(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141714
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】高いナノ細孔の安定化Yゼオライトを含有する中間留分水素化分解触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/16 20060101AFI20220921BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20220921BHJP
C10G 47/20 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B01J29/16 M
B01J35/10 301A
C10G47/20
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022107027
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2020115762の分割
【原出願日】2015-07-28
(31)【優先権主張番号】14/529,768
(32)【優先日】2014-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーファ
(72)【発明者】
【氏名】マーセン、テオドラス リュドヴィカス ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ラシェーン、ハワード スティーブン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重質中間留分生成物(380から700°F)、特にディーゼル生成物の生成に対してより高い選択性を示す水素化分解触媒、及び炭化水素系供給原料を水素化分解する方法を提供する。
【解決手段】メソ細孔容積0.15から0.6cc/gを有する安定化Yゼオライト(SY)と、周期表6族及び8から10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属とを含む触媒であり、SYゼオライトのメソ細孔中のナノ細孔が特定の分布を持つ、高ナノ細孔容積(HNPV)である改良された水素化分解触媒である。更に、HNPV SYゼオライトは、従来のSYゼオライトと比べて酸点分布が高められている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、
非晶質シリカアルミナ材料と、
20nmから50nmの範囲に0.15から0.6cc/gのナノ細孔容積を有する高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトと、
周期表6族及び8から10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属と
を含む、水素化分解触媒。
【請求項2】
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.02から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、請求項1に記載の水素化分解触媒。
【請求項3】
高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.06から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、請求項2に記載の水素化分解触媒。
【請求項4】
高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.08から0.11の間の酸点分布インデックスファクターを有する、請求項2に記載の水素化分解触媒。
【請求項5】
20から30%の前記ナノ細孔容積が8nmから20nmの範囲にある、請求項1に記載の水素化分解触媒。
【請求項6】
40から60%の前記ナノ細孔容積が20nmから50nmの範囲にある、請求項1に記載の水素化分解触媒。
【請求項7】
15から25%の前記ナノ細孔容積が50nmより大きい、請求項1に記載の水素化分解触媒。
【請求項8】
炭化水素系供給原料を水素化分解触媒と水素化分解条件下で接触させて、水素化分解された流出物を生成することを含む炭化水素系供給原料を水素化分解する方法であって;
前記水素化分解触媒が、
担体と、
非晶質シリカアルミナ材料と、
20nmから50nmの範囲に0.15から0.6cc/gのナノ細孔容積を有する高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトと、
周期表6族及び8から10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属と
を含む、方法。
【請求項9】
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.02から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.06から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.08から0.11の間の酸点分布インデックスダクターを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
20から30%の前記ナノ細孔容積が8nmから20nmの範囲にある、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
40から60%の前記ナノ細孔容積が20nmから50nmの範囲にある、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
15から25%の前記ナノ細孔容積が50nmより大きい、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記水素化分解された流出物が、380から700°F(193から371℃)の範囲の重質中間留分生成物である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、高ナノ細孔容積(HNPV:high nanopore volume)の安定化Yゼオライト(SY:stabilized Y zeolite)を含有する改良された水素化分解触媒について記載する。更に、このHNPV SYゼオライトは、従来のSYゼオライトと比べて、酸点分布が高められていることを特徴とする。
【0002】
HNPV SYゼオライト成分を利用する最終的な水素化分解触媒は、従来のSY系水素化分解触媒と比べて、ガス生成(例えば、より価値の低いC1~C4ガスの生成)がより少なく、水素効率がより高く、そして重質中間留分生成物の収率(380から700°F)と品質がより高い。
【背景技術】
【0003】
接触水素化処理は、望ましくない不純物を除去し及び/又は供給原料を改良された生成物に転化する目的のために、炭素質供給原料を、より高い温度及び圧力にて水素と触媒とに接触させる石油精製プロセスのことを指す。
【0004】
水素化分解は、灯油及びディーゼル等の、250から700°F(121から371℃)の範囲で沸騰する中間留分生成物を製造処理するのに使用される重要な精製プロセスである。水素化分解供給原料には、多量の有機硫黄及び窒素が含有される。その硫黄及び窒素は、燃料仕様に適合させるために除去しなければならない。
【0005】
水素化分解装置は、生成物に対する環境規制が強まる前でさえも、常に環境に優しい生成物を生産してきた。低価値、高芳香族、高硫黄及び高窒素の供給原料を持ち込むことができ、そして望ましい魅力的な生成物、即ち、LPG、高品質ディーゼル燃料、水素リッチFCCフィード、エチレン分解フィード、及び/又は高品質潤滑油ユニット供給原料の完全なスレート(slate)を生成することができるプロセスは他にはない。現在の水素化分解は、1960年代初期に商業化された。これらの初期のユニットは、(常圧原油塔からの)軽質供給原料を高価値で高需要のガソリン生成物に転化した。加えて、水素化分解装置の高い容積増加(20%を超える)は、製油所の塔底ラインに著しく追加された。これらの強い特性により、水素化分解装置の能力は、長年に亘って着実に増加してきた。
【0006】
ガソリン及びディーゼルに対する環境規制の強化により、水素化分解が最も重要なプロセスとなり、その結果、世界的規模の能力がより一層増加した。ごく最近の基本的な水素化分解装置は、FCCライト・サイクル・オイル、重質減圧軽油、及び重質コーカー軽油等の、困難さの大きい供給原料からの中間留分の生産を最大化するように設計された。前身の水素化分解装置と同様、最新の水素化分解装置は、急速により要求が高まる供給原料を用いる場合でさえも、大量の超低硫黄ディーゼル(ULSD)を含む、価値の高い、環境に優しい留分生成物を生産する。初期世代の水素化分解装置は、1日当たり10,000バレルであったが、今日では、多くの新しいユニットが、1日あたり100,000バレルを超える。
【0007】
中間留分に対する需要の増大、高硫黄燃料油に対する市場の減少、及び益々厳しさを増す環境規制により、製油所、特に、ネルソン複雑性指数(Nelson Complexity Index)の転化能力がより低い製油所は、莫大なマージンの圧力をかけられ、そして多くの企業を閉鎖させることにさえなっている。この最近の傾向により、留分指向転化技術に対するグラスルーツのプロジェクトに至った。FCC技術に焦点を当てた転化戦略を有する製油所は、あったとしても極僅かで、多くのFCCユニットは、厳しさの低い留分モードで運転されているか、場合によってはプロピレン製造装置に転用されている。水素化分解は、原油を処理する機会により高い柔軟性を提供し、一方で、精油所のマージンを改善するプレミアム等級のクリーンな燃料を生産する。従って、過去10年間だけで、90を超える固定床水素化分解ユニットが世界中で使用許諾された。新しい製油所及び製油所関連事業の多くは、400,000BPSD以上の運転能力を目標としており、それにより、多くの場合、65,000から70,000BPSDの従来の単列能力を超えて平均水素化分解装置能力を高める。
【0008】
一般的に、従来の水素化分解触媒押出物は、(1)結晶化アルミノケイ酸塩及び/又は非晶質シリカアルミナであり得る少なくとも1種の酸性成分と、(2)アルミナ、チタニア、シリカ等の結合材料と、(3)周期表の6族及び8から10族、特にニッケル、コバルト、モリブデン及びタングステンから選択される1種以上の金属とから構成される。
【0009】
水素化分解プロセスにおいて生じる2つの広範なクラスの反応が存在する。第1のクラスの反応には水素化処理が含まれ、そこでは、窒素、硫黄、酸素及び金属等の不純物が、供給原料から除去される。第2のクラスの反応には水素化分解が含まれ、そこでは、炭素-炭素結合が、水素の存在下で、開裂又は水素化分解されて、より低沸点の生成物を生じる。
【0010】
水素化分解触媒は、二官能性であって、水素化/脱水素化反応は、金属成分によって促進され、そして分解反応は、固体酸成分によって促進される。両方の反応は、高圧水素の存在を必要とする。
【0011】
水素化分解の間、供給原料を触媒と接触させることによって、カルボカチオンが形成される。カルボカチオンは、異性化及び脱水素化を受けて、オレフィンを形成するか、又はベータ位で分解してオレフィンと新規なカルボカチオンとを形成する。これらの中間生成物は、水素化を受けて、以下の表に示すより低沸点の中間留分生成物を形成する。
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のSYゼオライトを水素化分解プロセスに使用する場合、価値の低いナフサが、ジェット沸点範囲内の材料の望ましくない二次的な水素化分解から形成される。従って、重質中間留分生成物(380から700°F)、特にディーゼル生成物の生成に対してより高い程度の選択性を示す水素化分解触媒が現在求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、高ナノ細孔容積のHNPV SYゼオライト成分を含有する改良された最終的な水素化分解触媒に関する。また、HNPV SYゼオライトは、従来のSYゼオライトと比べて、酸点分布が高められていることを特徴とする。
【0014】
本明細書に記載される触媒に利用されるHNPV SYゼオライト成分は、従来のSYゼオライトと比べて、20から50nmの範囲の細孔をより多量に有することを特徴とする。また、HNPV SYは、酸点分布インデックスファクター(index factor)が0.02と0.12の間に高められている。
【0015】
本明細書で以下に記載される20から50nmの範囲のより高いナノ細孔容積及びより高められた酸点分布を有するSYゼオライトを利用することにより、最終的な水素化分解触媒は、380から700°F(193から371℃)の沸点範囲の、より重質の中間留分生成物、特にディーゼル沸点範囲の中間留分、の生成に対してより高い選択性を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、例1で製造された従来の水素化分解触媒の調製で使用した従来のUSYの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【0017】
【
図2】
図2は、実施例で製造された特有の水素化分解触媒の調製に使用したHNPV USYのTEM画像である。
【0018】
【
図3】
図3は、N
2吸着によって決定される、例1で製造された水素化分解触媒の調製で使用した従来のUSY及びHNPV USYの細孔径分布である。
【0019】
[発明の詳細な説明]
<導入>
「周期表」は、IUPAC元素周期表の2007年6月22日付けの版を指し、そして周期表の族の番号付け体系は、Chemical and Engineering News、63(5)巻、27頁(1985年)に記載されている通りである。
【0020】
「水素化処理」又は「水素化転化」は、望ましくない不純物を除去し及び/又は供給原料を望ましい生成物に転化する目的のために、炭素質供給原料を、より高い温度及び圧力にて水素と触媒とに接触させるプロセスを指す。このようなプロセスには、非限定的に、メタン生成、水性ガスシフト反応、水素化、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱ロウ及び選択的水素化分解を含む水素化分解が含まれる。水素化処理の種類及び反応条件に応じて、水素化処理の生成物は、改良された粘度、粘度指数、飽和物含有量、低温特性、揮発性及び脱分極性等の改良された物理的特性を示すことができる。
【0021】
「水素化分解」は、水素化及び脱水素化が、炭化水素の分解/断片化、例えば、より重質の炭化水素をより軽質の炭化水素に転化すること、又は芳香族化合物及び/又はシクロパラフィン(ナフテン)を非環式枝分かれパラフィンに転化することを伴うプロセスを指す。
【0022】
「カラム」は、供給原料を、異なるカットポイントを有する1種以上の画分に分離する蒸留カラム(単数又は複数)を指す。
【0023】
「カットポイント」は、分離が所定の程度に到達する、真沸点(「TBP」)曲線(即ち、重質還流塔中で除去されたフィードの百分率対その除去を達成するために到達した温度のバッチプロセス曲線)上の温度を指す。
【0024】
「真沸点」(TBP)は、ASTM D2887-13により測定されるフィードの沸点を指す。
【0025】
「底画分」は、非気化(即ち、残留物)画分として、供給原料から分留によって分離された重質画分を意味する。
【0026】
「水素化分解重質画分」は、水素化分解を受けた後の重質画分を意味する。
【0027】
「炭化水素系」は、水素と炭素の原子を含有する化合物又は物質を意味するが、酸素、硫黄又は窒素等のヘテロ原子を含むことができる。
【0028】
「中間留分」には、以下生成物が含まれる。
【表2】
【0029】
「LHSV」は、液空間速度を意味する。
【0030】
「SCF/BBL」(若しくはscf/bbl、又はscfb若しくはSCFB)は、炭化水素フィードの1バレル当たりのガス(N2、H2等)の標準立方フィートの単位を指す。
【0031】
「ナノ細孔」は、2nmから50nmの間(両端を含む)の直径を有する細孔を意味する。
【0032】
「安定化Yゼオライト」及び「SY」は、出発(合成されたままの)Na-Y前駆体よりも高い骨格ケイ素含有量を有する任意のYゼオライトである。例示的なSYゼオライトには、超安定化Y(USY:ultra-stabilized Y)ゼオライト、超超安定化Y(VUSY:very ultra-stabilized Y)ゼオライト等が含まれる。
【0033】
許される場合には、本出願で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、そのような開示が本発明と矛盾しない程度に、それらの全体が本明細書に参照により援用される。
【0034】
特に断りがない限り、個々の成分又は成分の混合物を選択することのできる、ある種類(genus)の要素、材料又は他の成分の記載は、その列挙された成分及びその混合物の全ての可能な下位概念の種類の組合せを包含することを意図する。また、「包含する(include)」という言葉及びその変化形は、非制限的であることを意図し、その結果、リストにある項目の記載は、本発明の材料、組成及び方法にも有用であり得る他の同様の項目を排除するものではない。
【0035】
特に断りがない限り、本明細書に記載される全ての数値範囲には、範囲について記載した下限値と上限値とが含まれる。
【0036】
本明細書に記載される材料の特性は、以下のように測定される:
(a)ブレンステッド酸性度:T.J.Gricus Kofke、R.K.Gorte、W.E.FarnethによるJ.Catal.114巻、34-45頁、1988年;T.J.Gricus Kifke、R.J.Gorte、G.T.KokotailoによるJ.Catal.115巻、265-272頁、1989年;J.G.Tittensor、R.J.Gorte及びD.M.ChapmanによるJ.Catal.138巻、714-720頁、1992年、の公開された記載から適応されたイソプロピルアミン-温度-プログラム脱着(IPam TPD)によって決定される。
(b)SiO2/Al2O3比(SAR):ICP元素分析によって決定される。無限大(∞)のSARは、ゼオライト中にアルミニウムが存在しない場合、即ち、シリカ対アルミナのモル比が、無限大となる場合を表す。その場合、モレキュラーシーブ(molecular sieve)は、本質的に全てがシリカから構成される。
(c)表面積:沸騰温度でのN2吸着によって決定される。BET表面積は、P/P0=0.050、0.088、0.125、0.163、及び0.200にて、5ポイント法により計算される。サンプルは、最初に、水又は有機物のような吸着した揮発性物質を除去するために、乾燥N2の流れの存在下で、400℃にて6時間、前処理される。
(d)ナノ細孔及びミクロ細孔の容積:沸騰温度でのN2吸着によって決定される。ミクロ細孔容積は、P/P0=0.050、0.088、0.125、0.163、及び0.200にて、t-プロット法により計算される。サンプルは、最初に、水又は有機物のような吸着した揮発性物質を除去するために、乾燥N2の流れの存在下で、400℃にて6時間、前処理される。
(e)ナノ細孔径:沸騰温度でのN2吸着によって決定される。メソ細孔細孔径は、E.P.Barrett、L.G.Joyner、及びP.P.Halendaによる「多孔質物質の細孔容積と面積分布の決定.I.窒素等温線からコンピュータを使用した計算」J.Am.Chem.Soc.73巻、373から380頁、1951年、に記載のBJH法によりN2等温線から計算される。サンプルは、最初に、水又は有機物のような吸着した揮発性物質を除去するように、乾燥N2流れの存在下で、400℃にて6時間、前処理される。
(f)全ナノ細孔容積:P/P0=0.990にて沸騰温度でのN2吸着によって決定される。サンプルは、最初に、水又は有機物のような吸着した揮発性物質を除去するように、乾燥N2流れの存在下で、400℃にて6時間、前処理される。
(g)ユニットセルサイズ:X線粉末回折により決定される。
(h)API比重:ASTM D4052-11により決定される、水と比較した石油供給原料/生成物の比重(gravity)。
(i)酸点密度:材料のブレンステッド酸点分布を定量化するためのイソプロピルアミン(IPAm)の昇温脱離(temperature-programmed desorption:TPD)については、MaesenとHertzenbergによるJournal of Catalysis 182巻,270から273頁(1999年)に記載されている。
(j)酸点分布及びインデックスファクター:E.J.M.Hensen、D.G.Poduval、D.A.J.Michel Ligthart、J.A.Rob van Veen、M.S.RiguttoによるJ.Phys.Chem.C.I.114巻、8363から8374頁、2010年により公開された記載から適応されるH-D交換FTIRにより決定される酸点分布。FTIR測定に先立って、サンプルを1時間、400から450℃にて1×10-5Torr未満の減圧下で加熱した。次に、サンプルにC6D6を添加して80℃で平衡にした。C6D6の(添加)前後で、OH及びOD伸縮領域についてスペクトルを収集した。ブレンステッド酸点密度は、第1の高周波OD(HF)として2676cm-1、第2の高周波OD(HF’)として2653cm-1、第1の低周波OD(LF)として2632cm-1及び2620cm-1、並びに第2の低周波OD(LF’)として2600cm-1のピークの積分面積を使用することによって決定した。酸点分布インデックス(ASDI)ファクターは以下の式により決定した:ASDI=(HF’+LF’)/(HF+LF);これは、ゼオライトサンプル中の過活性部位の含有量を表す。
【0037】
<水素化分解触媒組成物>
供給原料の水素化分解を行うために使用するHNPV SY系水素化分解触媒には、HNPV SYゼオライト、担体成分、非晶質シリカアルミナ(ASA)材料、1種以上の金属、及び任意選択的に1種以上の促進剤が含まれる。最終的なHNPV SY触媒のバルク乾燥重量に基づく最終的なHNPV SY触媒の組成物を、以下の表1に記載する。
【表3】
【0038】
本明細書に記載される最終的なHNPV SY系水素化分解触媒の製造に使用されるHNPV SYは、NPV(20nmから50nm)が0.15から0.6cc/gであり、酸点分布インデックス(ASDI)ファクターが0.02から0.12の間である。一下位実施態様では、HNPV SYは0.06から0.12の間のADSIを有する。別の下位実施態様では、HNPV SYは0.08から0.11の間のASDIを有する。
【0039】
特有で、高められた細孔径分布を有するHNPV SYは、蒸気処理、酸/塩基浸出及び化学処理による脱アルミニウム又は脱ケイ酸を含む、ゼオライト多孔性を導入するための従来の方法によって作製することができる。
【0040】
当業者には理解されるように、本明細書に記載される、YゼオライトをHNPV SYに転化するための製造プロセスは、利用される特定のYゼオライト(すなわち、ゼオライトの供給元製造業者)の特性(例えば、粒子径、結晶径、アルカリ含有量、シリカ対アルミナ比)、製造業者が典型的に、その操作及び能力に関する重要な体系的知識を開発した、製造業者の工場に設置された製造装置や、HNPVが導入される製造プロセスの段階(例えば、作成されたまま又はアンモニウム交換後)に応じて変化する。従って、本明細書に記載される特有の細孔径分布を理解に基づいて、製造業者は、次に、安定化されたYゼオライトを本明細書に記載される特有のHNPVを有するSYに転化するために、その装置の操作を変更することができる。
【0041】
従来、作成されたままのYゼオライト及びSY(安定なYゼオライト(SY)を生成するために脱アルミニウム化されたYゼオライト)は、1から6の間のpHを有する水溶液を用いて、典型的に125から900℃の間の温度で、5分の短い時間から72時間の長い時間までの間、水熱処理によって、HNPV対応物に転化することができる。このような処理には、典型的に、酸(HF、S2SO4、HNO3、AcOH)、EDTA又は(NH4)2SiF6等の種を含有する水溶液を使用するポストスチーム化学処理が含まれる。更に、製造業者は、界面活性剤及びpH制御剤(例えば、NaOH)を使用して、多孔性形成を制御する。細孔形成方法は、公開された文献、例えば、Olsonの米国特許出願第2012/0275993号に記載の方法等に記載されている。
【0042】
ASDIファクターは、ゼオライトの過活性部位濃度の指標である。ゼオライトの酸点分布により、一般的に、特定の精製する生成物に対する触媒活性及び選択性が決まる。これらの酸点の濃度が増加するにつれて、商業的な運転中、供給原料は水素化分解を多く受け、結果として、ナフサなどの価値のより低い生成物が生成し、且つガス生成(C1~C4)が増加する。従って、これらの過活性部位の濃度の減少(ASDIファクターの低下)により、結果として、より重質の中間留分生成物の生成に対する選択性が高くなることが見出された。
【0043】
HNPV SYを使用して製造される最終的な水素化分解触媒は、従来のSY系触媒を含有する従来の水素化分解触媒と比べて、ガス生成がより少なく、並びに重質中間留分生成物の収率及び品質がより高い。
【0044】
本明細書に記載される水素化分解触媒に有用なHNPV SYゼオライトは、以下の表2に記載される特性を有することを特徴とする。
【表4】
【0045】
本明細書に記載される各実施態様について、HNPV SY水素化分解触媒担体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ベリリウム、アルミナ-シリカ、アルミナ-酸化チタン、アルミナ-酸化マグネシウム、シリカ-酸化マグネシウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-酸化トリウム、シリカ-酸化ベリリウム、シリカ-酸化チタン、酸化チタン-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-酸化トリウム、シリカ-アルミナ-酸化チタン又はシリカ-アルミナ-酸化マグネシウム、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0046】
最終的な水素化分解触媒中の担体材料の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて、10重量%から45重量%である。一下位実施態様では、最終的な水素化分解触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、15重量%から35重量%である。
【0047】
最終的な水素化分解触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0.1重量%から75重量%である。一下位実施態様では、最終的な水素化分解触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、5重量%から60重量%である。
【0048】
一実施態様では、HNPV SYゼオライトは、以下の表3に記載される特性を有する。
【表5】
【0049】
別の実施態様では、HNPV SYゼオライトは、以下の表4に記載される特性を有する。
【表6】
【0050】
本明細書に上記したように、本明細書に記載されるHNPV SY系の最終的な水素化分解触媒は、1種以上の金属を含有する。本明細書に記載される各実施態様の場合、利用する各金属は、周期表の6族及び8から10族の元素及びこれらの混合物からなる群から選択される。一下位実施態様では、各金属は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の下位実施態様では、水素化分解触媒には、周期表の、少なくとも1種の6族の金属及び8から10族から選択される少なくとも1種の金属が含有される。例示的な金属の組合せには、Ni/Mo/W、Ni/Mo、Ni/W、Co/Mo、Co/W、Co/W/Mo及びNi/Co/W/Moが含まれる。
【0051】
最終的な水素化分解触媒中の金属酸化物材料の全量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて、15重量%から55重量%である。一下位実施態様では、水素化分解触媒には、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて、3重量%から5重量%の酸化ニッケル及び15重量%から35重量%の酸化タングステンが含有される。
【0052】
本明細書に記載される最終的な水素化分解触媒には、リン(P)、ホウ素(B)、フッ素(F)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の促進剤が含有され得る。水素化分解触媒中の促進剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0重量%から10重量%である。一下位実施態様では、水素化分解触媒中の促進剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて1重量%から5重量%である。
【0053】
<水素化分解触媒の調製>
一般に、本明細書に記載される水素化分解触媒は、以下の段階により調製される:
(a)HNPV SY、ASA及び担体を混合し且つ解膠して、押出物ベースを作成する段階;
(b)前記ベースを、少なくとも1種の金属を含有する金属含浸溶液に含浸する段階;及び
(c)前記金属担持押出物を乾燥及びか焼に供することを含む、前記押出物を後処理する段階。
【0054】
含浸前に、押出物ベースを90℃から150℃(194°Fから302°F)の間の温度で1から12時間乾燥し、その後、350℃から700℃(662°Fから1292°F)の間の温度かそれ以上の温度でか焼する。
【0055】
含浸溶液を、金属前駆体を脱イオン水に溶解することにより作成する。その溶液の濃度を、担体の細孔容積と金属担持量により決定した。典型的な含浸の間、担体を、含浸溶液に0.1から10時間曝す。更なる0.1から10時間の浸漬の後、触媒を、38℃から149℃(100°Fから300°F)の範囲内の温度かそれ以上の温度で0.1から10時間乾燥する。触媒は、316℃から649℃(600°Fから1200°F)の範囲内の温度かそれ以上の温度で十分な空気流れの存在下で、0.1から10時間、更にか焼する。
【0056】
一実施態様では、含浸溶液には、少なくとも1種の金属の析出を促進するための改質剤が更に含有される。改質剤及びこのような改質剤を使用して水素化分解触媒を作成する方法は、2011年1月6日及び2011年6月9日に公開されたZhanらの米国特許公開第20110000824号と第20110132807号にそれぞれ開示されている。
【0057】
<水素化分解の概要>
本明細書に記載される水素化分解触媒は、例えば、ビスブロークン軽油、重質コーカー軽油、残油水素化分解又は残油脱硫から誘導される軽油、他の熱分解油、脱アスファルト油、フィッシャー・トロプシュ誘導供給原料、FCCユニットからのサイクル油、重質石炭由来留分、石炭ガス化副生成物タール、及び重質シェール由来油、有機系廃油、例えばパルプ/製紙工場又は廃バイオマスの熱分解ユニットからのもの等の、従来の1つ又は2つのステージの水素化分解プロセスを使用することによっては、通常は、中間留分の生成には至らない不利な供給原料を含む種々の炭化水素系供給原料を水素化処理するのに適している。
【0058】
以下の表5には、本明細書に記載される触媒を使用して中間留分を製造するのに適した供給原料の典型的な物理的特性を示し、そして表6には、典型的な水素化分解プロセスの条件を示す。
【表7】
【表8】
【0059】
水素化処理するフィードを導入する前に、触媒を、硫化剤を含有する石油液体に、200°Fから800°F(66℃から482℃)の温度で、1時間から7日の間、100kPaから25,000kPaのH2含有ガス圧下で接触させることにより活性化する。好適な硫化剤には、元素硫黄、硫化アンモニウム、アンモニウムポリスルフィド([(NH4)2S]X)、チオ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O3)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、チオ尿素CSN2H4、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド(DMDS)、硫化ジメチル(DMS)、ジブチルポリスルフィド(DBPS)、メルカプタン、ターシャリーブチルポリスルフィド(PSTB)、ターシャリーノニルポリスルフィド(PSTN)、水硫化アンモニウムが含まれる。
【0060】
上述したように、新規なHNPV SY成分を使用する最終的な水素化分解触媒は、従来のSYを含有する従来の水素化分解触媒と比べて、水素効率が向上し、重質中間留分生成物の収率及び品質がより高い。
【0061】
供給原料、目標とする生成物のスレート及び利用可能な水素の量に応じて、本明細書に記載される触媒は、単独で、又は他の従来の水素分解触媒との組合せで使用することができる。
【0062】
一実施態様では、触媒は、単一のステージの水素化分解ユニットにおける1つ以上の固定床に、リサイクル有りか又は無し(貫流式)で配置される。任意選択的に、単一のステージの水素化分解ユニットは、並行して操作される多くの単一のステージのユニットを利用するものであってもよい。
【0063】
別の実施態様では、触媒は、2つのステージの水素化分解ユニットにおける1つ以上の床及びユニットに、中間ステージの分離有りか又は無しで、そしてリサイクル有りか又は無しで配置される。2つのステージの水素化分解ユニットを、完全な転化構造(これは、水素化処理及び水素化分解の全てがリサイクルにより水素化分解ループ内で達成されることを意味する)を使用して操作することができる。この実施態様では、第2ステージの水素化分解段階前又は蒸留塔底物が第1及び/又は第2ステージに戻るリサイクル前に、生成物を除去するために、水素化分解ループ内で1つ以上の蒸留ユニットを利用することができる。
【0064】
また、2つのステージの水素化分解ユニットは、部分的な転化構造(これは、1つ以上の蒸留ユニットを、更なる水素化処理のために入ってくる1つ以上のストリームを除去するために、水素化分解ループ内に配置することを意味する)においても操作することができる。この方法で水素化分解ユニットを操作することにより、精油所にて、多核芳香族、窒素及び硫黄種(これらは、水素化触媒を失活させる)等の望ましくないフィード成分を、これらの成分を処理するのにより適した装置、例えばFCCユニット、による処理のために、水素化分解ループから出て行くことを可能にさせることによって、非常に不利な供給原料を水素化処理することができる。
【0065】
一実施態様では、触媒は、以下の段階により、第1ステージ及び任意選択的に、部分的に転化する第2ステージで使用されるが、2つのステージの水素化分解の構成は、少なくとも1種の中間留分及び重質減圧ガス流体化接触分解供給原料(HVGO FCC)を作成するのに非常に適している:
(a)炭化水素系供給原料を水素化分解して第1ステージの水素化分解流出物を生成する段階;
(b)前記水素化分解供給原料を常圧蒸留により蒸留して、少なくとも1種の中間留分画分と常圧塔底画分を形成する段階;
(c)前記常圧塔底画分を減圧蒸留により更に蒸留して、サイドカット減圧軽油画分と重質減圧軽油FCC供給原料を形成する段階;
(d)前記サイドカット減圧軽油画分を水素化分解して、第2ステージ水素化分解流出物を形成する段階;及び
(e)前記第2ステージ水素化分解流出物を前記第1ステージ水素化分解流出物と組合せる段階。
【0066】
上記の精油所の構成には、従来の2つのステージの水素化分解スキームを超える幾つかの利点がある。第1に、この構成では、第1ステージの触媒と操作条件を、確立された市販仕様を満たすFCC生成物を生成するのに必要な最低限のフィード品質のみを有するHVGO FCCストリームを生成するように選択する。これは、第1ステージの水素化分解ユニットが、留分の収率を最大化するのに必要な厳しい条件で操作され、それにより、より厳しい条件(それは、より多くの水素を必要とし、そして触媒の寿命を短くする。)で操作可能なユニットを必要とする従来の2つのステージの水素化分解スキームとは対照的である。
【0067】
第2に、第2ステージの水素化分解ユニットに送られるサイドカットVGOは、従来の第2ステージの水素化分解フィードよりも水素化分解がよりクリーンで且つより容易である。従って、より高品質の中間留分生成物を、より小さい容積の第2ステージの水素化分解触媒を使用して達成することができ、それにより、より小さい水素化分解装置のリアクターを建設することができ、そして水素の消費量をより少なくすることができる。第2ステージの水素化分解ユニットの構成により、建設費用が低減し、触媒充填費用と運転費用がより少なくなる。
【0068】
<生成物>
本発明のプロセスは、約380から700°F(193から371℃)の範囲で沸騰する中間留分画分の生成に特に有用である。中間留分の成分の少なくとも75体積%、好ましくは、少なくとも85体積%は、380°F(193℃)より高い標準沸点を有する。中間留分の成分の少なくとも約75体積%、好ましくは、少なくとも85体積%は、700°F(371℃)よりも低い標準沸点を有する。
【0069】
更に、ガソリン又はナフサを本発明のプロセスで生成することができる。ガソリン又はナフサは、通常、380°F(193℃)未満の範囲で沸騰するが、C5炭化水素の沸点より上で沸騰し、そして時に、C5炭化水素の沸点から400°F(204℃)の沸騰範囲を指すこともある。任意の特定の精油所で回収された種々の生成物の画分の沸騰範囲は、原油供給源の特徴、地方の精油所市場及び生成物の価格等の要因と共に変化するであろう。
【0070】
以下の例は、本発明の説明に役立つが、本発明を限定しない。
【実施例0071】
例1
<水素化分解触媒の調製>
従来のUSY系水素化分解触媒は、以下の手順で調製された。本明細書に記載される56.4重量%のUSY、21重量%の非晶質シリコアルミナート粉末(SasolのSiral-30)、及び22.6重量%の擬ベーマイトアルミナ粉末(SasolのCATAPAL C1)を十分に混合した。この混合物に、希釈したHNO3の酸水溶液(3重量%)を添加して、押出可能なペーストを形成した。このペーストを1/16”(インチ)の非対称四辺形に押し出し、そして248°F(120℃)で1時間乾燥させた。乾燥押出物を、過剰の乾燥空気をパージしながら1100°F(593℃)で1時間か焼し、そして室温まで冷却した。
【0072】
NiとWの含浸を、メタタングステン酸アンモニウムと硝酸ニッケルを、最終的な触媒のバルク乾燥重量に基づいて3.8重量%のNiOと25.3重量%のWO3という目標の金属担持量に等しい濃度で含有する溶液を使用して行った。次いで、押出物を270°F(132℃)で1時間乾燥した。次いで、乾燥押出物を、過剰の乾燥空気をパージしながら950°F(510℃)で1時間か焼し、そして室温まで冷却した。
【0073】
HNPV USY系の最終的な水素化分解触媒を、従来のUSYの代わりに、56.4重量%のHNPV USYを使用したことを除いて、例1に記載される以下の手順に従って調製した。
【0074】
従来の及びHNPV USYの材料の物理的性質、並びにH-D交換後のそれらの酸点分布を、以下の表7及び表8に示す。
【0075】
最終的な触媒に組込む前に、従来のUSY及びHNPV USYのゼオライトを透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析した。従来のUSY及びHNPV USYのTEM画像を、それぞれ
図1及び2に示す。
【0076】
更に、従来のUSY及びHNPVのゼオライトの細孔径分布を測定した。2つのゼオライトの細孔径分布のプロットを
図3に示す。
【0077】
OD酸性度を、重水素化ベンゼンと80℃で交換した架橋ヒドロキシル基の量によって決定したが、それは、FT-IRにより測定される。
【表9】
【表10】
【0078】
例2
<水素化分解性能>
従来のUSY系及びHNPV USY系の触媒を使用して、典型的な中東のVGOを処理した。フィード特性を表11に示す。実験は、パイロットプラントユニットにて、2300psigの全圧及び1.0から2.2LHSVの下で操作した。フィードは、水素化分解ゾーンに流入する前に、水素化処理触媒を充填した触媒床を通過した。フィードの導入前に、触媒を、DMDS(気相硫化)か、或いはDMDS(液相硫化)を入れたディーゼルフィードのいずれかで活性化した。
【0079】
フィードの品質及び試験結果を、以下の表9及び表10に示す。表10に示すように、HNPV USY系触媒は、留分生成物に対して改善された活性及び選択性を示している。ディーゼル収率は2.6%増加し、そしてガス及びナフサに対する収率は減少した。
【0080】
更に、HNPV USY系触媒は、従来のUSY触媒と比べて、望ましくないガス及び軽質生成物(ends)(C
4-及びC
5-180°F)の生成がより少なかった。更に、HNPV USY系触媒の望ましい中間留分(380から700°F)の収率は、従来のUSY触媒よりも高かった。
【表11】
【表12】
【0081】
本発明を、特定の実施態様を参照して、詳細に説明したが、当業者には、本発明の趣旨及び範囲から乖離することなく、種々の変更及び改変ができることは明白であろう。
炭化水素系供給原料を水素化分解触媒と水素化分解条件下で接触させて、水素化分解された流出物を生成することを含む炭化水素系供給原料を水素化分解する方法であって;
前記水素化分解触媒が、
担体と、
非晶質シリカアルミナ材料と、
0.15から0.6cc/gのメソ細孔容積を有する高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトと、
周期表6族及び8から10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属と
を含み、
該高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトのメソ細孔容積に基づき、
20から30容積%のナノ細孔が8nmから20nmの範囲にあり、
40から60容積%のナノ細孔が20nmから50nmの範囲にあり、
15から25容積%のナノ細孔が50nmより大きい、
上記方法。
本明細書で以下に記載される20から50nmの範囲のより高いナノ細孔容積及びより高められた酸点分布を有するSYゼオライトを利用することにより、最終的な水素化分解触媒は、380から700°F(193から371℃)の沸点範囲の、より重質の中間留分生成物、特にディーゼル沸点範囲の中間留分、の生成に対してより高い選択性を示すことがわかった。
なお、下記[1]から[15]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
担体と、
非晶質シリカアルミナ材料と、
20nmから50nmの範囲に0.15から0.6cc/gのナノ細孔容積を有する高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトと、
周期表6族及び8から10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属と
を含む、水素化分解触媒。
[2]
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.02から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、[1]に記載の水素化分解触媒。
[3]
高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.06から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、[2]に記載の水素化分解触媒。
[4]
高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.08から0.11の間の酸点分布インデックスファクターを有する、[2]に記載の水素化分解触媒。
[5]
20から30%の前記ナノ細孔容積が8nmから20nmの範囲にある、[1]に記載の水素化分解触媒。
[6]
40から60%の前記ナノ細孔容積が20nmから50nmの範囲にある、[1]に記載の水素化分解触媒。
[7]
15から25%の前記ナノ細孔容積が50nmより大きい、[1]に記載の水素化分解触媒。
[8]
炭化水素系供給原料を水素化分解触媒と水素化分解条件下で接触させて、水素化分解された流出物を生成することを含む炭化水素系供給原料を水素化分解する方法であって;
前記水素化分解触媒が、
担体と、
非晶質シリカアルミナ材料と、
20nmから50nmの範囲に0.15から0.6cc/gのナノ細孔容積を有する高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトと、
周期表6族及び8から10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属と
を含む、方法。
[9]
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.02から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、[8]に記載の方法。
[10]
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.06から0.12の間の酸点分布インデックスファクターを有する、[9]に記載の方法。
[11]
前記高ナノ細孔容積の安定化Yゼオライトが、0.08から0.11の間の酸点分布インデックスダクターを有する、[9]に記載の方法。
[12]
20から30%の前記ナノ細孔容積が8nmから20nmの範囲にある、[8]に記載の方法。
[13]
40から60%の前記ナノ細孔容積が20nmから50nmの範囲にある、[8]に記載の方法。
[14]
15から25%の前記ナノ細孔容積が50nmより大きい、[8]に記載の方法。
[15]
前記水素化分解された流出物が、380から700°F(193から371℃)の範囲の重質中間留分生成物である、[8]に記載の方法。