測定装置と、
上記電力供給装置を上記測定装置に接続する接続部と
を具え、
上記電力供給装置は
1つ以上の被試験デバイス(DUT)への接続を可能にするインタフェースと、
プログラムを実行するよう構成される1つ以上の第1プロセッサと
を有し、
上記1つ以上の第1プロセッサは、上記プログラムが実行されると、上記1つ以上の第1プロセッサに、静的特性測定及び動的特性測定のどちらかを選択する命令を受けさせ、上記1つ以上のDUTの選択された上記静的特性測定又は上記動的特性測定のいずれかを実行させるよう上記電力供給装置を設定させる上記プログラムを実行するよう構成され、
上記測定装置は、
ユーザ・インタフェースと、
プログラムを実行するよう構成される1つ以上の第2プロセッサと
を有し、
上記1つ以上の第2プロセッサは、上記プログラムが実行されると、上記1つ以上の第2プロセッサに、上記ユーザ・インタフェースを通して、少なくとも静的特性測定と動的特性測定のどちらかの選択の指示を含むユーザ入力を受けさせ、
上記静的特性測定と上記動的特性測定のどちらかを選択する命令を上記電力供給装置に送信させる上記プログラムを実行するよう構成される。
【0033】
実施例2は、実施例1の試験測定システムであって、上記電力供給装置は、上記インタフェースに接続された高電圧回路を更に有し、1つ以上のDUTに電力を供給する。
【0034】
実施例3は、実施例2の試験測定システムであって、上記電力供給装置は、上記高電圧回路に接続されたインターロックを更に有する。
【0035】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定システムであって、電力供給装置は、DUTの温度を制御する温度制御装置を更に有する。
【0036】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの試験測定システムであって、1つ以上のDUTの周囲に保護バリアを含む。
【0037】
実施例6は、実施例1から5のいずれかの試験測定システムであって、上記測定装置の上記1つ以上の第2プロセッサは、遠隔にあるコンピュータと通信するためのプログラムを更に実行する。
【0038】
実施例7は、実施例1から6のいずれかの試験測定システムであって、上記測定装置の上記1つ以上の第2プロセッサが、特性測定出力データを生成するプログラムを更に実行する。
【0039】
実施例8は、実施例7の試験測定システムであって、上記測定装置の上記1つ以上の第2プロセッサが、解析ソフトウェア・パッケージ用に構成された形式で上記特性測定出力データを生成するプログラムを更に実行する。
【0040】
実施例9は、実施例7の試験測定システムであって、上記特性測定出力データには、静的特性測定出力データ又は動的特性測定出力データが含まれる。
【0041】
実施例10は、実施例1から8のいずれかの試験測定システムであって、上記電力供給装置は、1つ以上のDUTの中の1つを選択するスイッチング回路を更に有している。
【0042】
実施例11は、実施例10の試験測定システムであって、上記測定装置の上記1つ以上の第2プロセッサが、複数のDUTの中から特性を測定する1つのDUTを指定するユーザ入力を受け、該ユーザ入力を上記電力供給装置に送るプログラムを実行するように更に構成される。
【0043】
実施例12は、静的及び動的デバイス特性測定プラットフォームを動作させる方法であって、
測定装置のユーザ・インタフェースを介して、1つ以上の被試験デバイス(DUT)の静的特性測定及び動的特性測定のどちらかを選択するユーザ入力を受ける処理と、
上記測定装置と電力供給装置との間の接続部を介して、上記ユーザ入力を送信する処理と、
上記電力供給装置で上記ユーザ入力を受信する処理と、
上記1つ以上のDUTの静的又は動的ないずれかの特性測定を実行するために、上記電力供給装置から上記1つ以上のDUTに供給する信号を制御する処理と、
上記特性測定で得られる出力データを測定装置に送信する処理と
を具えている。
【0044】
実施例13は、実施例12の方法であって、1つ以上のDUTの温度を監視する処理を更に具えている。
【0045】
実施例14は、実施例12の方法であって、1つ以上のDUTの温度を管理する温度制御装置を動作させる処理を更に具えている。
【0046】
実施例15は、実施例12から14のいずれかの方法であって、1つ以上のDUTの中から特性を測定するDUTを選択する指示を含む上記ユーザ入力をユーザ・インタフェースを介して受信する処理と、上記ユーザ入力を接続部を介して上記電力供給装置へ送信する処理とを更に具える。
【0047】
実施例16は、実施例15の方法であって、1つ以上のDUTの中の1つを選択するスイッチを上記電力供給装置内に設定する処理を更に具えている。
【0048】
実施例17は、実施例12から16のいずれかの方法であって、静的又は動的ないずれかの特性測定を実行するために1つ以上のDUTに供給する信号を制御する処理が、1つ以上のDUTの動的な特性測定を実行する処理を具えている。
【0049】
実施例18は、実施例17の方法であって、動的な特性測定を実行する処理が、1つ以上のDUTの中の1つに対してダブル・パルス試験シーケンスを実行する処理を有している。
【0050】
実施例19は、実施例12から18のいずれかの方法であって、静的又は動的ないずれかの特性測定を実行するために1つ以上のDUTに供給する信号を制御する処理が、1つ以上のDUTの静的な特性測定を実行する処理を具えている。
【0051】
実施例20は、実施例19の方法であって、1つ以上のDUTの静的な特性測定を実行する処理が、1つ以上のDUTの中の1つに信号を印可して、1つ以上の電流電圧曲線を出力する処理を有している。
【0052】
特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される全ての特徴と、開示される全ての方法又は処理における全ての工程は、互いに少なくとも一部分が排他的でない限り、任意に組み合わせても良い。特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される特徴の夫々は、特に明記されていない限り、同じ、等価又は類似の目的に寄与する代替の特徴で置き換えても良い。
【0053】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0054】
40 試験測定装置
42 リモート・デバイス
44 ユーザ・インタフェース
46 プロセッサ
48 ケーブル(接続部)
50 電力供給及び測定フロント・エンド
52 プロセッサ
54 インターロック
56 高電圧回路
58 DUTインタフェース
60 スイッチング回路
62 温度制御回路
64 DUT保護バリア
図1
図2
図3
図4
図5