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特開2022-141758強化型液式電池のための改良されたセパレータ、電池、及び関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141758
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】強化型液式電池のための改良されたセパレータ、電池、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20220921BHJP
   H01M 10/06 20060101ALI20220921BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220921BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220921BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220921BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20220921BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220921BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20220921BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20220921BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220921BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M10/06 Z
H01M50/489
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/411
H01M50/446
H01M50/491
H01M50/463 B
H01M50/449
C08J9/00 Z CES
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110278
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2018553104の分割
【原出願日】2017-04-07
(31)【優先権主張番号】62/319,959
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505458359
【氏名又は名称】ダラミック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ナイーハ,ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】ダイテルス,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナムルズィー,アヒラ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,エリック,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィアー,ジェイ.,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】サフェル,ロバート ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】三宅 直人
(72)【発明者】
【氏名】クウェルカー,カナク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少なくとも強化型液式電池において、電池寿命を延長し、内部電気抵抗を低減し、CCAを増大し、及び/又は均一性を改善するための方法、システム、及び電池セパレータを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン微孔性膜を含む鉛蓄電池のためのセパレータであって、前記ポリオレフィン微孔性膜は、好ましくは超高分子量ポリエチレンであるポリエチレンと、粒子状充填剤と、処理可塑剤と、を含み、前記粒子状充填剤は重量で40%以上の量で存在し、前記ポリエチレンは、複数の伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び複数の折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を含むシシケバブ形成のポリマーを含み、前記ケバブ形成の平均繰り返し又は周期は1nmから150nmであり、好ましくは120nm未満である、セパレータを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微孔性膜を含む鉛蓄電池のためのセパレータであって、前記ポリオレフィン微孔性膜は、
好ましくは超高分子量ポリエチレンであるポリエチレンと、粒子状充填剤と、処理可塑剤と、を含み、
前記粒子状充填剤は重量で40%以上の量で存在し、
前記ポリエチレンは、複数の伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び複数の折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を含むシシケバブ形成のポリマーを含み、前記ケバブ形成の平均繰り返し又は周期は1nmから150nmであり、好ましくは120nm未満である、セパレータ。
【請求項2】
前記ケバブ形成の前記平均繰り返し又は周期は、SEMによって前記ポリオレフィン微孔性膜の表面の画像を撮影し、前記SEM画像において前記シシケバブ形成が少なくとも0.5μm以上の長さで連続的に延出する少なくとも3つの矩形領域を示し、前記示された各矩形領域の長さ方向に対して垂直方向に投影されたコントラストプロファイルのフーリエ変換によって前記繰り返し周期の平均を計算することによって前記繰り返し又は周期を特定することによって規定される、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項3】
前記充填剤は、シリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、及び沈降非晶質シリカから成る群から選択され、
29Si-NMRによって測定される前記充填剤中のOH基とSi基との分子比は21:100から35:100の範囲内であり、好ましくは27:100以上である、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項4】
前記処理可塑剤は、プロセスオイル、パラフィンベースのオイル、及び鉱油から成る群から選択される、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項5】
シリカはポリマーの前記ケバブ形成に存在する、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項6】
少なくとも1つの微孔性熱可塑性シートを含む新規の又は改良された強化型液式電池セパレータであって、少なくとも強化型液式電池において、200mΩ・cm未満の電気抵抗、電池寿命の向上、内部抵抗の低減、CCM(コールドクランキングアンプ)の増大、及び/又は均一性の向上のうち少なくとも1つを有し、性能強化添加物又はコーティング、改良された充填剤を有し、ねじれが低減し、湿潤性が増大し、最終オイル含有量が低減し、厚さが低減し、電気抵抗が低下し、及び/又は多孔率及び/又は空隙容積が増大している、セパレータ。
【請求項7】
前記微孔性熱可塑性シートは、
a)1μm以下の平均孔径、
b)75mΩ・cm未満、又は70mΩ・cm未満、又は65mΩ・cm未満、又は60mΩ・cm未満、又は55mΩ・cm未満、又は50mΩ・cm未満、又は45mΩ・cm未満、又は40mΩ・cm未満、又は35mΩ・cm未満、又はそれ未満の電気抵抗、
c)液式鉛蓄電池のための既知のセパレータの電気抵抗よりも20%超小さい電気抵抗、
d)50%よりも大きい多孔率、
e)重量で約10から20%、いくつかの実施形態では重量で約14から20%の最終オイル含有量、及び
f)リブ、鋸歯状リブ、エンボスリブ、及び/又は負側の横方向リブ、
のうち1つによって特徴付けられる、請求項6に記載のセパレータ。
【請求項8】
高い構造形態を有する充填剤を更に含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記充填剤は、
a)5μm以下の平均粒径、
b)少なくとも100m/gの表面積、及び
c)少なくとも150ml/100gのオイル吸収率、
のうち1つによって特徴付けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記充填剤及び熱可塑性ポリマーは1.5:1から6:1の重量比で存在する、請求項1から9のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記充填剤は沈降シリカを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記粒子状充填剤は、30秒の超音波処理後にシリカ粒径中央値が約5μm以下である程度にもろい、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記粒子状充填剤は、60秒の超音波処理後にシリカ粒径中央値が約0.5μm以下である程度にもろい、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項14】
少なくとも約120nmの平均孔径を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項15】
-5℃で少なくとも約1.6・10-10の拡散係数、及び
約40mΩ・cm以下の電気抵抗を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項16】
30℃で少なくとも約8.8・10-10の拡散係数、及び
約40mΩ・cm以下の電気抵抗を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項17】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜を含み、
前記粒子状充填剤は、30秒の超音波処理後にシリカ粒径中央値が約5.2μm以下である程度にもろい、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項18】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜を含み、
前記粒子状充填剤は、60秒の超音波処理後にシリカ粒径中央値が約0.5μm以下である程度にもろい、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項19】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜を含み、
前記粒子状充填剤は、60秒の超音波処理後にシリカ粒径中央値が約0.5μm以下である程度にもろい、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項20】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜と、
-5℃で少なくとも約1.6・10-10の拡散係数と、
約40mΩ・cm以下の電気抵抗と、
を含む、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項21】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜と、
30℃で少なくとも約8.8・10-10の拡散係数と、
約40mΩ・cm以下の電気抵抗と、
を含む、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項22】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜と、
-5℃で少なくとも約1.6・10-10の拡散係数と、
を含み、前記粒子状充填剤は、30秒の超音波処理後にシリカ粒径中央値が約5μm以下である程度にもろい、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項23】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜と、
30℃で少なくとも約8.8・10-10の拡散係数と、
を含み、前記粒子状充填剤は、60秒の超音波処理後にシリカ粒径中央値が約0.5μm以下である程度にもろい、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項24】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜と、
-5℃で少なくとも約1.6・10-10の拡散係数と、
少なくとも約120nmの平均孔径と、
を含む、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項25】
ポリエチレン、粒子状充填剤、及び処理可塑剤を含むポリオレフィン微多孔性膜と、
30℃で少なくとも約8.8・10-10の拡散係数と、
少なくとも約120nmの平均孔径と、
を含む、鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項26】
前記セパレータは、界面活性剤、コーティング、湿潤剤、着色料、帯電防止添加剤、酸化防止剤、酸化を抑制するための薬品、及びそれらの組み合わせのうち1つ以上を含む、請求項1から25のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項27】
前記セパレータは少なくとも1つの界面活性剤を含み、そのような界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はそれらの組み合わせである、請求項26に記載のセパレータ。
【請求項28】
鉛蓄電池、好ましくは強化型液式電池において内部抵抗を低減させる方法であって、請求項1から27のいずれか1項に記載のセパレータを提供することを含む方法。
【請求項29】
請求項1から28のいずれか1項に記載のセパレータを含む、新規の又は改良された鉛蓄電池、好ましくは強化型液式電池。
【請求項30】
請求項1から29に記載の電池又は強化型液式電池を含む新規の又は改良された車両。
【請求項31】
液式鉛蓄電池、好ましくは強化型液式鉛蓄電池のための、本明細書に図示及び記載されている改良されたセパレータであって、液式鉛蓄電池のための既知のセパレータに比べて低減した前記電池における電気抵抗(ER)を示し、本明細書に規定されたシシケバブ構造を有し、前記液式鉛蓄電池、好ましくは強化型液式鉛蓄電池において、前記既知のセパレータに比べて低減した前記電池における酸層化、前記既知のセパレータに比べて低減した前記電池における電圧降下、前記既知のセパレータに比べて増大した前記電池におけるCCA(コールドクランキングアンプ)、前記既知のセパレータに比べて低減した前記電
池における水分損失、前記既知のセパレータに比べて増大した前記電池における電荷受容、及び/又は、前記既知のセパレータを採用した電池に比べて改善された全体的な電池性能、電池寿命、及び/又は電池サイクリングのうち少なくとも1つを示す、改良されたセパレータ。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか1項以上に従った、液式鉛蓄電池のための改良された電池セパレータ、又は改良された液式鉛蓄電池、又は改良された液式鉛蓄電池を含む改良された車両であって、前記電池セパレータ又は電池又は車両は、AGM電池セパレータ、及び/又はAGM電池、及び/又はAGM電池とAGM電池セパレータとを含む車両の性能に近いか、又はその性能と一致するか、又はその性能を超えている、改良された電池セパレータ又は改良された液式鉛蓄電池又は改良された車両。
【請求項33】
新規の又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化型液式電池セパレータ、電池、セル、及び/又は、そのようなセパレータ、電池セパレータ、フローレドックスセパレータ、セル、及び/又は電池の製造及び/又は使用の方法、強化型液式電池のための新規の又は改良された強化型液式電池セパレータ、強化型液式電池のための改良されたセパレータ、及び/又はそのような改良されたセパレータを有するそのような電池を使用する改良された方法、内部抵抗を低減し、電池寿命を延長し、水損失を低減し、内部抵抗を低減し、湿潤性を増大し、酸層化を低減し、酸拡散を改善し、CCA(コールドクランキングアンプ)を改善し、及び/又は均一性を改善するための方法、システム、及び電池セパレータ、性能強化添加物又はコーティング、多孔率の増大、空隙容積の増大、非晶質シリカ、高オイル吸収シリカ、高シラノール基シリカ、OH対Siの比が21:100から35:100のシリカ、電気抵抗の低減、シシケバブ構造又は形態、膜の重量の40%以上の量の粒子状充填剤を含むポリオレフィン微孔性膜、伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を備えたシシケバブ形成を有する超高分子量ポリエチレン、1nmから150nmのケバブ形成の平均繰り返し周期、シート厚さの低減、ねじれの低減等を含むか又は示すセパレータ、本明細書に図示又は記載されている強化型液式電池等に特に適したセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願第62/319,959号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、新規の又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化型液式電池(enhanced flooded battery)セパレータ、電池、セル、及び/又は、そのようなセパレータ、電池セパレータ、強化型液式電池セパレータ、セル、電池、システムの製造及び/又は使用の方法、これを用いた方法、及び/又は車両を対象とする。少なくともいくつかの実施形態によれば、本開示又は発明は、「SLI」(starting(始動)、lighting(照明)、ignition(点火))電池、ディープサイクル用途向け液式電池、及び「EFB(強化型液式電池)」(enhanced flooded battery)のための、新規の又は改良された電池セパレータ、液式鉛蓄電池セパレータ、又は強化型液式鉛蓄電池セパレータ、及び/又は、そのような改良されたセパレータ、セル、電池、システム、車両、又はそれらの任意の組み合わせを作製及び/又は使用する改良された方法を対象とする。少なくともいくつかの実施形態によれば、本開示又は発明は、強化型液式電池のための改良されたセパレータ、及び/又はそのような改良されたセパレータを有する電池を作製及び/又は使用する改良された方法を対象とする。少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータを対象とし、特に、電気抵抗を低減させた及び/又はCCA(コールドクランキングアンペア:cold clanking amps)を向上させた強化型液式電池のためのセパレータを対象とする。更に、本明細書に開示されるのは、少なくとも強化型液式電池において、電池寿命を延長し、水損失を低減し、内部抵抗を低減し、湿潤性を増大し、酸層化を低減し、酸拡散を改善し、CCAを改善し、均一性を改善し、又はそれらの組み合わせを提供するための方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は強化型液式電池のための改良されたセパレータを対象とし、このセパレータは、性能強化添加物又はコーティングを含み、多孔率が増大し、空隙容積が増大し、非晶質シリカ、高オイル吸収シリカ、高シラノール基シリカ、OH対Siの比が21:100~35:100のシリカを含み、電気抵抗が低減し、シシケバブ(shish-kebab)構造又は形態を含み、超高分子量ポリエチレン等の、膜及びポリマーの重量の40%以上の量の粒子状充填剤を含むポリオレフィン微孔性膜を含み、伸び切り鎖結晶(extended chain crystal)(シシ形成(shish formation))及び折り畳み鎖結晶(folded chain crystal)(ケバブ形成(kebab formation))を備えたシシケバブ形成を有し、ケバブ形成の平均繰り返し周期が1nm~150nmであり、シート厚が低減し、ねじれが低減している等である。
【背景技術】
【0003】
アイドルスタートストップ用途で拡大する電源の必要性に応えるため、強化型液式電池(「EFB」:enhanced flooded battery)及び吸収性ガラスマット(「AGM」:absorbent glassmat)電池が開発されている。EFBシステムは従来の液式鉛蓄電池と同様のアーキテクチャを有し、正極及び/又は負極は微孔性セパレータに覆われて液体電解質に浸漬している。一方、AGMシステムは自由液体電解質(free liquid electrolyte)を含有しない。代わりに電解質はガラス繊維マットに吸収され、ガラス繊維マットは電極の上に積層されている。歴史的に、AGMシステムは液式電池システムに比べ、放電出力の増大、サイクル寿命の向上、及びCCAの増大を伴っている。しかしながらAGMシステムは、製造コスト
が著しく高く、過充電に対する感度が高い。このため、一部の市場及び用途ではモバイル電源及び/又は固定電源の選択肢としてEFBシステムは依然として魅力的である。そのような電源及びエネルギ貯蔵の用途は様々であり、例えば、平板電池(flat-plate battery)、管状電池(tubular battery)、車両SLI、及びハイブリッド電気自動車ISS用途;ディープサイクル用途;ゴルフカー又はゴルフカート及び電池リキシャ(e-rickshaw)用の電池;部分充電状態(「PSOC:partial state of charge」)で動作する電池;インバータ電池;及び、再生可能エネルギ源用の蓄電池が挙げられる。
【0004】
EFBシステムは、鉛蓄電池セル内で負極から正極を分離する1つ以上の電池セパレータを含み得る。電池セパレータは2つの主な機能を有することができる。第1に、電池セパレータは、2つの電極間に電流が流れるのを防ぐため、負極から正極を物理的に離して保持しなければならない。第2に、電池セパレータは、電流を発生するためにできる限り小さい抵抗で正極と負極との間のイオン拡散を可能としなければならない。電池セパレータは多くの異なる材料から作製できるが、多孔性不導体で構成される電池セパレータによってこれら2つの相反する機能は充分に果たされている。この構造では、孔が電極間のイオン拡散に寄与し、非伝導ポリマーネットワークが電子的短絡を防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電率及びCCA(cold cranking ampere(amps))を増大させたEFB電池は、AGMバッテリに取って代わることができるであろう。CCAは電池の内部抵抗に相関することが知られている。従って、強化型液式電池の内部抵抗を低下させるとCCA定格が増大することが予想される。このため、現在の鉛蓄電池システムで発生する問題に対処し克服する、特に、強化型液式電池において内部抵抗を低減させると共にCCAを増大させる、新しい電池セパレータ及び/又は電池技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、上記の問題又は必要性に対処することができる。少なくともいくつかの目的によれば、本開示又は発明は、例えば内部電気抵抗が低減すると共にCCAが増大した強化型液式電池を提供することによって上述の問題を克服する改良されたセパレータ及び/又は電池を提供できる。
【0007】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、上記の問題又は必要性に対処することができ、及び/又は新規の又は改良されたセパレータ及び/又は強化型液式電池を提供することができる。少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、新規の又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化型液式電池セパレータ、電池、セル、及び/又は、そのようなセパレータ、電池セパレータ、強化型液式電池セパレータ、セル、及び/又は電池の製造及び/又は使用の方法を対象とする。少なくともいくつかの実施形態によれば、本開示又は発明は、自動車用途、アイドルスタートストップ(「ISS(idle start stop)」)電池、無中断電源(「UPS(uninterrupted power supply)」、又は制御弁式鉛蓄電池(「VRLA(valve regulated lead acid)」)のような高出力要求の電池、及び/又は高CCA要求の電池のための、新規の又は改良された電池セパレータ、液式鉛蓄電池、又は強化型液式電池セパレータ、及び/又はそのような改良されたセパレータ、セル、電池、システム等を作製及び/又は使用する改良された方法を対象とする。少なくともいくつかの実施形態によれば、本開示又は発明は、強化型液式電池のための改良されたセパレータ、及び/又はそのような改良されたセパレータを有するバッテリを使用する改良された方法を対象とする。更に、本明細書に開示されるのは、少なくとも強
化型液式電池において、電池性能を強化すると共に電池寿命を延長し、酸層化を低減し、内部電気抵抗を低減し、CCAを増大し、及び/又は均一性を改善するための方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、強化型液式電池のための改良されたセパレータを対象とし、このセパレータは、電気抵抗が低減し、性能強化添加物又はコーティングを含み、改良された充填剤を含み、多孔率が増大し、ねじれが低減し、厚さが低減し、オイル含有量が低減し、湿潤性が増大し、酸拡散が増大している等である。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、ねじれの低減した微孔性セパレータが提供される。ねじれとは、孔の長さにわたる湾曲/回転の程度のことである。従って、ねじれの低減した微孔性セパレータでは、イオンがセパレータを通って移動する経路が短くなり、これによって電気抵抗が低減する。そのような実施形態に従った微孔性セパレータは、厚さの低減、孔径の増大、孔の相互接続の増大、及び/又は穴の開口の増大を得ることができる。
【0009】
少なくともいくつかの選択された実施形態によれば、多孔率が増大した微孔性セパレータ、又は、既知のセパレータと多孔率に大きな差がない異なる孔構造を有する及び/又は低減した厚さを有するセパレータが提供される。多孔率が増大し、空隙容積が増大し、ねじれが低減し、及び/又は厚さが低減した微孔性セパレータでは、イオンがより迅速に通過するので、電気抵抗が低減する。そのような厚さ低減の結果として電池セパレータの全体的な重量が低減し、これにより、セパレータが使用される強化型液式電池の重量が低減し、その結果、強化型液式電池が使用される車両全体の重量の低減が可能となる。あるいは、そのような厚さの低減により、セパレータが使用される強化型液式電池内で正極活物質(「PAM:positive active material」)又は負極活物質(「NAM:negative active material」)のための空間を拡大することができる。
【0010】
少なくともいくつかの選択された実施形態によれば、(水又は酸における)湿潤性の増大した微孔性セパレータが提供される。湿潤性の増大したセパレータは、電解質イオン種のアクセスを容易にするので、セパレータを通過しやすくなると共に電気抵抗が低減する。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、最終オイル含有量の低減した微孔性セパレータが提供される。そのような微孔性セパレータも、強化型液式電池又はシステムにおけるER(電気抵抗)の低減を容易にする。
【0012】
セパレータは、もろさの増大した改良された充填剤を含むことができ、これによって、多孔率、孔径、内部孔表面積、湿潤性、及び/又はセパレータの表面積を増大させることができる。いくつかの実施形態では、改良された充填剤は、以前から既知の充填剤に比べ、高い構造形態(structural morphology)及び/又は小さい粒径及び/又は異なる量のシラノール基を有し、及び/又は、以前から既知の充填剤よりもヒドロキシル化されている。改良された充填剤は、セパレータ形成中により多くのオイルを吸収することができ、及び/又はより多量のプロセスオイルを組み込むことを可能とし、押し出し後にオイルが除去されるのと同時に収縮又は圧縮することがない。充填剤は更に、電解質イオンの水和層(hydration sphere)と呼ばれるものを低減させて、膜を通るイオン輸送を強化し、この場合も、強化型液式電池又はシステムのような電池の全体的な電気抵抗すなわちERを低減することができる。
【0013】
1又は複数の充填剤は、イオン拡散を増大させ、セパレータを通る電解質及びイオンの流れを容易にする様々な種(金属のような極性種等)を含み得る。これは、このようなセ
パレータが強化型液式電池等の液式電池で使用される際に、全体的な電気抵抗の低減を引き起こす。
【0014】
微孔性セパレータは更に、新規の及び改良された孔形態及び/又は新規の及び改良された繊維形態を含み、セパレータが液式鉛蓄電池で使用される際にセパレータが液式鉛蓄電池における電気抵抗の著しい低減に寄与するようになっている。このような改良された孔形態及び/又は繊維形態の結果として、孔及び/又は繊維がシシケバブ(又はシシカバブ)型の形態に近似したセパレータが得られる。新規の及び改良された孔形状及び構造を記述する別の方法は、電池セパレータ内のポリマー繊維(この繊維をシシと呼ぶことがある)上のケバブ型形成においてシリカノード又はシリカのノードが存在するテクスチャ加工の繊維形態である。更に、いくつかの実施形態では、本発明によるセパレータのシリカ構造及び孔構造を骨格構造又は椎骨構造又は脊椎構造として記述することができ、ポリマーの繊維に沿ったポリマーのケバブ上のシリカノードは、椎骨又は椎間板のように見える(「ケバブ」)と共に、時として、脊椎形状に近似した細長い中央の突起部又は繊維(伸び切り鎖ポリマー結晶)(「シシ」)に対してほぼ垂直な向きである。
【0015】
いくつかの例では、改良された孔形態及び/又は繊維形態を有する改良されたセパレータを含む改良された電池は、電気抵抗(「ER」)の20%の低減、いくつかの例では25%の低減、いくつかの例では30%の電気抵抗の低減、いくつかの例では30%超の低減(これは電池内部抵抗を低減させ得る)を示しつつ、そのようなセパレータは、鉛蓄電池セパレータの他の重要な望ましい機械特性のバランスを保ち維持する。更に、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるセパレータは新規の及び/又は改良された孔形状を有し、既知のセパレータに比べてより多くの電解質が孔及び/又は空隙を流れる及び/又は穴を充填するようになっている。
【0016】
更に、本開示は、強化型液式電池のための1つ以上の改良された電池セパレータを含む改良された強化型液式鉛蓄電池を提供する。このセパレータは、電池のため、酸層化の低減、電圧降下の低減(又は電圧降下耐久性の増大)、CCAの増大という望ましい特徴を組み合わせる。いくつかの例においてCCA増大は、8%超、又は9%超、又はいくつかの実施形態では10%超、又は15%超である。このような改良されたセパレータによって、性能がAGM電池の性能に匹敵するか又はそれよりも優れている強化型液式電池が得られる。このような低電気抵抗セパレータは、水損失の低減した強化型液式鉛蓄電池を得るように処理することも可能である。
【0017】
セパレータは、界面活性剤のような1つ以上の性能強化添加物を、他の添加物又は薬品、残留オイル、及び充填剤と共に含むことができる。このような性能強化添加物は、セパレータの酸化を抑制し、及び/又は膜を通るイオン輸送を更に容易にして、本明細書に記載される強化型液式電池の全体的な電気抵抗低減に寄与することができる。
【0018】
本明細書に記載される鉛蓄電池のためのセパレータはポリオレフィン微孔性膜を含むことができ、ポリオレフィン微孔性膜は、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレンのようなポリマーと、粒子状充填剤と、処理可塑剤と、を含む(任意選択的に1つ以上の追加の添加物又は薬品を有する)。ポリオレフィン微孔性膜は、膜の重量の40%以上の量の粒子状充填剤を含み得る。また、超高分子量ポリエチレンは、複数の伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び複数の折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を含むシシケバブ形成のポリマーを含み得る。ケバブ形成の平均繰り返し又は周期は、(少なくともセパレータのリブ側の部分において)1nm~150nmであり、好ましくは10nm~120nmであり、更に好ましくは20nm~100nm未満である。
【0019】
ケバブ形成の平均繰り返し又は周期は、以下の規定に従って計算される。
・金属蒸着を行った後、走査型電子顕微鏡(「SEM」)を用いてポリオレフィン微孔性膜の表面を観察し、次いで、例えば30,000又は50,000倍の倍率及び1.0kVの加速電圧で表面の画像を撮影する。
・SEM画像の同一の視覚エリア内で、シシケバブ形成が少なくとも0.5μm以上の長さで連続的に延出する少なくとも3つの領域を示す。次いで、示された各領域のケバブ周期を計算する。
・示された各領域においてシシケバブ形成のシシ形成に対して垂直方向に投影することで得られた濃度プロファイル(コントラストプロファイル)のフーリエ変換によって繰り返し周期の平均を計算することにより、ケバブ周期を特定する。
・例えばMATLAB(登録商標)(R2013a)のような一般的な分析ツールを用いて画像を分析する。
・フーリエ変換後に得られたスペクトルプロファイルのうち、短波長領域で検出されたスペクトルはノイズと見なされる。そのようなノイズは主にコントラストプロファイルの変形によって生じる。本発明に従ったセパレータで得られたコントラストプロファイルは、(正弦波でなく)方形波を発生すると思われる。更に、コントラストプロファイルが方形波である場合、フーリエ変換後のプロファイルは正弦関数になるので、真のケバブ周期を示す主ピークの他に、短波長領域において複数のピークを発生する。短波長領域におけるこのようなピークはノイズとして検出することができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される鉛蓄電池のためのセパレータは、シリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、及び沈降非晶質シリカから成る群から選択された充填剤を含む。29Si-NMRによって測定される充填剤中のOH基とSi基との分子比は21:100から35:100の範囲内であり、いくつかの実施形態では23:100から31:100であり、いくつかの実施形態では25:100から29:100であり、いくつかの好適な実施形態では27:100以上である。
【0021】
シラノール基はシリカ構造を結晶構造から非晶質構造に変化させる。これは、Si-Oの比較的硬い共有結合ネットワークが部分的に消失するからである。Si(-O-Si)(-OH)及びSi(-O-Si)(-OH)のような非晶質状シリカは多くの歪みを有し、これらは様々なオイル吸収点として機能し得る。従って、シリカのシラノール基(Si-OH)の量が増大した場合、オイル吸収性は高くなる。更に、本明細書に記載されるセパレータは、既知の鉛蓄電池セパレータと共に使用されるシリカよりも多量のシラノール基及び/又はヒドロキシル基を含むシリカを含む場合、親水性が増大する、及び/又は空隙容積が増大する、及び/又は大きい空隙に囲まれたいくつかの凝集を有する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来のセパレータと比較した本発明の低ERセパレータの一実施形態の孔径分布の図を含む。
図2】従来のセパレータと比較した本発明の一実施形態(「EFS」(Enhanced Flooded Separator(商標)(強化型液式セパレータ))製品と称することがある)の酸化安定性の図を含む。電池過充電試験において、1000時間後、本発明によるセパレータは対照セパレータに比べて脆性が低く、従って高い伸長を示す。
図3】様々なシリカ充填剤によって調製されたセパレータの電気抵抗データの図を含む。シリカ充填剤は固有オイル吸収がそれぞれ異なる。本発明のいくつかの実施形態において、改良されたセパレータは、約175~350ml/100g、いくつかの実施形態では約200~350ml/100g、いくつかの実施形態では約250~350ml/100g、いくつかの別の実施形態では約260~320ml/100gの固有オイル吸収値を有するシリカを用いて形成されるが、他のオイル吸収値も可能である。
図4】様々なプロセスオイルによって調製されたセパレータの電気抵抗データの図を含む。オイルはアニリン点がそれぞれ異なる。
図5】本発明によるセパレータの酸層化(%)対Hg多孔率(%)の図を含む。
図6】ER沸騰対バックウェブ厚さの図を含む。
図7図7は50,000倍の倍率における本発明のセパレータの一実施形態のSEM画像を含む。
図8A図8Aは10,000倍の倍率における同じセパレータのSEM画像である。SEMにおいて、シシケバブ型の形態又はテクスチャ加工の繊維型の構造が観察され、孔及びシリカ構造によっていくつかの空洞又は孔が残されている。ポリマー網(polymer webbing)は著しく少なくなり(場合によってはポリマー網はほとんど存在しない)、疎水性ポリマーの太い繊維又は糸は著しく減っている(場合によっては疎水性ポリマーの太い繊維又は糸はほとんど又は全く存在しない)。
図8B図8Bは10,000倍の倍率における同じセパレータのSEM画像である。
図9A】セパレータ実施形態の孔径分布の図を含む。図9Aは対照セパレータのものである。
図9B】セパレータ実施形態の孔径分布の図を含む。図9Bは本発明の一実施形態に従った望ましい機械特性を有する低ERセパレータのものである。また、図9B図1の一部とみることができる。
図10】本発明に従ったセパレータと従来のセパレータとの様々な孔径測定の比較を含む。図10において、気泡流量の差が有意であるのは、セパレータの貫通孔を測定し、そのような貫通孔によってセパレータを通してイオンを機能的に輸送する能力を測定しているからである。平均孔径及び最小孔径には有意な差がないが、最大孔径は本発明に従ったセパレータの方が大きく、気泡流量は本発明に従ったセパレータの方が有意に大きい。
図11A】本発明の一実施形態に従ったセパレータを通る液体流のポロメトリ(porometry)データ及び図である。
図11B図11Aと比較した対照セパレータを通る液体流を示す。
図12A】Daramic,LLCにより作製された対照セパレータの2つの異なる倍率における2つのSEMを含む。これらのSEMにおいて、疎水性ポリマーの比較的太い繊維又は糸が観察される。
図12B】Daramic,LLCにより作製された対照セパレータの2つの異なる倍率における2つのSEMを含む。これらのSEMにおいて、疎水性ポリマーの比較的太い繊維又は糸が観察される。
図13A】Daramic,LLCにより作製された別の対照セパレータの2つの異なる倍率における2つのSEMを含む。これらのSEMにおいて、ポリマー網に見えるエリアを観察することができる。
図13B】Daramic,LLCにより作製された別の対照セパレータの2つの異なる倍率における2つのSEMを含む。これらのSEMにおいて、ポリマー網に見えるエリアを観察することができる。
図14A】本発明の一実施形態に従って形成されたセパレータのSEMを含み、1又は複数のシシケバブポリマー形成が観察される。
図14B】コントラストプロファイルのフーリエ変換(図14Bの下部のスペクトル)が、セパレータのシシケバブ形成(図14Bの上部のシシケバブ形成を参照のこと)の繰り返し又は周期の決定にどのように役立つかを示す。
図15A】実施例1の本発明のセパレータのSEMを含む。
図15B図15Aに示されてマークされた3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)に実行したFTIRスペクトル試験の結果を示すウェルチパワースペクトル密度推定のグラフを含む。
図15C図15Aに示されてマークされた3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)に実行したFTIRスペクトル試験の結果を示すウェルチパワースペクトル密度推定のグラフを含む。
図15D図15Aに示されてマークされた3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)に実行したFTIRスペクトル試験の結果を示すウェルチパワースペクトル密度推定のグラフを含む。図15Bから図15Dのグラフのx軸は正規化周波数(xπラジアン/サンプル)であり、これらのグラフのy軸はパワー/周波数(dB/ラジアン/サンプル)である。
図16A図15A図15Dと同様であるが、実施例2の本発明のセパレータを表している。
図16B図15A図15Dと同様であるが、実施例2の本発明のセパレータを表している。
図16C図15A図15Dと同様であるが、実施例2の本発明のセパレータを表している。
図16D図15A図15Dと同様であるが、実施例2の本発明のセパレータを表している。
図17A図15A図15Dと同様であるが、実施例3の本発明のセパレータを表している。
図17B図15A図15Dと同様であるが、実施例3の本発明のセパレータを表している。
図17C図15A図15Dと同様であるが、実施例3の本発明のセパレータを表している。
図17D図15A図15Dと同様であるが、実施例3の本発明のセパレータを表している。
図18A図15A図15Dと同様であるが、実施例4の本発明のセパレータを表している。
図18B図15A図15Dと同様であるが、実施例4の本発明のセパレータを表している。
図18C図15A図15Dと同様であるが、実施例4の本発明のセパレータを表している。
図18D図15A図15Dと同様であるが、実施例4の本発明のセパレータを表している。
図19A図15A図15Dと同様であるが、実施例5の本発明のセパレータを表している。
図19B図15A図15Dと同様であるが、実施例5の本発明のセパレータを表している。
図19C図15A図15Dと同様であるが、実施例5の本発明のセパレータを表している。
図19D図15A図15Dと同様であるが、実施例5の本発明のセパレータを表している。
図20A図15A図15Dと同様であるが、比較例1(CE1)のセパレータを表している。
図20B図15A図15Dと同様であるが、比較例1(CE1)のセパレータを表している。
図20C図15A図15Dと同様であるが、比較例1(CE1)のセパレータを表している。
図20D図15A図15Dと同様であるが、比較例1(CE1)のセパレータを表している。
図21A図15A及び図15Bと同様であるが、比較例2のセパレータを表している。
図21B図15A及び図15Bと同様であるが、比較例2のセパレータを表している。
図22】比較例3のセパレータのSEMである。
図23】比較例4及び実施例1のそれぞれの29Si-NMRスペクトルを含む。
図24】CE4及び実施例1のそれぞれのセパレータサンプルにおいてQ:Q:Q比を決定するための図23のスペクトルの成分ピークのデコンボリューションを含む。
図25】試験セパレータを突刺すために用いられる先端部を示す。
図26A】伸長試験サンプルの概略表現図である。
図26B】伸長試験のためのサンプルホルダを示す。
図27】セパレータサンプルがDOに浸漬されている核磁気共鳴(「NMR」)チューブを示す。
図28】HSO溶液のみ、参照セパレータ、発明の実施形態のセパレータ、及びAGMセパレータの、-10℃及びΔ=20msにおける拡散係数を示す。
図29】発明の実施形態の孔径分布を市販のセパレータと比較して示す。
図30】発明の実施形態のセパレータの孔径分布を示す。
図31】発明の実施形態のセパレータ内の新しいシリカ充填剤及び市販のセパレータ内の標準的なシリカの分散を表すチャートである。
図32】標準的なシリカのサイズ及び本発明の実施形態で使用されるシリカのサイズを示す。
図33】超音波処理の前後の新規のシリカのサイズを示す。
図34】超音波処理の前後のシリカサイズを示し、超音波処理の前、30秒の超音波処理後、及び60秒の超音波処理後の、新規のシリカ及び標準的なシリカの粒径分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
組成
本発明のセパレータは、好ましくは、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、PVC、ゴム、合成木材パルプ(SWP:synthetic wood pulp)、ガラス繊維、合成繊維、セルロース繊維、又はそれらの組み合わせ等の天然材料の又は合成材料で作製された多孔性膜であり、更に好ましくは、1つ以上の熱可塑性ポリマーで作製された微孔性膜である。熱可塑性ポリマーは原理上、鉛蓄電池における使用に適した全ての耐酸性熱可塑性材料を含み得る。好適な熱可塑性ポリマーにはポリビニル及びポリオレフィンが含まれる。ポリビニルは、例えばポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)を含む。ポリオレフィンは、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE:ultrahigh molecular weight polyethylene)のようなポリエチレン、及びポリプロピレンを含む。1つの好適な実施形態はUHMWPE及び充填剤を含み得る。一般に、好適なセパレータは、押出機において、充填剤、熱可塑性ポリマー、及び処理可塑剤を混合することによって作製できる。処理可塑剤はプロセスオイルとすることができ、例えば石油、パラフィンベースの鉱油、鉱油、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0024】
微孔性セパレータは、好ましくはポリオレフィンで作製される。ポリオレフィンは例えば、ポリプロピレン、エチレン-ブチンコポリマー、及び、好ましくはポリエチレン、より好ましくは高分子量ポリエチレン、すなわち分子量が少なくとも600,000のポリエチレン、より好ましくは超高分子量ポリエチレン、すなわち分子量が少なくとも1,000,000、特に4,000,000、最も好ましくは5,000,000から8,000,000のポリエチレンであり(粘度測定によって測定され、マーゴリーズの方程式(Margolie’s equation)によって算出される)、標準的負荷メルトインデックス(standard load melt index)が概ねゼロであり(2,160gの標準的負荷を用いてASTM D 1238(条件E)で指定された通
り測定される)、粘度数が600ml/g以上、好ましくは1,000ml/g以上、より好ましくは2,000ml/g以上、最も好ましくは3,000ml/g以上である(130℃においてデカリン100g中ポリオレフィン0.02g溶液で決定される)。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、セパレータは、プロセスオイル及び充填剤と混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)で構成される。少なくとも1つの他の実施形態によれば、セパレータは、プロセスオイル、添加物、及び充填剤と混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)で構成される。
【0026】
いくつかの選択された実施形態によれば、セパレータは、重量で約5~15%のポリマー、いくつかの例では約10%のポリマー、約10~60%の充填剤、いくつかの例では約30%の充填剤、及び約30~80%のプロセスオイル、いくつかの例では約60%のプロセスオイルを組み合わせることによって調製できる。他の実施形態では、充填剤の含有量を低減させると共にオイルの含有量を増大させる、例えば重量で約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、又は70%よりも多くする。充填剤:ポリマーの(重量の)比は、例えば約2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4.0:1、4.5:1、5.0:1、5.5:1、又は6:1である(又は、ほぼこれらの特定の範囲の間とすることができる)。充填剤:ポリマーの(重量の)比は、約1.5:1から約6:1とすることができ、いくつかの例では2:1から6:1、約2:1から5:1、約2:1から4:1、いくつかの例では約2:1から約3:1である。
【0027】
添加物の導入及びバックウェブ厚さ
混合物は、セパレータ技術において一般的である他の添加物又は薬品も少量含み得る。その例としては、界面活性剤、湿潤剤、着色料、帯電防止添加剤、酸化防止剤等、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。混合物は、平坦なシート形状、又は一面もしくは両面にリブもしくは他の突起を有するシート状に押し出すことができる。セパレータを押し出した後、機械プレス又はカレンダスタックもしくはカレンダロールを用いて更に圧縮することができる。プレス又はカレンダは、リブ、溝、鋸歯、鋸歯状リブ、エンボス等を微孔性セパレータに付与するように彫刻を入れることができる。
【0028】
いくつかの選択された実施形態によれば、セパレータのバックウェブ厚さは、約150μm、140μm、130μm、120μm、110μm、100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、又は40μm未満である。いくつかの選択された実施形態において、バックウェブ厚さは、約100~500μm、約150~400μm、約150~350μm、約150~300μm、又は約175~300μm、又は約200~300μmである。いくつかの実施形態では、バックウェブ厚さは約250μmである。他の実施形態では、バックウェブ厚さは約200μmである。更に別の実施形態では、バックウェブ厚さは約400μmである。いくつかの選択された実施形態では、セパレータのバックウェブ厚さは約200±35μm、200~250μm、50~150μm、75~150μm、75~125μm、75~100μm、100~125μm、又は50~100μmである。
【0029】
リブ
いくつかの実施形態において、セパレータは少なくとも一面にリブを有することができる。リブは、折り畳み及び切断ステップ中の処理を容易にし、酸層化を低減し、及び/又は電池システム全体における酸混合を促進すると共に酸拡散を増大させることができる。本発明の少なくとも別の目的によれば、横方向リブ(cross-rib)を有する多孔性膜が提供される。横方向リブは、セパレータの垂直方向の縁部以外の方向に延出するリブのことである。場合によっては、横方向リブは、セパレータのメインリブが延出する方向に対して垂直であるか、又はこれ以外の方向に延出する。いくつかの実施形態では、セ
パレータがメインリブを含まない場合であっても、横方向リブはセパレータ上に存在する。いくつかの実施形態では、メインリブは微孔性膜セパレータの1つの面に配置され、横方向リブ(負側(negative)横方向リブと称されることがある)は微孔性膜セパレータの別の面に配置されている。本発明のいくつかの実施形態では、メインリブ又は主リブは高さが約5μm~約1.5mmの範囲内である。本発明のいくつかの実施形態では、横方向リブのリブ高さは、少なくとも0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、又は1.0mmとすることができる。セパレータの横方向リブの高さは、0.005~1.0mm、0.01~0.5mm、0.025mm~0.5mm、0.05mm~0.5mm、0.075mm~0.5mm、0.1~0.5mm、0.2~0.4mm、0.3~0.5mm、0.4~0.5mmとすることができる。
【0030】
充填材
セパレータは、高い構造形態を有する充填剤を含有することができる。例示的な充填剤は、乾燥微粉シリカ、沈降シリカ、非晶質シリカ、極めてもろいシリカ、アルミナ、タルク、魚粉、魚骨粉等、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの好適な実施形態では、充填剤は1以上のシリカである。高い構造形態とは、増大した表面積のことである。充填剤は大きい表面積を有することができ、例えば表面積は100m/g、110m/g、120m/g、130m/g、140m/g、150m/g、160m/g、170m/g、180m/g、190m/g、200m/g、210m/g、220m/g、230m/g、240m/g、又は250m/gである。いくつかの実施形態では、充填剤(例えばシリカ)の表面積は、100~300m/g、125~275m/g、150~250m/g、又は好ましくは170~220m/gとすることができる。表面積は、多点BET窒素表面積用TriStar3000(商標)を用いて査定することができる。高い構造形態のために充填剤は、製造プロセス中により多くのオイルを保持できる。例えば、高い構造形態の充填剤は高レベルのオイル吸収を有することができ、例えばオイル吸収は、約150ml/100g、175ml/100g、200ml/100g、225ml/100g、250ml/100g、275ml/100g、300ml/100g、325ml/100g、又は350ml/100gである。いくつかの実施形態では、充填剤(例えばシリカ)は、200~500ml/100g、200~400ml/100g、225~375ml/100g、225~350ml/100g、225~325ml/100g、好ましくは250~300ml/100gのオイル吸収を有し得る。いくつかの例では、オイル吸収が266ml/100gであるシリカ充填剤が用いられる。そのようなシリカ充填剤は、水分含有量が5.1%であり、BET表面積が178m/gであり、平均粒径が23μmであり、230メッシュふるい残分値が0.1%であり、バルク密度が135g/Lである。
【0031】
比較的高いレベルのオイル吸収と比較的高いレベルの鉱油に対する親和性を有するシリカは、本明細書に示されるタイプの鉛蓄電池セパレータを形成する場合、ポリオレフィン(ポリエチレン等)及び鉱油の混合物中で望ましく分散性となる。過去に、一部のセパレータでは、そのようなセパレータ又は膜を作製するため多量のシリカを使用する場合、シリカ凝集に起因して分散性が低いという欠点があった。本明細書に図示され記載される本発明のセパレータの少なくともいくつかでは、溶融ポリオレフィンの冷却時にポリオレフィンの分子運動を阻害するシリカ凝集又は塊(agglomerate)がほとんど存在しないので、ポリエチレン等のポリオレフィンはシシケバブ構造を形成する。これは全て、作製されるセパレータ膜中のイオン透過性の向上に寄与する。シシケバブ構造又は形態の形成は、全体的なERの低いセパレータを生成しながら、機械的強度が維持され、ひいては改善されることを意味する。
【0032】
いくつかの選択された実施形態では、充填剤は平均粒径が25μm以下であり、いくつかの例では、22μm、20μm、18μm、15μm、又は15μm以下である。いくつかの例では、充填剤粒子(シリカ等)の平均粒径は15~25μmである。シリカ充填剤の粒径は、シリカのオイル吸収及び/又はシリカ充填剤の表面積に寄与する。
【0033】
いくつかの好適な実施形態において、本発明のセパレータを作製するため用いられるシリカは、鉛蓄電池セパレータを作製するため以前用いられたシリカ充填剤に比べ、表面シラノール基(表面ヒドロキシル基)の量又は数が増大している。例えば、本明細書のいくつかの好適な実施形態と共に使用され得るシリカ充填剤は、既知のポリオレフィン鉛蓄電池セパレータを作製するため用いられる既知のシリカ充填剤に比べ、シラノール及び/又はヒドロキシル表面基が少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも35%多いシリカ充填剤とすることができる。
【0034】
シラノール基(Si-OH)と元素シリコン(Si)との比(Si-OH)/Siは、例えば以下のように測定することができる。
【0035】
1.ポリオレフィン微孔性膜を凍結粉砕し(いくつかの発明の膜は本発明に従った様々なオイル吸収シリカを含む)、粉末状サンプルを固体核磁気共鳴分光分析(29Si-NMR)のために調製する。
【0036】
2.粉末状サンプルに29Si-NMRを実行し、ヒドロキシル基に直接結合しているSiスペクトル強度(スペクトル:Q及びQ)と酸素原子に直接結合しているSiスペクトル強度(スペクトル:Q)とを含むスペクトルを観察する。各NMRピークスペクトルの分子構造は以下のように表すことができる。
・Q:(SiO)-Si*-(OH):2つのヒドロキシル基を有する
・Q:(SiO)-Si*-(OH):1つのヒドロキシル基を有する
・Q:(SiO)-Si*:全てのSi結合はSiOである
ここで、Si*はNMR観察によって元素と証明される。
【0037】
3.観察に用いた29Si-NMRの条件は以下の通りである。
・機器:Bruker BioSpin Abance 500
・共鳴周波数:99.36MHz
・サンプル量:250mg
・NMRチューブ:直径7m
・観察法:DD/MAS
・パルス幅:45度
・繰り返し時間:100秒
・スキャン:800
・マジック角回転:5,000Hz
・化学シフト基準:シリコーンゴム(-22.43ppm)(外部基準)
【0038】
4.数値的に、スペクトルのピークを分離し、Q、Q、及びQに属する各ピークの面積比を計算する。その後、これらの比に基づいて、Siに直接結合しているヒドロキシル基(-OH)のモル比を計算する。数値ピーク分離の条件は以下のように実施される。
・適合領域:-80~-130ppm
・初期ピークトップ:Qでは-93ppm、Qでは-101ppm、Qでは-111ppm
・初期半値幅:Qでは400Hz、Qでは350Hz、Qでは450Hz
・ガウス関数比:初期80%、適合中70~100%
【0039】
5.Q、Q、及びQのピーク面積比(合計は100)は、適合により得られた各ピークに基づいて計算される。NMRピーク面積は、各シリケート結合構造の分子数に対応した(このため、QNMRピークでは、そのシリケート構造内に4つのSi-O-Si結合が存在する。QNMRピークでは、そのシリケート構造内に3つのSi-O-Si結合が存在し、1つのSi-OH結合が存在する。QNMRピークでは、そのシリケート構造内に2つのSi-O-Si結合が存在し、2つのSi-OH結合が存在する)。従って、Q、Q、及びQのそれぞれのヒドロキシル基(-OH)の数を、2、1、及び0で乗算する。これら3つの結果を合計する。合計値は、Siに直接結合しているヒドロキシル基(-OH)のモル比を示す。
【0040】
いくつかの選択された実施形態では、上述の充填剤の使用によって、押し出しステップ中に使用するプロセスオイルの割合を高めることが可能となる。セパレータの多孔性構造は部分的に押し出し後のオイル除去によって形成されるので、初期のオイル吸収量が多いと、より高い多孔率又はより高い空隙容積が生じる。プロセスオイルは押し出しステップの不可欠の要素であるが、オイルはセパレータの非伝導要素である。セパレータ内の残留オイルは、セパレータが正極と接触した場合にこれを酸化から保護する。従来のセパレータの製造では、処理ステップにおける正確なオイル量を制御することができる。一般的に言えば、従来のセパレータは、重量で50~70%のプロセスオイル、いくつかの実施形態では55~65%、いくつかの実施形態では60~65%、いくつかの実施形態では約62%の重量でプロセスオイルを用いて製造される。オイルを約59%未満に減らすと、押出機の構成要素に対する摩擦が増大するため燃焼(burning)が生じることが知られている。しかしながら、オイルを規定量よりも著しく増やすと、乾燥段階中に収縮が生じ、寸法の不安定さを招く可能性がある。オイル含有量を増大させるこれまでの試みはオイル除去中に孔の収縮又は凝縮を生じたが、本明細書に開示されるように調製されたセパレータでは、オイル除去中に観察される収縮及び凝縮は、生じるとしても最小限である。従って、孔径及び寸法安定性を損なうことなく多孔率を増大させ、これによって電気抵抗を低減することができる。
【0041】
いくつかの選択された実施形態では、上述の充填剤の使用によって、完成セパレータにおける最終オイル濃度の低下が可能となる。オイルは不導体であるので、オイル含有量の低減はセパレータのイオン伝導度を増大させ、セパレータのERの低下を促進することができる。このため、最終オイル含有量が低減したセパレータは高い効率を有することができる。いくつかの選択された実施形態では、最終プロセスオイル含有量が(重量で)20%未満、例えば約14%から20%、いくつかの特定の実施形態では19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、又は5%未満のセパレータが提供される。
【0042】
もろさ(friability)
いくつかの選択された実施形態では、充填材はアルミナ、タルク、シリカ、又はそれらの組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態では、充填剤は沈降シリカとすることができ、いくつかの実施形態では沈降シリカは非晶質シリカである。いくつかの実施形態では、セパレータ全体にわたる充填剤の微細分散を可能とするシリカの凝集及び/又は塊を用いることで、ねじれ及び電気抵抗を低減させることが好ましい。いくつかの好適な実施形態では、充填剤(例えばシリカ)は高レベルのもろさによって特徴付けられる。良好なもろさは、微孔性膜の押し出し中にポリマー全体にわたる充填剤の分散を向上させるので、多孔率が増大し、従ってセパレータを介した全体的なイオン伝導度が増大する。
【0043】
もろさは、シリカ粒子又は材料(凝集又は塊)が、より小さく、より分散性の粒子、小
片、又は要素に分解される能力、傾向、又は性質として測定され得る。図34の左側に示されているように、この新規のシリカは標準的なシリカよりももろい(30秒及び60秒の超音波処理の後、より小さい小片に分解される)。例えばこの新規のシリカは、50体積%粒径が0秒超音波処理で24.90umであり、30秒で5.17umであり、60秒で0.49umであった。従って、50体積%シリカ粒子の大きさ(直径)は、30秒超音波処理では50%超縮小し、60秒では75%超縮小した。従って、「大きいもろさ」の1つの好適な定義として可能であるのは、シリカ粒子の30秒の超音波処理で(又は、膜を形成するための樹脂シリカ混合物の処理において)平均サイズ(直径)が少なくとも50%縮小すること、及び60秒の超音波処理で平均サイズ(直径)が少なくとも75%縮小することである。少なくともいくつかの実施形態では、更にもろいシリカを使用することが好適である場合があり、更に、もろく、かつ、もろさにおいて2モード(bi-modal)又は3モード(tri-modal)のような多モード(multi-modal)のシリカを用いることが好適であり得る。図34を参照すると、標準的なシリカはもろさ又は粒径分布において単一モードに見えるが、新規のシリカは更にもろく、かつ、30秒の超音波処理で2モード(2ピーク)、60秒の超音波処理で3モード(3ピーク)に見える。このようなもろく多モード粒径の1又は複数のシリカは、膜及びセパレータ特性の向上を与えることができる。
【0044】
上記の特徴のうち1つ以上を有する充填剤を使用することで、より高い最終多孔率のセパレータの生成が可能となる。本明細書に開示されるセパレータは、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、又は70%の最終多孔率を有することができる。多孔率はガス吸収法によって測定され得る。多孔率はBS-TE-2060によって測定することができる。
【0045】
いくつかの選択された実施形態では、微孔性セパレータは、より大きい孔をより高い割合で有しながら、約1μm、0.9μm、0.8μm、0.7μm、0.6μm、0.5μm、又は0.1μm以下の平均孔径を維持することができる。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、セパレータは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)等のポリエチレンで構成され、プロセスオイル及び充填剤、並びに任意の所望の添加物が混合されている。少なくとも1つの他の実施形態によれば、セパレータは超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)で構成され、プロセスオイル及びタルクが混合されている。少なくとも1つの他の実施形態によれば、セパレータはUHMWPEで構成され、プロセスオイル及びシリカが混合されている。シリカは例えば沈降シリカであり、例えば非晶質沈降シリカである。上述の技法のうち1つ以上によって添加物をセパレータに適用することができる。
【0047】
電気抵抗の低減及びCCAの増大の他に、好適なセパレータは他の利点も得るように設計されている。組み立てに関して、セパレータは容易に処理機器を通過し、従って効率的に製造される。高速組み立て中、及び寿命の後半段階での短絡を防ぐため、セパレータは標準的なPEセパレータに比べて優れた突刺し強度(puncture strength)及び耐酸化性を有する。電気抵抗の低減及びCCAの増大と組み合わせて、電池製造業者は、これらの新しいセパレータを用いる電池において改善した持続的な電気的性能を得られる可能性がある。
【0048】
電気抵抗
いくつかの選択された実施形態において、開示されるセパレータは、低下した電気抵抗を示す。例えば、電気抵抗は約200mΩ・cm、180mΩ・cm、160mΩ・cm、140mΩ・cm、120mΩ・cm、100mΩ・cm、80mΩ・cm、60mΩ・cm、50mΩ・cm、40mΩ・cm、30mΩ・cm、又
は20mΩ・cm以下である。様々な実施形態において、本明細書に記載されるセパレータは、同じ厚さの既知のセパレータに比べて20%以上のER低減を示す。例えば既知のセパレータは60mΩ・cmのERを有し得る。従って、本発明に従った同じ厚さのセパレータは約48mΩ・cm未満のER値を有する。
【0049】
本発明に従ってER試験評価のためサンプルセパレータを試験するには、最初にこれを調製しなければならない。これを行うため、サンプルセパレータを好ましくは脱塩水槽に浸漬し、次いで水を沸騰させ、沸騰している脱塩水槽内に10分置いた後、セパレータを取り出す。取り出した後、セパレータから余分な水を振り落とし、次いで27℃±1℃で比重が1.280の硫酸槽に入れる。硫酸槽に20分間セパレータを浸す。この時点でセパレータは電気抵抗の試験の準備ができている。
【0050】
突刺し抵抗
いくつかの選択された実施形態において、例示的なセパレータは突刺し抵抗の増大によって特徴付けることができる。例えば突刺し抵抗は、約9N以上、9.5N以上、10N以上、10.5N以上、11N以上、11.5N以上、12N以上、12.5N以上、13N以上、13.5N以上、14N以上、14.5N以上、15N以上、15.5N以上、16N以上、16.5N以上、17N以上、17.5N以上、18N以上、18.5N以上、19N以上、19.5N以上、又は20N以上である。いくつかの実施形態において、例示的なセパレータは好ましくは、約9N~20N以上、又はより好ましくは約12N~20N以上の突刺し抵抗によって規定され得る。
【0051】
突刺し抵抗は、全体として図25に示されているような先端部100を用いて多孔性膜を突刺すために必要な力として測定できる。先端部100が膜を突刺す際に多孔性膜が支持されている突刺しベースは概ね、6.5mmの直径及び10mmの深さの直線状の孔を有するベースとして記述され得る。先端部の移動限界は、突刺しベース表面よりも約4mm~8mm下であり得る。突刺し先端部100は、約5mm/sの速度で膜内へ直線的に移動する。
【0052】
添加物
セパレータは、界面活性剤、湿潤剤、着色料、帯電防止添加剤、酸化防止剤等、及びそれらの任意の組み合わせのような、1つ以上の性能強化添加物を含み得る。性能強化添加物は、好ましくは界面活性剤とすることができる。いくつかの適切な界面活性剤は非イオン性であるが、他の適切な界面活性剤はアニオン性である。本明細書に記載される本発明のセパレータとこれらの特定の適切な界面活性剤を併用すると、更に改良されたセパレータを得ることができ、これを鉛蓄電池で使用した場合、その鉛蓄電池に水分損失の低減を与えることができる。適切な界面活性剤は、アルキル硫酸塩;アルキルアリールスルホン酸塩;アルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物;石けん;アルキル-ナフタレン-スルホン酸塩;アニオン性スルホサクシネート等の1つ以上のスルホサクシネート;スルホサクシネート塩のジアルキルエステル;第4級アミン;酸化エチレン及び酸化プロピレンのブロックコポリマー;モノ及びジアルキルリン酸エステル塩のような界面活性剤を含む。添加物は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシレートエステル、ポリエトキシレートアルコール、アルキルポリグリコシド及びそのブレンド等のアルキル多糖、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、有機ケイ素系の界面活性剤、エチレンビニルアセテートターポリマー、エトキシレートアルキルアリールリン酸エステル、及び蔗糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤とすることができる。
【0053】
電池セパレータに、様々な方法で、1又は複数の添加物、1又は複数の薬品、及び/又は1又は複数の充填剤を提供することができる。1又は複数の添加物は、例えばセパレータが完成したら(例えば可塑剤(例えばプロセスオイル)の抽出後に)セパレータに適用
することができ、及び/又は、セパレータを押し出して最終的に生成するため使用される混合物に追加することができる。いくつかの好適な実施形態によれば、添加物又は添加物の溶液がセパレータの表面に適用される。この変形は特に、非熱安定性の添加物、及び、後の抽出において使用される溶媒に溶解する添加物を適用する場合に適している。本発明による添加物のための溶媒として特に適切なのは、メタノール及びエタノール等の低分子量アルコール、並びにこれらのアルコールと水の混合物である。適用は、セパレータの負極に対向する側、正極に対向する側、又は両側に行うことができる。また、適用は、溶媒槽内で孔形成剤の抽出中に行うことも可能である。
【0054】
本発明に従ったセパレータのいくつかの実施形態は、非イオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤のような添加物を組み込んでいない。他の実施形態では、添加物(非イオン性界面活性剤、又はアニオン性界面活性剤)は、少なくとも0.5g/m、1.0g/m、1.5g/m、2.0g/m、2.5g/m、3.0g/m、3.5g/m、4.0g/m、4.5g/m、5.0g/m、5.5g/m、6.0g/m、6.5g/m、7.0g/m、7.5g/m、8.0g/m、8.5g/m、9.0g/m、9.5g/m、又は10.0g/mの密度で存在し得る。添加物は、0.5~10g/m、1.0~10.0g/m、1.5~10.0g/m、2.0~10.0g/m、2.5~10.0g/m、3.0~10.0g/m、3.5~10.0g/m、4.0~10.0g/m、4.5~10.0g/m、5.0~10.0g/m、5.5~10.0g/m、6.0~10.0g/m、6.5~10.0g/m、7.0~10.0g/m、7.5~10.0g/m、5.0~10.5g/m、5.0~11.0g/m、5.0~12.0g/m、又は5.0~15.0g/mの密度でセパレータ上に存在し得る。
【0055】
また、適用は、電池セパレータを添加物又は添加物の溶液(溶媒槽追加)に浸し、その後任意選択的に、例えば乾燥によって溶媒を除去することにより行うことも可能である。このように、添加物の適用を、例えばセパレータ生成中に適用されることが多い抽出と組み合わせることができる。他の好適な方法は、セパレータの表面に添加物をスプレーすること、又はセパレータの表面に添加物をローラコーティングもしくはカーテンコーティングすることである。
【0056】
別の好適な選択肢は、熱可塑性ポリマーと、任意選択的に充填剤と、電池セパレータの生成に使用される他の薬品又は添加物との混合物に、1又は複数の添加物を混合することである。次いで、添加物を含有する均一混合物をウェブ形状材料に形成する。
【0057】
いくつかの実施形態では、例示的なセパレータは1つ以上の性能強化添加物を含み得る。性能強化添加物は、界面活性剤、湿潤剤、着色料、帯電防止添加剤、UV保護添加物、酸化防止剤等、及びそれらの任意の組み合わせとすることができる。
【0058】
いくつかの適切な界面活性剤は非イオン性であるが、他の適切な界面活性剤はアニオン性である。添加物は単一の界面活性剤とするか、又は2つ以上の界面活性剤の混合物、例えば2つ以上のアニオン性界面活性剤、2つ以上の非イオン性界面活性剤、又は少なくとも1つのイオン性界面活性剤と少なくとも1つの非イオン性界面活性剤との混合物とすることができる。選択された適切な界面活性剤は、HLB値が6未満であり、好ましくは3未満であり得る。本明細書に記載される本発明のセパレータとこれらの特定の適切な界面活性剤を併用すると、更に改良されたセパレータを得ることができ、これを鉛蓄電池で使用した場合、その鉛蓄電池に、水分損失の低減、アンチモン中毒の低減、サイクリングの改善、浮動電流の低減、浮遊電位の低減等、又はそれらの任意の組み合わせを与えることができる。適切な界面活性剤は、アルキル硫酸塩;アルキルアリールスルホン酸塩;アルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物;石けん;アルキル-ナフタレン-スル
ホン酸塩;アニオン性スルホサクシネート等の1つ以上のスルホサクシネート;スルホサクシネート塩のジアルキルエステル;アミノ化合物(第1級、第2級、又は第3級アミン;第4級アミン;酸化エチレン及び酸化プロピレンのブロックコポリマー;様々なポリエチレン酸化物;モノ及びジアルキルリン酸エステル塩のような界面活性剤を含む。添加物は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシレートエステル、ポリエトキシレートアルコール、アルキルポリグリコシド及びそのブレンド等のアルキル多糖、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、有機ケイ素系の界面活性剤、エチレンビニルアセテートターポリマー、エトキシレートアルキルアリールリン酸エステル、及び蔗糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0059】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、本発明のセパレータに、アニオン性又はイオン性の界面活性剤を更に少ない量だけ加えるか、又はほとんどもしくは全く加えない。そのような場合、本発明のセパレータのERは、より多くのアニオン性又は非イオン性界面活性剤を含む本発明のセパレータよりもわずかに高くなり得る。しかしながら、全有機体炭素の低減という望ましい特徴(界面活性剤量の低減による)と組み合わせて既知のセパレータに対するERの低下を組み合わせることで、そのような実施形態に従って所望の発明のセパレータを生成することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、添加物は式(I)の化合物によって表すことができる。
【0061】
【数1】
【0062】
・Rは、炭素原子数が10~4200、好ましくは13~4200である非芳香族炭化水素ラジカルであり、酸素原子によって分断され得る。
・Rは、H、-(CHCOOMX+ 1/X、又は-(CH-SOX+ 1/Xであり、好ましくはHである。ここで、k=1又は2である。
・Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、H、又はNH4である。ここで、変数Mの全てが同時にHの意味を持つわけではない。
・n=0又は1である。
・m=0又は10~1400までの整数である。
・x=1又は2である。
【0063】
式(I)に従った化合物における酸素原子と炭素原子との比は、1:1.5~1:30の範囲内であり、m及びnが同時に0になることはできない。しかしながら、好ましくは、変数n及びmのうち一方だけが0とは異なる。
【0064】
非芳香族炭化水素ラジカルとは、芳香族の基を含まないか、又はそれら自身が1を表すラジカルを意味する。炭化水素ラジカルは酸素原子によって分断され得る、すなわち1以上のエーテル基を含有し得る。
【0065】
Rは好ましくは、酸素原子によって分断され得る直鎖又は分岐脂肪族炭化水素ラジカルである。飽和非架橋炭化水素ラジカルは特に、極めて好ましい。
【0066】
電池セパレータの生成に式(I)の化合物を用いることによって、そのようなセパレータを酸化破壊に対して効果的に保護することができる。
【0067】
式(I)に従った化合物を含む電池セパレータが好ましい。ここで、
・Rは、炭素原子数が10~180、好ましくは12~75、特に好ましくは14~4
0の炭化水素ラジカルであり、1~60、好ましくは1~20、極めて好ましくは1~8の酸素原子によって分断され得る。特に好ましくは、これは、式R-[(OC(OC]-の炭化水素ラジカルである。ここで、
・Rは、炭素原子が10~30、好ましくは12~25、特に好ましくは14~20のアルキルラジカルである。
・Pは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数である。
・qは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数である。
・pとqの和が0~10、特に0~4である化合物が特に好ましい。
・n=1である。
・m=0である。
【0068】
式R-[(OC(OC]-は、角括弧内の基の順序がここに示す順序とは異なる化合物も含むものと理解するべきである。例えば、本発明によれば、(OC)基及び(OC)基を入れ替えて括弧内のラジカルが形成された化合物が適している。
【0069】
が、炭素原子数が10~20、好ましくは14~18の直鎖又は分岐アルキルラジカルである添加物は、特に有利であることが証明されている。OCは、好ましくはOCHCHを表し、OCは、OCH(CH及び/又はOCHCHCHを表す。
【0070】
好適な添加物として、特に、アルコール(p=q=0、m=0)第1級アルコールが特に好ましく、脂肪アルコールエトキシレート(p=1~4、q=0)、脂肪アルコールプロポキシレート(p=0、q=1~4)、及び、第1級アルコールの脂肪アルコールアルコキシレート(p=1~2、q=1~4)エトキシレートが好ましいと言うことができる。脂肪アルコールアルコキシレートは、例えば、対応するアルコールと酸化エチレン又は酸化プロピレンとの反応によって入手可能である。
【0071】
水及び硫酸に溶けないか又は部分的にしか溶けないm=0のタイプの添加物は、特に有利であることが証明されている。
【0072】
また、式(I)に従った化合物を含有する添加物も好適である。ここで、
・Rは、炭素原子が20~4200、好ましくは50~750、特に好ましくは80~225のアルカンラジカルである。
・Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、H、又はNH4であり、特に、Li、Na、及びK、又はHのアルカリ金属イオンである。ここで、変数Mの全てが同時にHの意味を持つわけではない。
・n=0である。
・m=10~1400の整数である。
・x=1又は2である。
【0073】
いくつかの実施形態では、適切な添加物として、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸-メタクリル酸コポリマーであって、酸基が少なくとも部分的に、例えば好ましくは40%、特に好ましくは80%中和されたものが挙げられる。この割合は酸基の数を指す。極めて好ましいのは、全体的に塩の形態で存在するポリ(メタ)アクリル酸である。適切な塩は、Li、Na、K、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Zn、及びアンモニア(NR、ここでRは水素又は炭素官能基である)を含む。ポリ(メタ)アクリル酸は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸-メタクリル酸コポリマーを含み得る。ポリ(メタ)アクリル酸は好適であり、特に平均モル質量Mが1,000~100,000g/モル、特に好ましくは1,000~15,000g/モル、極
めて好ましくは1,000~4,000g/モルのポリアクリル酸が好適である。ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー及びコポリマーの分子量は、水酸化ナトリウム溶液で中和されたポリマーの1%水溶液の粘度を測定することにより確かめられる(フィケンチャーの定数)。
【0074】
また、(メタ)アクリル酸のコポリマー、特に、(メタ)アクリル酸の他に、エチレン、マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及び/又はアクリル酸エチルヘキシルをコモノマーとして含有するコポリマーも適している。少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも80重量%の(メタ)アクリル酸モノマーを含有するコポリマーが好ましい。この割合は酸性型のモノマー又はポリマーに基づいている。
【0075】
ポリアクリル酸ポリマー及びコポリマーを中和するには、アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化カリウム、特に水酸化ナトリウムが特に適している。更に、セパレータを強化するためのコーティング及び/又は添加物は、例えば金属アルコキシドを含み得る。この場合の金属は、単なる例示として(限定は意図していない)、Zn、Na、又はAlとすることができ、単なる例示としてナトリウムエトキシドである。
【0076】
微孔性ポリオレフィンに、様々な方法で1又は複数の添加剤を提供することができる。添加物は、例えばポリオレフィンが完成したら(例えば抽出後に)ポリオレフィンに適用することができ、又は、ポリオレフィンを生成するため使用される混合物に追加することができる。好適な実施形態によれば、添加物又は添加物の溶液がポリオレフィンの表面に適用される。この変形は特に、非熱安定性の添加物、及び、後の抽出において使用される溶媒に溶解する添加物を適用する場合に適している。本発明による添加物のための溶媒として特に適切なのは、メタノール及びエタノール等の低分子量アルコール、並びにこれらのアルコールと水の混合物である。適用は、セパレータの負極に対向する側、正極に対向する側、又は両側に行うことができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリオレフィン多孔性膜は、そのような層の一面又は両面にコーティングを含み得る。このようなコーティングは界面活性剤又は他の材料を含み得る。いくつかの実施形態において、コーティングは例えば、援用により本願に含まれる米国特許公報第2012/0094183号に記載されている1つ以上の材料を含むことができる。そのようなコーティングは、例えば電池システムの過充電電圧を低減させることによって、格子腐食を抑制しながら電池寿命を延長すると共に、ドライアウト及び/又は水分損失を防止することができる。
【0078】
拡散
いくつかの選択された実施形態において、例示的なセパレータは高い拡散率を有するものと規定され得る。拡散率は、イオンがセパレータを通過できる率として測定され、従ってセパレータを介したイオン流量を記述することができる。セパレータの多孔率が高くなればなるほど、拡散係数が高くなると考えられる。パルス磁場勾配スピンエコー(「PFGSE:Pulsed Field Gradient Spin Echo」)を用いてDO拡散を分析することができる。拡散係数を求めるため、オイルが抽出されていないセパレータサンプルがDOに前もって浸される。全体として図27に示されているように、セパレータサンプルは、DOに浸漬した核磁気共鳴(「NMR」)チューブに積み重ねられる。NMRチューブは気泡を除去するため真空下に置かれ、垂直方向の(セパレータサンプルを介した)拡散係数が監視される。
【0079】
以下のように、Stejskalの式を用いて拡散を計算することができる。
【0080】
【数2】
【0081】
EはNMR信号ピーク強度であり、
γは磁気スピン比であり(核種に依存する)、
gは磁場勾配であり、
δは磁場勾配の印加時間である。
更に、以下が成り立つ。
【0082】
【数3】
【0083】
はセパレータ内部の分子の拡散係数であり、
は溶液中の分子の拡散係数であり、
εは多孔率であり、
τは孔ねじれの指標である。
【0084】
以下の表1は、対照セパレータ、本発明の実施形態、及び4つの市販のセパレータの、Δ=20ms並びに-10℃及び30℃における様々な拡散係数値を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
図28は、HSO溶液のみ、参照セパレータ、本発明の実施形態のセパレータ、及びAGMセパレータの、-10℃及びΔ=20msにおける拡散係数を示す。
【0087】
図29は、本発明の実施形態の孔径分布を市販のセパレータ#1と比較して示す。これは、本発明の実施形態の平均孔径が120nmであり、市販のセパレータの平均孔径がわずか109nmであることを示している。
【0088】
図30は、本発明の実施形態のセパレータの孔径分布を示す。図31は、本発明の実施形態のセパレータ内の新しいシリカ充填剤及び市販のセパレータ#1内の標準的なシリカの分散を表すチャートを示している。ボックスプロットは、第1四分位数(Q1)と第3四分位数(Q3)との間の分布を表す。このチャートでは、値が低くなればなるほど、シリカ分布は良好になる。
【0089】
もろさ
いくつかの選択された実施形態では、例示的なセパレータは、市販のセパレータで使用されるものに比べてもろさが大きいシリカを利用できる。もろさの大きいシリカは、セパレータ内のシリカの分散性を増大させると考えられ、これによって、より多くのオイルがセパレータの形成中に浸透することが可能となり、オイルが抽出された後にセパレータ内
で良好な孔分布が得られる。主要シリカ粒径を小さくすると粒子凝集の増大が生じ、これはオイル吸収を増大させると考えられる。これは、低く狭い粒径分布と共に、平均孔径の縮小と孔容積の増大をもたらす。好適であると考えられる実施形態では、シリカ処理中にシリカ率(silica modulus)が高く(SiO/NaO)、ケイ酸ナトリウム濃度が増大している。
【0090】
図32は、標準的なシリカのサイズ及び本発明の実施形態で使用されるシリカのサイズを示している。図からわかるように、新規のシリカの方が小さい粒径を有する。シリカのもろさを決定する1つの方法は、シリカに超音波周波数(20kHz超)を与えることである。図33は超音波処理の前後のシリカのサイズを示し、図34は、超音波処理の前、30秒の超音波処理後、及び60秒の超音波処理後の、新規のシリカ及び標準的なシリカの粒径分布を示す。
【0091】
本開示に従った例示的なセパレータは、HSO中での高い収縮値も示す。下の表2はこれらの値を示している。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例
以下の実施例は、本発明の少なくとも選択されたセパレータ実施形態を更に説明する。
【0094】
いくつかの実施形態では、以下の沈降シリカを用いて本発明に従ったセパレータを得ることができる。
【0095】
粒径中央値20.48μm、平均粒径24.87μm(Coulter LS230を用いて測定した)
【0096】
セパレータの調製において、以下の特徴を有する下の表3に示すシリカサンプルを用いた。
【0097】
【表3】
【0098】
上記のシリカを用いて作製したポリエチレンセパレータは、下の表4及び表5に示す以下の特性を有した。
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
更に、別の実施形態では、下の表6に示す以下のシリカ充填剤を、下の表7に示すセパレータにおいて用いた。
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
別の実施例
以下の実施例のセットでは、本発明の様々な実施形態に従って発明の強化型液式セパレータを作製し、対照セパレータと比較して試験を行った。結果を下の表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
上の表8の結果は、実施例AのセパレータのERが対照セパレータAに比べてほぼ20%低かったことを示している。同様に、実施例BのセパレータのERは対照セパレータAに比べて20%超低かった。こういった望ましい低いERの結果は、本発明のセパレータA及びBの多孔率百分率がそのようなセパレータの多孔率の許容差(60%±7.5%)内であったにもかかわらず生じた。従って、セパレータの新規かつ予想外の孔構造は、既知のセパレータの多孔率と一致した(それよりも著しく高くない)セパレータの多孔率百分率と組み合わされたERの低下に寄与した。
【0107】
追加の実施例
本発明に従っていくつかのセパレータを形成した。それらのセパレータを比較用のセパレータと比較した。本発明のセパレータのSEMによって本発明のセパレータのシシケバブ形成を撮像した。
【0108】
実施例1
実施例1では、本発明に従って、UHMWPE、シリカ、及びオイルを用いて、バックウェブ厚さが250μmの強化型液式セパレータを作製した。使用したシリカは高オイル吸収シリカであった。本発明の低ERセパレータのSEMを撮った。図15Aを参照のこと。
【0109】
図15AのSEM、すなわち実施例1のセパレータのSEMにおいて、それぞれ1、2、及び3と番号を付けた3つのシシケバブ領域を識別した。次いで、3つのシシケバブ領
域の各々のFTIRスペクトルプロファイルを取得した。図15Bから図15Dを参照のこと。実施例1のセパレータの図15AのSEMの3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)の各々で取得したFTIRスペクトルは、下の表9に示す、シシケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期又は繰り返しを明らかにした。
【0110】
【表9】
【0111】
最終的に、シシケバブ形態又は構造の平均繰り返し又は周期63nmが得られた。
【0112】
実施例2
更に実施例2では、本発明に従って、上記の実施例1と同様に、UHMWPE、シリカ、及びオイルを用いて、バックウェブ厚さが200μmの強化型液式セパレータを作製した。使用したシリカは高オイル吸収シリカであった。本発明の低ERセパレータのSEMを撮った。図16Aを参照のこと。
【0113】
図16AのSEM、すなわち実施例2のセパレータのSEMにおいて、それぞれ1、2、及び3と番号を付けた3つのシシケバブ領域を識別した。次いで、3つのシシケバブ領域の各々のFTIRスペクトルプロファイルを取得した。図16Bから図16Dを参照のこと。実施例2のセパレータの図16AのSEMの3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)の各々で取得したFTIRスペクトルは、下の表10に示す、シシケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期又は繰り返しを明らかにした。
【0114】
【表10】
【0115】
最終的に、シシケバブ形態又は構造の平均繰り返し又は周期63nmが得られた。
【0116】
実施例3
実施例3では、本発明に従って、上記の実施例1と同様に、UHMWPE、シリカ、及びオイルを用いて、バックウェブ厚さが250μmの強化型液式セパレータを作製した。使用したシリカは高オイル吸収シリカであった。本発明の低ERセパレータのSEMを撮った。図17Aを参照のこと。
【0117】
図17AのSEM、すなわち実施例3のセパレータのSEMにおいて、それぞれ1、2、及び3と番号を付けた3つのシシケバブ領域を識別した。次いで、3つのシシケバブ領域の各々のFTIRスペクトルプロファイルを取得した。図17Bから図17Dを参照のこと。実施例3のセパレータの図17AのSEMの3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)の各々で取得したFTIRスペクトルは、下の表11に示す、シシケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期又は繰り返しを明らかにした。
【0118】
【表11】
【0119】
最終的に、シシケバブ形態又は構造の平均繰り返し又は周期74nmが得られた。
【0120】
実施例4
実施例4では、本発明に従って、上記の実施例1と同様に、UHMWPE、シリカ、及びオイルを用いて、バックウェブ厚さが250μmの強化型液式セパレータを作製した。使用したシリカは高オイル吸収シリカであった(上記の実施例1~3で使用したシリカとは異なる高オイル吸収シリカ。実施例1~5のセパレータを作製するため使用した高オイル吸収シリカの各々は約230~約280ml/100gの範囲である)。本発明の低ERセパレータのSEMを撮った。図18Aを参照のこと。
【0121】
図18AのSEM、すなわち実施例4のセパレータのSEMにおいて、それぞれ1、2、及び3と番号を付けた3つのシシケバブ領域を識別した。次いで、3つのシシケバブ領域の各々のFTIRスペクトルプロファイルを取得した。図18Bから図18Dを参照のこと。実施例4のセパレータの図18AのSEMの3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)の各々で取得したFTIRスペクトルは、下の表12に示す、シシケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期又は繰り返しを明らかにした。
【0122】
【表12】
【0123】
最終的に、シシケバブ形態又は構造の平均繰り返し又は周期55nmが得られた。
【0124】
実施例5
この実施例5では、本発明に従って、上記の実施例1と同様に、UHMWPE、シリカ、及びオイルを用いて、バックウェブ厚さが250μmの強化型液式セパレータを作製した。使用したシリカは高オイル吸収シリカであった(上記の実施例1~3で使用したシリカ及び上記の実施例4で使用したシリカとは異なる高オイル吸収シリカ)。本発明の低ERセパレータのSEMを撮った。図19Aを参照のこと。
【0125】
図19AのSEM、すなわち実施例5のセパレータのSEMにおいて、それぞれ1、2、及び3と番号を付けた3つのシシケバブ領域を識別した。次いで、3つのシシケバブ領域の各々のFTIRスペクトルプロファイルを取得した。図19Bから図19Dを参照のこと。実施例5のセパレータの図19AのSEMの3つのシシケバブ領域(番号1、2、及び3)の各々で取得したFTIRスペクトルは、下の表13に示す、シシケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期又は繰り返しを明らかにした。
【0126】
【表13】
【0127】
最終的に、シシケバブ形態又は構造の平均繰り返し又は周期61nmが得られた。
【0128】
比較例1
バックウェブ厚さが250μmである比較用のポリエチレン鉛蓄電池セパレータを得た。比較例1のセパレータのSEMを撮った。図20Aを参照のこと。
【0129】
図20AのSEM、すなわち比較例1のセパレータのSEMにおいて、それぞれ1、2、及び3と番号を付けた3つの領域を識別した。次いで、これら3つの領域の各々のFTIRスペクトルプロファイルを取得した。図20Bから図20Dを参照のこと。比較例1のセパレータの図20AのSEMの3つの番号を付けた領域(番号1、2、及び3)の各々で取得したFTIRスペクトルは、下の表14に示す、これら3つの領域の結晶構造及び/又は形態に関する以下のピーク位置情報及び周期又は繰り返し情報を明らかにした。
【0130】
【表14】
【0131】
最終的に、識別された領域の結晶構造又は形態の平均繰り返し又は周期170nmが得られた。
【0132】
比較例2
バックウェブ厚さが250μmである別の比較用のポリエチレン鉛蓄電池セパレータを得た。比較例2のセパレータのSEMを撮った。図21Aを参照のこと。
【0133】
図21AのSEM、すなわち比較例2のセパレータのSEMにおいて、1と番号を付けたセパレータSEM画像の領域を識別した。次いで、この領域のFTIRスペクトルプロファイルを取得した。図21Bを参照のこと。比較例2のセパレータの図21AのSEMの領域(番号1)で取得したFTIRスペクトルは、下の表15に示す、この領域の結晶構造及び/又は形態に関する以下のピーク位置情報及び周期又は繰り返し情報を明らかにした。
【0134】
【表15】
【0135】
このように、識別された領域の結晶構造又は形態の平均繰り返し又は周期は212nmであった。
【0136】
比較例3
更に別の比較用のポリエチレン鉛蓄電池セパレータを得た。これはDaramic,LLCから市販されているものであった。セパレータのバックウェブ厚さは250μmであった。このセパレータは上記の実施例1~5に記載したセパレータと同様に作製したが、このセパレータを作製するため使用したシリカは高オイル吸収値を有するものではなかった。
【0137】
比較例3のセパレータのSEMを撮った。図22を参照のこと。図22を観察すると、ポリオレフィン微孔性膜のこのSEM画像には、少なくとも0.5μm以上の長さで連続的に延出するシシケバブ形成は存在しなかった。従って、このSEMでは領域はマークされておらず、更なる分析も行わなかった。
【0138】
下の表16は、実施例1~5のシシケバブ領域の周期又は繰り返しについて得られた結果を比較例1~3で得られた結果と比較している。
【0139】
【表16】
【0140】
実施例1~5では、シシケバブ形成及び/又は結晶構造及び/又は形態の平均繰り返し又は周期は1nm~150nm、好ましくは10nm~120nm、更に好ましくは20nm~100nmであった。このタイプの構造は比較例1~3のセパレータでは観察されなかった。
【0141】
下の表17に、実施例1~2及び実施例4~5のセパレータの追加の特性及び特徴を示す(これに対し、上記の表3は実施例3のセパレータの特性を含む)。
【0142】
【表17】
【0143】
固体NMRの実施例
2つのセパレータサンプルについて、上記で詳しく記載した29Si固体NMR技法を用いて、シラノール基(Si-OH)と元素シリコン(Si)との比(Si-OH)/Siを測定した。このNMR試験のために実施例1のセパレータのサンプル及び比較用のセパレータのサンプルを調製した。比較用のセパレータは比較例4のセパレータであり、Daramic,LLCから市販されているポリエチレンセパレータであり、250μmのバックウェブ厚さを有し、比較例3として上述したセパレータと同じタイプのポリエチレンポリマー及びシリカを用いて作製した。
【0144】
各サンプルの29Si-NMRスペクトルを取得した。これらのスペクトルは図23として含まれている。Q信号は約-93ppmで観察され、Q信号は約-103ppmで観察され、Q信号は約-111ppmで観察された。図24に示すように各成分をデコンボリューションし、図24からのその情報を用いてQ:Q:Qの分子比を計算した。下の表18に結果を示す。
【0145】
【表18】
【0146】
上に示す結果において、実施例1のセパレータのOH/Si比は、比較例4のセパレータのOH/Si比よりも35%高い。これは、本発明のセパレータのシリカに存在する追加のヒドロキシル基及び/又はシラノール基が、望ましい孔構造及び/又は形態及び低いERのような本発明のセパレータの改良された特徴に寄与し得ることを意味している。
【0147】
少なくとも選択された実施形態によれば、セパレータは、性能強化添加物又はコーティング、多孔率の増大、空隙容積の増大、非晶質シリカ、高オイル吸収シリカ、もろさの増大した充填剤又はシリカ、イオン拡散の増大、高シラノール基シリカ、OH対Siの比が21:100~35:100のシリカ、電気抵抗の低減、シシケバブ構造又は形態、膜の
重量の40%以上の量の粒子状充填剤を含むポリオレフィン微孔性膜、伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を備えたシシケバブ形成を有する超高分子量ポリエチレン、1nm~150nmのケバブ形成の平均繰り返し周期、シート厚さの低減、ねじれの低減等、又はそれらの組み合わせを含むか又は示すことができる。そのような発明のセパレータは、従来の液式電池よりも高い性能及び信頼性のために構築された強化型液式電池(EFB)に特に適切であり、少なくともいくつかの始動-停止機能性を始動出力の強化によってサポートし、多くの車両の増加し続ける電気需要を満足させ、重放電からの回復の長いライフスパンを与え、エンジンオフ期間中に電気的負荷に電力を供給し、1回の走行当たり多くの始動回数を可能とし、更に、従来の鉛蓄電池よりも優れたサイクリング機能、電荷受容、及び/又は低い充電状態及び/又は部分的な充電状態で動作する能力を有し、密集して詰められた構成要素を有し、電池耐振性、信頼性の高い始動性能、優れたサイクリング能力、低い充電状態及び/又は部分的な充電状態で動作する電池の改良されたサイクリング、及び/又は長い寿命等を有する。
【0148】
少なくとも選択された実施形態、態様、又は目的によれば、本明細書に開示されるか又は提供されるのは、新規の又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化型液式電池セパレータ、電池、セル、及び/又は、そのようなセパレータ、電池セパレータ、強化型液式電池セパレータ、セル、及び/又は電池の製造及び/又は使用の方法である。少なくともいくつかの実施形態によれば、本開示又は発明は、強化型液式電池のための新規の又は改良された電池セパレータを対象とする。更に、本明細書に開示されるのは、少なくとも強化型液式電池において、電池寿命を延長し、内部電気抵抗を低減し、CCAを増大し、及び/又は均一性を改善するための方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は強化型液式電池のための改良されたセパレータを対象とし、このセパレータは、性能強化添加物又はコーティング、改良された充填剤を含み、ねじれが低減し、湿潤性が増大し、オイル含有量が低減し、厚さが低減し、電気抵抗が低減し、及び/又は多孔率が増大し、更に、そのようなセパレータを電池で使用することで、電池の水損失が低減し、電池の酸層化が低減し、電池の電圧降下が低減し、及び/又は電池のCCAが増大する。少なくとも特定の実施形態によれば、提供されるセパレータは、性能強化添加物又はコーティングを含み、多孔率が増大し、空隙容積が増大し、非晶質シリカ、高オイル吸収のシリカ、もろさの増大した充填剤又はシリカを含み、イオン拡散が増大し、シラノール基が増加し、OH対Siの比が21:100~35:100のシリカ、OH対Siの比が少なくとも27:100のシリカを含み、電気抵抗が低減し、シシケバブ構造又は形態、膜の重量の40%以上の量の粒子状充填剤を含むポリオレフィン微孔性膜、伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を備えたシシケバブ形成を有する超高分子量ポリエチレンを含み、ケバブ形成の平均繰り返し周期が1nm~150nmであり、ケバブ形成の平均繰り返し周期が150nm未満であり、ケバブ形成の平均繰り返し周期が120nm未満であり、ケバブ形成の平均繰り返し周期が100nm未満であり、リブ付きの側に伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を備えたシシケバブ形成を有し、ケバブ形成の平均繰り返し周期が1nm~150nm未満であり、シート厚さが低減し、ねじれが低減する等である。セパレータは強化型液式電池等に特に適している。
【0149】
本発明は、その精神及び不可欠な属性から逸脱することなく他の形態で具現化することができ、従って、本発明の範囲を示すものとして、先行する明細書(specification)でなく添付の特許請求の範囲を参照するべきである。
【0150】
前述の構造及び方法に関する記述された説明は、単に例示の目的で提示されたに過ぎない。実施例は、最良の形態を含めて例示的な実施形態を開示するために用いられ、更に、任意のデバイス又はシステムを作製及び使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、当業者が本発明を実施することを可能とするために用いられる。これらの実施
例は、網羅的であることも、開示される厳密なステップ及び/又は形態に本発明を限定することも意図しておらず、上記の教示に鑑みて多くの変更及び変形が可能である。本明細書に記載される特徴は任意の組み合わせに組み合わせることができる。本明細書に記載される方法のステップは、物理的に可能である任意の順序で実行され得る。本発明の特許可能な範囲は添付の特許請求の範囲によって規定され、当業者に想起される他の実施例も含み得る。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言(literal language)と異ならない構造的要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言とわずかに異なる同等の(equivalent)構造的要素を含む場合は、特許請求の範囲内であることが意図される。
【0151】
添付の特許請求の範囲の組成及び方法は、特許請求の範囲の少数の態様の例示として意図される、本明細書に記載される具体的な組成及び方法によって範囲が限定されない。機能的に同等である任意の組成及び方法は、特許請求の範囲内であることが意図される。本明細書に図示及び記載されるものに加えて、組成及び方法の様々な変更が、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。更に、本明細書に開示されるいくつかの代表的な組成及び方法ステップのみが具体的に記載されているが、組成及び方法ステップの他の組み合わせも、具体的に言及されていない場合であっても、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。従って、ステップ、元素、コンポーネント、又は構成要素の組み合わせが本明細書において又はそれ未満で明示的に言及され得るが、ステップ、元素、コンポーネント、及び構成要素の他の組み合わせは、明示的に述べられていない場合であっても含まれる。
【0152】
明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他の意味を表す場合を除いて、複数の言及を含む。本明細書において、範囲は、「約(about)」もしくは「ほぼ(approximately)」ある特定の値から、及び/又は「約」もしくは「ほぼ」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、その1つの特定の値から及び/又はその別の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表現される場合、特定の値が別の実施形態を形成することは理解されよう。更に、各範囲の終点は、他の終点に関連した場合及び他の終点とは無関係な場合の双方において重要であることは理解されよう。「任意選択的な(optional)」又は「任意選択的に(optionally)」は、この後に記載されるイベント又は状況が発生する可能性も発生しない可能性もあること、並びに、その記載は前記のイベント又は状況が発生する場合及び発生しない場合を含むことを意味する。
【0153】
本明細書の記載及び特許請求の範囲の全体を通して、「~を備える(comprise)」という言葉、並びにこの言葉の変形、例えば「~を備えた(comprising)」及び「~を備える(comprises)」は、「~を含むが限定ではない」を意味し、例えば他の添加物、コンポーネント、整数、又はステップを除外することは意図していない。「本質的に~から成る(consisting essentially of)」及び「~から成る(consisting of)」という用語は、「~を備えた(comprising)」及び「~を含む(including)」の代わりに使用して、本発明のより具体的な実施形態を提供することができ、開示される。「例示的な(exemplary)」は、「~の一例(an example of)」を意味し、好適な又は理想的な実施形態の指示を伝えることは意図していない。「等の(such as)」は、限定的な意味で用いられるのではなく、説明的又は例示的な目的で用いられる。
【0154】
注記した場合を除いて、明細書及び特許請求の範囲で用いられる幾何学的形状、寸法等を表す全ての数は、少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとして理解されるのではなく、有効桁数及び通常の丸め手法に照らして解釈されるものとする。
【0155】
特に別の規定がない限り、本明細書において用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、開示される本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及される発表及びそれらに挙げられている材料は、特に援用により本願に含まれる。
【0156】
更に、本明細書に例示的に開示されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素が存在しない場合、適宜実施され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
【手続補正書】
【提出日】2022-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微多孔性膜を含む鉛蓄電池のためのセパレータであって、前記ポリオレフィン微多孔性膜は、
ポリエチレンと、粒子状充填剤と、処理可塑剤と、を含み、
前記粒子状充填剤は重量で40%以上の量で存在し、
前記ポリエチレンは、複数の伸び切り鎖結晶(シシ形成)及び複数の折り畳み鎖結晶(ケバブ形成)を含むシシケバブ形成のポリマーを含み、前記ケバブ形成の平均繰り返し周期は1nmから150nmである、セパレータ。
【請求項2】
前記ケバブ形成の前記平均繰り返し周期は、SEMによって前記ポリオレフィン微多孔性膜の表面の画像を撮影し、前記SEM画像において前記シシケバブ形成が少なくとも0.5μm以上の長さで連続的に延出する少なくとも3つの矩形領域を示し、前記示された各矩形領域の長さ方向に対して垂直方向に投影されたコントラストプロファイルのフーリエ変換によって繰り返し周期の平均を計算することによって前記平均繰り返し周期を特定することによって規定される、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項3】
前記充填剤は、シリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、及び沈降非晶質シリカから成る群から選択され、
29Si-NMRによって測定される前記充填剤中のOH基とSi基との分子比は21:100から35:100の範囲内であり、好ましくは27:100以上である、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項4】
前記処理可塑剤は、プロセスオイル、パラフィンベースのオイル、及び鉱油から成る群から選択される、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項5】
シリカはポリマーの前記ケバブ形成に存在する、請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項6】
前記ポリエチレンは超高分子量ポリエチレンである請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。
【請求項7】
前記ケバブ形成の前記平均繰り返し周期は120nm未満である請求項1に記載の鉛蓄電池のためのセパレータ。