(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141626
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】セキュリティインク用のAlNICO系磁性粒子
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20220921BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20220921BHJP
B22F 1/17 20220101ALI20220921BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20220921BHJP
B22F 1/105 20220101ALI20220921BHJP
B22F 1/107 20220101ALI20220921BHJP
H01F 1/06 20060101ALI20220921BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20220921BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20220921BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20220921BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
B22F1/00 W
B22F1/05
B22F1/17 100
B22F9/08 A
B22F1/105
B22F1/107
H01F1/06 110
C09C3/06
C09C1/40
C09D11/00
C22C38/00 303B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091998
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2020527767の分割
【原出願日】2018-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2017-0154199
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514157489
【氏名又は名称】コリア ミンティング,セキュリティ プリンティング アンド アイディー カード オペレーティング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA MINTING,SECURITY PRINTING & ID CARD OPERATING CORP.
【住所又は居所原語表記】80-67,Gwahak-ro Yuseong-gu Daejeon Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チョー, ウォン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ス ドン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ホン キオン
(72)【発明者】
【氏名】カン, ジュ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム, イー デン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】向上したセキュリティを有するAlNiCo系磁性粒子を提供する。
【解決手段】AlNiCo系磁性粒子は、Al、NiおよびCoを含有するコア粒子と、前記コア粒子を包む無機シェルとを含む硬磁性粒子であって、前記コア粒子は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であるD
50が12μm以下である超微細粒子であり、前記コア粒子は、下記式1、式2および式3の組成均一性を有する。式1:10≦UNF(Al)、式2:10≦UNF(Ni)、式3:10≦UNF(Co)。式1中、UNF(Al)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Al組成をAl組成の標準偏差で除した値であり、式2中、UNF(Ni)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Ni組成をNi組成の標準偏差で除した値であり、式3中、UNF(Co)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Co組成をCo組成の標準偏差で除した値である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、NiおよびCoを含有するコア粒子と、前記コア粒子を包む無機シェルとを含む硬磁性粒子であって、
前記コア粒子は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であるD
50が3μm~12μm以下である超微細粒子であり、
前記コア粒子は、少なくとも水を含有する冷媒を用いたアトマイジング法により製造され、アトマイジング時に使用されるAl、NiおよびCoを含有する合金溶湯の組成である設計組成を基準として下記式4、式5および式6を満たす組成を有し、
前記無機シェルは、銀シェルを含み、前記銀シェルは、下記式9および式10を満たし、900nm波長を基準として60%以上の赤外線反射率を有する、AlNiCo系磁性粒子。
【数1】
【数2】
【数3】
(式4~式6中、C
m(Al)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Al組成であり、C
O(Al)は、重量%組成を基準とし、設計組成のAl組成であり、C
m(Ni)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Ni組成であり、C
O(Ni)は、重量%組成を基準とし、設計組成のNi組成であり、C
m(Co)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Co組成であり、C
O(Co)は、重量%組成を基準とし、設計組成のCo組成である。)
式9:50nm≦t
m≦100nm
式10:σ
t≦30nm
(式9中、t
mは、銀シェルの平均厚さであり、式10中、σ
tは、銀シェル厚さの標準偏差である。)
【請求項2】
前記コア粒子は、さらに、下記式8を満たす、請求項1に記載のAlNiCo系磁性粒子。
式8:10μm≦D90≦20μm
(式8中、D90は、コア粒子の粒径累積分布で90%に相当する粒子径である。)
【請求項3】
前記無機シェルは、前記銀シェルの下部に位置する誘電体シェルをさらに含み、
前記誘電体シェルの誘電体は、酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、フッ化マグネシウムおよび硫化亜鉛から選択される一つまたは二つ以上である、請求項1に記載のAlNiCo系磁性粒子。
【請求項4】
前記磁性粒子の飽和磁化(Ms)は50~150emu/gであり、残留磁化(Mr)は10~40emu/gである、請求項1に記載のAlNiCo系磁性粒子。
【請求項5】
前記磁性粒子の保磁力は、100~500Oeである、請求項1に記載のAlNiCo系磁性粒子。
【請求項6】
前記コア粒子に含まれるCu、Ti、FeおよびSiから選択される1種以上の元素を第四元素とし、
前記コア粒子は、重量%である組成を基準とし、コア粒子間の平均第四元素の組成を第四元素の組成の標準偏差で除した値が15以上である、請求項1に記載のAlNiCo系磁性粒子。
【請求項7】
請求項1に記載のAlNiCo系磁性粒子を含む、セキュリティインク。
【請求項8】
請求項1に記載のAlNiCo系磁性粒子を含む、有価証書。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティインク用のAlNiCo系磁性粒子およびこれを含むセキュリティインクに関し、詳細には、磁性粒子が、予め設計された値による優れた組成均一性を有することで、均一な硬磁性特性および向上したセキュリティを有することができるセキュリティインク用のAlNiCo系磁性粒子およびこれを含むセキュリティインクに関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ物質は、偽・変造の防止が必要な領域において必須と言える。一例として、セキュリティ印刷分野においては、小切手、切手、商品券、証紙、債券などの有価証書にセキュリティ物質が使用されている。
【0003】
現在、セキュリティ物質として、磁性体に無機物をコーティングして形成されたコアシェル構造の磁性粒子が知られており、磁性体の暗い色を明るくするために無機物をコーティングするか、磁性粒子の機械的物性を向上するために他種の無機物をさらにコーティングすることが知られている(特許文献1)。
【0004】
最近、セキュリティ物質を用いたセキュリティ製品のセキュリティを極大化するための研究が行われている。その研究の初歩として、磁性粒子の保磁力と磁化密度が特定の領域内に位置するようにする方法として、より詳細に、保磁力が相対的に大きい強磁性粒子と保磁力が相対的に小さい軟磁性粒子とを混入して、特定の形状やパターンに形成する場合、セキュリティ製品のセキュリティを極大化する可能性が示されている。
【0005】
しかし、高度に発展する測定装備の進化に伴い、セキュリティ物質が単純なパターンを有するか、混入された磁性粒子の保磁力の差が大きすぎると、一般的な装備から認識しやすくなり得るため、セキュリティ物質が、高価の高分解能認識装備(以下、「高価の認識装備」と称する)にのみ認識されるように、特定のウィンドウの保磁力と磁化密度を有するようにする必要がある。
【0006】
しかし、既存の磁性粒子は、かかる問題の解決に、以下のような問題が依然として存在する。1)仮に、磁性粒子の磁化密度が大きすぎるか小さすぎる場合、高価の認識装備が磁性粒子の固有の信号を測定する際に不都合が生じる。2)磁性粒子のサイズが大きすぎるか小さすぎる場合、磁性粒子は太陽光を効果的に反射し難いため、本来暗い色の磁性粒子を隠蔽することが困難となり、これによってそのセキュリティが急激に低下するだけでなく、セキュリティ印刷工程の際、印刷不良のような問題をもたらし得る。
【0007】
かかる問題を解決するための案として、i)相対的に小さいナノ粒子をバインダと凝集して製造する方法、ii)相対的に大きい粒子を所望のサイズに粉砕する方法が挙げられる。
【0008】
しかし、i)のバインダ凝集方法は、磁性粒子との凝集の際、バインダが膨潤する問題が生じ得るため、特定のサイズと特定の形状を有するセキュリティ用磁性粒子に製造することが困難である。
【0009】
ii)の粉砕方法は、i)のバインダ凝集方法に比べ、バインダが添加されないことから、保磁力、磁化密度、純度、コストなどの面で有利である。
【0010】
しかし、ii)の粉砕方法において、磁性粒子は、一般的にクラッシュ方法により製造されており、クラッシュ方法は、数マイクロ水準に粒度の調節が難しいものと自ら確認した。さらに、相対的に大きい保磁力を有する出発物質から始まった粉末は、サイズが小さくなるにつれて保磁力も大幅に減少する現象が発生した。
【0011】
かかる二つの方法の他に、特定のサイズで磁性粒子を製造する方法としてはアトマイジング法が知られている。アトマイジング法は、冷却媒体の種類に応じて、ガス噴霧法と、水噴射法と、混合噴霧法とに分けられる。一般的に、アトマイジング法は、合金の溶湯をノズルなどを介して冷却媒体の中に噴霧して、溶湯と冷却媒体を衝突させることで溶湯の液滴が冷却し、これにより、数十または数百μm程度の粒径を有する微細磁性粒子の製造が可能である。
【0012】
しかし、水噴霧プロセス(water atomization process)は、水(H2O)を主な冷却媒体として使用するため、製造する粉末の酸化の問題が大きい。
【0013】
また、ガス噴霧法は、冷却媒体として不活性ガス(N2、Ar、He)や空気(air)などを使用するため、粉末製造の際、酸化および不純物の混入の問題が少なく、高品質の粉末の製造が可能であるが、冷却効果が相対的に低くて製造過程中に微細偏析が生じる恐れがあり、特定の形状の磁性粒子の製造に技術的な不都合があり、その収率が5%内外と非常に低く、商業性が非常に劣るという問題がある。
【0014】
したがって、本出願人は、太陽光を効果的に反射して暗い色の磁性粒子を隠蔽することができ、強いセキュリティ要素として作動可能な磁性特性を有するとともに、印刷適性を有するAlNiCo系磁性粒子の製造技術を提供しており(特許文献2)、これに関する研究をより深度深く行ったところ、向上した収率を有し、且つセキュリティがより向上したAlNiCo系磁性粒子の製造技術を確立し、本発明を出願するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国出願公開特許第2013‐0072444号明細書
【特許文献2】韓国登録特許第1718505号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、向上したセキュリティを有するAlNiCo系磁性粒子を提供することを目的とする。
【0017】
詳細には、本発明は、高価の認識装備によって磁性粒子と常磁性粒子との区別を可能にする磁性特性を有し、明るい色を有し、優れた印刷適性を有し、且つ設計された組成および極めて均一な組成を有することで、微細線状のセキュリティパターンも安定して形成できるAlNiCo系磁性粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一様態によるAlNiCo系磁性粒子(I)は、Al、NiおよびCoを含有するコア粒子と、コア粒子を包む無機シェルとを含む硬磁性粒子であって、コア粒子は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であるD50が12μm以下である超微細粒子であり、コア粒子は、下記式1、式2および式3の組成均一性を有する。
式1:10≦UNF(Al)
式2:10≦UNF(Ni)
式3:10≦UNF(Co)
式1中、UNF(Al)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Al組成をAl組成の標準偏差で除した値であり、式2中、UNF(Ni)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Ni組成をNi組成の標準偏差で除した値であり、式3中、UNF(Co)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Co組成をCo組成の標準偏差で除した値である。
【0019】
本発明の他の一様態によるAlNiCo系磁性粒子(II)は、Al、NiおよびCoを含有するコア粒子と、コア粒子を包む無機シェルとを含む硬磁性粒子であって、コア粒子は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であるD
50が12μm以下である超微細粒子であり、コア粒子は、少なくとも水を含有する冷媒を用いたアトマイジング法により製造され、アトマイジング時に使用されるAl、NiおよびCoを含有する合金溶湯の組成である設計組成を基準として下記式4、式5および式6を満たす。
【数1】
【数2】
【数3】
式4~式6中、C
m(Al)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Al組成であり、C
O(Al)は、重量%組成を基準とし、設計組成のAl組成であり、Cm(Ni)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Ni組成であり、C
O(Ni)は、重量%組成を基準とし、設計組成のNi組成であり、C
m(Co)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Co組成であり、C
O(Co)は、重量%組成を基準とし、設計組成のCo組成である。
【0020】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、コア粒子は、さらに、下記式7および式8を満たすことができる。
式7:3μm≦D50≦12μm
式8:10μm≦D90≦20μm
式7中、D50は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であり、式8中、D90は、コア粒子の粒径累積分布で90%に相当する粒子径である。
【0021】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、無機シェルは、金属シェルを含み、金属シェルは、下記式9および式10を満たすことができる。
式9:50nm≦tm≦100nm
式10:σt≦30nm
式9中、tmは、金属シェルの平均厚さであり、式10中、σtは、金属シェル厚さの標準偏差である。
【0022】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、無機シェルは、金属シェルの下部または上部に位置する誘電体シェルをさらに含むことができる。
【0023】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、磁性粒子の飽和磁化(Ms)は50~150emu/gであり、残留磁化(Mr)は10~40emu/gであってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、磁性粒子の保磁力は、100~500Oeであってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、コア粒子は、Cu、Ti、FeおよびSiから選択される1種または2種以上の第四元素をさらに含むことができる。
【0026】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、コア粒子は、重量%である組成を基準とし、コア粒子間の平均第四元素の組成を第四元素の組成の標準偏差で除した値が10以上であってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)において、コア粒子は、Ti、FeおよびCuをさらに含有し、重量%を基準とし、Al4~12%、Ni10~20%、Co15~25%、Ti1~10%、Cu0.5~5%、残部のFeおよびその他の不可避的不純物を含むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子(I、II)は900nm波長において60%以上の赤外線反射率を有することができる。
【0029】
本発明は、上述のAlNiCo系磁性粒子(I、II)を含むセキュリティインクを含む。
【0030】
本発明は、上述のAlNiCo系磁性粒子(I、II)を含む有価証書を含む。
【発明の効果】
【0031】
本発明によるセキュリティ用のAlNiCo系磁性粒子は、D50が12μm以下である超微細粒子であるとともに、厳密に設計された組成を有することで、向上したセキュリティを有することができる。
【0032】
本発明によるセキュリティ用のAlNiCo系磁性粒子は、D50が12μm以下である超微細粒子であるとともに、組成バラツキが著しく小さいことから、粒子ごとに均一な磁性特性を有することができ、高度の形状を有するセキュリティ要素を実現することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子は、暗い色の磁性粒子を隠蔽できる淡色特性を有し、高価の認識装備だけで硬磁性体と区別して認識可能な強化したセキュリティを有し、印刷適性を有することで、従来のインクを用いたセキュリティ要素の製造方法を高度の変更なく、そのまま活用できるという利点がある。
【0034】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子は、著しく向上した赤外線反射能を有することで、硬磁性粒子との区別が難しい磁性特性、赤外線反射特性、高度の形状化など、互いに相違する独立的要素によって多重セキュリティが可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態により製造されたAlNiCo系磁性粒子を観察した走査電子顕微鏡写真である。
【
図2】本発明の一実施形態により製造されたAlNiCo系磁性粒子の断面を観察した走査電子顕微鏡写真および銀シェルの厚さ分布を測定し図示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態により製造されたAlNiCo系磁性粒子を含有するセキュリティインクと一般軟磁性粒子を含むセキュリティインクで形成されたセキュリティ要素を観察した光学画像、軟磁性画像、硬磁性画像および赤外線画像を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のAlNiCo系磁性粒子について詳細に説明する。この際、使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0037】
本出願人は、マイクロメータオーダのサイズを有する微細AlNiCo系硬磁性粒子を用いて有価証書にセキュリティ要素を実際に製造する過程で、微細線状にセキュリティ要素を設計する場合、高価の認識装備でも常磁性粒子ベースのセキュリティ要素と再現性を持って分別認識されないか、またはこれと共に、設計されたセキュリティ要素の形態が再現性を持って認識されないことを確認した。かかる問題を解決するために研究を重ねた結果、微細線状のセキュリティ要素を安定して実現するためには、AlNiCo系磁性粒子間の均一な組成特性が必須である。すなわち、製造される磁性粒子間の組成バラツキを抑制することが必須であることを確認した。均一な組成特性の確保のために長期間継続して研究を行った結果、従来のガス噴射法(冷却媒体としてガスを用いるアトマイジング法)では遅い冷却速度によってアルミニウムリッチ相や鉄リッチ相などを誘発する偏析を防止できないという限界があり、冷却媒体として水を用いて迅速な冷却を誘導し、冷却過程中に、酸化しやすい元素(一例として、Al、Tiなど)の酸化を防止したときに組成バラツキが抑制されて均一な磁性特性を有し、設計された組成と実質的に同一の組成の粒子が製造されることを見出し、本発明を出願するに至った。
【0038】
したがって、本発明は、粒子間の組成バラツキが抑制された磁性粒子(I)である一様態を含み、設計された組成、すなわち、アトマイジングの際に使用された溶湯の組成と実質的に同一の組成の磁性粒子(II)である他の一様態を含む。本発明を詳述するにあたり、特に一つの様態を限定して述べない限り、詳述したすべての内容は、いずれも、一様態(磁性粒子(I))および他の一様態(磁性粒子(II))に相当する。
【0039】
本発明を詳述するにあたり、AlNiCo系は、Al、NiおよびCoを含有する合金を意味し得、AlNiCo系磁性粒子は、Al、NiおよびCoを含有する硬磁性合金粒子を意味し得、有価証書のセキュリティに使用されるセキュリティ用磁性粒子を意味し得る。硬磁性粒子は、磁化し難いものの、一度磁化すると、脱磁が難しく、軟磁性粒子よりも保磁力(Hc)と残留磁化密度(Mr)が高いものを意味する。AlNiCo系磁性粒子において、硬磁性は、保磁力が100~500Oeである磁性特性を意味し得る。反面、軟磁性粒子は、比較的弱い磁場によって磁化しやすいものを意味し、外部磁場が除去されると、磁化は、時間が経つにつれて急激に無くなるものを意味する。軟磁性は、保磁力が10~90Oeである磁性特性を意味し得る。
【0040】
本発明を詳述するにあたり、水系アトマイジング法は、合金の溶湯をノズルなどを介して噴射するときに、水を含む冷却媒体を使用する工程または製造方法を意味し得る。この際、水系アトマイジング法は、水のみを冷却媒体として使用する方法に限定して解釈してはならず、水とガス(一例として、N2、Ar、He、Neなどの不活性ガス)を同時に冷却媒体として使用する場合も含むものと解釈しなければならない。
【0041】
本発明を詳述するにあたり、AlNiCo系磁性粒子は、磁性粒子群、すなわち、個別磁性粒子の集合体を意味し得、磁性粒子が凝集された凝集体または、コア粒子が凝集された凝集体が排除された互いに独立した個別磁性粒子の集団を意味し得る。この際、「群」の意味は、少なくても「群」をなす磁性粒子の数によって平均磁性特性などが変化しない程度の数以上を意味する。すなわち、磁性粒子群の磁性特性が一定に現れ得る程度のサイズ(数)以上の磁性粒子からなる集団を意味し得る。他の意味で、「群」は、信頼性のある平均サイズ、平均組成および分散値が得られる程度のサイズを有する粒子集団を意味し得る。上述の面で、AlNiCo系磁性粒子は、磁性粒子が少なくとも50個以上、具体的には少なくとも100個以上、より具体的には少なくとも300個以上、さらに具体的には少なくとも500個以上、さらに具体的には少なくとも1000個以上の集団を意味し得る。製造方法的に、AlNiCo系磁性粒子は、水を含む冷媒を用いて設計された組成を有するAlNiCo系合金溶湯のアトマイジングによって一体に取得される、すなわち、単一の水系噴射法で一体に取得される粒子(ら)をコア粒子として製造された磁性粒子(ら)の群を意味し得る。
【0042】
本発明の一様態によるAl系磁性粒子(I)は、磁性粒子間の組成バラツキが抑制された磁性粒子であって、詳細には、本発明によるAlNiCo系磁性粒子(I)は、Al、NiおよびCoを含有するコア粒子と、コア粒子を包む無機シェルとを含む硬磁性粒子であって、コア粒子は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であるD50が12μm以下である超微細粒子であり、コア粒子は、下記式1、式2および式3の組成均一性を有する。
式1:10≦UNF(Al)
式2:10≦UNF(Ni)
式3:10≦UNF(Co)
式1中、UNF(Al)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Al組成をAl組成の標準偏差で除した値であり、式2中、UNF(Ni)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Ni組成をNi組成の標準偏差で除した値であり、式3中、UNF(Co)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Co組成をCo組成の標準偏差で除した値である。
【0043】
すなわち、UNF(Al)は、コア粒子の全重量を100%とした重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Al組成(平均Al重量%)をAl組成の標準偏差(コア粒子間Al重量%の標準偏差)で除した値であり、UNF(Ni)は、コア粒子の全重量を100%とした重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Ni組成(平均Ni重量%)をNi組成の標準偏差(コア粒子間Ni重量%の標準偏差)で除した値であり、UNF(Co)は、コア粒子の全重量を100%とした重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Co組成(平均Co重量%)をCo組成の標準偏差(コア粒子間Co重量%の標準偏差)で除した値である。
【0044】
上述のように、磁性粒子は、磁性粒子群を意味し得、式1、式2および式3中、コア粒子の平均Al組成(またはNi組成またはCo組成)は、磁性粒子群をなす磁性粒子のコア粒子それぞれの重量%基準Al含量であるAl組成(またはNi組成またはCo組成)の平均値を意味し得、Al組成の標準偏差(またはNi組成の標準偏差またはCo組成の標準偏差)は、磁性粒子群をなす磁性粒子のコア粒子それぞれのAl組成(またはNi組成またはCo組成)での標準偏差を意味し得ることは言うまでもない。また、ある任意の元素のUNFにおいて、組成の均一性の大きくなるほどUNFが増加するため、UNFの上限を限定することは無意味であるが、実質的に、UNFの上限は200に至ることができる。
【0045】
式1、式2および式3を満たすAlNiCo系磁性粒子の組成均一性は、従来知られているガス噴霧プロセスおよび水による酸化が発生する従来の水噴霧プロセスでは得られないAlNiCo系粒子の組成均一性であり、平均粒子が数マイクロメートル水準であり、一般的な認識装備では軟磁性粒子と区別できず、高価の認識装備によっては軟磁性粒子と区別検出できる硬磁性特性を有するAlNiCo系磁性粒子では報告されたことのない組成均一性である。
【0046】
上述のように、本発明によるAlNiCo系磁性粒子は、コア粒子がD50が12μm以下である超微細粒子であるとともに、AlNiCo系磁性粒子の磁性均一性を決定する主な因子である組成均一性が式1、式2および式3を満たす、著しく低い組成バラツキを有する磁性粒子集合体であることを特徴とし、これにより、微細線状にセキュリティ要素が設計される場合にも、高価の認識装備によってセキュリティ要素が設計された形状が損なわれず安定して再現性を持って認識可能であり、微細線状のセキュリティ要素が常磁性粒子ベースのセキュリティ要素と混在して位置する場合にも安定して区別/認識されることで、セキュリティを著しく向上させることができる。より特徴的で有利な一例によるAlNiCo系磁性粒子は、11以上のUNF(Al)、40以上のUNF(Ni)および30以上のUNF(Co)を満たすことができる。かかる高度の組成均一性により、AlNiCo系磁性粒子は、高度で均一な磁性特性を示すことができる。
【0047】
上述の一様態とともに、または上述の一様態とは独立して、本発明の他の様態による磁性粒子は、設計された組成、すなわち、アトマイジング時に使用された溶湯の組成と実質的に同一の組成の磁性粒子(II)である。具体的には、本発明の他の一様態による磁性粒子(II)は、Al、NiおよびCoを含有するコア粒子と、コア粒子を包む無機シェルとを含む硬磁性粒子であって、コア粒子は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であるD50が12μm以下である超微細粒子であり、コア粒子は、少なくとも水を含有する冷媒を用いたアトマイジング法により製造され、アトマイジング時に使用されるAl、NiおよびCoを含有する合金溶湯の組成である設計組成を基準とし、下記式4、式5および式6を満たす。
【0048】
【0049】
式4中、Cm(Al)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Al組成であり、CO(Al)は、重量%組成を基準とし、設計組成のAl組成であり、Cm(Ni)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Ni組成であり、CO(Ni)は、重量%組成を基準とし、設計組成のNi組成であり、Cm(Co)は、重量%組成を基準とし、コア粒子間の平均Co組成であり、CO(Co)は、重量%組成を基準とし、設計組成のCo組成である。すなわち、式4中、Cm(Al)は、式1に関する上述の平均Al組成に相当し、式5中、Cm(Ni)は、式2に関する上述の平均Ni組成に相当し、式6中、Cm(Co)は、式3で定義した平均Co組成に相当する。また、CO(Al)は、アトマイジングに使用されるAlNiCo系合金溶湯に含有されたAl重量%であってもよく、CO(Ni)は、アトマイジングに使用されるAlNiCo系合金溶湯に含有されたNi重量%であってもよく、CO(Co)は、アトマイジングに使用されるAlNiCo系合金溶湯に含有されたCo重量%であってもよい。この際、組成均一性を向上させるために、合金溶湯は、予め定められた組成によって合金をなす金属粉末を不活性雰囲気で溶融および凝固してインゴットを製造した後、製造されたインゴットを不活性雰囲気で溶融することが有利である。かかる有利な一例の場合、合金溶湯の組成である設計組成は、インゴットの製造のために合金をなす金属粉末の混合物基準の組成であってもよい。しかし、設計組成をかかる原料金属粉末の混合物基準組成にのみ限定して解釈してはならず、インゴット自体の組成を意味しても、またはアトマイジングのために溶融されたインゴット(合金溶湯)自体の組成を意味してもよいことは言うまでもない。
【0050】
関係式4、5、および6のように、本発明によるAlNiCo系磁性粒子は、磁性特性を決定するコア粒子の組成が設計された組成と実質的に同様であり、設計組成からのバラツキが抑制された磁性粒子であることを特徴とする。
【0051】
製造方法的に、不活性雰囲気下でインゴットおよび溶湯の製造が行われるとともに、溶湯の噴霧時に水系冷媒(水を含む冷媒)によって迅速に冷却して偏析を防止し、且つ水系冷媒に含有された酸化防止剤によって噴霧過程で酸化による組成の変化、特に、Alのように酸化性が強い元素の酸化による粒子間組成の変化を防止する場合にはじめて、関係式4、式5および式6を満たす、設計組成と実質的に同一の組成を有するコア粒子が製造可能であり、さらに、関係式1、2、および3を満たす組成均一性が確保可能である。
【0052】
設計組成からバラツキおよび粒子間の組成バラツキの二つの面で、本発明による磁性粒子は、上述の二つの様態を含むことができるが、この二つの様態が互いに独立したものとだけ解釈してはならず、本発明は、第1様態および第2様態にいずれも属する磁性粒子を含むものと解釈すべきことは言うまでもない。
【0053】
すなわち、本発明の一例による磁性粒子は、Al、NiおよびCoを含有するコア粒子と、コア粒子を包む無機シェルとを含む硬磁性粒子であって、コア粒子は、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であるD50が12μm以下である超微細粒子であり、コア粒子は、上述の式1、式2および式3の組成均一性を有し、コア粒子は、少なくとも水を含有する冷媒を用いるアトマイジング法により製造され、コア粒子は、アトマイジング時に使用されるAl、NiおよびCoを含有する合金溶湯の組成である設計組成を基準として上述の式4、式5および式6を満たす組成を有することができる。
【0054】
コア粒子は、保磁力、飽和磁化、および残留磁化に優れたAl(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、およびCo(コバルト)を含む合金であれば十分である。具体的な一例として、コア粒子は、Fe、Cu、TiおよびSiから選択される1種または2種以上の第四元素と、その他の不可避的不純物とを含むことができる。具体的で実質的な一例として、コア粒子は、Al、NiおよびCoを含有し、Cu、SiおよびTiからなる群から選択される一つ以上の非鉄系と、Feを含む鉄系と、その他の不可避的不純物とを含むAlNiCo系合金であってもよい。
【0055】
Al、NiおよびCoの組成均一性と同様、AlNiCo系磁性粒子は、第四元素も極めて均一に含有することを特徴とする。詳細には、コア粒子は、重量%である組成を基準とし、コア粒子間の平均第四元素の組成(重量%基準平均含量)を第四元素の組成の標準偏差で除した値が10以上である組成均一性を有する。すなわち、UNF(第四元素)は10以上であってもよく、UNF(第四元素)は、重量%である組成を基準とし、コア粒子間の平均第四元素の組成(平均第四元素重量%)を第四元素の組成の標準偏差(第四元素重量%の標準偏差)で除した値であってもよく、第四元素が2種以上の元素の場合、2種以上の元素それぞれに対して、UNF(第四元素)が10以上であってもよい。この際、コア粒子間の平均第四元素の組成は、磁性粒子群をなす磁性粒子のコア粒子それぞれの第四元素の組成の平均値を意味し得、第四元素の組成の標準偏差は、磁性粒子群をなす磁性粒子のコア粒子それぞれの第四元素の組成での標準偏差を意味し得ることは言うまでもない。
【0056】
実質的な一例として、コア粒子は、Al、Ni、Coとともに、Ti、FeおよびCuをさらに含有してもよく、第四元素がTiであるUNF(Ti)、第四元素がFeであるNF(Fe)および第四元素がCuであるUNF(Cu)それぞれが10以上であってもよい。より実質的な一例として、UNF(Ti)は15以上であってもよく、UNF(Fe)は35以上であってもよく、UNF(Cu)は30以上であってもよい。
【0057】
すなわち、実質的で有利な一例において、コア粒子は、Al、Ni、Coとともに、Ti、FeおよびCuを含有してもよく、11以上のUNF(Al)、40以上のUNF(Ni)、30以上のUNF(Co)、15以上のUNF(Ti)、35以上のUNF(Fe)および30以上のUNF(Cu)を満たす高度の組成均一性を有することができる。
【0058】
実質的で有利な一例によるAlNiCo系磁性粒子において、コア粒子は、コア粒子の全重量を100%とした重量%を基準とし、Al4~12%、Ni10~20%、Co15~25%、Ti1~10%、Cu0.5~5%、残部のFeおよびその他の不可避的不純物を含むことができる。他の実質的で有利な一例によるAlNiCo系磁性粒子において、コア粒子は、コア粒子の全重量を100%とした重量%を基準とし、Al4~12%、Ni10~20%、Co15~25%、Ti1~10%、Cu0.5~5%、Si0.1~1%、残部のFeおよびその他の不可避的不純物を含むことができる。この際、コア粒子の組成は、磁性粒子群をなす磁性粒子のコア粒子それぞれに含有された一元素重量%を平均した平均重量%を意味し、一元素のUNF規定時に使用された平均一元素の組成に相当することができる。
【0059】
コア粒子は、4~12重量%、有利には5~10重量%、さらに有利には6~9重量%のAlを含有することができる。アルミニウムの含量がかかる組成範疇を満たす場合、偏析の解消および磁性特性の制御のための後続熱処理時に焼結防止効果が十分で、水噴霧法によって確保された微粒子の形状を維持することができ、コア粒子の機械的物性の低下を防止して有利であり、飽和磁化および残留磁化の特性を向上させることができて有利である。
【0060】
コア粒子は、10~20重量%、有利には12~18重量%、さらに有利には13~16重量%のNiを含有することができる。ニッケルの含量がかかる組成範疇を満たす場合、保磁力および残留磁化を同時に上昇させることができて有利である。
【0061】
コア粒子は、15~25重量%、有利には17~25重量%、さらに有利には17~23重量%のCoを含有することができる。コバルトの含量がかかる組成範疇を満たす場合、保磁力を上昇させることができて有利であり、コストダウンに有利である。
【0062】
TiおよびCuは、Al‐Ni‐Co合金の保磁力をさらに向上させることができる。残留磁化の減少を防止して保磁力を向上させるために、コア粒子は、1~10重量%のTi、有利には2~8重量%、さらに有利には3~6重量%のTiを含有することができる。また、残留磁化の減少を防止して保磁力を向上させるために、コア粒子は、0.5~5重量%のCu、有利には1~4重量%、さらに有利には1~3重量%のCuを含有することができる。
【0063】
溶湯製造時の脱酸および溶湯の噴霧時の微粒子の安定した形状に有利であるように、コア粒子は、0.1重量%以上のSiを含有することができるが、磁性特性が劣化しないように1重量%以下に含有することが好ましい。具体的には、コア粒子は、脱酸、微粒子の形状維持および磁性特性の劣化抑制の面で、0.4~0.7重量%のSiを含有することができる。しかし、実施形態に示されているように、不活性雰囲気でインゴットを製造し、不活性雰囲気でインゴットを溶融して溶湯を製造し、溶湯の噴射の際、水とともに酸化防止剤を含有する冷媒(冷却媒体)を使用する場合、溶湯の粒子化過程で酸化が十分に抑制され得、溶湯が磁性特性を劣化させるSiのような脱酸剤を含有しないとともに、上述の組成均一性および設計組成と実質的に同一の組成を有する磁性粒子が製造可能である。
【0064】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子において、コア粒子は、さらに、下記式7および式8を満たすことができる。
【0065】
式7:3μm≦D50≦12μm
式8:10μm≦D90≦20μm
【0066】
式7のD50は、上記で詳述したように、コア粒子の粒径累積分布で50%に相当する粒子径であり、式8中、D90は、コア粒子の粒径累積分布で90%に相当する粒子径である。実質的には、D50は3~9μmであってもよく、D90は10~15μmであってもよい。
【0067】
コア粒子が、D50が12μm以下である超微細粒子の場合、粒子径の分布も磁性特性に影響を及ぼし得る。AlNiCo系磁性粒子が式7および式8を満たすことで、印刷適性を確保することができ、印刷工程の際、ノズル詰まりなどの印刷不良を改善するだけでなく、サイズバラツキによる磁性特性の変化が抑制可能であり、AlNiCo系磁性粒子は、より均一な磁性特性を有することができる。
【0068】
磁性体をセキュリティ要素として使用するためには、磁性粒子固有の暗い色を隠蔽する必要がある。そのため、本出願人が提案したとおり、粒子状の磁性体金属シェルで包んで磁性体を淡色化する技術(韓国登録特許1341150参照)を用いて、磁性粒子固有の暗い色を隠蔽することができる。
【0069】
AlNiCo系磁性粒子において、無機シェルは、Al、NiおよびCoを含有するコア粒子固有の暗い色を隠蔽し、AlNiCo系磁性粒子が淡色を有するように作用する役割を果たすことができる。
【0070】
具体的には、無機シェルは、金属シェルを含むことができ、金属シェルの上部(すなわち、金属シェルの表面側)および/または、金属シェルの下部(金属シェルのコア粒子側)に位置する誘電体シェルをさらに含むことができる。誘電体シェルは、金属シェルとコア粒子との結着力を向上させたり、金属シェルを外部から保護して耐久性を向上させるための役割を果たすことができる。
【0071】
長期間様々な先行実験により、コア粒子の組成均一性、粒子径分布とともに、淡色化のための主な構成である金属シェルの均一性もAlNiCo系磁性粒子の磁性特性に相当な影響を及ぼすことを確認した。
【0072】
これにより、本発明が一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子において、無機シェルは、金属シェルを含むことができ、金属シェルは、下記式9および式10を満たす厚さ均一性を有することができる。
【0073】
式9:50nm≦tm≦100nm
式10:σt≦30nm
【0074】
式9中、tmは、金属シェルの平均厚さであり、式10中、σtは、金属シェル厚さの標準偏差である。この際、式9および式10の平均厚さと厚さの標準偏差は一磁性粒子を基準として、一コア粒子を包む一金属シェルの位置による厚さの平均厚さであり、偏差も一金属シェルでの厚さの標準偏差である。AlNiCo系磁性粒子群に属する磁性粒子は、それぞれ、式9および式10を満たすことができる。
【0075】
すなわち、AlNiCo系磁性粒子群に属する磁性粒子は、それぞれ、金属シェルの平均厚さが50~100nmであるとともに、AlNiCo系磁性粒子群に属する磁性粒子それぞれは、金属シェルの厚さの偏差が30nm以内、実質的には1nm~10nmであってもよい。
【0076】
金属シェルは、銅、ニッケル、金、白金、銀、アルミニウムおよびクロムから選択される一つまたは二つ以上の金属であってもよく、銀が淡色化により効果的であり、さらに、銀シェルは、AlNiCo系磁性粒子に赤外線反射能を付与できるため、より有利である。
【0077】
金属シェルの上部、下部または上部と下部それぞれに位置する誘電体シェルは、酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、フッ化マグネシウムおよび硫化亜鉛から選択される一つまたは二つ以上の誘電体であってもよい。誘電体シェルの厚さは、安定して耐久性を向上させ、淡色化をより向上させる面で、10~100nmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0078】
本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子は、保磁力が100~500Oeであってもよく、飽和磁化(Ms)は、50~150emu/gであり、残留磁化(Mr)は、10~40emu/gであってもよい。具体的には、AlNiCo系磁性粒子は、保磁力が100~500Oeであってもよく、飽和磁化(Ms)は、50~70emu/gであり、残留磁化(Mr)は、15~30emu/gであってもよい。かかる保磁力、飽和磁化および残留磁化の磁性特性は、一般的な認識装備では軟磁性粒子と区別できず、高価の認識装備によっては軟磁性粒子と区別検出可能な、強化したセキュリティ能を確保できる磁性特性である。
【0079】
AlNiCo系磁性粒子は、上述の組成均一性、計画された磁性を確保するために厳密に設計された設計組成を有し、有利には、組成均一性、設計組成、粒子径の均一性および金属シェル厚さの均一性を有することで、微細線状のような高度の形状に設計されたセキュリティ要素も、高価の認識装備によって軟磁性粒子と再現性を持って安定して分別検出され、セキュリティ特性が大幅に向上することができる。
【0080】
さらに、一般的に磁性粒子は、赤外線を吸収する特性を有するが、本発明の有利な一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子は、赤外線を反射する特性を有することができる。さらに、本発明の有利な一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子は、金属シェルが均一な厚さとともに非常に低い表面粗さを有することで、900nm波長を基準として60%以上の赤外線(900nm波長の赤外線)を反射する非常に優れた赤外線反射率を有することができる。これは、本発明の一実施形態による磁性粒子が一般認識装備では軟磁性粒子と区別検出されない磁性特性とともに、微細線状を含む高度の形状を有するセキュリティ要素の実現が可能であり、高い赤外線反射といったセキュリティ特性を有することができることを意味する。すなわち、単一の物質であるAlNiCo系磁性粒子で磁性特性、セキュリティパターン(セキュリティ要素の形状)、赤外線などの多角的セキュリティが行われることを意味する。特に、本発明の一実施形態によるAlNiCo系磁性粒子は、実質的に同一の組成で軟磁性特性の実現が可能で、通常の組成分析装置および一般的な磁性認識装置では、軟磁性粒子との差を区別することができず、セキュリティ要素の偽造が実質的に不可能である。
【0081】
本発明は、上述のAlNiCo系磁性粒子の製造方法を含む。本発明による製造方法は、上記でAlNiCo系磁性粒子で詳述したすべての内容を含む。
【0082】
本発明の製造方法において、冷却媒体が水を含む、水系噴霧および/または水系冷却媒体などの用語は、少なくとも水を含む意味に解釈すべきであり、冷却媒体が液体からなることを意味すると限定して解釈してはならず、冷却媒体が水とともに不活性ガスのガス相を含む場合も含むと解釈すべきである。
【0083】
本発明によるAlNiCo系磁性粒子の製造方法は、a)Al、NiおよびCoを含む原料を不活性雰囲気で溶融および凝固してインゴットを製造するステップと、b)製造されたインゴットを不活性雰囲気で溶融し、水および酸化防止剤を含む冷却媒体を用いた噴霧によって微粒子を製造するステップと、c)製造された微粒子を熱処理するステップと、d)熱処理された微粒子を気流分級して、D50が12μm以下であるAlNiCo系コア粒子を製造するステップと、e)製造されたAlNiCo系コア粒子に無機シェルを形成するステップとを含む。
【0084】
上述のように、ガス噴霧法を用いる場合、冷却速度が遅くて、均一な磁性特性を有する粒子の製造が実質的に非常に難しく、さらに、印刷に要するサイズ(一例として、D50≦12μm)の超微細粒子の収率が5%内外に過ぎないため、大量生産に不適であるという欠点がある。
【0085】
本発明による製造方法は、水を含む冷却媒体を用いることで、急速な冷却が可能で偏析が防止された緻密な組織の超微細粒子を非常に優れた収率(一例として、35%以上)で製造することができ、冷却媒体が酸化防止剤を含有することで、水により製造される粒子において酸化性が強い特定の元素が不均質に酸化することを防止することで、上述のように優れた組成均一性(低い組成バラツキ)を有し、設計された組成を有するコア粒子を製造することができる。
【0086】
酸化性が強い元素(一例として、Al、Tiなど)の不均質な酸化によって組成バラツキがもたらされることで、不活性ガス雰囲気で原料の溶融によるインゴット化(a)ステップ)と不活性雰囲気で噴霧のためのインゴットの再溶融(b)ステップ)が行われることで、噴霧直前のステップまでの組成バラツキの発生を抑制することができ、噴霧時に酸化防止剤を含有する水系冷却媒体を用いることで、噴霧過程での組成バラツキの発生を抑制することができる。
【0087】
次に、噴霧により製造された微粒子を熱処理して、保磁力を向上させることができ、熱処理が行われた微粒子を対象として気流分級を行うことで、D50が12μm以下、好ましくはD50およびD90が式7および式8を満たす非常に狭いサイズ分布を有し、超微細サイズを有するコア粒子を製造することができる。
【0088】
また、コア粒子が製造された後、無機シェルの形成ステップで金属シェルを形成する場合、無電解メッキを用いて金属シェルを形成し、この際、5℃以下、具体的には1~5℃の低温で無電解メッキを行うことで、式9および式10を満たす薄くて均一で非常に低い表面粗さを有する金属膜を製造することができる。
【0089】
以下、詳細な製造方法について詳述するが、製造方法を詳述するにあたり、コア粒子のサイズ、分布、組成、元素含量、磁気的特性、無機シェルの物質、厚さなどは、上記でAlNiCo系磁性粒子において詳述したものと類似または同様である。これにより、AlNiCo系磁性粒子の製造方法は、上記でAlNiCo系磁性粒子において詳述した関連構成のすべての内容を含む。
【0090】
インゴットは、設計されたコア粒子の組成と同一の組成を有するようにAl、NiおよびCoを含む各元素の粉末を混合した原料を不活性雰囲気で溶融して溶湯を製造し、製造された溶湯を不活性雰囲気で冷却して製造され得る。ただし、コア粒子が鉄を含有する場合、酸化防止効果がある重炭素鋼(0.15~0.3重量%のC含有鉄)を鉄粉末の代わりに使用してもよいが、不活性雰囲気でインゴット化およびインゴットの溶融が行われ、酸化防止剤を含有する水系冷却媒体によって噴霧が行われるため、必ずしも重炭素鋼を要するものではなく、選択的に使用され得る。そこで、本発明が鉄原料の種類によって限定されないことは言うまでもない。したがって、インゴットは、Al、NiおよびCoを含むAlNiCo合金インゴットであってもよく、具体的には、Al、NiおよびCoとともに、Fe、Cu、SiおよびTiから選択される一つまたは二つ以上の元素およびその他の不可避的不純物を含むAlNiCo合金インゴットであってもよい。より実質的には、インゴットは、Al、NiおよびCoとともに、Ti、Fe、Cuおよびその他の不可避的不純物を含むAlNiCo合金インゴットであってもよい。他の実質的な一例として、インゴットは、Al、NiおよびCoとともに、Ti、Fe、Cu、Siおよびその他の不可避的不純物を含むAlNiCo合金インゴットであってもよい。
【0091】
実質的で有利な一例による設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、重量%を基準とし、Al4~12%、Ni10~20%、Co15~25%、Ti1~10%、Cu0.5~5%、残部のFeおよびその他の不可避的不純物を含むことができる。他の実質的で有利な一例による設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、コア粒子の全重量を100%とした重量%を基準とし、Al4~12%、Ni10~20%、Co15~25%、Ti1~10%、Cu0.5~5%、Si0.1~1%、残部のFeおよびその他の不可避的不純物を含むことができる。
【0092】
この際、設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、4~12重量%、有利には5~10重量%、さらに有利には6~9重量%のAlを含有することができる。また、設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、10~20重量%、有利には12~18重量%、さらに有利には13~16重量%のNiを含有することができる。また、設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、15~25重量%、有利には17~25重量%、さらに有利には17~23重量%のCoを含有すrうことができる。また、設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、1~10重量%のTi、有利には2~8重量%、さらに有利には3~6重量%のTiを含有することができる。また、設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、0.5~5重量%のCu、有利には1~4重量%、さらに有利には1~3重量%のCuを含有することができる。また、設計組成に相当する原料の組成、インゴットの組成または溶湯の組成は、0.1重量%以上のSi、具体的には0.4~0.7重量%のSiを含有することができるが、上記で炭素鋼において詳述した理由と同様、Siは、必要に応じて選択的に使用可能である。
【0093】
b)ステップのインゴット溶融は、不活性雰囲気でインゴットを溶融する工程であってもよく、詳細には、不活性雰囲気でインゴットを高周波用誘導加熱によって溶融する工程であってもよいが、酸化が防止される不活性雰囲気で溶融が行われる限り、具体的な加熱方法によって限定されるものではない。具体的で非限定的な一例として、不活性雰囲気で高周波溶融時の温度1300~1800℃であってもよい。
【0094】
b)ステップの噴霧は、水および酸化防止剤を含有する水系冷却媒体を用いて行われてもよく、水系冷却媒体を環状(ring shape)の噴射ノズルを介して噴射して行われてもよい。
【0095】
噴霧のために溶融されたインゴット溶融物をAlNiCo系溶湯としたとき、水をベースとした流体によってAlNiCo系溶湯の粒子化の際、酸化を抑制するために、水系冷却媒体は、水および酸化防止剤を含有することができ、酸化防止剤は、還元性有機溶媒および還元性有機化合物から選択される一つまたは二つ以上を含むことができる。特に、酸化防止剤は、尿素を含む還元性有機化合物を含有することができ、尿素および水を含む水系冷却媒体によって噴霧が行われる場合、粒子化するAlNiCo系溶湯の粒子化の際、不均質な酸化が著しく抑制され、上述の関係式1、2および3を満たすコア粒子が製造可能であり、さらに、粒子化の際、酸化自体が著しく抑制され、関係式4、式5および式6を満たす、実質的に設計組成に合致するコア粒子が製造可能である。
【0096】
具体的には、冷却媒体は、水100重量部に対して、10~100重量部の尿素、有利には15~100重量部の尿素、より有利には20~100重量部の尿素を含有することができ、かかる尿素の含量は、AlNiCo系溶湯の粒子化の際、水による酸化および水による不均質な酸化を実質的に完全に抑制することができる含量である。
【0097】
しかし、本発明において、冷却媒体に含有された酸化防止剤が、尿素単独に限定して解釈してはならず、必要に応じて、冷却媒体は、上述の尿素を含む還元性有機化合物とともに、還元性有機溶媒をさらに含み得ることは言うまでもない。還元性有機溶媒としては、水との優れた混和性を有し、沸点が高く、還元性に優れたアルカノールアミンが有利であり、アルカノールアミンは、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、モノイソプロピルアミン(MIPA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)またはこれらの混合物を含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
冷却媒体が還元性有機溶媒をさらに含む場合、水による急冷効果を阻害しないために、冷却媒体は、水100重量部に対して30重量部以下の還元性有機溶媒、具体的には1~30重量部、より具体的には5~20重量部の還元性有機溶媒を含有することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0099】
また、冷却媒体が不活性ガスを含むガス相をさらに含む場合、偏析および所望しない異相(一例として、アルミニウムリッチ相)の生成を防止する水による急冷効果を維持できるように、水:不活性ガスを含むガス相の体積比は、1:0.05~0.3範疇であることが有利である。
【0100】
噴霧の際、水および酸化防止剤を含む冷却媒体の噴射圧は500bar以上であることが、D50が12μm以下である超微細粒子の製造に有利である。具体的には、D50が12μm以下である超微細粒子を優れた収率で取得するために、冷却媒体の噴射圧は、500~1000bar、より具体的には500~800barであってもよい。
【0101】
上述の噴霧工程によってAlNiCo系微粒子が取得可能であり、次に、噴霧により製造されたAlNiCo系微粒子を熱処理するステップが行われ得る。ガス噴霧法の場合、磁性特性を向上させるとともに遅い冷却によってもたらされる偏析および所望しない異相(具体的な一例として、γ相)を除去するために熱処理が行われべきであるが、本発明の一実施形態による製造方法で取得されるAlNiCo系微粒子の場合、急冷によって偏析および相分離(異相の形成)が防止されることで、AlNiCo系微粒子の磁性特性の向上に有利な条件の熱処理が行われれば十分である。具体的には、c)ステップの熱処理は、通常の不活性ないし還元性雰囲気で、700~800℃の温度で行われ得る。熱処理時間は、目的とする磁性特性の向上がなされ、AlNiCo系微粒子同士が強く結着しない程度であればよく、実質的な一例として、30分~2時間行われ得るが、本発明は、熱処理が行われる具体時間によって限定されないことは言うまでもない。
【0102】
必要に応じて、700~800℃で1次熱処理した後、1次熱処理よりも相対的に低い温度で2次熱処理し、2次熱処理温度よりも相対的に低い温度で3次熱処理する多段熱処理が行われ得、かかる多段熱処理によってAlNiCo系微粒子の保磁力をより向上させることができる。具体的には、必要に応じて、700~800℃で行われる1次熱処理が行われた後、600~700℃(700℃含まず)の温度で2~4時間2次熱処理が行われ得、2次熱処理が行われた後、550~600℃(600℃含まず)で10~15時間3次熱処理が行われ得る。
【0103】
d)ステップは、熱処理が行われた微粒子を対象に、気流分級を行って、D50が12μm以下のコア粒子を製造するステップであってもよい。サイクロン方式の気流分級は、周知のとおり、高速気流の遠心力と流体抗力によって粗大粒子は、分級機の外壁に移動して壁面に沿って旋回して回収され、微細粒子は、分級機の中心(内部)に移動して空気とともに旋回運動して排気されて回収され得、分級点の調節は、主に、分級機の回転速度と空気の注入量によって調節され得る。気流分級は、非常に微細な粒子の精密な分級が可能であり、また、分級された粒子が非常に狭い粒度分布を有することで、本発明において非常に好適である。具体的で非限定的な一例として、ガス噴霧および多段熱処理が行われた微分を対象に気流分級によってD50が12μm以下であるコア粒子、有利には式7および式8を満たす粒子を分級回収するために、気流分級時の回転速度は2500~8000rpmであってもよく、空気注入量は2~10m3/minであってもよい。しかし、気流分級によって粒子径分布を制御する分野従事者は、市販の様々な気流分級機の詳細構造によって目的とする平均サイズおよび分布を有する粒子を得るために既知の分級機の主な変数を制御し、目的とする分級を行うことができることは自明である。
【0104】
気流分級によって取得される、D50が12μm以下であるコア粒子、有利には式7および式8を満たす粒子は、微細線状パターンの印刷に非常に好適であり、印刷工程時に生じ得る印刷不良のような不都合の問題を防止することができ、粒子径バラツキによる磁性特性の変化を防止することができて有利である。
【0105】
e)ステップは、気流分級によって取得されたコア粒子を対象にシェルを形成するステップであって、e)ステップは、金属シェルを形成するステップを含むことができる。具体的には、コア粒子に誘電体シェルを形成するステップと、誘電体シェルの上部に金属シェルを形成するステップとを含むことができるが、必要に応じて、金属シェルの上部にまた金属シェルを保護するための同種または異種の誘電体シェル形成ステップがさらに行われ得ることは言うまでもない。
【0106】
誘電体シェル形成ステップは、粒子上に誘電体をコーティングするために通常使用されるいかなる方法を使用してもよいが、薄くて均一な膜の形成の面でゾル‐ゲル(sol‐gel)法を使用することが有利である。具体的には、形成しようとするシェルの誘電体物質を考慮してアルコキシドゾルゲル法またはコロイドゾルゲル法を用いて行われてもよく、具体的で非限定的な一例として、酸化チタンシェルを形成しようとする場合、チタンテトラブトキシドのようなチタン前駆体が溶解されたチタンゾルに水を含む分散媒に分散されたコア粒子を混合した後、コア粒子を分離回収し乾燥して、酸化チタンシェルが形成されたコア粒子を製造することができる。
【0107】
金属シェルの形成ステップは、粒子上に金属をコーティングするために通常使用されるいかなる方法を使用してもよいが、薄くて均一な膜の形成の面で、無電解メッキを使用することが有利であり、特に、式9および式10を満たす薄くて均一な金属膜を形成し、低い表面粗さを有して、900nm波長において60%以上の極めて優れた赤外線反射率を有する磁性粒子が製造可能であるように、5℃以下、具体的には1~5℃の低温無電解メッキを用いて金属シェルを形成することが有利である。金属シェルの金属物質を考慮して様々な無電解メッキ液が使用可能である。有利な一例によって、金属シェルとして銀シェルを形成しようとする場合、無電解メッキのためのメッキ浴は、銀前駆体(代表的な一例として、硝酸銀など)、pH調節剤(代表的な一例として、KOHなど)、接着剤(代表的な一例として、アンモニア水、アンモニウム塩など)、溶媒および還元剤などを含むことができる。この際、還元剤は、単糖類、グルコース、フルクトース、ガラクトース、セニエット塩(seignette salt)、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸カルシウム、酒石酸ステアリル、ホルムアルデヒドなどを含むことができる。この際、メッキ浴のpHは、pH調節剤によって7~10に調節可能であり、メッキ浴は、均一なメッキのための知られている添加剤をさらに含んでもよいことは言うまでもない。
【0108】
本発明は、上述の製造方法で製造されたAlNiCo系磁性粒子を含む。
【0109】
本発明は、上述のAlNiCo系磁性粒子を含むセキュリティインクを含む。この際、セキュリティインクは有価証書用であってもよいことは言うまでもない。
【0110】
本発明の一実施形態によるセキュリティインクにおいて、セキュリティインクは、上述のAlNiCo系磁性粒子、ワニス、顔料、界面活性剤、ワックス、および溶剤を含有することができる。
【0111】
詳細には、セキュリティインクは、5~15wt%のAlNiCo系磁性粒子、20~40wt%のワニス、30~50wt%の顔料、5~10wt%の界面活性剤、1~10wt%のワックスおよび2~10wt%の溶剤を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0112】
一例として、ワニスは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂が挙げられ、有機溶剤に溶解されるものであれば種類は限定されない。具体的なワニスの例を挙げると、熱可塑性樹脂としては、石油樹脂、カゼイン、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、硫化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン‐マレイン酸樹脂、スチレン‐アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、またはブチラール樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、または尿素樹脂などが挙げられる。光硬化性樹脂(感光性樹脂)としては、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基などの反応性置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、またはエポキシ基などの反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物や桂皮酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、またはスチリル基などの光架橋性基をその線状高分子に導入した樹脂を使用することができる。また、スチレン‐無水マレイン酸共重合物やα‐オレフィン‐無水マレイン酸共重合物などの酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によってハーフエステル化したものを使用することも可能である。
【0113】
顔料は、特に制限されないが、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ハロゲン化フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアントラキノニル顔料、アントラピリミジン顔料、アンダントロン顔料、インダントロン顔料、フラバントロン顔料、ピラントロン顔料、またはジケトピロロピロール顔料などが挙げられる。
【0114】
界面活性剤は、種類が限定されるものではないが、フッ素化界面活性剤、重合性フッ素化界面活性剤、シロキサン界面活性剤、重合性シロキサン界面活性剤、ポリオキシエチレン界面活性剤およびそれらの誘導体などからなる群から選択されるいずれか一つ以上が挙げられる。
【0115】
ワックスは、樹脂のべたつき(tack)を低減する効果がある粉末(パウダー)型であれば種類が限定されず、一例としてポリエチレンワックス、アミドワックス、エルカミドワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、テフロン(登録商標)およびカルナウバワックスなどから選択される一つ以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0116】
溶剤は、一般的な有機溶媒として、ワックス、顔料、ワニスなどの物質を均一に混合できるものであれば、種類が限定されない。使用可能な溶媒の具体的な一例としては、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテートおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0117】
本発明は、上述のAlNiCo系磁性粒子を含む有価証書を含む。
【0118】
詳細には、本発明は上述のAlNiCo系磁性粒子をセキュリティ要素として含む紙幣、小切手、切手、商品券、証紙、債券などの有価証書を含む。この際、AlNiCo系磁性粒子を含むセキュリティ要素は、画像(画像をなす形状の一部を含み)、数、文字、幾何学パターンなど、セキュリティのために設計された形態を有し得ることは言うまでもない。
【実施例0119】
(実施例)
6重量%のAl、15重量%のNi、22重量%のCo、4重量%のTi、3重量%のCuおよび50重量%のFeの設計組成によって原料粉末(アルミニウム粉末、ニッケル粉末、コバルト粉末、チタン粉末、銅粉末および鉄粉末、原料粉末の純度≧99.9%)を混合し、不活性雰囲気で溶解した後、凝固してインゴットを製造した。製造されたインゴット1kgを高周波発生器によって加熱し不活性雰囲気下で放置されたるつぼに入れた後、温度を1650℃に維持し、AlNiCo系溶湯を形成した。微粒子化のために、溶湯は、真空噴霧コンファインメント(vacuum atomization confinement)に注入され、25重量%で尿素が溶解された尿素水溶液である冷却媒体は、環状の噴射ノズルを介して600barで噴霧された。
【0120】
製造された微粒子は、アルゴンガス雰囲気下で、750℃で1時間熱処理された。
【0121】
熱処理の後に取得された粒子を7500rpmの回転速度および空気注入量2.8m3/分の条件の下で、サイクロン方式で気流分級し、D50が7.8μmであり、D90が14.1μmであるコア粒子を取得した。次に、気流分級によって取得されたコア粒子をエタノールで2回洗浄した後、60℃で乾燥した。
【0122】
取得されたコア粒子でランダムに約1gをサンプリングした後、粒子断面の中心領域をEDS(エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X‐Ray Spectroscopy)、FEI company、Magellan 400)で元素分析(10kV、100sec)し、50個の粒子それぞれに対して元素分析を行い、元素別の平均組成および組成の標準偏差を算出し、その結果を表1(表1‐1Al、Ni、Co分析結果、表1‐2のTi、Cu、Fe分析結果)にまとめた。また、式4、式5および式6に規定された値、すなわち、設計組成から逸脱した程度を「DEV」とし、表2にまとめて図示した。
【0123】
これとは別に、洗浄されたコア粒子を対象に、コア粒子1g、TBOT(テトラブトキシチタン)(Aldrich)1ml、蒸留水1mlをエタノール170mlに投入した後、85℃の温度で2時間300rpmの回転速度で撹拌し、コア粒子の表面に酸化チタンシェル(厚さ50nm)をコーティングした。酸化チタンシェルがコーティングされたコア粒子を磁石で分離回収した後、エタノールで2回洗浄および乾燥した。
【0124】
次に、蒸留水1200mlに硝酸銀(AgNO3)21gと水酸化ナトリウム(NaOH)4gを投入した後、水酸化アンモニウム(NH4OH)34mlを投入して褐色の沈殿が透明な銀アミン錯体溶液に変化するように撹拌した。3℃に維持される銀アミン錯体溶液に酸化チタンシェルがコーティングされたコア粒子60gを投入した後、300rpmの速度で30分間撹拌した。蒸留水400mlにグルコース20g、酒石酸カリウム1.5gを溶解した溶液(3℃)を二酸化チタンシェルがコーティングされたコア粒子が分散された銀アミン錯体溶液(3℃)に投入した後、300rpmの速度で1時間撹拌し、酸化チタンシェルが形成されたコア粒子に厚さ58.4nmの銀シェルを形成し、AlNiCo系磁性粒子を製造した。以降、製造された磁性粒子を磁石で分離した後、エタノールで2回洗浄し、60℃で乾燥した。
【0125】
製造された磁性粒子の保磁力、飽和磁化(Ms)、残留磁化(Mr)は、VSM(振動サンプル磁力計(vibrating sample magnetometer)、Lakeshore、7400 series)を用いて測定し、その結果を表3にまとめた。
【0126】
(比較例1)
実施例1と同様に行うが、噴霧の際、水を冷却媒体として使用した以外は、実施例1と同様にコア粒子を製造し、以降、銀シェルの製造の際、常温溶液を用いた以外は、実施例1と同様に磁性粒子を製造した。
【0127】
比較例1で製造されたコア粒子に対しても実施例1と同様にコア粒子の組成均一性を確認し、これを表1にまとめて図示し、また、式4、式5および式6に規定された値、すなわち、設計組成から逸脱した程度を「DEV」とし、表2にまとめて図示した。また、製造された磁性粒子の磁性特性も実施例1と同様に測定し、これを表3にまとめて図示した。
【0128】
【0129】
【0130】
表1(表1‐1および表1‐2)において、Cm(A)は、コア粒子の元素Aの平均重量%であり、σ(A)は、コア粒子間の元素Aの標準偏差(重量%基準)であり、UNF(A)は、Cm(A)/σ(A)である。また、表1において元素間のCmの和で100にならない理由は、不可避的不純物による。
【0131】
表1に示されているように、本発明によるAlNiCo系磁性粒子の場合、著しく向上した組成均一性を有するとともに、コア粒子のD50が7.8μmであり、D90が14.1μmである極微細で非常に狭い粒度分布を有することが分かる。
【0132】
【0133】
表2に示されているように、実施例で製造されたコア粒子の場合、設計された原料の組成と実質的に同一の組成を有する磁性粒子が製造されることが分かる。
【0134】
【0135】
表3に示されているように、急冷によって偏析および異相が防止され、酸化による組成バラツキが防止されることで、750℃、1時間といった単純で非常に短い熱処理により、通常の測定装備では軟磁性と区別が不可能で、向上したセキュリティを確保できる磁性特性を有する硬磁性粒子が製造されることが分かる。
【0136】
図1は実施例1で製造されたAlNiCo系磁性粒子を観察した走査電子顕微鏡写真である。
図1に示されているように、実質的に真球状の粒子が製造されることが分かり、3℃の低温無電解メッキによって均一且つ安定的に銀シェルが形成されることを確認することができる。
【0137】
図2は製造されたAlNiCo系磁性粒子の断面を観察した走査電子顕微鏡写真および銀シェルの厚さ分布を測定し図示した図である。
図2に示されているように、平均厚さが58.4nmで、厚さの標準偏差が7.9nmに過ぎない極めて均一な銀シェルを有することが分かる。また、濃度均一性テスト時と同様、50個のAlNiCo系磁性粒子を任意に選択し、断面観察により形成された銀シェルの厚さおよび厚さ分布を測定した結果、測定されたすべてのAlNiCo系磁性粒子の銀シェルの平均厚さ(磁性粒子それぞれでの銀シェルの平均厚さ)は56.2~59.7nmに属し、銀シェルの厚さの標準偏差(磁性粒子それぞれでの銀シェル厚さの標準偏差)は7.1~8.3nmの範疇に属した。
【0138】
また、分光光度計(Carry 5000)を用いて900nmのレーザを照射して製造された磁性粒子の赤外線反射率を測定した結果、64%の反射率を有することを確認した。
【0139】
(実施例2)
実施例1で製造されたAlNiCo系磁性粒子を用いて有価証書用のセキュリティインク(以下、硬磁性インク)を製造した。詳細には、第1ワニス(jevisco社製、KR‐KU)18重量%、第2ワニス(jevisco社製、KR‐KA)14重量%、製造されたAlNiCo系磁性粒子10重量%、体質顔料(東昊カルシウム社製、TL‐2000)41重量%、混合ワックス(Micro Powders社製、Polyfluo 540XF)6重量%、脂肪族炭化水素(SK chemicals社製、YK‐D130)2重量%、溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)2重量%、界面活性剤(韓農化成社製、Koremul‐263Na)5重量%および乾燥剤2重量%で混合した後、これを練肉機に投入し、練肉機で4~5回練肉を実施してセキュリティインクを製造した。
【0140】
常磁性インクとして、上記の硬磁性インクと同様の物質および組成でインクを製造し、この際、実施例1で製造されたAlNiCo系磁性粒子10重量%の代わり、磁性顔料(BASF、025)10重量%で混合した以外は、硬磁性インクと同様に製造した。
【0141】
図3は製造された硬磁性インクおよび常磁性インクを印刷して製造されたセキュリティ要素を観察した光学画像、軟磁性画像、強磁性画像および赤外線画像を図示した図面である。
【0142】
図3の光学写真に示されているように、一般の磁性粒子の場合、磁性粒子固有の暗い色を有するが、本発明によるAlNiCo系磁性粒子を含有するインクが印刷された部分は明るい色の実現が可能であることを確認することができる。また、磁性画像測定装置(G&D)を用いて軟磁性モードで磁性画像を撮影した軟磁性画像に示されているように、本発明によるAlNiCo系磁性粒子を含有するインクは、軟磁性モードで一般の軟磁性顔料と類似した磁性特性を有し、実質的に区分が不可能であることが分かる。しかし、同一の磁性画像測定装置を用いて硬磁性モードで磁性画像を撮影した硬磁性画像に示されているように、本発明によるAlNiCo系磁性粒子は、硬磁性モードで安定して検出され、はっきりとした画像を形成するが、一般の軟磁性顔料は、検出されないことが分かる。また、赤外線画像測定装置(Foster&Freeman社製、VSC 4 PLUS)を用いて撮影した赤外線画像に示されているように、本発明によるAlNiCo系磁性粒子は、赤外線反射特性によって画像として示されないが、一般の軟磁性顔料は、赤外線吸収特性によって画像を形成することが分かる。
【0143】
以上、本発明は、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明しているが、これは、本発明をより全般的に理解しやすくするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、かかる記載から様々な修正および変形が可能である。
【0144】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等または等価的な変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属すると言える。