(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141665
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/121 20210101AFI20220921BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20220921BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20220921BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20220921BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20220921BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220921BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01M50/121
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/119
H01G11/06
H01G11/78
C09J175/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102540
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2017250366の分割
【原出願日】2017-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】ホウ ウェイ
(57)【要約】
【課題】耐黄変性に優れると共に、外側接着剤の接着強度が十分に得られ、成形性も良好である蓄電デバイス用外装材を提供する。
【解決手段】外側層としての基材層2と、内側層としての熱融着性樹脂層3と、これら両層間に配置された金属箔層4と、を含み、基材層2と金属箔層4とが外側接着剤層5を介して接着され、外側接着剤層5は、ポリオールを含有してなる主剤と、多官能イソシアネート混合物と、を含み、ポリオールの含有率が50質量%~95質量%である二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜で形成され、前記多官能イソシアネート混合物は、芳香族多官能イソシアネートと、芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートと、を含む混合物からなる構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての基材層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記基材層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着され、
前記外側接着剤層は、ポリオールを含有してなる主剤と、多官能イソシアネート混合物と、を含み、前記ポリオールの含有率が50質量%~95質量%である二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜で形成され、
前記多官能イソシアネート混合物は、芳香族多官能イソシアネートと、芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートと、を含む混合物からなることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記多官能イソシアネート混合物における前記芳香族多官能イソシアネートの含有率が5質量%~50質量%であり、前記多官能イソシアネート混合物における前記芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートの含有率が50質量%~95質量%である請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記ポリオールは、ポリエステルポリオールであり、
前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分を含み、
前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有し、前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%である請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の外装材および該外装材で外装された蓄電デバイスに関する。
【0002】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「芳香族多官能イソシアネート」の語は、-NCO(イソシアネート官能基)のN原子が、芳香環(ベンゼン環)を構成しているC原子に直接結合した化学構造式を呈する多官能イソシアネートを意味するものであり、「芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネート」の語は、-NCO(イソシアネート官能基)のN原子が、1ないし複数のメチレン基等の連結基を介して芳香環(ベンゼン環)を構成しているC原子に結合した化学構造式を呈する多官能イソシアネートを意味する。即ち、「芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネート」の語は、-NCO(イソシアネート官能基)のN原子が、芳香環(ベンゼン環)を構成しているC原子に直接結合した化学構造式を呈する多官能イソシアネートを含まない。
【背景技術】
【0003】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル電気機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ等の蓄電デバイスの外装材としては、従来の金属缶に代えて、耐熱性樹脂層/外側接着剤層/金属箔層/内側接着剤層/熱融着性樹脂層(内側シーラント層)からなる積層体が用いられている。また、電気自動車等の電源、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も上記構成の積層体(外装材)で外装されることも増えてきている。前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。
【0004】
そして、耐熱性樹脂層と金属層との間のデラミネーション(剥離)を防止するべく、外側接着剤として、多官能イソシアネート類を含有する接着剤を用いることが公知である(特許文献1参照)。この特許文献1には、前記多官能イソシアネート類としては、トリレンジイソシアネートを用いるのが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多官能イソシアネート類としてトリレンジイソシアネートを用いた構成の電池用外装材は、電解液が接触する雰囲気下では電解液の接触によって前記外側接着剤層が黄変してしまって外観が悪いという問題がある。勿論、電解液の接触が起こらないように製造時等に留意すれば良いのであるが、実際上、製造時等に電解液が外装材に付着しないようにするのは困難であり、従って電解液が外装材に付着しても外側接着剤そのものが黄変しない組成にすることが求められていた。
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、耐黄変性に優れると共に、外側接着剤の接着強度が十分に得られ、成形性も良好である蓄電デバイス用外装材および該外装材で外装された蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]外側層としての基材層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記基材層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着され、
前記外側接着剤層は、ポリオールを含有してなる主剤と、多官能イソシアネート混合物と、を含み、ポリオールの含有率が50質量%~95質量%である二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜で形成され、
前記多官能イソシアネート混合物は、芳香族多官能イソシアネートと、芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートと、を含む混合物からなることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0010】
[2]前記多官能イソシアネート混合物における前記芳香族多官能イソシアネートの含有率が5質量%~50質量%であり、前記多官能イソシアネート混合物における前記芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートの含有率が50質量%~95質量%である前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0011】
[3]前記ポリオールは、ポリエステルポリオールであり、
前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分を含み、
前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有し、前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%である前項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[4]前記芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートが、キシリレンジイソシアネートおよびその変性体からなる群より選ばれる1種または2種以上のイソシアネートである前項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[5]前記二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaである前項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[6]前項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【0015】
[7]蓄電デバイス本体部と、
前項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材および請求項6に記載の蓄電デバイス用外装ケースからなる群より選ばれる1種または2種の外装部材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0016】
[1]の発明では、前記多官能イソシアネート混合物は、芳香族多官能イソシアネートと、芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートと、を含む混合物からなる構成であるから、外側接着剤層が黄変し難くて外装材の耐黄変性に優れると共に、外側接着剤の接着強度が十分に得られ、成形性も良好である。
【0017】
[2]の発明では、耐黄変性をさらに向上させることができると共に、成形性も向上させることができ、また外側接着剤の接着強度も向上させることができる。
【0018】
[3]の発明では、ポリオールとしてポリエステルポリオールが用いられた上で、前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%以上であることで外側層と金属箔層とのデラミネーション(剥離)をより十分に防止できると共に、前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸の含有率が80モル%以下であることで外側接着剤の接着強度をより十分に確保できる。
【0019】
[4]の発明では、耐黄変性をより一層向上させることができる。
【0020】
[5]の発明では、二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa以上であることで外側接着剤層の耐熱性を向上させることができて、ヒートシール時に外側層と金属箔層とのデラミネーション(剥離)をより十分に防止できるし、前記ヤング率が400MPa以下であることで、外側接着剤の接着強度をより十分に確保できる上に、高温ラミネート強度も向上させることができる。
【0021】
[6]の発明では、外側接着剤層が黄変し難くて外装材の耐黄変性に優れると共に、外側接着剤の接着強度が十分に確保され、良好に成形がなされた蓄電デバイス用外装ケースを提供できる。
【0022】
[7]の発明では、耐黄変性に優れると共に外側接着剤の接着強度が十分に確保された外装部材で外装された蓄電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図2の蓄電デバイスを構成する外装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及び外装ケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1の一実施形態を
図1に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用として用いられるものである。
【0025】
前記蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4の一方の面に外側接着剤層5を介して基材層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面に内側接着剤層6を介して熱融着性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。
【0026】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1では、前記外側接着剤層5は、ポリオールを含有してなる主剤と、多官能イソシアネート混合物と、を含み、ポリオールの含有率が50質量%~95質量%である二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜で形成され、前記多官能イソシアネート混合物は、芳香族多官能イソシアネートと、芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートと、を含む混合物からなる構成であるので、外側接着剤層が黄変し難くて外装材の耐黄変性に優れると共に、外側接着剤の接着強度が十分に得られ、成形性も良好である。
【0027】
本発明において、前記二液硬化型ウレタン接着剤を構成する主剤は、ポリオールを含有するものであり、ポリオールを50質量%以上含有する構成であるのが好ましい。前記主剤におけるポリオール含有率が50質量%以上であることで、接着力をより増大させることができて、外側層2と金属箔層4との間のデラミネーション(剥離)の発生を十分に防止できる。中でも、前記主剤におけるポリオール含有率が70質量%以上であるのがより好ましく、さらに90質量%以上であるのが特に好ましい。
【0028】
前記ポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。なお、本発明において、ポリエステルポリオールには、ウレタン変性したポリエステルポリオール(ポリエステルポリウレタンポリオール等)を含み、またポリエーテルポリオールには、ウレタン変性したポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリウレタンポリオール等)を含む。中でも、前記ポリオールとしては、ジカルボン酸およびジアルコールを原料とする共重合体ポリエステルポリオールを使用するのが好ましい。本発明では、原料のジカルボン酸およびジアルコールの種類および組成を適宜選択することによって接着強度をより一層高めることができてより深い成形を行った時でも層間剥離を防止できる。
【0029】
前記ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等を例示できる。また、前記芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を例示できる。
【0030】
前記ジアルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等を例示できる。
【0031】
前記ポリオールとしてポリエステルポリオールを使用する場合には、前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分(ジカルボン酸由来のジカルボン酸エステルを含む)を含み、前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有する構成であるのが好ましい。また、前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸の含有率は、40モル%~80モル%であるのが好ましく、50モル%~70モル%であるのがより好ましい。
【0032】
前記ポリオールの数平均分子量(Mn)は8000~25000の範囲にあるのが好ましく、この場合には外側接着剤層5として適正な塗膜強度と塗膜伸びを付与できる。
【0033】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、多官能性であるイソシアネートで鎖伸長することで調整することができる。即ち、主剤中のポリエステル成分をNCOで連結すると末端が水酸基のポリマーが生成され、イソシアネート基とポリエステルの水酸基との当量比の調整によりポリエステルポリオールの数平均分子量を調整することができる。本発明では、この当量比(OH/NCO)が1.01~10の範囲になるように連結したものを用いるのが好ましい。また、他の分子量調整方法として、ジカルボン酸とジアルコールの縮重合反応の反応条件(ジカルボン酸とジアルコールの配合モル比など)の調整を挙げることができる。
【0034】
前記主剤としては、必須成分の前記ポリオールに、例えば、多価アルコールを添加して使用することもできる。前記多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。
【0035】
前記多官能イソシアネート混合物は、芳香族多官能イソシアネートと、芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートと、を含む混合物からなる構成である。
【0036】
前記芳香族多官能イソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。中でも、前記芳香族多官能イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびこれらのジイソシアネートの少なくとも1種類からの多官能イソシアネート変性体からなる群より選ばれる1種または2種以上の芳香族多官能イソシアネートを用いるのが好ましい。変性手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多官能活性水素化合物とのアダクト体の他に、イソシアヌレート化、カルボジイミド化、ポリメリック化等の多量化反応による多官能イソシアネート変性体などが挙げられる。
【0037】
前記芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)およびこれらのジイソシアネートの少なくとも1種類からの多官能イソシアネート変性体等が挙げられる。変性手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多官能活性水素化合物とのアダクト体の他に、イソシアヌレート化、カルボジイミド化、ポリメリック化等の多量化反応による多官能イソシアネート変性体などが挙げられる。中でも、キシリレンジイソシアネートおよびその変性体からなる群より選ばれる1種または2種以上のイソシアネートを用いるのが好ましい。
【0038】
前記多官能イソシアネート混合物における芳香族多官能イソシアネートの含有率が5質量%~50質量%であり、前記多官能イソシアネート混合物における「芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネート」の含有率が50質量%~95質量%である構成が好ましい。この場合には、耐黄変性をさらに向上させることができると共に、成形性も向上させることができ、また外側接着剤5の接着強度も向上させることができる。芳香族多官能イソシアネートの含有率が5質量%以上であることで成形性をより向上させることができるとともに、芳香族多官能イソシアネートの含有率が50質量%以下であることで耐黄変性をさらに向上させることができる。芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートの含有率が50質量%以上であることで耐黄変性をさらに向上させることができると共に、芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートの含有率が95質量%以下であることで成形性をより向上させることができる。
【0039】
前記二液硬化型ウレタン接着剤(ウレタン接着剤の硬化膜)において、前記ポリオール成分の含有率は50質量%~95質量%に設定される。ポリオール成分の含有率が50質量%以上であることで外側接着剤の接着強度を十分に向上させることができると共に、ポリオール成分の含有率が95質量%以下であることで十分な耐シール性を確保することができる。中でも、前記二液硬化型ウレタン接着剤において、前記ポリオール成分の含有率が60質量%~90質量%であるのが好ましい。また、前記二液硬化型ウレタン接着剤において、前記多官能イソシアネート混合物の含有率が40質量%~10質量%であるのが好ましい。さらに、前記二液硬化型ウレタン接着剤(ウレタン接着剤の硬化膜)において、前記ポリオール成分の含有率が70質量%~90質量%であり、前記多官能イソシアネート混合物の含有率が30質量%~10質量%であるのがより好ましい。
【0040】
上述した、主剤を構成するポリオールと硬化剤としての多官能イソシアネート混合物とによる二液硬化型ウレタン接着剤において、ポリオールの水酸基(-OH)1モルに対して多官能イソシアネート混合物のイソシアネート基(-NCO)が1モル~30モルの割合で配合されているのが好ましい。モル比([NCO]/[OH])が1以上であることで十分な硬化反応が行われて適正な塗膜強度および耐熱性が得られるものとなる。また、モル比([NCO]/[OH])が30以下であることで、ポリオール以外の官能基との反応が進み過ぎることがなくて適正な塗膜強度および適正な伸びが得られるものとなる。中でも、ポリオールの水酸基と多官能イソシアネート混合物のイソシアネート基のモル比([NCO]/[OH])は、2~26の範囲であるのが特に好ましい。
【0041】
前記二液硬化型ウレタン接着剤は、上述した成分に加えて、必要に応じて、ポリエステルポリオールのウレタン化伸長時及び二液硬化型ウレタン接着剤のウレタン硬化反応時に使用する反応触媒、接着力向上のためのカップリング剤やエポキシ樹脂やアクリル樹脂、その他、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種公知の添加剤を、主剤又は硬化剤に添加してもよい。
【0042】
前記二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaである構成を採用するのが好ましい。前記硬化膜のヤング率が90MPa以上であることで外側接着剤層5の耐熱性を向上させることができて、ヒートシール時に外側層2と金属箔層4とのデラミネーション(剥離)をより十分に防止できるし、前記硬化膜のヤング率が400MPa以下であることで、外側接着剤の接着強度をより十分に確保できる上に、高温ラミネート強度も向上させることができる。中でも、前記二液硬化型ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が140MPa~300MPaであるのがより好ましい。
【0043】
前記外側接着剤層5の厚さは、1μm~5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記外側接着剤層5の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0044】
本発明において、前記基材層(外側層)2は耐熱性樹脂層で形成されているのが好ましい。前記耐熱性樹脂層2を構成する耐熱性樹脂としては、外装材1をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層3の融点(熱融着性樹脂層が複層で形成されている場合には最も高い融点を有する層の融点)より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱融着性樹脂層3の融点(熱融着性樹脂層が複層で形成されている場合には最も高い融点を有する層の融点)より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0045】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0046】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2の厚さは、2μm~50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは2μm~50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは7μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0047】
前記熱融着性樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0048】
前記熱融着性樹脂層3としては、特に限定されるものではないが、熱融着性樹脂無延伸フィルム層であるのが好ましい。前記熱融着性樹脂層無延伸フィルム層3は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱融着性樹脂からなる無延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。なお、前記熱融着性樹脂層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0049】
前記熱融着性樹脂層3の厚さは、10μm~80μmに設定されるのが好ましい。10μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できると共に、80μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図り得る。中でも、前記熱融着性樹脂層3の厚さは25μm~50μmに設定されるのが特に好ましい。
【0050】
前記熱融着性樹脂層3に滑剤を含有せしめてもよい。前記滑剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸アミドが好適に用いられる。前記脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。
【0051】
前記金属箔層4は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔、ニッケル箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔層4の厚さは、5μm~50μmであるのが好ましい。5μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、50μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔層4の厚さは、10μm~30μmであるのが特に好ましい。
【0052】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(第2接着剤層6側の面)に化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0053】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0054】
前記内側接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記内側接着剤層5として例示したものも使用できるが、電解液による膨潤の少ないポリオレフィン系接着剤を使用するのが好ましい。前記内側接着剤層6の厚さは、1μm~5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記内側接着剤層6の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0055】
本発明の蓄電デバイス用外装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、外装ケース(電池ケース等)10を得ることができる(
図3参照)。なお、本発明の外装材1は、成形に供されずにそのまま使用することもできる(
図3参照)。
【0056】
本発明の蓄電デバイス用外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を
図2に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、
図2、3に示すように、外装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の外装材1とにより外装部材15が構成されている。しかして、本発明の外装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の外装材1が成形されることなくその熱融着性樹脂層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の熱融着性樹脂層3の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の熱融着性樹脂層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(
図2、3参照)。なお、前記外装ケース10の収容凹部の内側の表面は、熱融着性樹脂層3になっており、収容凹部の外面が基材層(外側層)2になっている(
図3参照)。
【0057】
図2において、39は、前記外装材1の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(溶着)されたヒートシール部である。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、外装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0058】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0059】
前記ヒートシール部39の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部39の幅は、3mm~15mmに設定するのが好ましい。
【0060】
なお、上記実施形態では、外装部材15が、外装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の外装材1と、からなる構成であったが(
図2、3参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、外装部材15が、一対の平面状の外装材1からなる構成であってもよいし、或いは、一対の外装ケース10からなる構成であってもよい。
【実施例0061】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0062】
<実施例1>
二液硬化型ウレタン接着剤の主剤であるポリエステルポリオール溶液を作製する。ネオペンチルグリコール30モル部、エチレングリコール30モル部、1,6-ヘキサンジオール40モル部を80℃で溶融し、攪拌しながら、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸40モル部と芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸60モル部とからなるジカルボン酸混合物を210℃で20時間縮重合反応させて、主剤成分としてのポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオールは、数平均分子量(Mn)が15000である。前記得られたポリエステルポリオール(主剤)40質量部に酢酸エチル60質量部を加えて均一に溶解して、固形分40質量%、水酸基価3.0mgKOH/g(溶液値)のポリエステルポリオール溶液を得た。
【0063】
このポリエステルポリオール溶液80質量部に、硬化剤としてのトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.6質量%、固形分50質量%)6質量部、硬化剤としてのキシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率11.9質量%、固形分75質量%)14質量部を配合して撹拌することによって、二液硬化型ウレタン接着剤を得た。この二液硬化型ウレタン接着剤において、固形分中(外側接着剤層中)のポリオールの含有率は70.3質量%である。また、前記二液硬化型ウレタン接着剤において、全硬化剤の固形分中の芳香族多官能イソシアネートの固形分含有率は22.2質量%であり、全硬化剤の固形分中の「芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネート」の固形分含有率は77.8質量%であった。
【0064】
次に、厚さ35μmのアルミニウム箔(JIS H4160で規定されるA8079アルミニウム箔)4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行うことによって、両面に化成皮膜を形成したアルミニウム箔を準備した。この化成皮膜によるクロム付着量は、片面で5mg/m2であった。
【0065】
次に、前記化成皮膜が両面に形成されたアルミニウム箔の一方の面に、前記二液硬化型ウレタン接着剤を乾燥後の塗布量が3.5g/m
2になるように塗布して乾燥させて外側接着剤層5を形成し、該外側接着剤層5の表面に厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(基材層)2を貼り合わせると共に、前記アルミニウム箔4の他方の面にポリアクリル接着剤を塗布して乾燥させて内側接着剤層6とし、該内側接着剤層6の表面に厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂層)3を貼り合わせた。この積層体を40℃環境下で9日間放置する(エージングを行う)ことよって、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0066】
<実施例2>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部に代えて、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.5質量%、固形分50質量%)6質量部を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0067】
<実施例3>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部に代えて、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.6質量%、固形分50質量%)3質量部およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.5質量%、固形分50質量%)3質量部を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0068】
<実施例4>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液14質量部に代えて、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.6質量%、固形分50質量%)4質量部、硬化剤としてのキシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率11.9質量%、固形分75質量%)16質量部を配合して(表1参照)撹拌することによって二液硬化型ウレタン接着剤を得た以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0069】
<実施例5>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液14質量部に代えて、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.6質量%、固形分50質量%)8質量部、硬化剤としてのキシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率11.9質量%、固形分75質量%)12質量部を配合して(表1参照)撹拌することによって二液硬化型ウレタン接着剤を得た以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0070】
<実施例6>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液14質量部に代えて、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.6質量%、固形分50質量%)10質量部、硬化剤としてのキシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率11.9質量%、固形分75質量%)10質量部を配合して(表1参照)撹拌することによって二液硬化型ウレタン接着剤を得た以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0071】
<実施例7>
ジカルボン酸混合物として、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸65モル部と芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸35モル部とからなるジカルボン酸混合物を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0072】
<実施例8>
ジカルボン酸混合物として、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸55モル部と芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸45モル部とからなるジカルボン酸混合物を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0073】
<実施例9>
ジカルボン酸混合物として、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸20モル部と芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸80モル部とからなるジカルボン酸混合物を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0074】
<実施例10>
ジカルボン酸混合物として、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸15モル部と芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸85モル部とからなるジカルボン酸混合物を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0075】
<実施例11>
ジカルボン酸混合物として、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸10モル部と芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸90モル部とからなるジカルボン酸混合物を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0076】
<実施例12>
二液硬化型ウレタン接着剤における主剤(溶液)/硬化剤(溶液)の配合比を、主剤(溶液)/硬化剤(溶液)=5質量部/35質量部に変更した(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0077】
<実施例13>
二液硬化型ウレタン接着剤における主剤(溶液)/硬化剤(溶液)の配合比を、主剤(溶液)/硬化剤(溶液)=70質量部/30質量部に変更した(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0078】
<実施例14>
二液硬化型ウレタン接着剤における主剤(溶液)/硬化剤(溶液)の配合比を、主剤(溶液)/硬化剤(溶液)=90質量部/10質量部に変更した(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0079】
<実施例15>
主剤(溶液)として、実施例1のポリエステルポリオール溶液80質量部に代えて、以下のポリエーテルポリウレタンポリオール溶液(表1では「ポリオールO」と表記)80質量部を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0080】
ポリエーテルポリウレタンポリオール溶液の作製としては、ポリエーテルポリオールとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価112mgKOH/g)500質量部とトリレンジイソシアネート82.2質量部を反応容器に仕込み撹拌しながら100℃7時間反応させ反応を完結させた後、さらに酢酸エチル388.1質量部を仕込んで、ポリエーテルポリウレタンポリオール溶液(固形分40質量%、ポリエーテルポリウレタンポリオールの数平均分子量が14500、水酸基価3.1mgKOH/g(溶液値))を得た。
【0081】
<実施例16>
主剤(溶液)として、実施例1のポリエステルポリオール溶液80質量部に代えて、ポリエステルポリウレタンポリオール溶液(表1で「ポリオールM」と表記)80質量部を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0082】
ポリエステルポリウレタンポリオール溶液の作製としては、まずポリエステルポリオールを作製する。ネオペンチルグリコール30モル部、エチレングリコール30モル部、1,6-ヘキサンジオール40モル部を混合して80℃で溶融し、撹拌しながら、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸40モル部と芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸60モル部とからなるジカルボン酸混合物を210℃で20時間縮重合反応させて、水酸基価56mgKOH/g、酸価0.4mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。次に、前記得られたポリエステルポリオール500質量部とトリレンジイソシアネート39.2質量部を反応容器に仕込み撹拌しながら100℃7時間反応させ反応を完結させた後、さらに酢酸エチル359.4質量部を仕込んで、ポリエステルポリウレタンポリオール溶液(固形分40質量%、ポリエステルポリウレタンポリオールの数平均分子量が14700、水酸基価3.1mgKOH/g(溶液値))を得た。
【0083】
<実施例17>
硬化剤(芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネート)として、実施例1のキシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液14質量部に代えて、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率10.2質量%、固形分75質量%)14質量部を配合して(表1参照)撹拌することによって二液硬化型ウレタン接着剤を得た以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0084】
<比較例1>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液14質量部に代えて、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.5質量%、固形分50質量%)20質量部を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0085】
<比較例2>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液14質量部に代えて、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率7.6質量%、固形分50質量%)20質量部を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0086】
<比較例3>
硬化剤として、実施例1のトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート多官能体ポリイソシアネート溶液6質量部、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液14質量部に代えて、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体ポリイソシアネート溶液(NCO含有率11.9質量%、固形分75質量%)20質量部を用いた(表1参照)以外は、実施例1と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0087】
なお、上記実施例1~17及び比較例1~3で使用した二液硬化型ウレタン接着剤(外側接着剤)の硬化膜のヤング率を表1に示す。前記ヤング率は、JIS K7127-1999(プラスチックフィルムの引張試験方法)に準拠して測定した。具体的には、各外側接着剤をガラス板の上に50μmの厚さで塗布した後、40℃で11日間加熱エージング処理を行って、外側接着剤を熱硬化させて厚さ46μmの硬化物を得た。前記硬化物をガラス板から剥がした後、長さ150mm、幅10mm、厚さ46mmの大きさに切り出して試験片を作製し、チャック間の初期距離100mm、標線間距離50mmの条件で、島津アクセス社製ストログラフ(引張試験装置)(AGS-5kNX)を使用して、引張速度200mm/分で引張試験を行ってヤング率(MPa)を求めた。
【0088】
【0089】
【0090】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を表2に示す。
【0091】
<耐黄変性評価法>
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)が等量体積比で配合された混合溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が濃度1000ppmで溶解された電解液中に蓄電デバイス用外装材を浸漬して45℃環境下で24時間保管した後、蓄電デバイス用外装材を取り出して水で洗浄して乾燥させた。前記乾燥後の蓄電デバイス用外装材について外側層側からのLab値をコニカミノルタ社製の色差式色彩計CM-2500Cを用いて測定し、b値を黄変度合いの判断基準にして下記判定基準に基づいて評価した。b値が大きい程、黄色が濃い。
(判定基準)
「◎」…b値が1.0以下である(合格)
「○」…b値が1.0より大きく2.0以下である(合格)
「×」…b値が2.0より大きい。
【0092】
<成形性評価法>
成形深さフリーのストレート金型を用いて外装材に対し下記成形条件で深絞り1段成形を行い、各成形深さ(9.0mm、8.5mm、8.0mm、7.5mm、7.0mm、6.5mm、6.0mm、5.5mm、5.0mm、4.5mm、4.0mm、3.5mm、3.0mm、2.5mm、2.0mm)毎に成形性を評価し、コーナー部にピンホールが全く発生しない良好な成形を行うことができる最大成形深さ(mm)を調べ、下記判定基準に基づいて成形性を評価した。なお、ピンホールの有無は、ピンホールを透過してくる透過光の有無を目視により観察することにより調べた。
(成形条件)
成形型…パンチ:33.3mm×53.9mm、ダイ:80mm×120mm、コーナーR:2mm、パンチR:1.3mm、ダイR:1mm
しわ押さえ圧…ゲージ圧:0.475MPa、実圧(計算値):0.7MPa
材質…SC(炭素鋼)材、パンチRのみクロムメッキ。
(判定基準)
「◎」…ピンホール及び割れが発生しない最大成形深さが7.0mm以上である(合格)
「○」…ピンホール及び割れが発生しない最大成形深さが5.0mm以上7.0mm未満である(合格)
「×」…ピンホール及び割れが発生しない最大成形深さが5.0mm未満である。
【0093】
<熱間ラミネート強度評価法>
得られた蓄電デバイス用外装材から幅15mm×長さ150mmの試験体を切り出し、120℃の温度環境下に前記試験体を1分間保持した後、そのまま120℃環境下で、JIS K6854-3(1999年)に準拠して、島津アクセス社製ストログラフ(引張試験装置)(AGS-5kNX)を使用して引張速度100mm/分で外側層2と金属箔層4との間でT型剥離させた時の剥離強度を測定し、これを熱間ラミネート強度(N/15mm幅)とし、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…熱間ラミネート強度が「2.0N/15mm幅」以上である(合格)
「○」…熱間ラミネート強度が「1.5N/15mm幅」以上、「2.0N/15mm幅」未満である(合格)
「△」…熱間ラミネート強度が「1.0N/15mm幅」以上、「1.5N/15mm幅」未満である(合格)
「×」…熱間ラミネート強度が「1.0N/15mm幅」未満である。
【0094】
<耐シール性評価法>
成形深さフリーのストレート金型を用いて外装材に対して成形深さ5.0mmの深絞り1段成形を行った後、一対の成形品の周縁部同士を互いの内側層同士で接触するように重ね合わせた状態で、テスター産業株式会社製のヒートシール装置(TP-701-A)を用いて、ヒートシール温度:170℃、シール圧:0.2MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:6秒の条件にて片面加熱によりヒートシールを行った。ヒートシール品の外観を目視で観察し、ヒートシール品の外側層と金属箔層の間における浮き箇所やデラミネーション箇所(剥離箇所)の有無やその長さを調べて、下記判定基準に基づいて耐シール性を評価した。
(判定基準)
「◎」…浮き箇所やデラミネーション箇所がない(合格)
「○」…浮き箇所、デラミネーション箇所の長さが0mmを超えて2mm以下(合格)
「△」…浮き箇所、デラミネーション箇所の長さが2mmを超えて4mm以下(合格)
「×」…浮き箇所、デラミネーション箇所の長さが4mmより長い。
【0095】
表から明らかなように、本発明の実施例1~17の蓄電デバイス用外装材は、耐黄変性に優れ、良好な成形性を確保できると共に、熱間ラミネート強度が十分に得られ、耐シール性も良好であった。
【0096】
これに対し、硬化剤として芳香族多官能イソシアネートを単独で使用した比較例1、2では、耐黄変性に劣っていた。また、硬化剤として芳香環を有する脂肪族多官能イソシアネートを単独で使用した比較例3では、成形性に劣っていた。