(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141693
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】インターロイキン2に結合する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220921BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220921BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220921BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220921BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220921BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220921BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220921BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220921BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220921BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220921BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220921BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220921BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220921BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220921BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220921BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220921BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220921BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/18
C07K16/46
C07K16/24
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P31/00
A61P11/06
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105725
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2019538102の分割
【原出願日】2017-09-28
(31)【優先権主張番号】62/401,158
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/421,038
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514027908
【氏名又は名称】ゾーマ (ユーエス) リミテッド ライアビリティ カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】509011835
【氏名又は名称】エムユーエスシー ファウンデーション フォー リサーチ ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ルール マリナ
(72)【発明者】
【氏名】ルービンシュタイン マーク
(72)【発明者】
【氏名】イッサフラス ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】ラオ リュウェリン
(72)【発明者】
【氏名】リー ウー
(72)【発明者】
【氏名】ベディンガー ダニエル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】リンド クリスティン カムフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ アグネス チョピン
(72)【発明者】
【氏名】タケウチ トシヒコ
(72)【発明者】
【氏名】シュワイマー ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ホア
(72)【発明者】
【氏名】ミルザ アメール エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン カーク ダブリュー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトインターロイキン2(IL-2)に対するヒト抗体、ならびにIL-2活性の調節のためのかかる抗体の使用方法、およびがん・自己免疫疾患・感染症などの状態の治療における使用方法を提供する。
【解決手段】1×10-10M以下の親和性KDでヒトインターロイキン2(IL-2)に結合し、IL-2受容体アルファ(IL-2 Rα)サブユニットとのIL-2の結合を阻害する、ヒト抗体又はヒト化抗体であって、IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達及びIL-2 Rβγを介したIL-2シグナル伝達を阻害し、IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達をIL-2 Rβγを介するよりも大きい程度で阻害する、ヒト抗体又はヒト化抗体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1×10-10M以下の親和性KDでヒトインターロイキン2(IL-2)に結合し、IL-2受容体アルファ(IL-2 Rα)サブユニットとのIL-2の結合を阻害する、ヒト抗体またはヒト化抗体であって、
IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達およびIL-2 Rβγを介したIL-2シグナル伝達を阻害し、
IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達を、IL-2 Rβγを介するよりも大きい程度で阻害する、ヒト抗体またはヒト化抗体。
【請求項2】
ヒトまたはマウスのIL-2 RβまたはIL-2 Rβγ複合体を発現する細胞へのヒトIL-2の結合を完全には遮断しない、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
IL-2 Rα、IL-2 Rβγ、またはIL-2 RαβγへのIL-2の結合に対してアロステリックな部位で結合する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
ネガティブモジュレーター抗体であり、任意選択で、IL-2とIL-2受容体α(IL-2 Rα)との間の結合親和性を少なくとも約2倍、任意選択で最大1000倍弱めることができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体と複合体化したIL-2が、IL-2 Rβおよびγcを発現するCHO細胞に5nM以下のEC50で結合するか、または前記抗体と複合体化したIL-2が、IL-2 Rβを発現する(しかしγcを発現しない)CHO細胞に100nM以下のEC50で結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
ヒトIL-2と、マウスIL-2、ラットIL-2、またはウサギIL-2のうちの1つまたは複数とに結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を、IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞よりも大きい程度で阻害する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を200倍以上阻害する、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を10倍以下阻害する、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞における増殖のIL-2刺激を、IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞よりも大きい程度で阻害する、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現するNK細胞の増殖のIL-2刺激を15倍超阻害する、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しないBaF3細胞の増殖のIL-2刺激を10倍未満阻害する、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、またはXPA.92.099からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号18、21、24、もしくは27に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号19、22、25、もしくは28に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
【請求項15】
(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号18、21、24、もしくは27に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号19、22、25、もしくは28に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
【請求項16】
(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(b)配列番号18、21、24、もしくは27に記載される、独立して選択された重鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(c)配列番号19、22、25、もしくは28に記載される、独立して選択された重鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
【請求項17】
前記重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列のうちの少なくとも2つが、配列番号17~28のいずれか1つに記載されている、請求項14~16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列のうちの3つが、配列番号17~28のいずれか1つに記載されている、請求項14~16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
配列番号1、3、5、または7に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項20】
配列番号1、3、5、または7に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
重鎖可変領域中の3つ全てのHCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または配列番号17~28のいずれか1つに記載されるHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列を有するポリペプチド配列を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
1つまたは複数の重鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応する1つまたは複数のアミノ酸で置き換えられている、請求項14~21のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちのいずれか1つをさらに含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項24】
配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも2つを含む、請求項14~23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも3つを含む、請求項14~24のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号30、33、36、もしくは39に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号31、34、37、もしくは40に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと
を含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号30、33、36、もしくは39に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号31、34、37、もしくは40に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
【請求項28】
(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(b)配列番号30、33、36、もしくは39に記載される、独立して選択された軽鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(c)配列番号31、34、37、もしくは40に記載される、独立して選択された軽鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと
を含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項29】
前記軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列のうちの少なくとも2つが、配列番号29~40のいずれか1つに記載されている、請求項26~28に記載の抗体。
【請求項30】
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項31】
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の抗体。
【請求項32】
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の抗体。
【請求項33】
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項32に記載の抗体。
【請求項34】
軽鎖可変領域中の3つ全てのLCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチド配列を含み、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列が配列番号29~40に記載されている、請求項26~29のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項35】
(i)軽鎖可変領域の3つ全てのLCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列であって、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列が配列番号29~40に記載されている、アミノ酸配列と、(ii)重鎖可変領域の3つ全てのHCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列が配列番号17~28のいずれか1つに記載されている、アミノ酸配列とを含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項36】
軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体であって、
(a)軽鎖可変領域が、配列番号29、32、35、もしくは38、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号30、33、36、もしくは39、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号31、34、37、もしくは40、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含み、かつ/または
(b)重鎖可変領域が、配列番号17、20、23、もしくは26、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号18、21、24、もしくは27、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号19、22、25、もしくは28、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含む、
IL-2に結合する抗体。
【請求項37】
(a)軽鎖可変領域が、配列番号29、32、35、もしくは38、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号30、33、36、もしくは39、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号31、34、37、もしくは40、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含み、かつ/または
(b)重鎖可変領域が、配列番号17、20、23、もしくは26、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号18、21、24、もしくは27、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号19、22、25、もしくは28、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含む、
請求項31に記載の抗体。
【請求項38】
IL-2受容体アルファ(IL-2 R-α)サブユニットへのIL-2の結合を阻害する、請求項14~37のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項39】
IL-2 Rβγ複合体へのIL-2の結合を部分的に阻害する、請求項14~38のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項40】
IL-2 Rα、IL-2 Rβγ、またはIL-2 RαβγへのIL-2の結合に対してアロステリックな部位で結合する、請求項14~39のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項41】
ネガティブモジュレーター抗体であり、任意選択で、IL-2とIL-2受容体α(IL-2 Rα)との間の結合親和性を少なくとも約2倍、任意選択で最大1000倍弱めることができる、請求項14~40のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項42】
IL-2 Rβγ複合体へのIL-2の結合のEC50を3倍超シフトさせない、請求項14~41のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項43】
ヒトIL-2と、マウスIL-2、ラットIL-2、またはウサギIL-2のうちの1つまたは複数とに結合する、請求項14~42のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項44】
IL-2によるIL-2 Rの刺激に応答した細胞におけるSTAT5活性化を阻害する、請求項14~43のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項45】
ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項14~44のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項46】
修飾されたもしくは未修飾のIgG、IgM、IgA、IgD、IgE、それらの断片、またはそれらの組み合わせである重鎖定常領域をさらに含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項47】
1つまたは複数の軽鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応する1つまたは複数のアミノ酸で置き換えられている、請求項26~38のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項48】
XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、またはXPA.92.099からなる群から選択される、請求項14~16、26~28、または35のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項49】
前記軽鎖可変領域に付着したヒト軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~48のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項50】
前記軽鎖定常領域が、修飾されたもしくは未修飾のラムダ軽鎖定常領域、カッパ軽鎖定常領域、それらの断片、またはそれらの組み合わせである、請求項50に記載の抗体。
【請求項51】
ヒトインターロイキン2(IL-2)に10-10M以下の親和性KDで結合する、請求項14~41のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項に記載の重鎖または軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項53】
発現制御配列に作動可能に連結された、請求項52に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項54】
請求項53に記載のベクターまたは請求項49に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項55】
重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含み、重鎖および軽鎖の核酸が、異なる核酸によって、または同じ核酸で発現される、請求項54に記載の宿主細胞。
【請求項56】
好適な条件下で請求項54または55に記載の宿主細胞を培養する工程と、抗体を回収する工程とを含む、請求項54または55に記載の宿主細胞を使用して抗体を産生する方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法によって産生された、抗体。
【請求項58】
請求項1~52のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、滅菌医薬組成物。
【請求項59】
IL-2活性の抑制を必要とする患者においてIL-2活性を抑制するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項1~52のいずれか一項に記載の抗体または請求項58に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項60】
インターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン2受容体(IL-2 R)のレベルまたは活性の増加に関連付けられる疾患、状態、または障害を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項1~51のいずれか一項に記載の抗体または請求項58に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項61】
前記疾患、状態、または障害が、がん、微生物感染、喘息、および自己免疫疾患からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記がんが、黒色腫、腎細胞癌、リンパ腫、肉腫、乳癌、肺癌、膀胱癌、結腸癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頚部癌、皮膚癌、および扁平上皮癌(SCC)からなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記投与が、前記対象における腫瘍体積を低減させる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記投与が、前記対象におけるCD4+T細胞に対するCD8+T細胞の比率を増加させる、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記抗体が、静脈内、腫瘍内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、または皮下に投与される、請求項60~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体が、第2の薬剤と併用して投与される、請求項60~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
第2の薬剤が、IL-2、IL-2バリアント、チェックポイント阻害剤、CART/TIL薬剤、腫瘍抗原に対する抗体、またはワクチンである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体、抗CTLA-4抗体、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤からなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
第2の薬剤がIL-2またはIL-2バリアントである場合、前記抗体を、投与前にIL-2またはIL-2バリアントと複合体化することができるか、または別個に投与することができる、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記IL-2またはIL-2バリアントと前記IL-2抗体とが、1:1のモル比で投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記IL-2抗体をIL-2またはIL-2バリアントと併用して投与することが、IL-2の治療指数(TI)を少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10倍、またはそれよりも大きく増加させる、請求項69または70に記載の方法。
【請求項72】
チェックポイント阻害剤、CART/TIL薬剤、腫瘍抗原に対する抗体、またはワクチンの投与をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記抗体が、1週間に1回、2週間ごとに1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、または3カ月ごとに1回投与される、請求項60~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
インターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン2受容体(IL-2 R)の増加に関連付けられる状態または障害の治療における使用のための、請求項1~51のいずれか一項に記載の抗体を含む組成物または請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項74】
IL-2またはIL-2 Rの発現または活性の増加に関連付けられる状態または障害の治療における使用のための、請求項1~51のいずれか一項に記載の抗体を含む組成物または請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項75】
細胞を、細胞におけるIL-2活性を調節するのに有効な量の請求項1~51のいずれか一項に記載の抗体または請求項58に記載の医薬組成物と接触させる工程を含む、細胞におけるIL-2活性を調節するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/401,158号および2016年11月11日に出願された米国仮特許出願第62/421,038号の優先権を主張するものであり、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出され、ファイル名:51134_Seqlisting.txt;サイズ:20,399バイト;作成日:2017年9月28日として識別されるコンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本開示は、概して、インターロイキン2(IL-2)抗体、およびIL-2シグナル伝達と関連付けられる状態を治療するための療法であって、それを必要とする対象に治療有効量のIL-2抗体を投与することを含む、療法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
インターロイキン2(IL-2)は、サイトカインの4つのαヘリックス束ファミリーのメンバーである、15kDaのペプチドである(Wang et al.,Annual review of immunology 27,29-60(2009)(非特許文献1))。これはT細胞増殖因子として1976年に最初に同定され、T細胞増殖因子(TCGF)、リンパ球馴化培地(lymphocyte-conditioned medium)(LCM)因子、T細胞分裂促進因子(TMF)、キラーヘルパー因子(KHF)、およびT細胞置換因子(TRF)を含む多様な名称で称されてきた(Lotze MT,Interleukin-2,In Human Cytokines:Handbook for basic and clinical research,pp 81-96(1992)(非特許文献2)、Smith et al.,Cytokine Reference,pp 113-125(2001)(非特許文献3))。IL-2は、CD4 T細胞、CD8 T細胞、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む多くの細胞によって産生される。IL-2は、T細胞受容体(TCR)の関与を含む幅広いシグナルの後に産生され、ナイーブT細胞上のTCRおよびCD28などの共刺激分子が結合すると急速かつ一時的に産生される。IL-2分泌の一過性の性質は、TCRシグナルによる転写誘導および共刺激シグナルによるIL-2 mRNAの安定化、続いてIL-2遺伝子の転写サイレンシングおよびIL-2 mRNAの急速な分解に依拠する。IL-2がその自己産生を阻害する、典型的な自己調節的フィードバックループが近年記載されている(Malek TR,Annual review of immunology 26,453-479(2008)(非特許文献4))。
【0005】
IL-2の受容体(IL-2 R)は、3つの鎖、IL-2 Rα(別名、CD25)、IL-2 Rβ(別名、CD122)、および共通ガンマ鎖γc(別名、CD132)からなる。3つの受容体鎖は、様々な細胞型上に別個に、かつ異なって発現される。IL-2は、Jak/Stat、PI3K-AKT、およびMAPK経路などの細胞経路を活性化させるIL-2 Rβとγcとの間の相互作用を介してシグナル伝達する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wang et al.,Annual review of immunology 27,29-60(2009)
【非特許文献2】Lotze MT,Interleukin-2,In Human Cytokines:Handbook for basic and clinical research,pp 81-96(1992)
【非特許文献3】Smith et al.,Cytokine Reference,pp 113-125(2001)
【非特許文献4】Malek TR,Annual review of immunology 26,453-479(2008)
【発明の概要】
【0007】
本開示は、IL-2シグナル伝達に関連付けられるか、またはIL-2シグナル伝達の調節が臨床的(もしくは免疫)応答の改善をもたらし得る、疾患または障害の治療のための方法および組成物を提供する。本開示は、ヒトIL-2に結合する抗体を提供する。本明細書に記載される抗体は、IL-2 R鎖(IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγc)のいずれかまたは全てへのIL-2結合に対して示差的効果を有し得る。特に、本開示は、がんの治療におけるかかる抗体の使用方法を提供する。
【0008】
様々な実施形態では、本開示は、2×10-9M以下の親和性KDを有するIL-2に特異的な抗体を提供する。様々な実施形態では、本開示は、1×10-10M以下の親和性KDを有するIL-2に特異的な抗体を提供する。例示的な実施形態では、本明細書に記載される抗IL-2抗体は、少なくとも10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、またはそれ以下の親和性で結合する。ある特定の実施形態では、親和性は、表面プラズモン共鳴またはKinExAアッセイによって測定される。
【0009】
様々な実施形態では、抗体は、IL-2 RαβγおよびIL-2 Rβγを介したIL-2シグナル伝達を阻害し、抗体は、IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達を、IL-2 Rβγを介するよりも大きい程度で阻害する。
【0010】
関連する実施形態では、抗体は、IL-2に結合し、IL-2受容体アルファ(IL-2 Rα)サブユニットとのIL-2の結合を阻害する。様々な実施形態では、抗体は、IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達を、IL-2 Rβγを介するよりも大きい程度で阻害する。
【0011】
関連する実施形態では、抗体は、ヒトまたはマウスのIL-2 RβまたはIL-2 Rβγ複合体を発現する細胞へのヒトIL-2の結合を完全には遮断しない。関連する態様では、抗体は、IL-2 Rα、またはIL-2 Rβおよびγc鎖へのIL-2の結合に対してアロステリックな部位で結合する。
【0012】
様々な実施形態では、抗体は、ネガティブモジュレーター抗体であり、任意選択で、抗体は、IL-2とIL-2受容体α(IL-2 Rα)との間の結合親和性を少なくとも約2倍、任意選択で最大で1000倍弱めることができる。他の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、IL-2とIL-2 Rαとの間の結合親和性を少なくとも2~1000倍、10~100倍、2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、または1000倍弱めることができる。様々な実施形態では、IL-2と複合体化された抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現する細胞に約5nM以下のEC50で結合する。様々な実施形態では、抗体は、IL-2 Rβを発現する(が、γcを発現しない)細胞に約200nM以下のEC50で結合する。いくつかの実施形態では、IL-2と複合体化された抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現する細胞に0.1~100nM、0.1~10nM、1~5nMの範囲のEC50で結合する。様々な実施形態では、IL-2と複合体化された抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現する細胞に1、2、3、4、または5nMのEC50で結合する。いくつかの実施形態では、IL-2と複合体化された抗体は、IL-2 Rβを発現する(が、γcを発現しない)細胞に10~500nM、10~300nM、10~200nMの範囲のEC50で結合する。様々な実施形態では、IL-2と複合体化された抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現する細胞に10、50、100、150、または200nMのEC50で結合する。関連する実施形態では、IL-2と複合体化された抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現する細胞に、IL-2 Rβを発現する(が、γcを発現しない)細胞よりも9~40倍結合する。
【0013】
様々な実施形態では、抗体は、ヒトIL-2と、マウスIL-2、ラットIL-2、またはウサギIL-2のうちの1つまたは複数とに結合する。
【0014】
様々な実施形態では、抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞よりも大きい程度で、IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を阻害する。例えば、マウスIL-2 Rα、Rβ、およびγcを発現する細胞(例えば、CTLL-2)において、EC50シフトは、マウスIL-2 Rβおよびγc(例えば、マウス初代NK細胞)の場合の13~16倍と比較して、293~793倍の範囲であり得る。ヒトIL-2 Rα、Rβ、およびγcを発現する細胞(例えば、NK92細胞株)では、EC50シフトは、ヒトIL-2 Rβおよびγcを発現する細胞(ヒトCD25+枯渇初代NK細胞)の場合の45~104倍、またはヒトRβおよびγcを発現するように操作されたCHO-K1細胞の場合の5~9倍と比較して、495~1855倍の範囲であり得る。EC50シフトの比は、マウスRβおよびγcと比較してマウスRα、Rβ、およびγcでは18~60倍大きく(対照抗体MAB602、別名クローン5355では76倍)、ヒトRβおよびγcと比較してヒトRα、Rβ、およびγcでは9~19倍大きかった(MAB602では50倍)。関連する実施形態では、抗体は、ヒトIL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを400倍以上発現する細胞の場合、マウスIL-2、Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を200倍以上阻害する。関連する実施形態では、抗体は、STAT5活性化のIL-2刺激を、ヒトIL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞において10倍未満(CHO-Rβγ)もしくは150倍(例えば、ヒトCD25+枯渇初代NK細胞において)、またはマウスIL-2 Rβおよびγcを発現する細胞(例えば、マウスNK細胞)において20倍未満阻害する。
【0015】
様々な実施形態では、抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞よりも大きい程度で、IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞における増殖のIL-2刺激を阻害する。様々な実施形態では、抗体は、IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現するNK細胞の増殖のIL-2刺激を20倍超阻害する。様々な実施形態では、抗体は、IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しないBaF3細胞の増殖のIL-2刺激を12倍未満阻害する。
【0016】
一実施形態では、IL-2抗体は、モノクローナル抗体である。
【0017】
様々な実施形態では、IL-2抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。
【0018】
様々な実施形態では、抗体は、XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、またはXPA.92.099からなる群から選択される。
【0019】
一態様では、本開示は、(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、(b)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号18、21、24、もしくは27に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、(c)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号19、22、25、もしくは28に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体を提供する。
【0020】
関連する態様では、本開示は、(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、(b)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号18、21、24、もしくは27に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、(c)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号19、22、25、もしくは28に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体を提供する。
【0021】
さらなる態様では、本開示は、(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、(b)配列番号18、21、24、もしくは27に記載される、独立して選択された重鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、(c)配列番号19、22、25、もしくは28に記載される、独立して選択された重鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体を提供する。
【0022】
ある特定の実施形態では、重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列のうちの少なくとも2つは、配列番号17~28のいずれか1つに記載されている。関連する実施形態では、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列のうちの3つは、配列番号17~28のいずれか1つに記載されている。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書において企図される抗体は、配列番号1、3、5、または7に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号1、3、5、または7に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む抗体が本明細書に提供される。
【0024】
本明細書に記載される抗体は、重鎖可変領域中の3つ全てのHCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むことがさらに企図され、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列は、配列番号17~28のいずれか1つに記載されている。
【0025】
ある特定の実施形態では、本明細書において企図される抗体は、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸(複数可)で置き換えられた1つ以上の重鎖フレームワークアミノ酸を含む。
【0026】
一実施形態では、本明細書において企図される抗体は、配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちのいずれか1つをさらに含む。他の実施形態では、本明細書において企図される抗体は、配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも2つを含む。他の実施形態では、本明細書において企図される抗体は、配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも3つを含む。
【0027】
別の態様では、本明細書に記載される抗体は、(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、(b)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号30、33、36、もしくは39に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、(c)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号31、34、37、もしくは40に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、を含む。
【0028】
代替的な実施形態では、本明細書において企図される抗体は、(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、(b)配列番号30、33、36、もしくは39に記載される、独立して選択された軽鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、(c)配列番号31、34、37、もしくは40に記載される、独立して選択された軽鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、を含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列のうちの少なくとも2つは、配列番号29~40のいずれか1つに記載されている。
【0030】
本明細書に記載される抗体は、配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むことがさらに企図される。関連する実施形態では、抗体は、配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、抗体は、配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。なお別の実施形態では、抗体は、配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0031】
さらなる実施形態では、本明細書に記載される抗体は、軽鎖可変領域中の3つ全てのLCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列は、配列番号29~40のいずれか1つに記載されている。
【0032】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、(i)軽鎖可変領域中の3つ全てのLCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列であって、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列が配列番号29~40のいずれか1つに記載されている、アミノ酸配列と、(ii)重鎖可変領域の3つ全てのHCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列が配列番号17~28のいずれか1つに記載されている、アミノ酸配列と、を含む。
【0033】
様々な実施形態では、本開示は、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、インターロイキン2(IL-2)に結合する抗体を提供し、(a)軽鎖可変領域は、少なくとも配列番号29、32、35、もしくは38、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号30、33、36、もしくは39、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号31、34、37、もしくは40、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を含み、かつ/あるいは(b)重鎖可変領域は、少なくとも配列番号17、20、23、もしくは26、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号18、21、24、もしくは27、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号19、22、25、もしくは28、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を含む。
【0034】
様々な実施形態では、本開示は、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、IL-2に結合する抗体を提供し、(a)軽鎖可変領域は、少なくとも配列番号29、32、35、もしくは38、もしくはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号30、33、36、もしくは39、もしくはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号31、34、37、もしくは40、もしくはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3を含み、かつ/あるいは(b)重鎖可変領域は、少なくとも配列番号17、20、23、もしくは26、もしくはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号18、21、24、もしくは27、もしくはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号19、22、25、もしくは28、もしくはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3を含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、IL-2受容体アルファ(IL-2 R-α)サブユニットとのIL-2の結合を阻害する。関連する実施形態では、本明細書に記載される抗体は、IL-2 Rβγ複合体へのIL-2の結合を完全には遮断しない。
【0036】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、IL-2 Rα、IL-2Rβ、IL-2Rγ、および/またはIL-2 RβγへのIL-2の結合に対してアロステリックな部位で結合する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、IL-2に結合し、IL-2Rα、IL-2Rβ、および/またはγcへの結合優先度に影響を及ぼす立体構造変化を誘導する。
【0037】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、IL-2 Rβγ複合体へのIL-2の結合のEC50を3倍超シフトさせない。
【0038】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、IL-2とのIL-2 Rの刺激に応じて細胞におけるSTAT5活性化を阻害する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、重鎖定常領域をさらに含み、当該重鎖定常領域は、修飾もしくは非修飾のIgG、IgM、IgA、IgD、IgE、それらの断片、またはそれらの組み合わせである。
【0040】
ある特定の実施形態では、1つ以上の軽鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸(複数可)で置き換えられている抗体が提供され、当該フレームワークは、任意選択で、
図12に示される変化のうちの1つ以上を含む。
【0041】
一態様では、本開示の抗体は、XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、またはXPA.92.099からなる群から選択される。
【0042】
一実施形態では、本明細書に記載される抗体は、軽鎖可変領域に結合したヒト軽鎖定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域は、修飾もしくは非修飾ラムダ軽鎖定常領域、カッパ軽鎖定常領域、それらの断片、またはそれらの組み合わせである。
【0043】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される重鎖または軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を提供する。様々な実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、または16に記載されている。
【0044】
さらなる態様では、本開示は、発現制御配列に作動可能に連結された、本明細書において企図される核酸分子を含む発現ベクターを提供する。本開示の発現ベクターまたは核酸分子を含む宿主細胞もまた企図される。ある特定の実施形態では、本開示は、重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含み、重鎖および軽鎖核酸は、異なる核酸によって、または同じ核酸上で発現される。
【0045】
関連する態様では、本開示は、本明細書に記載される宿主細胞を使用して抗体を産生する方法を提供し、当該方法は、好適な条件下で宿主細胞を培養することと、前記抗体を回収することと、を含む。本明細書に開示される方法によって産生された抗体もまた提供される。
【0046】
本開示はさらに、本明細書に開示される抗体と薬学的に許容される担体とを含む滅菌医薬組成物を企図する。
【0047】
別の態様では、本開示は、IL-2活性の抑制を必要とする患者においてIL-2活性を抑制するための方法であって、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。様々な実施形態では、当該方法が、制御性T細胞/CD25 hi、Tエフェクター/CD 25 lo、および/または高親和性三量体IL-2受容体(IL-2 Rαβγ)もしくはIL-2Rαなどの細胞集団におけるIL-2活性を抑制することが企図されている。
【0048】
別の態様では、本開示は、インターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン2受容体(IL-2 R)の発現または活性の増加に関連付けられる疾患、状態、または障害を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0049】
様々な実施形態では、本開示は、インターロイキン2(IL-2)シグナル伝達の調節が対象における免疫応答を改善させるのに有益である疾患、状態、または障害を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0050】
別の態様では、本開示は、がん、微生物感染、喘息、および自己免疫疾患からなる群から選択される疾患、状態、または障害を治療するための方法を提供する。
【0051】
様々な実施形態では、がんは、黒色腫、腎細胞癌、リンパ腫、肉腫、乳癌、肺癌、膀胱癌、結腸癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、膀胱癌、頭頚部癌、皮膚癌、および扁平上皮癌(SCC)からなる群から選択される。
【0052】
様々な実施形態では、微生物感染は、ウイルス、細菌、または真菌感染である。
【0053】
様々な実施形態では、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与することは、対象における腫瘍体積を低減させる。
【0054】
様々な実施形態では、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与することは、対象におけるCD8+T細胞対CD4+T細胞の比を増加させる。様々な実施形態では、抗体は、CD8+T細胞対CD4+T細胞の比を、少なくとも約1倍、任意選択で最大で100倍増加させる。他の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD8+T細胞対CD4+T細胞の比を、少なくとも1~100倍、10~100倍、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、または100倍増加させることができる。
【0055】
様々な実施形態では、本明細書に開示される抗体は、静脈内、動脈内、腹腔内、腫瘍内、筋肉内、皮内、または皮下に投与される。
【0056】
様々な実施形態では、本明細書に開示される抗体は、第2の薬剤と併用して投与される。関連する実施形態では、第2の薬剤は、IL-2、IL-2バリアント、もしくはIL-2レベルを増加させることができる薬剤、チェックポイント阻害剤、CART/TIL薬剤、腫瘍抗原に対する抗体、またはワクチンである。関連する実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体、抗CTLA-4抗体、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤からなる群から選択される。
【0057】
様々な実施形態では、抗体がIL-2と併用して投与される場合、IL-2またはIL-2バリアントおよびIL-2抗体は、1:1モル比で投与される。様々な実施形態では、IL-2抗体をIL-2またはIL-2バリアントと併用して投与することは、IL-2の治療指数(TI)を少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍以上増加させる。
【0058】
様々な実施形態では、抗体が、IL-2、およびチェックポイント阻害剤、CART/TIL薬剤、腫瘍抗原に対する抗体、またはワクチンなどの第2の薬剤と併用して投与され得ることが企図される。
【0059】
様々な実施形態では、IL-2と併用して、また任意選択でチェックポイント阻害剤または他の補助的腫瘍学的治療薬と併用して、IL-2抗体を投与することであって、それにより非IL-2応答性腫瘍型に対する効果が、増殖および/または転移の阻害に対して感受性となる、投与することを含む、疾患、例えば、がんを治療する方法が本明細書に提供される。
【0060】
様々な実施形態では、IL-2は、本明細書に記載される別の第2の薬剤の投与を伴うかまたは伴わずに、投与前に抗体と複合体化されてもよい。
【0061】
様々な実施形態では、本明細書に開示される抗体は、1週間に1回、2週間ごとに1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、または3カ月ごとに1回もしくはそれよりも少ない頻度で投与される。
【0062】
様々な実施形態では、IL-2およびIL-2抗体が予め混合されている場合、当該薬剤は、1週間に2回一緒に投与されてもよい。様々な実施形態では、IL-2は、0.1~10mg/kgの用量で投与される。様々な実施形態では、IL-2抗体は、静脈内に投与される。
【0063】
Il-2抗体と関連するIL-2を添加する場合、IL-2が、順次に、例えば同じ日に投与されることが企図され、ある特定の実施形態では、IL-2抗体は、IL-2の投与の前に投与される。様々な実施形態では、IL-2抗体は、1週間に1回投与され、1週間に1回または1週間に複数回のIL-2の投与が抗体の投与に続く。
【0064】
様々な実施形態では、IL-2抗体は、1週間に1回投与され、IL-2治療薬(例えば、Proleukin)は、既知の処方スケジュールで、かつより低いIL-2用量で投与される。
【0065】
様々な実施形態では、本開示は、IL-2またはIL-2Rの発現または活性の増加または減少に関連付けられる状態または障害の治療において、本明細書に開示される抗体を含む組成物または医薬組成物を投与するための方法を提供する。
【0066】
一態様では、本開示は、細胞におけるIL-2活性を調節するための方法であって、当該細胞を、当該細胞におけるIL-2活性を調節するのに有効な量の本明細書に開示される抗体または医薬組成物と接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0067】
IL-2またはIL-2Rの発現または活性に関連付けられる本明細書に記載される障害のいずれかの治療のための、IL-2に結合する本開示の前述の抗体もしくは組成物のいずれかを含む組成物、または医薬品の調製におけるその使用もまた企図されている。任意選択で使用のための好適な指示書と共に、前述の抗体または組成物のいずれかを含むシリンジ、例えば単回使用もしくはプレフィルドシリンジ、滅菌密封容器、例えばバイアル、ボトル、容器、および/またはキットもしくはパッケージもまた企図される。
【0068】
本明細書に記載される各特徴もしくは実施形態、または組み合わせは、本発明の態様のいずれかの非限定的で例示的な例であり、そのため、本明細書に記載される任意の他の特徴もしくは実施形態、または組み合わせと組み合わせ可能であることが意図される。例えば、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「ある特定の実施形態」、「さらなる実施形態」、「特定の例示的な実施形態」、および/または「別の実施形態」などの表現で特徴が記載される場合、これらの実施形態の種類は、考えられるあらゆる組み合わせを列挙することを必要とすることなく、本明細書に記載される任意の他の特徴または特徴の組み合わせと組み合わされることが意図されている特徴の非限定的な例である。かかる特徴または特徴の組み合わせは、本発明の態様のいずれにも提供される。範囲内にある値の例が開示される場合、これらの例はいずれも、範囲の考えられる終点として企図され、かかる終点の間のあらゆる数値が企図され、上限および下限の終点のあらゆる組み合わせが想定される。
【0069】
本明細書中の見出しは、読者の便宜のためであり、限定的であることを意図しない。本発明のさらなる態様、実施形態、および変形は、詳細な説明および/または図面および/または特許請求の範囲から明らかになろう。
[本発明1001]
1×10-10M以下の親和性KDでヒトインターロイキン2(IL-2)に結合し、IL-2受容体アルファ(IL-2 Rα)サブユニットとのIL-2の結合を阻害する、ヒト抗体またはヒト化抗体であって、
IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達およびIL-2 Rβγを介したIL-2シグナル伝達を阻害し、
IL-2 Rαβγを介したIL-2シグナル伝達を、IL-2 Rβγを介するよりも大きい程度で阻害する、ヒト抗体またはヒト化抗体。
[本発明1002]
ヒトまたはマウスのIL-2 RβまたはIL-2 Rβγ複合体を発現する細胞へのヒトIL-2の結合を完全には遮断しない、本発明1001の抗体。
[本発明1003]
IL-2 Rα、IL-2 Rβγ、またはIL-2 RαβγへのIL-2の結合に対してアロステリックな部位で結合する、本発明1001または1002の抗体。
[本発明1004]
ネガティブモジュレーター抗体であり、任意選択で、IL-2とIL-2受容体α(IL-2 Rα)との間の結合親和性を少なくとも約2倍、任意選択で最大1000倍弱めることができる、本発明1001~1003のいずれかの抗体。
[本発明1005]
前記抗体と複合体化したIL-2が、IL-2 Rβおよびγcを発現するCHO細胞に5nM以下のEC50で結合するか、または前記抗体と複合体化したIL-2が、IL-2 Rβを発現する(しかしγcを発現しない)CHO細胞に100nM以下のEC50で結合する、本発明1001~1004のいずれかの抗体。
[本発明1006]
ヒトIL-2と、マウスIL-2、ラットIL-2、またはウサギIL-2のうちの1つまたは複数とに結合する、本発明1001~1005のいずれかの抗体。
[本発明1007]
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を、IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞よりも大きい程度で阻害する、本発明1001~1006のいずれかの抗体。
[本発明1008]
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を200倍以上阻害する、本発明1001~1007のいずれかの抗体。
[本発明1009]
IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞におけるSTAT5活性化のIL-2刺激を10倍以下阻害する、本発明1001~1008のいずれかの抗体。
[本発明1010]
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現する細胞における増殖のIL-2刺激を、IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しない細胞よりも大きい程度で阻害する、本発明1001~1009のいずれかの抗体。
[本発明1011]
IL-2 Rα、IL-2 Rβ、およびγcを発現するNK細胞の増殖のIL-2刺激を15倍超阻害する、本発明1001~1010のいずれかの抗体。
[本発明1012]
IL-2 Rβおよびγcを発現するがIL-2 Rαを発現しないBaF3細胞の増殖のIL-2刺激を10倍未満阻害する、本発明1001~1011のいずれかの抗体。
[本発明1013]
XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、またはXPA.92.099からなる群から選択される、本発明1001~1012のいずれかの抗体。
[本発明1014]
(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号18、21、24、もしくは27に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号19、22、25、もしくは28に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
[本発明1015]
(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号18、21、24、もしくは27に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ重鎖可変領域からの、配列番号19、22、25、もしくは28に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
[本発明1016]
(a)配列番号17、20、23、もしくは26に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(b)配列番号18、21、24、もしくは27に記載される、独立して選択された重鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(c)配列番号19、22、25、もしくは28に記載される、独立して選択された重鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
[本発明1017]
前記重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列のうちの少なくとも2つが、配列番号17~28のいずれか1つに記載されている、本発明1014~1016のいずれかの抗体。
[本発明1018]
前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列のうちの3つが、配列番号17~28のいずれか1つに記載されている、本発明1014~1016のいずれかの抗体。
[本発明1019]
配列番号1、3、5、または7に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1014~1018のいずれかの抗体。
[本発明1020]
配列番号1、3、5、または7に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1014~1019のいずれかの抗体。
[本発明1021]
重鎖可変領域中の3つ全てのHCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または配列番号17~28のいずれか1つに記載されるHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列を有するポリペプチド配列を含む、本発明1014~1016のいずれかの抗体。
[本発明1022]
1つまたは複数の重鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応する1つまたは複数のアミノ酸で置き換えられている、本発明1014~1021のいずれかの抗体。
[本発明1023]
配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちのいずれか1つをさらに含む、本発明1014~1022のいずれかの抗体。
[本発明1024]
配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも2つを含む、本発明1014~1023のいずれかの抗体。
[本発明1025]
配列番号29~40のいずれか1つに記載される軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも3つを含む、本発明1014~1024のいずれかの抗体。
[本発明1026]
(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号30、33、36、もしくは39に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号31、34、37、もしくは40に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと
を含む、本発明1014~1022のいずれかの抗体。
[本発明1027]
(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(b)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号30、33、36、もしくは39に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと、
(c)(a)と同じ軽鎖可変領域からの、配列番号31、34、37、もしくは40に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれらと少なくとも70%の同一性を有するそれらのバリアントと
を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体。
[本発明1028]
(a)配列番号29、32、35、もしくは38に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(b)配列番号30、33、36、もしくは39に記載される、独立して選択された軽鎖CDR2アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと、
(c)配列番号31、34、37、もしくは40に記載される、独立して選択された軽鎖CDR3アミノ酸配列、または1つもしくは2つのアミノ酸が改変されたそれらのバリアントと
を含む、本発明1014~1022のいずれかの抗体。
[本発明1029]
前記軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列のうちの少なくとも2つが、配列番号29~40のいずれか1つに記載されている、本発明1026~1028の抗体。
[本発明1030]
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1023~1029のいずれかの抗体。
[本発明1031]
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1030の抗体。
[本発明1032]
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1030の抗体。
[本発明1033]
配列番号9、11、13、または15のいずれか1つに記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、本発明1032の抗体。
[本発明1034]
軽鎖可変領域中の3つ全てのLCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチド配列を含み、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列が配列番号29~40に記載されている、本発明1026~1029のいずれかの抗体。
[本発明1035]
(i)軽鎖可変領域の3つ全てのLCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列であって、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列が配列番号29~40に記載されている、アミノ酸配列と、(ii)重鎖可変領域の3つ全てのHCDRにわたって少なくとも70%同一であるアミノ酸配列であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列が配列番号17~28のいずれか1つに記載されている、アミノ酸配列とを含む、本発明1026~1029のいずれかの抗体。
[本発明1036]
軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、ヒトインターロイキン2(IL-2)に結合する抗体であって、
(a)軽鎖可変領域が、配列番号29、32、35、もしくは38、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号30、33、36、もしくは39、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号31、34、37、もしくは40、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含み、かつ/または
(b)重鎖可変領域が、配列番号17、20、23、もしくは26、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号18、21、24、もしくは27、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号19、22、25、もしくは28、またはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含む、
IL-2に結合する抗体。
[本発明1037]
(a)軽鎖可変領域が、配列番号29、32、35、もしくは38、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号30、33、36、もしくは39、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号31、34、37、もしくは40、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含み、かつ/または
(b)重鎖可変領域が、配列番号17、20、23、もしくは26、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号18、21、24、もしくは27、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号19、22、25、もしくは28、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3を少なくとも含む、
本発明1031の抗体。
[本発明1038]
IL-2受容体アルファ(IL-2 R-α)サブユニットへのIL-2の結合を阻害する、本発明1014~1037のいずれかの抗体。
[本発明1039]
IL-2 Rβγ複合体へのIL-2の結合を部分的に阻害する、本発明1014~1038のいずれかの抗体。
[本発明1040]
IL-2 Rα、IL-2 Rβγ、またはIL-2 RαβγへのIL-2の結合に対してアロステリックな部位で結合する、本発明1014~1039のいずれかの抗体。
[本発明1041]
ネガティブモジュレーター抗体であり、任意選択で、IL-2とIL-2受容体α(IL-2 Rα)との間の結合親和性を少なくとも約2倍、任意選択で最大1000倍弱めることができる、本発明1014~1040のいずれかの抗体。
[本発明1042]
IL-2 Rβγ複合体へのIL-2の結合のEC50を3倍超シフトさせない、本発明1014~1041のいずれかの抗体。
[本発明1043]
ヒトIL-2と、マウスIL-2、ラットIL-2、またはウサギIL-2のうちの1つまたは複数とに結合する、本発明1014~1042のいずれかの抗体。
[本発明1044]
IL-2によるIL-2 Rの刺激に応答した細胞におけるSTAT5活性化を阻害する、本発明1014~1043のいずれかの抗体。
[本発明1045]
ヒト抗体またはヒト化抗体である、本発明1014~1044のいずれかの抗体。
[本発明1046]
修飾されたもしくは未修飾のIgG、IgM、IgA、IgD、IgE、それらの断片、またはそれらの組み合わせである重鎖定常領域をさらに含む、本発明1001~1045のいずれかの抗体。
[本発明1047]
1つまたは複数の軽鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応する1つまたは複数のアミノ酸で置き換えられている、本発明1026~1038のいずれかの抗体。
[本発明1048]
XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、またはXPA.92.099からなる群から選択される、本発明1014~1016、1026~1028、または1035のいずれかの抗体。
[本発明1049]
前記軽鎖可変領域に連結したヒト軽鎖定常領域をさらに含む、本発明1001~1048のいずれかの抗体。
[本発明1050]
前記軽鎖定常領域が、修飾されたもしくは未修飾のラムダ軽鎖定常領域、カッパ軽鎖定常領域、それらの断片、またはそれらの組み合わせである、本発明1050の抗体。
[本発明1051]
ヒトインターロイキン2(IL-2)に10-10M以下の親和性KDで結合する、本発明1014~1041のいずれかの抗体。
[本発明1052]
本発明1001~1051のいずれかの重鎖または軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
[本発明1053]
発現制御配列に作動可能に連結された、本発明1052の核酸分子を含む発現ベクター。
[本発明1054]
本発明1053のベクターまたは本発明1049の核酸分子を含む、宿主細胞。
[本発明1055]
重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含み、重鎖および軽鎖の核酸が、異なる核酸によって、または同じ核酸で発現される、本発明1054の宿主細胞。
[本発明1056]
好適な条件下で本発明1054または1055の宿主細胞を培養する工程と、抗体を回収する工程とを含む、本発明1054または1055の宿主細胞を使用して抗体を産生する方法。
[本発明1057]
本発明1056の方法によって産生された、抗体。
[本発明1058]
本発明1001~1052のいずれかの抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、滅菌医薬組成物。
[本発明1059]
IL-2活性の抑制を必要とする患者においてIL-2活性を抑制するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明1001~1052のいずれかの抗体または本発明1058の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1060]
インターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン2受容体(IL-2 R)のレベルまたは活性の増加に関連付けられる疾患、状態、または障害を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明1001~1051のいずれかの抗体または本発明1058の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1061]
前記疾患、状態、または障害が、がん、微生物感染、喘息、および自己免疫疾患からなる群から選択される、本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記がんが、黒色腫、腎細胞癌、リンパ腫、肉腫、乳癌、肺癌、膀胱癌、結腸癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頚部癌、皮膚癌、および扁平上皮癌(SCC)からなる群から選択される、本発明1061の方法。
[本発明1063]
前記投与が、前記対象における腫瘍体積を低減させる、本発明1062の方法。
[本発明1064]
前記投与が、前記対象におけるCD4+T細胞に対するCD8+T細胞の比率を増加させる、本発明1060~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
前記抗体が、静脈内、腫瘍内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、または皮下に投与される、本発明1060~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
前記抗体が、第2の薬剤と併用して投与される、本発明1060~1065のいずれかの方法。
[本発明1067]
第2の薬剤が、IL-2、IL-2バリアント、チェックポイント阻害剤、CART/TIL薬剤、腫瘍抗原に対する抗体、またはワクチンである、本発明1066の方法。
[本発明1068]
チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体、抗CTLA-4抗体、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤からなる群から選択される、本発明1067の方法。
[本発明1069]
第2の薬剤がIL-2またはIL-2バリアントである場合、前記抗体を、投与前にIL-2またはIL-2バリアントと複合体化することができるか、または別個に投与することができる、本発明1067の方法。
[本発明1070]
前記IL-2またはIL-2バリアントと前記IL-2抗体とが、1:1のモル比で投与される、本発明1069の方法。
[本発明1071]
前記IL-2抗体をIL-2またはIL-2バリアントと併用して投与することが、IL-2の治療指数(TI)を少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10倍、またはそれよりも大きく増加させる、本発明1069または1070の方法。
[本発明1072]
チェックポイント阻害剤、CART/TIL薬剤、腫瘍抗原に対する抗体、またはワクチンの投与をさらに含む、本発明1069の方法。
[本発明1073]
前記抗体が、1週間に1回、2週間ごとに1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、または3カ月ごとに1回投与される、本発明1060~1072のいずれかの方法。
[本発明1073]
インターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン2受容体(IL-2 R)の増加に関連付けられる状態または障害の治療における使用のための、本発明1001~1051のいずれかの抗体を含む組成物または本発明1058の医薬組成物。
[本発明1074]
IL-2またはIL-2 Rの発現または活性の増加に関連付けられる状態または障害の治療における使用のための、本発明1001~1051のいずれかの抗体を含む組成物または本発明1058の医薬組成物。
[本発明1075]
細胞を、細胞におけるIL-2活性を調節するのに有効な量の本発明1001~1051のいずれかの抗体または本発明1058の医薬組成物と接触させる工程を含む、細胞におけるIL-2活性を調節するための方法。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1A】
図1Aおよび1Bは、XPA.92.099の配列に対する、選択されたクローンの重鎖および軽鎖の複数の配列アラインメントを示す。
【
図2A】
図2A~2Dは、可変IL-2濃度の存在下での、IL-2 RβまたはIL-2 Rβγを発現する細胞へのXPA.92.019(
図2A)、XPA.92.041(
図2B)、XPA.92.042(
図2C)、XPA.92.099(
図2D)の結合の測定値を示す。
【
図3A】
図3A~3Cは、固定濃度のIL-2(100nM)の不在下および存在下での、XPA.92.019(
図3A)、XPA.92.041(
図3B)、およびXPA.92.042(
図3C)抗体の力価測定、ならびにIL-2 RβまたはIL-2 Rβγを発現する細胞への結合の測定値を示す。
【
図4A】
図4A~4Cは、0.001~100ng/mLの抗IL-2抗体または対照の存在下での、IL-2に対するBaF3-IL-2 Rβγ(
図4A)、NK-92(
図4B)、およびCTLL-2(
図4C)細胞のIL-2に対する増殖応答を示す。
【
図5A】
図5A~5Cは、NK92(
図5A)、BaF3-IL-2 Rβγ(
図5B)、およびCTLL-2細胞(
図5C)のIL-2誘導性増殖について、EC50シフトとしてのIL-2抗体の効果を示す。
【
図6】
図6は、異なる種のIL-2配列のアラインメントおよびIL-2タンパク質上のIL-2 Rアルファ鎖結合部位を示す。
【
図7A】
図7A~7Cは、抗IL-2抗体複合体または対照の存在下での、ヒトNK-92(
図7A)、ヒト初代NK細胞(Rα枯渇)(
図7B)、またはマウス初代NK細胞(
図7C)におけるSTAT5のIL-2誘導性リン酸化を示す。
【
図8A】
図8A~8Gは、脾臓中のT細胞およびNK細胞サブセットの出現頻度のグラフ表示を示す:IL-2/抗体複合体のインビボ投与後のC57BL/6マウスの、CD8+の割合(
図8A);CD4+の割合(
図8B);CD8+CD44hiの割合(
図8C);CD4+CD44+CD25hiの割合(
図8D);CD8+細胞対CD4+細胞の比(
図8E);NK細胞の割合(
図8F)、およびNK細胞による平均グランザイムB(GRZB)産生(
図8G)。
【
図9A】
図9A~9Fは、ビヒクル対照(
図9A)、IL-2/抗IL-2抗体複合体(
図9B)、抗PD-1抗体単独(
図9C)、IL-2/mAb、XPA.92.099+抗PD-1抗体(
図9D)、抗CTLA-4抗体単独(
図9E)、およびIL-2/mAb、XPA.92.099+抗CTLA-4抗体(
図9F)で治療した、皮下LLC異種移植マウスモデルにおける個々の腫瘍の応答を示す。各グラフ中、29日目の線は治療の最終日を表す。
【
図10A】
図10A~10Bは、IL-2/抗IL-2抗体複合体(IL-2cx)ならびに抗PD-1抗体単独療法および併用療法で治療した皮下LLC異種移植マウスの、平均腫瘍サイズ(
図10A)および後の生存率(
図10B)を示す。エラーバーは、平均値の+/-標準誤差(SEM)を表し、アーム当たりn=15マウスである。
【
図11A】
図11A~11Fは、IL-2/抗IL-2抗体複合体(XPA.92.019もしくはXPA.92.099 IL-2抗体を使用)単独で、または抗PD-1抗体と併用して治療した皮下LLC異種移植マウスモデルからのT細胞サブセットの百分率のグラフ表示を示す(CD8+の割合、
図11A;CD8+のCD44+、
図11B;CD4+、
図11C;CD4+のCD25+、
図11D;CD8+のIFNγ+、
図11E;CD8+/CD4+比、
図11F)。
【
図12-1】
図12は、IMGTシステムによって指定された、IL-2抗体、XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、およびXPA.92.099の重鎖および軽鎖の可変領域および相補性決定領域(CDR)の配列および対応する配列(ID)番号(NO)を示す。
【
図13A】
図13A~13Cは、200nMの固定濃度の示された抗体と予め複合体化された様々な用量のIL-2で24時間治療したヒトPBMCの分析を示す。NK細胞マーカーおよびCD69発現のために試料を染色し、フローサイトメトリーによって分析し、リンパ球/CD3-/CD56brightにゲートをかけた。ドナー603(
図13A)およびドナー625(
図13B)について、IL-2濃度に対してCD69の平均蛍光強度(MFI)をプロットした。IL-2単独に対する抗体治療曲線からのEC50値の倍数シフトを判定した(
図13C)。
【
図14A】
図14A~14Cは、200nMの固定濃度の示された抗体と予め複合体化された様々な用量のIL-2で24時間治療したヒトPBMCを示す。T
regマーカーおよびCD69発現のために試料を染色し、フローサイトメトリーによって分析し、リンパ球/CD3+CD4+/CD25+CD127-にゲートをかけた。ドナー603(
図14A)およびドナー625(
図14B)について、IL-2濃度に対してCD69のMFIをプロットした。IL-2単独に対する抗体治療曲線からのEC50値の倍数シフトを判定した(
図14C)。
【
図15】
図15Aおよび15Bは、200nMの固定濃度の示された抗体と予め複合体化された様々な用量のIL-2で24時間治療したヒトPBMCのT
regホメオスタシスを示す。T
regマーカーのために試料を染色し、フローサイトメトリーによって分析し、リンパ球/CD3+/CD4+/CD25+CD127-にゲートをかけた。ドナー603(
図15A)およびドナー625(
図15B)について、全CD4+集団のT
regの出現頻度が示される。
【
図16】
図16は、CT26結腸癌細胞を受け、IL-2単独で治療した動物における、腫瘍増殖帰結の分析結果を示す。
【
図17】
図17は、CT26結腸癌細胞、および異なるモル比のIL2:mAb IL2を受ける動物における腫瘍増殖帰結を示し、1:1比の抗体対IL-2を受ける動物が、他の比のIL-2/抗体併用治療を受ける動物と比較して改善された効力を有したことを実証する。
【
図18】
図18は、1:1または2:1モル比のmAb:IL2複合体で治療した動物における結腸細胞株のより遅い腫瘍増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、インターロイキン2(IL-2)に対するヒト抗体に関する材料、方法、および使用を提供する。特に、本開示は、がんの治療におけるかかる抗体の使用方法を提供する。
【0072】
本開示は、IL-2と相互作用し、IL-2活性、例えば、結合パートナーIL-2 Rα、IL-2 Rαβγ、およびIL-2 Rβγを介したシグナル伝達などを調節する分子または薬剤を提供する。本開示は、がん、微生物感染、喘息、および自己免疫疾患を治療するための治療薬を提供する。本明細書に開示される組成物は、有利に、腫瘍における免疫細胞活性を調節する能力を有し、それにより、一態様では、腫瘍の増殖に直接的または間接的に影響を及ぼす細胞集団に影響を及ぼすことによってがんを治療する方法を提供する。
【0073】
定義
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、限定的であることは意図しない。
【0074】
本明細書で使用される「CHO」は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を指す。
【0075】
本明細書で使用される「CHO-K1」は、親CHO細胞株のサブクローンを指し、これは、成体チャイニーズの卵巣に由来した。
【0076】
本明細書で使用される「IL-2」は、インターロイキン2を指す。
【0077】
本明細書で使用される「IL-2 R」は、インターロイキン2受容体を指す。IL-2 Rは、3つの鎖またはサブユニット、IL-2 Rα(別名、CD25)、IL-2 Rβ(別名、CD122)、および共通ガンマ鎖γc(別名、CD132)からなる。「IL-2Rβおよびγc」という用語は、αサブユニットを欠き、かつβおよびγサブユニットを含むIL-2Rを指すように、「IL-2Rβγ」という用語と互換的に使用される。
【0078】
本明細書で使用される「Treg」または「Tregs」は、制御性T細胞を指す。
【0079】
「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の生物活性を呈する限り、完全集合抗体(fully assembled antibody)、四量体抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原に結合することができる抗原断片(例えば、Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ、Fcab)、および前述のものを含む組換えペプチドが含まれる。「免疫グロブリン」または「四量体抗体」は、各々が可変領域および定常領域を含む2つの重鎖および2つの軽鎖からなる四量体糖タンパク質である。抗原結合部分は、組換えDNA技術、または無傷抗体の酵素切断もしくは化学的切断によって産生され得る。抗体断片または抗原結合部分には、抗体が所望の生物活性を保持する限り、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、CDR移植抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、直鎖抗体;キレート化組換え抗体(chelating recombinant antibody)、トリボディもしくはバイボディ、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、またはそれらのバリアントもしくは誘導体、およびポリペプチドの特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチド、例えば、1、2、3、4、5、または6個のCDR配列が含まれる。
【0080】
「免疫グロブリン」または「天然抗体」は、四量体糖タンパク質である。天然型免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100~110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、およびエプシロン(ε)として分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合しており、重鎖は、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。概して、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))(全目的のためにその全体が参照により組み込まれる)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、無傷免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗原結合部位を形成する。
【0081】
本明細書で使用される「重鎖可変領域」は、当該抗体重鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を指す。重鎖可変領域は、当該抗体重鎖の1、2、または3つのCDRを含有し得る。
【0082】
本明細書で使用される「軽鎖可変領域」は、当該抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を指す。軽鎖可変領域は、抗体によってカッパまたはラムダ軽鎖であり得る当該抗体軽鎖の1、2、または3つのCDRを含有し得る。
【0083】
「モノクローナル抗体」は、実質的に同種の抗体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然型変異の可能性を除いて同一である)から得た抗体を指す。
【0084】
本明細書で使用される「抗体バリアント」は、参照抗体可変領域ドメインの可変領域において少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、または挿入を含有する抗体ポリペプチド配列を指す。バリアントは、非修飾抗体と実質的に同種または実質的に同一であり得る。
【0085】
本明細書で使用される「キメラ抗体」は、典型的には異なる種に由来する2つの異なる抗体に由来する配列を含有する抗体を指す(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。最も典型的には、キメラ抗体は、ヒトおよびげっ歯類抗体断片、一般的にはヒト定常領域およびマウス可変領域を含む。
【0086】
「中和抗体」は、それが結合する標的抗原の生物学的機能を排除するかまたは大幅に低減させることができる抗体分子である。したがって、「中和」抗標的抗体は、酵素活性、リガンド結合、または細胞内シグナル伝達などの生物学的機能を排除するかまたは大幅に低減させることができる。
【0087】
「単離された」抗体は、同定され、その天然環境の成分から分離および回収されたものである。その天然環境の混入成分は、抗体の診断的または治療的使用に干渉する物質であり、これには酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。様々な実施形態では、抗体は、(1)ローリー法によって判定した場合、95重量%超の抗体、および最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用して還元または非還元条件下でのSDS-PAGEによる同種性が得られるまで、精製される。単離された抗体には、組換え細胞内の原位置の抗体が含まれ、これは抗体の天然環境の少なくとも1つの成分は存在しなくなるためである。しかしながら、通常、抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されることになる。
【0088】
本明細書で使用される場合、標的に「特異的に結合する」、「それに対して特異的である」、または標的抗原に対して「免疫応答性」である抗体は、同様の抗原よりも大きい親和性で標的抗原に結合する抗体または抗体物質を指す。本開示の一態様では、標的結合ポリペプチド、またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、他の種、すなわち非ヒト種の標的へのその結合親和性と比較して、ヒト標的により大きい親和性で結合するが、標的のオルソログを認識し、かつそれに結合するポリペプチドへの結合は、提供される範囲内である。
【0089】
例えば、その同族の抗原「に対して特異的である」抗体またはその断片であるポリペプチドは、抗体の可変領域が、検出可能な優先度で目的のポリペプチドを認識し、かつそれに結合することを示す(すなわち、ファミリーメンバー間の局在化した配列同一性、相同性、または類似性の存在の可能性にもかかわらず、結合親和性における測定可能な差によって同じファミリーの他の既知のポリペプチドから目的のポリペプチドを識別することができる)。特異的抗体は、抗体の可変領域の外側、および特に分子の定常領域内の配列との相互作用を介して、他のタンパク質(例えば、ELISA技術におけるS.aureusプロテインAまたは他の抗体)とも相互作用し得ることが理解されよう。本開示の方法における使用のための抗体の結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、当該技術分野でルーチン的に実践されている。かかるアッセイの包括的な考察については、Harlow et al.,(Eds),Antibodies A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor,NY(1988),Chapter 6を参照されたい。本方法における使用のための抗体は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して産生することができる。
【0090】
「エピトープ」という用語は、抗原結合領域のうちの1つ以上において抗体などの選択的結合剤によって認識され、かつ結合されることができる任意の分子の部分を指す。エピトープは通常、アミノ酸または炭水化物側鎖などの化学活性表面基からなり、特異的な三次元構造特徴、ならびに特異的な電荷特徴を有する。本明細書で使用されるエピトープは、連続していても連続していなくてもよい。さらに、エピトープは、それらが、抗体を生成するために使用されるエピトープと同一の三次元構造を有するが、抗体免疫応答を刺激するために使用された標的に見出されるアミノ酸残基を含まないかまたはいくつかのみを含むという点で、模倣性(ミモトープ)であり得る。本明細書で使用される場合、ミモトープは、選択的結合剤によって結合されたエピトープと異なる抗原とは見なされず、選択的結合剤は、エピトープおよびミモトープの同じ三次元構造を認識する。
【0091】
本開示の抗体物質およびポリペプチドに関連して使用される場合の「誘導体」という用語は、ユビキチン化、治療剤または診断剤へのコンジュゲーション、標識化(例えば、放射性核種または様々な酵素による)、PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合、およびオルニチンなどのアミノ酸の化学的合成による挿入または置換などの技術によって化学的に修飾されたポリペプチドを指し、これらは通常、ヒトタンパク質において生じない。誘導体は、本開示の誘導体化されていない分子の結合特性を保持する。
【0092】
「治療有効量」という用語は、本明細書において、治療される疾患の症状または徴候を改善させるかまたは減らすのに有効な本開示の標的特異的組成物の量を示す。
【0093】
本明細書の方法に関して使用される「治療する」、「治療された」、「治療すること」、および「治療」という用語は、事象、疾患、または状態の臨床症状、発症、または進行を一時的または永続的に、部分的または完全に排除、低減、抑制、または改善することを指す。かかる治療は、有用であるために絶対的である必要はない。
【0094】
本方法は、本明細書に記載される例示的な配列を含み得る標的特異的抗体、その断片、バリアント、および誘導体、本明細書に引用される標的特異的抗体を含む医薬製剤の使用を提供する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り当てられ得、これらはさらにサブクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構造は周知である。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有し、例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプは、ADCC活性を有する。本明細書に開示される抗体は、それが定常ドメインを含む場合、これらのサブクラスまたはアイソタイプのいずれかであり得る。
【0095】
本開示は、
図12に記載される例示的な配列を含み得る標的特異的抗体、その断片、バリアント、および誘導体、上記に引用される標的特異的抗体を含む医薬製剤、医薬製剤を調製する方法、ならびに医薬製剤および化合物を用いて患者を治療する方法を提供する。本明細書に記載され、かつ本方法において使用される抗体は、約2×10
-9M以下、または約1×10
-10M、または約10
-10M以下、10
-11M、10
-12M、または10
-13 M以下、または10
-10~10
-13MのK
Dの、1つ以上のIL-2抗原に対する結合親和性を呈し得る。かかる親和性は、従来の技術を使用して、例えば、平衡透析によって、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、製造業者によって概説された一般的な手順を使用してBIAcore 2000器具)を使用することによって、
125I標識化標的抗原を使用した放射免疫測定によって、または以下の実施例に記載されるかもしくは当業者に既知である別の方法によって、容易に判定され得る。親和性データは、例えば、Scatchard et al.,(Ann NY,Acad.Sci.,51:660,1949)の方法によって分析され得る。
【0096】
KinExA動的排除アッセイ(kinetic exclusion assay)も抗体のその抗原に対する親和性を測定するのに有用である。KinExA技術は、溶液相と固体層との間の結合事象ではなく、溶液相中の結合事象を測定する。さらに、結合事象を測定するための多くの方法は少なくとも1つの反応物質が固定化または標識化によって修飾されることを必要とする一方、KinExA法は、研究中の分子の修飾を必要としない。KinExA法は、現在利用可能である他の方法よりも幅広い結合定数が測定されることを可能とすると考えられている。KinExAデバイスおよび抗体特性評価のための操作は、製造業者(Sapidyne Instruments,Inc.,Boise,ID)から入手可能であり、公開文献、例えば、米国特許第6,664,114号およびDarling et al.,「Kinetic Exclusion Assay Technology:Characterization of Molecular Interactions」 Assay and Drug Development Technologies,2:647-657(2004)に見出すことができる。
【0097】
インターロイキン2(IL-2)
インターロイキン2(IL-2)は、サイトカインの4つのαヘリックス束ファミリーのメンバーである、15kDaのペプチドである(Wang et al.,Annual review of immunology 27,29-60(2009))。これはT細胞増殖因子として1976年に最初に同定され、T細胞増殖因子(TCGF)、リンパ球馴化培地(lymphocyte-conditioned medium)(LCM)因子、T細胞分裂促進因子(TMF)、キラーヘルパー因子(KHF)、およびT細胞置換因子(TRF)を含む多様な名称で称されてきた(Lotze MT,Interleukin-2,In Human Cytokines:Handbook for basic and clinical research,pp 81-96(1992)、Smith et al.,Cytokine Reference,pp 113-125(2001))。IL-2は、主に活性化CD4+T細胞によって、次に活性化CD8+T細胞によって、ならびにより小さい程度で活性化樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む多くの細胞によって産生される。IL-2は、ナイーブT細胞上のTCRおよびCD28などの共刺激分子が結合すると急速かつ一時的に産生される。IL-2分泌の一過性の性質は、TCRシグナルによる転写誘導および共刺激シグナルによるIL-2 mRNAの安定化、続いてIL-2遺伝子の転写サイレンシングおよびIL-2 mRNAの急速な分解に依拠する。IL-2がその自己産生を阻害する、典型的な自己調節的フィードバックループが近年記載されている(Malek TR,Annual review of immunology 26,453-479(2008))。
【0098】
初めは免疫刺激因子と考えられていたが、後の研究において免疫寛容における役割も明かされた(Malek TR,Annual review of immunology 26,453-479(2008))。現在では、IL-2が複雑な役割を有し、免疫活性化、特異的記憶、および免疫寛容の維持に寄与することが広く認められている(Waldmann T,Arthritis research 4(3)S161-167(2002)、Bachmann and Oxenius,EMBO reports 8,1142-1148(2007))。IL-2刺激の特定の効果は、例えば、ヘルパーT細胞の存在、CD28シグナル伝達を介した共刺激、および制御性T細胞による抑制など要因を含む、生物学的文脈に依拠する。この生物学的文脈の一部は、異なる細胞型上の3つのIL-2受容体鎖の示差的発現を介して、かつ急性抗原刺激または慢性感染症などの異なる条件下で媒介される。さらに、IL-2およびその受容体は、ポジティブおよびネガティブフィードバック機構の両方によって制御されている(Boyman and Sprent,Nat Rev Immunol 12,180-190(2012))。
【0099】
IL-2ムテイン
IL-2バリアント(ムテイン)は、野生型IL-2と比較して改善された治療効果を有し得る。IL-2 Rβに対する結合親和性が減少したIL-2ムテイン、例えばBAY 50-4798(IL-2のN88R変異を含有する)およびSelectikine(IL-2のD20T変異を持つ)が生成されている(Shanafelt et al,Nat.Biotechnol.19:1197-1202(2000)、Laurent et al,J.Transl.”Med.”11,5(2013)。しかしながら、臨床試験で試験されたとき、これらのIL-2ムテインは、患者における毒性の減少を示さなかった。IL-2 Rαに対する結合親和性が減少したIL-2ムテイン(例えば、「no-αムテイン」GA501およびGA504が生成されている(Carmenate et al,J.Immunol.190:6230-38(2013)、Klein et al,Cancer Res.73,486(2013))。アゴニスティックIL-2ムテインH9およびD10(別名、IL-2スーパーカイン)は、200倍増加した親和性でIL-2 Rβと会合し、IL-2 Rαを必要とせずに二量体IL-2Rに効率的に結合した。かかる結合は、インビトロおよびインビボでのSTAT5リン酸化および細胞増殖の増加をもたらした(Levin et al,Nature 484:529-33(2012))。H9変異体H9-RETRは、H9内に4つの変異(L18R、Q22E、Q126T、およびS130R)を導入することによって操作され、IL-2 Rβ結合を保持したが、大幅に減少したγcに対する親和性を実証した(Mitra et al,Immunity 42:815-25)。IL-2ムテインはまた、WO2014/100014、WO2015164815、WO205/118016、WO2016/030350、US8,759,486、およびUS9,266,938に記載されている。
【0100】
インターロイキン2受容体(IL-2 R)
IL-2の受容体は、3つの鎖、IL-2 Rα(別名、CD25)、IL-2 Rβ(別名、CD122)、および共通ガンマ鎖γc(別名、CD132)からなる。3つの受容体鎖は、様々な細胞型上に別個に、かつ異なって発現される。IL-2は、Jak/Stat、PI3K-AKT、およびMAPK経路などの細胞経路を活性化させるIL-2 Rβとγcとの間の相互作用を介してシグナル伝達する。IL-2 Rαとの相互作用を介してIL-2に対するより高い感受性が付与され、これによりIL-2に独立して結合し、他の2つの鎖との会合を促進して、高親和性三量体受容体複合体を形成することができる(Malek TR,Annual review of immunology 26,453-479(2008))。Tac抗原とも称されるIL-2 RαはIL-2に対して特異的である一方、IL-2 Rβは、IL-2およびIL-15の両方によって利用され、共通β鎖と称されることもある。共通γ鎖とも称されるIL-2 Rγは、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、およびIL-21を含むいくつかのサイトカインによって共有される(Malek TR,Annual review of immunology 26,453-479(2008)、Smith KA,Cytokine Reference,pp 1459-1469(2001)、Boyman and Sprent Nat Rev Immunol 12,180-190(2012))。
【0101】
治療薬としてのIL-2
IL-2の組換え修飾版(アルデスロイキン)は、1992年に転移性腎細胞癌(RCC)、および1998年に転移性黒色腫(MM)の治療のために米国FDAによって承認された。これは患者のサブセットにおける生存率の改善に有効であり、わずかな割合の患者において恒久的、完全、および明白に治癒的な退縮をもたらすことが示されている(Dutcher et al.,Journal for Immunotherapy of Cancer 2(26)(2014)、Rosenberg SA,J Immunol 192,5451-5458(2014))。同時に、大多数の患者は重度の副作用を経験し、これには多くの場合、血管漏出症候群(VLS)、肺水腫、低血圧、腎損傷、CNS障害、および心臓作用が含まれる。ほとんどの副作用は可逆的であるものの、治療の管理の必要性のため、専門免疫療法センターでの入院が必要となり、これは、治療への受け入れのための厳しい適格性要件と共に、アルデスロイキンの利用を制限している(Dutcher et al.,Journal for Immunotherapy of Cancer 2(26)(2014))。アルデスロイキン治療の別の短所は、急速な腎クリアランスにより投与されるIL-2の半減期が短くなるため、数週間にわたって5日間にかかる複数の静脈投与が必要となることである。
【0102】
IL-2の複数の役割ならびにそれらの根底の機構および相互作用の理解における近年の進歩は、IL-2活性の一見逆説的な効果の説明に役立っている。例えば、制御性T細胞は、高レベルのIL-2 Rα(CD25)を発現し、低レベルのIL-2に対して感受性となる。したがって、低濃度のIL-2での治療は、活性化前にIL-2 Rαをほとんど発現しないエフェクターT細胞よりも抑制経路を刺激する可能性が高い。免疫抑制を提供することに加え、制御性T細胞はIL-2のためのシンクも提供し、それによりエフェクターT細胞が活性化される可能性をさらに低減させ得る。合わせて、これらの効果は、応答率の低減に寄与し得、抗腫瘍応答を達成するための高用量のIL-2治療の必要性を説明し得る(Boyman and Sprent,Nature reviews.Immunology 12,180-190(2012))。最後に、研究者らは、肺内皮細胞上のIL-2受容体の発現を報告しており、これは、これらの細胞型に対するIL-2の直接効果をもたらし得る。治療効果のために必要とされる高用量のIL-2は、内皮細胞上の低レベルのIL-2受容体を活性することができ、これが、VLS、肺水腫、および低血圧をもたらす損傷に寄与し得ることが提唱されている(Boyman and Sprent,Nature review:Immunology 12,180-190(2012)、Rafi-Janajreh et al.,J Immunol 163,1619-1627(1999)、Krieg et al.,PNAS 107,11906-11911(2010)、Downie et al.,American journal of respiratory cell and molecular biology 7,58-65(1992))。
【0103】
複数の手法が提案され、腫瘍学のためのIL-2に基づく免疫療法における潜在的な改善として試験されており、これには、1)IL-2 Rβγとのその相互作用を低減させる(Shanafelt et al.,Nature biotechnology 18,1197-1202(2000))かもしくは増加させる(Levin et al.,Nature 484,529-533(2012))か、またはIL-2 Rαとのその相互作用を低減させる(Charych et al.,Clin Cancer Res 22,680-690(2016)、米国特許第9,266,938号)ためのIL-2の操作;2)IL-2融合またはコンジュゲーションによる半減期の増加(WO2012/065086、WO2013/177187、WO2015/118016);3)抗受容体抗体を使用したIL-2治療の増強(WO2008/003473);4)がん抗原を標的とする抗体へのIL-2のコンジュゲート(WO2016/030350、Sujomoto et al.,Anticancer Res.34(1),89-97(2014));5)IL-2 RαへのIL-2の融合(WO2016/022671);および6)IL-2活性を調節する抗IL-2抗体の使用(Boyman et al.,Science 311,1924-1927(2006)、Letourneau et al.,PNAS 107,2171-2176(2010)、Spangler et al.,Immunity 42,815-825(2015)、Tomala and Kovar,Oncoimmunology 5(2016))(米国特許公開第2010/0310501号および同第2013/0142755号、WO2007/095643、WO2014/108748、WO2015/109212、WO2016/005950)が含まれる。IL-2受容体とのIL-2相互作用を調節する抗IL-2抗体の複数の報告が公開されているが、これらは、この有望な手法の概念の証拠を示すためにマウス抗ヒトIL-2または抗マウスIL-2について記載している(Krieg et al.,PNAS 107,11906-11911(2010)、Boyman et al.,Science 311,1924-1927(2006)、Letourneau et al.,PNAS 107,2171-2176(2010))(米国特許公開第2013/0142755号)。理想的には治療用抗体はヒト起源のものであるが、マウスまたは他の種からヒト化された抗体も許容され得る。代理抗体の使用は、最終的な治療候補の活性を完全には再現しない場合がある結合特性の微細な差異の危険性をもたらす。複数の研究により、これらの抗体のエピトープにおける差異の機能的な結果が強調されている(Su et al.,Science translational medicine 7,311(2015)、Rojas et al.,Immunobiology 218,105-113(2013)、Garcia-Martinez et al.,International immunology 24,427-446(2012))。
【0104】
抗体
上記のように、「免疫グロブリン」または「天然抗体」は、四量体糖タンパク質である。天然型免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各重鎖は、一端において可変ドメイン(VH)、続いていくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端において可変ドメイン(VL)、および他方の端部において定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列されている。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている(Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917,1987)。
【0105】
免疫グロブリン可変ドメインは、3つの超可変領域またはCDRによって結合した相対的に保存されたフレームワーク領域(FR)と同じ一般構造を呈する。N末端からC末端まで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987 and 1991))またはChothia&Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917,1987;Chothia et al.,Nature 342:878-883,1989の定義に従う。
【0106】
抗体の超可変領域は、抗原結合を担う抗体のCDRアミノ酸残基を指す。超可変領域は、CDRからのアミノ酸残基[例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)によって記載されるように軽鎖可変ドメインにおける残基24~34(L1)、50~56(L2)、および89~97(L3)、および重鎖可変ドメインにおける31~35(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3)]、ならびに/または超可変ループからの残基(例えば、[Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)]によって記載されるように軽鎖可変ドメインにおける残基26~32(L1)、50~52(L2)、および91~96(L3)、および重鎖可変ドメインにおける26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)を含む。CDRはまた、ImMunoGenTics(IMGT)付番(Lefranc,M.-P.,The Immunologist,7,132-136(1999)、Lefranc,M.-P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003)に従って同定および付番され、これは、軽鎖および重鎖可変ドメインにおけるCDR位置を以下のように記載する:CDR1、およそ残基27~38;CDR2、およそ残基56~65;およびCDR3、およそ残基105~116(生殖系列)または残基105~117(再配列)。一実施形態では、CDRは、本明細書に開示されるものとおよそ同様の長さの抗体重鎖または軽鎖の軽鎖可変ドメインにおいておよそ残基26~31(L1)、49~51(L2)、および88~98(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおいておよそ残基26~33(H1)、51~58(H2)、および97~110(H3)に位置することが企図される。しかしながら、当業者は、特定の抗体の配列が同定されるときにCDR残基の実際の位置が上記の予想される残基とは異なり得ることを理解する。
【0107】
フレームワークまたはFR残基は、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0108】
モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体の集団から得た抗体を指し、その集団の中で、混合における全ての抗体が、単一のクローンに由来する単一のアミノ酸配列を有する。モノクローナル抗体は、一般的に高度に特異的であり、単一の抗原部位またはエピトープを対象とする。対照的に、ポリクローナル抗体調製物は、典型的には、同じまたは異なる決定基(エピトープ)を対象とする多様なアミノ酸配列を有する抗体の混合を含む。それらの特異性に加え、モノクローナル抗体は、それらが、異なる特異性および特徴を有する他の免疫グロブリンが混入していない均質な培養物中で合成される点で有利である。
【0109】
下記のように、本明細書において企図されるモノクローナル、ヒト、ヒト化、および本明細書に記載される他の抗体を含む抗体は、典型的には、組換え生成されるか、またはインビトロもしくはインビボで遺伝子コードを操作する他の方法を介して生成され、したがって、天然に見出される特定の抗体を必ずしも反映しない。
【0110】
モノクローナル抗体は、Kohler et al.(Nature,256:495-7,1975)(Harlow&Lane;Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,New York(1988);Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al.,(Nature 352:624-628,1991)およびMarks et al.,(J.Mol.Biol.222:581-597,1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。モノクローナル抗体を産生するためのさらなる方法は当業者には周知である。
【0111】
上記の方法によって産生されたものなどのモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-セファロース、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および/または親和性クロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。
【0112】
IL-2抗体
本開示は、標的特異的抗体をコードするアミノ酸分子の使用を包含する。完全ヒト抗ヒトIL-2抗体は、ファージディスプレイライブラリから生成された。本明細書に記載されるIL-2抗体は、異なるIL-2受容体鎖とのヒトIL-2の相互作用を示差的に調節する。具体的には、その目的は、IL-2 Rβおよびγc結合およびシグナル伝達を許容しながら、IL-2 RαとのIL-2の相互作用を防止または低減させることができる抗体を同定することであった。これを達成するために、抗リガンド抗体を同定するために、示差的IL-2調節特性を保有することが予想される異なる組み合わせのヒトIL-2受容体鎖を発現するように操作された細胞を使用した新規のスクリーニング手法が生み出された。フローサイトメトリーに基づくスクリーニングを使用して、抗体を、IL-2制限に対するそれらの効果または操作された細胞株への結合の許容度に基づいて階層化した。目的の抗体もIL-2と複合体化させ、3つ全ての受容体鎖またはIL-2 Rβおよびγcのみのいずれかを発現するIL-2依存性細胞株を使用した機能アッセイにおいて試験した。インビボ試験により、これらの細胞株上で異なるパターンの活性を有する抗体が、マウスにおいてT細胞サブセットに対する示差的効果を媒介することが実証された。驚くべきことに、インビボでのCD4+T細胞に対するCD8+T細胞の優先的の刺激において最も強い差異をもたらした抗体は、受容体結合許容度のハイブリッドパターンを保有した。例えば、IL-2 Rα結合を完全には遮断しない抗体は、インビボ治療後に、IL-2 Rα結合を完全に遮断した抗体より大きいCD8+/CD4+比のT細胞をもたらした。CD8+/CD4+T細胞における最も大きいシフトをもたらした抗体が、IL-2 Rβγ細胞においてシグナル伝達の小程度の阻害を有したという発見も想定外であった。単独で、および他の免疫調節抗体と併用した、hIL-2とこれらの抗体との複合体の腫瘍学モデルにおける試験は、免疫療法剤としてのそれらの潜在性をさらに実証した。
【0113】
いくつかの実施形態では、ヒト抗標的抗体のアミノ酸配列は、
図12、もしくは配列番号9、11、13、もしくは15に記載される抗体XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、XPA.92.099の、またはそれらのバリアント(本明細書に記載されるヒト化抗体または任意の他のバリアントを含む)の成熟(すなわち、シグナル配列を欠く)軽鎖可変領域(VL)の1つ以上のCDRを含む。いくつかの実施形態では、VLは、前述の抗体のいずれか1つの軽鎖のCDR1の始まりからCDR3の終わりまでのアミノ酸配列を含む。
【0114】
一実施形態では、標的特異的抗体は、軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含み、これらの各々は独立して、配列番号9、11、13、または15に記載されるVL領域のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域、配列番号9、11、13、もしくは15に記載されるVL領域をコードする核酸から選択されるか、または配列番号10、12、14、もしくは16に記載されるVL領域をコードする核酸分子によってコードされる。
【0115】
いくつかの実施形態では、ヒト抗標的抗体のアミノ酸配列は、
図12、もしくは配列番号1、3、5、もしくは7に記載される抗体XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、XPA.92.099の、またはそれらのバリアント(本明細書に記載されるヒト化抗体または任意の他のバリアントを含む)の成熟(すなわち、シグナル配列を欠く)重鎖可変領域(VH)の1つ以上のCDRを含む。いくつかの実施形態では、VHは、前述の抗体のいずれか1つの重鎖のCDR1の始まりからCDR3の終わりまでのアミノ酸配列を含む。
【0116】
一実施形態では、標的特異的抗体は、重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含み、これらの各々は独立して、配列番号1、3、5、もしくは7に記載されるVH領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域、配列番号1、3、5、もしくは7に記載されるVH領域をコードする核酸から選択されるか、または配列番号2、4、6、もしくは8に記載されるVH領域をコードする核酸分子によってコードされる。
【0117】
標的特異的抗体のポリペプチドは、XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、またはXPA.92.099からなる群から選択されるVH領域のアミノ酸配列を含む抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み得る。
【0118】
別の実施形態では、抗体は、上記に開示される成熟軽鎖可変領域および上記に開示される成熟重鎖可変領域を含み、これらは任意選択で、
図12に記載されるように対形成している。
【0119】
例示的な実施形態では、本開示は、配列番号17~40のうちのいずれか1つのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、またはLCDR3のうちのいずれか1つ2、3、4、5、または6つをそれぞれ保持し、任意選択でかかるCDR(複数可)のいずれかにおける1つまたは2つの変異、例えば保存的または非保存的置換を含み、任意選択で
図12に記載されるように対形成している、モノクローナル抗体;配列番号17~28のいずれか1つのHCDR1、HCDR2、HCDR3、または重鎖可変領域の全てを保持し、任意選択でかかるCDR(複数可)のいずれかにおける1つまたは2つの変異を含み、任意選択で任意の好適な重鎖定常領域、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、またはIgEをさらに含む、モノクローナル抗体、そのヒト配列、またはそのハイブリッド;配列番号29~40のいずれか1つのLCDR1、LCDR2、LCDR3、または軽鎖可変領域の全てを保持し、任意選択でかかるCDR(複数可)のいずれかにおける1つまたは2つの変異を含み、任意の好適な軽鎖定常領域、例えばカッパまたはラムダ軽鎖定常領域をさらに含む、モノクローナル抗体、そのヒト配列、またはそのハイブリッドを企図する。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗体は、3つ全ての軽鎖CDR、3つ全ての重鎖CDR、または
図12に記載されるように対形成している軽鎖および重鎖の6つ全てのCDRを含む。いくつかの例示的な実施形態では、抗体由来の2つの軽鎖CDRは、異なる抗体由来の第3の軽鎖CDRと組み合わされてもよい。代替的には、特にCDRが高度に相同である場合には、1つの抗体由来のLCDR1は、異なる抗体由来のLCDR2およびなお別の抗体由来のLCDR3と組み合わされてもよい。同様に、特にCDRが高度に騒動である場合には、抗体由来の2つの重鎖CDRは、異なる抗体由来の第3のCDRと組み合わされてもよく、または1つの抗体由来のHCDR1は、異なる抗体由来のHCDR2およびなお別の抗体由来のHCDR3と組み合わされてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、配列番号1、3、5、もしくは7に記載される重鎖可変領域と少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上同一であるアミノ酸配列、および/または配列番号9、11、13、もしくは15に記載される軽鎖可変領域と少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上同一であるアミノ酸配列アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗体が提供され、抗体は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、またはLCDR3のうちの少なくとも1、2、3、4、5、または全てをさらに含む抗体が提供される。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域との同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列は、軽鎖CDRのうちの1、2、または3つを含み得る。他の実施形態では、重鎖可変領域との同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列は、重鎖CDRのうちの1、2、または3つを含み得る。
【0122】
別の実施形態では、
図12の抗体配列の重鎖可変領域中の3つ全てのHCDRまたは配列番号17~28に記載されるCDRと少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗体が提供される。
【0123】
関連する実施形態では、
図12の抗体配列の軽鎖可変領域中の3つ全てのLCDRまたは配列番号29~40に記載されるCDRと少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗体が提供される。
【0124】
さらなる実施形態では、
図12の抗体配列の重鎖および軽鎖可変領域中の6つ全てのCDRまたは配列番号17~40に記載されるCDRと少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗体が提供される。
【0125】
本開示の抗体は、抗体のCDR領域において1つもしくは2つ、またはそれ以上のアミノ酸置換、例えば、非保存的または保存的置換を有し得ることが企図される。
【0126】
関連する実施形態では、フレームワークの残基が改変されている。改変され得る重鎖フレームワーク領域は、重鎖CDR残基を囲む、H-FR1、H-FR2、H-FR3、およびH-FR4と示される領域内にあり、改変され得る軽鎖フレームワーク領域の残基は、軽鎖CDR残基を囲む、L-FR1、L-FR2、L-FR3、およびL-FR4と示される領域内にある。フレームワーク領域内のアミノ酸は、例えば、ヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークにおいて同定される任意の好適なアミノ酸で置き換えられ得る。
【0127】
XPA.92.019の重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、配列番号1および9にそれぞれ記載されている。XPA.92.041の重鎖および軽鎖アミノ酸配列、配列番号3および11にそれぞれ記載されている。XPA.92.042の重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、配列番号5および13にそれぞれ記載され、XPA.92.099の重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、配列番号7および15にそれぞれ記載されている。
【0128】
様々な実施形態では、抗体がIL-2と複合体化され、かつ哺乳動物宿主に注射される場合、複合体は、CD8+T細胞、NK細胞、NK T細胞、CD4+T細胞、腫瘍応答性CD8+T細胞、または腫瘍応答性CD4+T細胞のうちの1つ以上の増殖をもたらす。
【0129】
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗体は、受容体サブユニット使用または生物活性に影響を及ぼすIL-2における立体構造変化を誘導する。
【0130】
本開示の抗体は、当該技術分野であり、かつ本明細書に記載される抗体のより小さい抗原結合断片として使用され得ることがさらに企図される。
【0131】
抗体断片
抗体断片は、無傷の全長抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcab、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);多重特異性抗体断片、例えば二重特異性、三重特異性などの抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ);ミニボディ;キレート組換え抗体;トリボディまたはバイボディ;細胞内抗体;ナノボディ;小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体;および抗体断片から形成される他のポリペプチドが挙げられる。例えば、Holliger&Hudson,2005 Nat.Biotech.23:1126-36、Eyer&Hruska,Veterinarni Medicina 57:439-513,2012を参照されたい。
【0132】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有するVL、VH、CL、およびCH1ドメイからなる一価の断片である「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化するその能力をその名称が示す、残りの「Fc」断片と、を産生する。ペプチン処理は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片をもたらす。「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、リンカーペプチドによって結合した抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、VHおよびVLドメインの間に、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とするポリペプチドリンカーをさらに含み、これによって一本鎖抗体(scFv)がもたらされ、この中でVLおよびVH領域は対形成して、単一のタンパク質鎖として作製されることを可能とする合成リンカーを介して一価の分子を形成する(Bird et al.,Science 242:423-426,1988およびHuston et al.,PNAS 85:5879-5883,1988)。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.l 13,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)中のPluckthunを参照されたい。Fd断片は、VHおよびCH1ドメインからなる。
【0133】
さらなる抗体断片には、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544-546,1989)が含まれる。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上での2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによりこれらのドメインに別の鎖の相補性ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を作り出す、二価の抗体である。(例えば、EP404,097、WO93/11161、Holliger et al.,PNAS 90:6444-6448,1993、およびPoljak et al.,Structure 2:1121-1123,1994を参照されたい)。ダイアボディは、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0134】
軽鎖を欠く機能的重鎖抗体は、コモリザメ(Greenberg et al.,Nature 374:168-73,1995)、ウォビゴンシャーク(Nuttall et al.,Mol Immunol.38:313-26,2001)、ならびにラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびラマなどのラクダ科(Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-8,1993;Nguyen et al.,J.Mol.Biol.275:413,1998)において天然に存在する。これらの動物では、抗原結合部位は、単一のドメイン、VHHドメインに減っている。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成し、すなわち、これらの機能的抗体は、構造H2L2のみを有する重鎖のホモ二量体である(「重鎖抗体」または「HCAb」と称される)。ラクダ化VHHは、報告によれば、ヒンジ、CH2、およびCH3ドメインを含有し、かつCH1ドメインを欠くIgG2およびIgG3定常領域と組換えられる(Hamers-Casterman et al.,(上記))。例えば、ラマIgG1は、VHがヒンジ、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含有する定常領域と組み替えられる従来の(H2L2)抗体アイソタイプである一方、ラマIgG2およびIgG3は、CH1ドメインを欠き、かつ軽鎖を含有しない重鎖のみのアイソタイプである。ラクダ化VHHドメインは、高い親和性で抗原に結合し(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.276:26285-90,2001)、溶液中で高い安定性を保有する(Ewert et al.,Biochemistry 41:3628-36,2002)ことが見出されている。古典的なVHのみの断片は、可溶形態で産生することが困難であるが、フレームワーク残基がよりVHH様になるように改変された場合に、可溶性および特異的結合の改善を得ることができる。(例えば、Reichman,et al.J Immunol Methods 1999,231:25-38を参照されたい)。ラクダ化重鎖を有する抗体を生成するための方法は、例えば、米国特許公開第2005/0136049号および同第2005/0037421号に記載されている。
【0135】
15kDaのみの分子量を有する完全に機能的な抗原結合断片である抗体重鎖の可変ドメインは、ナノボディと称される(Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853-57,2004)。ナノボディライブラリは、Conrath et al.,(Antimicrob Agents Chemother 45:2807-12,2001)に記載されるように免疫化したヒトコブラクダから、またはRevets et al.,Expert Opin.Biol.Ther.5(1):111-24(2005)に記載されるように組換え法を使用して生成され得る。
【0136】
二重特異性Fab-scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab-(scFv)(2)(「トリボディ」)の産生は、Schoonjans et al.(J Immunol.165:7050-57,2000)およびWillems et al.(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.786:161-76,2003)に記載されている。バイボディまたはトリボディでは、scFv分子がVL-CL(L)およびVH-CH1(Fd)鎖の一方または両方に融合し、例えば、トリボディを産生するために、2つのscFvがFabのC末端に融合する一方、バイボディにおいては1つのscFvがFabのC末端に融合する。さらなるFab系二重特異性フォーマットは、Wu et al.,mAbs 7:470-482,2015に記載されている。
【0137】
ペプチドリンカーを介して(ヒンジレス)、またはIgGヒンジを介してCH3に融合したscFvからなる「ミニボディ」は、Olafsen,et al.,Protein Eng Des Sel.17(4):315-23,2004に記載されている。
【0138】
細胞内抗体は、細胞内発現を示し、かつ細胞内タンパク質機能を操作することができる一本鎖抗体である(Biocca,et al.,EMBOJ.9:101-108,1990、Colby et al.,PNAS.101:17616-21,2004)。抗体構築物を細胞内領域に保持する細胞シグナル配列を含む細胞内抗体は、Mhashilkar et al.,(EMBO J 14:1542-51,1995)およびWheeler et al.,(FASEBJ.17:1733-5.2003)に記載されるように産生され得る。トランスボディは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)が一本鎖可変断片(scFv)抗体に融合している細胞膜透過性抗体である(Heng et al.,Med Hypotheses.64:1105-8,2005)。
【0139】
標的タンパク質に対して特異的であるSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体がさらに企図される。これらの構築物は、抗体エフェクター機能を実行するのに必要な免疫グロブリンドメインに融合した抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国特許公開第2003/0133939号、および米国特許公開第2003/0118592号を参照されたい。
【0140】
1つ以上のCDRを分子内に共有結合、または非共有結合のいずれかによって組み込んで、イムノアドヘシンとすることができる。イムノアドヘシンは、より大きいポリペプチド鎖の一部としてCDR(複数可)を組み込み得るか、別のポリペプチド鎖にCDR(複数可)と共有結合させ得るか、またはCDR(複数可)を非共有結合によって組み込み得る。CDRは、イムノアドヘシンが目的の特定の抗原に特異的に結合することを許容する。
【0141】
したがって、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の1、2、および/または3つのCDR(例えば、任意選択でCDRまたは反復の間にスペーサアミノ酸配列を含む、単独もしくはタンデムでの単一のCDR、CDRの2、3、もしくは他の複数の反復、または単独もしくはタンデム反復の2もしくは3つのCDRの組み合わせ)を含む多様な組成物が、当該技術分野で既知の技術によって生成され得る。
【0142】
キメラ抗体およびヒト化抗体
キメラ抗体またはヒト化抗体は親非ヒト(例えば、マウス)モノクローナル抗体よりもヒトにおける免疫原性が低いため、それらは、はるかに低いアナフィラキシーの危険性を伴ってヒトの治療のために使用され得る。
【0143】
非ヒト(例えば、マウス)モノクローナル抗体の可変Igドメインがヒト定常Igドメインに融合しているキメラモノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の標準手順を使用して生成することができる(Morrison et al.,PNAS 81,6841-6855(1984)およびBoulianne et al.,Nature 312,643-646,(1984)を参照されたい)。
【0144】
ヒト化抗体は、例えば、(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークおよび定常領域にグラフトすること(当該技術分野において「CDRグラフト」によるヒト化と称されるプロセス)、(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによってそれらをヒト様表面と「クローキング」すること(当該技術分野において「ベニアリング」と称されるプロセス)、または代替的には、(3)抗原結合もしくはタンパク質フォールディングに悪影響を及ぼす可能性が低いが、ヒト環境において免疫原性を低減させる可能性が高いと判定された位置でヒトアミノ酸を置換すること(例えば、HUMAN ENGINEERING(商標))を含む多様な方法によって達成され得る。本開示において、ヒト化抗体は、「CDRグラフトされた」、「ヒト化」、「ベニアリングされた」、および「HUMAN ENGINEERED(商標)」抗体を含む。これらの方法は、例えば、Jones et al.,Nature 321:522 525(1986)、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,81:6851-6855(1984)、Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65-92(1988)、Verhoeyer et al.,Science 239:1534-1536(1988)、Padlan,Molec.Immun.28:489-498(1991)、Padlan,Molec.Immunol.31:169-217(1994)、Studnicka et al.米国特許第5,766,886号、Studnicka et al.,(Protein Engineering 7:805-814,1994、Co et al.,J.Immunol.152,2968-2976(1994)、Riechmann,et al.,Nature 332:323-27(1988)、およびKettleborough et al.,Protein Eng.4:773-783(1991)に開示されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれている。CDRグラフト技術は当該技術分野において既知であり、例えば、Riechmann,et al.Nature 332:323-27(1988)を参照されたい。さらなる抗体ヒト化方法は、Safdan et al.,Biotech.Gen.Eng.Rev.29:175-86,2013によって概説されている。
【0145】
トランスジェニック動物由来のヒト抗体
標的タンパク質に対するヒト抗体はまた、内因性免疫グロブリン産生を有さず、かつヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するように操作されたトランスジェニック動物を使用して産生され得る。例えば、WO98/24893は、内因性重鎖および軽鎖遺伝子座の不活性化により機能的内因性免疫グロブリンを産生しないヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示している。WO91/00906はまた、免疫原に対する免疫応答を高めることができるトランスジェニックの非霊長類哺乳動物宿主を開示し、その抗体は、霊長類定常および/または可変領域を有し、内因性免疫グロブリンをコードする遺伝子座は、置換または不活性化されている。WO96/30498および米国特許第6,091,001号は、哺乳動物における免疫グロブリン遺伝子座を修飾して、例えば、定常または可変領域の全てまたは一部を置き換えて、修飾抗体分子を形成するためのCre/Loxシステムの使用を開示している。WO94/02602は、不活性化された内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示している。米国特許第5,939,598号は、トランスジェニックマウスを作製する方法を開示し、そのマウスは、内因性重鎖を欠き、1つ以上の異種定常領域を含む外因性免疫グロブリン遺伝子座を発現する。米国特許第6,114,598号、同第6,657,103号、および同第6,833,268号、Green LL,Curr Drug Discovery Technol.,11(1),74-84,2014、Lee et al.,Nature Biotechnology,32:356-363,2014、Lee and Owen,Methods Mol Biol.,901:137-48,2012)も参照されたい。
【0146】
上記のトランスジェニック動物を使用して、選択された抗原分子に対する免疫応答を生み出すことができ、抗体産生細胞を動物から取り出し、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生するために使用することができる。免疫化プロトコル、アジュバントなどは当該技術分野で既知であり、例えば、WO96/33735に記載されるトランスジェニックマウスの免疫化に使用される。この公開は、IL-6、IL-8、TNFα、ヒトCD4、Lセレクチン、gp39、および破傷風毒素を含む多様な抗原分子に対するモノクローナル抗体を開示している。モノクローナル抗体は、対応するタンパク質の生物活性または生理学的効果を阻害または中和させる能力について試験することができる。WO96/33735は、IL-8で免疫化したトランスジェニックマウスの免疫細胞由来のIL-8に対するモノクローナル抗体が好中球のIL-8誘導性機能を遮断したことを開示している。トランスジェニック動物の免疫化に使用した抗原に対する特異性を有するヒトモノクローナル抗体は、WO96/34096、および米国特許公開第2003/0194404号、および米国特許公開第2003/0031667号にも開示されている。
【0147】
モノクローナル抗体の作製に有用なさらなるトランスジェニック動物には、米国特許第5,770,429号およびFishwild,et al.(Nat.Biotechnol.14:845-851(1996))に記載されるMedarex HuMAb-MOUSE(登録商標)が含まれ、これは、ヒト抗体の重鎖および軽鎖についてコードする再配列されていないヒト抗体遺伝子由来の遺伝子配列を含有する。HuMAb-MOUSE(登録商標)の免疫化により、標的タンパク質に対する完全なヒトモノクローナル抗体の産生が可能となる。
【0148】
また、Ishida et al.(Cloning Stem Cells.4:91-102(2002))は、TransChromo Mouse(TCMOUSE(商標))を記載し、これは、ヒトDNAのメガベースサイズセグメントを含み、ヒト免疫グロブリン(hIg)遺伝子座全体を組み込む。TCMOUSE(商標)は、IgGの全てのサブクラス(IgG1~G4)を含む完全に多様なhIgレパートリーを有する。様々なヒト抗原によるTCMOUSE(商標)の免疫化により、ヒト抗体を含む抗体応答が生み出される。
【0149】
Jakobovits et al.,PNAS,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)、ならびに米国特許第5,591,669号、米国特許第5,589,369号、米国特許第5,545,807号、および米国特許公開第2002/0199213号も参照されたい。米国特許公開第2003/0092125号は、動物の免疫応答を所望のエピトープに偏らせるための方法を記載している。ヒト抗体はまた、インビトロで活性化されたB細胞によって精製することができる(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照されたい)。
【0150】
ディスプレイ技術由来のヒト抗体
組換えヒト抗体のレパートリーを作製するための技術の発展、および繊維状バクテリオファージの表面上でのコードされた抗体断片のディスプレイは、ヒト抗体を直接作製するための手段を提供している。ファージ技術によって生成された抗体は、細菌において抗原結合断片(通常、scFvまたはFab断片)として産生され、したがって、エフェクター機能を欠いている。エフェクター機能は、2つの戦略のうちの1つによって導入することができる:断片は、例えば、哺乳動物細胞における発現のために完全抗体へと操作されるか、またはエフェクター機能を誘発することができる第2の結合部位を有する二重特異性抗体断片へと操作され得る。
【0151】
例として、ファージディスプレイ技術における使用のための抗体のライブラリを調製するための1つの方法は、標的抗原またはその抗原部分を用いてヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物を免疫化して免疫応答を生み出す工程と、免疫化した動物から抗体産生細胞を抽出する工程と、抽出した細胞からRNAを単離する工程と、RNAを逆転写してcDNAを産生する工程と、プライマーを使用してcDNAを増幅する工程と、抗体がファージ上に発現されるようにcDNAをファージディスプレイベクター内に挿入する工程とを含む。本開示の組換え標的特異的抗体は、この方法で得ることができる。
【0152】
別の例では、抗体産生細胞が非免疫化動物から抽出され、抽出した細胞からRNAが単離され、逆転写されて、cDNAを産生し、プライマーを使用してこれが増幅され、抗体がファージ上に発現されるようにファージディスプレイベクター内に挿入されてもよい。ファージディスプレイプロセスは、繊維状バクテリオファージの表面上の抗体レパートリーのディスプレイを介した免疫選択、およびその後の選択した抗原へのそれらの結合によるファージの選択を模倣する。1つのかかる技術は、WO99/10494に記載され、これは、かかるアプローチを使用した、MPLおよびmsk受容体に対する高親和性および機能的アゴニスト抗体の単離を記載している。この開示の抗体は、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製されたヒトVLおよびVHのcDNAを使用して調製された組換えコンビナトリアル抗体ライブラリ、例えば、scFvまたはFabファージディスプレイライブラリのスクリーニングによって単離することができる。かかるライブラリの調製およびスクリーニングのための方法論は、当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第5,969,108号を参照されたい。ファージディスプレイライブラリを生成するための市販のキットが存在する(例えば、The Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP.TMファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。また、抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングに使用することができる他の方法および試薬も存在する(例えば、Ladner et al.米国特許第5,223,409号、Kang et al.PCT公開第WO92/18619号、Dower et al.PCT公開第WO91/17271号、Winter et al.PCT公開第WO92/20791号、Markland et al.PCT公開第WO92/15679号、Breitling et al.PCT公開第WO93/01288号、McCafferty et al.PCT公開第WO92/01047号、Garrard et al.PCT公開第WO92/09690号、Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370-1372、Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81-85、Huse et al.(1989)Science 246:1275-1281、McCafferty et al.,Nature(1990)348:552-554、Griffiths et al.(1993)EMBO J 12:725-734、Hawkins et al..(1992)J.Mol.Biol.226:889-896、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628、Gram et al.(1992)PNAS 89:3576-3580、Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373-1377、Hoogenboom et al.,(1991)Nuc Acid Res 19:4133-4137、およびBarbas et al.,(1991)PNAS 88:7978-7982、およびOmidfar&Daneshpour,Exp.Op.Drug Disc.10:651-669,2015を参照されたい。
【0153】
一実施形態では、所望の特徴を有する標的抗原に対して特異的なヒト抗体を単離するために、所望の特異性を有する抗体断片を選択するためにヒトVHおよびVLライブラリがスクリーニングされる。この方法で使用される抗体ライブラリは、本明細書において、および当該技術分野において記載されるように調製およびスクリーニングされたscFvライブラリであり得る(McCafferty et al.,PCT公開第WO92/01047号、McCafferty et al.,(Nature 348:552-554(1990))、およびGriffiths et al.,(EMBO J 12:725-734(1993))。抗体ライブラリは好ましくは、抗原として標的タンパク質を使用してスクリーニングされる。
【0154】
代替的には、抗体のFd断片(VH-CH1)および軽鎖(VL-CL)は、PCRによって別々にクローニングされ、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリにおいてランダムに組換えられ、次いで、特定の抗原への結合について選択され得る。Fab断片はファージ表面上に発現され、すなわち、それらをコードする遺伝子に物理的に連結している。したがって、抗原結合によるFabの選択は、Fabコード配列を同時選択し、これは続いて増幅され得る。いくつかのラウンドの抗原結合および再増幅(パニングと呼ばれる手順)を介して、抗原に対して特異的なFabが濃縮され、最終的に単離される。
【0155】
1994年に、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる、抗体のヒト化のためのアプローチが記載された。誘導選択は、マウスモノクローナル抗体のヒト化のためのファージディスプレイ技術の力を利用する(Jespers,L.S.,et al.,Bio/Technology 12,899-903(1994)を参照されたい)。この際、マウスモノクローナル抗体のFd断片は、ヒト軽鎖ライブラリと組み合わせて提示されてもよく、得られたハイブリッドFabライブラリは次いで、抗原と共に選択され得る。これにより、マウスFd断片は、選択を誘導するための鋳型を提供する。続いて、選択されたヒト軽鎖がヒトFd断片ライブラリと組み合わされる。得られたライブラリの選択は、完全なヒトFabをもたらす。
【0156】
ファージディスプレイライブラリからヒト抗体を得るための多様な手順が記載されている(例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol,222:581-597(1991)、米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号、Clackson,T.,and Wells,J.A.,TIBTECH 12,173-184(1994)を参照されたい)。特に、ファージディスプレイライブラリ由来の抗体のインビトロ選択および進化は、強力なツールとなっている(Burton,D.R.,and Barbas III,C.F.,Adv.Immunol.57,191-280(1994)、Winter,G.,et al.,Annu.Rev.Immunol.12,433-455(1994)、米国特許公開第2002/0004215号およびWO92/01047、米国特許公開第2003/0190317号、ならびに米国特許第6,054,287号および同第5,877,293号を参照されたい)。
【0157】
Fv断片は、可溶性断片として発現される相補性鎖との、ファージタンパク質融合(例えば、M13遺伝子IIIとの)として発現される1つの鎖の会合によって、ファージの表面上に提示される。ファージは、クラスIファージfd、M13、f1、If1、lke、ZJ/Z、Ffのうちの1つ、ならびにクラスIIファージXf、Pf1、およびPf3のうちの1つなどの繊維状ファージであり得ることが企図される。ファージは、M13、またはそのfdもしくは誘導体であり得る。
【0158】
いったん最初のヒトVLおよびVHセグメントが選択されると、選択されたVLおよびVHセグメントの異なる対形成が標的結合についてスクリーニングされる「ミックスアンドマッチ」実験で好ましいVL/VH対の組み合わせを選択する(例えば、Kang et al.,PNAS 88:11120-11123,(1991)を参照されたい)。さらに、抗体の質をさらに向上させるために、天然の免疫応答の間の抗体の親和性成熟を担うインビボ体細胞変異プロセスに類似したプロセスにおいて、好ましいVL/VH対(複数可)のVLおよびVHセグメントを、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR1、CDR2、またはCDR3領域の中で、ランダムに変異させてもよい。このインビトロ親和性成熟は、VHのCDR1、CDR2、およびCDR3、またはVLのCDR1、CDR2、およびCDR3に相補的であるPCRプライマーをそれぞれ使用してVLおよびVH領域を増幅することによって達成することができ、これらのプライマーは、得られるPCR産物が、VHおよび/またはVLのCDR3領域内にランダム変異が導入されているVLおよびVHセグメントをコードするように、ある特定の位置で4つのヌクレオチド塩基のランダムな混合物で「スパイク」されている。これらのランダムに変異したVLおよびVHセグメントは、標的抗原への結合について再スクリーニングされ得る。
【0159】
組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリ由来の標的特異的抗体のスクリーニングおよび単離に続いて、選択された抗体をコードする核酸がディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収され、標準組換えDNA技術によって他の発現ベクターへとサブクローニングされ得る。所望の場合、下記のように、核酸をさらに操作して、本開示の他の抗体形態を作製することができる。コンビナトリアルライブラリのスクリーニングによって単離された組換えヒト抗体を発現するために、本明細書に記載されるように、抗体をコードするDNAは、組換え発現ベクターにクローニングされ、哺乳動物宿主細胞に導入される。
【0160】
ファージディスプレイ法は、細菌または宿主細胞の変異株において行われ得ることが企図される。変異株は、その中で複製されたDNAがその親DNAに対して変異することを引き起こす遺伝的欠陥を有する宿主細胞である。例示的な変異株は、NR9046mutD5およびNR9046 mut T1である。
【0161】
ファージディスプレイ法がヘルパーファージを使用して行われ得ることも企図される。これは、欠陥のあるファージゲノムを含有する細胞を感染させるために使用され、欠陥を補うように機能するファージである。欠陥のあるファージゲノムは、ファージミド、またはいくつかの機能をコードする遺伝子配列が除去されたファージであり得る。ヘルパーファージの例は、M13K07、M13K07遺伝子III番号3、およびキャプシドタンパク質に融合した結合分子を提示またはコードするファージである。
【0162】
抗体はまた、WO92/01047に開示される、HまたはL鎖クローンのいずれかを含有する個々のコロニーを使用して、他方の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全なライブラリを感染させ、この明細書に記載されるものなどのファージディスプレイ技術に従って得られた二本鎖特異的結合メンバーが選択される、階層二重コンビナトリアル(hierarchical dual combinatorial)アプローチを使用したファージディスプレイスクリーニング法によって生成される。この技術は、Marks et al.,(Bio/Technology,10:779-783(1992))にも開示されている。
【0163】
酵母、微生物、および哺乳動物細胞の表面上のペプチドの提示のための方法も、抗原特異的抗体を同定するために使用されている。例えば、米国特許第5,348,867号、同第5,723,287号、同第6,699,658号、Wittrup,Curr Op.Biotech.12:395-99(2001)、Lee et al.,Trends in Biotech.21(1)45-52 (2003)、Surgeeva et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.58:1622-54(2006)を参照されたい。抗体ライブラリは、免疫系におけるB細胞による抗体の細胞表面提示を有効に模倣して、アグルチニンなどの酵母タンパク質に結合し得る。
【0164】
ファージディスプレイ法に加えて、抗体は、インビトロディスプレイ法および微生物細胞ディスプレイを使用して単離され得、これにはリボソームディスプレイおよびmRNAディスプレイが含まれる(Amstutz et al.,Curr.Op.Biotech.12:400-05(2001))。リボソームディスプレイを使用したポリペプチドの選択は、Hanes et al.,(PNAS,94:4937-4942(1997))ならびにKawasakiに発行された米国特許第5,643,768号および同第5,658,754号に記載されている。リボソームディスプレイはまた、抗体の迅速な大規模変異分析にも有効である。選択的変異誘発アプローチはまた、リボソームディスプレイ技術を使用して選択され得る改善された活性を有する抗体を産生する方法を提供する。
【0165】
アミノ酸配列バリアント
抗体の1、2、3、4、5、および/または6つのCDRを含む修飾ポリペプチド組成物が生成され得、CDRは、標的分子に対する特異性または親和性の増加を提供するように改変されている。抗体CDR内の部位は典型的には、例えば、最初に保存的選択によって置換し(例えば、疎水性アミノ酸を非同一の疎水性アミノで置換)、次いでより類似していない選択によって置換する(例えば、疎水性アミノ酸を荷電アミノ酸で置換)ことによって連続して修飾され、次いで標的部位において欠失または挿入が行われ得る。例えば、CDRを囲む保存的フレームワーク配列を使用して、プライマー領域間に位置する抗原特異的CDR配列を増幅するためにこれらのコンセンサス配列に対して相補的であるPCRプライマーが生成される。ヌクレオチドおよびポリペプチド配列をクローニングおよび発現するための技術は当該技術分野で十分に確立されている[例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,New York(1989)]。増幅されたCDR配列は、適切なプラスミドに結合する。1、2、3、4、5、および/または6つのクローニングされたCDRを含むプラスミドは、任意選択で、CDRに結合した領域をコードするさらなるポリペプチドを含有する。
【0166】
修飾は、以下により詳細に記載される保存的または非保存的アミノ酸置換によって行われ得る。「挿入」または「欠失」は、好ましくは、約1~20アミノ酸、より好ましくは1~10アミノ酸の範囲である。組換えDNA技術を使用して抗体ポリペプチド分子におけるアミノ酸の置換を合成的に行い、得られた組換えバリアントを活性についてアッセイすることによって多様性が導入され得る。核酸の改変は、異なる種由来の核酸とは異なる部位(可変位置)、または高度に保存的な領域(定常領域)において行われ得る。抗体配列を改変し、本開示において有用な抗体ポリペプチド組成物を発現するための方法は、当該技術分野で記載されている。例えば、米国特許第8,569,462号を参照されたい。別の種類のバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。これらのバリアントは、抗体における少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その位置に異なる残基が挿入されている。超可変領域またはCDR領域またはフレームワーク領域のいずれかの中の置換的変異誘発が企図される。保存的置換は、アミノ酸をそのクラスの別のメンバーで置き換えることを含む。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスのメンバーで置き換えることを含む。
【0167】
保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行われる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン(Ala、A)、ロイシン(Leu、L)、イソロイシン(Ile、I)、バリン(Val、V)、プロリン(Pro、P)、フェニルアラニン(Phe、F)、トリプトファン(Trp、W)、およびメチオニン(Met、M)が含まれ、極性中性アミノ酸には、グリシン(Gly、G)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、システイン(Cys、C)、チロシン(Tyr、Y)、アスパラギン(Asn、N)、およびグルタミン(Gln、Q)が含まれ、正電荷(塩基性)アミノ酸には、アルギニン(Arg、R)、リジン(Lys、K)、およびヒスチジン(His、H)が含まれ、負電荷(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸(Asp、D)およびグルタミン酸(Glu、E)が含まれる。
【0168】
抗体の適切な立体構造の維持に関与していない任意のシステイン残基はまた、分子の酸化安定性を改善させ、かつ異常な架橋を防止するために、一般的にセリンで置換され得る。逆に、その安定性を改善させるためにシステイン結合(複数可)が抗体に付加されてもよい(特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0169】
改変された糖鎖付加
親抗体に対して修飾された糖鎖付加パターン、例えば、抗体において見出される1つ以上の炭水化物部分の欠失、および/または抗体に存在しない1つ以上の糖鎖付加部位の付加を有する抗体バリアントも産生し得る。
【0170】
抗体の糖鎖付加は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖に対する炭水化物部分の酵素結合のための認識配列である。ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的な糖鎖付加部位を生み出す。したがって、N結合型糖鎖付加部位は、アミノ酸配列がこれらのトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにそれを改変することによって抗体に付加され得る。O結合型糖鎖付加とは、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的にはセリンまたはトレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンを使用してもよい)への糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの結合を指す。O結合型糖鎖付加部位は、元の抗体の配列に、1つ以上のセリンまたはトレオニン残基を挿入または置換することによって抗体に付加され得る。
【0171】
Fcグリカンは、Fc受容体およびC1qに対するIgGの結合に影響を及ぼし、したがって、IgGエフェクター機能にとって重要である。修飾Fcグリカンおよび改変されたエフェクター機能を有する抗体バリアントが産生され得る。例えば、シアル酸、コアフコース、二分N-アセチルグルコサミン、およびマンノース残基などの修飾末端糖を有する抗体は、FcγRIIIa受容体に対する改変された結合および改変されたADCC活性を有し得る。さらなる例では、修飾末端ガラクトース残基を有する抗体は、C1qに対する改変された結合および改変されたCDC活性を有し得る(Raju,Curr.Opin.Immunol.20:471-78,2008)。
【0172】
改善されたADCC活性を呈する、フコシル化が存在しないかまたは低減した抗体分子もまた、本方法における使用のために企図される。これを達成するための多様な方法が当該技術分野で既知である。例えば、Yamane-Ohnuki et al.,Biotechnol Bioeng.87:614-22(2004)、Rothman et al.,Mol Immunol.26:1113-23(1989)、Shields et al.,J BiolChem.277:26733-40(2002)、Shinkawa et al.,J BiolChem.278:3466-73(2003)、Umana et al.,Nat Biotechnol.17:176-80(1999)、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng.93:851-61(2006))を参照されたい。抗体の糖鎖付加および方法は、Niewa and Satoh,J.Pharmaceutical Sciences 104:930-41,(2015)に概説されている。
【0173】
改変されたエフェクター機能を有するバリアント
本方法における使用のための抗体の他の修飾が企図される。一態様では、エフェクター機能に関して、例えば、がんの治療における抗体の有効性を高めるために、本明細書において使用される抗体を修飾することが望ましい場合がある。エフェクター機能を修飾するための1つの方法は、システイン残基(複数可)がFc領域内に導入され得、それによりこの領域における鎖内ジスルフィド結合形成を可能にすることを教示する。このように生成されたホモ二量体抗体は、改善された内在化能力、ならびに/または増加した補体媒介性細胞殺滅および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有し得る。Caron et al.,(J.Exp「Med.」176:1191-1195(1992))およびShopes,B(J.Immunol.148:2918-2922(1992))を参照されたい。増強した抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体はまた、Wolff et al.,(Cancer Research 53:2560-2565(1993))に記載されるようにヘテロ二機能性架橋剤を使用して調製することができる。代替的には、二重Fc領域を有し、それにより増強した補体溶解およびADCC能力を有し得る抗体を操作することができる。Stevenson et al.,(Anti-Cancer Drug Design 3:219-230(1989))を参照されたい。
【0174】
本開示のある特定の実施形態では、例えば、治療効果を高めるために、無傷の抗体ではなく抗体断片の使用が望ましい場合がある。この場合、その血清半減期を増加させるために抗体断片を修飾すること、例えば、半減期を増加させるために、PEGまたは他の水溶性ポリマー(多糖類ポリマーを含む)などの分子を抗体断片に付加することが望ましい場合がある。
【0175】
本明細書で使用される場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期の増加を担うIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。サルベージ受容体結合エピトープは、好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループからの任意の1つ以上のアミノ酸残基が抗体断片の類似した位置に導入されている領域を構成する。一実施形態では、Fcドメインの1つまたは2つのループからの3つ以上の残基が導入される。別の実施形態では、エピトープは、(例えば、IgGの)Fc領域のCH2ドメインから取り出され、抗体のCH1、CH3、もしくはVH領域、または1つ以上のかかる領域に導入される。代替的には、エピトープは、Fc領域のCH2ドメインから取り出され、抗体断片のCL領域もしくはVL領域、またはその両方に導入される。
【0176】
本開示の抗体は、ヒトFc部分、ヒトコンセンサスFc部分、またはFcサルベージ受容体と相互作用する能力を保持するそれらのバリアントを含み得る[例えば、Sarmay et al.,Molec.Immunol.29:633-9(1992)を参照されたい]。
【0177】
Shieldsらは、全てのヒトFc受容体への結合に関与したIgG1残渣が、ヒンジに近位のCH2ドメイン内に位置し、かつ以下の2つのカテゴリーに入ることを報告した:1)全てのFcRと直接相互作用し得る位置には、Leu234~Pro238、Ala327、およびPro329(および場合によりAsp265)が含まれ、2)炭水化物の性質または位置に影響を及ぼす位置には、Asp265およびAsn297が含まれる。Fc受容体IIへの結合に影響を及ぼしたさらなるIgG1残基は以下の通りである:(最大の影響)Arg255、Thr256、Glu258、Ser267、Asp270、Glu272、Asp280、Arg292、Ser298、ならびに(より少ない影響)His268、Asn276、His285、Asn286、Lys290、Gln295、Arg301、Thr307、Leu309、Asn315、Lys322、Lys326、Pro331、Ser337、Ala339、Ala378、およびLys414。A327Q、A327S、P329A、D265A、およびD270Aは、結合を低減させた。Fc受容体IIIAへの結合を低減させたさらなるIgG1残基は、当該技術分野で既知である。Presta et al.,(Biochem.Soc.Trans.30:487-490,2001)、ならびに米国特許第6,194,551号、同第6,737,056号、同第5,624,821号、および米国特許公開第2004/0132101号(これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれている)も参照されたい。
【0178】
共有結合修飾
共有結合修飾を含む抗体も本方法における使用のために企図される。該当する場合、それらは、化学的合成、または抗体の酵素切断もしくは化学的切断によって作製することができる。抗体の他の種類の共有結合修飾は、抗体の標的化アミノ酸残基を、選択された側鎖またはNもしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって分子内に導入される。
【0179】
システイニル残基は、最も一般的には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロアセテート(および対応するアミン)と反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体が得られる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロ水銀ベンゾエート、2-クロロメルキュリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
【0180】
他の修飾には、プロリンおよびリジンのヒスチジル、リジニルアルギニル、チロシル、グルタミニル、およびアスパラギニル水酸化が含まれる。かかる修飾を作製するための方法は、米国特許第8,926,976号(参照により本明細書に組み込まれる)および当該技術分野において開示されている。
【0181】
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R-N.dbd.C.dbd.N-R’)との反応によって選択的に修飾され、RおよびR’は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの異なるアルキル基である。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。
【0182】
他の修飾には、プロリンおよびリジンの水酸化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79-86(1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0183】
別の種類の共有結合修飾は、グリコシドを抗体に化学的または酵素的に連結させることを含む。これらの手順は、それらがN結合型またはO結合型糖鎖付加のための糖鎖付加能力を有する宿主細胞における抗体の産生を必要としない点で有利である。使用される連結モードに応じて、糖(複数可)は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンのものなどの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に結合し得る。これらの方法は、WO87/05330およびAplin and Wriston,(CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259-306(1981))に記載されている。
【0184】
抗体上に存在する任意の炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る。化学的糖鎖除去は、抗体を化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物に曝露することを必要とする。この処理は、抗体を無傷のままにしながら、結合糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたは全ての糖の切断をもたらす。化学的糖鎖除去は、Hakimuddin,et al.,(Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987))によって、およびEdge et al.,(Anal.Biochem.118:131(1981))によって記載されている。抗体上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al.,(Meth.Enzymol.138:350(1987))によって記載されるように、多様なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0185】
抗体の別の種類の共有結合修飾は、抗体を、多様な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレン、またはデキストランなどの多糖類ポリマーのうちの1つに結合することを含む。かかる方法は、当該技術分野で既知である。
【0186】
誘導体
上記のように、本開示の抗体物質およびポリペプチドに関連して使用される場合、誘導体とは、ユビキチン化、治療剤または診断剤へのコンジュゲーション、標識化(例えば、放射性核種または様々な酵素による)、PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合、およびオルニチンなどのアミノ酸の化学的合成による挿入または置換などの技術によって化学的に修飾されたポリペプチドを指す。本明細書に開示される抗体の誘導体も治療剤として有用であり、本明細書の方法において使用され得る。
【0187】
コンジュゲート部分は、共有結合で、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、もしくは水素結合を介して、例えば、放射性ヌクレオチドの組み込み、またはストレプトアバジンによって認識されるビオチン化ヌクレオチドによって、抗体物質内に組み込まれるかまたはそれに結合し得る。
【0188】
抗体は、フレキシブルリンカー、例えば(Gly4Ser)3によって、IL-2またはそのバリアントと共有結合し得る。例えば、Tomala et al.,ACS Chemical Biology 8,871-876(2013)を参照されたい。
【0189】
ポリエチレングリコール(PEG)を抗体物質に結合させて、より長いインビボ半減期を提供することができる。PEG基は、任意の好都合な分子量のものであってもよく、直鎖状または分岐状であり得る。PEGの平均分子量は、好ましくは約2キロダルトン(「kDa」)~約100kDa、より好ましくは約5kDa~約50kDa、最も好ましくは約5kDa~約10kDaの範囲となる。PEG基は、一般的に、PEG部分上の天然のまたは操作された反応性基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)から抗体物質上の反応性基(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)へのアシル化または還元的アルキル化を介して本開示の抗体物質に結合することになる。抗体物質へのPEG部分の付加は、当該技術分野で周知の技術を使用して行うことができる。例えば、国際公開第WO96/11953号および米国特許第4,179,337号を参照されたい。
【0190】
抗体物質のPEGとのライゲーションは通常、水層で行われ、逆相分析HPLCによって容易に監視することができる。PEG化された物質は、分取HPLCによって精製され、分析HPLC、アミノ酸分析、およびレーザ脱離質量分析によって特性評価される。
【0191】
抗体コンジュゲート
抗体は、その「裸の」もしくはコンジュゲートされていない形態で投与され得るか、または他の治療剤もしくは診断剤に直接コンジュゲートされ得るか、またはかかる他の治療剤もしくは診断剤を含む担体ポリマーに間接的にコンジュゲートされ得る。
【0192】
抗体は、放射性同位体、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジンなど)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光または発光または生物発光標識(例えば、FITCもしくはローダミンなど)、常磁性原子などの使用を介して検出可能に標識化され得る。かかる標識化を達成するための手順は当該技術分野で周知であり、例えば、(Sternberger,L.A.et al.,J.Histochem.Cytochem.18:315(1970)、Bayer,E.A.et al.,Meth.Enzym.62:308(1979)、Engval,E.et al.,Immunol.109:129(1972)、Goding,J.W.J.Immunol.Meth.13:215(1976))を参照されたい。
【0193】
抗体部分のコンジュゲーションは、米国特許第6,306,393号に記載されている。一般的な技術は、Shih et al.,Int.J.Cancer 41:832-839(1988)、Shih et al.,Int.J.Cancer 46:1101-1106(1990)、およびShih et al.,米国特許第5,057,313号にも記載されている。この一般的な方法は、酸化炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離アミン機能を有し、かつ複数の薬物、毒素、キレート剤、ホウ素加数(boron addend)、または他の治療剤を充填した担体ポリマーと反応させることを含む。この反応は、最初のシッフ塩基(イミン)結合をもたらし、これを二級アミンへの還元によって安定化させて、最終コンジュゲート形成をすることができる。
【0194】
担体ポリマーは、例えば、アミノデキストランまたは少なくとも50アミノ酸残基のポリペプチドであり得る。薬物または他の薬剤を担体ポリマーにコンジュゲートさせるための様々な技術が当該技術分野で既知である。アミノデキストランの代わりにポリペプチド担体を使用することができるが、ポリペプチド担体は、鎖中に少なくとも50アミノ酸残基、好ましくは100~5000アミノ酸残基を有しなければならない。アミノ酸のうちの少なくともいくつかは、リジン残基またはグルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基でなければならない。リジン残基のペンダントアミン、ならびにグルタミンおよびアスパラギン酸のペンダントカルボキシレートは、薬物、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素加数、または他の治療剤の結合に好都合である。好適なポリペプチド担体の例としては、得られた充填担体およびコンジュゲートに所望の可溶性特性を付与する、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、これらのコポリマー、ならびにこれらのアミノ酸および他のアミノ酸(例えば、セリン)の混合ポリマーが挙げられる。抗体がコンジュゲートされ得る薬剤の例としては、本明細書に記載される細胞傷害性剤または化学療法剤のいずれかが挙げられる。
【0195】
代替的には、コンジュゲート抗体は、抗体成分を治療剤と直接コンジュゲートすることによって調製することができる。一般的な手順は、治療剤が酸化した抗体成分に直接結合することを除き、コンジュゲートの間接的方法と類似している。例えば、抗体の炭水化物部分をポリエチレングリコールに結合させて、半減期を延長することができる。
【0196】
代替的には、治療剤は、ジスルフィド結合形成を介して、またはN-スクシニル3-(2-ピリジルジチオ)ポロプリオネート(proprionate)(SPDP)などのヘテロ二機能性架橋剤を使用して、還元された抗体成分のヒンジ領域に結合されてもよい。Yu et al.,Int.J.Cancer 56:244(1994)。かかるコンジュゲーションのための一般的な技術は、当該技術分野で周知である。例えば、Wong,Chemistry Of Protein Conjugation and Cross-Linking(CRC Press 1991)、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Birch et al.(eds.),pages 187-230(Wiley-Liss,Inc.1995)におけるUpeslacis et al.,「Modification of Antibodies by Chemical Methods,」、Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application,Ritter et al.(eds.),pages 60-84(Cambridge University Press 1995)におけるPrice,「Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies」を参照されたい。N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、意味度エステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルエルデヒド(glutareldehyde))、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン(tolyene)2,6-ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二機能性タンパク質結合剤が当該技術分野で既知である。
【0197】
抗体の組換え産生
本明細書に記載される抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)単離および配列決定され得る。これは通常、抗体をコードするDNA、または好ましくはmRNA(すなわち、cDNA)のクローニングを必要とする。クローニングおよび配列決定は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの標準技術を使用して行われる(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1-3,Cold Spring Harbor Press、Ausubel,et al.(Eds.),Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1994))(これらは参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0198】
配列決定は、標準技術を使用して行われる(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1-3,Cold Spring Harbor Press、およびSanger,F.et al.(1977)PNAS 74:5463-5467(これらは参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。クローニングされた核酸の配列を、ヒト免疫グロブリンおよびcDNAの公開された配列と比較することによって、当業者は、配列決定される領域に応じて、(i)免疫グロブリンポリペプチド(重鎖のアイソタイプを含む)の生殖系列利用、ならびに(ii)N領域付加および体細胞変異のプロセスから得られた配列を含む、重鎖および軽鎖可変領域の配列を決定することができる。免疫グロブリン遺伝子配列情報の1つの情報源は、国立衛生研究所の国立医学図書館の国立バイオテクノロジー情報センター(Bethesda,Md)である。
【0199】
いったん単離されると、DNAは発現ベクター内に置かれ、これは次いで、免疫グロブリンタンパク質を別様に産生しない、E.coli細胞、サルCOS細胞、ヒト胚腎臓293細胞(例えば、293E細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞内にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が得られる。抗体の組換え産生は、当該技術分野で周知である。
【0200】
抗体の組換え産生のために、それをコードする核酸は、単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためまたは発現のためにのために複製可能なベクター内に挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般的に、当該技術分野で既知であり記載されている、シグナル配列、複製開始点、1つ以上の選択的マーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0201】
様々な実施形態では、配列番号2、4、6、8、10、12、14、または16に記載されるヌクレオチド配列は、本明細書の抗体またはその断片の発現に有用である。
【0202】
いくつかの実施形態では、異なる核酸分子が標的特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする。他の実施形態では、同じ核酸分子が標的特異的抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする。一実施形態では、核酸は、本開示の抗体の標的特異的抗体、ならびに本明細書に記載される核酸によってコードされるポリペプチドのいずれかをコードする。
【0203】
一態様では、本開示の核酸分子は、配列番号9、11、13、もしくは15に記載される、抗体XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、およびXPA.92.099のVLアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはその一部を含む。関連する態様では、VLアミノ酸配列は、コンセンサス配列である。いくつかの実施形態では、核酸は、当該抗体の軽鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、当該部分は、CDR1~CDR3を含む連続した部分である。一実施形態では、当該部分は、任意選択で異なるヒトまたはヒトコンセンサスフレームワークを有し、かつ任意選択で連続した3つのCDR中に1つ、または最大で2つ、または最大で3つの変異を有する、軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3領域のうちの少なくとも1、2、または3つを含む。
【0204】
一実施形態では、本開示は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、または15のいずれか1つに記載される可変領域アミノ酸配列を有する、機能的断片を含む抗原結合化合物を提供する。関連する実施形態では、前述の抗原結合化合物は、本開示の1つ以上のCDR配列を含み、所望の生物活性を呈する、完全集合四量体抗体、モノクローナル抗体ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;多重特異性抗体、抗体断片、Fab、F(ab’)2;Fv;scFvもしくは一本鎖抗体断片;ダイアボディ;トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、直鎖抗体;キレート化組換え抗体、トリボディもしくはバイボディ、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、またはこれらの抗体のうちのいずれか1つのバリアントもしくは誘導体、または2つ以上の抗体の混合物からなる群から選択される。本開示の抗原結合化合物は、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、好ましくは、IL-2に対して10-10、10-11、10-12、10-13M以下の結合親和性を保持する。
【0205】
一態様では、本開示の抗体は、
図12に対形成されるように、アミノ酸配列番号1、3、5、または7および配列番号9、11、13、または15にそれぞれ記載される重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含む。抗体は、上記のアミノ酸配列に記載される抗体の全てまたは一部を含み得ることがさらに企図される。一実施形態では、抗体は、
図12に対形成されるように、配列番号17~28の重鎖のCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つ、または配列番号29~40の軽鎖のCDR1、CDR2、もしくはCDR3のうちの少なくとも1つを含む。
【0206】
一実施形態では、重鎖は、重鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列を含む。かかる「重鎖CDR3配列」(HCDR3)は、
図12、および配列番号19、22、25、または28に記載される重鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列を含む。代替的には、HCDR3配列は、
図12において同定される任意のHCDR3アミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の変化(例えば、置換、挿入、または欠失)を含有するアミノ酸配列を含む。好ましい置換には、
図12の別のHCDR3内の対応する位置におけるアミノ酸への置換が含まれる。代替的には、HCDR3配列は、本明細書に記載される配列から判定されたHCDR3のコンセンサスアミノ酸配列を含んでもよい。
【0207】
上記のHCDR3配列を含む重鎖は、配列番号17、20、23、もしくは26、または
図12においてHCDR1として同定されたアミノ酸配列、配列番号17、20、23、もしくは26、または
図12において同定された任意のHCDR1と比較して1つ以上のアミノ酸の変化、好ましくは
図12の別のHCDR1内の対応する位置におけるアミノ酸への置換を含有するアミノ酸配列、または本明細書に記載されるHCDR1のコンセンサス配列のうちのいずれかを含む「重鎖CDR1配列」(HCDR1)をさらに含み得る。
【0208】
代替的には、上記のHCDR3配列を含む重鎖は、配列番号18、21、24、もしくは27、または
図12においてHCDR2として同定されたアミノ酸配列、配列番号18、21、24、もしくは27、または
図12において同定された任意のHCDR2と比較して1つ以上のアミノ酸の変化、好ましくは
図12の別のHCDR2内の対応する位置におけるアミノ酸への置換を含有するアミノ酸配列、または本明細書に記載されるHCDR2のコンセンサス配列のうちのいずれかを含む「重鎖CDR2配列」(HCDR2)をさらに含み得る。
【0209】
上記の重鎖CDR3配列を含む重鎖はまた、(a)上記の重鎖CDR1配列、および(b)上記の本発明の重鎖CDR2配列の両方を含み得る。
【0210】
本開示の一態様は、下記の重鎖CDR配列のうちのいずれか1、2、および/または3つを含む重鎖を含む標的抗原に結合する抗体を提供する。
【0211】
上記の重鎖CDR配列はいずれも、CDRのいずれかの末端に付加されたアミノ酸を含んでもよい。アミノ酸類似体を含有するバリアントまたは誘導体の親和性成熟または調製を含む、本発明の抗体および抗原結合化合物のバリアントおよび誘導体の調製は、本明細書においてさらに詳細に記載される。例示的なバリアントには、アミノ酸配列内の対応するアミノ酸の保存的または非保存的置換、または異なるヒト抗体配列の対応するアミノ酸でのアミノ酸の置き換えを含有するものが含まれる。
【0212】
上記の重鎖のいずれか1つを含む抗体は、軽鎖、好ましくは標的抗原に結合する軽鎖、最も好ましくは下記の軽鎖CDR配列を含む軽鎖をさらに含み得る。
【0213】
本開示の別の態様は、下記の軽鎖CDR配列のうちのいずれか1、2、および/または3つを含む軽鎖を含む標的抗原に結合する抗体を提供する。
【0214】
好ましくは、軽鎖は、軽鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列を含む。かかる「軽鎖CDR3配列」(LCDR3)は、
図12中、および配列番号31、34、37、または40内の軽鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列を含む。代替的には、軽鎖CDR3配列は、
図12において同定される任意の軽鎖CDR3アミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の変化(例えば、置換、挿入、または欠失)を含有するアミノ酸配列を含む。好ましい置換には、
図12の別の軽鎖CDR3内の対応する位置におけるアミノ酸への置換が含まれる。
【0215】
上記の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖は、配列番号29、32、35、もしくは38、または
図12において軽鎖CDR1として同定されたアミノ酸配列、配列番号29、32、35、もしくは38、または
図12において同定された任意の軽鎖CDR1と比較して1つ以上のアミノ酸の変化、好ましくは
図12の別の軽鎖CDR1内の対応する位置におけるアミノ酸への置換を含有するアミノ酸配列のうちのいずれかを含む「軽鎖CDR1配列」をさらに含み得る。
【0216】
代替的には、上記の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖は、配列番号30、33、36、もしくは39、または
図12において軽鎖CDR2として同定されたアミノ酸配列、配列番号30、33、36、もしくは39、または
図12において同定された任意の軽鎖CDR2と比較して1つ以上のアミノ酸の変化、好ましくは
図12の別の軽鎖CDR2内の対応する位置におけるアミノ酸への置換を含有するアミノ酸配列のうちのいずれかを含む「軽鎖CDR2配列」をさらに含み得る。
【0217】
関連する態様では、本開示は、配列番号17~28の少なくとも1つのHCDRまたは配列番号29~40のLCDRを含み、重鎖可変領域のフレームワーク領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒト抗体由来のフレームワーク領域を含む、精製されたポリペプチドを企図する。別の実施形態では、重鎖可変領域のフレームワーク領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、異なるヒト抗体配列とより同種になるようにアミノ酸置換によって化学的に改変されている。例えば、各重鎖フレームワーク領域(H-FR1-4)内で、重鎖可変領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの天然フレームワーク領域残基がアミノ酸置換によって改変され、各軽鎖フレームワーク領域(L-FR1-4)内で、軽鎖可変領域の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの天然フレームワーク残基がアミノ酸置換によって改変されていることが企図される。
【0218】
上記の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖はまた、(a)上記の軽鎖CDR1配列、および(b)上記の軽鎖CDR2配列の両方を含み得る。
【0219】
上記の軽鎖可変領域のいずれか1つを含む抗体は、任意選択で
図12に記載されるように対形成された重鎖可変領域、好ましくは標的抗原に結合する重鎖可変領域、最も好ましくは上記の重鎖CDR配列を含む重鎖可変領域をさらに含み得る。
【0220】
なお別の実施形態では、抗体は、配列番号1、3、5、および7からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号9、11、13、および15からなる群から選択される軽鎖可変領域とを含む。
【0221】
関連する態様では、核酸分子は、配列番号9、11、13、もしくは15のうちのいずれか1つの軽鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはその一部を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号10、12、14、もしくは16のうちのいずれか1つの軽鎖ヌクレオチド配列、またはその一部を含む。本開示の核酸分子は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、または16における配列を含む全ての核酸配列をさらに含み、核酸配列は、本明細書に記載される抗体の重鎖および軽鎖可変領域、または本明細書に記載されかつ配列番号17~28および29~40に記載される任意のHCDRもしくはLCDRのアミノ酸配列をコードする、遺伝暗号の多様性に基づく縮重コドン、ならびに本明細書に記載されるものなどの高度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載される抗体の重鎖および軽鎖可変領域、または本明細書に記載されかつ配列番号17~28および29~40に記載される任意のHCDRもしくはLCDRのアミノ酸をコードする核酸配列にハイブリダイズする核酸とを含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号9、11、13、または15に記載されるVLアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一であるVLアミノ酸配列をコードする。本開示の核酸分子は、本明細書に記載されるものなどの高度にストリンジェントな条件下で配列番号9、11、13、もしくは15の軽鎖可変領域アミノ酸配列をコードする核酸配列にハイブリダイズするか、または配列番号10、12、14、もしくは16の軽鎖可変領域核酸配列を有する核酸を含む。
【0223】
本開示の核酸分子は、抗体XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、およびXPA.92.099のいずれか1つのVHアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはその一部を含むことがさらに企図される。いくつかの実施形態では、核酸は、当該抗体の重鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、当該部分は、重鎖CDR1~CDR3を含む連続した部分である。一実施形態では、当該部分は、任意選択で異なるヒトまたはヒトコンセンサスフレームワークを有し、かつ任意選択で連続した3つのCDR中に1つ、または最大で2つ、または最大で3つの変異を有する、重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3領域のうちの少なくとも1、2、または3つを含む。
【0224】
関連する態様では、核酸分子は、配列番号1、3、5、もしくは7の重鎖のうちの1つの重鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはその一部を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号2、4、6、もしくは8の重鎖ヌクレオチド配列、またはその一部を含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号1、3、5、または7に記載されるVHアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVHアミノ酸配列をコードする。関連する態様では、VHアミノ酸配列は、コンセンサス配列である。本開示の核酸分子は、本明細書に記載されるものなどの高度にストリンジェントな条件下で配列番号1、3、5、もしくは7の重鎖可変領域アミノ酸配列をコードする核酸配列にハイブリダイズするか、または配列番号2、4、6、もしくは8のうちのいずれか1つの重鎖可変領域核酸配列を有する核酸をさらに含む。
【0226】
本開示の核酸は、XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、およびXPA.92.099から選択される抗体の全長軽鎖または重鎖をコードし得、全長軽鎖または全長重鎖は、軽鎖定常領域または重鎖定常領域をそれぞれ含み、軽鎖定常領域は任意選択で未修飾のまたは修飾されたカッパまたはラムダ領域を含み、重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、またはIgEなどのクラスのいずれかの未修飾のまたは修飾された定常領域を含むことがさらに企図される。
【0227】
一態様では、全長可変軽鎖抗体は、配列番号9、11、13、または15に記載される配列を含む。全長軽鎖をコードするヌクレオチドは、配列番号9、11、13、または15に記載される配列をコードし、配列番号10、12、14、または16に記載されるヌクレオチド配列を含むことがさらに企図される。
【0228】
一態様では、全長可変重鎖抗体は、配列番号1、3、5、または7のうちのいずれか1つにおける配列を含む。全長重鎖をコードするヌクレオチドは、配列番号1、3、5、または7の配列重鎖をコードし、配列番号2、4、6、または8のいずれか1つに記載されるヌクレオチド配列を含むことがさらに企図される。
【0229】
さらなる実施形態では、本開示は、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、IL-2に結合する抗体を提供し、(a)軽鎖可変領域は、少なくとも配列番号29、32、35、もしくは38、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号30、33、36、もしくは39、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号31、34、37、もしくは40、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を含み、かつ/あるいは(b)重鎖可変領域は、少なくとも配列番号17、20、23、もしくは26、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号18、21、24、もしくは27、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR2、および/または配列番号19、22、25、もしくは28、もしくはそれらと少なくとも80%同一である配列から選択されるCDR3を含む。
【0230】
関連する実施形態では、軽鎖可変領域は、少なくとも、配列番号29、32、35、もしくは38、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1と、配列番号30、33、36、もしくは39、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2と、配列番号31、34、37、もしくは40、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3とを含み、かつ/あるいは重鎖可変領域は、少なくとも、配列番号17、20、23、もしくは26、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1と、配列番号18、21、24、もしくは27、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2と、配列番号19、22、25、もしくは28、またはそれらと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3とを含む。
【0231】
例示的な実施形態では、本開示の抗体は、ヒトカッパ(κ)もしくはヒトラムダ(λ)軽鎖もしくはそれらに由来するアミノ酸配列、またはヒト重鎖もしくはそれらに由来する配列、または一本鎖、二量体、四量体、もしくは他の形態で一緒に重鎖および軽鎖の両方を含む。
【0232】
本明細書のベクターにおいてDNAをクローニングまたは発現するための好適な宿主細胞は、上記の原核細胞、酵母、または高等真核生物細胞である。この目的のための好適な原核細胞には、真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、EscherichiaなどのEnterobacteriaceae、例えばE.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えばSalmonella typhimurium、Serratia、例えばSerratia marcescans、およびShigella、ならびにB.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日公開のDD 266,710に開示されるB.licheniformis 41 P)などのBacilli、P.aeruginosaなどのPseudomonas、およびStreptomycesが含まれる。1つのE.coliクローニング宿主は、E.coli 294(ATCC 31,446)であるが、E.coli B、E.coli X1776(ATCC 31,537)、およびE.coli W3110(ATCC 27,325)などの他の株も好適である。これらの例は、限定的ではなく例示的である。
【0233】
原核細胞に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物が、抗体をコードするベクターのための好適なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的なパン酵母は、下等真核宿主微生物の中でも最も一般的に使用されている。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe;例えばK.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、およびK.marxianusなどのKluyveromyces宿主;yarrowia(EP 402,226);Pichia pastors(EP 183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP 244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces;ならびに例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、およびAspergillus宿主(A.nidulansおよびA.nigerなど)などの糸状菌などの複数の他の属、種、および株が一般的に利用可能あり、本明細書において有用である。
【0234】
糖鎖付加された抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株およびバリアント、ならびにSpodoptera frugiperda(ケムシ)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、およびBombyx moriなどの宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための多様なウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1バリアントおよびBombyx mori NPVのBm-5株が公的に利用可能であり、かかるウイルスを、本開示に従い、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのための本明細書におけるウイルスとして使用することができる。
【0235】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、タバコ、アオウキクサ、および他の植物細胞の植物細胞培養物も宿主として利用することができる。
【0236】
有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFRを含むチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO、Urlaub et al.,PNAS 77:4216(1980));SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓細胞株(懸濁培養物における増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,(Biol.Reprod.23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;ならびにヒト肝癌細胞株(Hep G2)である。
【0237】
宿主細胞は、抗体産生のために上記の発現またはクローニングベクターで形質転換またはトランスフェクトされ、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された従来の栄養培地中に培養される。さらに、新規のベクター、および選択的マーカーによって分離された転写単位の複数のコピーでトランスフェクトされた細胞株は、標的に結合する抗体の発現のために特に有用であり、好ましい。
【0238】
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞膜周辺腔において細胞内で産生され得るか、または微生物培養物由来のものを含む培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第1の工程として、宿主細胞または溶解断片のいずれかである微粒子片は、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Better et al.(Science 240:1041-43,1988;ICSU Short Reports 10:105(1990)、およびPNAS 90:457-461(1993)は、E.coliの細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載している。また、(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)も参照されたい。
【0239】
代替的には、抗体は、原核生物または真核生物のインビトロ転写を使用して無細胞系において合成することができる(Stech and Kubick,Antibodies 4:12-33,2015を参照されたい)。
【0240】
抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー陽イオンまたはアビアン(avian)交換クロマトグラフィー、および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーは周知の精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの好適性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依拠する。プロテインAを使用して、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13,1983)。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプについて、およびヒトγ3について推奨される(Guss et al.,EMBOJ.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、最も多くの場合ではアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。細孔性ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成され得るよりも速い流速および短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。回収される抗体に応じて、タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(登録商標)でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿法も利用可能である。
【0241】
一実施形態では、IL-2抗体は、Bergmaschi et al.,JBC 283(7),4189-4199(2007)およびGaston et al.,PLoS One.27;8(11):e81768(2013)(それらの全体が参照により組み込まれる)においてIL-15/IL-15R複合体について記載される方法を使用して、単独で産生され得るか、またはIL-2と共発現され得る。例えば、IL-2およびIL-2抗体は、同じ細胞型におけるプラスミド(単一のプラスミドまたは複数のプラスミドのいずれか)上に共発現され得、産生の組換え発現フェーズの間に複合体化することが可能となる。代替的には、IL-2およびIL-2抗体は、異なる細胞において発現され、その後、別の工程において一緒に複合体化される。
【0242】
スクリーニング方法
効果的な治療薬は、重大な毒性を欠く有効な薬剤を同定することに依拠する。抗体は、当該技術分野で既知の方法によって結合親和性についてスクリーニングされ得る。例えば、ゲルシフトアッセイ、ウェスタンブロット、放射標識競合アッセイ、クロマトグラフィーによる共分画、共沈殿、架橋、ELISA、表面プラズモン共鳴、KinExAなどを使用することができ、これらは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(1999)John Wiley&Sons,NYに記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0243】
生物活性および(例えば、IL-2抗体による)IL-2活性の調節を評価するための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、中和アッセイによって中和を測定し、50%極大値をもたらす阻害濃度(IC50)の値として表すことができる。IC50値は、所与の分子について、第2の分子の最大の生物学的応答または細胞活性の半分の阻害を誘発するために必要な分子の濃度を判定することによって計算することができる。IC50が低いほど、所望のタンパク質活性を阻害する分子の効力が高い。
【0244】
フローサイトメトリーによるIL-2抗体のスクリーニング
ヒトIL-2受容体RαまたはRβおよびγcに結合するに結合するIL-2抗体は、ヒトIL-2受容体IL-2、Rα、IL-2 Rβ、またはRβおよびγcを天然に含むか、または当該技術分野で既知の方法を使用してそれらを発現するように操作された細胞のフローサイトメトリースクリーニングによって評価することができる。
【0245】
IL-2誘導性増殖のIL-2抗体調節
発光細胞生存アッセイを使用した、IL-2 Rα相互作用を主に遮断する抗体の細胞増殖への効果を含む、異なるIL-2受容体複合体(IL-2 R αβγまたはIL-2 Rβγ)を発現する細胞のIL-2誘導性増殖のIL-2抗体調節の評価。例えば、活性は、増殖アッセイによって測定し、EC50(50%極大値をもたらす有効濃度)値として表すことができる。EC50値は、所与の分子について、最大の生物学的応答の半分を誘発するために必要な分子の濃度を判定することによって計算することができる。EC50が低いほど、所望の活性を誘発する分子の効力が高い。
【0246】
IL-2誘導性STAT5リン酸化
IL-2抗体によるIL-2活性の調節は、異なるIL-2受容体複合体(IL-2 R αβγまたはIL-2 Rβγ)を発現する細胞における下流転写因子である転写のシグナルトランスデューサおよび活性化因子5(Signal Transducer and Activator of Transcription 5)(STAT5)のIL-2誘導性活性の測定によって評価することができる。様々な用量のIL-2および抗IL-2抗体は、異なるIL-2受容体複合体を発現する細胞への添加の前に予め複合体化され得る。リン酸化(活性化、pSTAT5)およびSTAT5の全レベルは、免疫測定法によって測定され、リン酸化STAT5のパーセントが計算される。EC50およびIC50値は、上記のように計算され得る。
【0247】
当該技術分野で既知のIL-2活性を評価する他の方法を使用して、本明細書の抗体の生物学的効果を分析することができる。IL-2は、マウスまたは他の哺乳動物に投与することができ、その活性は、エフェクター、ヘルパー、または制御性T細胞、NK細胞、または樹状細胞などの免疫細胞の出現頻度または活性を測定することによって分析することができる。
【0248】
IL-2の活性はまた、IL-2応答性細胞におけるグランザイムBの上方制御またはインターフェロンガンマを分泌する能力の増加を監視することによって測定することができる。IL-2活性はまた、IL-2応答性細胞におけるKI67検出によって測定することができる。マウスでは、BRDUが動物の中に注射されてもよく、IL-2応答性細胞へのBRDUの組み込みが測定される。マウスでは、CD44hiまたはCD25hiとなるCD8+またはCD4+T細胞の出現頻度がIL-2活性の尺度となる。これらのアッセイを実施するための方法は、当該技術分野で既知である。
【0249】
併用療法
本開示のIL-2抗体は、第2の薬剤と共に投与されてもよく、この併用は、本明細書に記載される疾患または障害を治療するために有用であり得る。IL-2に対する抗体の使用の場合、2つ以上のIL-2抗体がそれぞれの標的抗原への結合に有効である場合、抗体の併用が、治療される状態または障害に対してなおさらに改善された効力を提供するように、標的抗原の異なるエピトープに対する2つ以上の抗体が混合され得ることが企図される。本発明の1つ以上の抗体を含む組成物は、IL-2またはIL-2 Rに関連する状態または疾患を罹患しているか、罹患しやすいヒトまたは哺乳動物に投与され得る。
【0250】
2つの治療剤の同時投与は、薬剤がそれらの治療効果を発揮している期間に重複がある限り、薬剤が同じ時間に、または同じ経路によって投与される必要はない。同時または連続的な投与が企図され、および異なる日または週の投与も企図される。
【0251】
代替的には、第2の薬剤は、サイトカイン、増殖因子、阻害剤、および他の標的抗原に対する抗体などの他の治療剤であり得る。
【0252】
本開示の治療剤は、同じ製剤中で同時に与えられてもよいことが企図される。薬剤は、別個の製剤で同時に投与されることがさらに企図され、同時とは、薬剤が互いの30分以内に与えられることを指す。第2の薬剤が同時に与えられてもよいことがさらに企図される。
【0253】
別の態様では、IL-2に対する抗体は、他の組成物の投与の前に投与される。事前投与とは、他の薬剤での治療の1週間前から他の薬剤の投与の最大で30分前までの範囲での、抗体の投与を指す。薬剤は、別の組成物または薬剤の投与に続いて投与されることがさらに企図される。続く投与とは、抗体治療の30分後から、抗体投与の最大で1週間後、例えば、30分後、1時間、2時間後、4時間後、1日後、2日後などでの投与を説明することを意図する。第2の薬剤はこの様式で、IL-2抗体の投与の前に、またはそれに続いて投与され得ることがさらに企図される。
【0254】
適宜、他の補助療法が施され得ることがさらに企図される。例えば、患者はまた、適宜、外科療法、化学療法、細胞傷害剤、光線力学療法、免疫調節療法、または放射線療法を施されてもよい。
【0255】
本明細書の抗体が第2の薬剤と併用して投与される場合、例えば、第2の薬剤がサイトカインもしくは増殖因子、または化学療法剤である場合、投与はまた、放射療法剤または放射療法の使用を含むことがさらに企図される。抗体組成物と併用して施される放射線療法は、治療する医師によって判定されるように、かつがんの治療を受ける患者に典型的に与えられる線量で施される。
【0256】
細胞傷害剤は、細胞の機能を阻害もしくは妨げ、かつ/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90、およびRe186)、化学療法剤、および細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素もしくは合成毒素などの毒素、またはそれらの断片を含むことが意図される。非細胞傷害剤は、細胞の機能を阻害もしくは妨げず、かつ/または細胞の破壊を引き起こさない物質を指す。非細胞傷害剤は、細胞傷害によって活性化され得る薬剤を含み得る。非細胞傷害剤には、ビーズ、リポソーム、マトリックス、または粒子が含まれ得る(例えば、米国特許公開第2003/0028071号および同第2003/0032995号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。かかる薬剤は、本開示による抗体とコンジュゲート、連結、結合、または会合していてもよい。
【0257】
一実施形態では、第2の薬剤は、チェックポイント阻害剤(例えば、抗PDL-1抗体、抗CTLA-4抗体、PD-1阻害剤、またはPDL-1阻害剤PD-1)である。他の実施形態では、本発明のIL-2抗体は、キメラ抗原受容体T細胞/腫瘍浸潤リンパ球(CART/TIL)療法または薬剤と併用することができる。他の実施形態では、本発明のIL-2抗体は、ワクチン療法と併用することができる。なお別の実施形態では、本開示のIL-2抗体は、腫瘍特異的抗原を標的とする他の抗体または薬剤と併用することができる。
【0258】
キメラ抗原受容体(CAR)は、CD4+またはCD8+のヒンジおよび膜貫通ドメインを介して細胞質シグナル伝達領域に結合した、腫瘍特異的抗体の(scFv)細胞外ドメインからなる受容体複合体が導入されたCD4+またはCD8+T細胞の増殖によって産生される(Haji-Fatahaliha et al.,Artificial Cells,Nanomedicine,and Biotechnology 44:1339-1349(2016)。いくつかのCARは同時刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28、OX40、または41BB)を発現するように操作され、これにより、これらの細胞により大きな細胞傷害活性が付与され得る。
【0259】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は典型的には、新鮮な腫瘍試料から、または血液から単離し、IL-2で増殖させ、その後、試料を提供した患者に静脈内注入で戻された、CD4+またはCD8+T細胞である。任意選択で、腫瘍抗原特異的CD4+またはCD8+T細胞の増殖は、1つ以上の腫瘍抗原を充填したAPCを使用して実施される。細胞注入後、多くの場合、TILの活性を維持するために、患者はIL-2(高用量または低用量のいずれか)を与えられる(Nayar et al.,OncoImmunology 4(4),e1002720(2015))。別の方法では、選択された腫瘍抗原に対して特異的な受容体がT細胞に導入される。この方法は、末梢血単核球(PBMC)を採取し、その後、選択された腫瘍抗原に対して特異的なTCRをT細胞に導入し、これらの細胞を増殖させることを含む。
【0260】
いくつかの実施形態では、IL-2抗体は、IL-2またはIL-2バリアントと併用して投与される。様々な実施形態では、抗体は、投与前にIL-2と複合体化され得るか、またはIL-2およびIL-2抗体は、本明細書に記載されるように併用して投与され得る(Garcia-Martinez and Leon,Intl.Immunol.24:427-446(2012)、Spangler et al.,Immunity,42:815-825、Arenas-Ramirez et al.,Trends in Imunol.36:763-777)。抗体がIL-2と併用して投与される場合、IL-2の量は、使用される治療量よりも少なく、例えば、700,000国際単位(I.U)/kg(0.04mg/kg)より低い。いくつかの実施形態では、IL-2は、約300,000~6000,000I.U/kg、約250,000~500,000I.U./kg、約100,000~250,000I.U./kg、約10,000~100,000I.U./kg、または約1,000~10,000I.U./kg、または約約500~5,000I.U./kgの用量で投与される。様々な実施形態では、複合体中のIL-2対IL-2抗体の比は、モル比に基づき1:1である。様々な実施形態では、複合体中のIL-2対IL-2抗体の比は、1:1ではなく、例えば、比は、モル比に基づき約5:1、4:1、3:1、2:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10以上である。様々な実施形態では、IL-2特異的抗体は、本明細書に記載されるXPA.92.019である。
【0261】
様々な実施形態では、IL-2およびIL-2抗体が投与の前に予め混合されている場合、当該薬剤は、1週間に2回一緒に投与されてもよい。様々な実施形態では、IL-2は、本明細書に記載される抗体の用量と共に、0.1~10mg/kgの用量で投与される。様々な実施形態では、IL-2抗体は、静脈内に投与される。
【0262】
IL-2抗体と関連するIL-2を添加する場合、IL-2が、順次に、例えば同じ日に投与されることが企図され、ある特定の実施形態では、IL-2抗体は、IL-2の投与の前に投与される。様々な実施形態では、IL-2抗体は、1週間に1回投与され、1週間に1回または1週間に複数回のIL-2の投与が抗体の投与に続く。
【0263】
様々な実施形態では、IL-2抗体は、1週間に1回投与され、IL-2治療薬(例えば、Proleukin)は、既知の処方スケジュールで、かつより低いIL-2用量で投与される。
【0264】
本明細書の抗体とIL-2との併用は、抗腫瘍医薬品としてのIL-2の治療指数(TI)を増加させることがさらに企図される。様々な実施形態では、本開示の抗IL-2抗体と併用して投与された場合、IL-2のTIは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍以上である。
【0265】
IL-2は、抗体投与と同じスケジュールで投与されてもよく、またはIL-2が抗体と別個に投与される場合には、PROLEUKIN(登録商標)などの他のIL-2治療薬について記載されるように、もしくは以前に使用した治療用量と比較して低減された用量で投与されてもよいことが企図される。現在推奨されているPROLEUKIN(登録商標)(アルデスロイキン)治療レジメンは、8時間ごとに15分間の静脈注入によって投与される。転移性腎細胞癌(転移性RCC)または転移性黒色腫を有する成人患者を治療するために以下のスケジュールが使用されている。各治療方針は、安静期間によって分かれた2つの5日間の治療サイクルからなる。最大で14回の用量にわたり、8時間ごとに15分間の静脈注入によって600,000国際単位/kg(0.037mg/kg)の用量が投与される。9日間の安静の後、耐容される限り、治療方針当たり最大で28回の用量にわたって、このスケジュールをさらに14回の用量にわたって繰り返す。このスケジュールは、治療する医師によって必要に応じて修正されてもよい。IL-2が抗体と共に投与される場合、投薬量は、IL-2の標準用量と比較して低減されることが企図される。さらなる投与レジメンも詳細な説明において以下に記載される。
【0266】
本開示の抗体との使用が企図されるが、それに限定されない化学療法剤および他の薬剤には、表1に列挙されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0267】
【0268】
障害の治療
別の実施形態では、本明細書に記載される抗体のいずれの種類も、本方法において使用され得る。例示的な実施形態では、標的特異的抗体は、ヒト、キメラ、またはヒト化抗体である。別の例示的な実施形態では、標的はヒトであり、患者はヒト患者である。代替的には、患者は、標的特異的抗体が交差反応する標的タンパク質を発現する哺乳動物であり得る。抗体は、獣医学的目的のため、またはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応する標的タンパク質を発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類)に投与されてもよい。
【0269】
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載される疾患、状態、または障害を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書において企図されるIL-2抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0270】
別の実施形態では、本開示は、IL-2またはIL-2 Rの発現の増加に関連付けられる疾患、状態、または障害を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0271】
別の実施形態では、本開示は、がん、微生物感染、喘息、および自己免疫疾患からなる群から選択される疾患、状態、または障害を治療するための方法を提供する。
【0272】
一実施形態では、本開示は、本開示は、がんを治療するか、またはがんの再発を予防するための方法であって、治療有効量の本明細書において企図されるIL-2抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0273】
様々な実施形態では、本開示は、IL-2に基づく療法の1つ以上の副作用を改善させるための方法であって、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。かかる副作用の例としては、血管漏出症候群および肺水腫、腎損傷、CNS障害、ならびに心臓作用(ならびに、低血圧、下痢、乏尿、悪寒、嘔吐、呼吸困難、発疹、ビリルビン血症、血小板減少、吐き気、錯乱、クレアチニン増加、呼吸障害、昏睡、アシドーシス、無呼吸、急性腎不全、血管凝固異常、呼吸困難、発熱、心停止、心筋梗塞、精神病、敗血症、SGOT増加、昏迷、上室性頻拍、および死などの症状)が挙げられる。
【0274】
IL-2療法を受ける対象において有効なIL-2用量を低減させる方法であって、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法も提供される。本明細書に記載されるIL-2抗体の投与は、(IL-2抗体治療の不在下で必要とされる用量と比較して)治療される疾患または障害の1つ以上の症状を改善するために必要とされるIL-2の用量を減少させることができ、IL-2治療の治療濃度域を増加させることが企図される。
【0275】
本開示の抗体(または本明細書に記載される製剤)で治療することができる例示的な状態または障害としては、がん、例えば、食道癌、膵臓癌、転移性膵臓癌、膵臓の転移性腺癌、膀胱癌、胃癌(stomach cancer)、線維性癌、神経膠腫、悪性神経膠腫、びまん性内在性橋グリオーマ、再発性小児脳腫瘍、腎細胞癌、転移性腎明細胞癌、腎臓癌、前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌、IV期前立腺癌、転移性黒色腫、黒色腫、悪性黒色腫、皮膚の再発性黒色腫、黒色腫脳転移、IIIA期皮膚黒色腫、IIIB期皮膚黒色腫、IIIC期皮膚黒色腫、IV期皮膚黒色腫、頭頸部の悪性黒色腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮非小細胞肺癌、乳癌、再発性転移性乳癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、進行B細胞NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含むHL、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、リヒター症候群、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、成人神経膠芽腫、再発性神経膠芽腫、再発性小児横紋筋肉腫、再発性ユーイング肉腫/末梢性原始神経外胚葉性腫瘍、再発性神経芽細胞腫、再発性骨肉腫、結腸直腸癌、上咽頭非角化型癌、再発性上咽頭未分化癌、子宮頸部腺癌、子宮頸部腺扁平上皮癌、子宮頸部扁平上皮癌、再発性子宮頸癌、IVA期子宮頸癌、IVB期子宮頸癌、肛門管扁平上皮癌、転移性肛門管癌、再発性肛門管癌、再発性頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、卵巣癌、結腸癌、胃癌(gastric cancer)、進行GI癌、胃腺癌、食道胃接合部腺癌、骨腫瘍、軟部肉腫、骨肉腫、胸腺癌、尿路上皮癌、再発性メルケル細胞癌、III期メルケル細胞癌、IV期メルケル細胞癌、骨髄異形成症候群、ならびに再発性菌状息肉症およびセザリー症候群からなる群から選択されるがんが挙げられる。関連する態様では、本開示は、がんを治療するための方法であって、治療有効量の本明細書において企図される抗体または医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0276】
ある特定の実施形態では、がんは、黒色腫、腎細胞癌、リンパ腫、白血病、肉腫、乳癌、肺癌、膀胱癌、結腸癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、膀胱癌、頭頚部癌、皮膚癌、および扁平上皮癌(SCC)からなる群から選択される。
【0277】
様々な実施形態では、IL-2と併用して、また任意選択でチェックポイント阻害剤または他の補助的腫瘍学的治療薬と併用して、IL-2抗体を投与することであって、それにより非IL-2応答性腫瘍型に対する効果が、増殖および/または転移の阻害に対して感受性となる、投与することを含む、疾患、例えば、がんを治療する方法が本明細書に提供される。
【0278】
関連する態様では、がんは転移性である。関連する態様では、転移には、骨、または骨組織、肝臓、肺、腎臓、もしくは膵臓への転移が含まれる。本明細書の方法は、対象における腫瘍サイズもしくは腫瘍量を低減させ、かつ/または対象における転移を低減させることが企図される。
【0279】
様々な実施形態では、本方法は、腫瘍サイズを10%、20%、30%以上低減させる。様々な実施形態では、本方法は、腫瘍サイズを10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低減させる。
【0280】
様々な実施形態では、本方法は、腫瘍が増殖する能力を低減させ、RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)およびirRC(免疫応答基準)を含む当該技術分野における標準的方法によって定義される不変をもたらす。
【0281】
一実施形態では、当該治療を必要とする動物におけるがんの治療は、IL-2に対して特異的である有効量の抗体または本明細書に記載される抗体を含む組成物を、任意選択でIL-2と併用して動物に投与することを含む。
【0282】
本開示の方法によって治療することができる状態は、好ましくは、哺乳動物において生じる。哺乳動物には、例えば、ヒトおよび他の霊長類、ならびにイヌおよびネコなどのペットまたはコンパニオン動物、ラット、マウス、およびウサギなどの実験動物、ならびにウマ、ヒツジ、およびウシなどの家畜が含まれる。
【0283】
医薬組成物の製剤化
本開示の抗体をヒトまたは試験動物に投与するために、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物に抗体を製剤化することが好ましい。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、以下に記載されるような、当該技術分野で周知の経路を使用して投与されたときに、アレルギー反応または他の有害反応を生み出さない分子実体および組成物を指す。「薬学的に許容される担体」には、あらゆる臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0284】
さらに、化合物は、水または一般的な有機溶媒と共に溶媒和物を形成し得る。かかる溶媒和物もまた企図される。
【0285】
抗体は、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、肺内投与、および鼻腔内投与、ならびに局所治療のために所望される場合、病変内投与を含む任意の好適な手段によって投与される。非経口注入には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、または皮下投与が含まれる。さらに、抗体は、特に抗体の投与量を減らしながら、パルス注入によって適切に投与され得る。好ましくは、投与は、投与が短時間であるか慢性であるかに部分的に応じて、注射、最も好ましくは静脈内、筋肉内、または皮下注射によって与えられる。局所投与、特に、経皮投与、経粘膜投与、腸内投与、経口投与、または例えば所望の部位の近くに置かれたカテーテルを通した局所投与を含む、他の投与方法が企図される。
【0286】
活性成分として本明細書に記載される抗体を含有する本開示の医薬組成物は、投与経路に応じて、薬学的に許容される担体または添加剤を含有し得る。かかる担体または添加剤の例としては、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加剤は、適宜、本開示の投与剤形に応じて、上記またはそれらの組み合わせから選択されるが、それらに限定されない。
【0287】
医薬組成物の製剤化は、選択される投与経路によって異なる(例えば、溶液、エマルジョン)。投与される抗体を含む適切な組成物は、生理学的に許容されるビヒクルまたは担体中で調製され得る。溶液またはエマルジョンの場合、好適な担体には、例えば、生理食塩水および緩衝媒質を含む、水溶液もしくはアルコール/水溶液、エマルジョン、または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油が含まれ得る。静脈内ビヒクルには、様々な添加剤、保存剤、または流体、栄養素、もしくは電解質補充薬が含まれ得る。
【0288】
多様な水性担体、例えば、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなど、および穏やかな化学修飾などに供した、安定性の増強のための他のタンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどが含まれ得る。
【0289】
抗体の治療用製剤は、所望の純度を有する抗体を任意の生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合させることによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保管用に調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、これには、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質、;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0290】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の適応症のために、必要に応じて、2つ以上の活性化合物、特に、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含有してもよい。かかる分子は、好適には、意図される目的のために有効な量の組み合わせで存在する。
【0291】
活性成分はまた、コアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、および名のカプセル)における、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ-(メチルメタシレート(methylmethacylate))マイクロカプセル、またはマクロエマルジョンの中に封入され得る。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0292】
インビボ投与のために使用される製剤は、滅菌される必要がある。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
【0293】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造のために好適な賦形剤と混合して、活性化合物を含有し得る。かかる賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガント;トラガカントゴムおよびアカシアゴムであり、分散剤または湿潤剤は、天然に生じるホスファチド、例えばレシチン、または脂肪酸との酸化アルキレンの縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールとの酸化エチレンの縮合物、例えばヘプタデカエチル-エネオキシカテノール、または脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの酸化エチレンの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸およびヘキシトール無水物との酸化エチレンの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、エチル、またはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエートを含有し得る。
【0294】
本明細書に記載される抗体は、保管用に凍結乾燥され、使用前に好適な担体中で再構築することができる。この技術は、従来の免疫グロブリンで有効であることが示されている。任意の好適な凍結乾燥および再構築技術を用いてもよい。当業者であれば、凍結乾燥および再構築は、異なる程度の抗体活性の喪失をもたらす可能性があり、補うために使用レベルを調節する必要がある場合があることを理解するであろう。
【0295】
本明細書に記載されるIL-2抗体は、1つ以上の追加の抗体との共製剤として調製および投与することができる。一態様では、抗体のうちの少なくとも2つは、異なる抗原を認識し、それに結合する。別の態様では、複数の抗体のうちの少なくとも2つは、同じ抗原の異なるエピトープを特異的に認識し、それに結合することができる。
【0296】
水の添加による水性懸濁液の調製に好適な分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1つ以上の保存剤と混合した活性化合物を提供する。好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、既に上に述べたものによって例示されている。
【0297】
これらの製剤中の抗体の濃度は、例えば、約0.5重量%未満から、通常1重量%または少なくとも約1重量%から、15または20重量%まで幅広く変動し得、選択された特定の投与様式に従い、主に液量、粘度などに基づいて選択されることになる。したがって、非経口注射用の典型的な医薬組成物は、1mlの滅菌緩衝水および50mgの抗体を含有するように作製され得る。静脈注入用の典型的な組成物は、250mlの滅菌リンゲル液および150mgの抗体を含有するように作製され得る。非経口投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に既知または明白であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)により詳細に記載されている。抗体の有効投薬量は、1回の投与につき体重1kg当たり0.01mg~1000mgの範囲内である。
【0298】
医薬組成物は、滅菌注射用水溶液、油性懸濁液、分散液、または滅菌注射溶液もしくは分散液の即時調製用の滅菌粉末の形態であり得る。懸濁液は、上述の好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であり得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、植物油、リンゲル液、ならびに等張性塩化ナトリウム溶液を含有する溶媒または分散媒質であり得る。さらに、溶媒または懸濁化媒質として滅菌不揮発性油が慣習的に用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の不揮発性油が用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製における用途を見出す。
【0299】
全ての場合において、形態は滅菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性でなければならない。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。製造および保管の条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によってもたらされ得る。
【0300】
投与のために有用な組成物は、それらの効力を増加させるために摂取または吸収増強剤と共に製剤化されてもよい。かかる増強剤には、例えば、サリチル酸、グリココール酸/リノール酸、グリコール酸(glycholate)、アプロチニン、バシトラシン、SDS、カプリン酸などが含まれる。例えば、Fix(J.Pharm.Sci.,85:1282-1285(1996))およびOliyai and Stella(Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.,32:521-544(1993))を参照されたい。
【0301】
抗体組成物は、その同種の受容体またはリガンドへの標的の結合、標的媒介性シグナル伝達など標的活性を調節する用途のために企図される。特に、組成物は、副作用を実質的に伴わない濃度で阻害特性を呈し、したがって、延長した長期間の治療プロトコルに有用である。例えば、1つ以上の他の薬剤、例えば、IL-2、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤との抗体の同時投与は、患者における有毒な副作用を効果的に低減させながら、治療される状態または障害の有益な阻害を達成することができる。
【0302】
さらに、本開示における使用のために企図される組成物の親水性および疎水性の特性はバランスがとれており、それにより、かかるバランスを欠く他の組成物は有用性が実質的に低い一方、インビトロおよび特にインビボ用途の両方でそれらの有用性を高める。具体的には、本開示における使用のために企図される組成物は、化合物が作用の推定部位へと細胞膜を横切ることを許容する脂質中での溶解度を有しながら、体内での吸収および生物学的利用能を許容する水性媒質中での適切な溶解度を有する。したがって、企図される抗体組成物は、それらが標的抗原活性部位に送達され得る場合に最大限に有効である。
【0303】
投与および投与量
一態様では、本開示の方法は、本明細書に記載される抗体を含む医薬組成物を投与する工程を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、滅菌組成物である。
【0304】
本開示の方法は、治療薬を哺乳動物対象に直接または間接的に導入するための任意の医学的に許容される手段によって行われ、これには、注射、経口摂取、鼻腔内、局所、経皮、非経口、吸入スプレー、膣内、または腸内投与が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、および槽内注射、ならびにカテーテルまたは注入技術を含む。皮内、腫瘍内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後、肺内注射、およびまたは特定の部位での外科的移植による投与も企図される。
【0305】
一実施形態では、投与は、治療を必要とするがんまたは患部組織の部位で、当該部位への直接注射によってまたは持続送達もしくは持続放出機構を介して行われ、これは製剤を内部に送達することができる。例えば、組成物(例えば、可溶性ポリペプチド、抗体、または小分子)の持続送達が可能な生分解性マイクロスフェアもしくはカプセルまたは他の生分解性ポリマー構成が、がんの近く、またはがんの部位に埋め込まれた本開示の製剤に含まれてもよい。
【0306】
治療用組成物はまた、複数の部位において患者に送達されてもよい。複数回投与は、同時に与えられてもよく、または一定時間にわたって投与されてもよい。ある特定の場合では、治療用組成物の連続フローを提供することが有益である。さらなる療法は、定期的に、例えば、1週間に1回、2週間ごとに1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、もしくは3カ月ごとに1回、またはより長い間隔で施されてもよい。
【0307】
所与の投薬量での抗体組成物の量は、療法が施される個体のサイズおよび治療されている障害の特徴に応じて変動し得る。例示的な治療において、約1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、500mg/日、または1000mg/日を投与する必要がある場合がある。これらの濃度は、単一の投与剤形として、または複数回用量として投与され得る。最初に動物モデルにおける、およびその後の臨床試験における標準用量応答研究は、特定の疾患状態および患者集団のための最適な投薬量を明らかにする。
【0308】
所与の投薬量でのIL-2抗体の量は、療法が施されている固体のサイズおよび治療されている障害の特徴に応じて変動し得ることも本開示において企図される。抗体組成物は、疾患の進行または許容できない毒性が生じるまで1、2、または4週間ごとに週に2回、0.1~15mgの用量範囲で30~60分間にわたる静脈注入として投与され得る。様々な実施形態では、抗体組成物は、週に2回、または1、2、もしくは4週間ごとに、0.3~30mg/kgの用量範囲で皮下または筋肉内に投与され得る。様々な実施形態では、用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または30mg/kgであり得る。様々な実施形態では、抗体組成物は、週に2回、または1、2、もしくは4週間ごとに、0.3~3mg/kgの用量範囲で静脈内投与され得る。代替的には、抗体組成物は、週に2回、または1、2、もしくは4週間ごとに、0.5~5mg/kgの用量範囲で皮下または筋肉内に投与され得る。
【0309】
様々な実施形態では、IL-2がIL-2抗体と併用して与えられる場合、投与されるIL-2の用量は、約0.05mg/kg~1mg/kg、または約0.05~0.5mg/kgの範囲内である。様々な実施形態では、IL-2は、IL-2抗体と併用して与えられる場合、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.75mg/kg、もしくは1.0mg/kgの用量、または重量で与えられる場合、約1.0μg~50μg、もしくは約1.0μg、3.0μg、5.0μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、もしくは50μgの用量である。抗IL2 mAbの投与量範囲は、0.05~5mg/kgであり得る。様々な実施形態では、IL-2抗体は、約0.05mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、もしくは5mg/kgの用量、または重量で与えられる場合、約50~1000mg、もしくは約30mg、50mg、100mg、125mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、もしくは1000mgの用量で投与される。例えば、マウスに投与される1:1モル比のmAb:IL2は、15ug:1.5ug(すなわち、0.75mg/kg:0.075mg/kg)として投与され得る。ヒトにおける例示的な投与レジメンは、予め混合されている場合、約0.1mg/kg mAb+0.01mg/kg IL-2、または別個に与えられる場合、1~5mg/kg mAb+0.005~0.05mg/kg IL-2であり得る。
【0310】
さらなる治療薬が本開示の治療薬と併用して投与される場合、その投与量は修正され得ることは明白であろう。
【0311】
キット
さらなる態様として、本開示は、本開示の方法を実践するためにそれらの使用を容易にする様式でパッケージ化された1つ以上の化合物または組成物を含むキットを含む。一実施形態では、かかるキットは、密封ボトルまたは容器などの容器の中にパッケージ化された、本明細書に記載される化合物または組成物を含み、本方法における化合物または組成物の使用を説明するラベルが容器に貼付されているかまたはパッケージに含まれている。好ましくは、化合物または組成物は、単位投与剤形でパッケージ化されている。キットは、特定の投与経路に従う組成物の投与のため、またはスクリーニングアッセイの実践のために好適なデバイスをさらに含んでもよい。好ましくは、キットは、抗体組成物の使用を説明するラベルを含有する。
【0312】
本開示のさらなる態様および詳細は、限定的ではなく例示的であることが意図される以下の実施例から明白であろう。
【実施例0313】
実施例1:IL-2に対する高親和性抗体のパニング
1:10比のIL-2対ビオチン試薬を使用する製造業者のプロトコルに従ってEZ-link Micro NHS-PEG4ビオチン化キット(Pierce,Rockford,IL)を使用して、組換えヒトIL-2(C125A変異体、Reprokine,Rehovot,Israel)をビオチン化した。
【0314】
可溶性パニング法を使用して、ビオチン化IL-2を用いて一本鎖Fv(scFv)ファージディスプレイライブラリ(XOMA,Berkeley,CA)をパニングした。カッパおよびラムダサブライブラリを別々にパニングした。ファージパニングの最初のラウンドでは、1:1で10%ミルク/PBSと混合することによって、ライブラリの50Xライブラリ等価物(カッパでは約7×1012cfuおよびラムダでは約1×1013)を室温で1時間、回転させながらブロックした。ブロックファージをストレプトアビジンコーティング磁気DYNABEADS(登録商標)M-280(ThermoFisher)に添加し、45分間、回転させながらインキュベートすることによって、ストレプトアビジンに対する結合剤をブロックファージから選択解除した。選択解除工程を再度繰り返した。磁石を使用して、ファージからビーズを分離した。選択解除工程と同時に、室温で45分間、回転させながらインキュベートすることによって、200ピコモルのビオチン化IL-2をストレプトアビジンコーティング磁気DYNABEADS(登録商標)M-280に結合させた。選択解除したファージを、磁気ストレプトアビジンビーズに結合したビオチン化IL-2(サブライブラリ当たり100pmol)に添加し、1.5時間、回転させながらインキュベートすることによって、選択を行った。選択後、0.5%ミルク/PBS-0.1%TWEENで未結合のファージを3回、各5分間ビーズから洗浄し、続いてさらに3回、0.5%ミルク/PBSで5分間洗浄した。洗浄工程後、100mMのトリエチルアミンを添加し、回転させながら室温で30分間インキュベートすることによって、選択したファージをビーズから溶出させた。等容積の1M Tris-HCl、pH7.4を添加して、溶出したファージを中和させた。次いで、溶出および中和したファージを50mLのFalconチューブ(Falcon No 352070)内に採集し、これを使用して対数期増殖TG1+cytFkpA細菌細胞(OD600 約0.5)を感染させた。感染は、振とうさせずに37℃で30分間行い、続いて100rpmで振とうさせながら37℃で30分間さらにインキュベートした。100μg/mLのカルベニシリン、34μg/mLのクロラムフェニコール、および2%のグルコースを補充した2xYT培地(2YTCCmG)の寒天バイオアッセイプレートに細胞をプレーティングし、30℃で一晩インキュベートして、一晩菌叢(lawn)を生育させた。
【0315】
次のラウンドの入力としての調製において、M13K07ヘルパーファージを使用して重複感染によって前のラウンドの出力の100Xをレスキューした。これは、前のパニングラウンドの出力から掻き取った細胞を2xYTCm培地に接種することによって行った。開始培養物についてOD600nmを測定し、約0.05の開始OD600nmを反映するように調節した。細胞がOD600nm約0.5の対数増殖期に達するまで、振とうさせながら細胞を37℃で増殖させた。細胞を感染多重度(MOI)=約20、37℃で30分間、振とうさせずにM13K07(New England Biolabs,MA)に感染させ、続いて150rpmで振とうさせながら37℃でさらに30分間インキュベートした。37℃での感染後、細胞をペレット化し、25ug/mLのカナマイシン、100ug/mLのカルベニシリン、および2%のアラビノースを補充した新しい2xYT培地(2YTCKAra)に移した。培養物を25℃で一晩増殖させた。遠心分離によってファージを細胞および破片から分離し、得られた上清を回収し、次のパニングラウンドのための入力として使用した。各パニングラウンドに使用した入力の量および得られたファージ出力力価によって選択濃縮を監視した。
【0316】
2回目および3回目のパニングラウンドでは、1回目のラウンドで従った同じ溶液相プロトコルを使用したが、以下の点が異なる。パニングラウンド2および3に使用したファージ入力量は、約1.0×1010cfuであった。ラウンド2では、25および10ピコモルのビオチン化抗原を選択に使用し、ラウンド3では、10ピコモルのビオチン化抗原を使用した。ラウンド2では、0.5%ミルク/PBS-0.1%TWEENで未結合のファージを5回、各5分間ビーズから洗浄し、続いて0.5%ミルク/PBSでさらに5回、5分間洗浄した。ラウンド3のパニングでは、0.5%ミルク/PBS-0.1%TWEENでビーズを5分間5回洗浄し、その後、0.5%ミルク/PBS-0.1%TWEENで3回素早く洗浄し、続いて0.5%ミルク/PBSで5分間5回、そして3回素早く洗浄した。
【0317】
実施例2:周辺質抽出物中の抗体のスクリーニング
IL-2結合剤のスクリーニングにおける使用のための分泌された抗体断片を含有する細菌周辺質抽出物(PPE)は、標準方法によって調製した。個々のコロニーを、100ug/mLのカルベニシリンおよび0.1%のグルコース培地を補充した2YTCで充填した96ウェルプレートに採取した。培養物を、対数増殖相(OD600nm=0.5)に達するまで振とうさせながら37℃で増殖させた。次いで、1mMのIPTG最終を添加することによって可溶性断片を産生するようにコロニーを誘導し、振とうしながら25℃で一晩インキュベートした。可溶性断片抗体を含有するPPEは、完全EDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテルタブレットを(Roche,IN)を用いて1:3体積比の氷冷PPB溶液(Teknova,Hollister,CA)および再蒸留水(ddH20)を添加する標準方法を使用して、誘導された細胞から調製した。
【0318】
ELISA
PPEを以下のようにELISAによってアッセイした。384ウェルのストレプトアビジンコーティングプレート(Thermo Fisher Scientific,Rochester,NY)または384ウェルのMaxiSorp(Thermo Fisher Scientific,Rochester,NY)を4℃で一晩、ストレプトアビジンコーティングプレートについてはビオチン化IL-2(PBS中、1μg/mL)で、MaxiSorpプレートまたはPBS(対照として)についてはIL-2(PBS中、1μg/mL)でコーティングした。PPEを5%のBSA/PBSで1時間ブロックし、次いで、コーティングされたELISAプレート(20 μl/ウェル)に添加し、室温(RT)で1時間インキュベートした。結合したscFv断片を、マウス抗V5 mAb(Sigma)を用いて室温で1時間検出し、続いてヤギ抗マウスHRPコンジュゲート抗血清(Thermo Scientific,Rockford,IL)を用いて検出した。ELISAスクリーニングの各段階の後に、PBS-0.1%TWEEN-20(Teknova,Hollister,CA)で3回の洗浄を実施した。20μl/ウェルの可溶性3.3’,5.5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質(KPL)を用いて450nm吸光度で発色させ、1MのH2SO4(20μl/ウェル)を用いて停止させた。
【0319】
一次スクリーニングにおいて、ストレプトアビジンによって捕捉されたビオチン化rhIL-2への結合がバックグラウンドの3倍を超え、かつストレプトアビジン単独への結合がバックグラウンドの3倍未満であると測定された試料を一次ヒットとして選定した。一次ヒットを採取し、新しいプレートに再配列し、PPEを調製し、上記のように再スクリーニングした。IL-2への結合がバックグラウンドの3倍を超え、かつ対照プレート上の結合が3倍未満であると再び測定された試料を二次ヒットとして選定した。二次ヒットを再度再配列し、次いで、三次スクリーニングのためにプレート上に直接コーティングされたrhIL-2上でELISAによってPPEをスクリーニングした。
【0320】
再フォーマット化
二次ヒットのDNA配列を判定し、三次スクリーニングにおいて結合した13個の固有のクローンをIgG2フォーマットに再フォーマット化した。選択されたヒットの可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)をPCR増幅し、抗体定常領域配列を含有するプラスミドベクターにクローニングし、標準方法を使用して293E細胞に一時的にトランスフェクトして、さらなる特性評価のための材料を生成した。
【0321】
SPRによる結合
予備動力学結合分析のために、動力学結合分析のための標準方法を使用して、培養上清中のIgGを、ProteOn X100(Biorad)上の固定された抗ヒトFc表面にわたって注入し、続いて5つの濃度のrhIL-2または泳動緩衝液(1%BSAを含むHBS-EP+)を注入した。ProteOn分析ソフトウェアを使用して、親和性は、1桁または2桁のnM範囲内であることが推定された(表2)。これらの抗体がIL-2受容体結合と競合するかどうかを判定するために、第2の実験は、可溶性IL-2 Rβ(R&D Systems)が、同様に捕捉されたIgGによって結合されたIL-2に結合することができるかどうかを試験した。抗体のうちの3個、XPA.92.011、XPA.92.012、およびXPA.92.013は、明らかにIL-2 Rβの結合を可能にした一方、他の10個の抗体によって捕捉されたIL-2へのそのような結合は検出されなかった(表2)。
【0322】
(表2)SPRによって測定した、組換えヒトIL-2(rhIL-2)およびIL-2RβへのIL-2抗体結合
【0323】
親和性成熟
迅速速度論で3個のIL-2 Rβ許容抗体の親和性が低かったため、軽鎖シャッフリングを使用してこれらを親和性成熟に供した。3個の抗体の各々からのVH領域をVLのライブラリにクローニングした。溶液相プロトコルを使用して、この新しいFabライブラリをビオチン化IL-2に対してパニングした。
【0324】
軽鎖シャッフリングされたライブラリのパニング
ファージパニングの最初のラウンドでは、1:1でSuperBlock(ThermoFisher)と混合することによって、親和性成熟ライブラリからの約1×1011ファージを室温で1時間、回転させながらブロックした。ブロックファージをストレプトアビジンコーティング磁気DYNABEADS(登録商標)M-280に添加し、30分間、回転させながらインキュベートすることによって、ストレプトアビジンに対する結合剤をブロックファージから選択解除した。選択解除工程を再度繰り返した。磁石を使用して、ファージからビーズを分離した。選択解除工程と同時に、室温で1時間、回転させながらインキュベートすることによって、10ピコモルのビオチン化IL-2をストレプトアビジンコーティング磁気DYNABEADS(登録商標)M-280に結合させた。選択解除したファージを、磁気ストレプトアビジンビーズに結合したビオチン化IL-2に添加し、1.5時間、回転させながらインキュベートすることによって、選択を行った。選択後、0.5%Superblock PBS-0.1%TWEENで未結合のファージを5回、各5分間ビーズから洗浄し、続いてさらに3回、0.5%Superblock PBSで5分間洗浄した。洗浄工程後、100mMのトリエチルアミンを添加し、回転させながら室温で30分間インキュベートすることによって、選択したファージをビーズから溶出させた。等容積の1M Tris-HCl、pH7.4を添加して、溶出したファージを中和させた。次いで、溶出中和したファージを50mLのFalconチューブ(Falcon No 352070)内に採集し、これを使用して対数期増殖TG1+cytFkpA細菌細胞(OD600 約0.5)を感染させた。感染は、振とうさせずに37℃で30分間行い、続いて100rpmで振とうさせながら37℃で30分間さらにインキュベートした。100μg/mLのカルベニシリン、34μg/mLのクロラムフェニコール、および2%のグルコースを補充した2xYT培地(2YTCCmG)の寒天バイオアッセイプレートに細胞をプレーティングし、30℃で一晩インキュベートして、一晩菌叢を生育させた。
【0325】
混入した親scFvクローンを除去するために、いずれもscFvファージミドを切断するがFabファージミドを切断しないNheI-HF(NEB)およびBsmIでラウンド1の出力からのDNAを消化した。得られたDNAをTG1+cytFkpA細胞に形質転換し、上記のようにファージを産生した。
【0326】
ラウンド1と同様のプロトコルを使用してパニングのさらなるラウンドを完了したが、以下を変更した。KingFisher器具を使用して、ストレプトアビジンコーティング磁気DYNABEADS(登録商標)M-280に対する約5×1010ファージの選択解除を30分間、3回行った。1ピコモルのビオチン化IL-2をストレプトアビジンコーティング磁気DYNABEADS(登録商標)M-280上にコーティングし、そこに選択解除したファージを添加し、混合のためにKingFisherを使用して1時間インキュベートした。最後に、0.5%Superblock/PBS-0.1%TWEENで未結合のファージを5回、各5分間ビーズから洗浄し、続いて0.5%Superblock/PBSでさらに5回、5分間洗浄した。
【0327】
SPRによる動力学ランキング
オフレートランキングについてBiacore 4000を使用したSPRによって親和性成熟クローンの一次スクリーニングを実施した。抗Fab捕捉試薬を4つ全てのフローセルのスポット1、2、4、および5に固定して、製造業者の指示に従うアミンカップリングおよび試薬(Biacore)によってBiacore CM5チップを調製した。4個のPPEの96ウェルプレート上記のように調製し、次いで、Biacore泳動緩衝液(1%BSAを含むHBS-EP+)で1:1に希釈し、遠心分離により0.2μmのMultiscreenプレート(Millipore)を通して濾過した。希釈し、濾過したPPEを、スポット1または5に3分間注入し、続いて、高性能モードの緩衝液または50nM IL-2を30μL/分で3分間注入した。分離を5分間監視した。スポット2または4およびIL-2緩衝液注入なしを使用して、IL-2注入を二重参照した。Biacore 4000 Evaluationソフトウェアを使用してデータを分析した。45RUを超えるFabを捕捉し、かつ0.01sec-1未満のオフレートを有する37個の試料をヒットとして選定し、さらなるスクリーニングに進めた。
【0328】
ヒットとして選定した試料を配列決定し、上記のように(PPEを2分間注入し、IL-2を30、10、3、および0nMで注入したことを除いて)SPRによって再スクリーニングした。オンレートおよびオフレートの両方を適合させることによってデータを分析し、そこから親和性の予測は10nM~0.06nMの範囲であることを計算した。
【0329】
実施例3:IL-2調節抗体のさらなるスクリーニング
抗IL-2抗体の新規のスクリーニングおよび機能的アッセイにおける使用のためにヒトIL-2受容体を発現するようにCHO-K1細胞を操作した。当該技術分野で既知である蛍光標識細胞分取(FACS)法を使用して、高レベル、中レベル、または低レベルのIL-2 Rα(CHO/Rα)、IL-2 Rβ(CHO/Rβ)、またはIL-2 Rβおよびγc(CHO/Rβγ)を発現するCHO-K1細胞を選択した。マウス由来のBaF3細胞株をヒトIL-2受容体でトランスフェクトしてIL-2応答性を付与し、得られた細胞株をIL-2に引き離し、増殖アッセイにおける抗体活性の特性評価のために使用した。発現レベル(受容体/細胞の数)を予測し、結合、シグナル伝達、または増殖アッセイにおける最適性能について複数の細胞株を試験した。様々なアッセイにおける使用のために以下の細胞株クローンを選択した(表3)。
【0330】
(表3)ヒトIL-2受容体発現レベル(受容体/細胞)
-- ヒトIL-2受容体遺伝子でトランスフェクトされていない
【0331】
周辺質抽出物(PPE)のフローサイトメトリースクリーニング
所望の特性を有する抗体を同定するために、可溶性抗体断片を含有するPPEを、飽和量のIL-2を含むかまたは含まないCHO/Rα、CHO/Rβ、CHO/Rβγ、および親CHO-K1細胞上でスクリーニングした。このスクリーニングは、1)CHO/Rαまたは親細胞に結合しないクローン、および2)IL-2の存在下ではCHO/RβまたはCHO/Rβγ細胞に結合するが、IL-2の不在下ではそれらに結合しないクローンを同定した。細胞をExcel302および2mM L-グルタミン(Sigma#14324C-500mL)中で増殖させた。試験当日、細胞を洗浄し、染色し、FAC緩衝液(PBSおよび5%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウム)中で再懸濁化させた。CHO-K1およびCHO/Rβ細胞をCFSE(Invitrogen #C34554)またはCell Trace Brilliant Violet(Invitrogen #34557)で染色した。染色したCHO-K1およびCHO/Rβを未染色のCHO/Rβγ細胞と混合した。可溶性抗体断片(PPE)を含有する96ウェルV字底プレート(Costar)中の各ウェルに、各ウェルが50,000個の各細胞型とIL-2(Reprokine # RK60568)とを100nMの最終濃度で含有するようにCHOk1、CHOk1-IL-2Rβ、およびCHO/Rβγ細胞、ならびにIL-2を添加した。ウェルが同じバッチから調製されたPPEを含有する別の別個の96ウェルV字底プレートにおいて、CFSEで染色したCHO-K1細胞を未染色のCHO/Rα(ウェル当たり50,000個の各細胞型)およびIL-2と100nMの最終濃度で混合した。全ての試料を4℃で1~2時間インキュベートさせ、次いで、FAC緩衝液で洗浄した。次に、1μg/mLのマウス抗c-myc(Roche# 11667149001)を細胞に添加し、4℃で1時間インキュベートさせた。インキュベーション後、細胞を再び洗浄し、抗マウス重鎖および軽鎖抗体(Jackson Immunoresearch #115-136-146)を1:1000の希釈で細胞に添加し、4℃で30分~1時間インキュベートした。FACScanフローサイトメーターを使用して試料を分析した。親CHO-K1細胞と比較して少なくとも2倍大きいCHO/RβまたはCHO/Rβγ細胞への結合、かつ2倍未満のCHO/Rα細胞への結合を示した試料をさらなる特性評価のために選択した。
【0332】
精製されたIgGのフローサイトメトリースクリーニング
ファージ由来の抗体断片を全長ヒトIgGに再フォーマット化した後、上記のように増殖および染色したCHO/Rα、CHO/Rβ、CHO/Rβγ、および親CHO-K1細胞上で精製された抗体をスクリーニングした。抗IL-2抗体の結合効力を特性評価するために、IgGを連続的に力価測定し、細胞および固定最終濃度のIL-2(Reprokine #RK60568)を含有するウェルに添加した。別の試験では、IL-2を連続的に力価測定し、細胞および固定量の抗IL-2抗体を含有するウェルに添加して、抗体の結合効力を測定した。これを4℃で1~1.5時間インキュベートさせた。抗ヒト重鎖および軽鎖(Jackson Immuno Research #109-136-088)を1:1000で添加し、4℃で30分~1時間インキュベートすることによって、結合した抗体を検出した。BD FACs Cantoフローサイトメーターを使用して試料を分析した。漸増濃度のIL-2の存在下での、異なるIL-2 R鎖を発現するCHO細胞への精製された抗体の結合は、
図2A~2Dに示される。一定の[IL-2]の存在下での、選択した生成された抗体の力価測定は、
図3A~3Dに示される。フローサイトメトリーによって測定された細胞に結合する抗体のEC50は、表4に示される。
【0333】
(表4)ヒトIL-2受容体を発現する細胞に結合するIL-2/mAb複合体のEC
50(最大結合の半分が認められる抗体の濃度)
【0334】
実施例4:IL-2誘導性細胞増殖
背景およびアプローチ
高親和性三量体またはより低い親和性の二量体IL-2 R複合体を発現する細胞に対する抗体の相対的効果を評価するために、2つの細胞株を使用する細胞増殖アッセイを用いた。NK系列のヒト細胞株、NK-92、ならびにヒトIL-2受容体βおよびγ鎖でトランスフェクトされたマウスリンパ球細胞株BaF3はいずれも、IL-2に応答した増殖活性を示す。NK-92細胞株は、三量体高親和性IL-2受容体複合体を形成するために必要とされる3つ全ての鎖、Rα、Rβ、およびγcを発現し、増殖についてIL-2に依存する。BaF3細胞は通常、増殖についてIL-3に依存するが、IL-2受容体でトランスフェクトされると、この細胞はIL-3から引き離され、増殖依存のためにIL-2に移行した。これらの実験に使用したBaF3クローンは、IL-2 Rβおよびγc鎖のみでトランスフェクトされ、それによりヒトIL-2受容体のより低い親和性の二量体複合体を介してシグナル伝達する。高親和性三量体IL-2受容体複合体(NK-92細胞、IL-2 Rαβγ)またはより低い親和性の二量体複合体(BaF3細胞、IL-2 Rβγ)のいずれかを発現する細胞に対する、IL-2誘導性増殖の抗体調節の効果の評価を行った。これにより、IL-2 Rα相互作用を主にブロックした抗体の細胞増殖に対する効果の実証を含む、異なる受容体複合体によって媒介されるIL-2誘導性増殖の阻害の程度の比較が可能となった。
【0335】
方法
NK-92細胞を、15ng/mLのヒトIL-2(Reprokine,Valley Cottage NY)と共に、12.5%FBS、12.5%ウマ血清(Hyclone)、0.2mMイノシトール、0.02mM葉酸(Sigma Aldrich)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(Life Technologies)を含むαMEM(Life Technologies)中で維持した。BaF3 IL-2 Rβγ細胞を、10%FBS、0.4mg/mLのジェネテシン(Life Technologies)、および100ng/mLのhIL-2を含むRPM中で維持した。細胞を遠心分離してペレット化し、DPBS中で洗浄し、IL-2を含まない完全増殖培地中で一晩再懸濁させた。一晩IL-2を除去した後、細胞を再度洗浄し、IL-2を含まない細胞それぞれの増殖培地において不透明な平底96ウェルプレートに25,000細胞/ウェルで播種した。
【0336】
細胞を添加する前に、IL-2力価測定物および抗体希釈物を混合し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、これらの試料を培養プレートに添加して、ウェル当たり100μLの最終濃度を達成し、プレートを37℃のインキュベーターの中に48時間置いた。IL-2力価測定アッセイにおける最終抗体濃度は、30μg/mLであった。
【0337】
インキュベーター中で48時間後、プレートを取り出し、室温と平衡させた。CellTiterGlo溶液、100μL/ウェル(Promega,Madison WI)を各ウェルに添加した。次いで、プレートを撹拌器に2分間置いて細胞溶解を誘導し、室温でさらに8分間インキュベートし、次いで、500mS積分のFlexStation 3 Luminometer(Molecular Devices,Sunnyvale CA)で読み取った。シグモイド用量応答4パラメータ適合を使用してPrism(GraphPad Software,La Jolla CA)中で発光値を分析して、
図4A、4B、および4Cに提示されるEC50値を判定した。これらの結果は、IL-2抗体、XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、およびXPA.92.099が、βγ複合体(Rβγ)のみを発現する細胞に対してよりも、3つ全ての受容体(Rαβγ)を発現する細胞の増殖に対して大きい効果を有することを示す。IL-2抗体、XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、およびXPA.92.099はまた、MAB602対照抗体よりも大きい程度で、IL-2 Rαβγを発現する細胞(NK92およびCTLL-2細胞)ならびにIL-2 Rβγを発現する細胞(BaF3細胞)においてIL-2誘導性増殖を阻害することが見出された(それぞれ
図5A~5C)。
【0338】
(表5)増殖アッセイ:ヒト受容体を発現する細胞において未結合のIL-2のEC
50と比較したmAb/IL-2複合体のEC
50(倍数EC
50シフト)
【0339】
(表6)増殖アッセイ:マウス受容体を発現する細胞において未結合のIL-2のEC
50と比較したmAb/IL-2複合体のEC
50(倍数EC
50シフト)
【0340】
実施例5:SPR研究
Biacore 4000を使用するSPRによって、標準捕捉方法を用いて抗体の親和性を測定した。簡潔には、抗ヒト抗体捕捉キット(Biacore)からの抗ヒトIgG(Fc特異的)を、製造業者の指示に従ってアミンカップリングによってCM-5センサーチップの4つ全てのフローセルのスポット1、2、4、および5に固定化した。泳動緩衝液は、1%BSAを含むHBS-EP+であった。2μg/mLの抗体を10μL/分の流速で2分間注入した。3倍連続希釈中でrhIL-2を0.11nM~10nMの5つの濃度で三連で3分間注入し、分離を10分間監視した。Biacore 4000 Evaluationソフトウェアを使用してデータを分析した。親和性は、表7に示される。
【0341】
(表7)ヒトIL-2に対する選択された抗体の動力学および親和性
【0342】
IL-2を30nMから1nMへの3倍連続希釈中で4つの濃度で二連で注入したことを除き、上記のようにSPRによってヒト、ウサギ、およびマウスIL-2とのIL-2抗体の種交差反応性を判定した。ヒト配列と比較した他の種由来のIL-2のアミノ酸配列が
図6に示される。いくつかの種由来のIL-2の配列は、PubMed構造データベースから取得した(ブタ:caa40071、ラット:aaa41427、ウサギ:np_001156652、ヒト:np_000577、マウス:aab39206)。これらの配列をベクターNTI(登録商標)(Lifetech)にインポートし、alignxツールを使用して整列させた。親和性の予測値は、表8に要約されている。
【0343】
(表8)種交差反応性:マウス、ラット、またはウサギ由来のIL-2に対するIL-2抗体の親和性
【0344】
実施例6:内因性発現細胞株での機能性シグナル伝達アッセイ
IL-2 Rα(CD25)の存在は、IL-2サイトカインに対する二量体IL-2受容体(IL-2 Rβγ)の親和性を増加させる。ヒトにおいて、ナイーブおよびメモリーT細胞、ならびにCD56dim NK細胞を含む多くの免疫細胞は、二量体受容体のみを発現する。対照的に、三量体IL-2 R(IL-2 Rαβγ)は、制御性T細胞、CD56bright NK細胞、および は、エフェクターT細胞によって一時的に発現される。内因性レベルのIL-2 R発現を有する細胞株は、受容体およびシグナル伝達成分のレベルを天然比に維持し、無傷であるシグナル伝達経路を含有する。転写因子である転写のシグナルトランスデューサおよび活性化因子5(STAT5)は、IL-2受容体を介してIL-2によって媒介される主要な早期シグナル伝達事象である。STAT5リン酸化の結果として、増殖、生存、およびアポトーシスなどの細胞プロセスに関与する多様な遺伝子の発現が増加する。ヒトIL-2 RαβγまたはIL-2 Rβγの内因性発現を有する細胞株に対してIL-2シグナル伝達に影響を及ぼす抗IL-2抗体候補の能力を評価するために、STAT5aおよびbのリン酸化を下記のように測定した。
【0345】
ヒトNK-92細胞株におけるSTAT5a、bのリン酸化
三量体受容体(IL-2 Rαβγ)を発現した細胞上でSTAT5のリン酸化を誘導する抗体/IL-2複合体の能力を比較するために、NK-92細胞株(ATCC)を利用した。これは、増殖についてIL-2に依存し、細胞傷害性能力および特徴的なNK細胞表面マーカーを維持するNK細胞株である。これは、CD25(IL-2 Rα)の発現が均一に高い。細胞を2回洗浄し、続いて、37℃、5%CO2インキュベーターにおいて、10%FBS(Hyclone)を含むがIL-2を含まないRPMI-1640培地(Life Technologies)中で一晩飢餓させた。翌日、PBSおよび0.5%BSA中、ウェル当たり100,000細胞の濃度で細胞を播種した。NK-92細胞を含有するプレートにウェル当たり50μlを添加する前に、様々な用量のIL-2および100nMの指定の抗IL-2抗体を37℃で15~30分間、事前に複合体化した。細胞を37℃で30分間刺激し、続いて、100μlの冷たいPBSを添加して反応を停止させた。プレートを4℃で3分間、1500rpmで遠心分離した。その後、上清を除去し、80μlの冷たいMSD溶解緩衝液を各ウェルに添加した。4℃で1時間、振とうプラットフォーム上でインキュベートすることによって細胞を完全に溶解させた。製造業者の指示に従ってMSD Phospho(Tyr694)/Total STAT5a,b Whole Cell Lysateキット(MesoScale Discovery;cat.K15163D-2)を使用して、全およびリン酸化STAT5a、bを測定した。Sector Imager 6000(MesoScale Discovery)でプレートを読み取った。Prism version 6.05(GraphPad)のシグモイド用量応答式を使用して非線形回帰によって曲線を適合させた。
【0346】
予想通り、アイソタイプ対照(抗KLH)および抗体対照なしは、IL-2シグナル伝達に対して高度に感受性であり、それぞれ0.9および0.6pMのEC50値を有した(
図7A)。アイソタイプ対照と比べて、試験した全ての化合物は、STAT5a、bのIL-2誘導性リン酸化のEC50の増加を示した。参照抗体MAB602は、アイソタイプ対照と比べてEC50値の1,000倍シフトを誘導した(0.9pMから900pMへ)。XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042間の倍数シフトは類似しておりそれぞれ900pM、1150pM、および1700pMのEC50値の増加であった。XPA.92.099は、このアッセイにおいてEC50値が僅かに小さくシフトし、0.9pMから463pMへとシフトした。
【0347】
ヒト初代NK細胞におけるSTAT5a、bのリン酸化
抗体/IL-2複合体が二量体受容体(IL-2 Rβγ)を有する細胞上のSTAT5経路を調節する能力を検証するために、精製された初代NK細胞を利用した。さらなるCD25+の枯渇は、二量体IL-2 Rを有する細胞のみが存在することを確実にした。密度勾配遠心分離を使用して、様々なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。簡潔には、50mlの円錐中で、希釈した全血をFicoll(Sigma)溶液の上に層形成した。ブレーキなしで室温で30分間、400xgで層を遠心分離した。細胞帯を回収し、洗浄し、一定分量で凍結させた。PhosphoSTAT5分析用にNK細胞を単離するために、PBMCのバイアルを解凍し、製造業者の指示に従ってMACS NK細胞単離キット、ヒト(Miltenyi Biotech;cat:130-092-657)NK細胞を単離した。37℃、5%CO2インキュベーターにおいて、10%FBS(Hyclone)を含むがIL-2を含まないRPMI-1640培地(Life Technologies)中に精製されたNK細胞を一晩静置した。翌日、磁気ビーズ分離を使用してCD25+NK細胞をNK細胞集団から取り出した。簡潔には、細胞をMACS緩衝液(PBS(Life Technologies)および1%ウシ血清アルブミン(Sigma)中で再懸濁させ、ビオチン抗ヒトCD25(ebioscience)抗体(50μlの細胞溶液ごとに1μlの抗体)と共にインキュベートした。室温で10分間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、40μlのMagniSort Streptavidin陽性選択ビーズ(ebioscience)中で再懸濁させた。室温で10分間のさらなるインキュベーション後、体積を2.5mLにし、室温で5分間インキュベートすることによってEasySep Magnet(STEMCELL Technologies)を用いて分離を行った。未結合の細胞を清潔な管に移し、室温でさらに5分間インキュベートして、全てのCD25+細胞の完全な枯渇を確実にした。
【0348】
PhosphoSTAT5a、bアッセイを完了するために、PBSおよび0.5%BSA中、ウェル当たり100,000細胞の濃度でNK細胞を播種した。NK細胞を含有するプレートにウェル当たり50μlを添加する前に、様々な用量のIL-2および100nMの指定の抗IL-2抗体を37℃で15~30分間、事前に複合体化した。細胞を37℃で30分間刺激し、続いて、100μlの冷たいPBSを添加して反応を停止させた。プレートを4℃で3分間、1500rpmで遠心分離した。その後、上清を除去し、80μlの冷たいMSD溶解緩衝液を各ウェルに添加した。4℃で1時間、振とうプラットフォーム上でインキュベートすることによって細胞を完全に溶解させた。MSD Phospho(Tyr694)/Total STAT5a,b Whole Cell Lysate kit(MesoScale Discovery;cat.K15163D-2)を使用して全およびリン酸化STAT5a、bを測定した。Sector Imager 6000(MesoScale Discovery)でプレートを読み取った。Prism version 6.05(GraphPad)のシグモイド用量応答式を使用して非線形回帰によって曲線を適合させた。
【0349】
既存の文献と一致して、二量体受容体は、NK-92細胞と比較して、抗体なしおよびアイソタイプ対照(抗KLH)試料におけるより高いEC50値(それぞれ133および127pM)に見られるように、IL-2サイトカインに対してより感受性が低かった(
図7B)。アイソタイプ対照と比べて、試験した全ての化合物は、STAT5a、bのIL-2誘導性リン酸化のEC50値の増加を示した。参照抗体MAB602は、アイソタイプ対照と比べてEC50値の10倍シフトを誘導した(128pMから1302pMへ)。XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042の倍数シフトは類似しており、それぞれ5041pM、4520pM、および5124pMのEC50値であった。XPA.92.099は、このアッセイにおいてEC50値が他のXPA.92抗体より僅かに小さくシフトし、3054pMのEC50値を有した。ヒトIL-2受容体を発現する細胞についてのEC50の倍数シフトは、表9に要約されている。
【0350】
(表9)pSTAT5a、bアッセイ:ヒト受容体を内因的に発現する細胞において未結合のIL-2のEC
50と比較したmAb/IL-2複合体のEC
50(倍数シフト)
【0351】
マウス初代NK細胞におけるSTAT5a、bのリン酸化
マウスのNK細胞は、それらが二量体IL-2受容体を排他的に発現する点で、それらのヒト相対物とは異なる。マウスにおけるシグナル伝達に影響を及ぼすIL-2/抗体複合体の能力を測定するために、3匹の雌BALB/Cマウスからの脾臓を得て、1mLシリンジ(Becton Dickinson)の後ろ側を使用して臓器を40μMの細胞ストレーナー(Falcon)に押し通すことによって単細胞浮遊液を生成した。脾臓細胞を洗浄し、その後、RBC溶解緩衝液(Sigma)中に再懸濁させ、室温で5分間インキュベートさせた。次いで、細胞をRPMI-1640(Life technologies)および10%FBS(Hyclone)中で洗浄した。製造業者の指示に従ってMACSマウスNK単離キットII(Miltenyi)を使用してNK細胞を選別した。細胞を洗浄し、計数し、PBSおよび0.5%BSA緩衝液中で、100,000細胞を各ウェルに播種した。NK細胞を含有するプレートにウェル当たり50μlを添加する前に、様々な用量のIL-2および100nMの指定の抗IL-2抗体を37℃で15~30分間、事前に複合体化した。細胞を37℃で30分間刺激し、続いて、100μlの冷たいPBSを添加して反応を停止させた。プレートを4℃で3分間、1500rpmで遠心分離した。その後、上清を除去し、細胞を、80μlの冷たいMSD溶解緩衝液を各ウェルに添加した。4℃で1時間、振とうプラットフォーム上でインキュベートすることによって細胞を完全に溶解させた。MSD Phospho(Tyr694)/Total STAT5a,b Whole Cell Lysate kit(MesoScale Discovery;cat.K15163D-2)を使用して全およびリン酸化STAT5a、bを測定した。Sector Imager 6000(MesoScale Discovery)でプレートを読み取った。Prism version 6.05(GraphPad)のシグモイド用量応答式を使用して非線形回帰によって曲線を適合させた。
【0352】
抗体なしおよびアイソタイプ対照のEC50値は、ヒト初代NK細胞において見られるものと非常に類似していた(
図7C)(それぞれ139pMおよび116pM)。アイソタイプ対照と比べて、試験した全ての化合物は、STAT5a、bのIL-2誘導性リン酸化のEC50値の増加を示した。参照抗体MAB602は、アイソタイプ対照と比べてEC50値の3倍シフトを誘導した(116pMから361pMへ)。XPA.92.019、XPA.92.041、XPA.92.042、よびXPA.92.099の倍数シフトは各々約10~15倍であり、それぞれ1723pM、1352pM、1663pM、および1912のEC50値であった。ヒトIL-2受容体を発現する細胞についてのEC50の倍数シフトは、表10に要約されている。
【0353】
(表10)pSTAT5a、bアッセイ:マウス受容体を内因的に発現する細胞において未結合のIL-2のEC
50と比較したmAb/IL-2複合体のEC
50(倍数シフト)
【0354】
実施例7:IL-2/抗体複合体のインビボ投与後のリンパ球サブセットの分析
正常C57BL/6マウスに、アイソタイプ対照抗体または抗IL-2 mAbのいずれかの5倍過剰量と共に事前にインキュベートした、ビヒクル対照、または1μgのhIL-2(
図8A~D)、または1.5μgのhIL-2(
図8Fおよび8G)を、示した通り0、2、および4日目に腹腔内注射した。6日目に、標準技術を使用して脾臓を収集し、以下のようにフローサイトメトリーサブセットのために染色した。脾臓を単離し、分離させて、単細胞浮遊液を生成した。RBC溶解緩衝液(Gibco,Thermofisher)を使用して赤血球を溶解した。FACS緩衝液(PBSおよび2%FBSおよびアジ化ナトリウム(0.1%)中で細胞を2回洗浄し、96ウェルのV字底プレートにプレーティングした(1×10
6細胞/ウェル)。FACS緩衝液中、以下の蛍光標識抗体のカクテルで細胞を染色した:CD4(GK1.5)、CD8(53-6.7)、CD25(PC61.5)、CD44(IM7)、CD122(TM-β1)、IFNγ(XMG1.2)、およびNK1.1(PK136)、グランザイムB(GB12)(これらはBiolegend、Ebioscience、BD Biosciences、またはLife Technologiesから購入した)。試料を染色カクテル中、氷上で20~60分間インキュベートし、2回洗浄し、BD LSRIIまたはBD Accuriで読み取った。グランザイムB染色の分析の場合、表面マーカーで染色し、洗浄した試料を、製造業者の指示に従ってcytofix/cytoperm緩衝液(BD Biosciences)で固定および透過処理し、その後、抗グランザイムB抗体で20~60分間、氷上で染色した。試料を2回洗浄し、BD LSRIIまたはBD Accuriで読み取った。FlowJoソフトウェア(Treestar)またはCFlow(BD Biosciences)を使用してデータを分析した。リンパ球サブセットの分析については、以下のように選別をリンパ球、次いで系列マーカーでゲーティングした:CD8+対CD4発現/CD8+細胞のCD44hi%;CD4+細胞のCD25hiおよびCD44hi%;ならびにCD8、CD4、またはNK1.1について陽性の細胞の割合。
図8A~8Dは、関連するT細胞サブセットの要約を示し、
図8Eは、
図8Aおよび8Bのデータから計算したCD8+/CD4+T細胞の比率を示す。
図8Fは、全リンパ球のNK1.1+細胞の出現頻度を示す。
図8Gは、IL-2/抗IL-2抗体との接触後のマウスにおけるNK細胞によるグランザイムBの産生を示す。
【0355】
これらの結果は、抗IL-2抗体が、インビボでのCD8/CD4比に対して、ならびにNK細胞レベルおよび活性に対して効果を有することを示す。
【0356】
実施例8:皮下肺癌マウスモデルにおける、単独およびチェックポイント阻害剤と併用した抗体/IL-2複合体での治療
腫瘍異種移植動物モデルにおける抗IL-2抗体の効果を実証するために、C57/BL6マウスにルイス肺癌LLC-A9F1(LLC)細胞(2.5×10
5細胞)を皮下接種し、治療せずに10日間腫瘍を増殖させて、確立させた(治療を11日目に開始した)。治療のためのランダム化の前に外れ値を除去した。LLC腫瘍を各々保有するマウスの6つの群の治療を以下のように治療した:(1)ビヒクルのみの対照、n=10匹のマウス;(2)抗IL-2 XPA.92.099モノクローナル抗体と複合体化したIL-2(IL-2/mAb)(IP注射により48時間ごとに投与、1μgのIL-2および5μgのmAb)、n=5匹のマウス;(3)抗PD-1 mAb単独(RMP1-14クローン、Bioxcel、1週間に2回200μgの投与)、n=10匹のマウス;(4)IL-2/mAb(XPA.92.099)および抗PD-1 mAbの併用、n=5匹のマウス;(5)抗CTLA-4 mAb単独(UC10-4F10-11、Bioxcel、1週間に2回200μgの投与)、n=10匹のマウス;または(6)IL-2/mAb(XPA.92.099)および抗CTLA-4 mAbの併用、n=5匹のマウス。腫瘍測定(長さおよび幅)を盲検で実施し、面積をmm
2で表した。
図9は、上記のように治療した個々のマウスの経時的な腫瘍面積のグラフを示す。治療したマウスの数が有意性を達成するには低すぎたものの、抗PD-1または抗CTLA-4のいずれかとのIL-2/抗IL-2複合体の合わせた効果は、対照または単剤治療よりも大きい程度で腫瘍増殖を低減し、完全奏功を誘導する潜在性を有する(
図9)。
【0357】
抗IL-2抗体の抗腫瘍効果をさらに評価するために、より多い数のマウス(n=15/群)での実験を実施した。上記のようにマウスにLLC腫瘍細胞を接種した。腫瘍を確立し、マウスをランダム化したら、各々15匹のマウスの4つの群を以下のように治療した:(1)ビヒクルのみの対照(PBS);(2)抗PD-1 mAb(RMP1-14クローン)を200μg皮下(sc)で1週間に2回投与;(3)IL-2/mAb複合体(クローン99、48時間ごと、IP注射、2μgのIL-2+10μgのmAb);(4)群(2)および(3)に記載されるIL-2/mAb99+抗PD-1 mAbの併用。腫瘍測定(長さおよび幅)を盲検で実施し、面積をmm
2で表した。
図10Aは、上記の各治療群について経時的な平均腫瘍体積のグラフを示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。IL-2/抗IL-2複合体および抗PD-1単独療法は、対照で治療したマウスと比較して腫瘍増殖を著しく低減させた一方、抗PD-1のいずれかとのIL-2/抗IL-2複合体の合わせた効果は、試薬単独のいずれかのものよりも著しく大きかった。
図10Bは、同じ実験からの生存期間プロットを示す。対照群のマウスは完全奏功(検出可能な腫瘍なし)を有さなかったが、かかる完全奏功は、IL-2/mAb99単独群において1匹、抗PD-1単独群で2匹、および併用治療群で6匹のマウスによって達成された。
【0358】
実施例9:皮下LLC腫瘍を保有するC57BL/6マウスの免疫細胞に対するIL-2/抗体複合体の効果
腫瘍負荷中のインビボでの免疫細胞に対する抗体/IL-2複合体の効果を評価するために、上記のようにマウスに1×10
6個のLLC腫瘍を注射した。腫瘍の注射の21日後に、確立した腫瘍を有するマウスを5匹ずつの群にランダム化し、以下のように治療した:(1)対照(AbまたはIL-2なし);(2)抗PD-1 mAb(RMP1-14クローン)、1週間に2回、皮下に200μgの投与;(3)2日ごとのIP注射によるIL-2/mAb99複合体(2μgのIL-2+10μgのmAb);(4)群(2)および(3)に記載されるIL-2/mAb99+抗PD-1 mAbの併用;(5)IL-2/mAb19複合体(2μgのIL-2+10μgのmAb、1、3、5、9、13、および17日目のIP注射による);(6)群(2)および(5)に記載されるIL-2/mAb19+抗PD-1 mAbの併用。治療開始後19日目に、マウスを犠死させ、以下のように免疫細胞を分析した。脾臓細胞を単離し、細胞表面マーカーの発現について上記のように分析した。インターフェロンガンマ(IFNγ)を産生するCD8
+T細胞の能力をアッセイするために、(RPMIおよび10%FBS)ならびにブレフレジン(brefledin)A(Goglistop,BD Biosciences)中で、脾臓細胞をPMA(ホルボール12-ミリステート13-アセテート、50ng/mL)およびイオノマイシン(1μM)で10~12時間刺激した。次いで、細胞を細胞外CD8のために染色し、固定および透過処理(Cytofix/Cytoperm、BDBiosciences)、次いで、IFNγのために細胞内で染色した。BD LSRIIまたはBD Accuriで試料を読み取り、FlowJoソフトウェア(Treestar)またはCFlow(BD Biosciences)を使用して分析した。CD8+T細胞応答の分析のために、細胞をリンパ球およびCD8+T細胞上でゲーティングし、IFNγ対して陽性の細胞の割合を評価した。
図11のグラフは、IL-2/mAb複合体での治療が、CD8+T細胞の出現頻度(
図11A)、および活性化されたCD8+T細胞の割合(CD44hi%、
図11B)の増加をもたらした一方、CD4+T細胞の出現頻度(
図11C)またはCD25hi(T
reg)であるCD4+細胞のパーセント(CD25hi%、
図11D)の増加は見られなかったことを示す。
図11は、IL-2/mAb治療が、PMA/Iでの刺激に際してIFNγを産生することができたCD8+T細胞の出現頻度(
図11E)、ならびにCD8+/CD4+T細胞の比(
図11F)の増加をもたらしたことをさらに示す。
【0359】
実施例10:ヒト免疫細胞に対するIL-2/抗体複合体の効果
T細胞およびNK細胞に加えて、他の免疫および非免疫細胞型が、機能性IL-2受容体を発現する。これらには、B細胞、単球、顆粒球、およびいくつかの報告では内皮細胞が含まれる。これらの細胞型の多くは、IL-2Rαを構造的に発現するか、またはある特定のサイトカインもしくは刺激因子に応答してそれを発現することができる。IL-2/mAb複合体での治療が三量体IL-2受容体(IL-2Rαβγ)を発現する細胞における活性化にどのように影響を及ぼすかを検証するために実験を行った。PBMCは、相当な割合の様々な免疫細胞サブセットを含有し、それにより、主要な細胞集団に対する抗IL-2抗体の影響を評価するための有用なツールを提供する。機能性三量体IL-2Rαβγを発現することが報告されている細胞には、CD56bright NK細胞、活性化CD8 T細胞、Treg、単球、およびB細胞が含まれる。活性化の読み出しとして、T細胞およびNK細胞におけるIL-2シグナル伝達によって誘導されるCD69マーカーの発現レベルを分析した。さらに、IL-2/mAb複合体治療後のCD4 T細胞集団におけるTregの出現頻度を判定した。
【0360】
密度勾配遠心分離を使用して、様々なドナーからのPBMCを単離した。50mLの円錐管中で、希釈した全血をFicoll(Sigma)溶液の上に層形成した。ブレーキなしで室温で30分間、400xgで層を遠心分離した。細胞帯を回収し、洗浄し、一定分量で凍結させた。一定分量を完全RPMI培地(RPMI 1640(Life Technologies)+10%FBS(Hyclone)+2mMのL-グルタミン)の中に解凍した。2回洗浄した後、細胞を計数し、50μl容積の96ウェル丸底プレート中に1×106 PBMC/ウェルでプレーティングした。細胞を含有するプレートにウェル当たり50μlを添加する前に、様々な用量の組換えヒトIL-2(Reprokine,Israel)および200nMの指定の抗IL-2抗体を37℃で30分間、事前に複合体化した。その後、プレートを37℃で20~24時間インキュベートした。インキュベーションが完了したら、上清を除去し、FACS緩衝液(PBS(Life Technologies)、0.5%BSA(Sigma)、および0.1%アジ化ナトリウム(Teknova))中で細胞を2回洗浄した。試料を室温で10分間、ヒトTruStain FcXを用いてFcブロッキングし(BioLegend)、各々2つのウェルに分けた。蛍光標識抗体(Biolegend)の以下のカクテルで1つのセットを染色した:CD69(FN50)、CD4(OKT4)、CD8a(SK1)、CD127(A019D5)、CD25(M-A251)、CD3(HIT3a)。蛍光標識抗体(Biolegend)の以下のカクテルで2つ目のセットを染色した:CD3(HIT3a)、CD56(HCD56)、CD19(HIB19)、CD69(FN50)、CD14(M5E2)。試料を4℃で60分間、暗所でインキュベートした。それらをFACS緩衝液中で2回洗浄し、4℃で20分間、50μlのBD Cytofix(Becton Dickenson)を用いて暗所で固定した。試料をFACS緩衝液で2回洗浄し、BD FACSCanto IIで読み取った。3パラメータ適合を使用してFlowJo Software(Treestar)およびGraphPad Prism(バージョン7)でデータを分析した。
【0361】
リンパ球、続いてCD3-およびCD56+集団のゲーティングによってNK細胞を同定した。このCD56+集団のうち、最も明るい約10%は、CD56
bright NK細胞を表す。CD56
bright NK細胞では、CD69発現に対するIL-2治療の用量依存性効果が認められ、ドナー603または625についてそれぞれ7.6nM(
図13A)または9.5nM(
図13B)のEC50値を有した。参照抗体MAB602は、EC50値の5~10倍の右シフトを誘導した(
図13C)。XPA.92.019、XPA.92.042、またはXPA.92.099での治療はまた、MAB602で見られたものと同様のEC50値の増加を示した(
図13C)。これは、これらの抗IL-2抗体が、IL-2Rαβγを発現するCD56
bright NK細胞上のIL-2誘導性活性化に対する感受性を減少させることを示す。
【0362】
T
reg集団におけるCD69の誘導を分析するために、以下のプロファイルを発現したリンパ球を分析した:CD3+CD4+CD25+CD127-。CD56
bright NK細胞と同様に、IL-2治療の用量依存性効果が認められ、ドナー603または625についてそれぞれ28nM(
図14A)または22nM(
図14B)のEC50値を有した。参照抗体MAB602は、EC50値の5~10倍の右シフトを誘導した(
図14C)。XPA.92.042またはXPA.92.099での治療はまた、MAB602と同様のEC50の増加を示したが、XPA.92.019は、10~15倍のより高いシフトを誘導した(
図14C)。
【0363】
IL-2によって提供されるシグナル伝達は、Treg増殖およびホメオスタシスにとって重要である。
図15Aおよび
図15Bに示されるように、このアッセイに使用されるIL-2の濃度では、T
regの割合は、抗体なし対照では相対的に変化しないままであった。しかしながら、事前に複合体化したIL-2/抗IL-2抗体の添加は、ドナー603(
図15A)および625(
図15B)について、T
regの出現頻度を用量依存的な様式で減少させた。高濃度のIL-2では、Treg細胞の出現頻度は、抗体治療なしの試料と同様であるかまたはそれよりも僅かに高かった。しかしながら、10ng/mL未満のIL-2濃度では、試験した全ての抗体での刺激の24時間後に、著しくより少ないT
regが同定された。これは、XPA.92.019、XPA.92.042、およびXPA.92.099抗体が、T
regホメオスタシスに必要とされるIL-2シグナルを阻害することを示す。
【0364】
実施例11:マウス結腸癌モデルの免疫細胞に対するIL-2/抗体複合体の効果
抗IL-2抗体/IL-2複合体が結腸癌の治療において有効であったかどうかを判定するために、マウスにCT26細胞を皮下移植し、その後、抗体/IL-2治療を施した。
【0365】
腫瘍細胞CT26マウス結腸腫瘍細胞をATCCから初めに購入した。1つの凍結バイアルから腫瘍細胞を解凍し、10%の熱不活性化FBSを含む適切な完全RPMI培養培地を使用してインビトロ培養物中に置いた。
【0366】
動物Jackson Laboratoriesから購入した7~8週齢の雌Balb/cマウスを使用した。マウスを4日間順応させ、動物施設で、動物および水が自由に与えられる18個のケージの各々に4匹のマウスとして収容し、研究の開始前に4日間順応させた。腫瘍細胞の移植(0日目)の前に、腫瘍がカリパスによって測定可能になるまで週に1回、治療開始の前日、ならびに腫瘍増殖および治療中に週に2回マウスの体重を測った。
【0367】
治療Reprokine(Israel)からIL-2を得て、XOMAから抗IL-2抗体を調製した。滅菌水中で作製したIL-2のストック溶液を、投与溶液に適切に希釈して、対応する群の各マウスに200μlの量で50μg、100μg、150μg、および1.5μgを送達した。IL-2および抗体の組み合わせは、投与の日に投与溶液に一緒に製剤化した。
【0368】
インビボ有効性研究:十分な数の細胞がマウスに移植する用意ができるまで、CT26細胞培養物を約1週間増殖させた。移植の日に、温かいトリプシン/EDTA溶液での処理、続いて血清含有培地を添加し、滅菌1X PBS中で2回洗浄した後に、対数期増殖において細胞を培養物から収集した。細胞生存率および接着能力を保存するために、移植の時間まで、およびその間、細胞懸濁液を氷上に残した。最後の遠心分離の後、細胞を計数し、滅菌1X PBS中、7.5×106/mlの最終濃度まで適切に再懸濁させた。0.4%トリパンブルー溶液を使用することによって生存率を判定し、94.5%であることを見出した。麻酔をかけたマウスの左脇腹に100ulの量で腫瘍細胞(0.75×106)を皮下移植した。マウスを慎重に監視し、臨床的観察を毎日記録した。治療投与後、マウスの体重を毎日測り、腫瘍増殖を長さ(L)および幅(W)のカリパス測定によって週に2回判定した。腫瘍サイズは、式(L×W2)/2)で計算した。腫瘍は、細胞の移植後6日目にカリパス測定可能になり、群の間での同様の腫瘍平均および標準偏差を確実にするコンピュータ生成ランダム化テンプレートを使用してそれらを治療群にランダム化したときに約100mm3のサイズに達した。ランダム化の後、腹腔内経路によって試験物をマウスに与えた。
【0369】
結果:IL-2のみで治療した動物における腫瘍増殖帰結の分析は、ビヒクル対照(20日目に約2600m
3)と比較して、IL-2 50μgおよび100μgで治療した群において10~20日目に腫瘍増殖の減少があったものの(それぞれ20日目に約1300m
3および400m
3)、これらのマウスは、嗜眠性であり、これらの動物のうちの数匹(3)は死亡した(
図16)。これは、文献における前臨床報告、および臨床における有効なIL-2療法の困難な性質と一致している。2.5mg/kg未満のIL-2単独の用量は、最小の抗腫瘍効果を有する。
【0370】
対照的に、1:1の比率で抗IL-2抗体と併用したIL-2の投与は、ビヒクル対照と比較してIL-2:mAb併用の治療指数(TI)の改善、ならびに1:1モル比(1:10質量比)の重要性およびIL-2 mAbの存在下での非常に低い用量のIL-2の抗腫瘍効果を示した。表11に記載されるように、様々な用量のIL-2および抗体をマウスに投与した。
【0371】
【0372】
図17は、1:1比の抗体対IL-2を受ける動物が、他の比のIL-2/抗体併用治療を受ける動物と比較して改善された効力を有したことを実証する。さらに、これらの動物において、死亡は起こらず、明らかに有害な体重減少または有害な行動の徴候はなかった。
【0373】
これらの結果は、抗IL2 mAbと併用した非常に低い用量のIL-2は、中程度から良好な抗腫瘍効果を示し、15ug:1.5ug(すなわち、0.75mg/kg:0.075mg/kg)で投与した1:1モル比のmAb19:IL2が最も有効な比率であることを示す。mAb:IL2 15ug:1.5ug群は、9日目に、他の全ての群とは統計学的に有意に異なっていることに留意されたい。
【0374】
IL-2/抗IL-2抗体治療のモル比の態様をさらに分析するためにさらなる研究を実施した。治療レジメンは、以下の表12に示される。
【0375】
【0376】
結果は
図18に示され、これは、7および10日目のmAb:IL2 15μg:1.5μg群におけるより遅い腫瘍増殖が、ビヒクル対照群とは統計学的に有意に異なっていること、およびmAb:IL2 30μg:1.5μg群における増殖も対照と比較して低いことを示す。この実験は、抗IL2 mAbと併用した非常に低い用量のIL-2が抗腫瘍効果を示し、15ug:1.5ug(すなわち、0.75mg/kg:0.075mg/kg)で投与した1:1モル比のmAb:IL2が、2:1比と少なくとも同様に有効であることを実証する。これらの用量群のいずれにおいても、死亡または目立った有害事象はなかった。したがって、IL-2単独での同等の効果は一定レベルの死亡を伴う一方、これらの研究では少なくとも6倍(15:0.5から15:3.0)の治療指数が示されている。
【0377】
上記の例示的な実施例に記載される本発明の多数の修正および変形が当業者には想起されると予想される。したがって、添付の特許請求の範囲に見られる限定のみが本発明に課せられるべきである。