(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141735
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】小型化デバイスからのペイロード放出のトリガー
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220921BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61M37/00 550
A61K9/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108190
(22)【出願日】2022-07-05
(62)【分割の表示】P 2019565461の分割
【原出願日】2018-05-03
(31)【優先権主張番号】62/512,091
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519392041
【氏名又は名称】シュピゲルマッハー、マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生物学的組織への埋め込み、ならびに任意に生物学的組織内での推進、およびリモートトリガーによる生物学的組織内の医療ペイロードを放出するキャリアデバイスおよび使用方法を提供する。
【解決手段】キャリアデバイスは、外部刺激に感応する少なくとも1つの素子を含む。外部刺激が組織を通って送信されると、応答素子は、機能性材料の放出を提供する。ペイロード放出は、後の時間または場所で開始、停止、および再開することができる。個別のキャリアデバイスはデバイスに異なる素子を実装することによって選択的にトリガーされ得、各素子は、異なる刺激に感応する。ペイロード放出に加えて、キャリアデバイスは、推進素子を備えており、推進素子は、デバイスの推進およびナビゲーションを可能にする外部刺激に応答する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的組織に埋め込んで、前記生物学的組織または別の組織に機能性材料を放出するためのキャリアデバイスであって、当該キャリアデバイスが、
推進成分を含む構造体と、
前記構造体に直接またはリンカーを介して取り付けられた機能性材料と、
任意選択のコーティングであって、前記コーティングが、前記構造体を少なくとも部分的に覆い、前記構造体に取り付けられた前記機能性材料を少なくとも部分的に覆う、該コーティングと、を備えるキャリアデバイス。
【請求項2】
前記推進成分が、磁気成分である、請求項1に記載のキャリアデバイス。
【請求項3】
前記推進成分、前記機能性材料、前記コーティング、またはこれらの組み合わせが、外部刺激に応答する、請求項1に記載のキャリアデバイス。
【請求項4】
前記外部刺激が、超音波(US)、磁気、電気、電磁、電磁放射、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載のキャリアデバイス。
【請求項5】
前記外部刺激の前記推進成分への印加が、当該キャリアデバイスを推進する、請求項4に記載のキャリアデバイス。
【請求項6】
前記機能性材料が、前記外部刺激に応答して前記構造体から分離するか、
前記コーティングが、前記外部刺激に応答して破裂するかもしくは穿孔されるか、または
これらの組み合わせである、請求項3に記載のキャリアデバイス。
【請求項7】
前記外部刺激が、超音波である、請求項6に記載のキャリアデバイス。
【請求項8】
前記構造体が、少なくとも部分的に多孔質である、請求項1に記載のキャリアデバイス。
【請求項9】
前記多孔質の前記構造体の平均細孔径が、10nm~1000nmの範囲である、請求項8に記載のキャリアデバイス。
【請求項10】
前記機能性材料が、有機化合物、ポリマー、複合材、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のキャリアデバイス。
【請求項11】
前記コーティングが、ポリマー、複合材、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のキャリアデバイス。
【請求項12】
前記構造体が、ミクロ構造体、ナノ構造体、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のキャリアデバイス。
【請求項13】
システムであって、
請求項1に記載のキャリアデバイスと、
リモートユニットと、を備え、
前記リモートユニットが、前記キャリアデバイスに外部刺激を印加するように構成されている、システム。
【請求項14】
前記外部刺激が、超音波を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記機能性材料が、前記外部刺激に応答してその形状もしくはトポロジーを変化させるか、または前記構造体から分離するか、
前記コーティングが、前記外部刺激に応答して破裂するかもしくは穿孔されるか、あるいは
これらの組み合わせである、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
デバイスを動作させるための方法であって、前記方法が、
キャリアデバイスを提供するステップであって、前記キャリアデバイスが、
推進成分を含む構造体、
前記構造体に直接またはリンカーを介して取り付けられた機能性材料、および
任意選択のコーティングであって、前記コーティングが、前記構造体を少なくとも部分的に覆い、かつ前記構造体に取り付けられた前記機能性材料を少なくとも部分的に覆う、該コーティング、を含む、該提供するステップと、
前記キャリアデバイスに外部刺激を印加するステップと、を含む、方法。
【請求項17】
前記コーティング、前記機能性材料、またはこれらの組み合わせが、前記外部刺激に応答する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記外部刺激が、超音波である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記機能性材料が、前記外部刺激に応答して前記構造体から分離するか、
前記コーティングが、前記外部刺激に応答して破裂するかもしくは穿孔されるか、または
これらの組み合わせである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記機能性材料が、有機化合物、ポリマー、複合材、またはこれらの組み合わせである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記コーティングが、ポリマー、複合材、またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記構造体が、ミクロ構造体、ナノ構造体、またはこれらの組み合わせである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記推進成分が、磁気成分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載のキャリアデバイスを製造する方法であって、前記方法が、
推進構造体を提供または構築するステップであって、前記構造体が、推進素子を含む、該提供または構築するステップと、
前記構造体に機能性材料を結合するステップと、
任意選択で前記構造体を少なくとも部分的にコーティングするステップ、任意選択で前記機能性材料を少なくとも部分的にコーティングするステップ、またはこれらの組み合わせと、を含む方法。
【請求項25】
被験者を治療する方法であって、前記方法が、
請求項1に記載のキャリアデバイスを前記被験者に挿入するステップと、
前記キャリアデバイスに外部刺激を印加するステップと、を含む、方法。
【請求項26】
前記キャリアデバイスを前記挿入するステップが、前記被験者内の特定の組織に前記キャリアデバイスを挿入するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記外部刺激が、
前記キャリアデバイスを前記被験者内の定義された位置に推進する磁気/電気または電磁刺激、
前記機能性材料を前記構造体から分離し、かつ/もしくは前記コーティングを破裂または穿孔する超音波刺激、あるいは
これらの組み合わせ、を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記外部刺激の印加に続いて、前記機能性材料が、前記組織または前記組織の/前記組織中の成分(複数可)と相互作用する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記相互作用が、治療作用、診断作用、またはこれらの組み合わせをもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被験者内の前記キャリアデバイスの位置を撮像するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記推進成分が磁気成分である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年5月29日に出願された米国仮特許出願第62/512,091号の利益を主張し、その優先日は本明細書によって主張されている。
【背景技術】
【0002】
現在、超音波(US)ベースの方法は、生体組織に埋め込まれた粒子またはデバイスから、薬物および診断補助具などの医療ペイロードの放出をリモートでトリガーするために存在する。粒子または埋め込み型デバイスからのUSリモートトリガーペイロードの放出が、過去に研究されている。そのような方法の目的は、生体組織内にそのようなペイロードを収容するキャリア(例えば、粒子または埋め込み可能なデバイス)からのペイロード放出(薬物または診断)の外部トリガーを生成することである。リモートトリガーペイロード放出は、次のような特定の臨床目標をサポートする上で望ましい。
●キャリア粒子が治療に適した位置(例えば、腫瘍)にある場合にのみの医療ペイロードの放出、
●その瞬間が適切な場合(例えば、臨床手順の途中)にのみの医療用ペイロードの放出、または
●所定の時間に所定の領域(複数可)を治療するための時間に依存した、またはストップアンドゴー方式による医療ペイロード放出。
【0003】
既存のUSベースのトリガー方法は、以下を含む様々な作用に依存している。
●キャビテーションに基づく熱的/機械的作用(振動および拡散速度の増加に起因する局所的な加熱、および/もしくは拡散を増加させる局所的な化学特性の変化をもたらす)、
●ペイロード放出をもたらすキャリアの機械的劣化/破裂、
●キャリアまたはその統合部品の形状変更、または
●組織を介したペイロードの拡散/吸収の改善をもたらす、ペイロードが放出されている周囲の生物学的組織の特性への変化(例えば、ソノポレーション)。
【0004】
これらの方法の一般的な欠点は、各方法が臨床的観点から望ましい典型的な技術的特徴のサブセットのみをサポートしていることである。臨床ペイロードリ放出のための超音波ベースのリモートトリガーシステムのこれらの機能として、以下のものが挙げられる。
●深く位置する組織でペイロードの放出をトリガーできるようにする、カスタマイズ可能な組織貫通深さ(10cm以上)。例えば、7MHzを超える範囲(診断US)の放出方法は、通常、10cm未満の貫通に制限される。
●既存の医療用超音波機器との互換性を提供し、組織への侵襲を最小限に抑える、カスタマイズ可能な周波数範囲(KHz~MHz範囲)。例えば、キャビテーションベースの方法は、通常、高強度集束超音波(HIFU)を使用するKHz範囲で最も効果的である一方で、ポリマー分解ベースの方法は、MHz範囲(診断US)でより効果的である。
制御可能な時間期間にわたる段階的なペイロード放出のサポート、または(単一の放出パルスではなく)オンオフの切り替え可能な放出機能。例えば、ペイロードを包む均一なポリマーの劣化に依存する方法は不可逆的で、段階的な放出機能を有していない設計によるものである。
●単一の組織容積単位内の複数のペイロードキャリアの個別制御(例えば、同じ臓器内に位置している多くの粒子のうち、単一の粒子のみからペイロードを選択的に放出すること)。既存の方法はどれもこの機能を提供していない。
【0005】
したがって、現在の能力の上記の制限を克服する埋め込み可能なデバイス、およびその方法を有することが望ましいであろう。この目的は、本発明の実施形態によって達成される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の様々な実施形態によれば、以下を実施するための少なくとも1つのUS感応性素子を有する埋め込み型ペイロードキャリアデバイスが提供される。
●カスタマイズ可能な組織貫通深さ、
●カスタマイズ可能なUS周波数範囲のサポート、
●段階的およびオン/オフ切り替え可能なペイロード放出機能、
●同じ組織領域内の複数のペイロードキャリアの個別制御、ならびに
●上記のデバイスの使用のための方法。
【0007】
これらの機能の重要性は以下のとおりである。
1.深く位置している組織でペイロード放出をトリガーできるようにする、カスタマイズ可能な組織貫通深さ(10cm以上)。例えば、7MHzを超える範囲(診断US)の放出方法は、通常、10cm未満の貫通に制限される。
2.既存の医療用超音波機器との互換性を提供し、組織への侵襲を最小限に抑える、カスタマイズ可能な周波数範囲(KHz~MHz範囲)。例えば、キャビテーションベースの方法は、通常、HIFUを使用するKHz範囲で最も効果的である一方で、ポリマー分解ベースの方法は、MHz範囲(診断US)でより効果的である。
3.制御可能な時間期間にわたる段階的なペイロード放出のサポート、または(単一の放出パルスではなく)オンオフの切り替え可能な放出機能。例えば、ペイロードを包む均一なポリマーの劣化に依存する方法は不可逆的で、段階的な放出機能を有していない設計によるものである。
4.単一の組織容積単位内の複数のペイロードキャリアの個別制御(例えば、同じ臓器内に位置している多くの粒子のうち、単一の粒子のみからペイロードを選択的に放出すること)。既存の方法はどれもこの機能を提供していない。
【0008】
本発明の特定の実施形態は、生体組織に埋め込まれたキャリアのリモートトリガーおよびナビゲーションのための超音波(US)に依存する。他の実施形態は、超音波を他の外部の物理的刺激と組み合わせており、その非限定的な例としては、電磁場、現象、および作用、ならびに温度作用と圧力作用との両方を含む熱力学的現象および作用が挙げられる。
【0009】
本明細書における「キャリアデバイス」および「キャリア」という用語は、生物学的組織に埋め込み可能であり、かつ医療ペイロードを組織に搬送および放出することができる任意の物体を示す。いくつかの実施形態では、「デバイス」という用語、または「粒子」という用語は、キャリアまたはキャリアデバイスを説明するために使用される。「医療ペイロード」という用語、または同等の医療の文脈で使用される「ペイロード」という用語は、医療治療の性質または診断の性質を有する任意の物質または材料を含むと本明細書で理解される。特定の実施形態では、医療ペイロードまたはペイロードは、機能が治療に関連するか、もしくは治療を対象としている、または診断目的のための「機能性材料」に相当する。本明細書における「デバイス」(キャリアに関して)という用語は、リソグラフィ、薄膜技術、堆積技術、エッチング、コーティング、成形、自己組織化、化学合成などを含むがこれらに限定されない、製造技術によって製造されるキャリアを示す。本発明のいくつかの実施形態における「粒子」という用語は、キャリアデバイスに関して言及される。
【0010】
本発明の様々な実施形態では、生物学的組織への埋め込みのためにキャリアデバイスは小型化される。本明細書の「小型化された」(キャリアに関して)という用語は、ミリメートルからセンチメートルスケールのキャリア、「キャリアマイクロデバイス」と呼ばれるマイクロメートル(「ミクロン」)スケールのキャリア、「キャリアナノデバイス」と呼ばれるナノメートルスケールのキャリアを含むがこれらに限定されない、小さなサイズのキャリアを示す。キャリア自体のサイズが上記に示したとおりであるだけでなく、キャリアの個別の構成要素もまた、同様のスケールを有する。特定のキャリアの寸法は、異なるスケールを有する可能性があり、例えば、キャリアは、ナノメートル範囲の1つの次元およびマイクロメートル範囲の別の次元を有し得ることに留意されたい。そのような小型デバイスはすべて、本発明の実施形態に含まれる。
【0011】
一実施形態では、本発明は、生物学的組織に埋め込んで、組織または別の組織に機能性材料を放出するためのキャリアデバイスを提供し、キャリアデバイスは、
●推進成分を含む構造体と、
●構造体に直接またはリンカーを介して取り付けられた機能性材料と、
●任意選択のコーティングであって、コーティングが、構造体を少なくとも部分的に覆い、構造体に取り付けられた機能性材料を少なくとも部分的に覆う、該コーティングと、を備える。
【0012】
一実施形態では、推進成分は磁気成分である。一実施形態では、推進成分、機能性材料、コーティング、またはこれらの組み合わせは、外部刺激に応答する。一実施形態では、刺激は、US、磁気、電気、電磁、電磁放射、またはこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、刺激の推進成分への印加は、デバイスを推進する。一実施形態では、本発明のデバイスにおいて、
●機能性材料は、外部刺激に応答して構造体から分離するか、
●コーティングは、外部刺激に応答して破裂するかもしくは穿孔されるか、または
●これらの組み合わせである。
【0013】
一実施形態では、外部刺激はUSである。一実施形態では、外部刺激は、推進成分を推進するための磁気刺激と、デバイスまたはその構成要素から機能性材料を放出するためのUS刺激と、を含む。
【0014】
一実施形態では、構造体は、少なくとも部分的に多孔質である。一実施形態では、多孔質構造体の平均細孔径は、10nm~1000nmの範囲である。一実施形態では、機能性材料は、有機化合物、ポリマー、複合材、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含む。一実施形態では、コーティングが、ポリマー、複合材、またはこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、構造体は、ミクロ構造、ナノ構造、またはこれらの組み合わせである。
【0015】
一実施形態では、本発明は、システムを提供し、システムは、
●本明細書に開示されているデバイスと、
●リモートユニットと、を備え、
リモートユニットは、デバイスに外部刺激を印加するように構成されている。
【0016】
一実施形態では、外部刺激は、USを含む。一実施形態では、外部刺激は、USおよび磁気刺激を含む。
【0017】
一実施形態では、機能性材料は、外部刺激に応答してその形状もしくはトポロジーを変化させるか、または構造体から分離するか、またはコーティングは、外部刺激に応答して破裂するかまたは穿孔されるか、あるいはその組み合わせである。
【0018】
一実施形態では、本発明は、デバイスを動作させるための方法を提供し、本方法は、
○キャリアデバイスを提供するステップであって、キャリアデバイスが、
●推進成分を含む構造体、
●構造体に直接またはリンカーを介して取り付けられた機能性材料、および
●任意選択のコーティングであって、コーティングが、構造体を少なくとも部分的に覆い、かつ構造体に取り付けられた機能性材料を少なくとも部分的に覆う、該コーティング、を含む、該提供するステップと、
○デバイスに外部刺激を印加するステップと、を含む。
【0019】
一実施形態では、コーティング、機能性材料、またはこれらの組み合わせは、外部刺激に応答する。一実施形態では、刺激はUSである。一実施形態では、刺激は、推進成分を推進するための磁気刺激と、デバイスから機能性材料を放出するためのUS刺激と、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明の方法において、
●機能性材料は、外部刺激に応答して構造体から分離するか、
●コーティングは、外部刺激に応答して破裂するかもしくは穿孔されるか、または開位置になることが想定されるか、あるいは
●これらの組み合わせである。
【0021】
一実施形態では、機能性材料は、有機化合物、ポリマー、複合材、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含む。一実施形態では、コーティングは、ポリマー、複合材、またはこれらの組み合わせを含む。
【0022】
一実施形態では、構造体は、ミクロ構造、ナノ構造、またはこれらの組み合わせである。一実施形態では、推進成分は、磁気成分を含む。
【0023】
一実施形態では、本発明は、本発明のデバイスを製造する方法を提供し、本方法は、
●推進構造体を提供または構築するステップであって、構造体が、推進素子を含む、提供または構築するステップと、
●構造体に機能性材料を結合するステップと、
●任意選択で構造体を少なくとも部分的にコーティングするステップ、選択で機能性材料を少なくとも部分的にコーティングするステップ、またはこれらの組み合わせと、を含む。
【0024】
一実施形態では、本発明は、被験者を治療する方法を提供し、本方法は、
●本明細書に記載のデバイスを被験者に挿入するステップと、
●デバイスに外部刺激を印加するステップと、を含む。
【0025】
一実施形態では、デバイスを挿入するステップは、被験者内の特定の組織にデバイスを挿入するステップを含む。
【0026】
一実施形態では、外部刺激は、
●デバイスを被験者内の定義された位置に推進する磁気/電気または電磁刺激、
●機能性材料を構造体から分離し、かつ/もしくはコーティングを破裂または穿孔するUS刺激、あるいは
●これらの組み合わせ、を含む。
【0027】
一実施形態では、外部刺激の印加に続いて、機能性材料は、組織または組織の/組織中の成分(複数可)と相互作用する。一実施形態では、相互作用は、治療作用、診断作用、またはこれらの組み合わせをもたらす。一実施形態では、方法は、被験者内のデバイスの位置を撮像することをさらに含む。一実施形態では、推進成分は、磁気成分である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
開示された主題は、添付の図面と共に読まれる場合、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0029】
【
図1A】超音波(US)感応性複合粒子の代表例を示し、超音波(US)感応性ポリマーコーティングの一例である。
【
図1B】超音波(US)感応性複合粒子の代表例を示し、磁気コアおよびメソ多孔質負荷成分を有するUS感応性粒子を合成するための代表例である。
【
図1C】超音波(US)感応性複合粒子の代表例を示し、US感応性キレート表面を有する粒子の代表例である。
【
図1D】超音波(US)感応性複合粒子の代表例を示し、温度感応性(例えば、形状記憶、膨張/崩壊、分解性)コーティング、およびUSによって加熱されるUS加熱コア金属/複合材の代表例である。
【
図2】エッチングされたUS感応性キレート表面を有する代表的な粒子である。
【
図3】開裂時に極性部分を生成するUS感応性化学結合の例を示す。
【0030】
説明を簡単かつ明確にするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、いくつかの要素の寸法は、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、対応するまたは類似の要素を示すために、参照番号は、図の間で繰り返される場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の様々な実施形態は、要求に応じてキャリアから放出される機能性材料を含むキャリアデバイスを提供する。「機能性材料」という用語は、医療治療の性質または診断的な性質を有する任意の物質、化合物、または材料を含み得る。機能性材料は、外部刺激が加えられるとキャリアから放出される。外部刺激は、電気、磁気、電磁、電磁放射、超音波、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、機能性材料は、別の材料に取り付けられて提供されるか、または別の材料内に含まれる。いくつかの実施形態では、機能性材料は、組成物の一部である。この態様によれば、機能性材料を指す実施形態は、機能性材料を含むより大きな存在物/組成物を指すこともある。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、キャリアデバイスおよびその構成要素部品は小型化される。デバイスおよび/またはデバイスに含まれる構造体は、マイクロスケール、ナノスケール、またはこれらの組み合わせで、少なくとも1つの寸法を有する。いくつかの実施形態によれば、デバイス全体の直径または実際の長さは、100~5,000マイクロメートル、10~100マイクロメートル、1~10マイクロメートル、200~1,000ナノメートル、およびこれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態によれば、デバイス全体の直径または実際の長さは、200ナノメートル~最大5,000マイクロメートルである。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、キャリアデバイスは、細長い、軸対称、中心対称、キラル、ランダム、およびこれらの任意の組み合わせから選択される形状を含む。
【0034】
以下は、いくつかの非限定的な実施形態の詳細な説明であり、その図面に関連している。
【0035】
一実施形態では、本発明は、ペイロードキャリアを製造する方法を提供し、ペイロードは、事前定義された周波数Xにおける外部超音波トリガー/刺激に基づいて放出することができる一方で、外部から印加される電磁場を使用してキャリアのリモート制御運動を潜在的にサポートする。一実施形態では、ペイロードは、機能性材料であるか、または機能性材料を含む。一実施形態では、ペイロードを放出するとき、粒子は停止している。他の実施形態では、粒子は、ペイロードを放出しながら動いている。
【0036】
超音波応答性マイクロ/ナノ粒子の設計は、以下を含む。
1.
a)ナビゲーションおよび/または超音波誘導加熱のための磁気成分(または他の推進成分)、
b)ペイロード(すなわち機能性材料)の吸収/吸着または共有結合のための負荷コア、ならびに任意選択で
c)特定の超音波周波数または周波数範囲に応答する超音波感応性絶縁コーティング、
の組み合わせ。
2.コーティングはペイロードを固定し、指定された位置、組織、または器官でペイロードを放出するために、自由に除去できるように特別に設計されている。
3.代表的なコーティング設計としては、様々な厚さの超音波感応性ポリマーフィルム、単一または複数のポリマー層、事前作成されたポリマーエッチング、つまり、所定の張力パターンまたは隆起、谷を含む不規則性の追加、埋め込まれた微小欠陥を含むポリマー、ならびに同じまたは様々な長さのオリゴマーを含むポリマー、および任意の好適な化学組成のポリマーが挙げられる。
4.重要なことは、局所的な副作用を最小限に抑えるために、ポリマーおよびその成分が非毒性に、または迅速に代謝されて非毒性の断片を生成するように選択されることである。
5.超音波感応性コーティングは、(a)局所的なキャビテーションを誘導した後にキャビテーション誘導のコーティングの除去が続く「低周波」(10~100KHz範囲)超音波、または直接的なポリマー分解および/または磁気/メソ多孔質コアの超音波ベースの加熱に続くポリマーコーティングの分解を誘導する(b)「診断周波数」(0.5~12GHzの範囲)超音波、を介して特定の超音波周波数に応答する。
6.ポリマーコーティングを除去すると、ペイロードが周囲の媒体に露出し、このステップは、低周波数または高周波数のいずれかにおける超音波処理と組み合わされて、ペイロードの脱着または共有結合の切断をトリガーして、特定の位置でペイロードを放出する。
7.粒子(キャリアデバイス)は、特殊な磁気コレクター、カテーテル、または磁化針を使用して、後で除去して収集することができる。
【0037】
この基本設計の異なる実施形態の特定の詳細を以下および
図1~
図3に要約する。
【0038】
様々な用途では、外部から印加される電磁場を使用して動きをリモート制御できるペイロードキャリア(例えば、マイクロ/ナノ粒子)を製造することが有益な場合がある。そのような粒子の例は、米国特許第8,768,501号に記載されており、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような例示された粒子は、磁気作動プロペラ(MAP)である。プロペラは、1つの空間次元で20nm~100ミクロンの範囲の典型的な特徴サイズを有する構造である。一実施形態では、MAPは、ナノ構造体表面から多数生成することができる。MAPは、磁場によって推進および制御される。MAPのフォームは、ねじのようなフォームである。ねじのようなMAPは、回転磁場によって回転および駆動される。MAPを、それらの長軸を中心に回転させると、MAPは、前方に推進される。ペイロードキャリアの設計方法が以下に記載され、この方法は、このような機能をサポートする一方で、超音波信号に基づいたリモート制御ペイロード放出に関する上記の機能もサポートする。
【0039】
図1A~1Dに示される一実施形態では、粒子の特定の組成は以下を含む。
i.粒子ナビゲーション、イメージング、治療診断(セラノティクス)、例えば、超音波加熱などによる表面特性の変調をサポートするために組み込まれた強/常磁性成分(例えば、図では、SiO
2/Niロッドとして実装される)。磁気成分は、複数の物理蒸着法、レーザー直接描画、電着、ソルボサーマル法、ゾルゲル、構造化メディア合成(
図1Bに示されるGLADプロトコルなど)を含む様々な方法を通じて粒子に組み込むことができる。
ii.20nm未満または100nm未満のキャビティ(例えば、細孔)、および/または「ゲーティング」材料、つまり構造の変化、または外部刺激(例えば、ドキソルビシンのβ-シクロデキストリンキャビティへの包含)、キレート化/錯化分子(
図1C)によってトリガーされる化学分解を通じて細孔の開閉変換を受けることができる材料を有する多孔質複合材によって例示されるメソ多孔質成分または高負荷容量の代替物。
iii.超音波(US)感応性コーティング(トポロジー、物理的または化学的完全性を、可逆的に(形状記憶)、または化学的分解または解重合によって不可逆的に(2-テトラヒドロピラニルメタクリレートに例示されるように、表面に誘導された温度勾配)変化させ、かつモノ/ポリレイヤー、エッチング/パターン化、またはペイロードの制御放出(
図1A、
図1C、
図1D)のための形状記憶ベースのポリマー(複数可)を含むように、さらに製造することができる特定のポリマーフィルム。
iv.粒子設計をさらに拡張して、超音波またはX線撮影/蛍光透視法によって例示されている従来の手法によるイメージングを強化することができる。特に、強磁性/金属成分は、Nb、Zr、Ta、および他の希土類金属によって例示されるがこれらに限定されない特定の画像強化元素(複数可)または合金(複数可)を含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、磁気成分は、強磁性または常磁性材料を含む。磁気成分は、強/常磁性材料で作製された粒子/構造体であり得、またはそれは、強/常磁性コーティング層によってコーティングされた非強/非常磁性材料で作製され得る。強/常磁性成分は、互いに付着した強/常磁性部分および非強/非常磁性部分を含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、粒子/成分/構造体自体が、少なくとも部分的に強磁性または常磁性である。いくつかの実施形態では、非強/非常磁性材料上の強/常磁性コーティング層は、非磁性材料の少なくとも一部をコーティングするか、または非磁性材料の露出表面全体をコーティングする(いくつかの実施形態のアンカーポイントを除く)。本発明の実施形態に適用可能な1つの設計は、強磁性または常磁性粒子/成分が、非磁性材料によって部分的にコーティングされている設計である。
【0042】
強磁性または常磁性粒子が部分的にコーティングされている、もしくはコーティングされている、または非磁性材料と接触している/非磁性材料によって接触している実施形態では、そのような非磁性材料の非限定的な例としては、反磁性誘電材料((SiO2、アルミナ)、反磁性金属(Cu、Ag、Au)、および反磁性有機コーティング(有機ポリマー、小分子、キラル化合物など)が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、強磁性部分または常磁性部分は、当技術分野で知られている任意の強磁性または常磁性基板であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、強磁性部分は、Co、Fe、Ni、Gd、Tb、Dy、Eu、これらの酸化物、これらの合金、またはこれらの混合物を含む。他の実施形態では、常磁性部分は、磁気ドープ半導体を含む。
【0044】
例えば、メソ多孔質成分は、以下の材料のいずれかを含んでもよい。酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化ニオブ、アルミニウムベースのスピネル、炭素。Si/Al酸化物と強/常磁性成分とを組み合わせた特定の複合材料は、(i)負荷容量の改善、(ii)細孔への治療薬のより良好なカプセル化、(iii)動的および動力学的な細孔サイズの調整(例えば、カスタム製造または高周波超音波(HFUS)による局所加熱による膨張/収縮)、(iv)「保護」HFUS感応性コーティングを通じてメソ多孔質表面をキャップする可能性、(v)HFUSの印加を通じて放出される可能性のある治療負荷が埋め込まれた固定化された特定のゲーテッド分子(例えば、β-シクロデキストリンまたはデキストラン誘導体)、(vi)シスプラチンCDDPtまたはドキソルビシンに限定されない、例示された特定の治療薬を調整できるキレート/複合表面(例えば、Al
2O
3のポリカルボン酸またはポリアミン修飾)を提供することができる、
図1B/
図1C)。
【0045】
メソ多孔質とは、通常nm範囲の小さな細孔を含む材料を指す。しかし、本発明の多孔質材料は、いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態に適合する任意のサイズ/サイズ分布の細孔を有する多孔質、ナノ多孔質、ミクロ多孔質、ミクロ多孔質材料を含む。細孔の均一なサイズ分布、または均一な細孔サイズ範囲、もしくは異なるサイズ範囲の細孔を有する任意の材料が考えられる。
【0046】
合成HFUS感応性ポリマーの具体例としては、PDMSまたは2-テトラヒドロピラニルメタクリレート(THPMA)(
図1A)が挙げられるが、これらに限定されない。代表例では、物理蒸着(PVD)技術(例えば、GLAD)のいずれかで製造した強/常磁性およびメソ多孔質Al/Si酸化物成分を含む複合粒子にドキソルビシンを充填し、続いて極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトニトリルまたはDMF)中のTHPMAの飽和溶液で処理した後、乾燥および硬化して疎水性ポリマーでコーティングされた粒子を生成する。粒子のHFUS処理は、アセタール基を切断して、遊離カルボン酸部分を放出し、したがって、生体外の反応環境または生体内の組織に可溶な親水性生成物を生成して、メソ多孔質表面を露出させ、ペイロードを放出する。重要なことは、(i)複数の低周波USパルス(10~100KHzの範囲の遅い放出)またはHFUS(0.5~12MHzの範囲の高速「デジタル」放出)を適用すること、(ii)US処理時間を変化させること、(iii)ポリマーレイヤリング技術またはブロック(共)重合を適用すること、(iv)USによって段階的にまたは即座に破裂する可能性のあるパターン化された保護ポリマー表面(例えば、
図2に示すように、ポリマーフィルムの分解を促進するプリセットUS感応性欠陥を含むエッチング表面)を設計すること、または、(v)強磁性材料の他の材料に対する熱伝導率の違いに起因するUS/HFUSによって誘導されるより効率的な局所温度勾配をサポートするために、強磁性組成/幾何学的形状を変更することによって、即時のまたは段階的なペイロード放出をサポートするために、化学変換を微調整できることである。US刺激に応答し、閉じ込められたペイロードを放出するために(コ)ポリマーに組み込むことができる追加の化学基としては、シッフ塩基、ヒドラゾン、ケタール、エステル、マイケル付加物(
図3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の代表的な実施形態では、粒子(キャリアデバイス構造体)のサイズは、20nm~1mmで変化し得る。いくつかの実施形態では、デバイスはマイクロメートル範囲にある。いくつかの実施形態では、デバイスはナノメートル範囲にある。特定の範囲内とは、デバイスの最大測定寸法がその範囲内であることを意味する。ミリメートル範囲内のデバイスもまた、本発明の一部である。本発明のマイクロデバイスは、ナノメートルおよびマイクロメートル範囲の両方の寸法を有し得る。ミリメートル範囲のデバイスは、mm、μm、nmの範囲、またはこれらの任意の組み合わせの寸法を持つことができる。サイズ(または本発明のデバイスの最大寸法サイズは、20nm~100nm、10nm~10mm、20nm~1mm、10nm~1ミクロン(ミクロン=μm)、10nm~10ミクロン、20nm~100ミクロン、1ミクロン~10ミクロン、10ミクロン~100ミクロン、100ミクロン~1mm、1mm~10mm、1ミクロン~5mm、10nm~1mm、100nm~1ミクロン、100nm~10ミクロン、100nm~100ミクロン、100nm~1000ミクロンの範囲である。異なるサイズ、異なるサイズ範囲、および様々な/異なるサイズの粒子の任意の組み合わせの粒子を含む組成物は、本発明の実施形態に含まれる。
【0048】
本発明の代表的な実施形態では、粒子(キャリアデバイス構造体)のサイズは、20nm~1mmで変化し、対象の媒体を通る能動的な外部誘導輸送を強化するために特に選択された様々な幾何学的形状を示し得る。例としては、経細胞または傍細胞空間、生体膜、血液脳または腫瘍周囲の障壁、細胞外マトリックス、特定の組織、器官および/または血管/リンパ管によって例示される特定の生物学的およびまたは疾患関連障壁が挙げられる。形状の代表例としては、ヘリカル(ワーム、ねじのような)、マイクロ/ナノプロペラ、スレッドおよび/またはリボンのような、滑らかな、エッチングされた表面の球/回転楕円体、繊毛、鞭毛/鞭毛、フィン(複数可)によって例示される1つ/複数の外部付属物(複数可)を伴うか伴わない粒子が挙げられるが、これらに限定されない。重要なことは、電磁駆動ナビゲーション(強/常磁性コア)、ペイロード送達(メソ多孔質材料)、および超音波トリガー放出(US感応性ポリマー)の保護に関与する素子を組み合わせた粒子設計は、望ましくないパフォーマンス干渉(例えば、電磁的に-トリガーされたペイロードの放出または加熱)を引き起こす可能性が低い。これは、技術的に実現可能であり、ヘルムホルツ磁気コイルのセットアップおよび一般的な診断用超音波機器によって例示されるように、既存の市販機器を通じて対応することができる。さらに、粒子および迅速な標的の能動輸送、組織および/または臓器送達、ペイロードの放出および粒子の収縮の両方に起因して、粒子-(生体内の)システム相互作用は、慎重に制御され、制限されており、免疫反応、炎症反応、および/または代謝反応によって例示される望ましくない生理学的副作用(複数可)を誘発する可能性は低い。US誘導ポリマーコアの破裂によって誘発される可能性のある生体内副作用をさらに最小限に抑えるために、生体適合性ポリマー、非毒性の生分解性ポリマー、またはこれらの組み合わせの特定の選択を適用することができる。代表的なポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N-2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(N-イソプロピル)アクリルアミド、ポリ乳酸、キトサン、およびポリグリコリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の他の実施形態では、粒子のUS媒介加熱は、(i)US波強度、(ii)US曝露時間、および(iii)組成(強/常磁性、メソ多孔質成分の含有量)、サイズ、形状、および表面/コーティングを含む粒子性質を通じて慎重に制御される。これらの実施形態は、(i)外部磁場を介して粒子を推進するのに十分な強/常磁性成分と、制御されないおよび/または急速なUS媒介加熱との間の適切なバランスを維持し、(ii)予想される螺旋形状の粒子を選択して、同じ寸法の円柱状粒子よりも遅い速度で熱を取得および伝達することによって加熱速度を制御し、かつ(iii)粒子を多層生体適合性ポリマーコーティングで処理して、熱の吸収および放散に対するより良好な制御を提供する。
【0050】
さらなる実施形態では、粒子は、(a)複数のペイロード(小分子、生物製剤、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNA、アプタマー、ペプチド/ペプトイド、ウイルス)と、(b)狭いUSに波エンベロープ、例えば、1MHz対12MHzに特に応答する差動US感応性化学との両方を特徴とし得る。具体的には、これらの粒子は、様々な物理的(多層コーティング、事前作成、形状記憶、エッチング)または化学的(例えば、ポリマー長、(共)重合、PDMS対THMRA対ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表される多様なポリマーの応用、複合化、特定のUS強度に最適化された応答を有する分子のゲーティング)技術を通じて製造することができる。これらのカスタマイズされた粒子を単一の治療または別々の器具で適用すると、患者固有の状態(例えば、固有の遺伝子シグネチャ/プロファイルを有する特定の臓器腫瘍)を治療するための有効性/安全性比がさらに向上する。具体的には、(a)がん(例えば、遺伝子、タンパク質、経路、ネットワーク)固有のペイロード(複数可)を送達し、(b)慎重に制御された縦方向のまたは空間的な放出を達成し、かつc)超音波および/または粒子組成、すなわち強磁性、メソ多孔質成分、およびコーティング/ゲーティング技術の強度/タイミングを変更することによるペイロードの放出を、加速-減速-停止させることが可能である。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、(i)US媒介音響キャビテーションプロトコル(20~100kHzの標的周波数)、または(ii)ポリマーコーティングの直接US媒介破裂(0.5~12MHzの標的周波数)が説明された複合強/常磁性メソ多孔質粒子からのペイロード放出を誘導するために使用される。代表的な合成プロトコルでは、上述したように(例えば、GLADを介して)合成され、強/常磁性コア(例えば、Fe3O4、Ni、Co)、メソ多孔質材料(例えば、10nmを超える細孔を示すZrO)を含む指定された幾何学的形状(例えば、マイクロ/ナノスクリュー)、サイズ(例えば、100nm~1,000μm)の合成粒子は、有機溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン)、水、緩衝液、または混和性有機溶媒、ならびに不活性雰囲気(例えば、ArまたはN2)の下で穏やかに撹拌された水の中の標的ペイロード(例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、またはシスプラチン)の飽和溶液で処理される。得られた懸濁液を濾別し、アセトニトリルおよび/または水/アセトニトリル(約50/50%)で洗浄した後、乾燥アセトニトリルおよびエーテルで洗浄する。収集された粒子を穏やかに撹拌しながら、有機溶媒(例えば、トルエン、ジオキサン、アセトニトリル)中の特定のポリマー(例えば、ポリスチレン)の1~25%コーティング溶液中で2時間再懸濁し、続いて濾過し、乾燥空気またはN2ガスの流れで徐々に乾燥して、メソ多孔質成分によって閉じ込められ、ポリマーのコーティングで密封されたペイロードを特徴とする標的複合粒子を生成する。結果として生じる粒子は、特定のUS処理を伴わずにペイロードを放出することは予想されない。代表的な音響キャビテーション媒介ペイロード放出プロトコル(20~100KHzのUS周波数)では、粒子を、磁場を使用して特定の位置に配置またはナビゲートし、その後US処理を行って(25℃、20KHz、15W/cm2で5分、一定または5秒のON/OFFパルス)、ポリマーコーティングを破裂させ、閉じ込められたペイロードを放出する。
【0052】
粒子の性質またはUS処理プロトコルを変更することによって、ペイロード放出の最適化(単位時間あたりの放出されたペイロードと総負荷ペイロードとの比率)を達成することができる。例えば、粒子の性質を最適化するには、(i)ポリマー化学(例えば、ポリスチレンをPVAに変更)、(ii)ポリマーMW、(iii)コーティング溶液中のポリマー濃度(上記の実験プロトコルを参照)、(iv)コーティングステップの継続時間(例えば、2時間対4時間)、(v)コーティングの接着性および/またはコーティングの安定性を高めるための特定の表面前処理またはアシストコーティング(GLAD中の多孔精の強化、Al2O3によって例示される特定の化学成分の追加)、(vi)同じまたは異なるUS感応性ポリマーで追加のコーティングステップを適用して、得られるフィルムの厚さまたは安定性を高める(例えば、PVAに続くTHPMAコーティングステップ)に変化させることができる。US処理プロトコルを最適化するには、(i)周波数(例えば、音響キャビテーションプロトコルの場合20対50KHz)、(ii)電力(例えば、US源出力を15~25W/cm2で増加/減少)および電力損失、(iii)処理継続時間(例えば、30秒対180秒)、(iv)USのエネルギーをより少ない処理量に集中させるためのUS開口部/焦点、または、(v)一定もしくはパルス化するUSを適用する、を調整することができる。代表例では、ポリマーコーティング(例えば、ポリスチレンまたはキトサン対THPMA)を選択すると、周波数(例えば、20KHz対1MHz)および/またはプロトコル固有(例えば、音響キャビテーション対直接ポリマー分解)のコーティング作用が得られる。
【0053】
要約すると、上述した実施形態は、低周波数対高周波数でのUS周波数固有コーティング破裂を通じて、正確な位置(複数可)で標的ペイロードを送達および放出する、能動的にナビゲートされ、扱いやすい磁気メソ多孔質複合ナノ微粒子を提供する。ペイロードの放出は、音響キャビテーションプロトコル(20~100KHzの目標周波数)または直接USポリマー作用(0.5~12MHの目標周波数)のいずれかによって例示されるように、特定のUS周波数まで調整することができる。US波および粒子化学の物理的パラメータを含む複数の特定の要因は、生体外または生体内での標的へのペイロードの選択的、正確、安全かつ効果的な送達を達成するための最適化の影響を受けやすい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、推進成分は、その中またはその上に機能性材料を含む同じ成分であり得る。この態様によれば、一実施形態では、推進素子は、推進を可能にする特徴(例えば、磁気成分)と、機能性材料を含むことができる特徴と、を含む。例えば、
図1Bを参照すると、強磁性または常磁性の複合ロッドは、機能性材料が強/常磁性ロッドに取り付けられている多孔質の複合材であり得る。そのような成分は、本発明の実施形態に適用可能な任意の形状、形態、およびサイズを想定することができる。
【0055】
本明細書に示されるように、ポリマーコーティングは任意である。本発明の実施形態では、コーティングは提供されず、デバイスは、デバイスが組織内でまたは組織に沿って移動するときに機能性材料が無傷を保つように構造体/成分に取り付けられるように構成される。機能性材料が必要な時間または場所で、リモートトリガー/刺激が印加され、機能性材料(または機能性材料を含む任意の新財物)は、構造体/成分から分離し、必要な標的領域に放出される。
【0056】
他の実施形態では、例えば、機能性材料と構造体との間の接触が非常に安定していない場合のみならず、ポリマーコーティング(例えば、
図1Cに示される)は、デバイスが放出標的に向かって移動している期間中に、機能性材料のための保護を提供する。コーティング材料は、標的材料を解放出するために、標的で開かれる。コーティング材料は、放出プロセスに対する追加の制御を提供する。放出プロセスは、拡張された放出パラメータを可能にするために、段階的な開口、即時の開口、および/またはコーティングの開/閉操作によって制御される。
【0057】
刺激が注目されている本発明の実施形態では、実施形態はまた、いくつかの実施形態において、単一の刺激を指す。
【0058】
この実施形態で説明される設計は、目標周波数Xの選択により、可能な侵入深度が直接定義されるため、上記の要約セクションで定義された特徴1~4をサポートし、また、単一の単位容積で複数のキャリアの個別制御を可能にする。各キャリアは、このように特定のUS信号によって単一のキャリアの個別の活性化を可能にする、異なる共振周波数を有するように設計することができる。
【0059】
本明細書では本発明の特定の特徴を例示および説明してきたが、多くの修正、置換、変更、および同等物が当業者に思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内にあるそのようなすべての修正および変更を網羅することを意図していることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的組織内に埋め込まれ、前記生物学的組織または別の組織に機能性材料を放出するように構成されたキャリアデバイスであって、
磁気成分を含む構造体であって、前記磁気成分が、遠隔的に加えられた第1の外部刺激に応答して当該構造体を遠隔的に制御するように構成された、該構造体と、
前記機能性材料を含むペイロードであって、前記構造体に取り付けられており、かつ、遠隔的に加えられた第2の外部刺激に応答して前記構造体から放出されるよう構成された、該ペイロードと、を備え、
前記第1の外部刺激が磁気であり、
前記第2の外部刺激が超音波である、キャリアデバイス。
【請求項2】
前記構造体及び前記ペイロードを少なくとも部分的に覆うコーティングをさらに備え、
前記コーティングが、前記第2の外部刺激に応答して前記構造体から前記ペイロードを放出するように構成されている、請求項1に記載のキャリアデバイス。
【請求項3】
前記コーティングが、前記構造体から前記ペイロードを放出するべく、前記第2の外部刺激に応答して破裂するかまたは穿孔されるように構成されている、請求項2に記載のキャリアデバイス。
【請求項4】
前記コーティングが、ポリマー、複合材、またはそれらの組み合わせを含む、請求項2または3に記載のキャリアデバイス。
【請求項5】
前記ペイロードは、前記第2の外部刺激に応答して前記構造体から分離するように構成された、請求項1~4のいずれかに記載のキャリアデバイス。
【請求項6】
前記構造体が、少なくとも部分的に多孔質である、請求項1~5のいずれかに記載のキャリアデバイス。
【請求項7】
前記多孔質の前記構造体の平均細孔径が、10nm~1000nmの範囲である、請求項6に記載のキャリアデバイス。
【請求項8】
前記機能性材料が、有機化合物、ポリマー、複合材、またはこれらの組み合わせである、請求項1~7のいずれかに記載のキャリアデバイス。
【請求項9】
前記構造体が、ミクロ構造体、ナノ構造体、またはこれらの組み合わせである、請求項1~8のいずれかに記載のキャリアデバイス。
【請求項10】
システムであって、
請求項1~9のいずれかに記載のキャリアデバイスと、
リモートユニットと、を備え、
前記リモートユニットが、前記キャリアデバイスに前記第1の外部刺激及び前記第2の外部刺激を印加するように構成されている、システム。