(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014178
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】光ファイバ特性測定装置、光ファイバ特性測定プログラム、及び光ファイバ特性測定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
G01M11/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116380
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】松浦 聡
(72)【発明者】
【氏名】手塚 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅美
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 芳宏
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086DD01
2G086DD04
(57)【要約】
【課題】被測定光ファイバに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することができる光ファイバ特性測定装置等を提供する。
【解決手段】光ファイバ特性測定装置は、被測定光ファイバに光を入射させて得られるブリルアン散乱光を検出する光検出部と、前記光検出部から出力される検出信号に基づいて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトルと、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第1幅よりも広い第2幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトルとを得る信号処理部と、前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光ファイバに光を入射させて得られるブリルアン散乱光を検出する光検出部と、
前記光検出部から出力される検出信号に基づいて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトルと、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第1幅よりも広い第2幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトルとを得る信号処理部と、
前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部と、
を備える光ファイバ特性測定装置。
【請求項2】
前記第2幅は、前記被測定光ファイバから得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトル幅よりも広い、請求項1記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項3】
前記被測定光ファイバに入射される、スペクトル幅が前記第1幅である光又はスペクトル幅が前記第2幅である光を射出する光源部を備える請求項1又は請求項2記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項4】
前記光源部は、駆動信号によって駆動されてスペクトル幅が前記第1幅である光を射出する光源と、
前記駆動信号を処理して前記光源から射出される光のスペクトル幅を前記第2幅にし、又は前記光源から射出された光を変調してスペクトル幅を前記第2幅にする変調部と、
を備える請求項3記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項5】
前記光源部にスペクトル幅が前記第1幅である光を射出させて前記信号処理部に前記第1ブリルアンゲインスペクトルを取得させ、前記光源部にスペクトル幅が前記第2幅である光を射出させて前記信号処理部に前記第2ブリルアンゲインスペクトルを取得させる制御部を備える、請求項3又は請求項4記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項6】
前記被測定光ファイバに入射されるスペクトル幅が前記第1幅である光を射出する光源部を備えており、
前記信号処理部は、前記光源部から射出された光が前記被測定光ファイバに入射された場合に前記光検出部から出力される検出信号に基づいて、前記第1ブリルアンゲインスペクトルを求める第1信号処理部と、
前記第1信号処理部で求められた前記第1ブリルアンゲインスペクトルを用いて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第2幅である場合に得られるであろう前記第2ブリルアンゲインスペクトルを求める第2信号処理部と、
を備える請求項1又は請求項2記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項7】
前記第2信号処理部は、前記第1信号処理部で求められた前記第1ブリルアンゲインスペクトルと、単峰性スペクトルとの畳み込み演算を行って、前記第2ブリルアンゲインスペクトルを求める、請求項6記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項8】
周波数変調された変調光をポンプ光と参照光とに分岐する第1光分岐部と、
前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端から入射させ、前記被測定光ファイバ内で生じた前記ブリルアン散乱光を出力する第2光分岐部と、
を備え、
前記光検出部は、前記ブリルアン散乱光と前記参照光との干渉光を検出する、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項9】
周波数変調された変調光を第1分岐光と第2分岐光とに分岐する第3光分岐部と、
前記第1分岐光又は前記第2分岐光の周波数をシフトさせるシフト部と、
前記第1分岐光をポンプ光として出力するか否を切り替える光スイッチと、
前記光スイッチから出力される前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端から入射させ、前記被測定光ファイバの他端から入射して前記被測定光ファイバを介した前記第2分岐光としてのプローブ光及び前記被測定光ファイバ内で生じた前記ブリルアン散乱光を出力する第4光分岐部と、
を備え、
前記光検出部は、前記光スイッチから前記ポンプ光が出力されている場合に前記第4光分岐部から出力される前記ブリルアン散乱光及び前記プローブ光と、前記光スイッチから前記ポンプ光が出力されていない場合に前記第4光分岐部から出力される前記プローブ光との差から前記ブリルアン散乱光を検出する、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項10】
前記測定部は、前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとの差分を求める差分算出部と、
前記差分算出部で求められた前記差分の大きさが最大となる周波数からブリルアン周波数シフト量を求めて、前記被測定光ファイバの特性を測定する特性測定部と、
を備える請求項1から請求項9の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項11】
コンピュータに、
被測定光ファイバに光を入射させて得られるブリルアン散乱光を検出して得られる検出信号に基づいて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトルと、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第1幅よりも広い第2幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトルとを得る信号処理ステップと、
前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて前記被測定光ファイバの特性を測定する測定ステップと、
を実行させるための光ファイバ特性測定プログラム。
【請求項12】
被測定光ファイバに光を入射させて得られるブリルアン散乱光を検出して得られる検出信号に基づいて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトルと、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第1幅よりも広い第2幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトルとを得る信号処理ステップと、
前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて前記被測定光ファイバの特性を測定する測定ステップと、
を有する光ファイバ特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ特性測定装置、光ファイバ特性測定プログラム、及び光ファイバ特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ特性測定装置は、連続光又はパルス光を被測定光ファイバに入射させ、被測定光ファイバ内において生ずる散乱光又は反射光を検出して、被測定光ファイバの長さ方向における歪み分布、温度分布、振動分布、その他の特性を測定する装置である。この光ファイバ特性測定装置では、検出される散乱光又は反射光の周波数や大きさが被測定光ファイバに影響を及ぼす物理量(例えば、歪み、温度、振動等)に応じて変化するため、被測定光ファイバそのものがセンサとして用いられる。
【0003】
このような光ファイバ特性測定装置の1つに、BOCDR(Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry)方式のものがある。BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置は、被測定光ファイバの一端から周波数変調された変調光であるポンプ光を入射させ、被測定光ファイバの一端から射出されるブリルアン散乱光と参照光(ポンプ光と同様の周波数変調がされた光)とを干渉させたものを検出する。そして、得られた検出信号からブリルアン散乱光のスペクトル(以下、「ブリルアンゲインスペクトル」という)を得て、ブリルアン散乱光の入射光に対する周波数シフト量(以下、「ブリルアン周波数シフト量」という)を求めることにより被測定光ファイバの特性を測定するものである。
【0004】
BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置では、ブリルアン散乱光と参照光とを干渉させることにより、被測定光ファイバ中において「相関ピーク」が現れる特定の位置におけるブリルアン散乱光を選択的に抽出している。ここで、「相関ピーク」が現れる位置は、ブリルアン散乱光と参照光との周波数変調位相が一致する位置である。この位置で得られるブリルアンゲインスペクトルは周波数変調による広がりがなく、細く高い形状になる。これに対し、相関ピークが現れる位置以外の位置で得られるブリルアンゲインスペクトルは、周波数変調による広がりがあるため、高さが低くて広がりを有する等脚台形のような形状になる。従って、被測定光ファイバ全域から得られるブリルアン散乱光のブリルアン周波数シフト量は、相関ピーク位置におけるブリルアン散乱光のブリルアン周波数シフト量と一致する。
【0005】
BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置では、ポンプ光及び参照光の変調周波数を掃引することで、被測定光ファイバの長さ方向に沿って相関ピークを移動させることができる。このため、相関ピークを移動させつつ各相関ピークが現れる位置におけるブリルアン周波数シフト量を求めることにより、被測定光ファイバの長さ方向における歪み分布、温度分布、振動分布等を測定することができる。尚、BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置の詳細については、例えば、以下の特許文献1及び非特許文献1,2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Manotham, M. Kishi, Z. He, and K. Hotate, “Simulation and Experiment for Verifying Intensity Modulation Scheme in Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry”, Proc. CLEO, CM4B.3, 6-11 May 2012.
【非特許文献2】O.Matsuoka, M. Kishi, and K. Hotate, “Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry with Double Frequency Modulation and Phase Modulation”, Proc. SPIE 9157, 2 June 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置で実際に観察されるブリルアンゲインスペクトルは、相関ピークの位置で生じたブリルアン散乱光のスペクトル(以下、「前景光スペクトル」という)と、相関ピークの位置以外の位置で生じたブリルアン散乱光のスペクトル(以下、「背景光スペクトル」という)との総和である。このブリルアン散乱光のスペクトルは、概して、等脚台形状の背景光スペクトルの上辺に前景光スペクトルが重畳されたものであるということができる。相関ピークの位置に歪み(或いは、温度変化)が加わると、前景光スペクトルは変化するが、背景光スペクトルは殆ど変化しない。BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置では、前景光スペクトルの変化を捉えて、相関ピークの位置に加わった歪みを測定している。
【0009】
ここで、上記ブリルアンゲインスペクトルの最大値付近の形状は、相関ピークの位置に加わる歪み(或いは、温度変化)の大きさが小さな場合(例えば、等脚台形状の背景光スペクトルの上辺に前景光スペクトルが重畳しているとみなせる場合)には、前景光スペクトルによって支配的に決定される。しかしながら、相関ピークの位置に加わる歪み(或いは、温度変化)の大きさが大きくなると、前景光スペクトルの変化量が大きくなる(ブリルアン周波数シフト量が大きくなる)ため、上記の形状は背景光スペクトルによって支配的に決定されることになる。つまり、相関ピークの位置に加わる歪み(或いは、温度変化)によって、前景光スペクトルが、等脚台形状の背景光スペクトルの斜辺の位置に移動し、その高さが台形の上辺よりも低くなると、ブリルアンゲインスペクトルの最大値は、背景光スペクトルによって決定されることになる。すると、前景光スペクトルの変化を捉えることができなくなるため、相関ピークの位置(即ち、任意の測定点)に加わっている歪み(或いは、温度変化)が誤って測定されてしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、被測定光ファイバに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することができる光ファイバ特性測定装置、光ファイバ特性測定プログラム、及び光ファイバ特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置(1~4)は、被測定光ファイバ(FUT)に光を入射させて得られるブリルアン散乱光(LS)を検出する光検出部(16、36、37)と、前記光検出部から出力される検出信号(S1、S2)に基づいて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトル(B1)と、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第1幅よりも広い第2幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトル(B2)とを得る信号処理部(18b、20b、38b、40b)と、前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部(18c、20c、38c、40c)と、を備える。
【0012】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記第2幅が、前記被測定光ファイバから得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトル幅よりも広い。
【0013】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記被測定光ファイバに入射される、スペクトル幅が前記第1幅である光又はスペクトル幅が前記第2幅である光を射出する光源部(11)を備える。
【0014】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記光源部が、駆動信号(D1)によって駆動されてスペクトル幅が前記第1幅である光を射出する光源(11a)と、前記駆動信号を処理して前記光源から射出される光のスペクトル幅を前記第2幅にし、又は前記光源から射出された光を変調してスペクトル幅を前記第2幅にする変調部(11b)と、を備える。
【0015】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記光源部にスペクトル幅が前記第1幅である光を射出させて前記信号処理部に前記第1ブリルアンゲインスペクトルを取得させ、前記光源部にスペクトル幅が前記第2幅である光を射出させて前記信号処理部に前記第2ブリルアンゲインスペクトルを取得させる制御部(18d、38d)を備える。
【0016】
或いは、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記被測定光ファイバに入射されるスペクトル幅が前記第1幅である光を射出する光源部(11)を備えており、前記信号処理部が、前記光源部から射出された光が前記被測定光ファイバに入射された場合に前記光検出部から出力される検出信号に基づいて、前記第1ブリルアンゲインスペクトルを求める第1信号処理部(21、41)と、前記第1信号処理部で求められた前記第1ブリルアンゲインスペクトルを用いて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第2幅である場合に得られるであろう前記第2ブリルアンゲインスペクトルを求める第2信号処理部(22、42)と、を備える。
【0017】
ここで、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記第2信号処理部が、前記第1信号処理部で求められた前記第1ブリルアンゲインスペクトルと、単峰性スペクトルとの畳み込み演算を行って、前記第2ブリルアンゲインスペクトルを求める。
【0018】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、周波数変調された変調光(L1)をポンプ光(L11)と参照光(L12)とに分岐する第1光分岐部(12)と、前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端から入射させ、前記被測定光ファイバ内で生じた前記ブリルアン散乱光を出力する第2光分岐部(13)と、を備え、前記光検出部が、前記ブリルアン散乱光と前記参照光との干渉光を検出する。
【0019】
或いは、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、周波数変調された変調光(L1)を第1分岐光(L21)と第2分岐光(L22)とに分岐する第3光分岐部(30)と、前記第1分岐光又は前記第2分岐光の周波数をシフトさせるシフト部(31)と、前記第1分岐光をポンプ光(L31)として出力するか否を切り替える光スイッチ(33)と、前記光スイッチから出力される前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端から入射させ、前記被測定光ファイバの他端から入射して前記被測定光ファイバを介した前記第2分岐光としてのプローブ光(L32)及び前記被測定光ファイバ内で生じた前記ブリルアン散乱光を出力する第4光分岐部(35)と、を備え、前記光検出部が、前記光スイッチから前記ポンプ光が出力されている場合に前記第4光分岐部から出力される前記ブリルアン散乱光及び前記プローブ光と、前記光スイッチから前記ポンプ光が出力されていない場合に前記第4光分岐部から出力される前記プローブ光との差から前記ブリルアン散乱光を検出する。
【0020】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記測定部が、前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとの差分を求める差分算出部(19a)と、前記差分算出部で求められた前記差分の大きさが最大となる周波数からブリルアン周波数シフト量を求めて、前記被測定光ファイバの特性を測定する特性測定部(19b)と、を備える。
【0021】
本発明の一態様による光ファイバ特性測定プログラムは、コンピュータに、被測定光ファイバ(FUT)に光を入射させて得られるブリルアン散乱光(LS)を検出して得られる検出信号(S1、S2)に基づいて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトル(B1)と、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第1幅よりも広い第2幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトル(B2)とを得る信号処理ステップ(S12、S13、S20)と、前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて前記被測定光ファイバの特性を測定する測定ステップ(S14~S16)と、を実行させる。
【0022】
本発明の一態様による光ファイバ特性測定方法は、被測定光ファイバ(FUT)に光を入射させて得られるブリルアン散乱光(LS)を検出して得られる検出信号(S1、S2)に基づいて、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトル(B1)と、前記被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が前記第1幅よりも広い第2幅である場合に得られる前記ブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトル(B2)とを得る信号処理ステップ(S12、S13、S20)と、前記第1ブリルアンゲインスペクトルと前記第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて前記被測定光ファイバの特性を測定する測定ステップ(S14~S16)と、を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被測定光ファイバに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置が備える測定部の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置で行われる処理を説明するための図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第4実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光ファイバ特性測定装置、光ファイバ特性測定プログラム、及び光ファイバ特性測定方法について詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0026】
〔概要〕
本発明の実施形態は、被測定光ファイバに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することを可能とするものである。被測定光ファイバの相関ピークが現れる位置に大きな歪み(或いは、温度変化)が加わると、前景光スペクトルの変化量が大きくなって、ブリルアンゲインスペクトルの最大値付近の形状が背景光スペクトルによって支配的に決定されることになる。すると、前景光スペクトルの変化を捉えることができなくなり、相関ピークの位置に加わっている歪み(或いは、温度変化)が誤って測定されてしまう。このような誤測定を解決する方法として、上述した非特許文献1に開示された「強度変調法」と、上述した非特許文献2に開示された「位相変調法」とが提案されている。
【0027】
上記の「強度変調法」は、被測定光ファイバに入射させるポンプ光(周波数変調された変調光)を強度変調し、背景光スペクトルの形状を平坦に近づけることで、上記の誤測定を解消する方法である。しかしながら、強度変調法では、ポンプ光の強度変調を、ポンプ光の周波数変調と同期させて行う必要があるため、それらの位相管理が必要になる。また、強度変調法では、強度変調を行うための変調器を追加する必要があることから、コスト及び設置スペースが増加する。更に、強度変調法では、相関ピークの位置以外の位置に加わる歪み(或いは、温度変化)によって、背景光スペクトルの形状の平坦さが影響を受けやすい。
【0028】
上記の「位相変調法」は、位相変調しない連続光と位相変調した連続光とを被測定光ファイバに順次入射させて得られる測定結果の差分を求めて背景光スペクトルを抑圧することで、上記の誤測定を解消する方法である。被測定光ファイバに入射させる周波数f0の連続光を周波数fpで位相変調すると、連続光のスペクトルを、周波数f0成分の大きさがゼロであって、周波数f0を中心として変調周波数fp毎にサイドバンドが現れるものにすることができ、概ね、前景光スペクトルが除かれた背景光スペクトルを得ることができる。しかしながら、位相変調法では、2回の測定を行う必要があることから、測定に要する時間が長くなる。また、位相変調法では、被測定光ファイバに入射させる連続光を位相変調するための変調器を追加する必要があることから、コスト及び設置スペースが増加する。更に、位相変調法では、位相変調時に生ずるサイドバンドが背景光スペクトルの形状に影響を及ぼしてしまう。
【0029】
本発明の実施形態は、被測定光ファイバに光を入射させて得られるブリルアン散乱光を検出する光検出部から出力される検出信号に基づいて、被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅である場合に得られるブリルアン散乱光のスペクトルである第1ブリルアンゲインスペクトルと、被測定光ファイバに入射される光のスペクトル幅が第1幅よりも広い第2幅である場合に得られるブリルアン散乱光のスペクトルである第2ブリルアンゲインスペクトルと得る。そして、第1ブリルアンゲインスペクトルと第2ブリルアンゲインスペクトルとに基づいて被測定光ファイバの特性を測定するようにしている。これにより、被測定光ファイバに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することを可能にしている。
【0030】
〔第1実施形態〕
〈光ファイバ特性測定装置の構成〉
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置1は、信号発生部10、光源部11、光分岐部12(第1光分岐部)、光分岐部13(第2光分岐部)、光遅延部14、合波部15、光検出部16、周波数解析部17、及び制御処理部18を備える。このような光ファイバ特性測定装置1は、被測定光ファイバFUTにポンプ光L11を入射させて得られるブリルアン散乱光LSに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定する、所謂BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置である。
【0031】
上記のポンプ光L11は、周波数変調が与えられた連続光である。上記のブリルアン散乱光LSは、被測定光ファイバFUT内におけるブリルアン散乱により生じた後方散乱光である。尚、被測定光ファイバFUTは、ポンプ光L11の波長等に応じて任意のものを用いることができる。また、本実施形態では、説明を簡単にするために、被測定光ファイバFUTには相関ピークが1つのみ現れるとする。
【0032】
信号発生部10は、制御処理部18の制御の下で、特定の信号SGを発生する。この信号発生部10は、光源部11から出力される連続光L1のスペクトル幅を広げるため(例えば、被測定光ファイバFUTから得られるブリルアン散乱光のスペクトル幅よりも広くするため)に設けられる。信号発生部10が発生する信号SGは、例えば、ガウス型スペクトルを有する雑音、デュオバイナリ変調した疑似ランダム符号、その他の信号であって良い。信号発生部10が、疑似ランダム符号を出力するものである場合には、符号速度、変調の大きさ、バイアス条件を適当に選んで、連続光L1のスペクトルに離散的なサイドバンドが現れないようにするのが望ましい。
【0033】
光源部11は、光源11aと駆動信号生成部11b(変調部)とを備えており、制御処理部18の制御の下で、周波数変調された連続光L1を出力する。光源11aは、例えば分布帰還型レーザダイオード(DFB-LD:Distributed Feed-Back Laser Diode)等の半導体レーザ素子を備えており、駆動信号生成部11bから出力される駆動信号D1に応じて周波数変調された連続光L1を出力する。
【0034】
また、光源部11は、駆動信号生成部11bから出力される駆動信号D1に応じて、数MHz程度のスペクトル幅(第1幅)を有する連続光L1、又は、ブリルアン散乱光のスペクトル幅よりも広い幅(第2幅)を有する連続光L1を出力する。以下、前者のスペクトル幅を「第1スペクトル幅」といい、後者のスペクトル幅を「第2スペクトル幅」という。尚、第1スペクトル幅は、光源11aが備える半導体レーザ素子の特性によって定まる。第2スペクトル幅は、ブリルアン散乱光のスペクトル幅(例えば、30MHz程度)よりも広ければ良い。第2スペクトル幅は、例えば、ブリルアン散乱光のスペクトル幅の2~4倍程度(例えば、100MHz)が望ましい。尚、以下では、光源部11(光源11a)から出力される連続光L1のスペクトル幅を、「光源11aの線幅」という場合もある。
【0035】
駆動信号生成部11bは、制御処理部18の制御の下で、光源11aから出力される連続光L1を周波数変調するための駆動信号D1を生成する。具体的に、駆動信号生成部11bは、直流バイアス電流と正弦波交流電流とを加算して駆動信号D1を生成する。この駆動信号D1は、正弦波状の信号であり、その周波数(変調周波数fm)及び振幅(変調振幅Δf)が制御処理部18によって制御される。
【0036】
駆動信号生成部11bは、制御処理部18の制御によって信号発生部10から信号SGが出力される場合には、その信号SGが重畳された駆動信号D1を生成する(駆動信号D1を処理する)。駆動信号D1に信号SGが重畳されていない場合には、光源部11からは、第1スペクトル幅を有する連続光L1が出力される。これに対し、駆動信号D1に信号SGが重畳されている場合には、光源部11からは、第2スペクトル幅を有する連続光L1が出力される。つまり、信号SGを駆動信号D1に重畳させることで、光源部11から出力される連続光L1のスペクトル幅を太らせることができる。
【0037】
光分岐部12は、光源部11から出力された連続光L1を、予め規定された強度比(例えば、1対1)のポンプ光L11と参照光L12とに分岐する。光分岐部13は、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートを備える。第1ポートは、光分岐部12と接続される。第2ポートは、被測定光ファイバFUTと接続される。第3ポートは、合波部15と接続される。光分岐部13は、第1ポートから入力されるポンプ光L11を第2ポートに出力する。また、第2ポートから入力される被測定光ファイバFUTからのブリルアン散乱光LSを第3ポートに出力する。このような光分岐部13としては、例えば光サーキュレータを用いることができる。
【0038】
光遅延部14は、光分岐部12で分岐された参照光L12を所定の時間だけ遅延させる。光遅延部14は、例えば、所定の長さの光ファイバを含む。光ファイバの長さを変更することで、遅延時間を調節することができる。このような光遅延部14を設けるのは、変調周波数fmの掃引を行っても現れる位置が移動しない0次相関ピークを被測定光ファイバFUTの外部に配置するためである。
【0039】
合波部15は、光分岐部13の第3ポートから出力される被測定光ファイバFUTからのブリルアン散乱光LSと、光分岐部12から出力されて光遅延部14を介した参照光L12とを結合させる。また、合波部15は、結合させた光を予め規定された強度比(例えば、1対1)の2つの光に分岐して光検出部16に出力する。合波部15によって分岐された2つの光の各々は、例えば被測定光ファイバFUTからの後方散乱光の50%と参照光の50%とを含む。このような合波部15としては、例えば光カプラを用いることができる。
【0040】
光検出部16は、合波部15から出力される2つの光に含まれるブリルアン散乱光LSと参照光L12とを干渉させることによって光ヘテロダイン検波を行う。光検出部16は、例えば、2つのフォトダイオード(PD: Photo Diode)16a,16bからなるバランスド・フォトダイオードと、合波器16cとを備える。フォトダイオード16a,16bは、合波部15から出力される2つの光をそれぞれ受光する。フォトダイオード16a,16bの受光信号は合波器16cに入力される。合波器16cからは、ブリルアン散乱光LSと参照光L12との周波数差分を示す干渉信号(ビート信号)である検出信号S1が出力される。
【0041】
周波数解析部17は、光検出部16から出力される検出信号S1の周波数解析を行う。つまり、周波数解析部17は、光検出部16から出力される検出信号S1から、ブリルアンゲインスペクトルを得る。周波数解析部17は、例えば、スペクトラムアナライザ(ESA:Electrical Spectrum Analyzer)を備える。尚、周波数解析部17は、スペクトラムアナライザに代えて、オシロスコープ等の時間軸測定器と、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行う変換器とを備え、時間軸測定器で取得した時間的に連続なデータを、変換器でスペクトルデータに変換するものであっても良い。
【0042】
制御処理部18は、光ファイバ特性測定装置1の動作を統括して制御するとともに、周波数解析部17の周波数解析結果を用いて、被測定光ファイバFUTの特性(例えば、歪み分布、温度分布、振動分布等)を測定するために必要な処理を行う。制御処理部18は、データ取得部18a、信号処理部18b、測定部18c、及び制御部18dを備える。
【0043】
データ取得部18aは、制御部18dの制御の下で、周波数解析部17から出力されるデータを取得する。具体的に、データ取得部18aは、第1スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力された場合に、周波数解析部17から出力されるブリルアンゲインスペクトル(第1ブリルアンゲインスペクトル)を示すデータを取得する。また、データ取得部18aは、第2スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力された場合に、周波数解析部17から出力されるブリルアンゲインスペクトル(第2ブリルアンゲインスペクトル)を示すデータを取得する。
【0044】
信号処理部18bは、制御部18dの制御の下で、データ取得部18aで取得されたデータに対して、予め規定された処理を行う。具体的に、信号処理部18bは、データ取得部18aで取得された第1ブリルアンゲインスペクトルと第2ブリルアンゲインスペクトルとを順次得て、これらを個別に記憶又は保持する。また、信号処理部18bは、記憶した第1ブリルアンゲインスペクトル又は第2ブリルアンゲインスペクトルを読み出して、不図示の表示装置に描画する処理を行っても良い。
【0045】
測定部18cは、信号処理部18bに記憶された第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とを読み出す。測定部18cは、これら第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とに基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する。
図2は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置が備える測定部の構成を示すブロック図である。
図2に示す通り、測定部18cは、差分算出部19a及び特性測定部19bを備える。
【0046】
差分算出部19aは、信号処理部18bに記憶された第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2との差分を求める。ここで、差分算出部19aは、第1ブリルアンゲインスペクトルB1及び第2ブリルアンゲインスペクトルB2の大きさを調整した後に上記の差分を求める処理を行っても良い。大きさの調整は、例えば、スペクトルの面積をほぼ等しくすることで行われる。特性測定部19bは、差分算出部19aで求められた差分の大きさが最大となる周波数からブリルアン周波数シフト量を求めて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する。例えば、特性測定部19bは、ブリルアン周波数シフト量を、被測定光ファイバFUTに加わる歪みの大きさや温度変化に換算する。
【0047】
尚、測定部18cは、信号処理部18bで得られた第1ブリルアンゲインスペクトルB1及び第2ブリルアンゲインスペクトルB2、測定された被測定光ファイバFUTの特性(例えば、歪み分布、温度分布、振動分布等)等を表示する表示部を備えていても良い。表示部は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)表示装置等である。
【0048】
制御部18dは、信号発生部10、光源部11の駆動信号生成部11b、並びに制御処理部18のデータ取得部18a、信号処理部18b、及び測定部18cを制御することで、光ファイバ特性測定装置1の動作を統括して制御する。例えば、制御部18dは、信号発生部10を制御して、第1スペクトル幅を有する連続光L1又は第2スペクトル幅を有する連続光L1を光源部11から出力させる。
【0049】
また、制御部18dは、光源部11の駆動信号生成部11bを制御して、光源部11から出力される連続光L1の変調周波数fm及び変調振幅Δfを変更させる。連続光L1の変調周波数fmを変更させるのは、被測定光ファイバFUTの長さ方向に沿って相関ピークを移動させるためである。また、制御部18dは、制御処理部18のデータ取得部18a、信号処理部18b、及び測定部18cを制御して、第1ブリルアンゲインスペクトルB1及び第2ブリルアンゲインスペクトルB2を取得させて、被測定光ファイバFUTの特性を求めさせる。
【0050】
制御処理部18は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで実現することができる。制御処理部18の機能(データ取得部18a、信号処理部18b、測定部18c、及び制御部18dの機能)は、例えば、それらの機能を実現するプログラムをコンピュータにインストールすることによりソフトウェア的に実現される。つまり、制御処理部18の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0051】
制御処理部18の機能を実現するプログラムは、例えばCD-ROM又はDVD(登録商標)-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されても良く、インターネット等のネットワークを介して配布されても良い。尚、制御処理部18の機能は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0052】
〈光ファイバ特性測定装置の動作〉
図3は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の動作例を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、被測定光ファイバFUTの長さ方向に沿う特性を測定する際の動作を示すものである。尚、
図3に示すフローチャートは、例えば、光ファイバ特性測定装置1に対して測定開始の指示がなされることによって開始される。
【0053】
図3に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、被測定光ファイバFUTの長さ方向における測定点の位置及び予め設定された空間分解能から、光源11aの変調周波数fm及び変調振幅Δfを設定する処理が行われる(ステップS11)。この処理は、制御処理部18の制御部18dが、光源部11の駆動信号生成部11bに対して行う。この処理が行われることで、被測定光ファイバFUTの長さ方向における相関ピークの位置及び相関ピークの間隔が決定される。
【0054】
次に、光源11aの線幅を第1スペクトル幅にして第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得する処理が、制御部18dの制御の下で行われる(ステップS12)。この処理が開始されると、駆動信号生成部11bが制御部18dによって制御され、駆動信号生成部11bから光源11aに対し駆動信号D1が出力される。尚、ここでは、信号発生部10の制御は行われず、信号SGは出力されない。
【0055】
駆動信号D1が光源11aに入力されると、光源11aからは変調周波数fmで周波数変調された第1スペクトル幅を有する連続光L1が出力される。光源11aから出力された連続光L1は、光分岐部12に入射してポンプ光L11と参照光L12とに分岐される。分岐されたポンプ光L11は、光分岐部13を介して被測定光ファイバFUTに入射し、被測定光ファイバFUT内を伝播していく。これに伴い、被測定光ファイバFUT内ではブリルアン散乱光LS(後方散乱光)が順次発生する。
【0056】
ここで、被測定光ファイバFUT内で発生するブリルアン散乱光LSは、被測定光ファイバFUTの歪みや温度に依存して速度が変化する音響波の影響を受け、その周波数がシフトしている。例えば、光源部11から出力される連続光L1の波長が約1.55μmであるとすると、被測定光ファイバFUT内で発生するブリルアン散乱光LSは、上記の連続光L1に対して、例えば、10.8GHz程度周波数がシフトしている。このブリルアン周波数シフト量は、被測定光ファイバFUTに加わる歪みや温度によって変動する。尚、ブリルアン散乱光LSのスペクトル(ブリルアンゲインスペクトル)は、周波数変調に伴うスペクトル広がりを除くと、半値全幅が30MHz程度のローレンツ型スペクトルとなる。
【0057】
被測定光ファイバFUT内で発生したブリルアン散乱光LSは、ポンプ光L11が伝播する方向とは反対の方向に伝播して被測定光ファイバFUTの一端から射出される。被測定光ファイバFUTの一端から射出されたブリルアン散乱光LSは、光分岐部13を介して合波部15に入射する。合波部15に入射したブリルアン散乱光LSは、光分岐部12で分岐されて光遅延部14を介した参照光L12と結合し、その干渉光が光検出部16で検出される。上記の干渉光が検出されると、光検出部16から周波数解析部17に検出信号S1が出力される。
【0058】
周波数解析部17に検出信号S1が入力されると、検出信号S1の周波数解析が行われ、周波数解析部17からはブリルアンゲインスペクトル(第1ブリルアンゲインスペクトル)を示すデータが出力される。周波数解析部17から出力されたデータは、制御処理部18のデータ取得部18aで取得され、信号処理部18bに記憶される。
【0059】
次いで、光源11aの線幅を第2スペクトル幅にして第2ブリルアンゲインスペクトルB2を取得する処理が、制御部18dの制御の下で行われる(ステップS13)。この処理が開始されると、駆動信号生成部11bが制御部18dによって制御されるとともに、信号発生部10が制御部18dによって制御される。これにより、駆動信号生成部11bから光源11aに対し、信号発生部10で発生した信号SGが重畳された駆動信号D1が出力される。
【0060】
駆動信号D1が光源11aに入力されると、光源11aからは変調周波数fmで周波数変調された第2スペクトル幅を有する連続光L1が出力される。光源11aから出力された連続光L1は、ステップS12と同様に、光分岐部12に入射してポンプ光L11と参照光L12とに分岐される。分岐されたポンプ光L11は、光分岐部13を介して被測定光ファイバFUTに入射し、被測定光ファイバFUT内を伝播していき、これに伴って、被測定光ファイバFUT内ではブリルアン散乱光LSが順次発生する。
【0061】
被測定光ファイバFUT内で発生したブリルアン散乱光LSは、ポンプ光L11が伝播する方向とは反対の方向に伝播して被測定光ファイバFUTの一端から射出される。被測定光ファイバFUTの一端から射出されたブリルアン散乱光LSは、光分岐部13を介して合波部15に入射する。合波部15に入射したブリルアン散乱光LSは、光分岐部12で分岐されて光遅延部14を介した参照光L12と結合し、その干渉光が光検出部16で検出される。上記の干渉光が検出されると、光検出部16から周波数解析部17に検出信号S1が出力される。
【0062】
周波数解析部17に検出信号S1が入力されると、検出信号S1の周波数解析が行われ、周波数解析部17からはブリルアンゲインスペクトル(第2ブリルアンゲインスペクトル)を示すデータが出力される。周波数解析部17から出力されたデータは、制御処理部18のデータ取得部18aで取得され、信号処理部18bに記憶される。
【0063】
続いて、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2との差分を算出する処理が、測定部18cで行われる(ステップS14)。具体的には、信号処理部18bに記憶された第1ブリルアンゲインスペクトルB1及び第2ブリルアンゲインスペクトルB2が、測定部18cに設けられた差分算出部19a(
図2参照)に読み出されて、それらの差分を算出する処理が行われる。尚、差分を算出する処理は、第1ブリルアンゲインスペクトルB1及び第2ブリルアンゲインスペクトルB2の大きさを調整した後に行ってもよい。
【0064】
続いて、差分算出部19aで算出された差分(第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2との差分)が最大になる周波数を算出する処理が、測定部18cの特性測定部19bで行われる(ステップS15)。そして、ステップS15で算出された周波数に基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する処理が、測定部18cの特性測定部19bで行われる(ステップS16)。例えば、ステップS15で算出された周波数を、被測定光ファイバFUTに加わる歪みの大きさに変換する処理が特性測定部19bで行われる。
【0065】
以上の処理が終了すると、測定終了であるか否かが制御部18dで判断される(ステップS17)。例えば、被測定光ファイバFUTの長さ方向における測定点の全てについて測定が終了したか(掃引が完了したか)否かが判断される。測定終了ではないと制御部18dが判断した場合(ステップS17の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS11に戻り、測定点の位置を変更して光源11aの変調周波数fm及び変調振幅Δfを再設定した上で、ステップS12~S16の処理が行われる。
【0066】
これに対し、測定終了であると制御部18dが判断した場合(ステップS17の判断結果が「YES」の場合)には、測定結果を表示する処理が、制御部18dの制御の下で行われる(ステップS18)。例えば、横軸が被測定光ファイバFUTの長さ方向における位置であり、縦軸が被測定光ファイバFUTに加わる歪みの大きさであるグラフ(歪み分布を示すグラフ)を表示する処理が行われる。以上の処理にて、
図3に示す一連の処理が終了する。
【0067】
図4は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置で行われる処理を説明するための図である。
図4(a)は、第1ブリルアンゲインスペクトルの一例を示す図であり、
図4(b)は、第2ブリルアンゲインスペクトルの一例を示す図であり、
図4(c)は、第1,第2ブリルアンゲインスペクトルの差分の一例を示す図である。
図4においては、横軸に周波数をとり、縦軸に信号強度をとってある。尚、
図4(a)及び
図4(b)においては、第1,第2ブリルアンゲインスペクトルの面積がほぼ等しくなるように縦軸が調整してある点に注意されたい。
【0068】
図4において、周波数fp0は、被測定光ファイバFUTの測定点(相関ピークの位置)に歪みが加わっていない場合に、ブリルアンゲインスペクトルの信号強度(大きさ)が最大になる周波数(ピーク周波数)である。
図4(a)に示す第1ブリルアンゲインスペクトルは、被測定光ファイバFUTの測定点(相関ピークの位置)に大きな歪みが加わっている場合に得られるものであり、周波数fp1,fp2はそれぞれ、前景光スペクトル及び背景光スペクトルのピーク周波数である。尚、前景光スペクトルは、相関ピークの位置で生じたブリルアン散乱光のスペクトルであり、背景光スペクトルは、相関ピークの位置以外の位置で生じたブリルアン散乱光のスペクトルである。
【0069】
図4(a)を参照すると、前景光スペクトルのピーク周波数fp1は、被測定光ファイバFUTの測定点(相関ピークの位置)に大きな歪みが加わっているため、ピーク周波数fp0から大きくずれている。これに対し、背景光スペクトルのピーク周波数fp2は、ピーク周波数fp0とほぼ同じである。また、前景光スペクトルのピーク周波数fp1における信号強度は、背景光スペクトルのピーク周波数fp2における信号強度よりも低くなっていることが分かる。
【0070】
ここで、一般的に、BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置では、ブリルアン周波数シフト量を、ブリルアンゲインスペクトルの大きさが最大になる周波数に基づいて求めている。このため、
図4(a)に示す通り、前景光スペクトルのピーク周波数fp1における信号強度が、背景光スペクトルのピーク周波数fp2における信号強度よりも低くなってしまうと、正しいブリルアン周波数シフト量を求めることができず、被測定光ファイバFUTに加わる歪みが誤って測定されてしまう。具体的には、測定点のブリルアン周波数シフト量が、ピーク周波数fp1ではなく、ピーク周波数fp2に基づいて求められてしまう。
【0071】
図4(b)に示す第2ブリルアンゲインスペクトルは、被測定光ファイバFUTの測定点(相関ピークの位置)に大きな歪みが加わっている場合に得られるものである。
図4(b)を参照すると、第2ブリルアンゲインスペクトルは、前景光スペクトルのピーク付近の形状が大きく広がるとともに、信号強度が低くなり、全体的に鈍った形状になっている。これに対し、ピーク付近以外の形状は、
図4(a)に示す第1ブリルアンゲインスペクトルと概ね同様である。
【0072】
図4(c)を参照すると、第1ブリルアンゲインスペクトルと第2ブリルアンゲインスペクトルとの差分は、前景光スペクトルのピーク周波数fp1において、信号強度が最大になっていることが分かる。このため、
図3に示すフローチャートのステップS15の処理にて、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2との差分が最大になる周波数を算出する処理を行うことで、正しいブリルアン周波数シフト量を求めることができる。
【0073】
以上の通り、本実施形態では、第1スペクトル幅を有するポンプ光L11を被測定光ファイバFUTに光を入射させて第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得し、第2スペクトル幅を有するポンプ光L11を被測定光ファイバFUTに光を入射させて第2ブリルアンゲインスペクトルB2を取得している。そして、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルとB2とに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定している。これにより、被測定光ファイバFUTに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することができる。
【0074】
〔第2実施形態〕
〈光ファイバ特性測定装置の構成〉
図5は、本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図5においては、
図1に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
図5に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置2は、
図1に示す光ファイバ特性測定装置1の信号発生部10を省略し、制御処理部18に代えて制御処理部20を設けた構成である。
【0075】
前述した第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1は、第1,第2スペクトル幅を有する連続光L1(ポンプ光L11)を順に被測定光ファイバFUTに入射させ、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とを順に取得するものであった。これに対し、本実施形態の光ファイバ特性測定装置2は、第1スペクトル幅を有する連続光L1(ポンプ光L11)を被測定光ファイバFUTに入射させて第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得し、取得した第1ブリルアンゲインスペクトルB1を用いて、第2ブリルアンゲインスペクトルB2を演算により求めるものである。
【0076】
尚、本実施形態で求められる第2ブリルアンゲインスペクトルB2は、演算によって求められるものであるから、厳密には、第1実施形態で得られる第2ブリルアンゲインスペクトルB2とは異なるものである。本実施形態で求められる第2ブリルアンゲインスペクトルB2は、いわば、被測定光ファイバFUTに入射される光のスペクトル幅が第2スペクトル幅である場合に得られるであろう(得られると期待される)ブリルアンゲインスペクトルである。
【0077】
制御処理部20は、光ファイバ特性測定装置2の動作を統括して制御するとともに、周波数解析部17の周波数解析結果を用いて、被測定光ファイバFUTの特性(例えば、歪み分布、温度分布、振動分布等)を測定するために必要な処理を行う。制御処理部20は、データ取得部20a、信号処理部20b、測定部20c、及び制御部20dを備える。
【0078】
データ取得部20aは、制御部20dの制御の下で、周波数解析部17から出力されるデータを取得する。具体的に、データ取得部20aは、光源部11から出力される連続光L1(ポンプ光L11)が被測定光ファイバFUTに入射した場合に、周波数解析部17から出力されるブリルアンゲインスペクトル(第1ブリルアンゲインスペクトル)を示すデータを取得する。尚、光源部11から出力される連続光L1(ポンプ光L11)のスペクトル幅は、第1スペクトル幅である。
【0079】
信号処理部20bは、第1信号処理部21及び第2信号処理部22を備えており、制御部20dの制御の下で、データ取得部20aで取得されたデータに対して、予め規定された処理を行う。第1信号処理部21は、データ取得部20aで取得された第1ブリルアンゲインスペクトルを得て、これを記憶又は保持する。また、第1信号処理部21は、記憶した第1ブリルアンゲインスペクトルを読み出して、不図示の表示装置に描画する処理を行っても良い。
【0080】
第2信号処理部22は、第1信号処理部21に記憶された第1ブリルアンゲインスペクトルを読み出し、読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルを用いて第2ブリルアンゲインスペクトルを求める処理を行う。具体的に、第2信号処理部22は、第1信号処理部21から読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルと単峰性スペクトルとの畳み込み演算を行って、第2ブリルアンゲインスペクトルを求める。尚、第2信号処理部22は、求めた第2ブリルアンゲインスペクトルを、不図示の表示装置に描画する処理を行っても良い。
【0081】
ここで、畳み込み演算には、は、
図4(a)に示す第1ブリルアンゲインスペクトルにおける前景光スペクトルを鈍らせ(ピーク周波数fp1における信号強度を低下させ)、且つ、背景光スペクトルの形状を概ね維持できる単峰性スペクトルを用いることができる。このような、単峰性スペクトルとしては、例えば、ローレンツ型スペクトル、ガウス型スペクトル、又は方形窓型スペクトルが挙げられる。
【0082】
ローレンツ型スペクトルは、被測定光ファイバFUTに入射するレーザ光(ポンプ光L11)のスペクトルに近いものである。ガウス型スペクトルは、雑音のスペクトルに近いものである。第1実施形態で取得される第2ブリルアンゲインスペクトルに似た第2ブリルアンゲインスペクトルを求める場合には、ガウス型スペクトルを用いるのが望ましい。演算を容易にする場合には、方形窓型スペクトルを用いるのが望ましい。
【0083】
畳み込み演算に用いる単峰性スペクトルのスペクトル幅(例えば、半値全幅)は、ブリルアン散乱光のスペクトル幅(例えば、30MHz程度)よりも広ければ良い。単峰性スペクトルのスペクトル幅は、ブリルアン散乱光のスペクトル幅の2~4倍程度(例えば、100MHz)が望ましい。
【0084】
測定部20cは、第1信号処理部21に記憶された第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2信号処理部22で求められた第2ブリルアンゲインスペクトルB2とを読み出す。測定部20cは、これら第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とに基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する。尚、測定部20cの内部構成は、
図2に示す測定部18cの内部構成と同様である。
【0085】
制御部20dは、光源部11の駆動信号生成部11b、並びに制御処理部20のデータ取得部20a、信号処理部20b、及び測定部20cを制御することで、光ファイバ特性測定装置2の動作を統括して制御する。この制御部20dは、
図1に示す制御部18dから、
図1に示す信号発生部10の制御を行う機能が省かれたものである。
【0086】
制御処理部20は、
図1に示す制御処理部18と同様に、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで実現することができる。制御処理部20の機能は、例えば、それらの機能を実現するプログラムをコンピュータにインストールすることによりソフトウェア的に実現される。つまり、制御処理部20の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0087】
制御処理部20の機能を実現するプログラムは、例えばCD-ROM又はDVD(登録商標)-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されても良く、インターネット等のネットワークを介して配布されても良い。尚、制御処理部20の機能は、FPGA、LSI、ASIC等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0088】
〈光ファイバ特性測定装置の動作〉
図6は、本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の動作例を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートと同様に、被測定光ファイバFUTの長さ方向に沿う特性を測定する際の動作を示すものである。尚、
図6においては、
図3に示すフローチャートのステップと同じステップについては同じ符号を付してある。
図6に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートのステップS13に代えてステップS20が設けられたものである。
【0089】
図6に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、被測定光ファイバFUTの長さ方向における測定点の位置及び予め設定された空間分解能から、光源11aの変調周波数fm及び変調振幅Δfを設定する処理が行われる(ステップS11)。この処理は、制御処理部20の制御部20dが、光源部11の駆動信号生成部11bに対して行う。この処理が行われることで、被測定光ファイバFUTの長さ方向における相関ピークの位置及び相関ピークの間隔が決定される。
【0090】
次に、光源11aの線幅を第1スペクトル幅にして第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得する処理が、制御部20dの制御の下で行われる(ステップS12)。この処理は、データ取得部20aで取得された第1ブリルアンゲインスペクトルが、第1信号処理部21に記憶される点を除いて第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0091】
次いで、光源11aの線幅を太らせたならば得られるであろう第2ブリルアンゲインスペクトルを演算によって求める処理が第2信号処理部22で行われる(ステップS20)。つまり、光源部11から出力される連続光L1のスペクトル幅が、仮に、第1実施形態における第2スペクトルになった場合に得られるであろう第2ブリルアンゲインスペクトルを演算によって求める処理が行われる。具体的には、第1信号処理部21に記憶された第1ブリルアンゲインスペクトルを読み出し、読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルを用いて第2ブリルアンゲインスペクトルを求める処理が第2信号処理部22で行われる。より具体的には、第1信号処理部21から読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルと単峰性スペクトル(例えば、スペクトル幅が100MHzのガウス型スペクトル)との畳み込み演算を行って、第2ブリルアンゲインスペクトルを求める処理が、第2信号処理部22で行われる。
【0092】
以上の処理が終了すると、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2との差分を算出し(ステップS14)、算出された差分が最大になる周波数を算出し(ステップS15)、算出された周波数に基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する処理(ステップS16)が、測定部20cで行われる。以上の処理が終了すると、測定終了であるか否かが制御部20dで判断され(ステップS17)、測定終了でない場合(「NO」の場合)にはステップS11に戻り、測定終了の場合(「YES」の場合)には、測定結果を表示する処理が、制御部18dの制御の下で行われる(ステップS18)。以上の処理にて、
図6に示す一連の処理が終了する。
【0093】
以上の通り、本実施形態では、第1スペクトル幅を有するポンプ光L11を被測定光ファイバFUTに光を入射させて第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得し、取得した第1ブリルアンゲインスペクトルB1を用いて第2ブリルアンゲインスペクトルB2を演算により求めている。そして、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルとB2とに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定している。これにより、被測定光ファイバFUTに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することができる。
【0094】
また、本実施形態では、第2ブリルアンゲインスペクトルB2を演算により求めているため、第1実施形態のように、第2ブリルアンゲインスペクトルB2を得るために、第2スペクトル幅を有するポンプ光L11を被測定光ファイバFUTに入射させる必要はない。このため、第1実施形態よりも測定に要する時間を短縮することができる。また、信号発生部10等のハードウェアを追加することなく制御処理部20の機能を実現するソフトウェアの変更のみで対応することができる。
【0095】
〔第3実施形態〕
〈光ファイバ特性測定装置の構成〉
図7は、本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図7においては、
図1に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
図7に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置3は、信号発生部10、光源部11、光分岐部30(第3光分岐部)、光周波数シフタ31(シフト部)、光アイソレータ32、光遅延部14、光スイッチ33、同期信号源34、光分岐部35(第4光分岐部)、受光部36(光検出部)、ロックインアンプ37(光検出部)、及び制御処理部38を備える。
【0096】
このような光ファイバ特性測定装置3は、被測定光ファイバFUTの一端にポンプ光L31を入射させ、他端にプローブ光L32を入射させて得られるブリルアン散乱光LSに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定する、所謂BOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)方式の光ファイバ特性測定装置である。上記のポンプ光L31は、周波数変調が与えられたパルス光である。上記のプローブ光L32は、ポンプ光L31と同様の周波数変調が与えられ、且つポンプ光L31に対して低周波方向への周波数シフトが与えられた連続光である。尚、本実施形態においても、説明を簡単にするために、被測定光ファイバFUTには相関ピークが1つのみ現れるとする。
【0097】
信号発生部10及び光源部11は、
図1に示すものと同じである。光分岐部30は、光源部11から出力された連続光L1を、予め規定された強度比(例えば、1対1)の第1分岐光L21と第2分岐光L22とに分岐する。光周波数シフタ31は、正弦波信号源31a及びSSB(Single Side Band)変調器31bを備えており、制御処理部38の制御の下で、光分岐部30で分岐された第2分岐光L22の周波数を周波数fbだけ低周波方向にシフトさせてプローブ光L32とする。尚、周波数fbは固定ではなく、制御処理部38の制御によって変更される(掃引される)。
【0098】
光アイソレータ32は、光入力端及び光出力端を備える。光入力端は光周波数シフタ31と接続され、光出力端は被測定光ファイバFUTの他端と接続される。光アイソレータ32は、光入力端に入力されるプローブ光L32を透過させて光出力端から出力する一方、光出力端に入力する光(例えば、被測定光ファイバFUTから出力される光)を遮断する。つまり、光アイソレータ32は、光周波数シフタ31から被測定光ファイバFUTに向かうプローブ光L32のみを透過させる。
【0099】
光遅延部14は、
図1に示すものと同じである。光スイッチ33は、同期信号源34から出力される同期信号に同期して接続状態又は切断状態になる。光スイッチ33が接続状態である場合には、光スイッチ33からは、光分岐部30で分岐された第1分岐光L21がポンプ光L31として出力される。これに対し、光スイッチ33が切断状態である場合には、光スイッチ33からは、ポンプ光L31は出力されない。この光スイッチ33によって、連続光である第1分岐光L21がパルス化されて、ポンプ光L31として出力される。同期信号源34は、制御処理部38の制御の下で、光スイッチ33及びロックインアンプ37で用いられる同期信号を出力する。
【0100】
光分岐部35は、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートを備える。第1ポートは、光スイッチ33と接続される。第2ポートは、被測定光ファイバFUTの一端と接続される。第3ポートは、受光部36と接続される。光分岐部35は、第1ポートから入力されるポンプ光L31を第2ポートに出力する。また、第2ポートから入力される被測定光ファイバFUTからのプローブ光L32及びブリルアン散乱光LSを第3ポートに出力する。このような光分岐部35としては、例えば光サーキュレータを用いることができる。
【0101】
受光部36は、例えば、フォトダイオード等の受光素子を備えており、光分岐部35の第3ポートから出力されるプローブ光L32及びブリルアン散乱光LSを受光する。受光部36からは、プローブ光L32及びブリルアン散乱光LSの受光結果に応じた受光信号が出力される。
【0102】
ここで、光スイッチ33が接続状態である場合(光スイッチ33からからポンプ光L31が出力されている場合)には、被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L32と、被測定光ファイバFUT内で生じたブリルアン散乱光LSとが受光部36で受光される。このため、受光部36からは、上記のプローブ光L32及びブリルアン散乱光LSに応じた受光信号(以下、「第1受光信号」という)が出力される。
【0103】
これに対し、光スイッチ33が切断状態である場合(光スイッチ33からからポンプ光L31が出力されていない場合)には、被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L32のみが受光部36で受光される。このため、受光部36からは、上記のプローブ光L32に応じた受光信号(以下、「第2受光信号」という)が出力される。
【0104】
ロックインアンプ37は、光スイッチ33を制御する同期信号に同期して、受光部36から出力される第1受光信号と第2受光信号とを順に取得し、これら第1受光信号と第2受光信号との差を取ることで、ブリルアン散乱光LSの強度を求める処理を行う。ロックインアンプ37からは、ブリルアン散乱光LSの強度を示す検出信号S2が出力される。
【0105】
制御処理部38は、光ファイバ特性測定装置3の動作を統括して制御するとともに、ロックインアンプ37の検出結果を用いて、被測定光ファイバFUTの特性(例えば、歪み分布、温度分布、振動分布等)を測定するために必要な処理を行う。制御処理部38は、データ取得部38a、信号処理部38b、測定部38c、及び制御部38dを備える。
【0106】
データ取得部38aは、制御部38dの制御の下で、ロックインアンプ37から出力される検出信号S2を取得する。具体的に、データ取得部38aは、第1スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力されており、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)が掃引されている場合に、ロックインアンプ37から出力される検出信号S2を順次取得する。また、データ取得部38aは、第2スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力されており、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)が掃引されている場合に、ロックインアンプ37から出力される検出信号S2を順次取得する。
【0107】
信号処理部38bは、制御部38dの制御の下で、データ取得部38aで取得された検出信号S2を用いて、ブリルアンゲインスペクトルを得る処理を行う。具体的に、信号処理部38bは、データ取得部38aで順次取得された検出信号S2に対し、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)を対応づけることによって、ブリルアンゲインスペクトルを得る処理を行う。ここで、データ取得部38aで取得される検出信号S2は、ブリルアン散乱光LSの強度を示す信号である。一方、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)は、ポンプ光L31とプローブ光L32との周波数差を示すものである。よって、これらを対応づけることでブリルアンゲインスペクトルを得ることができる。
【0108】
尚、信号処理部38bは、第1スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力されている場合に、データ取得部38aで順次取得された検出信号S2に対し、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)を対応づけることによって、第1ブリルアンゲインスペクトルを得る。また、信号処理部38bは、第2スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力されている場合に、データ取得部38aで順次取得された検出信号S2に対し、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)を対応づけることによって、第2ブリルアンゲインスペクトルを得る。
【0109】
測定部38cは、信号処理部38bで得られた第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とを読み出す。測定部38cは、これら第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とに基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する。尚、測定部38cの内部構成は、
図2に示す測定部18cの内部構成と同様である。
【0110】
制御部38dは、信号発生部10、光源部11の駆動信号生成部11b、光周波数シフタ31の正弦波信号源31a、同期信号源34、並びに制御処理部38のデータ取得部38a、信号処理部38b、及び測定部38cを制御することで、光ファイバ特性測定装置3の動作を統括して制御する。この制御部38dは、
図1に示す制御部18dに対して、いわば、正弦波信号源31a及び同期信号源34を制御する機能を追加したものである。
【0111】
制御処理部38は、
図1に示す制御処理部18と同様に、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで実現することができる。制御処理部38の機能は、例えば、それらの機能を実現するプログラムをコンピュータにインストールすることによりソフトウェア的に実現される。つまり、制御処理部38の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0112】
制御処理部38の機能を実現するプログラムは、例えばCD-ROM又はDVD(登録商標)-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されても良く、インターネット等のネットワークを介して配布されても良い。尚、制御処理部38の機能は、FPGA、LSI、ASIC等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0113】
〈光ファイバ特性測定装置の動作〉
本実施形態の光ファイバ特性測定装置3は、第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1とは測定原理が異なるものの、概ね、
図3に示すフローチャートで示される動作と同様の動作が行われる。このため、以下では、
図3を参照しながら、本実施形態の光ファイバ特性測定装置3の動作について説明する。
【0114】
図3に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、被測定光ファイバFUTの長さ方向における測定点の位置及び予め設定された空間分解能から、光源11aの変調周波数fm及び変調振幅Δfを設定する処理が行われる(ステップS11)。この処理は、制御処理部38の制御部38dが、光源部11の駆動信号生成部11bに対して行う。この処理が行われることで、被測定光ファイバFUTの長さ方向における相関ピークの位置及び相関ピークの間隔が決定される。
【0115】
次に、光源11aの線幅を第1スペクトル幅にして第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得する処理が、制御部38dの制御の下で行われる(ステップS12)。この処理が開始されると、まず、光周波数シフタ31でプローブ光L32に与える周波数シフト量(周波数fb)の初期値を正弦波信号源31aに設定する処理が制御部38dによって行われる。次いで、駆動信号生成部11bが制御部38dによって制御され、駆動信号生成部11bから光源11aに対し駆動信号D1が出力される。尚、ここでは、信号発生部10の制御は行われず、信号SGは出力されない。
【0116】
駆動信号D1が光源11aに入力されると、光源11aからは変調周波数fmで周波数変調された第1スペクトル幅を有する連続光L1が出力される。光源11aから出力された連続光L1は、光分岐部30に入射して第1分岐光L21と第2分岐光L22とに分岐される。分岐された第2分岐光L22は、光周波数シフタ31に入射して周波数が周波数fbだけシフトされてプローブ光L32とされる。このプローブ光L32は、光アイソレータ32を介して被測定光ファイバFUTの他端から被測定光ファイバFUTに入射し、被測定光ファイバFUT内を伝播していく。
【0117】
また、分岐された第1分岐光L21は、光遅延部14を介して光スイッチ33に入射する。光スイッチ33が接続状態である場合には、光スイッチ33に入射した第1分岐光L21は、光スイッチ33からポンプ光L31として出力される。光スイッチ33から出力されたポンプ光L31は、光分岐部35を介して被測定光ファイバFUTの一端から被測定光ファイバFUTに入射し、被測定光ファイバFUT内を伝播していく。
【0118】
被測定光ファイバFUT内において、ポンプ光L31とプローブ光L32とが互いに逆方向に伝播するに伴い、被測定光ファイバFUT内ではブリルアン散乱光LS(後方散乱光)が順次発生する。被測定光ファイバFUT内で発生したブリルアン散乱光LSは、ポンプ光L31が伝播する方向とは反対の方向に伝播し、被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L32とともに、被測定光ファイバFUTの一端から射出される。被測定光ファイバFUTの一端から射出されたプローブ光L32及びブリルアン散乱光LSは、光分岐部35を介した後に受光部36で受光され、受光部36からは第1受光信号が出力される。この第1受光信号は、ロックインアンプ37で取得される。
【0119】
次に、光スイッチ33が切断状態になると、光スイッチ33からはポンプ光L31が出力されない。すると、被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L32のみが被測定光ファイバFUTの一端から射出される。被測定光ファイバFUTの一端から射出されたプローブ光L32は、光分岐部35を介した後に受光部36で受光され、受光部36からは第2受光信号が出力される。この第2受光信号は、ロックインアンプ37で取得される。
【0120】
第1受光信号と第2受光信号とが取得されると、ロックインアンプ37では、第1受光信号と第2受光信号との差を取って、ブリルアン散乱光LSの強度を求める処理が行われる。この処理が行われると、ロックインアンプ37からブリルアン散乱光LSの強度を示す検出信号S2が出力される。この検出信号S2は、制御処理部38のデータ取得部38aで取得され、信号処理部38bに記憶される。
【0121】
以上の処理が終了すると、制御部38dによって正弦波信号源31aが制御され、光周波数シフタ31でプローブ光L32に与える周波数シフト量(周波数fb)を順次変更しながら(掃引しながら)、上述した動作と同様の動作が繰り返し行われる。プローブ光L32に与える周波数シフト量(周波数fb)の掃引が完了すると、信号処理部38bにおいて、第1ブリルアンゲインスペクトルを求める処理が行われる。具体的には、信号処理部38bに順次記憶された検出信号S2に対し、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)を対応づけることによって、第1ブリルアンゲインスペクトルを得る処理が信号処理部38bで行われる。
【0122】
次いで、光源11aの線幅を第2スペクトル幅にして第2ブリルアンゲインスペクトルB2を取得する処理が、制御部38dの制御の下で行われる(ステップS13)。この処理は、以下の2点を除いて、ステップS12で行われる処理と同様である。このため、ステップS13で行われる処理の詳細な説明は省略する。
・駆動信号生成部11bに加えて信号発生部10が制御部38dによって制御され、変調周波数fmで周波数変調された第2スペクトル幅を有する連続光L1が光源11aから出力される点、
・第1ブリルアンゲインスペクトルに代えて第2ブリルアンゲインスペクトルを得る処理が信号処理部38bで行われる点
【0123】
続いて、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2との差分を算出し(ステップS14)、算出された差分が最大になる周波数を算出し(ステップS15)、算出された周波数に基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する処理(ステップS16)が、測定部38cで行われる。以上の処理が終了すると、測定終了であるか否かが制御部38dで判断され(ステップS17)、測定終了でない場合(「NO」の場合)にはステップS11に戻り、測定終了の場合(「YES」の場合)には、測定結果を表示する処理が、制御部38dの制御の下で行われる(ステップS18)。以上の処理にて、
図3に示す一連の処理が終了する。
【0124】
以上の通り、本実施形態では、第1スペクトル幅を有するポンプ光L31を被測定光ファイバFUTに入射させて第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得し、第2スペクトル幅を有するポンプ光L31を被測定光ファイバFUTに入射させて第2ブリルアンゲインスペクトルB2を取得している。そして、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定している。これにより、被測定光ファイバFUTに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することができる。
【0125】
〔第4実施形態〕
〈光ファイバ特性測定装置の構成〉
図8は、本発明の第4実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図8においては、
図7に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
図8に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置4は、
図7に示す光ファイバ特性測定装置3の信号発生部10を省略し、制御処理部38に代えて制御処理部40を設けた構成である。
【0126】
前述した第3実施形態の光ファイバ特性測定装置3は、第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1と同様に、第1,第2スペクトル幅を有する連続光L1(ポンプ光L31)を順に被測定光ファイバFUTに入射させ、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とを順に取得するものであった。これに対し、本実施形態の光ファイバ特性測定装置4は、第2実施形態の光ファイバ特性測定装置2と同様に、第1スペクトル幅を有する連続光L1(ポンプ光L31)を被測定光ファイバFUTに入射させて第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得し、取得した第1ブリルアンゲインスペクトルB1を用いて、第2ブリルアンゲインスペクトルB2を演算により求めるものである。
【0127】
尚、本実施形態で求められる第2ブリルアンゲインスペクトルB2は、演算によって求められるものであるから、厳密には、第3実施形態で得られる第2ブリルアンゲインスペクトルB2とは異なるものである。本実施形態で求められる第2ブリルアンゲインスペクトルB2は、いわば、被測定光ファイバFUTに入射される光のスペクトル幅が第2スペクトル幅である場合に得られるであろう(得られると期待される)ブリルアンゲインスペクトルである。
【0128】
制御処理部40は、光ファイバ特性測定装置4の動作を統括して制御するとともに、ロックインアンプ37の検出結果を用いて、被測定光ファイバFUTの特性(例えば、歪み分布、温度分布、振動分布等)を測定するために必要な処理を行う。制御処理部40は、データ取得部40a、信号処理部40b、測定部40c、及び制御部40dを備える。
【0129】
データ取得部40aは、制御部40dの制御の下で、ロックインアンプ37から出力される検出信号S2を取得する。具体的に、データ取得部40aは、第1スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力されており、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)が掃引されている場合に、ロックインアンプ37から出力される検出信号S2を順次取得する。また、データ取得部40aは、第1スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力されており、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)が掃引されている場合に、ロックインアンプ37から出力される検出信号S2を順次取得する。
【0130】
信号処理部40bは、第1信号処理部41及び第2信号処理部42を備えており、制御部40dの制御の下で、データ取得部40aで取得された検出信号S2を用いて、ブリルアンゲインスペクトルを得る処理を行う。第1信号処理部41は、第1スペクトル幅を有する連続光L1が光源部11から出力されている場合に、データ取得部40aで順次取得された検出信号S2に対し、プローブ光L32の周波数シフト量(周波数fb)を対応づけることによって、第1ブリルアンゲインスペクトルを得る処理を行う。
【0131】
第2信号処理部42は、第1信号処理部41で得られた第1ブリルアンゲインスペクトルを読み出し、読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルを用いて第2ブリルアンゲインスペクトルを求める処理を行う。具体的に、第2信号処理部42は、第1信号処理部41から読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルと単峰性スペクトルとの畳み込み演算を行って、第2ブリルアンゲインスペクトルを求める処理を行う。
【0132】
ここで、畳み込み演算に用いる単峰性スペクトルは、第2実施形態と同様に、
図4(a)に示す第1ブリルアンゲインスペクトルにおける前景光スペクトルを鈍らせ(ピーク周波数fp1における信号強度を低下させ)、且つ、背景光スペクトルの形状を概ね維持できるものを用いることができる。このような、単峰性スペクトルとしては、例えば、ローレンツ型スペクトル、ガウス型スペクトル、又は方形窓型スペクトルが挙げられる。
【0133】
畳み込み演算に用いる単峰性スペクトルのスペクトル幅(例えば、半値全幅)は、ブリルアン散乱光のスペクトル幅(例えば、30MHz程度)よりも広ければ良い。単峰性スペクトルのスペクトル幅は、ブリルアン散乱光のスペクトル幅の2~4倍程度(例えば、100MHz)が望ましい。
【0134】
測定部40cは、第1信号処理部41で得られた第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2信号処理部42で求められた第2ブリルアンゲインスペクトルB2とを読み出す。測定部40cは、これら第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とに基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する。尚、測定部40cの内部構成は、
図2に示す測定部18cの内部構成と同様である。
【0135】
制御部40dは、光源部11の駆動信号生成部11b、光周波数シフタ31の正弦波信号源31a、同期信号源34、並びに制御処理部40のデータ取得部40a、信号処理部40b、及び測定部40cを制御することで、光ファイバ特性測定装置4の動作を統括して制御する。この制御部40dは、
図7に示す制御部38dから、
図7に示す信号発生部10の制御を行う機能が省かれたものである。
【0136】
制御処理部40は、
図3に示す制御処理部38と同様に、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで実現することができる。制御処理部40の機能は、例えば、それらの機能を実現するプログラムをコンピュータにインストールすることによりソフトウェア的に実現される。つまり、制御処理部40の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0137】
制御処理部40の機能を実現するプログラムは、例えばCD-ROM又はDVD(登録商標)-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されても良く、インターネット等のネットワークを介して配布されても良い。尚、制御処理部40の機能は、FPGA、LSI、ASIC等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0138】
〈光ファイバ特性測定装置の動作〉
本実施形態の光ファイバ特性測定装置4は、第2実施形態の光ファイバ特性測定装置2とは測定原理が異なるものの、概ね、
図6に示すフローチャートで示される動作と同様の動作が行われる。このため、以下では、
図6を参照しながら、本実施形態の光ファイバ特性測定装置4の動作について説明する。
【0139】
図6に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、被測定光ファイバFUTの長さ方向における測定点の位置及び予め設定された空間分解能から、光源11aの変調周波数fm及び変調振幅Δfを設定する処理が行われる(ステップS11)。この処理は、制御処理部40の制御部40dが、光源部11の駆動信号生成部11bに対して行う。この処理が行われることで、被測定光ファイバFUTの長さ方向における相関ピークの位置及び相関ピークの間隔が決定される。
【0140】
次に、光源11aの線幅を第1スペクトル幅にして第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得する処理が、制御部40dの制御の下で行われる(ステップS12)。この処理は、データ取得部40aで取得された検出信号S2が、第1信号処理部41に記憶される点を除いて第3実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0141】
次いで、光源11aの線幅を太らせたならば得られるであろう第2ブリルアンゲインスペクトルを演算によって求める処理が第2信号処理部42で行われる(ステップS20)。具体的には、第1信号処理部41に記憶された第1ブリルアンゲインスペクトルを読み出し、読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルを用いて第2ブリルアンゲインスペクトルを求める処理が第2信号処理部42で行われる。より具体的には、第1信号処理部41から読み出した第1ブリルアンゲインスペクトルと単峰性スペクトル(例えば、スペクトル幅が100MHzのガウス型スペクトル)との畳み込み演算を行って、第2ブリルアンゲインスペクトルを求める処理が、第2信号処理部42で行われる。
【0142】
以上の処理が終了すると、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2との差分を算出し(ステップS14)、算出された差分が最大になる周波数を算出し(ステップS15)、算出された周波数に基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する処理(ステップS16)が、測定部40cで行われる。以上の処理が終了すると、測定終了であるか否かが制御部40dで判断され(ステップS17)、測定終了でない場合(「NO」の場合)にはステップS11に戻り、測定終了の場合(「YES」の場合)には、測定結果を表示する処理が、制御部18dの制御の下で行われる(ステップS18)。以上の処理にて、
図6に示す一連の処理が終了する。
【0143】
以上の通り、本実施形態では、第1スペクトル幅を有するポンプ光L11を被測定光ファイバFUTに入射させて第1ブリルアンゲインスペクトルB1を取得し、取得した第1ブリルアンゲインスペクトルB1を用いて第2ブリルアンゲインスペクトルB2を演算により求めている。そして、第1ブリルアンゲインスペクトルB1と第2ブリルアンゲインスペクトルB2とに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定している。これにより、被測定光ファイバFUTに加わる大きな歪みや温度変化も誤りなく測定することができる。
【0144】
また、本実施形態では、第2ブリルアンゲインスペクトルB2を演算により求めているため、第1実施形態のように、第2ブリルアンゲインスペクトルB2を得るために、第2スペクトル幅を有するポンプ光L11を被測定光ファイバFUTに入射させる必要はない。このため、第1実施形態よりも測定に要する時間を短縮することができる。また、信号発生部10等のハードウェアを追加することなく制御処理部40の機能を実現するソフトウェアの変更のみで対応することができる。
【0145】
以上、本発明の実施形態による光ファイバ特性測定装置、光ファイバ特性測定プログラム、及び光ファイバ特性測定方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。
【0146】
例えば、上記第1,第3実施形態では、分布帰還型レーザダイオードを備える光源11aに対し、信号SGが重畳されていない駆動信号D1を供給して第1スペクトル幅を有する連続光L1を出力させ、信号SGが重畳されている駆動信号D1を供給して第2スペクトル幅を有する連続光L1を出力させていた。しかしながら、分布ブラッグ反射型レーザダイオード(DBR-LD:Distributed Bragg Reflector Laser Diode)を備える光源11aの駆動電流の周波数又は位相を調整することで、第1スペクトル幅を有する連続光L1又は第2スペクトル幅を有する連続光L1を出力させるようにしても良い。
【0147】
或いは、光源11aと光分岐部30との間に、光周波数シフタ(図示省略)を設け、光源11aから出力された第1スペクトル幅を有する連続光L1をそのまま透過させたり、第2スペクトル幅を有する連続光L1に変換したりしても良い。尚、上記の光周波数シフタとしては、例えば、SSB変調器を用いることができる。或いは、強度変調器と光フィルタとの組み合わせからなるものを用いることができる。
【0148】
また、上述した第1,2実施形態では、光検出部16によって光ヘテロダイン検波を行っていたが、光ホモダイン検波を行うようにしても良い。つまり、ポンプ光L11又は参照光L12に対し、ブリルアン周波数シフト量と同程度の周波数シフトを与えておき、ブリルアン散乱光LSと参照光L12との周波数差を小さく(或いは、ゼロにする)して検波するようにしても良い。尚、ブリルアン散乱光LSと参照光L12との周波数差を小さくした場合には、周波数解析部17として低周波ESAを用いるのが望ましい。また、ブリルアン散乱光LSと参照光L12との周波数差をゼロにした場合には、周波数解析部17を省略し、ポンプ光L11又は参照光L12に対して与える周波数シフト量を掃引することが望ましい。
【0149】
また、上述した第1,第2実施形態における光分岐部12及び第3,4実施形態における光分岐部30は、連続光L1を同じ強度比で分岐するものであっても、異なる強度比で分岐するものであっても良い。光分岐部12及び光分岐部30の分岐比は、以降の光学系の許容入力強度を考慮して設定されていても良い。また、光分岐部12及び光分岐部30が、連続光L1を異なる強度比で分岐するものである場合には、分岐された光のうちの強度が低い光を光アンプ等で増幅するようにしても良い。
【0150】
また、上述した第3,4実施形態では、光分岐部30と光アイソレータ32との間に設けられた光周波数シフタ31によって、第2分岐光L22(プローブ光L32)の周波数を低周波方向にシフトさせる例について説明した。しかしながら、光分岐部30と光スイッチ33との間に光周波数シフタ31を設け、第1分岐光L21(ポンプ光L31)の周波数を高周波方向にシフトさせても良い。
【0151】
また、上述した第1,第2実施形態では、光遅延部14が、光分岐部12と合波部15との間に設けられていたが、光遅延部14は、光分岐部12と光分岐部13との間、又は光分岐部13と合波部15との間に設けられていても良い。同様に、上述した第3,第4実施形態では、光遅延部14が、光分岐部12と光スイッチ33との間に設けられていたが、光遅延部14は、光分岐部12と光周波数シフタ31との間、又は光周波数シフタ31と光アイソレータ32との間に設けられていても良い。
【0152】
また、上記実施形態では、説明を簡単にするために、被測定光ファイバFUTには相関ピークが1つのみ現れるとして説明した。被測定光ファイバFUTに相関ピークが複数現れる場合には、例えば、二重変調法と呼ばれる手法又は時間ゲート法と呼ばれる手法を用いて、複数の相関ピークのうちの1つを選択し、選択した相関ピークが現れる位置におけるブリルアン散乱光のみが抽出されるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0153】
1~4 光ファイバ特性測定装置
10 信号発生部
11 光源部
11a 光源
11b 駆動信号生成部
12,13 光分岐部
14 光遅延部
15 合波部
16 光検出部
17 周波数解析部
18,20 制御処理部
18a,20a データ取得部
18b,20b 信号処理部
18c,20c 測定部
18d,20d 制御部
19a 差分算出部
19b 特性測定部
21 第1信号処理部
22 第2信号処理部
30 光分岐部
31 光周波数シフタ
32 光アイソレータ
33 光スイッチ
34 同期信号源
35 光分岐部
36 受光部
37 ロックインアンプ
38,40 制御処理部
38a,40a データ取得部
38b,40b 信号処理部
38c,40c 測定部
38d,40d 制御部
41 第1信号処理部
42 第2信号処理部
B1 第1ブリルアンゲインスペクトル
B2 第2ブリルアンゲインスペクトル
D1 駆動信号
FUT 被測定光ファイバ
L1 連続光
L11 ポンプ光
L12 参照光
L21 第1分岐光
L22 第2分岐光
L31 ポンプ光
L32 プローブ光
LS ブリルアン散乱光
S1,S2 検出信号